特許第6912009号(P6912009)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6912009
(24)【登録日】2021年7月12日
(45)【発行日】2021年7月28日
(54)【発明の名称】樹脂基板および樹脂基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20210715BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20210715BHJP
【FI】
   H05K1/02 F
   H05K3/46 T
   H05K3/46 G
【請求項の数】29
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2020-557829(P2020-557829)
(86)(22)【出願日】2019年11月28日
(86)【国際出願番号】JP2019046631
(87)【国際公開番号】WO2020111191
(87)【国際公開日】20200604
【審査請求日】2021年3月10日
(31)【優先権主張番号】特願2018-223384(P2018-223384)
(32)【優先日】2018年11月29日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 亮介
【審査官】 ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−176013(JP,A)
【文献】 特開2014−090041(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/174931(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向し、いずれか一方が直交X,Y,Z座標のX軸方向およびY軸方向に平行な第1主面および第2主面を有する、絶縁基材を備え、
前記絶縁基材は、X軸方向に配列される第1部分および第2部分に分けられ、
前記第1部分は、Z軸方向に三等分したときに、最も前記第1主面側に位置する第1領域と、最も前記第2主面側に位置する第2領域と、前記第1領域および前記第2領域に挟まれる第3領域と、を有し、
前記第1領域のY軸方向における樹脂の分子配向度は、前記絶縁基材の前記第2部分のY軸方向における樹脂の分子配向度よりも高い、樹脂基板。
【請求項2】
前記第3領域のY軸方向における樹脂の分子配向度は、前記絶縁基材の前記第2部分のY軸方向における樹脂の分子配向度よりも高い、請求項1に記載の樹脂基板。
【請求項3】
前記第1領域のY軸方向における樹脂の分子配向度は、前記第2領域のY軸方向における樹脂の分子配向度、および前記第3領域のY軸方向における樹脂の分子配向度よりも高く、
前記第3領域のY軸方向における樹脂の分子配向度は、前記第2領域のY軸方向における樹脂の分子配向度よりも高い、請求項2に記載の樹脂基板。
【請求項4】
前記第2領域のX軸方向における樹脂の分子配向度は、前記絶縁基材の前記第2部分のX軸方向における樹脂の分子配向度よりも高い、請求項1に記載の樹脂基板。
【請求項5】
互いに対向し、いずれか一方が直交X,Y,Z座標のX軸方向およびY軸方向に平行な第1主面および第2主面を有する、絶縁基材を備え、
前記絶縁基材は、X軸方向に配列される第1部分および第2部分に分けられ、
前記第1部分は、Z軸方向に三等分したときに、最も前記第1主面側に位置する第1領域と、最も前記第2主面側に位置する第2領域と、前記第1領域および前記第2領域に挟まれる第3領域と、を有し、
前記第2領域のX軸方向における樹脂の分子配向度は、前記絶縁基材の前記第2部分のX軸方向における樹脂の分子配向度よりも高い、樹脂基板。
【請求項6】
前記第3領域のX軸方向における樹脂の分子配向度は、前記絶縁基材の前記第2部分のX軸方向における樹脂の分子配向度よりも高い、請求項4に記載の樹脂基板。
【請求項7】
前記第2領域のX軸方向における樹脂の分子配向度は、前記第1領域のX軸方向における樹脂の分子配向度、および前記第3領域のX軸方向における樹脂の分子配向度よりも高く、
前記第3領域のX軸方向における樹脂の分子配向度は、前記第1領域のX軸方向における樹脂の分子配向度よりも高い、請求項6に記載の樹脂基板。
【請求項8】
前記絶縁基材は、前記第1部分にZ軸方向に曲げられた曲げ部を有する、請求項1から7のいずれかに記載の樹脂基板。
【請求項9】
前記第2部分の樹脂の分子配向度は、X軸方向およびY軸方向に等方性である、請求項1から8のいずれかに記載の樹脂基板。
【請求項10】
前記第2部分に設けられる実装電極をさらに備える、請求項9に記載の樹脂基板。
【請求項11】
前記第2部分に設けられた層間接続導体を備える、請求項9または10に記載の樹脂基板。
【請求項12】
前記絶縁基材は、光配向性ポリマーを含む、請求項1から11のいずれかに記載の樹脂基板。
【請求項13】
前記絶縁基材は、熱可塑性樹脂からなる複数の樹脂層を積層して形成される、請求項1から12のいずれかに記載の樹脂基板。
【請求項14】
前記第3領域の比誘電率は、前記第1領域または前記第2領域の比誘電率よりも低い、請求項13に記載の樹脂基板。
【請求項15】
前記絶縁基材に形成される信号線をさらに備え、
前記信号線の少なくとも一部は、前記第3領域に配置される、請求項14に記載の樹脂基板。
【請求項16】
前記絶縁基材の形成されるグランド導体をさらに備え、
前記グランド導体の少なくとも一部は、前記第1領域または前記第2領域に配置される、請求項14または15に記載の樹脂基板。
【請求項17】
互いに対向し、いずれか一方が直交X,Y,Z座標のX軸方向およびY軸方向に平行な第1主面および第2主面を有する、絶縁基材を備え、
前記絶縁基材は、X軸方向に配列される第1部分および第2部分に分けられ、
前記第1部分は、Z軸方向に三等分したときに、最も前記第1主面側に位置する第1領域と、最も前記第2主面側に位置する第2領域と、前記第1領域および前記第2領域に挟まれる第3領域と、を有し、
前記第1領域のY軸方向におけるヤング率は、前記第2部分のY軸方向におけるヤング率よりも大きく、
前記第1領域のX軸方向におけるヤング率は、前記第2部分のX軸方向におけるヤング率よりも小さい、樹脂基板。
【請求項18】
互いに対向し、いずれか一方が直交X,Y,Z座標のX軸方向およびY軸方向に平行な第1主面および第2主面を有する、絶縁基材を備え、
前記絶縁基材は、X軸方向に配列される第1部分および第2部分に分けられ、
前記第1部分は、Z軸方向に三等分したときに、最も前記第1主面側に位置する第1領域と、最も前記第2主面側に位置する第2領域と、前記第1領域および前記第2領域に挟まれる第3領域と、を有し、
前記第2領域のX軸方向におけるヤング率は、前記第2部分のX軸方向におけるヤング率よりも大きく、
前記第2領域のY軸方向におけるヤング率は、前記第2部分のY軸方向におけるヤング率よりも小さい、樹脂基板。
【請求項19】
前記絶縁基材は、前記第1部分にZ軸方向に曲げられた曲げ部を有する、請求項17または18に記載の樹脂基板。
【請求項20】
互いに対向し、いずれか一方が直交X,Y,Z座標のX軸方向およびY軸方向に平行な第1主面および第2主面を有する、絶縁基材を備え、
前記絶縁基材は、X軸方向に配列される第1部分、第2部分および第3部分に分けられ、
前記第1部分および前記第3部分は、Z軸方向に三等分したときに、最も前記第1主面側に位置する第1領域と、最も前記第2主面側に位置する第2領域と、前記第1領域および前記第2領域に挟まれる第3領域と、を有し、
前記第1部分の前記第1領域のY軸方向における樹脂の分子配向度は、前記絶縁基材の前記第2部分のY軸方向における樹脂の分子配向度よりも高く、
前記第3部分の前記第2領域のY軸方向における樹脂の分子配向度は、前記絶縁基材の前記第2部分のY軸方向における樹脂の分子配向度よりも高い、樹脂基板。
【請求項21】
互いに対向し、いずれか一方が直交X,Y,Z座標のX軸方向およびY軸方向に平行な第1主面および第2主面を有する、絶縁基材を備え、
前記絶縁基材は、X軸方向に配列される第1部分、第2部分および第3部分に分けられ、
前記第1部分および前記第3部分は、Z軸方向に三等分したときに、最も前記第1主面側に位置する第1領域と、最も前記第2主面側に位置する第2領域と、前記第1領域および前記第2領域に挟まれる第3領域と、を有し、
前記第1部分の前記第2領域のX軸方向における樹脂の分子配向度は、前記絶縁基材の前記第2部分のX軸方向における樹脂の分子配向度よりも高く、
前記第3部分の前記第1領域のX軸方向における樹脂の分子配向度は、前記絶縁基材の前記第2部分のX軸方向における樹脂の分子配向度よりも高い、樹脂基板。
【請求項22】
互いに対向し、いずれか一方が直交X,Y,Z座標のX軸方向およびY軸方向に平行な第1主面および第2主面を有し、X軸方向に配列される第1部分および第2部分に分けられる絶縁基材を備え、前記第1部分は、Z軸方向に三等分したときに、最も前記第1主面側に位置する第1領域と、最も前記第2主面側に位置する第2領域と、前記第1領域および前記第2領域に挟まれる第3領域と、を有する、樹脂基板の製造方法であって、
樹脂層のうち、後に前記絶縁基材の前記第1領域となる部分に、光またはレーザを照射して樹脂分子をY軸方向に配向する、第1分子配向工程と、
前記第1分子配向工程の後に、Y軸方向に配向した前記樹脂層を含む複数の樹脂層を積層し、前記複数の樹脂層を加熱プレスすることにより、前記絶縁基材を形成するとともに、前記第1領域のY軸方向における樹脂の分子配向度を、前記絶縁基材の前記第2部分のY軸方向における樹脂の分子配向度よりも高くする、第1絶縁基材形成工程と、
