(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
同一仕様の複数のグリーンタイヤをそれぞれ、配置機構を用いて同一の加硫機に対してタイヤ周方向位置を異ならせて投入して加硫することによりタイヤを製造し、この製造したそれぞれのタイヤについて、ユニフォミティ値またはダイナミックバランス値の少なくとも一方の特性値データと、前記加硫機に投入した際のそれぞれの前記グリーンタイヤの前記加硫機に対するタイヤ周方向位置を特定する投入位置データとを記憶部に記憶しておき、前記記憶部に記憶されている前記特性値データおよび前記投入位置データに基づいて、前記記憶部に記憶されている前記特性値データに関する特性値を許容範囲にさせる前記加硫機に対する前記グリーンタイヤのタイヤ周方向位置を演算部により算出し、新たに加硫する前記グリーンタイヤの前記加硫機に対するタイヤ周方向位置を、前記演算部により算出された前記タイヤ周方向位置に前記配置機構を用いて調整して前記加硫機に投入することを特徴とするタイヤの製造方法。
前記グリーンタイヤのそれぞれを、前記配置機構に対して、所定のタイヤ構成部材のスプライス位置のタイヤ周方向位置を一定にして前記配置機構に配置する請求項1に記載のタイヤの製造方法。
前記グリーンタイヤのそれぞれについてタイヤ側面に予め目印を設定しておき、前記配置機構に前記グリーンタイヤを配置した状態で前記目印を検知して、検知した前記目印に基づいて、前記グリーンタイヤの前記加硫機に対するタイヤ周方向位置を異ならせる操作および前記算出されたタイヤ周方向位置に調整する操作を行う請求項1に記載のタイヤの製造方法。
前記目印と前記目印が付された前記グリーンタイヤの所定のタイヤ構成部材のスプライス位置とのタイヤ周方向相対位置を予め把握しておく請求項3に記載のタイヤの製造方法。
前記配置機構が、前記グリーンタイヤのそれぞれが横倒し状態で載置される受け台を有し、この受け台を載置された前記グリーンタイヤのタイヤ軸心を中心に回転させることにより、前記グリーンタイヤの前記加硫機に対するタイヤ周方向位置を異ならせる操作および前記算出されたタイヤ周方向位置に調整する操作を行う請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤの製造方法。
前記配置機構が、前記グリーンタイヤのそれぞれが横倒し状態で保持されて前記加硫機に投入される移送機を有し、この移送機を保持された前記グリーンタイヤのタイヤ軸心を中心に回転させることにより、前記グリーンタイヤの前記加硫機に対するタイヤ周方向位置を異ならせる操作および前記算出されたタイヤ周方向位置に調整する操作を行う請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のタイヤの製造方法および装置を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0011】
図1に例示する本発明の実施形態では、同一仕様の複数のグリーンタイヤGを同一の加硫機9を用いて加硫することで同一仕様のタイヤTが製造される。本発明により、ユニフォミティ(以下、UFという)およびダイナミックバランス(以下、DBという)の少なくとも一方の特性を改善させて、その特性値(UF値やDB値)を予め設定された許容範囲にしたタイヤTが製造される。この実施形態では、UFおよびDBの両特性を最適な組み合わせにして改善し、UF値およびDB値を許容範囲にした(許容範囲内で最小にした)タイヤTが製造される場合を例にして説明する。
【0012】
この実施形態に用いられる本発明のタイヤの製造装置1は、加硫機9と、加硫機9にグリーンタイヤGを投入するための配置機構11と、配置機構11の動きを制御する制御部4と、制御部4に接続されたコンピュータサーバー2(以下、サーバー2という)とを備えている。サーバー2は、演算部3aと記憶部3bとを有している。演算部3a、記憶部3bとしてはそれぞれ、コンピュータを構成するCPU、メモリを例示できる。記憶部3bには後述するデータベースBsが格納されている。
