特許第6912004号(P6912004)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6912004
(24)【登録日】2021年7月12日
(45)【発行日】2021年7月28日
(54)【発明の名称】流体制御装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 45/04 20060101AFI20210715BHJP
   F04B 45/047 20060101ALI20210715BHJP
   F16K 7/17 20060101ALI20210715BHJP
   F16K 15/14 20060101ALI20210715BHJP
【FI】
   F04B45/04 D
   F04B45/047 C
   F16K7/17 B
   F16K15/14 A
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-521743(P2020-521743)
(86)(22)【出願日】2019年3月26日
(86)【国際出願番号】JP2019012660
(87)【国際公開番号】WO2019230160
(87)【国際公開日】20191205
【審査請求日】2020年8月31日
(31)【優先権主張番号】特願2018-104273(P2018-104273)
(32)【優先日】2018年5月31日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2018-119430(P2018-119430)
(32)【優先日】2018年6月25日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2018-119431(P2018-119431)
(32)【優先日】2018年6月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸拓
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 雅章
【審査官】 小岩 智明
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/038565(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/063711(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/148103(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/090725(WO,A1)
【文献】 特開2016−113953(JP,A)
【文献】 特開2010−223218(JP,A)
【文献】 特開2004−353638(JP,A)
【文献】 特開昭58−061372(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0023821(US,A1)
【文献】 中国実用新案第206477983(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 45/04−45/053
39/10,43/02−43/073
F16K 7/17,15/14−15/16,
31/02−31/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主板、前記第1主板の一方主面に対向する一方主面を有する第2主板、および、前記第1主板と前記第2主板とを接続する第1側板を備え、前記第1主板、前記第2主板および前記第1側板により形成されたバルブ室を有し、前記第1主板は前記バルブ室の内外を連通する第1通気孔を有し、前記第2主板は前記バルブ室の内外を連通する第2通気孔を有する、バルブと、
前記第1主板の他方主面に対向して配置され、圧電素子が配置された振動板と、前記第1主板と前記振動板とを接続する第2側板とを備え、前記第1主板と前記振動板と前記第2側板により形成されたポンプ室を有し、前記ポンプ室は前記第1通気孔を介して前記バルブ室と連通する、ポンプと、
前記バルブ室内に配置された弁体と、
を備え、
前記第1主板の一方主面から前記第2主板の一方主面を正面視して、
前記バルブ室は、中央領域と、該中央領域を囲む外縁領域とを有し、
前記第1通気孔が前記中央領域に位置し、前記第2通気孔が前記外縁領域に位置する、または、前記第1通気孔が前記外縁領域に位置し、前記第2通気孔が前記中央領域に位置し、
前記弁体は、前記第1通気孔と前記第2通気孔との間に位置し、
前記弁体は、前記外縁領域側の端部または前記中央領域側の端部が振動可能な状態で、前記第1主板または前記第2主板に固定され、前記弁体が固定されていない主板に当接する態様と当接しない態様とを切り替えられる形状である、
流体制御装置。
【請求項2】