を有する、樹脂基板の製造方法。
【請求項23】
前記樹脂層は、光配向性ポリマーが含まれ、
前記第1分子配向工程は、前記第1領域となる部分を有する前記樹脂層に、Y軸方向に偏光された光を照射する工程を含む、請求項22に記載の樹脂基板の製造方法。
【請求項24】
互いに対向し、いずれか一方が直交X,Y,Z座標のX軸方向およびY軸方向に平行な第1主面および第2主面を有し、X軸方向に配列される第1部分および第2部分に分けられる絶縁基材を備え、前記第1部分は、Z軸方向に三等分したときに、最も前記第1主面側に位置する第1領域と、最も前記第2主面側に位置する第2領域と、前記第1領域および前記第2領域に挟まれる第3領域と、を有する、樹脂基板の製造方法であって、
樹脂層のうち、後に前記絶縁基材の前記第2領域となる部分に、光またはレーザを照射して樹脂分子をX軸方向に配向する、第2分子配向工程と、
前記第2分子配向工程の後に、X軸方向に配向した前記樹脂層を含む複数の樹脂層を積層し、前記複数の樹脂層を加熱プレスすることにより、前記絶縁基材を形成するとともに、前記第2領域のX軸方向における樹脂の分子配向度を、前記絶縁基材の前記第2部分のX軸方向における樹脂の分子配向度よりも高くする、第1絶縁基材形成工程と、
を有する、樹脂基板の製造方法。
【請求項25】
前記樹脂層は、光配向性ポリマーが含まれ、
前記第2分子配向工程は、前記第2領域となる部分を有する前記樹脂層に、X軸方向に偏光した光を照射する工程を含む、請求項24に記載の樹脂基板の製造方法。
【請求項26】
互いに対向し、いずれか一方が直交X,Y,Z座標のX軸方向およびY軸方向に平行な第1主面および第2主面を有し、X軸方向に配列される第1部分および第2部分に分けられる絶縁基材を備え、前記第1部分は、Z軸方向に三等分したときに、最も前記第1主面側に位置する第1領域と、最も前記第2主面側に位置する第2領域と、前記第1領域および前記第2領域に挟まれる第3領域と、を有する、樹脂基板の製造方法であって、
前記絶縁基材を形成する、第2絶縁基材形成工程と、
前記第2絶縁基材形成工程の後に、後に前記第1領域となる部分に、前記第1主面から光またはレーザを照射して、前記第1領域のY軸方向における樹脂の分子配向度を、前記絶縁基材の前記第2部分のY軸方向における樹脂の分子配向度よりも高くする、第3分子配向工程と、
を有する、樹脂基板の製造方法。
【請求項27】
前記絶縁基材には、光配向性ポリマーが含まれ、
前記第3分子配向工程は、前記絶縁基材の前記第1領域となる部分に、Y軸方向に偏光された光を照射する工程を含む、請求項26に記載の樹脂基板の製造方法。
【請求項28】
互いに対向し、いずれか一方が直交X,Y,Z座標のX軸方向およびY軸方向に平行な第1主面および第2主面を有し、X軸方向に配列される第1部分および第2部分に分けられる絶縁基材を備え、前記第1部分は、Z軸方向に三等分したときに、最も前記第1主面側に位置する第1領域と、最も前記第2主面側に位置する第2領域と、前記第1領域および前記第2領域に挟まれる第3領域と、を有する、樹脂基板の製造方法であって、
前記絶縁基材を形成する、第2絶縁基材形成工程と、
前記第2絶縁基材形成工程の後に、後に前記第2領域となる部分に、前記第2主面から光またはレーザを照射して、前記第2領域のX軸方向における樹脂の分子配向度を、前記絶縁基材の第2部分のX軸方向における樹脂の分子配向度よりも高くする、第4分子配向工程と、
を有する、樹脂基板の製造方法。
【請求項29】
前記絶縁基材には、光配向性ポリマーが含まれ、
前記第4分子配向工程は、前記絶縁基材の前記第2領域となる部分に、X軸方向に偏光された光を照射する工程を含む、請求項28に記載の樹脂基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂基板に関し、特に絶縁基材を備える樹脂基板、およびその樹脂基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス繊維に樹脂を含浸させた材料を含む樹脂基板が知られている。例えば、特許文献1には、一方向に配向したガラス繊維を含んだ強化樹脂層を有する、複数の樹脂層を積層して形成された樹脂基板が開示されている。一方向に配向したガラス繊維を含んだ強化樹脂層は、ガラス繊維が配向する配向方向と、配向方向に直交する方向とで、弾性率や線膨張係数が大きく異なる。上記樹脂基板では、複数の樹脂層に含まれるガラス繊維の配向の組み合わせによって、所望の方向に曲げやすい樹脂基板を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2008/056500号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の樹脂基板では、ガラス繊維が強化樹脂層全体に含まれるため、所望の方向に曲げやすい樹脂基板を形成した場合には、曲げる部分と曲げたくない部分とで物性差がないため、樹脂基板全体が曲がりやすくなる。つまり、接続部等の曲げたくない部分も曲がりやすくなるため、他の回路基板等に対する樹脂基板の実装性が低下する虞がある。
【0005】
本発明の目的は、面方向に配置された第1部分と第2部分とを有する絶縁基材を備える構成において、第1部分を曲げる場合でも第2部分の変形等を抑制した樹脂基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の樹脂基板は、
互いに対向し、いずれか一方が直交X,Y,Z座標のX軸方向およびY軸方向に平行な第1主面および第2主面を有する、絶縁基材を備え、
前記絶縁基材は、X軸方向に配列される第1部分および第2部分に分けられ、
前記第1部分は、Z軸方向に三等分したときに、最も前記第1主面側に位置する第1領域と、最も前記第2主面側に位置する第2領域と、前記第1領域および前記第2領域に挟まれる第3領域と、を有し、
前記第1領域のY軸方向における樹脂の分子配向度は、前記絶縁基材の前記第2部分のY軸方向における樹脂の分子配向度よりも高いことを特徴とする。
【0007】
素体の樹脂分子がY軸方向に配向している場合、樹脂分子の配向が等方性である素体に比べて、Y軸方向のヤング率が大きくなり、且つ、Y軸方向に直交するX軸方向のヤング率が小さくなる。上記構成によれば、第1領域のY軸方向における樹脂の分子配向度が、絶縁基材の第2部分のY軸方向における樹脂の分子配向度よりも高い。そのため、第1部分を曲げたときにX軸方向に引っ張り応力が掛かる第1領域が、第2部分よりも引っ張り変形しやすくなり、絶縁基材の第1部分は第2部分よりもX軸方向に曲げやすい。
【0008】
また、素体の樹脂分子がY軸方向に配向している場合、樹脂分子の配向が等方性である素体に比べて、Y軸方向における線膨張係数は小さく、Y軸方向に直交するX軸方向における線膨張係数は大きい。上記構成によれば、第1領域のX軸方向における線膨張係数が、第2部分のX軸方向における線膨張係数よりも大きい。そのため、絶縁基材を加熱した際(加熱を伴う絶縁基材の曲げ加工時等)に、Z軸方向における線膨張係数差により絶縁基材の第1部分は第2部分よりもX軸方向に曲げやすい。
【0009】
本発明の樹脂基板は、
互いに対向し、いずれか一方が直交X,Y,Z座標のX軸方向およびY軸方向に平行な第1主面および第2主面を有する、絶縁基材を備え、
前記絶縁基材は、X軸方向に配列される第1部分および第2部分に分けられ、
前記第1部分は、Z軸方向に三等分したときに、最も前記第1主面側に位置する第1領域と、最も前記第2主面側に位置する第2領域と、前記第1領域および前記第2領域に挟まれる第3領域と、を有し、
前記第2領域のX軸方向における樹脂の分子配向度は、前記絶縁基材の前記第2部分のX軸方向における樹脂の分子配向度よりも高いことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、第1部分を曲げたときにX軸方向に圧縮応力が掛かる第2領域が、絶縁基材の第2部分よりも圧縮変形しやすく、絶縁基材の第1部分は第2部分よりも曲げやすい。
【0011】
また、この構成により、樹脂基板を加熱した際に、絶縁基材の第1部分は第2部分よりも曲げやすい。
【0012】
本発明の樹脂基板は、
互いに対向し、いずれか一方が直交X,Y,Z座標のX軸方向およびY軸方向に平行な第1主面および第2主面を有する、絶縁基材を備え、
前記絶縁基材は、X軸方向に配列される第1部分および第2部分に分けられ、
前記第1部分は、Z軸方向に三等分したときに、最も前記第1主面側に位置する第1領域と、最も前記第2主面側に位置する第2領域と、前記第1領域および前記第2領域に挟まれる第3領域と、を有し、
前記第1領域のY軸方向におけるヤング率は、前記第2部分のY軸方向におけるヤング率よりも大きく、
前記第1領域のX軸方向におけるヤング率は、前記第2部分のX軸方向におけるヤング率よりも小さいことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、第1部分を曲げたときにX軸方向に引っ張り応力が掛かる第1領域が、第2部分よりも引っ張り変形しやすくなり、絶縁基材の第1部分は第2部分よりもX軸方向に曲げやすい。
【0014】
本発明の樹脂基板は、
互いに対向し、いずれか一方が直交X,Y,Z座標のX軸方向およびY軸方向に平行な第1主面および第2主面を有する、絶縁基材を備え、
前記絶縁基材は、X軸方向に配列される第1部分および第2部分に分けられ、
