(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
矩形シート状の負極金属箔の表面に矩形状の負極活物質層を有するとともに、前記負極活物質層の一対の縁部のうちの一方の縁部から突出した前記負極金属箔によって形成された負極突出部、及び前記一方の縁部からの前記負極突出部の突出方向先端に位置する一端縁から突出した負極タブを有する負極電極と、
矩形シート状の正極金属箔の表面に正極活物質層を有するとともに、矩形状の袋状セパレータに収納され、前記袋状セパレータの一端縁から突出した正極タブを有する正極電極とが、
前記正極活物質層に対し、前記袋状セパレータを介して前記負極活物質層が対向する状態で交互に積み重ねられた積層構造を有し、かつ前記正極タブ及び前記負極タブの双方が存在するタブ側端面を有する電極組立体を内部に備える蓄電装置であって、
前記負極電極及び前記袋状セパレータについて、前記一端縁の対辺を他端縁とし、前記一端縁と他端縁を最短距離で結ぶ直線の延びる方向を高さ方向とした場合、前記負極電極と前記袋状セパレータの前記一端縁が前記高さ方向に揃う部分を有し、前記負極突出部の表面のうち、前記一端縁に沿う部位を覆う補強層を備えることを特徴とする蓄電装置。
前記負極突出部の表面には、前記負極活物質層及び前記補強層が共存し、前記補強層は、前記負極活物質層よりも前記負極突出部の前記一端縁寄りに位置している請求項1に記載の蓄電装置。
前記負極電極と前記袋状セパレータの積み重ねられた方向を積層方向とすると、前記負極突出部は前記積層方向において前記正極タブと重ならない位置にある請求項1又は請求項2に記載の蓄電装置。
前記電極組立体はケースに収容され、前記ケースは、前記電極組立体を収容したケース本体と、前記ケース本体の開口部を閉塞する蓋体とを備え、前記負極電極及び前記袋状セパレータについて前記一端縁が延びる方向を長手方向とすると、前記負極タブは前記負極電極における前記長手方向一端側にあり、前記正極タブは前記袋状セパレータにおける前記長手方向他端側にあり、前記負極タブと電気的に接続され、かつ前記長手方向における前記負極タブよりも一端側において前記蓋体に固定された負極端子を有するとともに、前記正極タブと電気的に接続され、かつ前記長手方向における前記正極タブよりも他端側において前記蓋体に固定された正極端子を有し、前記負極突出部は前記高さ方向において前記負極端子及び前記正極端子と重ならない位置にある請求項1〜請求項3のうちのいずれか一項に記載の蓄電装置。
矩形シート状の負極金属箔の表面に矩形状の負極活物質層を有するとともに、前記負極活物質層の一対の縁部のうちの一方の縁部から突出した前記負極金属箔によって形成された負極突出部、及び前記一方の縁部からの前記負極突出部の突出方向先端に位置する一端縁から突出した負極タブを有する負極電極と、
矩形シート状の正極金属箔の表面に正極活物質層を有するとともに、矩形状の袋状セパレータに収納され、前記袋状セパレータの一端縁から突出した正極タブを有する正極電極とが、
前記正極活物質層に対し、前記袋状セパレータを介して前記負極活物質層が対向する状態で交互に積み重ねられた積層構造を有し、かつ前記正極タブ及び前記負極タブの双方が存在するタブ側端面を有する電極組立体を内部に備える蓄電装置の製造方法であって、
前記負極電極及び前記袋状セパレータについて、前記一端縁の対辺を他端縁とし、前記一端縁と他端縁を最短距離で結ぶ直線の延びる方向を高さ方向とした場合、前記蓄電装置は、前記負極電極と前記袋状セパレータの前記一端縁が前記高さ方向に揃う部分を有し、前記負極突出部の表面のうち、前記一端縁に沿う部位を覆う補強層を備え、
前記負極電極と前記袋状セパレータを積み重ねて前記電極組立体を製造する際、前記袋状セパレータの一端縁と前記負極電極の一端縁のうちの前記補強層に沿う部位に位置決め部材を接触させて前記負極電極と前記袋状セパレータを高さ方向に位置合わせすることを特徴とする蓄電装置の製造方法。
【背景技術】
【0002】
EV(Electric Vehicle)やPHV(Plug in Hybrid Vehicle)などの車両には、走行用モータへの供給電力を蓄える蓄電装置としての二次電池が搭載されている。二次電池としては、積層型の電極組立体を備えたものが知られている。積層型の電極組立体は、シート状の正極電極と負極電極を、両者の間をセパレータで絶縁した状態で多数積層して構成されている。正極電極は、正極の金属箔の両面に正極活物質層を有し、負極電極は、負極の金属箔の両面に負極活物質層を有する。