第1主板または第2主板における弁体の可動域と対向する領域にはコーティング剤が塗布されている、請求項1に記載の流体制御装置。
【請求項3】
前記コーティング剤のヤング率は、前記第1主板および前記第2主板のヤング率よりも低い、請求項2に記載の流体制御装置。
【請求項4】
前記弁体は、
前記バルブ室の圧力変動によって、前記振動可能な端部が、前記弁体が固定されていない主板に当接する態様と当接しない態様とを切り替えられる形状である、
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の流体制御装置。
【請求項5】
前記弁体の前記振動可能な部分における、前記中央領域と前記外縁領域とを結ぶ方向の長さは、前記第1主板と前記第2主板との距離よりも長い、
請求項4に記載の流体制御装置。
【請求項6】
前記第1通気孔は、前記中央領域に位置し、前記第2通気孔は、前記外縁領域に位置する、
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の流体制御装置。
【請求項7】
前記弁体は、前記中央領域と前記外縁領域のうち、前記第2通気孔が位置する側の領域側の端部が振動可能な状態で、前記第1主板または前記第2主板に固定されている、
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の流体制御装置。
【請求項8】
前記弁体は、環状である、
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の流体制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電体を利用した流体制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電体を利用して、流体を搬送する流体制御装置が、特許文献1に示すように、各種考案されている。
【0003】
特許文献1に示す流体制御装置は、圧電体による振動を利用して、流体を搬送している。流体制御装置のバルブ室内には整流弁がバルブ室内を上下に分割するように形成されている。当該整流弁が振動することによって、バルブ室内流体を一方向に搬送している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/63711号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の流体制御装置の構成では、整流弁は、バルブ室における開口の縁に繰り返し衝突する。このことによって、整流弁が摩耗し、破損する虞がある。
【0006】
したがって、本発明の目的は、整流機能を有し、且つ、信頼性が高い流体制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の流体制御装置は、バルブ、ポンプ、および、弁体を備える。バルブは、第1主板、第1主板の一方主面に対向する一方主面を有する第2主板、および、第1主板と第2主板とを接続する第1側板を備え、第1主板、第2主板および第1側板により形成されたバルブ室を有する。第1主板はバルブ室の内外を連通する第1通気孔を有し、第2主板はバルブ室の内外を連通する第2通気孔を有する。ポンプは、第1主板の他方主面に対向して配置され、圧電素子が配置された振動板と、第2側板とを備え、第1主板と振動板と第2側板により形成されたポンプ室を有する。ポンプ室は第1通気孔を介してバルブ室と連通している。弁体は、バルブ室内に配置されている。
【0008】
第1主板の一方主面から第2主板の一方主面を正面視して、バルブ室は、中央領域と、該中央領域を囲む外縁領域とを有する。第1通気孔がバルブ室の中央領域に位置し、第2通気孔がバルブ室の外縁領域に位置する。または、第1通気孔がバルブ室の外縁領域に位置し、第2通気孔がバルブ室の中央領域に位置する。弁体は、第1通気孔と第2通気孔との間に位置する。弁体は、外縁領域側の端部または中央領域側の端部が振動可能な状態で、第1主板または第2主板に固定されている。
【0009】
この構成では、弁体の振動によって整流が行われるとともに、弁体が第1通気孔および第2通気孔に接触しないため、弁体の摩耗、破損を抑制できる。したがって、信頼性が向上する。
【0010】
また、この発明では、第1主板または第2主板における弁体の可動域と対向する領域にはコーティング剤が塗布されていることが好ましい。
【0011】
この構成では、フィルム弁が第1主板、第2主板と接触することによる損傷が抑えられる。
【0012】
また、この発明では、コーティング剤のヤング率は、第1主板および第2主板のヤング率よりも低いことが好ましい。
【0013】
この構成では、フィルム弁が第1主板または第2主板と接触する際の衝撃が緩和され、フィルム弁の損傷をさらに抑制することができる。
【0014】
また、この発明では、弁体は、バルブ室の圧力変動によって、振動可能な端部が、弁体が固定されていない主板に当接する態様と、当接しない態様とを切り替えられる形状であることが好ましい。