前記第1部分は、Z軸方向に三等分したときに、最も前記第1主面側に位置する第1領域と、最も前記第2主面側に位置する第2領域と、前記第1領域および前記第2領域に挟まれる第3領域と、を有し、
前記第2領域のX軸方向におけるヤング率は、前記第2部分のX軸方向におけるヤング率よりも大きく、
前記第2領域のY軸方向におけるヤング率は、前記第2部分のY軸方向におけるヤング率よりも小さいことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、第1部分を曲げたときにX軸方向に圧縮応力が掛かる第2領域が、絶縁基材の第2部分よりも圧縮変形しやすく、絶縁基材の第1部分は第2部分よりも曲げやすい。
【0016】
本発明の樹脂基板は、
互いに対向し、いずれか一方が直交X,Y,Z座標のX軸方向およびY軸方向に平行な第1主面および第2主面を有する、絶縁基材を備え、
前記絶縁基材は、X軸方向に配列される第1部分、第2部分および第3部分に分けられ、
前記第1部分および前記第3部分は、Z軸方向に三等分したときに、最も前記第1主面側に位置する第1領域と、最も前記第2主面側に位置する第2領域と、前記第1領域および前記第2領域に挟まれる第3領域と、を有し、
前記第1部分の前記第1領域のY軸方向における樹脂の分子配向度は、前記絶縁基材の前記第2部分のY軸方向における樹脂の分子配向度よりも高く、
前記第3部分の前記第2領域のY軸方向における樹脂の分子配向度は、前記絶縁基材の前記第2部分のY軸方向における樹脂の分子配向度よりも高いことを特徴とする。
【0017】
本発明の樹脂基板は、
互いに対向し、いずれか一方が直交X,Y,Z座標のX軸方向およびY軸方向に平行な第1主面および第2主面を有する、絶縁基材を備え、
前記絶縁基材は、X軸方向に配列される第1部分、第2部分および第3部分に分けられ、
前記第1部分および前記第3部分は、Z軸方向に三等分したときに、最も前記第1主面側に位置する第1領域と、最も前記第2主面側に位置する第2領域と、前記第1領域および前記第2領域に挟まれる第3領域と、を有し、
前記第1部分の前記第2領域のX軸方向における樹脂の分子配向度は、前記絶縁基材の前記第2部分のX軸方向における樹脂の分子配向度よりも高く、
前記第3部分の前記第1領域のX軸方向における樹脂の分子配向度は、前記絶縁基材の前記第2部分のX軸方向における樹脂の分子配向度よりも高いことを特徴とする。
【0018】
樹脂基板に第1部分とは逆向きに折り曲げられる部分がある場合には、上記第3部分をさらに備えていてもよい。
【0019】
本発明の樹脂基板の製造方法は、
互いに対向し、いずれか一方が直交X,Y,Z座標のX軸方向およびY軸方向に平行な第1主面および第2主面を有し、X軸方向に配列される第1部分および第2部分に分けられる絶縁基材を備え、前記第1部分は、Z軸方向に三等分したときに、最も前記第1主面側に位置する第1領域と、最も前記第2主面側に位置する第2領域と、前記第1領域および前記第2領域に挟まれる第3領域と、を有する、樹脂基板の製造方法であって、
樹脂層のうち、後に前記絶縁基材の前記第1領域となる部分に、光またはレーザを照射して樹脂分子をY軸方向に配向する、第1分子配向工程と、
前記第1分子配向工程の後に、Y軸方向に配向した前記樹脂層を含む複数の樹脂層を積層し、前記複数の樹脂層を加熱プレスすることにより、前記絶縁基材を形成するとともに、前記第1領域のY軸方向における樹脂の分子配向度を、前記絶縁基材の前記第2部分のY軸方向における樹脂の分子配向度よりも高くする、第1絶縁基材形成工程と、
を有することを特徴とする。
【0020】
本発明の樹脂基板の製造方法は、
互いに対向し、いずれか一方が直交X,Y,Z座標のX軸方向およびY軸方向に平行な第1主面および第2主面を有し、X軸方向に配列される第1部分および第2部分に分けられる絶縁基材を備え、前記第1部分は、Z軸方向に三等分したときに、最も前記第1主面側に位置する第1領域と、最も前記第2主面側に位置する第2領域と、前記第1領域および前記第2領域に挟まれる第3領域と、を有する、樹脂基板の製造方法であって、
樹脂層のうち、後に前記絶縁基材の前記第2領域となる部分に、光またはレーザを照射して樹脂分子をX軸方向に配向する、第2分子配向工程と、
前記第2分子配向工程の後に、X軸方向に配向した前記樹脂層を含む複数の樹脂層を積層し、前記複数の樹脂層を加熱プレスすることにより、前記絶縁基材を形成するとともに、前記第2領域のX軸方向における樹脂の分子配向度を、前記絶縁基材の前記第2部分のX軸方向における樹脂の分子配向度よりも高くする、第1絶縁基材形成工程と、
を有することを特徴とする。
【0021】
本発明の樹脂基板の製造方法は、
互いに対向し、いずれか一方が直交X,Y,Z座標のX軸方向およびY軸方向に平行な第1主面および第2主面を有し、X軸方向に配列される第1部分および第2部分に分けられる絶縁基材を備え、前記第1部分は、Z軸方向に三等分したときに、最も前記第1主面側に位置する第1領域と、最も前記第2主面側に位置する第2領域と、前記第1領域および前記第2領域に挟まれる第3領域と、を有する、樹脂基板の製造方法であって、
前記絶縁基材を形成する、第2絶縁基材形成工程と、
前記第2絶縁基材形成工程の後に、後に前記第1領域となる部分に、前記第1主面から光またはレーザを照射して、前記第1領域のY軸方向における樹脂の分子配向度を、前記絶縁基材の前記第2部分のY軸方向における樹脂の分子配向度よりも高くする、第3分子配向工程と、
を有することを特徴とする。
【0022】
本発明の樹脂基板の製造方法は、
互いに対向し、いずれか一方が直交X,Y,Z座標のX軸方向およびY軸方向に平行な第1主面および第2主面を有し、X軸方向に配列される第1部分および第2部分に分けられる絶縁基材を備え、前記第1部分は、Z軸方向に三等分したときに、最も前記第1主面側に位置する第1領域と、最も前記第2主面側に位置する第2領域と、前記第1領域および前記第2領域に挟まれる第3領域と、を有する、樹脂基板の製造方法であって、
前記絶縁基材を形成する、第2絶縁基材形成工程と、
前記第2絶縁基材形成工程の後に、後に前記第2領域となる部分に、前記第2主面から光またはレーザを照射して、前記第2領域のX軸方向における樹脂の分子配向度を、前記絶縁基材の前記第2部分のX軸方向における樹脂の分子配向度よりも高くする、第4分子配向工程と、
を有することを特徴とする。
【0023】
これらの製造方法によれば、絶縁基材の第1部分を曲げる場合でも第2部分の変形等を抑制した樹脂基板を容易に製造できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、面方向に配置された第1部分と第2部分とを有する絶縁基材を備える構成において、第1部分を曲げる場合でも第2部分の変形等を抑制した樹脂基板を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は第1の実施形態に係る樹脂基板101の外観斜視図である。
図2図2は樹脂基板101の正面図である。
図3図3は樹脂基板101の分解平面図である。
図4図4は第1の実施形態に係る電子機器301の主要部の断面図である。
図5図5は積層前の樹脂層13aの製造工程を順に示す断面図である。
図6図6は樹脂基板101の製造工程を順に示す断面図である。
図7図7は第2の実施形態に係る樹脂基板102の外観斜視図である。
図8図8は樹脂基板102の正面図である。
図9図9は樹脂基板102の分解平面図である。
図10図10は積層前の樹脂層11bの製造工程を順に示す断面図である。
図11図11は樹脂基板102の製造工程を順に示す断面図である。
図12図12(A)は第3の実施形態に係る樹脂基板103の外観斜視図であり、図12(B)は樹脂基板103の断面図である。
図13図13は樹脂基板103の分解平面図である。
図14図14(A)は第4の実施形態に係る樹脂基板104の外観斜視図であり、図14(B)は樹脂基板104の断面図である。
図15図15は樹脂基板104の分解平面図である。
図16図16は、第1部分F1が曲げ加工された樹脂基板104Aの正面図である。
図17図17は樹脂基板104の製造工程を順に示す断面図である。
図18図18は第5の実施形態に係る電子機器302の主要部を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以降、図を参照して幾つかの具体的な例を挙げて、本発明を実施するための複数の形態を示す。各図中には同一箇所に同一符号を付している。要点の説明または理解の容易性を考慮して、便宜上実施形態を分けて示すが、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能である。第2の実施形態以降では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0027】
《第1の実施形態》
図1は第1の実施形態に係る樹脂基板101の外観斜視図である。図2は樹脂基板101の正面図である。図3は樹脂基板101の分解平面図である。図3では、構造を分かりやすくするため、信号線40をドットパターンで示している。
【0028】
樹脂基板101は、絶縁基材10A、信号線40、グランド導体51,52,53、層間接続導体V11,V12,VG1,VG2,VG3、実装電極P11,P12、グランド電極PG1,PG2および保護層1等を備える。
【0029】
絶縁基材10Aは、長手方向がX軸方向に一致する直方体状の樹脂(熱可塑性樹脂)素体であり、互いに対向する第1主面VS1および第2主面VS2を有する。第1主面VS1および第2主面VS2は、X軸方向およびY軸方向に平行な面である。