【0003】
また、正極電極は、外部との接続のために金属箔の露出した未塗工部を有し、代表的には、金属箔の一端縁から突出した形状の正極タブを有し、この正極タブに正極端子が導電部材を介して電気的に接続されている。同様に、負極電極は、外部との接続のために金属箔の露出した未塗工部を有し、代表的には、金属箔の一端縁から突出した形状の負極タブを有し、この負極タブに負極端子が導電部材を介して電気的に接続されている。これら正極端子及び負極端子は、一部がケースの蓋体を貫通してケースの外へ突出している。
【0004】
また、二次電池では、正極活物質層と負極活物質層との間に、位置ずれなどにより、正極活物質層と負極活物質層とが対向していない部位が生じると、容量の低下を招く。さらに、リチウムイオン電池では、充電時のリチウムイオンの集中によって発生する負極活物質層の表面への金属リチウムの析出を抑制するために、正極活物質層の面積に比べて負極活物質層の面積を大きくしている。これらのため、電極組立体の製造時、正極活物質層に対し、セパレータを介して負極活物質層が精度良く対向するように位置合わせをしている。
【0005】
ところで、電極組立体の積層構造は、正極電極、負極電極、及びセパレータを、順に積み重ねていく製造工程を経るため、積み重ね工程の数が多くなり、生産のタクトタイムが長く、生産性がよくないという課題があった。そこで、正極電極を袋状セパレータの内部に予め収納し、袋状セパレータと負極電極を積み重ねることで生産性を高める方法が知られている。
【0006】
また、電極組立体の製造方法としては、例えば、特許文献1が挙げられ、特許文献1では、正極電極、セパレータ、及び負極電極を積層した電極組立体を落下させながら、電極組立体を包囲している複数の整列部材を電極組立体に向けて移動させる。そして、電極組立体の側面を整列部材で押すことによって、正極電極、セパレータ、及び負極電極の位置合わせを行っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示の方法では、負極電極における負極タブの突出した金属箔の一端縁が整列部材によって押されたとき、負極電極において、金属箔の一端縁は薄いため、該一端縁付近が変形する虞がある。このような変形は、一時的な撓みであっても、負極電極の移動量が不十分となることがある。
【0009】
本発明の目的は、電極組立体の製造時に、接触により負極電極を移動させる場合において、負極電極が変形することを抑制できる蓄電装置及び蓄電装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題点を解決するための蓄電装置は、矩形シート状の負極金属箔の表面に矩形状の負極活物質層を有するとともに、前記負極活物質層の一対の縁部のうちの一方の縁部から突出した前記負極金属箔によって形成された負極突出部、及び前記一方の縁部からの前記負極突出部の突出方向先端に位置する一端縁から突出した負極タブを有する負極電極と、矩形シート状の正極金属箔の表面に正極活物質層を有するとともに、矩形状の袋状セパレータに収納され、前記袋状セパレータの一端縁から突出した正極タブを有する正極電極とが、前記正極活物質層に対し、前記袋状セパレータを介して前記負極活物質層が対向する状態で交互に積み重ねられた積層構造を有し、かつ前記正極タブ及び前記負極タブの双方が存在するタブ側端面を有する電極組立体を内部に備える蓄電装置であって、前記負極電極及び前記袋状セパレータについて、前記一端縁の対辺を他端縁とし、前記一端縁と他端縁を最短距離で結ぶ直線の延びる方向を高さ方向とした場合、前記負極電極と前記袋状セパレータの前記一端縁が前記高さ方向に揃う部分を有し、前記負極突出部の表面のうち、前記一端縁に沿う部位を覆う補強層を備えることを要旨とする。
【0011】
これによれば、電極組立体において、負極電極における負極突出部の一端縁と、正極電極を収納した袋状セパレータの一端縁とが高さ方向に揃った状態では、正極活物質層に対し、袋状セパレータを介して負極活物質層が対向する。このような電極組立体の製造時、負極電極における負極突出部の一端縁と袋状セパレータの一端縁とを高さ方向に揃えるため、負極突出部の一端縁と袋状セパレータの一端縁に位置決め部材を接触させて負極電極と袋状セパレータを移動させる。このとき、補強層によって負極突出部が補強されているため、位置決め部材が負極突出部の一端縁に接触したときの負極突出部の変形が抑制され、負極電極を移動させるときの移動量不足を抑制できる。