【0013】
この実施形態では、サーバー2には、UF測定器6、DB測定器7が、それぞれの検知データを入力可能に接続されている。UF測定器6は、製造されたタイヤTの側面にUFマークM1を付与するマーク付与部6aを有している。DB測定器7は、製造されたタイヤTの側面に軽点マークM2を付与するマーク付与部7aを有している。UFマークM1はそのタイヤTにおいてRFV波形データの一次成分が最大値となるタイヤ周方向位置を示し、軽点マークM2はそのタイヤTが最も軽量となるタイヤ周方向位置を示す。
【0014】
図2〜
図4に例示する配置機構11は、グリーンタイヤGが横倒し状態で載置される受け台13と、グリーンタイヤGを横倒し状態で保持する移送機12とを有している。移送機12は所望の任意の位置に移動することができ、例えばグリーンタイヤGを吊り下げて搬送するローダー等が移送機12として用いられる。
【0015】
受け台13は、ベース14に立設された回転軸15aと、回転軸15aを回転させる駆動モータ15bと、回転軸15aに支持された底枠16aおよび枠材16b、16cとを有している。円環板状の底枠16aは、回転軸15aを中心にして放射状に延在する支持フレームによって回転軸15aに連結されている。底枠16aの上方には、複数の円環状の枠材16bが上下に間隔をあけて配置されていて、それぞれの枠材16bと底枠16aとが上下に延在する枠材16cにより連結されている。円環状の枠材16bは上側に位置するに連れて直径が大きくなっていて、底枠16aとそれぞれの枠材16b、16cとによってメッシュ状のボウルが形成されている。受け台13は、このようなボウル形状であることが必須ではなく、横倒し状態のグリーンタイヤGを載置できる仕様であればよい。この実施形態のようにボウル形状の上方がより拡径した形状であると、外径サイズの異なる様々なグリーンタイヤGを横倒し状態で載置し易くなるので汎用性が高くなる。
【0016】
ベース14の上面には、1つの原点検知センサ17aおよび1つの角度検知センサ17bが配置されている。底枠16aの下面には
図4に例示するように、1つの原点マーカ18aが配置されるとともに、周方向に一定間隔をあけて多数の角度マーカ18bが配置されている。原点検知センサ17aおよび原点マーカ18aは、回転軸15aを中心にした同じ半径位置に配置されている。角度検知センサ17bおよびそれぞれの角度マーカ18bは、回転軸15aを中心にした同じ半径位置に配置されている。原点検センサ17aは原点マーカ18aの有無を検知でき、角度検知センサ17bは角度マーカ18bの有無を検知できるものであればよく、例えば光学式センサ等を用いることができる。
【0017】
原点検知センサ17aおよび角度検知センサ17bの検知信号は、制御部4に入力される。この入力された検知信号に基づいて、制御部4は駆動モータ15bの動き(回転および回転停止)制御して回転軸15aを所望の角度だけ回転させる。尚、回転軸15aの中心は、受け台13に横倒し状態で載置されたグリーンタイヤGのタイヤ軸心CLと実質的に同じになる。受け台13の回転機構はこの実施形態に限定されず、横倒し状態で載置されたグリーンタイヤGをタイヤ軸心CLを中心にして所望の角度の位置に回転させることができる機構であればよい。
【0018】
図5に例示するように加硫機9には、加硫用モールド10が取り付けられる。この実施形態では加硫用モールド10は、円環状に配置される多数のセクタモールド10aと、円環状の上側サイドモールド10bおよび下側サイドモールド10cとで構成されたいわゆるセクショナルタイプのモールドになっている。加硫機9に対する加硫用モールド10の取付け位置は予め決定されている。加硫用モールド10としては、この実施形態で例示しているセクショナルタイプに限らず、いわゆる二つ割モールドが使用されることもある。
【0019】