【0030】
絶縁基材10Aの第2主面VS2には、実装電極P11,P12、グランド導体51および保護層1が形成されている。実装電極P11,P12およびグランド電極PG1,PG2は、第2主面VS2に露出している。また、絶縁基材10Aの内部には、信号線40、グランド導体52,53および層間接続導体V11,V12,VG1,VG2が形成されている。
【0031】
絶縁基材10Aは、少なくとも一部が曲げ加工される第1部分F1(後に詳述する。)と、第1部分F1以外の第2部分F2A,F2Bと、に分けられる。絶縁基材10Aでは、+X方向に第2部分F2A、第1部分F1および第2部分F2Bの順に配列されている。
【0032】
また、図2に示すように、第1部分F1は、第1領域R1、第2領域R2および第3領域R3を有する。第1領域R1は、第1部分F1をZ軸方向に三等分(図2に示す分割線DL1,DL2で第1部分F1をZ軸方向に等分)したときに、最も第1主面VS1側に位置する部分である。また、第2領域R2は、第1部分F1をZ軸方向に三等分したときに、最も第2主面VS2側に位置する部分であり、第3領域R3は第1領域R1および第2領域R2に挟まれる部分である。
【0033】
絶縁基材10Aは、樹脂(熱可塑性樹脂)からなる複数の樹脂層11a,12a,13aがこの順に積層されて形成される。複数の樹脂層11a,12a,13aは、それぞれ長手方向がX軸方向に一致する矩形の平板である。樹脂層11a,12a,13aは、例えば液晶ポリマー(LCP)またはポリイミド(PI)に、光配向性ポリマーを加えた樹脂シートである。光配向性ポリマーは、例えばビニルシンナメート系ポリマー、カルコン系ポリマー、アゾ系ポリマー、ポリアミド系ポリマー等である。
【0034】
樹脂層11aの裏面には、実装電極P11,P12およびグランド導体51が形成されている。実装電極P11は、樹脂層11aの第1端(図3における樹脂層11aの左端)付近に配置される矩形の導体パターンである。実装電極P12は、樹脂層11aの第2端(図3における樹脂層11aの右端)付近に配置される矩形の導体パターンである。グランド導体51は、樹脂層11aの略全面に形成される矩形の導体パターンである。実装電極P11,P12およびグランド導体51は、例えばCu箔等の導体パターンである。また、樹脂層11aには、層間接続導体V11,V12および複数の層間接続導体VG1,VG2が形成されている。
【0035】
樹脂層12aの裏面には、信号線40およびグランド導体52が形成されている。信号線40は、伝送方向(X軸方向)に延伸する線状の導体パターンである。グランド導体52は、樹脂層12aの略全面に形成される矩形の導体パターンである。信号線40およびグランド導体52は、例えばCu箔等の導体パターンである。また、樹脂層12aには、複数の層間接続導体VG2が形成されている。
【0036】
樹脂層13aの裏面には、グランド導体53が形成されている。グランド導体53は、樹脂層13aの略全面に形成された矩形の導体パターンである。グランド導体53は、例えばCu箔等の導体パターンである。
【0037】
保護層1は、樹脂層11aの裏面に積層される保護膜であり、平面形状が樹脂層11aと略同じである。保護層1は、実装電極P11,P12の位置に応じた位置にそれぞれ開口OP11,OP12を有する。そのため、樹脂層11aの裏面(絶縁基材10Aの第2主面VS2)に保護層1が形成された場合でも、上記開口OP11,OP12から実装電極P11,P12が外部に露出する。また、保護層1は、グランド導体51の位置に応じた位置に複数の開口OG1,OG2を有する。そのため、樹脂層11aの裏面に保護層1が形成された場合でも、上記開口OG1,OG2からグランド導体51の一部が外部に露出する。本実施形態では、開口OG1から露出するグランド導体51の一部が「グランド電極PG1」であり、開口OG2から露出するグランド導体51の一部が「グランド電極PG2」である。保護層1は、例えばポリイミド(PI)やポリエチレンテレフタレート(PET)等のカバーレイフィルムや、例えばエポキシ樹脂を主成分とするソルダーレジスト膜等である。
【0038】
実装電極P11,P12は電気的に導通している。具体的には、実装電極P11は、層間接続導体V11を介して、信号線40の一端に接続される。信号線40の他端は、層間接続導体V12を介して実装電極P12に接続される。また、グランド導体51(グランド電極PG1,PG2),52,53は電気的に導通している。具体的には、グランド導体51は、複数の層間接続導体VG1を介してグランド導体52に接続され、グランド導体52は、複数の層間接続導体VG2を介してグランド導体53に接続される。
【0039】
本実施形態では、信号線40、グランド導体51,53、信号線40とグランド導体51とで挟まれる樹脂層11a、信号線40とグランド導体53とで挟まれる樹脂層12a、を含んだストリップライン構造の伝送線路が構成されている。
【0040】
本実施形態に係る絶縁基材10Aは、第1領域R1のY軸方向における樹脂の分子配向度が、他の部分(第2部分F2A,F2B、第2領域R2および第3領域R3)のY軸方向における樹脂の分子配向度よりも高い。特に、第1領域R1のY軸方向における樹脂の分子配向度は、第2部分F2A,F2BのY軸方向における樹脂の分子配向度よりも高い。
【0041】
なお、本実施形態では、他の部分の樹脂の分子配向はX軸方向およびY軸方向に等方性である。
【0042】
なお、樹脂の分子配向度は、例えば(広角)X線回折により、或る領域における方位角(β角)を測定し、方位角および強度分布からX軸方向の分子配向(nx)と、Y軸方向の分子配向(ny)とを求めることにより決定される。この測定において、「X軸方向に分子配向している」とは、或る領域における(ny/nx)≦0.9の場合とし、「Y軸方向に分子配向している」とは、或る領域における(nx/ny)≦0.9である場合と定義する。
【0043】
また、(ny/nx)>0.9、且つ(nx/ny)>0.9の場合(より好ましくは(nx/ny)=1の場合)には、X軸方向にもY軸方向にも分子配向していない、つまり等方性であると定義する。
【0044】
なお、本発明の「第1部分」は、例えば平面視で(Z軸方向から視て)、X軸方向またはY軸方向に分子配向している部分に重なった領域とし、「第2部分」はそれ以外の領域とする。X軸方向に分子配向している部分とそうでない部分との境界面は、例えば、(ny/nx)≦0.9から(ny/nx)>0.9へと変化した面と定義する。また、Y軸方向に分子配向している部分とそうでない部分との境界面は、例えば、(nx/ny)≦0.9から(nx/ny)>0.9へと変化した面と定義する。なお、いずれの場合にも境界面自体は分子配向していない部分に含まれるものと定義する。
【0045】
素体の樹脂分子がY軸方向に配向している場合、樹脂分子の配向が等方性である素体に比べて、Y軸方向のヤング率が大きくなり、且つ、Y軸方向に直交するX軸方向のヤング率が小さくなる。上述したように本実施形態では、第1領域R1のY軸方向における樹脂の分子配向度が、他の部分(第2部分F2A,F2B、第2領域R2および第3領域R3)のY軸方向における樹脂の分子配向度よりも高い(特に、第1領域R1のY軸方向における樹脂の分子配向度は、第2部分F2A,F2BのY軸方向における樹脂の分子配向度よりも高い)。すなわち、第1領域R1のY軸方向におけるヤング率は、他の部分のY軸方向におけるヤング率よりも大きく、且つ、第1領域R1のX軸方向におけるヤング率は、他の部分のX軸方向におけるヤング率よりも小さい(特に、第1領域R1のY軸方向におけるヤング率は、第2部分F2A,F2BのY軸方向におけるヤング率よりも大きく、且つ、第1領域R1のX軸方向におけるヤング率は、第2部分F2A,F2BのX軸方向におけるヤング率よりも小さい)。そのため、第1部分F1を曲げたときにX軸方向に引っ張り応力が掛かる第1領域R1は、他の部分よりも引っ張り変形しやすく、絶縁基材10Aの第1部分F1は第2部分F2A,F2BよりもX軸方向に曲げやすい。
【0046】
また、素体の樹脂分子がY軸方向に配向している場合、樹脂分子の配向が等方性である素体に比べて、Y軸方向における線膨張係数は小さく、且つ、第1方向に直交するX軸方向における線膨張係数は大きい。上記構成によれば、第1領域R1のX軸方向における線膨張係数が、他の部分(第2部分F2A,F2B、第2領域R2および第3領域R3)のX軸方向における線膨張係数よりも大きい(特に、第1領域R1のX軸方向における線膨張係数は、第2部分F2A,F2BのX軸方向における線膨張係数よりも大きい)。そのため、絶縁基材10Aを加熱した際(加熱を伴う絶縁基材10Aの曲げ加工時等)に、Z軸方向における線膨張係数差により絶縁基材10Aの第1部分F1は第2部分F2A,F2BよりもX軸方向に曲げやすい。
【0047】
また、本実施形態では、図3に示すように、層間接続導体V11,V12,VG1,VG2が、第2部分F2A,F2Bのみに配置されている。曲げられる第1部分F1に層間接続導体が配置されている場合、第1部分F1の曲げ加工時の曲げ応力によって層間接続導体は破損しやすい。一方、本実施形態に係る構成によれば、層間接続導体V11,V12,VG1,VG2が、第1部分F1に配置されていないため、曲げ加工時の層間接続導体V11,V12,VG1,VG2の破損等が抑制される。
【0048】