【0012】
また、蓄電装置について、前記負極突出部の表面には、前記負極活物質層及び前記補強層が共存し、前記補強層は、前記負極活物質層よりも前記負極突出部の前記一端縁寄りに位置している。
【0013】
これによれば、負極活物質層によって負極突出部をより補強できる。さらに、位置決め部材が当接する部分は、補強層のみが存在し、負極活物質層は存在しない。よって、位置決め部材が負極活物質層に接触することがなく、位置決め部材との接触によって負極活物質層の一部が、負極活物質層から脱落することがない。
【0014】
また、蓄電装置について、前記負極電極と前記袋状セパレータの積み重ねられた方向を積層方向とすると、前記負極突出部は前記積層方向において前記正極タブと重ならない位置にある。
【0015】
これによれば、負極突出部と正極タブとの接触を抑制できる。
また、蓄電装置について、前記電極組立体はケースに収容され、前記ケースは、前記電極組立体を収容したケース本体と、前記ケース本体の開口部を閉塞する蓋体とを備え、前記負極電極及び前記袋状セパレータについて前記一端縁が延びる方向を長手方向とすると、前記負極タブは前記負極電極における前記長手方向一端側にあり、前記正極タブは前記袋状セパレータにおける前記長手方向他端側にあり、前記負極タブと電気的に接続され、かつ前記長手方向における前記負極タブよりも一端側において前記蓋体に固定された負極端子を有するとともに、前記正極タブと電気的に接続され、かつ前記長手方向における前記正極タブよりも他端側において前記蓋体に固定された正極端子を有し、前記負極突出部は前記高さ方向において前記負極端子及び前記正極端子と重ならない位置にある。
【0016】
これによれば、蓄電装置の製造方法の一つとして、まず、蓋体に負極端子及び正極端子を固定し、蓋端子組立体を製造する。次に、負極端子と負極タブを電気的に接続するとともに正極端子と正極タブを電気的に接続して、蓋端子組立体と電極組立体を一体化する。次に、ケース本体に電極組立体を収容し、さらに、蓋端子組立体を電極組立体に向けて押して、電極組立体をケース本体内に押し込む。このとき、負極突出部は、高さ方向に負極端子及び正極端子と重ならない位置にあるため、蓋端子組立体を電極組立体に向けて押したときに、負極端子又は正極端子が負極突出部に接触することがなく、蓄電装置の製造時に負極突出部が変形することがない。
【0017】
上記問題点を解決するための蓄電装置の製造方法は、矩形シート状の負極金属箔の表面に矩形状の負極活物質層を有するとともに、前記負極活物質層の一対の縁部のうちの一方の縁部から突出した前記負極金属箔によって形成された負極突出部、及び前記一方の縁部からの前記負極突出部の突出方向先端に位置する一端縁から突出した負極タブを有する負極電極と、矩形シート状の正極金属箔の表面に正極活物質層を有するとともに、矩形状の袋状セパレータに収納され、前記袋状セパレータの一端縁から突出した正極タブを有する正極電極とが、前記正極活物質層に対し、前記袋状セパレータを介して前記負極活物質層が対向する状態で交互に積み重ねられた積層構造を有し、かつ前記正極タブ及び前記負極タブの双方が存在するタブ側端面を有する電極組立体を内部に備える蓄電装置の製造方法であって、前記負極電極及び前記袋状セパレータについて、前記一端縁の対辺を他端縁とし、前記一端縁と他端縁を最短距離で結ぶ直線の延びる方向を高さ方向とした場合、前記蓄電装置は、前記負極電極と前記袋状セパレータの前記一端縁が前記高さ方向に揃う部分を有し、前記負極突出部の表面のうち、前記一端縁に沿う部位を覆う補強層を備え、前記負極電極と前記袋状セパレータを積み重ねて前記電極組立体を製造する際、前記袋状セパレータの一端縁と前記負極電極の一端縁のうちの前記補強層に沿う部位に位置決め部材を接触させて前記負極電極と前記袋状セパレータを高さ方向に位置合わせすることを要旨とする。
【0018】
これによれば、電極組立体の製造時、負極電極における負極突出部の一端縁と袋状セパレータの一端縁とを高さ方向に揃えるため、負極突出部の一端縁と袋状セパレータの一端縁に位置決め部材を接触させ、負極電極と袋状セパレータを移動させる。このとき、補強層によって負極突出部が補強されているため、位置決め部材が負極突出部の一端縁に接触したときの負極突出部の変形が抑制され、負極電極を移動させるときの移動量不足を抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電極組立体の製造時に、接触により負極電極を移動させる場合において、負極電極が変形することを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、蓄電装置及び蓄電装置の製造方法を二次電池及び二次電池の製造方法に具体化した一実施形態を