【0015】
この構成では、弁体の振動可能な端部が、弁体の固定されていない主板に当接する態様によって、中央領域と外縁領域との間を遮蔽し、弁体の振動可能な端部が、弁体の固定されていない主板に当接しない態様によって、中央領域と外縁領域との間を連通する。これにより、整流効果が向上する。
【0016】
また、この発明では、弁体の振動可能な部分における、中央領域と外縁領域とを結ぶ方向の長さは、第1主板と第2主板との距離よりも長いことが好ましい。
【0017】
この構成では、弁体の振動可能な端部が、弁体の固定されていない主板に当接する態様を、実現し易い。
【0018】
また、この発明では、第1通気孔は、中央領域に位置し、第2通気孔は、外縁領域に位置することが好ましい。
【0019】
この構成では、ポンプ室における圧力変動が領域に第1通気孔が連通する。したがって、大きな圧力変動で弁体を動作させることができる。
【0020】
また、この発明では、弁体は、中央領域と外縁領域のうち、第2通気孔が位置する側の領域側の端部が振動可能な状態で、第1主板または第2主板に固定されていることが好ましい。
【0021】
この構成では、第1主板が第2主板に近づく期間に、弁体が遮蔽するように動作する。したがって、第1主板の振動による第1主板と第2主板との距離の変動によって、弁体の整流機能を促進できる。
【0022】
また、この発明では、弁体は環状であることが好ましい。この構成では、弁体の上述の機能を実現しながら、簡素な構成によって弁体を実現できる。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、整流機能を有する流体制御装置において、高い信頼性を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る流体制御装置10の分解斜視図である。
図2図2は、本発明の第1の実施形態に係る流体制御装置10の構成を示す断面図である。
図3図3(A)および図3(B)は、フィルム弁14の動作を示す拡大断面図である。
図4図4は、流体制御装置10の動作を模式的に示した図である。
図5図5は、本発明の第2の実施形態に係る流体制御装置10Aの構成を示す断面図である。
図6図6(A)および図6(B)は、フィルム弁14Aの動作を示す拡大断面図である。
図7図7は、本発明の第3の実施形態に係る流体制御装置10Bの構成を示す断面図である。
図8図8(A)および図8(B)は、のフィルム弁14Bの動作を示す拡大断面図である。
図9図9(A)、図9(B)は、振動板16の形状例を示す平面図である。
図10図10(A)、図10(B)は、第1主板11の形状例を示す平面図である。
図11図11は、第2主板12の形状を示す平面図である。
図12図12は、本発明の第1の実施形態の変形例に係る流体制御装置10Cの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る流体制御装置について、図を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る流体制御装置10の分解斜視図である。図2は、本発明の第1の実施形態に係る流体制御装置10の構成を示す断面図である。なお、以下の各実施形態に示す各図においては、説明を分かり易くするために、それぞれの構成要素の形状を部分的または全体として誇張して記載している。
【0026】
図1図2に示すように、流体制御装置10は、バルブ110、ポンプ120を備える。
【0027】
まず、ポンプ120の構造について説明する。ポンプ120は、図1に示すように、バルブ110を構成する第1主板11を一つの構成要素として形成されている。ポンプ120は、第1主板11、振動板16、圧電素子17、第2側板18で形成されている。
【0028】
第2側板18は、第1主板11側から平面視(正面視)して、円筒状である。また、第2側板18は、第1主板11と振動板16との間に配置されており、第1主板11と振動板16とを接続している。より具体的には、平面視において、第1主板11と振動板16との中心は一致している。第2側板18は、このように配置された第1主板11と振動板16における周縁を全周に亘って接続している。
【0029】
振動板16には、複数の第3通気孔161が、振動板16を貫通するように形成されている。複数の第3通気孔161は、振動板16の中心から等距離となる円環状に配置されている。
【0030】
この構成によって、ポンプ120は、第1主板11、振動板16および第2側板18によって囲まれる中空領域からなるポンプ室125を有する。ポンプ室125は、第1通気孔111、第3通気孔161に連通している。
【0031】
圧電素子17は、円板の圧電体と駆動用の電極とによって構成されている。駆動用の電極は、円板の圧電体における両主面に形成されている。
【0032】
圧電素子17は、振動板16におけるポンプ室125側と反対側、すなわち、ポンプ120の外側に配置されている。この際、平面視において、圧電素子17の中心と、振動板16の中心とは略一致している。