本実施形態では、絶縁基材10Aを形成する複数の樹脂層11a,12a,13aが熱可塑性樹脂からなる。この構成により、後に詳述するように、積層した複数の樹脂層11a,12a,13aを加熱プレス(一括プレス)することにより、接着層を用いることなく、絶縁基材10Aを容易に形成できる。そのため、樹脂基板101の製造工程が削減され、コストを低く抑えることができる。また、本実施形態では、絶縁基材10Aが熱可塑性樹脂の素体であるため、容易に塑性変形が可能で、且つ、所望の形状を維持(保持)できる樹脂基板を実現できる。
【0049】
本発明の樹脂基板は、例えば以下に示すように用いられる。図4は第1の実施形態に係る電子機器301の主要部の断面図である。
【0050】
本実施形態に係る電子機器301は、樹脂基板101Aおよび回路基板201,202を備える。樹脂基板101Aは、第1部分F1が曲げ加工(塑性変形)されている点で樹脂基板101と異なる。樹脂基板101Aの絶縁基材10Aは、第1部分F1にZ軸方向に曲げられた曲げ部を有する。樹脂基板101Aの他の構成については樹脂基板101と同じである。
【0051】
絶縁基材10Aの第1部分F1の曲げ加工は、例えば次のような工程で行われる。例えば、金型等を用いて絶縁基材10Aを加熱しながら曲げて、絶縁基材10Aの熱可塑性樹脂が冷えて固化した後に、金型等を取り除くことにより第1部分F1の曲げ形状を保持(維持)する。また、例えば、絶縁基材10Aに熱架橋剤(例えば、エポキシ樹脂等)を含ませておき、絶縁基材10Aの第1部分F1を所望の形状に曲げた後に、加熱して第1部分F1の曲げ形状を保持する。
【0052】
回路基板201は第1面S21を有し、回路基板202は第2面S22を有する。図4に示すように、第1面S21はXY平面に平行な面であり、第2面S22はYZ平面に平行な面である。回路基板201の第1面S21には、外部電極EP11およびグランド電極EG1が形成されており、回路基板202の第2面S22には、外部電極EP12およびグランド電極EG2が形成されている。樹脂基板101Aは、第1部分F1が曲げられた状態で回路基板201,202に実装されている。具体的には、樹脂基板101Aの実装電極P11が、はんだ等の導電性接合材5を介して回路基板201の外部電極EP11に接続される。樹脂基板101Aのグランド電極PG1は、導電性接合材5を介して回路基板201のグランド電極EG1に接続される。樹脂基板101Aの実装電極P12は、導電性接合材5を介して回路基板202の外部電極EP12に接続される。また、樹脂基板101Aのグランド電極PG2は、導電性接合材5を介して、回路基板202のグランド電極EG2に接続される。
【0053】
上述したように、樹脂基板101Aの第1部分F1はZ軸方向に曲げやすいため、Z軸方向における高さが互いに異なる面を有する回路基板201,202への実装が容易である。
【0054】
また、上述したように第2部分F2A,F2Bは、樹脂の分子配向がX軸方向およびY軸方向に等方性であり、樹脂基板101Aの実装電極P11,P12が、第2部分F2A,F2Bに設けられている。この構成によれば、樹脂基板101Aの回路基板201,202への実装時(ホットバー等を用いた樹脂基板101Aの実装時、またはリフロー工程時)等での、第2部分F2A,F2Bの変形が抑制される。そのため、樹脂基板101Aと回路基板201,202との接合不良が抑制される。
【0055】
本実施形態に係る樹脂基板101は、例えば次の工程で製造される。図5は積層前の樹脂層13aの製造工程を順に示す断面図である。図6は樹脂基板101の製造工程を順に示す断面図である。なお、図5では、説明の都合上、樹脂層13aのみ説明している。また、図5および図6では、説明の都合上、ワンチップ(個片)での製造工程で説明するが、実際の樹脂基板101の製造工程は集合基板状態で行われる。なお、「集合基板」とは、複数の樹脂基板101を含んだマザー基板である。このことは、以降の製造工程を示す図でも同様である。
【0056】
まず、図5中の(1)に示すように、樹脂(熱可塑性樹脂)からなる樹脂層13aを準備する。樹脂層13aは、例えば液晶ポリマー(LCP)またはポリイミド(PI)に、光配向性ポリマーを加えた樹脂シートである。なお、図示省略するが、樹脂層11a,12aも同様である。
【0057】
次に、樹脂層13aのうち、後に絶縁基材の第1領域となる部分(図5中の樹脂層13aのX軸方向における中央付近)に、光LCを照射して樹脂分子をY軸方向に配向する。具体的には、偏光板3によって光LCをY軸方向に偏光し、偏光された光LYを樹脂層13aに照射することにより、照射された部分の樹脂分子がY軸方向に配向される。これにより、図5中の(2)に示すような、後に第1領域となる部分の樹脂分子がY軸方向に配向された樹脂層13aが得られる。
【0058】
樹脂層のうち、後に絶縁基材の第1領域となる部分に、光またはレーザを照射して樹脂分子をY軸方向に配向するこの工程が、本発明における「第1分子配向工程」の一例である。
【0059】
その後、図5中の(3)に示すように、樹脂層13aの裏面にグランド導体53を形成する。具体的には、樹脂層13aの裏面にラミネートされた金属箔をフォトリソグラフィでパターニングすることで、樹脂層13aの裏面にグランド導体53を形成する。
【0060】
次に、図6中の(1)に示すように、複数の樹脂層11a,12a,13aをこの順に積層する。なお、図示省略するが、樹脂層11aには、実装電極P11,P12、グランド導体51および層間接続導体V11,V12,VG1等が形成されており、樹脂層12aには、信号線41、グランド導体52および層間接続導体VG2等が形成されている。層間接続導体は、例えば樹脂層にレーザ照射またはドリル等で孔を設けた後、その孔にCu,Snもしくはそれらの合金等の金属粉と樹脂材料とを含む導電性ペーストを配設(充填)し、後の加熱プレスによって導電性ペーストを固化させることにより設けられる。
【0061】
その後、積層した複数の樹脂層11a,12a,13aを加熱プレスすることにより、図6中の(2)に示す絶縁基材10Aを形成する。絶縁基材10Aでは、第1領域R1のY軸方向における樹脂の分子配向度が、第2領域R2、第3領域R3および第2部分F2A,F2BのY軸方向における樹脂の分子配向度よりも高い。特に、第1領域R1のY軸方向における樹脂の分子配向度は、第2部分F2A,F2BのY軸方向における樹脂の分子配向度よりも高い。
【0062】
第1分子配向工程の後に、Y軸方向に配向した樹脂層13aを含む複数の樹脂層11a,12a,13aを積層し、複数の樹脂層11a,12a,13aを加熱プレスすることにより、絶縁基材10Aを形成するこの工程が、本発明における「第1絶縁基材形成工程」の一例である。
【0063】
その後、絶縁基材10Aの第2主面VS2に保護層1を形成して、図5中の(3)に示す樹脂基板101を得る。保護層1は、例えばポリイミド(PI)やポリエチレンテレフタレート(PET)等のカバーレイフィルムや、例えばエポキシ樹脂を主成分とするソルダーレジスト膜等である。
【0064】
上記製造方法によれば、絶縁基材10Aの第1部分F1を曲げる場合でも第2部分F2A,F2Bの変形等を抑制した樹脂基板101を容易に製造できる。
【0065】
また、上記製造方法によれば、熱可塑性樹脂からなる複数の樹脂層11a,12a,13aを積層して加熱プレス(一括プレス)することによって、樹脂基板101を容易に形成できるため、製造工程が削減され、コストを低く抑えることができる。
【0066】
さらに、上記製造方法では、積層する前の樹脂層13aに樹脂の分子配向処理を行うため、複数の樹脂層11a,12a,13aを積層して形成された絶縁基材に分子配向処理を行う場合に比べて、第1領域の樹脂の分子配向度を幅広く設計できる。
【0067】
《第2の実施形態》
第2の実施形態では、X軸方向に配向された樹脂層を有する樹脂基板の例を示す。
【0068】
図7は第2の実施形態に係る樹脂基板102の外観斜視図である。図8は樹脂基板102の正面図である。図9は樹脂基板102の分解平面図である。図9では、構造を分かりやすくするため、信号線40をドットパターンで示している。
【0069】
樹脂基板102は、絶縁基材10Bを備える点で、第1の実施形態に係る樹脂基板101と異なる。樹脂基板102の他の構成については、樹脂基板101と実質的に同じである。
【0070】
以下、第1の実施形態に係る樹脂基板101と異なる点について説明する。
【0071】
絶縁基材10Bは、樹脂(熱可塑性樹脂)からなる複数の樹脂層11b,12b,13bがこの順に積層されて形成される。樹脂層11b,12b,13bの構成は、第1の実施形態で説明した樹脂層11a,12a、13aと同じである。
【0072】
本実施形態に係る絶縁基材10Bは、第2領域R2のX軸方向における樹脂の分子配向度が、他の部分(第2部分F2A,F2B、第1領域R1および第3領域R3)のX軸方向における樹脂の分子配向度よりも高い(特に、第2領域R2のX軸方向における樹脂の分子配向度は、第2部分F2A,F2BのX軸方向における樹脂の分子配向度よりも高い)。すなわち、第2領域R2のX軸方向におけるヤング率は、他の部分のX軸方向におけるヤング率よりも大きく、且つ、第2領域R2のY軸方向におけるヤング率は、他の部分のY軸方向におけるヤング率よりも小さい(特に、第2領域R2のX軸方向におけるヤング率は、第2部分F2A,F2BのX軸方向におけるヤング率よりも大きく、且つ、第2領域R2のY軸方向におけるヤング率は、第2部分F2A,F2BのY軸方向におけるヤング率よりも小さい)。なお、本実施形態では、他の部分の樹脂の分子配向はX軸方向およびY軸方向に等方性である。
【0073】
この構成によれば、第1部分F1を曲げたときにX軸方向に圧縮応力が掛かる第2領域R2が、他の部分(第2部分F2A,F2B、第1領域R1および第3領域R3)よりも圧縮変形しやすく、絶縁基材10Bの第1部分F1は第2部分F2A,F2Bよりも曲げやすい。