以下、この製造装置1を用いてタイヤTを製造する方法を説明する。同一仕様のタイヤTを同一の加硫機9(加硫用モールド10)を用いて製造するに際して、事前に、同一仕様の複数のグリーンタイヤGを、この加硫機9(加硫用モールド10)を用いて加硫してタイヤTを製造する。事前にタイヤTを製造する際には、グリーンタイヤGの加硫機9(加硫用モールド10)に対するタイヤ周方向位置(タイヤ周方向の配置)は複数通りに異ならせて加硫を行う。
【0020】
複数通りに異ならせるグリーンタイヤGのタイヤ周方向の配置は、タイヤ周方向に等間隔で3通り以上が好ましく、例えば3〜8通り程度にする。加硫機9に対してタイヤ周方向に等間隔で4通りに異ならせてそれぞれのグリーンタイヤGを投入する場合は、それぞれのグリーンタイヤGをタイヤ軸心CLを中心に90°ずつ回転させた配置で加硫機9に投入して加硫用モールド10の中に設置することになる。
【0021】
図6に例示するように、製造されるタイヤT(空気入りタイヤT)は、様々なタイヤ構成部材g(g1〜g7)が積層されて構成されている。具体的には、最内周のインナーライナg1の外周面にカーカスg2が積層されている。カーカスg2は左右一対のビードg3の間に架装されている。カーカスg2の両端部はそれぞれのビードg3のビードコアの周りでタイヤ内側から外側に折り返されている。カーカスg2のタイヤ幅方向中央部にはベルトg5が埋設されていて、ベルトg5の外周面にはベルトカバーg6、トレッドゴムg7が積層されている。トレッドゴムg7のタイヤ幅方向両側のカーカスg2の外周面にはサイドゴムg4が積層されている。グリーンタイヤGの構成部材gは主に未加硫ゴムおよび補強材であり、その他、適宜必要な構成部材gが使用されてタイヤTは構成される。ベルトカバーg6は、ベルトg5の全幅を覆う仕様でなく幅方向の一部を覆う仕様の場合もある。また、ベルトカバーg6を設けない場合もある。
【0022】
図7に例示するように、タイヤTの側面には、UFマークM1がタイヤ軸心CLを中心にしてQRラベルMcに対して時計まわりで角度A1の位置に付されている。軽点マークM2、工場コードマークM3はそれぞれ、角度A2、A3の位置に付されている。このQRラベルMcはそのタイヤTの様々な製造情報を有している(様々な製造情報にアクセスできる)公知のラベルであり、成形されたグリーンタイヤGの側面に付される。工場コードマークM3は、タイヤTを製造した工場を示すものであり加硫の際に刻印される。
【0023】
成形工程では
図8、
図9に例示するように、それぞれのグリーンタイヤG(G1)は、同一の成形機8の成形ドラム8a上でタイヤ構成部材gを貼り合せて成形される。詳述すると、
図8では、成形ドラム8a上にインナーライナg1、カーカスg2、ビードg3、サイドゴムg4等を貼り合せることで、一次グリーンタイヤG1が成形されている。
図9では、成形ドラム8a上で左右一対のビードg3どうしを近接させるとともに、インナーライナg1、カーカスg2およびサイドゴムg4を外周側へ膨出させた一次グリーンタイヤG1の外周面に、ベルトg5、ベルトカバーg6、トレッドゴムg7などを貼り合せてグリーンタイヤGが成形されている。
【0024】
帯状のタイヤ構成部材gは、タイヤ周方向で1か所または複数か所でスプライスされて筒状(環状)に成形される。尚、一次グリーンタイヤG1とグリーンタイヤGとは、同じ1つの成形機8を用いて成形されることも、一次グリーンタイヤG1とグリーンタイヤGは別々の専用の成形機8を用いて成形されることもある。
【0025】
図10では、タイヤ構成部材gを代表して、インナーライナg1、サイドゴムg4、トレッドゴムg7のスプライス位置がそれぞれ、S1、S2、S3で示されている。即ち、インナーライナg1のスプライス位置S1はタイヤ軸心CLを中心にしてQRラベルMcに対して時計まわりで角度a1の位置、サイドゴムg4のスプライス位置S2、トレッドゴムg7のスプライス位置S3はそれぞれ、角度a3、a2の位置になっている。
【0026】