図1〜
図7にしたがって説明する。
図1又は
図2に示すように、二次電池10は、外郭を構成する金属製のケース11を備える。ケース11は、一面に開口部12aを備える有底直方体状のケース本体12と、開口部12aを塞ぐ蓋体13とを備える。ケース11には、電極組立体14及び電解質としての電解液(図示略)が収容されている。二次電池10はリチウムイオン電池である。
【0022】
図3に示すように、電極組立体14は、複数の正極電極21と、複数の負極電極31とが、両者の間に樹脂製の袋状セパレータ27が介在する状態で交互に積み重ねられた積層構造を有する。正極電極21は、正極金属箔(本実施形態ではアルミニウム箔)22と、その正極金属箔22の両面に設けられた矩形状の正極活物質層23と、を有する。正極金属箔22は、矩形シート状の正極金属箔本体22aと、正極金属箔本体22aより一部が延び、突出するように形成された正極タブ22bよりなる。正極活物質層23は、正極金属箔本体22aの両面に同じ平面形状及び同じ厚みで存在し、かつ正極金属箔本体22aを挟んで互いに対向している。
【0023】
正極電極21は、正極活物質層23の長手方向に延びる一対の長縁部のうちの一方の長縁部23aに沿う部分に正極未塗工部22dを有する。正極未塗工部22dは、正極金属箔本体22aにおける正極活物質層23の存在しない部分で形成され、正極金属箔22そのもので形成されている。
【0024】
正極電極21は、長手方向に延びる一端縁に第1端縁21aを備え、第1端縁21aの対辺となる他端縁に第2端縁21bを備える。第1端縁21aは、正極未塗工部22dに存在し、第2端縁21bは正極活物質層23における他方の長縁部に存在する。正極電極21は、第1端縁21aの一部から突出した正極タブ22bを備える。また、正極電極21は、第1端縁21aと第2端縁21bを繋ぐ一対の端縁に第3端縁21cを有する。
【0025】
負極電極31は、負極金属箔(本実施形態では銅箔)32と、その負極金属箔32の両面に設けられた矩形状の負極活物質層33と、負極活物質層33を覆う保護層34と、を有する。保護層34は、正極電極21と負極電極31の短絡を抑制する絶縁性と、袋状セパレータ27よりも高い耐熱性と、を有する。保護層34は、電気的絶縁性を有する保護コート材としての絶縁粒子(本実施形態ではセラミック粒子)と樹脂製のバインダで構成される。
【0026】
負極金属箔32は、矩形シート状の負極金属箔本体32aと、後述するが、負極金属箔本体32aより一部が延び、突出するように形成された負極突出部35、及び負極突出部35から突出する負極タブ32bよりなる。
【0027】
負極活物質層33は、負極金属箔本体32aの両面に同じ平面形状及び同じ厚みで存在する。負極電極31は、負極活物質層33の長手方向に延びる一対の縁部である長縁部のうちの一方の長縁部33aに沿う部分に前述の負極突出部35を有する。負極突出部35は、負極金属箔本体32aのうち、負極活物質層33の一方の長縁部33aに沿った一部から矩形状に突出した部分で形成されている。
【0028】
負極突出部35の長手は、負極活物質層33の長手方向に延びる。負極活物質層33の一方の長縁部33aから負極突出部35が突出する方向を突出方向とすると、負極電極31は、負極突出部35における突出方向の先端縁に一端縁としての第1端縁31aを備え、第1端縁31aの対辺となる他端縁に第2端縁31bを備える。なお、第2端縁31bは、負極活物質層33の一対の長縁部のうちの他方の長縁部に存在する。また、負極電極31は、負極活物質層33の短手方向に延びる一対の端縁に第3端縁31cを備える。
【0029】
負極電極31は、第1端縁31aとなる負極突出部35の先端縁から突出した負極タブ32bを備える。負極タブ32bは、負極突出部35の長手方向の一端側から突出している。負極電極31は、負極突出部35の長手方向他端側に、負極突出部35の先端縁からなる当接縁部37を備える。よって、負極突出部35には、負極タブ32bと当接縁部37が並設されている。
【0030】