【0033】
圧電素子17は、図示しない制御部に接続されている。該制御部は、交流電圧を生成し、圧電素子17に印加する。それによって圧電素子17が伸縮するため、振動板16が屈曲振動する。圧電素子17に印加される交流電圧の周波数が流体制御装置10の共振周波数に近い時、振動板16の屈曲振動が大きくなる。
【0034】
このように、振動板16が屈曲振動することによって、ポンプ室125の体積が変動する。そのため、ポンプ室125内の流体の圧力が変動する。その結果、第1通気孔111または第3通気孔161において、流体の流入及び流出が周期的に繰り返される。
【0035】
また、振動板16の屈曲振動が第2側板18を介して第1主板11に伝わり、第1主板11も屈曲振動する。第1主板11は、振動板16とは逆方向に振動する。すなわち、振動板16が図面で上方向に変形した時は第1主板11が下方向に変形し、振動板16が下方向に変形した時は第1主板11が上方向に変形する。第1主板11のこのような屈曲振動により、ポンプ室125の体積変動が増大するため、第1通気孔111または第3通気孔161における、流体の流入及び流出が増大する。
【0036】
振動板16は例えば、外径φ17mm、厚み0.4mmのステンレススチールである。第2側板18は外径φ17.7mm、内径φ13.1mm、厚み0.2mmのステンレススチールである。第1主板11は、外径φ17mm、厚み0.45mmのステンレススチールである。圧電素子17に印加される交流電圧の周波数は21kHzである。振動板16や第2側板18、第1主板11は、アルミ合金やマグネシウム合金、銅、モリブデンでも良い。
【0037】
次に、バルブ110の構造について説明する。バルブ110は、第1主板11、第2主板12、第1側板13、フィルム弁14、および、接合部材15を備える。フィルム弁14は、本発明の「弁体」に対応する。
【0038】
図1に示すように、第1主板11および第2主板12は、円板状である。また、第1側板13は、円筒状である。第2主板12は、例えば外径φ18mm、厚み0.15mmで、第1側板13は外径φ17.5mm、内径φ13.5mmである。第1側板13の厚みは120μm以下であれば良いが、より好ましくは、50μm以下である。その場合、フィルム弁による開閉が容易で、整流効果が向上する。また、第2主板12および第1側板13は、第1主板11と同様、ステンレススチールやアルミ合金、マグネシウム合金、銅、モリブデンなどの金属製であり、高い剛性を有する。
【0039】
第1側板13は、第1主板11と第2主板12との間に配置されており、第1主板11と第2主板12とを対向するように接続している。より具体的には、平面視において、第1主板11と第2主板12との中心は一致している。第1側板13は、このように配置された第1主板11と第2主板12における周縁を全周に亘って接続している。
【0040】
第1主板11は、第1通気孔111が第1主板11の略中心を貫通するように形成されている。なお、第1通気孔111は、第1主板11の略中心に複数個形成されていてもよい。
【0041】
第2主板12は、第2通気孔121を有する。第2通気孔121は、第2主板12を貫通するように形成されており、第2主板12におけるそれぞれに異なる外端付近に形成されている。言い換えれば、第2通気孔121は、第2主板12の全周に亘って円環状に形成されている。なお、第2通気孔121は、第2主板12の外端付近に形成された1個であってもよい。
【0042】
なお、第1側板13は、第1主板11、または、第2主板12と一体形成されていてもよい。すなわち、第1主板11、または、第2主板12は、中央がくぼんだ、凹部形状であってもよい。
【0043】
この構成によって、バルブ110は、第1主板11、第2主板12および第1側板13によって囲まれる中空領域からなるバルブ室115を有する。また、バルブ室115は、第1通気孔111に連通するとともに、第2通気孔121に連通している。
【0044】
フィルム弁14は、円環形状をしており、第2主板12のバルブ室115側の面に配置されている。
【0045】
フィルム弁14は、金属箔、樹脂フィルム等、軽量で可撓性の高い材料で形成されている。なお、フィルム弁14は、ポリイミド膜であると、耐湿性が高いため、特によい。フィルム弁14は、例えば、フィルム弁14の厚みは、5μmであり、外径(直径)は5.9mm、内径(直径)は4.9mmである。
【0046】
フィルム弁14は、円環形状の接合部材15を用いて、第2主板12に接合されている。より具体的には、フィルム弁14における円環形の内端側の所定幅の部分は、接合部材15によって第2主板12に接合されており、外端側の領域は接合されていない。すなわち、フィルム弁14は、外端側の所定面積の領域が振動可能な状態で、第2主板12に接合されている。接合部材15は、例えば外径がφ5.5mm、内径がφ5.0mmで、厚みが17μmである。
【0047】