同一仕様のそれぞれのグリーンタイヤGでは、このように主なタイヤ構成部材gのスプライス位置は、タイヤ周方向で同じ配置になる。即ち、それぞれのタイヤ構成部材gのスプライス位置は、予め設定された目印M(この実施形態ではQRラベルMc)に対して、予め設定された所定位置(所定角度)になるようにしてグリーンタイヤGは成形される。
【0027】
成形されたグリーンタイヤGは、配置機構11を経由して加硫機9に投入される。この実施形態では、成形機8側からそれぞれのグリーンタイヤGが、
図11に例示するように移送機12によって受け台13に移送される。移送されたグリーンタイヤGは、
図12に例示するように、受け台13に対して、所定のタイヤ構成部材gのスプライス位置(S1など)のタイヤ周方向位置を、常に一定のタイヤ周方向位置にして受け台13に横倒し状態で載置される。例えば、インナーライナg1のスプライス位置S1(QRラベルMcでも可)のタイヤ周方向位置が、受け台13に設定された基準点に常に一致するようにグリーンタイヤGが受け台13に載置される。
【0028】
グリーンタイヤGを、加硫機9に対してタイヤ周方向に等間隔で4通りに異ならせて投入する場合は、順次、回転軸15aを90°ずつ回転させてそれぞれのグリーンタイヤGのタイヤ周方向位置(配置)を調整する。この実施形態では、原点マーカ18aが原点検知センサ17aにより検知される位置になるまで回転軸15aを回転させて原点合わせをする。この状態で、受け台13に載置された最初のグリーンタイヤGを移送機12によってタイヤ周方向位置を変えずに維持したままで加硫機9まで搬送して加硫機9に投入する。
【0029】
加硫機9では
図13に例示するように、投入されたグリーンタイヤGが、開型した加硫用モールド10の中に設置される。次いで、
図14に例示するように、それぞれのセクタモールド10aをタイヤ軸心CLに近接移動させて、
図15に例示するように加硫用モールド10を閉型する。閉型した加硫用モールド10の中でグリーンタイヤGが所定時間加硫されることでタイヤTが製造される。
【0030】
次に加硫されるグリーンタイヤGは、先のグリーンタイヤGと同様に受け台13に載置される。次いで、原点合わせされている回転軸15aを、原点マーカ18aから90°の位置にある角度マーカ18bが角度検知センサ17bにより検知される位置になるまで回転させる。これにより、このグリーンタイヤGは、先のグリーンタイヤGに対してタイヤ周方向位置が90°ずれた配置になる。次いで、このグリーンタイヤGをタイヤ周方向位置を変えずに維持したままで、移送機12によって加硫機9まで搬送して加硫機9に投入する。その後、先のグリーンタイヤGと同様に加硫されることで次のタイヤTが製造される。その後のグリーンタイヤGについても同様に、回転軸15aを90°ずつ回転させてグリーンタイヤGのタイヤ周方向の配置を異ならせて、そのタイヤ周方向位置を変えずに維持したままで加硫機9に投入し、加硫されることで順次タイヤTが製造される。
【0031】
そして、事前に製造したそれぞれのタイヤTについて、UF値データおよびDB値データを取得して記憶部3bに記憶しておく。このUF値、DB値とはそれぞれの最大値を意味する。また、事前に製造したそれぞれのタイヤTのグリーンタイヤGの加硫機9に投入した際の加硫機9に対するタイヤ周方向位置(タイヤ周方向の配置)を特定する投入位置データを取得して記憶部3bに記憶しておく。
【0032】
UF値データを得るには、タイヤTをUF測定器6にセットして測定を行ってUF波形データを取得する。UF波形データとしては、RFV、LFVなどの波形データ(生波形データ、一次成分波形データ、複次成分波形データなど)が取得される。取得されたUF波形データは、サーバー2に入力されて記憶部3bに記憶される。取得されたUF波形データに基づいて、演算部3aによって、RFV波形データの一次成分が最大値となるタイヤ周方向位置として特定された位置には、マーク付与部6aによってUFマークM1が付される。また、RFV波形データの振幅(最大値)であるUF値が演算部3aにより算出される。