図4に示すように、負極突出部35において、突出方向における基端側は負極活物質層33の一部が存在するとともに、その負極活物質層33を覆う保護層34が存在し、2層構造である。よって、負極突出部35の表面のうち、第1端縁31aに沿う部位は保護層34によって覆われている。また、保護層34は、負極タブ32bの根本も覆っており、負極突出部35から負極タブ32bに亘って覆っている。
【0031】
負極突出部35において、突出方向における先端側は保護層34のみの1層構造である。負極突出部35には、突出方向において、負極活物質層33及び保護層34を有する部分と、保護層34のみを有する部分とが共存している。なお、負極突出部35の先端縁は、保護層34及び負極活物質層33で覆われず、金属箔が露出している。そして、負極突出部35の基端側は、負極活物質層33及び保護層34の2層構造により補強され、負極突出部35の先端側は、保護層34の1層構造により補強されている。したがって、負極突出部35の表面のうち当接縁部37に沿う部位は保護層34により補強されており、保護層34が補強層を構成している。
【0032】
図2に示すように、正極電極21及び負極電極31において、負極活物質層33の隣り合う2辺の各辺の長さ(長手方向の長さ及び短手方向の長さ)は、正極活物質層23の隣り合う2辺の各辺の長さ(長手方向の長さ及び短手方向の長さ)よりも長く設定されている。つまり、負極活物質層33は、正極活物質層23の全面を覆うことが可能な大きさに設定されている。
【0033】
図3に示すように、正極電極21は、袋状セパレータ27に収納されている。袋状セパレータ27は矩形状の一対のセパレータ部材28を接合して形成されている。一対のセパレータ部材28は、互いに対峙し、正極電極21の両面を覆う大きさで、かつ同一の大きさである。袋状セパレータ27は、正極電極21の収納部28bを有する。一対のセパレータ部材28は、重ねた状態において、正極電極21の第1端縁21a、第2端縁21b及び第3端縁21cからはみ出すはみ出し部28aを備える。そして、袋状セパレータ27は、一対のセパレータ部材28の四つの端縁に沿うはみ出し部28a同士を熱溶着して形成されるとともに、はみ出し部28aで囲まれた部分に収納部28bを備える。
【0034】
袋状セパレータ27は、正極電極21の第1端縁21aに沿って延びる一端縁に第1端縁27aを備え、第1端縁27aの対辺となり、正極電極21の第2端縁21bに沿って延びる他端縁に第2端縁27bを備える。また、袋状セパレータ27は、第1端縁27aと第2端縁27bを繋ぎ、かつ正極電極21の第3端縁21cに沿って延びる端縁に第3端縁27cを備える。袋状セパレータ27の第1端縁27aの一部から、正極電極21の正極タブ22bが突出している。
【0035】
図2に示すように、袋状セパレータ27の第1端縁27aと第2端縁27bとを最短距離で結ぶ直線Lの延びる方向を高さ方向とし、負極電極31の第1端縁31a(負極突出部35の先端縁)と第2端縁31bとを最短距離で結ぶ直線Lの延びる方向を高さ方向とする。袋状セパレータ27の高さ方向への寸法H1と、負極電極31の高さ方向への寸法H2とは同じである。
【0036】
また、袋状セパレータ27の第1端縁27aに沿う方向を長手方向とし、負極電極31の第2端縁31bに沿う方向を長手方向とすると、袋状セパレータ27の長手方向への寸法と、負極電極31の長手方向への寸法とは同じである。
【0037】
図1に示すように、正極電極21を収納した袋状セパレータ27と、負極電極31とは、正極タブ22bが積層方向に沿って列状に配置され、且つ正極タブ22bと重ならない位置にて負極タブ32bが積層方向に沿って列状に配置されるように積層される。二次電池10は、電極組立体14において、負極電極31の第1端縁31aと袋状セパレータ27の第1端縁27aとが高さ方向に揃った部分を有し、負極電極31の第2端縁31bと袋状セパレータ27の第2端縁27bは高さ方向に揃った部分を有する。
【0038】
また、
図2に示すように、電極組立体14において、負極電極31の第3端縁31cと袋状セパレータ27の第3端縁27cとは長手方向に揃っている。そして、各端縁が揃った状態では、正極活物質層23の全面に対し、袋状セパレータ27のセパレータ部材28を介して負極活物質層33が対向している。
【0039】