なお、フィルム弁14振動可能な部分における、中央領域から外縁領域に向かう方向の長さ(内端側から外端側に向かう方向の長さ)Lは、第1主板11と第2主板12との距離(第1主板11と第2主板12における互い対向する主面間の距離)D以上であることが好ましい。これにより、フィルム弁14の外端を第1主板11に当接させることが容易になる。さらには、例えば、長さLを距離Dの2倍以上にすることが好ましい。これにより、当接する態様をさらに実現し易い。さらには、例えば、長さLを距離Dの50倍以下とすることが好ましい。これにより、当接する態様と当接しない態様とを、実現し易い。なお、ここでの距離Dは、第1主板11の振動状態を加味して、フィルム弁14を当接させる態様では、この状態での第1主板11と第2主板12との距離(例えば、最も第1主板11と第2主板12とが近づく時の距離)に基づいて設定すればよい。
【0048】
第1通気孔111は、平面視において、フィルム弁14の外端によって囲まれる中央領域に配置されている。第2通気孔121は、同じく平面視において、フィルム弁14の外端より外側の外縁領域に配置されている。
【0049】
このような構成において、フィルム弁14は、振動板16の屈曲振動に応じて、次に示すように動作をする。図3(A)および図3(B)は、フィルム弁14の動作を示す拡大断面図である。なお、図3(A)、図3(B)では、第1主板11の変位の図示を省略している。
【0050】
(中央領域:相対的高圧、外縁領域:相対的低圧)
振動板16がポンプ室125側に移動中、すなわち、振動板16と第1主板11が接近中の期間は、第1通気孔111付近の圧力が上昇する。そのため、図3(A)に示すように、平面視におけるバルブ室115の中央領域が、バルブ室115の外縁領域よりも高圧(相対的高圧)になる。
【0051】
この場合、図3(A)に示すように、フィルム弁14の外縁側の領域は、第2主板12側に湾曲し、第1主板11から離間する。これにより、バルブ室115の中央領域と外縁領域とは連通し、中央領域に貯められた流体は、外縁領域に搬送され、第2通気孔121から吐出される。
【0052】
この際、フィルム弁14は、第1主板11から離間しているので、流体の搬送を阻害しない。なお、この期間には、第3通気孔161からも流体が流出するが、この流出する流体の流量は、後述の図3(B)の期間において、第3通気孔161から流入する流体の流量よりも少ない。
【0053】
(中央領域:相対的低圧、外縁領域:相対的高圧)
振動板16がポンプ室125側と逆側に移動中、すなわち、振動板16と第1主板11とが離間中の期間は、第1通気孔111付近の圧力が低下する。そのため、図3(B)に示すように、平面視におけるバルブ室115の中央領域が、バルブ室115の外縁領域よりも低圧(相対的低圧)になる。
【0054】
この場合、図3(B)に示すように、フィルム弁14の外縁側の領域は、第1主板11側に湾曲し、第1主板11の表面に当接する。これにより、バルブ室115の中央領域と外縁領域とは遮蔽される。したがって、外縁側から中央領域への流体の逆流が抑制され、第3通気孔161からポンプ室125へ流体が流入する。この期間の流入する流体の流量は、第1通気孔111における流入が少ない分、図3(A)の期間における第3通気孔161からの流出量よりも多い。
【0055】
(連続動作)
このように、第2通気孔121においては、図3(A)の期間の流出量が多く、図3(B)の期間の流入量は少ない。そのため、図3(A)の期間と図3(B)の期間との繰り返しによる連続動作によって、第2通気孔121からは流体が流出する。
【0056】
それに対して、第3通気孔161においては、図3(A)の期間の流出量は少なく、図3(B)の期間の流入量は多い。そのため、図3(A)の期間と図3(B)の期間との繰り返しによる連続動作によって、第3通気孔161からは流体が流入する。
【0057】
これにより、図3(A)の期間と図3(B)の期間との繰り返しによる連続動作によって、流体は、第3通気孔161から流入し、第2通気孔121から流出する。
【0058】
より具体的には、流体制御装置10は、図4に示す動作を周期的に繰り返す。図4の各ステート(ST1−ST8)における矢印は、流体の流動方向、および、流量を模式的に示している。この周期動作において、フィルム弁14は、第1通気孔111および第2通気孔121に接触しない。したがって、フィルム弁14の摩耗や破損は、生じ難い。
【0059】
また、本実施形態の構成では、第1通気孔111が第1主板11の中央領域に配置されている。このため、第1通気孔111は、ポンプ室125における体積変動すなわち圧力変動が大きな領域に配置されている。したがって、大きな圧力変動で、フィルム弁14を動作させることができ、整流効果が向上する。
【0060】
また、本実施形態の構成では、フィルム弁14の内端側(中央領域側)が固定されている。このため、第1主板11の振動によって、第1主板11と第2主板12とが近づく期間に、フィルム弁14は、第1主板11側に変形する。したがって、フィルム弁14は、第1主板11に当接し易くなり、素早く遮蔽状態を実現できる。これにより、フィルム弁14による整流機能は促進される。