【0033】
DB値データを得るには、タイヤTをDB測定器7にセットして測定を行って行うDBベクトルデータを取得する。取得されたDBベクトルデータは、サーバー2に入力されて記憶部3bに記憶される。取得されたDBベルトルデータに基づいて、演算部3aによって、タイヤTが最軽量となるタイヤ周方向位置として特定された位置には、マーク付与部7aによって軽点マークM2が付される。また、軽点マークM2が付されたタイヤ周方向位置でのDB値(DBベルトルデータの最大ベクトル長さに対応する値)が演算部3aにより算出される。尚、UF波形データとDBベクトルデータを取得する順序は、どちらが先でもよい。
【0034】
次いで、記憶部3bに記憶されている特性値データおよび投入位置データに基づいて、記憶部3bに記憶されている特性値データに関する特性値(即ち、UF値およびDB値)を許容範囲にさせる加硫機9に対するグリーンタイヤGのタイヤ周方向位置が演算部3aにより算出される。ここで、特性値を許容範囲にさせるとは、特性値をより小さくすることであり、設定されている許容範囲内でも最小値にすることが理想である。
【0035】
UF値の値がより小さければUFが優れているので、UF値が許容範囲内であるとの条件下で、それぞれのタイヤTの算出されたUF値を比較する。そして、最小のUF値のタイヤTを製造した際の加硫機9に対するグリーンタイヤGのタイヤ周方向位置が演算部3aにより算出されて特定される。
【0036】
DB値の値がより小さければDBが優れているので、DB値が許容範囲内であるとの条件下で、それぞれのタイヤTの算出されたDB値を比較する。そして、最小のDB値のタイヤTを製造した際の加硫機9に対するグリーンタイヤGのタイヤ周方向位置が演算部3aにより算出されて特定される。
【0037】
UF値、DB値それぞれについての上記の特定された加硫機9に対するグリーンタイヤGのタイヤ周方向位置(タイヤ周方向の配置)が同じであれば、この特定されたタイヤ周方向位置が演算部3aによって最適タイヤ周方向位置として決定される。一方、UF値、DB値それぞれについての上記の特定されたタイヤ周方向位置が異なっている場合もある。このような場合を想定して、例えばUFとDBのうちで改善すべき優先度を予め設定しておく。そして、優先度の高い特性についての上記の特定されたタイヤ周方向位置を最適タイヤ周方向位置として決定することもできる。例えば、DBよりもUFの改善を優先するのであれば、UF値およびDB値が許容範囲内であるとの条件下で、最小のUF値のタイヤTを製造した際の加硫機9に対するグリーンタイヤGのタイヤ周方向位置が、演算部3aによって最適タイヤ周方向位置として決定される。
【0038】
或いは、UF値、DB値それぞれについての上記の特定されたタイヤ周方向位置が異なっている場合は、事前にタイヤTを製造する工程を再度行うこともできる。その際には、加硫機9に対して投入するグリーンタイヤGのタイヤ周方向位置を以前とは相違させる。
【0039】
本発明は、UFだけに注目してUFを改善したタイヤTを製造することもできる。この場合は、UF値が許容範囲内であるとの条件下で、最小のUF値のタイヤTを製造した際の加硫機9に対するグリーンタイヤGのタイヤ周方向位置が、演算部3aによって最適タイヤ周方向位置として決定される。
【0040】
本発明は、DBだけに注目してDBを改善したタイヤTを製造することもできる。この場合は、DB値が許容範囲内であるとの条件下で、最小のDB値のタイヤTを製造した際の加硫機9に対するグリーンタイヤGのタイヤ周方向位置が、演算部3aによって最適タイヤ周方向位置として決定される。
【0041】
上述のとおり事前にタイヤTを製造してデータを取得した後、この加硫機9を用いて、事前に製造したタイヤTと同一仕様のタイヤTを製造する。即ち、事前に加硫したグリーンタイヤGと同一仕様の新たなグリーンタイヤGをこの加硫機9を用いて加硫するが、この際には以下の操作をする。
【0042】