電極組立体14は、負極電極31の第1端縁31a及び袋状セパレータ27の第1端縁27aが寄せ集められて形成されたタブ側端面14aを備える。タブ側端面14aには、正極タブ22b及び負極タブ32bの双方が存在する。タブ側端面14aの長手方向は、負極電極31及び袋状セパレータ27の長手方向と一致する。負極タブ32bは、タブ側端面14aの長手方向一端側となる位置に存在し、正極タブ22bは、タブ側端面14aの長手方向他端側となる位置に存在する。
【0040】
タブ側端面14aでは、正極タブ22b及び負極タブ32bは、電極組立体14における積層方向の一端から他端までの範囲内で集められた(束ねられた)状態で折り曲げられている。正極タブ22bが重なっている箇所を溶接することによって正極タブ22bが電気的に接続されるとともに、正極タブ22bには正極導電部材41aが接続されている。
【0041】
正極導電部材41aは、一枚の金属板、例えばアルミニウム板を屈曲させたものであり、クランク形状である。正極導電部材41aは、湾曲部分に対して長手方向一方側に正極タブ側溶接片41bを有し、この正極タブ側溶接片41bに、正極タブ22bが溶接によって接合されている。また、正極導電部材41aは、湾曲部分に対して長手方向他方側に端子側溶接片41cを有し、この端子側溶接片41cに正極端子43が溶接されている。端子側溶接片41cに溶接された正極端子43は、板状の基部43aと、基部43aから突出した極柱部43bとを備える。正極端子43は、蓋体13に固定されるとともに、極柱部43bは蓋体13を貫通してケース11の外側に突出している。
【0042】
また、ケース11内において、正極端子43の基部43aを正極タブ22bと蓋体13との間の隙間から逃がすため、端子側溶接片41cは、タブ側端面14aの長手方向に沿って、正極タブ22bよりも袋状セパレータ27の角部寄りに配置されている。よって、正極端子43は、タブ側端面14aの長手方向において、正極タブ22bより長手方向他端側にある。また、基部43aが、蓋体13に干渉しないようにするため、端子側溶接片41cは、高さ方向において、正極タブ側溶接片41bよりも電極組立体14のタブ側端面14aに近い位置に配置されている。
【0043】
同様に、各負極タブ32bが重なっている箇所を溶接することによって各負極タブ32bが電気的に接続されるとともに、負極タブ32bには、電極組立体14から電気を取り出すための負極導電部材42aが接続されている。負極導電部材42aは、一枚の金属板、例えば銅板を屈曲させたものであり、クランク形状である。負極導電部材42aは、湾曲部分に対して長手方向一方側に負極タブ側溶接片42bを有し、この負極タブ側溶接片42bに、負極タブ32bが溶接によって接合されている。
【0044】
また、負極導電部材42aは、湾曲部分に対して長手方向他方側に端子側溶接片42cを有し、この端子側溶接片42cに負極端子46が溶接されている。端子側溶接片42cに溶接された負極端子46は、板状の基部46aと、基部46aから突出した極柱部46bとを備える。負極端子46は、蓋体13に固定されるとともに、極柱部46bは蓋体13を貫通してケース11の外側に突出している。
【0045】
負極端子46の基部46aを負極タブ32bと蓋体13との間の隙間から逃がすため、端子側溶接片42cは、タブ側端面14aの長手方向に沿って、負極タブ32bよりも袋状セパレータ27の角部寄りに配置されている。よって、負極端子46は、タブ側端面14aの長手方向において、負極タブ32bよりも長手方向一端側にある。また、基部46aが、蓋体13に干渉しないようにするため、端子側溶接片42cは、負極タブ側溶接片42bよりも電極組立体14のタブ側端面14aに近い位置に配置されている。正極端子43及び負極端子46は絶縁リング13bによって蓋体13から絶縁されている。
【0046】
次に、二次電池10の製造方法を作用とともに説明する。
まず、電極組立体14を製造する。
図5(a)〜
図5(c)に示すように、正極電極21を収納した袋状セパレータ27と負極電極31とを積み重ねて電極組立体14を製造する。このとき、袋状セパレータ27及び負極電極31は、位置決め治具60を用いて製造される。位置決め治具60は平面視矩形状の基台61を備える。位置決め治具60は基台61の上面61aから立設された平面視コ字状のガイド62を備える。ガイド62は、位置合わせ時、袋状セパレータ27の第2端縁27b及び負極電極31の第2端縁31bに沿う第1ガイド面62aを備える。また、ガイド62は、位置合わせ時、袋状セパレータ27の一対の第3端縁27c及び負極電極31の第3端縁31cに沿う第2ガイド面62bを備える。第2ガイド面62bは、第1ガイド面62aの長手方向の両端にある。