【0074】
本実施形態に係る樹脂基板102は、例えば次の工程で製造される。図10は積層前の樹脂層11bの製造工程を順に示す断面図である。図11は樹脂基板102の製造工程を順に示す断面図である。なお、図10では、説明の都合上、樹脂層11bのみ説明している。
【0075】
まず、図10中の(1)に示すように、樹脂(熱可塑性樹脂)からなる樹脂層11bを準備する。樹脂層11bは、例えば液晶ポリマー(LCP)またはポリイミド(PI)に、光配向性ポリマーを加えた樹脂シートである。なお、図示省略するが、樹脂層12b,13bも同様である。
【0076】
次に、樹脂層11bのうち、後に絶縁基材の第2領域となる部分(図10中の樹脂層11bのX軸方向における中央付近)に、光LCを照射して樹脂分子をX軸方向に配向する。具体的には、偏光板4によって光LCをX軸方向に偏光し、偏光された光LXを樹脂層11bに照射することにより、照射された部分の樹脂分子がX軸方向に配向される。これにより、図10中の(2)に示すような、後に第2領域となる部分の樹脂分子がX軸方向に配向された樹脂層11bが得られる。
【0077】
樹脂層のうち、後に絶縁基材の第2領域となる部分に、光またはレーザを照射して樹脂分子をX軸方向に配向するこの工程が、本発明における「第2分子配向工程」の一例である。
【0078】
次に、図10中の(3)に示すように、樹脂層11bの裏面に実装電極P11,P12およびグランド導体51を形成する。具体的には、樹脂層11bの裏面にラミネートされた金属箔をフォトリソグラフィでパターニングすることで、樹脂層11bの裏面に実装電極P11,P12およびグランド導体51を形成する。
【0079】
その後、図10中の(4)に示すように、樹脂層11bに複数の層間接続導体V11,V12,VG1,VG2を形成する。これら層間接続導体V11,V12,VG1,VG2は、樹脂層11bにレーザ照射またはドリル等で孔を設けた後、その孔にCu,Snもしくはそれらの合金等の金属粉と樹脂材料とを含む導電性ペーストを配設(充填)し、後の加熱プレスによって導電性ペーストを固化させることにより設けられる。
【0080】
次に、図11中の(1)に示すように、複数の樹脂層11b,12b,13bをこの順に積層する。なお、製造工程の説明は省略するが、樹脂層12bには信号線41、グランド導体52および層間接続導体VG2等が形成されており、樹脂層13bにはグランド導体53が形成されている。その後、積層した複数の樹脂層11b,12b,13bを加熱プレスすることにより、図11中の(2)に示す絶縁基材10Bを形成する。なお、絶縁基材10Bでは、第2領域R2のX軸方向における樹脂の分子配向度が、第1領域R1、第3領域R3および第2部分F2A,F2BのX軸方向における樹脂の分子配向度よりも高い。特に、第2領域R2のX軸方向における樹脂の分子配向度は、第2部分F2A,F2BのX軸方向における樹脂の分子配向度よりも高い。
【0081】
第2分子配向工程の後に、X軸方向に配向した樹脂層11bを含む複数の樹脂層11b,12b,13bを積層し、複数の樹脂層11b,12b,13bを加熱プレスすることにより、絶縁基材10Bを形成するこの工程が、本発明における「第1絶縁基材形成工程」の一例である。
【0082】
その後、絶縁基材10Bの第2主面VS2に保護層1を形成して、図11中の(3)に示す樹脂基板102を得る。
【0083】
上記製造方法によれば、絶縁基材10Bの第1部分F1を曲げる場合でも第2部分F2A,F2Bの変形等を抑制した樹脂基板102を容易に製造できる。
【0084】
《第3の実施形態》
第3の実施形態では、Y軸方向に分子配向された樹脂層と、X軸方向に分子配向された樹脂層と、を備えた樹脂基板の例を示す。
【0085】
図12(A)は第3の実施形態に係る樹脂基板103の外観斜視図であり、図12(B)は樹脂基板103の断面図である。図13は樹脂基板103の分解平面図である。図13では、構造を分かりやすくするため、信号線41,42をドットパターンで示している。
【0086】
樹脂基板103は、絶縁基材10C、2つの信号線41,42および保護層2等を備える点で、第1の実施形態に係る樹脂基板101と異なる。樹脂基板103の他の構成については、樹脂基板101と実質的に同じである。
【0087】
以下、第1の実施形態に係る樹脂基板101と異なる部分について説明する。
【0088】
絶縁基材10Cは、樹脂(熱可塑性樹脂)からなる複数の樹脂層11c,12c,13cがこの順に積層されて形成される。樹脂層11c,13cは、例えば液晶ポリマー(LCP)またはポリイミド(PI)に、光配向性ポリマーを加えた樹脂シートである。樹脂層12cは、例えば液晶ポリマー(LCP)またはポリイミド(PI)を主成分とする樹脂シートである。
【0089】
樹脂層11cの裏側には、実装電極P11,P12,P21,P22およびグランド導体51が形成されている。実装電極P11,P21は、樹脂層11cの第1端(図13における樹脂層11cの左端)付近に配置される矩形の導体パターンである。実装電極P11,P21はY軸方向に配列されている。実装電極P12,P22は、樹脂層11cの第2端(図13における樹脂層11cの右端)付近に配置される矩形の導体パターンである。実装電極P12,P22はY軸方向に配列されている。グランド導体51は、樹脂層11cの略全面に形成される矩形の導体パターンである。また、樹脂層11cには、層間接続導体V11,V14,V21,V24,VG1,VG2が形成されている。
【0090】
樹脂層12cの表面には、2つの信号線41,42およびグランド導体52が形成されている。信号線41,42は、伝送方向(X軸方向)に延伸する線状の導体パターンである。信号線41,42はY軸方向に配列され、互いに並走している。グランド導体52は、樹脂層12cの略全面に形成される矩形の導体パターンである。また、樹脂層12cには、層間接続導体V12,V13,V22,V23,VG2が形成されている。
【0091】
樹脂層13cの表面には、グランド導体53が形成されている。グランド導体53は、樹脂層13cの略全面に形成される矩形の導体パターンである。また、樹脂層13cには、層間接続導体VG3が形成されている。
【0092】
保護層1は、樹脂層11cの裏面に積層される保護膜であり、平面形状が樹脂層11cと略同じである。保護層1は、実装電極P11,P12,P21,P22の位置に応じた位置にそれぞれ開口OP11,OP12,OP21,OP22を有する。そのため、樹脂層11cの裏面(絶縁基材10Cの第2主面VS2)に保護層1が形成された場合でも、上記開口OP11,OP12,OP21,OP22から実装電極P11,P12,P21,P22がそれぞれ外部に露出する。また、保護層1は、グランド導体51の位置に応じた位置に複数の開口OG1,OG2を有する。そのため、樹脂層11cの裏面に保護層1が形成された場合でも、上記開口OG1,OG2からグランド導体51の一部が外部に露出する。本実施形態では、開口OG1から露出するグランド導体51の一部が「グランド電極PG1」であり、開口OG2から露出するグランド導体51の一部が「グランド電極PG2」である。
【0093】
また、保護層2は、樹脂層13cの表面に積層される保護膜であり、平面形状が樹脂層13cと略同じである。
【0094】
実装電極P11,P12は電気的に導通している。具体的には、実装電極P11は、層間接続導体V11,V12を介して、信号線41の一端に接続される。信号線41の他端は、層間接続導体V13,V14を介して実装電極P12に接続される。また、実装電極P21,P22は電気的に導通している。具体的には、実装電極P21は、層間接続導体V21,V22を介して、信号線42の一端に接続される。信号線42の他端は、層間接続導体V23,V24を介して実装電極P22に接続される。さらに、グランド導体51(グランド電極PG1,PG2),52,53は電気的に接続されている。具体的には、グランド導体51は、複数の層間接続導体VG1,VG2を介して、グランド導体52に接続される。グランド導体52は、複数の層間接続導体VG3を介して、グランド導体53に接続される。
【0095】
本実施形態では、信号線41、グランド導体51,53、信号線41とグランド導体51とで挟まれる樹脂層11c,12c、信号線41とグランド導体53とで挟まれる樹脂層13cを含んだストリップライン構造の伝送線路が構成されている。また、信号線42、グランド導体51,53、信号線42とグランド導体51とで挟まれる樹脂層11c,12c、信号線42とグランド導体53とで挟まれる樹脂層13cを含んだストリップライン構造の伝送線路が構成されている。
【0096】
本実施形態では、第1領域R1のY軸方向における樹脂の分子配向度が、他の部分(第2部分F2A,F2B、第2領域R2および第3領域R3)のY軸方向における樹脂の分子配向度よりも高い(特に、第1領域R1のY軸方向における樹脂の分子配向度は、第2部分F2A,F2BのY軸方向における樹脂の分子配向度よりも高い)。また、第2領域R2のX軸方向における樹脂の分子配向度は、他の部分(第2部分F2A,F2B、第1領域R1および第3領域R3)のX軸方向における樹脂の分子配向度よりも高い(特に、第2領域R2のX軸方向における樹脂の分子配向度は、第2部分F2A,F2BのX軸方向における樹脂の分子配向度よりも高い)。なお、第2部分F2A,F2Bの樹脂の分子配向は、X軸方向およびY軸方向に等方性である。
【0097】