加硫する新たなグリーンタイヤGは、事前に加硫されたグリーンタイヤGと同様に成形され、同様に
図11、
図12に例示するように、受け台13に横倒し状態で載置される。そして、新たに加硫するグリーンタイヤGの加硫機9に対するタイヤ周方向位置を、配置機構11を用いて、上述した最適タイヤ周方向位置に調整して加硫機9に投入する。
【0043】
即ち、新たなグリーンタイヤGが受け台13に載置された後で、回転軸15aを回転させて、新たなグリーンタイヤGの加硫機9に対するタイヤ周方向位置を、上述した最適タイヤ周方向位置に調整する。次いで、このグリーンタイヤGのタイヤ周方向位置を変えずに維持したまま移送機12によって加硫機9まで搬送して加硫機9に投入する。その後、事前に加硫されたグリーンタイヤGと同様に、このグリーンタイヤGが加硫機9によって加硫されることでタイヤTが製造される。
【0044】
この実施形態によれば、事前にタイヤTを製造する際に、配置機構11を使用して、加硫機9に対するグリーンタイヤGのタイヤ周方向位置を異ならせて投入できるので、作業の軽労化を図ることができる。また、事前に製造したタイヤTのUF値またはDB値の少なくとも一方の特性値データとグリーンタイヤGの前記投入位置データとに基づいて、この少なくとも一方の特性値に対する、加硫機9におけるグリーンタイヤGのタイヤ周方向位置による影響度を把握できる。データベースBsには同じ仕様の多数のタイヤTについて、UF値またはDB値の少なくとも一方の特性値データ、グリーンタイヤGの投入位置データ、グリーンタイヤGにおけるタイヤ構成部材gのスプライス位置のタイヤ周方向位置データなどが記憶されている。そのため、この少なくとも一方の特性値を許容範囲に維持できる加硫機9に対するグリーンタイヤGのタイヤ周方向位置(最適タイヤ周方向位置)を、演算部3aの演算によって迅速に精度よく算出できる。
【0045】
その後、新たにグリーンタイヤGを加硫する際には、そのグリーンタイヤGの加硫機9に対するタイヤ周方向位置を、配置機構11を使用して最適タイヤ周方向位置に精度よく調整できる。そして、最適タイヤ周方向位置に調整した状態でこのグリーンタイヤを加硫機9に投入することで、UFとDBの少なくとも一方の特性を改善させたタイヤTを生産性よく製造できる。
【0046】
この実施形態では、受け台13を用いて、加硫機9に対するグリータイヤGの周方向位置を異ならせる操作および調整する操作をしているが、本発明はこれに限定されない。例えば、グリーンタイヤGを横倒し状態で保持する移送機12を、保持しているグリーンタイヤGのタイヤ軸心CLを中心に回転可能な構成にする。そして、グリーンタイヤGを保持している移送機12をそのグリーンタイヤGのタイヤ軸心CLを中心に回転させることにより、事前に加硫するグリーンタイヤGの加硫機9に対するタイヤ周方向位置を異ならせる操作を行うこともできる。また、新たに加硫するグリーンタイヤGを、演算部3aによって算出された最適タイヤ周方向位置に調整する操作を行うこともできる。
【0047】
図16に例示する製造装置1では、グリーンタイヤGの側面を検知対象にする検知機5が制御部4を介してその検知データを入力可能にサーバー2に接続されている。この検知機5のみが
図1に例示した製造装置1と異なっていて、その他の構成は同様である。
【0048】
検知機5は、グリーンタイヤGの側面にある目印(Mc、S1、S2、S3など)の位置を取得する。この実施形態では、グリーンタイヤGの側面視画像を取得するデジタルカメラ(画像取得機)が検知機5として使用されている。画像取得機5の作動は、制御部4によって制御される。
【0049】
この製造装置1を用いたタイヤの製造方法では、配置機構11によって、事前に加硫するグリーンタイヤGの加硫機9に対するタイヤ周方向位置を異ならせる操作、および、その後に加硫する新たなグリーンタイヤGを演算部3aによって算出された最適タイヤ周方向位置に調整する操作が、
図1に例示した製造装置1を用いたタイヤ製造方法とは異なり、その他の操作、手順は同様である。そこで、この相違する操作について説明する。