【0061】
なお、本実施形態では、フィルム弁14の内端を接合部材15で固定する態様を示したが、フィルム弁14の内端と接合部材15の側面とは、面一にしなくてもよい。すなわち、フィルム弁14の内端から外端側へズレた位置で、接合部材15によって、第2主板12に接合されていてもよい。
【0062】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る流体制御装置について、図を参照して説明する。図5は、本発明の第2の実施形態に係る流体制御装置10Aの構成を示す断面図である。
【0063】
図5に示すように、第2の実施形態に係る流体制御装置10Aは、第1の実施形態に係る流体制御装置10に対して、フィルム弁14Aの固定構造において異なる。流体制御装置10Aの他の構成は、流体制御装置10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0064】
フィルム弁14Aは、フィルム弁14と同様の構成からなる。フィルム弁14Aにおける円環形の外端側の所定幅の部分は、接合部材15Aによって第2主板12に接合されており、内端側の領域は接合されていない。これにより、フィルム弁14Aは、内端側の所定面積の領域が振動可能な状態で、第2主板12に接合されている。
【0065】
このような構成において、フィルム弁14Aは、振動板16の屈曲振動に応じて、次に示すように動作をする。図6(A)および図6(B)は、フィルム弁14Aの動作を示す拡大断面図である。なお、図6(A)、図6(B)では、第1主板11の変位の図示を省略している。
【0066】
(中央領域:相対的高圧、外縁領域:相対的低圧)
振動板16がポンプ室125側に移動中、すなわち、振動板16と第1主板11が接近中の期間は、第1通気孔111付近の圧力が上昇する。そのため、図6(A)に示すように、平面視におけるバルブ室115の中央領域が、バルブ室115の外縁領域よりも高圧(相対的高圧)になる。
【0067】
この場合、図6(A)に示すように、フィルム弁14Aの内端側の領域は、第1主板11側に湾曲し、第1主板11の表面に当接する。これにより、バルブ室115の中央領域と外縁領域とは遮蔽される。したがって、バルブ室115の中央領域から外縁側への流体の逆流が抑制され、ポンプ室125内の流体は、第3通気孔161から外部へ流出する。この期間に第3通気孔161から流出する流体の流量は、後述の図6(B)の期間において、第3通気孔161からポンプ室125内に流入する流体の流量よりも多い。
【0068】
(中央領域:相対的低圧、外縁領域:相対的高圧)
振動板16がポンプ室125側と逆側に移動中、すなわち、振動板16と第1主板11とが離間中の期間は、第1通気孔111付近の圧力が低下する。そのため、図6(B)に示すように、平面視におけるバルブ室115の中央領域が、バルブ室115の外縁領域よりも低圧(相対的低圧)になる。
【0069】
この場合、図6(B)に示すように、フィルム弁14の内縁側の領域は、第2主板12側に湾曲し、第1主板11から離間する。これにより、バルブ室115の中央領域と外縁領域とは連通し、第2通気孔121から流入した流体は、バルブ室115の外縁領域から中央領域に搬送される。
【0070】
この際、フィルム弁14は、第1主板11から離間しているので、流体の搬送を阻害しない。なお、この期間には、第3通気孔161からも流体が流入するが、この流入する流体の流量は、図6(A)の期間において、第3通気孔161から流出する流体の流量よりも少ない。
【0071】
(連続動作)
このように、第2通気孔121においては、図6(A)の期間の流出量が少なく、図6(B)の期間の流入量は多い。そのため、図6(A)の期間と図6(B)の期間との繰り返しによる連続動作によって、流体は、第2通気孔121から流入する。
【0072】
それに対して、第3通気孔161においては、図6(A)の期間の流出量は多く、図6(B)の期間の流入量は少ない。そのため、図6(A)の期間と図6(B)の期間との繰り返しによる連続動作によって、第3通気孔161からは流体が流出する。
【0073】
これにより、図6(A)の期間と図6(B)の期間との繰り返しによる連続動作によって、流体は、第2通気孔121から流入し、第3通気孔161から流出する。
【0074】
そして、この周期動作において、フィルム弁14Aは、第1通気孔111および第2通気孔121に接触しない。したがって、フィルム弁14Aの摩耗や破損は、生じ難い。
【0075】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る流体制御装置について、図を参照して説明する。図7は、本発明の第3の実施形態に係る流体制御装置10Bの構成を示す断面図である。
【0076】