この構成によれば、第1部分F1を曲げたときにX軸方向に引っ張り応力が掛かる第1領域R1が他の部分よりも引っ張り変形しやすくなり、第1部分F1を曲げたときにX軸方向に圧縮応力が掛かる第2領域R2が他の部分よりも圧縮変形しやすくなる。そのため、絶縁基材10Cの第1部分F1は第2部分F2A,F2Bよりもさらに曲げやすい。
【0098】
また、本実施形態では、樹脂層11c,13cが光配向性ポリマーを含む樹脂シートであり、樹脂層12cが光配向性ポリマーを含んでいない樹脂シートである。一般的に、光配向性ポリマーを含む樹脂は、光配向性ポリマーを含んでいない樹脂に比べて、比誘電率が高くなる。そのため、本実施形態の第3領域R3(樹脂層12c)の比誘電率(ε3)は、第1領域R1(樹脂層13c)の比誘電率(ε1)、および第2領域R2(樹脂層11c)の比誘電率(ε2)よりも低い(ε3<ε1,ε3<ε2)。
【0099】
そして、本実施形態では、図12(B)等に示すように、信号線41,42の少なくとも一部が、高周波特性に優れる(誘電正接tanδが低い)第3領域R3に配置されているため(接しているため)、樹脂基板の高周波特性を向上できる。また、この構成によれば、光配向性ポリマーが加えられた複数の樹脂層のみを積層して形成された絶縁基材に比べて、樹脂基板103に形成される回路での導体損失を低減できる、または、樹脂基板103(絶縁基材10C)を薄くできる。具体的に説明すると、絶縁基材10Cに形成される導体パターンの線幅を広くでき、上記回路の導体損失を低減できる。また、所定の特性を有する回路を樹脂基板に構成した場合に、導体パターンの線幅を狭くしなくても絶縁基材を形成する樹脂層を薄くでき、絶縁基材10Cを薄型化できる。
【0100】
なお、本実施形態に示すように、グランド導体51,52の少なくとも一部は、比誘電率の高い第1領域R1および第2領域R2に配置されていてもよい。グランド導体は高周波信号を伝送する導体ではないため、信号線を比誘電率の高い領域に配置する場合に比べて、グランド導体を比誘電率の高い領域に配置したとしても高周波特性に対する影響は少ない。
【0101】
本実施形態で示したように、絶縁基材を形成する複数の樹脂層全てが、光配向性ポリマーを含んでいる必要はない。本発明の樹脂基板では、絶縁基材を形成する複数の樹脂層のうち、いくつかの樹脂層に光配向性ポリマーが含まれる構成でもよい。
【0102】
《第4の実施形態》
第4の実施形態では、第1主面から第2主面に向かってY軸方向における樹脂の分子配向度が連続的に変化した(徐々に小さくなった)樹脂基板の例を示す。
【0103】
図14(A)は第4の実施形態に係る樹脂基板104の外観斜視図であり、図14(B)は樹脂基板104の断面図である。図15は樹脂基板104の分解平面図である。図15では、構造を分かりやすくするため、信号線41,42をドットパターンで示している。
【0104】
樹脂基板104は、絶縁基材10D、2つの信号線41,42を備える点で、第1の実施形態に係る樹脂基板101と異なる。また、樹脂基板104は、保護層を備えていない点で、樹脂基板101と異なる。樹脂基板104の他の構成については、樹脂基板101と実質的に同じである。
【0105】
以下、第1の実施形態に係る樹脂基板101と異なる部分について説明する。
【0106】
絶縁基材10Dは、樹脂(熱硬化性樹脂)からなる複数の樹脂層11d,12d,13dがこの順に積層されて形成される。樹脂層11d,12d,13dは、例えばエポキシ樹脂(EP)に、光配向性ポリマーを加えた樹脂シートである。
【0107】
樹脂層11dの裏面には、実装電極P11,P12,P21,P22が形成されている。実装電極P11,P21は、樹脂層11dの第1端(図15における樹脂層11dの左端)付近に配置される矩形の導体パターンである。実装電極P11,P12はX軸方向に配列されている。実装電極P12,P22は、樹脂層11dの第2端(図15における樹脂層11dの右端)付近に配置される矩形の導体パターンである。また、樹脂層11dには、層間接続導体V11,V12,V21,V22が形成されている。
【0108】
樹脂層12dの裏面には、信号線41および導体31,32が形成されている。信号線41は、伝送方向(X軸方向)に延伸する線状の導体パターンである。導体31は、樹脂層12dの第1端(図15における樹脂層12dの左端)付近に配置される矩形の導体パターンである。導体32は、樹脂層12dの第2端(図15における樹脂層12dの右端)付近に配置される矩形の導体パターンである。導体31,32は、例えばCu箔等の導体パターンである。また、樹脂層12dには、層間接続導体V22,V23が形成されている。
【0109】
樹脂層13dの裏面には、信号線42が形成されている。信号線42は、伝送方向(X軸方向)に延伸する線状の導体パターンである。
【0110】
保護層1は、樹脂層11cの裏面に積層される保護膜であり、平面形状が樹脂層11cと略同じである。保護層1は、実装電極P11,P12,P21,P22の位置に応じた位置にそれぞれ開口OP11,OP12,OP21,OP22を有する。そのため、樹脂層11cの裏面(絶縁基材10Dの第2主面VS2)に保護層1が形成された場合でも、上記開口OP11,OP12,OP21,OP22から実装電極P11,P12,P21,P22がそれぞれ外部に露出する。また、保護層1は、グランド導体51の位置に応じた位置に複数の開口OG1,OG2を有する。そのため、樹脂層11cの裏面に保護層1が形成された場合でも、上記開口OG1,OG2からグランド導体51の一部が外部に露出する。本実施形態では、開口OG1から露出するグランド導体51の一部が「グランド電極PG1」であり、開口OG2から露出するグランド導体51の一部が「グランド電極PG2」である。
【0111】
また、保護層2は、樹脂層13cの表面に積層される保護膜であり、平面形状が樹脂層13cと略同じである。
【0112】
図14(B)に示すように、第1領域R1のY軸方向における樹脂の分子配向度は、他の部分(第2部分F2A,F2B、第2領域R2および第3領域R3)のY軸方向における樹脂の分子配向度よりも高い(特に、第1領域R1のY軸方向における樹脂の分子配向度は、第2部分F2A,F2BのY軸方向における樹脂の分子配向度よりも高い)。また、第3領域R3のY軸方向における樹脂の分子配向度は、他の部分(第2部分F2A,F2Bおよび第2領域R2)のY軸方向における樹脂の分子配向度よりも高い。より具体的には、絶縁基材10Dの第1部分F1は、第1主面VS1から第2主面VS2に向かって、Y軸方向における樹脂の分子配向度が連続的に変化している(徐々に低くなっている)。
【0113】
このような構成であっても、第1部分F1を曲げる場合でも第2部分F2A,F2Bの変形等を抑制できるという樹脂基板101と同様の作用・効果を奏する。
【0114】
また、本実施形態で示したように、絶縁基材の第1主面VS1または第2主面VS2に形成される保護層は、必須ではない。
【0115】
図16は、第1部分F1が曲げ加工された樹脂基板104Aの正面図である。図16に示すように、樹脂基板104Aの絶縁基材10Dは、第1部分F1がU字形に曲げ加工された曲げ部を有する。
【0116】
本実施形態に係る樹脂基板104は、第1部分F1の第1主面VS1から第2主面VS2に向かって、X軸方向における線膨張係数が徐々に小さくなっている。そのため、絶縁基材10D全体(または、絶縁基材10Dの第1部分F1)を高温に加熱することにより、図16に示すように線膨張係数差によって第1部分F1が自動的に変形する。本実施形態では、絶縁基材10Dが熱硬化性樹脂からなる素体であるため、高温(積層時よりも高い温度)で加熱することにより絶縁基材10Dが硬化し、曲げ形状は保持される。
【0117】
本実施形態に係る樹脂基板104は、例えば次の工程で製造される。図17は樹脂基板104の製造工程を順に示す断面図である。
【0118】
まず、図17中の(1)に示すように、樹脂(熱可塑性樹脂)からなる樹脂層11d,12d,13dを準備する。樹脂層11d,12d,13dは、例えば液晶ポリマー(LCP)またはポリイミド(PI)に、光配向性ポリマーを加えた樹脂シートである。
【0119】
次に、樹脂層11dの裏面に実装電極P11,P12,P21,P22を形成し、樹脂層12dの裏面に信号線41および導体31,32を形成し、樹脂層13dの裏面に信号線42を形成する。具体的には、樹脂層の裏面にラミネートされた金属箔をフォトリソグラフィでパターニングすることによって、これら実装電極P11,P12,P21,P22、信号線41,42および導体31,32をそれぞれ形成する。
【0120】
また、樹脂層11dには、層間接続導体V11,V12,V21,V24が形成され、樹脂層12dには、層間接続導体V22,V23が形成されている。これら層間接続導体は、例えば樹脂層にレーザ照射またはドリル等で孔を設けた後、その孔にCu,Snもしくはそれらの合金等の金属粉と樹脂材料とを含む導電性ペーストを配設(充填)し、後の加熱プレスによって導電性ペーストを固化させることにより設けられる。
【0121】
次に、複数の樹脂層11d,12d,13dをこの順に積層し、積層した複数の樹脂層11d,12d,13dを加熱プレスすることにより、図17中の(2)に示す絶縁基材10DPを形成する。
【0122】
絶縁基材10DPを形成するこの工程が、本発明における「第2絶縁基材形成工程」の一例である。
【0123】
その後、図17中の(2)に示すように、後に絶縁基材の第1領域となる部分に、第1主面VS1から光LCを照射して樹脂分子をY軸方向に配向する。具体的には、偏光板3によって光LCをY軸方向に偏光し、偏光された光LYを絶縁基材10DPの所定部分に照射することにより、照射された部分の樹脂分子がY軸方向に配向される。