【0047】
ガイド62の第1ガイド面62aにより、袋状セパレータ27及び負極電極31の高さ方向への移動が規制され、第2ガイド面62bにより、袋状セパレータ27及び負極電極31の長手方向への移動が規制される。
【0048】
図5(a)又は
図5(b)に示すように、位置決め治具60を用いて袋状セパレータ27を位置合わせしながら積み重ねる際、袋状セパレータ27の一対の第3端縁27cを第2ガイド面62bに沿わせ、袋状セパレータ27の長手方向への移動を規制する。また、負極電極31の一対の第3端縁31cを第2ガイド面62bに沿わせ、負極電極31の長手方向への移動を規制する。
【0049】
次に、袋状セパレータ27の第1端縁27aに位置決め部材64を当接させ、位置決め部材64により、袋状セパレータ27を第1ガイド面62aに向けて押圧する。また、負極電極31の当接縁部37に位置決め部材64を当接させ、位置決め部材64により、負極電極31を第1ガイド面62aに向けて押圧する。すると、袋状セパレータ27及び負極電極31が、第2ガイド面62bによって長手方向への移動が規制された状態で、位置決め部材64の接触により第1ガイド面62aに向けて移動し、第2端縁27b,31bが第1ガイド面62aに当接する。
【0050】
その結果、
図5(c)に示すように、袋状セパレータ27及び負極電極31の高さ方向への移動が規制され、袋状セパレータ27の第2端縁27bと、負極電極31の第2端縁31bが揃う状態に位置合わせされる。また、袋状セパレータ27の第1端縁27aと、負極電極31の第1端縁31aが揃う状態に位置合わせされる。その結果、袋状セパレータ27と負極電極31の四つの端縁が揃う状態となる。そして、所定枚数の袋状セパレータ27と負極電極31が積み重ねられると、積層体が形成される。そして、積層体を、積層方向に加圧することで密着させた後、袋状セパレータ27と負極電極31とを図示しないテープなどで固定することにより電極組立体14が製造される。
【0051】
次に、
図6に示すように、電極組立体14における正極タブ22bに正極導電部材41aの正極タブ側溶接片41bを溶接し、その正極導電部材41aの端子側溶接片41cに正極端子43を溶接する。また、負極タブ32bに負極導電部材42aの負極タブ側溶接片42bを溶接した後、負極導電部材42aの端子側溶接片42cに負極端子46を溶接する。次に、正極端子43に絶縁リング13bを装着した状態で、正極端子43を蓋体13に固定するとともに、負極端子46に絶縁リング13bを装着した状態で負極端子46を蓋体13に固定する。
【0052】
その結果、蓋体13と、正極導電部材41aと、負極導電部材42aと、正極端子43と、負極端子46とが一体化されて蓋端子組立体53が構成される。蓋端子組立体53と電極組立体14とは、正極タブ22b及び負極タブ32bによって繋がっている。
【0053】
次に、電極組立体14をケース本体12の開口部12aからケース本体12内に挿入する。
このとき、
図7に示すように、蓋体13を電極組立体14に向けて押し込み、正極タブ22b及び負極タブ32bを曲げる。このとき、蓋端子組立体53において、正極端子43の基部43a及び負極端子46の基部46aは、電極組立体14のタブ側端面14aに向けて突出している。そして、正極端子43の基部43aには端子側溶接片41cが接合され、負極端子46の基部46aには端子側溶接片42cが接合されている。
【0054】
その結果、端子側溶接片41c,42cが袋状セパレータ27の第1端縁27aのうち、長手方向両側の部位に押し当てられる。このとき、負極突出部35は、正極端子43及び端子側溶接片41cと高さ方向に重なった位置になく、負極端子46及び端子側溶接片42cと高さ方向に重なった位置にない。このため、蓋体13を押し込んだとき、負極突出部35に端子側溶接片41c,42cが接触することはない。
【0055】
そして、電極組立体14の底側に位置した袋状セパレータ27の第2端縁27b及び負極電極31の第2端縁31bが、ケース本体12の内底面に当接し、ケース本体12内への電極組立体14の収容が完了する。その後、蓋体13とケース本体12とを接合してケース本体12の開口部12aを閉塞すると、二次電池10の組立が完了する。