図7に示すように、第3の実施形態に係る流体制御装置10Bは、第1の実施形態に係る流体制御装置10に対して、第1通気孔111B、第2通気孔121B、フィルム弁14Bにおいて異なる。流体制御装置10Bの他の構成は、流体制御装置10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0077】
第1通気孔111Bは、複数である。複数の第1通気孔111Bは、第1主板11の中心から等距離となる円環状に配置されている。第2通気孔121Bは、複数である。複数の第2通気孔121Bは、第2主板12の中心から等距離となる円環状に配置されている。
【0078】
フィルム弁14Bは、フィルム弁14と同様の構成からなる。フィルム弁14Bにおける円環形の外端側の所定幅の部分は、接合部材15Bによって第2主板12に接合されており、内端側の領域は接合されていない。これにより、フィルム弁14Bは、内端側の所定面積の領域が振動可能な状態で、第2主板12に接合されている。
【0079】
複数の第2通気孔121Bは、平面視において、フィルム弁14Bの外端によって囲まれる領域内に配置され、複数の第1通気孔111Bは、平面視において、フィルム弁14Bの外端によって囲まれる領域よりも外方に配置される。
【0080】
このような構成において、フィルム弁14Bは、振動板16の屈曲振動に応じて、次に示すように動作をする。図8(A)および図8(B)は、フィルム弁14Bの動作を示す拡大断面図である。なお、図8(A)、図8(B)では、振動板16の変位の図示を省略している。
【0081】
(中央領域:相対的低圧、外縁領域:相対的高圧)
振動板16がポンプ室125側に移動中、すなわち、振動板16と第1主板11が接近中の期間は、第1通気孔111B付近の圧力が上昇する。そのため、図8(A)に示すように、平面視におけるバルブ室115の外縁領域が、バルブ室115の中央領域よりも高圧(相対的高圧)になる。
【0082】
この場合、図8(A)に示すように、フィルム弁14Bの内縁側の領域は、第2主板12側に湾曲し、第1主板11から離間する。これにより、バルブ室115の中央領域と外縁領域とは連通し、外縁領域の流体は、中央領域に搬送され、第2通気孔121Bから吐出される。
【0083】
この際、フィルム弁14Bは、第1主板11から離間しているので、流体の搬送を阻害しない。なお、この期間には、第3通気孔161からも流体が流出するが、この流出する流体の流量は、後述の図8(B)の期間において、第3通気孔161から流入する流体の流量よりも少ない。
【0084】
(中央領域:相対的高圧、外縁領域:相対的低圧)
振動板16がポンプ室125側と逆側に移動中、すなわち、振動板16と第1主板11とが離間中の期間は、第1通気孔111B付近の圧力が低下する。そのため、図8(B)に示すように、平面視におけるバルブ室115の中央領域が、バルブ室115の外縁領域よりも高圧(相対的高圧)になる。
【0085】
この場合、図8(B)に示すように、フィルム弁14Bの内縁側の領域は、第1主板11側に湾曲し、第1主板11の表面に当接する。これにより、バルブ室115の中央領域と外縁領域とは遮蔽される。したがって、中央領域から外縁側への流体の逆流が抑制され、第3通気孔161からポンプ室125へ流体が流入する。この期間の流入する流体の流量は、第1通気孔111Bにおける流入が少ない分、図8(A)の期間における第3通気孔161からの流出量よりも多い。
【0086】
(連続動作)
このように、第2通気孔121Bにおいては、図8(A)の期間の流出量が多く、図8(B)の期間の流入量は少ない。そのため、図8(A)の期間と図8(B)の期間との繰り返しによる連続動作によって、流体は第2通気孔121Bから流出する。
【0087】
それに対して、第3通気孔161においては、図8(A)の期間の流出量は少なく、図8(B)の期間の流入量は多い。そのため、図8(A)の期間と図8(B)の期間との繰り返しによる連続動作によって、第3通気孔161からは流体が流入する。
【0088】
これにより、図8(A)の期間と図8(B)の期間との繰り返しによる連続動作によって、流体は、第3通気孔161から流入し、第2通気孔121Bから流出する。
【0089】
そして、この周期動作において、フィルム弁14Bは、第1通気孔111Bおよび第2通気孔121Bに接触しない。したがって、フィルム弁14Bの摩耗や破損は、生じ難い。
【0090】
なお、上述における振動板、第1主板、および、第2主板は、例えば、次に示す形状を利用できる。以下では、第1の実施形態に係る流体制御装置10おける各種形状を示すが、他の実施形態に係る流体制御装置に対しても、第1の実施形態で用いる概念と同じ概念を利用して、各種の形状を採用できる。
【0091】
図9(A)、図9(B)は、振動板16の形状例を示す平面図である。
【0092】
図9(A)に示す形状では、16個の第3通気孔161が形成されている。16個の第3通気孔161は、振動板16の中心Coから等距離となる円周上に配置されている。言い換えれば、16個の第3通気孔161は、振動板16の中心Coを基準点として、円環状に配置されている。16個の第3通気孔161は、所定の間隔をおいて配置されている。