【0050】
図16に記載された製造装置1では、事前に加硫するグリーンタイヤG、および、その後に加硫する新たなグリーンタイヤGは、移送機12により受け台13まで移送され、横倒し状態でランダムに受け台13に載置される。即ち、移送されたグリーンタイヤGは、受け台13に対して、所定のタイヤ構成部材gのスプライス位置(S1など)のタイヤ周方向位置を、常に一定のタイヤ周方向位置にして受け台13に横倒し状態で載置されるわけではない。
【0051】
そこで、この製造装置1を使用する場合は、グリーンタイヤGのそれぞれに対して、タイヤ側面に基準となるタイヤ周方向位置として予め目印(QRラベルMcやタイヤ構成部材gのスプライス位置など)を設定しておく。そして、配置機構11にグリーンタイヤGを配置した状態で目印を検知して、検知した目印に基づいて、このグリーンタイヤGの加硫機9に対するタイヤ周方向位置を異ならせる操作および演算部3aにより算出されたタイヤ周方向位置(最適タイヤ周方向位置)に調整する操作を行う。
【0052】
具体的には、目印をQRラベルMcとして、画像取得機5によって、横倒し状態で受け台13に載置されているグリーンタイヤGの側面視画像を取得する。この取得した側面視画像に基づいて、目印Mcは、周辺との色の濃淡や彩度の違い等によって検知されて、目印Mcの位置が演算部3aにより算出、特定される。この目印Mcの位置の特定により、受け台13に載置されているグリーンタイヤGのタイヤ周方向位置(配置)が特定される。目印McとグリーンタイヤGの所定のタイヤ構成部材gのスプライス位置とのタイヤ周方向相対位置を予め把握して、そのタイヤ周方向相対位置データを記憶部3bに記憶しておく。
【0053】
受け台13では、特定された目印Mcを基準にして回転軸15aを回転させて、受け台13に載置されたグリーンタイヤGの加硫機9に対するタイヤ周方向位置を異ならせる操作および演算部3aにより算出されたタイヤ周方向位置(最適タイヤ周方向位置)に調整する操作を行う。これにより、グリーンタイヤGの所定のタイヤ構成部材gのスプライス位置を、加硫機9において所望のタイヤ周方向位置に配置できる。
【0054】
或いは、目印をタイヤ構成部材gのスプライス位置(S1、S2、S3など)にして、画像取得機5によって、横倒し状態で受け台13に載置されているグリーンタイヤGの側面視画像を取得する。この取得した側面視画像に基づいて、目印(S1、S2、S3など)の位置が演算部3aにより算出、特定される。この目印(S1、S2、S3など)の位置の特定により、受け台13に載置されているグリーンタイヤGのタイヤ周方向位置(配置)が特定される。
【0055】
受け台13では、特定された目印(S1、S2、S3など)を基準にして回転軸15aを回転させて、受け台13に載置されたグリーンタイヤGの加硫機9に対するタイヤ周方向位置を異ならせる操作および演算部3aにより算出されたタイヤ周方向位置(最適タイヤ周方向位置)に調整する操作を行う。これにより、グリーンタイヤGの所定のタイヤ構成部材gのスプライス位置を、加硫機9において所望のタイヤ周方向位置に配置できる。
【0056】
この製造装置1を用いた場合においても、グリーンタイヤGを横倒し状態で保持する移送機12を、保持しているグリーンタイヤGのタイヤ軸心CLを中心に回転可能な構成にすることもできる。そして、移送機12に保持されているグリーンタイヤGの側面の目印の位置を画像取得機5により取得したグリーンタイヤGの側面視画像に基づいて特定し、移送機12に保持されているグリーンタイヤGのタイヤ周方向位置(配置)を特定することができる。そして、特定した目印に基づいて、移送機12を保持しているグリーンタイヤGのタイヤ軸心CLを中心にして回転させることで、このグリーンタイヤGの加硫機9に対するタイヤ周方向位置を異ならせる操作および演算部3aにより算出されたタイヤ周方向位置(最適タイヤ周方向位置)に調整する操作を行こともできる。