【0056】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)負極電極31は、位置決め部材64が当接する当接縁部37を負極突出部35に備える。負極突出部35の表面において、当接縁部37に沿う部位は保護層34によって覆われ、当接縁部37に沿う部位が補強されている。このため、負極突出部35の当接縁部37に位置決め部材64が接触したときの負極突出部35の変形を抑制できる。よって、位置決め部材64を負極電極31に接触させて移動させる場合において、負極電極31の変形による移動量不足を抑制できる。その結果として、負極電極31の第1端縁31aと、袋状セパレータ27の第1端縁27aとを高さ方向に揃えることができ、正極活物質層23を負極活物質層33に精度良く対向させた状態で電極組立体14を製造できる。
【0057】
(2)負極突出部35の補強層は、負極活物質層33を保護する保護層34によって構成されている。保護層34はセラミック粒子をバインダで固めた構成であるため、負極突出部35を効果的に補強し、剛性を向上させることができる。
【0058】
(3)負極突出部35の基端側は、負極活物質層33と保護層34の2層構造によって補強されている。よって、位置決め部材64を当接縁部37に接触させて負極電極31を移動させるとき、負極突出部35の基端側から負極突出部35が変形することを抑制できる。
【0059】
(4)負極突出部35において、当接縁部37に沿う部位は保護層34によって補強されており、当接縁部37に沿う部位には負極活物質層33は存在しない。このため、当接縁部37に位置決め部材64を接触させて負極電極31を移動させるとき、負極活物質が脱落することがない。
【0060】
(5)負極突出部35は、積層方向において正極タブ22bと重ならない位置に存在する。このため、負極突出部35を介して正極電極21と負極電極31が接触し、短絡することがない。よって、負極突出部35を負極活物質層33から突出させる位置を調節することで、負極電極31と袋状セパレータ27の位置合わせを容易としつつ、正極電極21と負極電極31の短絡もない。
【0061】
(6)負極突出部35は、高さ方向において正極端子43及び負極端子46と重ならない位置にある。このため、二次電池10の製造時、蓋端子組立体53によって電極組立体14をケース本体12に押し込む際、正極端子43及び負極端子46を介した端子側溶接片41c,42cによって負極突出部35が押されることがなく、負極突出部35の変形がない。
【0062】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○
図8に示すように、負極突出部35は、負極電極31の長手方向に沿う位置のうち、正極タブ22bを挟んだ両側から突出していてもよい。要は、負極突出部35は、正極タブ22bと積層方向に重ならない位置であれば、負極活物質層33の長縁部33aに沿ういずれの位置から突出していてもよい。そして、負極突出部35は、保護層34によって覆われている。この場合、負極突出部35の表面のうち、全面が保護層34によって覆われていてもよいし、第1端縁31aに沿う部位のみが保護層34によって覆われていてもよい。
【0063】
○ 実施形態において、負極突出部35の表面は負極活物質層33で覆われず、保護層34のみで覆われ、保護層34のみで補強層を構成していてもよい。
○ 補強層は、セラミック製でなく、ポリプロピレン(PP)やポリフェニレンサルファイド(PPS)といった電解液に溶解しない樹脂製であってもよい。
【0064】
○ 実施形態では、コ字状のガイド62によって、負極電極31及び袋状セパレータ27の三つの端縁の位置合わせを行ったが、負極電極31及び袋状セパレータ27の三つの端縁の位置合わせができれば、ガイド62の形状は変更してもよい。
【0065】
○ 二次電池10は、ニッケル水素電池でもよいし、他の二次電池であってもよい。要は、正極用の活物質と負極用の活物質との間をイオンが移動するとともに電荷の授受を行うものであればよい。
【0066】
○ 正極電極21及び負極電極31は、第1端縁21a,31aの延びる方向が長手となる矩形状であったが、第3端縁21c,31cの延びる方向が長手となる矩形状であってもよい。この場合は、正極電極21及び負極電極31の形状に合わせて、ケース11の形状も変更される。
【0067】
○ 蓄電装置は、電極組立体をラミネートフィルムで包んだラミネートセルであってもよい。
○ 蓄電装置は、例えばキャパシタなど、二次電池以外の蓄電装置にも適用可能である。