【0093】
図9(B)に示す形状では、2個の第3通気孔161が形成されている。2個の第3通気孔161は、中心Coから等距離に配置されている。
【0094】
なお、第3通気孔161の個数および形成位置は、図9(A)、図9(B)に示すものに限らない。
【0095】
図10(A)、図10(B)は、第1主板11の形状例を示す平面図である。
【0096】
図10(A)に示す形状では、1個の第1通気孔111が形成されている。1個の第1通気孔111は、第1主板11の中心Coに形成されている。
【0097】
図10(B)に示す形状では、4個の第1通気孔111が形成されている。4個の第1通気孔111は、第1主板11の中心Coから等距離となる円周上に配置されている。第1通気孔111は、第1主板11の中心Coの近傍に配置されていることが好ましい。
【0098】
なお、第1通気孔111の個数および形成位置は、図10(A)、図10(B)に示すものに限らない。
【0099】
図11は、第2主板12の形状を示す平面図である。
【0100】
図11に示す形状では、16個の第2通気孔121が形成されている。16個の第2通気孔121は、第2主板12の中心Coから等距離となる円周上に配置されている。言い換えれば、16個の第2通気孔121は、第2主板12の中心Coから等距離となる円環状に配置されている。16個の第2通気孔121は、所定の間隔をおいて配置されている。
【0101】
第1通気孔111が中心Coからずれている場合、第2通気孔121の配置される円の径は、第1通気孔111と中心Coとの距離(第1通気孔111が円環状に配置されている場合は、その円の径)よりも大きい。
【0102】
なお、第2通気孔121の個数および形成位置は、図11に示すものに限らない。
【0103】
また、フィルム弁は、複数の扇形のフィルムを部分的に重ねて、全周に亘るように配置する態様であってもよい。
【0104】
また、上述の説明では、フィルム弁を第2主板に固定する構成を示したが、第1主板に固定することも可能である。
【0105】
また、上述の説明では、フィルム弁が当接する態様と当接しない態様とによって、整流効果を生じている。しかしながら、フィルム弁の振動によって、フィルム弁の配置位置における第1主板11と第2主板12との距離を制御して、流路抵抗等を制御することで、整流効果を生じることも可能である。ただし、フィルム弁が当接する態様と当接しない態様とを用いることによって、より高い整流効果を得ることができる。
【0106】
(変形例)
図12は、本発明の第1の実施形態の変形例に係る流体制御装置10Cの構成を示す断面図である。第1の実施形態にかかる流体制御装置10に対し、コーティング剤200が塗布されている点で異なる。流体制御装置10Cの他の構成は、流体制御装置10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0107】
図12に示すように、コーティング剤200は、第1主板11のフィルム弁14の可動域と対向する領域、および第2主板12のフィルム弁14の可動域と対向する領域に塗布されている。
【0108】
このように構成にすることで、フィルム弁14が第1主板11、第2主板12と接触することによる損傷を抑えられる。
【0109】
なお、コーティング剤200の主成分は、シリコーンゴム、PTFEのように、第1主板11、第2主板12よりヤング率の低い樹脂であれば良い。これらのコーティング剤は、ヤング率が低いため、フィルム弁14が第1主板11、または第2主板12に接触する際の衝撃を緩和し、フィルム弁14の損傷を抑制することができる。
【0110】
なお、コーティング剤200は、フッ素もしくは2硫化モリブデンを主成分とするものがさらに好ましい。これらのコーティング剤の表面は、潤滑性を有するため、フィルム弁14第1主板11との摩擦によるフィルム弁14の損傷も抑制できる。さらにフィルム弁14と第2主板12との摩擦によるフィルム弁14の損傷も抑制できる。
【0111】
なお、コーティング剤200は、第1主板11、第2主板12の一方に塗布されている場合も同様の効果が得られる。
【0112】
なお、上述の各実施形態の構成は、適宜組合せが可能であり、それぞれの組合せに応じた作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0113】
ST1、ST2、ST3、ST4、ST5、ST6、ST7、ST8…ステート
10、10A、10B、10C…流体制御装置
1…第1主板
12…第2主板
13…第1側板
14、14A、14B…フィルム弁
15、15A、15B…接合部材
16…振動板
17…圧電素子
18…第2側板
110…バルブ
111、111B…第1通気孔
115…バルブ室
120…ポンプ
121、121B…第2通気孔
125…ポンプ室
161…第3通気孔
200…コーティング剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12