【0124】
上記工程によれば、光度分布または温度分布等によって、光LYを照射した位置から離れるにつれて、Y軸方向における樹脂の分子配向度が徐々に小さくなった絶縁基材10Dを得ることができる。すなわち、絶縁基材10Dの第1部分F1は、第1主面VS1から第2主面VS2に向かって、Y軸方向における樹脂の分子配向度が連続的に変化している(徐々に小さくなっている)。また、絶縁基材10Dの第1部分F1は、第1部分F1の平面方向(例えば、X軸方向)の中央付近から第2部分F2A,F2Bに向かって、Y軸方向における樹脂の分子配向度が連続的に変化している(徐々に小さくなっている)。
【0125】
第2絶縁基材形成工程の後に、後に第1領域となる部分に、第1主面VS1から光またはレーザを照射して、第1領域の樹脂をY軸方向に配向するこの工程が、本発明における「第3分子配向工程」の一例である。
【0126】
上記製造方法では、複数の樹脂層11d,12d,13dを積層して形成された絶縁基材10DPに分子配向処理を行うため、積層する前の複数の樹脂層にそれぞれ分子配向処理する場合に比べて、製造工程が削減され、コストを低く抑えることができる。なお、本実施形態では、絶縁基材10DPに分子配向処理を行う例を示したが、第1・第2の実施形態で説明したように、積層前の複数の樹脂層にそれぞれ分子配向処理を行って、第1領域R1、第3領域R3および第2領域R2の順に樹脂の分子配向度が変化する樹脂基板を形成してもよい。
【0127】
なお、本実施形態では、第1部分F1が、第1主面VS1から第2主面VS2に向かって、Y軸方向における樹脂の分子配向度が連続的に変化する(徐々に低くなる)樹脂基板の例を示したが、これに限定されるものではない。本発明の樹脂基板は、例えば、第1部分F1が、第2主面VS2から第1主面VS1に向かって、X軸方向における樹脂の分子配向度が連続的に変化する(徐々に低くなる)構成でもよい。このような樹脂基板は、例えば、第2絶縁基材形成工程の後に、後に絶縁基材の第2領域となる部分に、第2主面VS2から偏光された光を照射して樹脂分子をX軸方向に配向することにより形成できる(本発明における「第4分子配向工程」の一例)。
【0128】
《第5の実施形態》
第5の実施形態では、第3部分を有し、クランク状に曲げられる樹脂基板の例を示す。
【0129】
図18は第5の実施形態に係る電子機器302の主要部を示す正面図である。
【0130】
電子機器302は、樹脂基板105Aおよび回路基板201および202等を備える。回路基板201,202の構成については、第1の実施形態で説明した回路基板201,202と実質的に同じである。なお、回路基板201の第1面S21、および回路基板202の第2面S22は、いずれもXY平面に平行な面であり、Z軸方向における高さが異なっている。
【0131】
樹脂基板105Aが備える絶縁基材10Eは、曲げ加工される第1部分F1および第3部分F3と、第1部分F1および第3部分F3以外の第2部分F2A,F2Bと、に分けられる。絶縁基材10Eでは、第2部分F2A、第1部分F1、第3部分F3および第2部分F2Bの順に配列されている。
【0132】
樹脂基板105Aは、第1部分F1および第3部分F3が曲げられた状態で、回路基板201,202に実装されている。具体的には、樹脂基板105Aの実装電極P11が、導電性接合材5を介して、回路基板201の外部電極EP11に接続される。樹脂基板105Aの実装電極P12は、導電性接合材5を介して、回路基板202の外部電極EP12に接続される。なお、図示省略するが、樹脂基板105Aのグランド電極は、導電性接合材を介して、回路基板201,202のグランド電極にそれぞれ接続されている。
【0133】
図18に示すように、第1部分F1は、第1領域R1A、第2領域R2Aおよび第3領域R3Aを有する。また、第3部分F3は、第1領域R1B、第2領域R2Bおよび第3領域R3Bを有する。第1領域R1Bは、第3部分F3をZ軸方向に三等分したときに、最も第1主面VS1側に位置する部分である。第2領域R2Bは、第3部分F3をZ軸方向に三等分したときに、最も第2主面VS2側に位置する部分であり、第3領域R3Bは第1領域R1Bおよび第2領域R2Bに挟まれる部分である。
【0134】
樹脂基板105Aでは、第1部分F1の第1領域R1Aの樹脂がY軸方向に配向しており、第3部分F3の第2領域R2Bの樹脂がY軸方向に配向している。また、樹脂基板105Aでは、第1部分F1の第2領域R2Aの樹脂がX軸方向に配向しており、第3部分F3の第1領域R1Bの樹脂はX軸方向に配向している。このように、第3部分F3は、第1部分F1とは逆に、第2領域R2BのY軸方向における樹脂の分子配向度が第2部分F2A,F2Bよりも高い。また、第3部分F3は、第1部分F1とは逆に、第1領域R1BのX軸方向における樹脂の分子配向度が第2部分F2A,F2Bよりも高い。言い換えると、第1部分F1と第3部分F3とは、第1領域から第2領域までの(第1主面VS1から第2主面VS2へと向かって進んだときの)樹脂の分子配向の向きが逆になっている。
【0135】
図18に示すように、樹脂基板105Aの第1部分F1は、第1領域R1Aが引っ張り変形し、第2領域R2Aが圧縮変形するように曲げられている。すなわち、第1部分F1は、図18に示すように山折りに(第2主面VS2を内周側にして)曲げられている。また、樹脂基板105Aの第3部分F3は第2領域R2Bが引っ張り変形し、第1領域R1Bが圧縮変形するように曲げられている。すなわち、第3部分F3は、図18に示すように谷折りに(第1主面VS1を内周側にして)曲げられている。このように、樹脂基板105Aは、クランク形状に曲げ加工されている。
【0136】
本実施形態で示したように、樹脂基板に第1部分F1とは逆向きに折り曲げられる部分がある場合には、第3部分F3をさらに備えていてもよい。また、絶縁基材の曲げ加工後の形状は、L字形またはクランク形状に限定されるものではなく、本発明の作用・効果を奏する範囲において適宜変更可能である。
【0137】
なお、本実施形態では、第1領域R1BのX軸方向における樹脂の分子配向度が高く、第2領域R2BのY軸方向における樹脂の分子配向が高い第3部分F3の例を示したが、この構成に限定されるものではない。第3部分F3は、第1領域R1Bの樹脂がX軸方向に分子配向し、第2領域R2Bの樹脂がY軸方向に分子配向しているものに限定されない。第3部分F3は、第1領域から第2領域までの樹脂の分子配向の向きが、第1〜第4の実施形態で説明した第1部分F1と逆にしたものでもよい。また、第1部分F1は、例えば第1〜第4の実施形態で説明した第1部分F1に置換が可能である。
【0138】
《その他の実施形態》
以上に示した各実施形態では、樹脂基板が2つの回路基板同士を接続するケーブルである例を示したが、本発明の樹脂基板はこれに限定されるものではない。本発明の樹脂基板は、例えば、単一の回路基板に面実装される電子部品であってもよい。また、樹脂基板の第2部分(接続部)には必要に応じてコネクタが設けられていてもよい。
【0139】
以上に示した各実施形態では、絶縁基材の形状が、長手方向がX軸方向に一致した直方体状である例を示したが、この構成に限定されるものではない。絶縁基材の形状は、本発明の作用・効果を奏する範囲において適宜変更可能であく、長手方向がX軸方向に一致していなくてもよい。また、絶縁基材の平面形状は、例えばL字形、U字形、クランク形、T字形、Y字形等でもよい。
【0140】
以上に示した各実施形態では、第2部分、第1部分および第2部分の順に分けられる絶縁基材(または、第2部分、第1部分、第3部分および第2部分の順に分けられる絶縁基材)の例を示したが、本発明の絶縁基材はこの構成に限定されるものではない。第1部分の数、第2部分および第3部分の数は、本発明の作用・効果を奏する範囲において適宜変更可能であり、絶縁基材が、例えば第2部分、第1部分、第2部分、第1部分、第2部分の順に分けられる構成でもよい。
【0141】
また、以上に示した各実施形態では、3つの樹脂層を積層して形成される絶縁基材の例を示したが、本発明の絶縁基材はこれに限定されるものではない。絶縁基材を形成する樹脂層の層数は、本発明の作用・効果を奏する範囲において適宜変更可能であり、例えば単層、2層または4層以上でもよい。すなわち、3つの樹脂層と、第1領域、第2領域および第3領域とが一致している必要はない。また、以上に示した各実施形態では、複数の樹脂層それぞれの厚みが略同じである例を示したが、絶縁基材を構成する複数の樹脂層の厚みはそれぞれ異なっていてもよい。なお、本発明における各領域(第1領域、第2領域および第3領域)の樹脂の分子配向度は、各領域の一部(例えば、複数の樹脂層のうちの特定の樹脂層)のみの樹脂の分子配向度を言うのではなく、それぞれの領域全体の樹脂の分子配向度を指す。
【0142】
以上に示した各実施形態では、絶縁基材が熱可塑性樹脂からなる素体である例を示したが、この構成に限定されるものではない。絶縁基材は熱硬化性樹脂からなる素体であってもよい。また、第3の実施形態で示したように、絶縁基材は複数の樹脂の複合積層体であってもよい。さらに絶縁基材は、複数の樹脂層を加熱プレス(一括プレス)してその表面同士を融着するものに限らず、各樹脂層間に接着層を有する構成でもよい。
【0143】
また、樹脂基板に形成される回路構成は、以上に示した各実施形態の構成に限定されるものではなく、本発明の作用・効果を奏する範囲において適宜変更可能である。樹脂基板に形成さえる回路は、例えば導体パターンで構成されるコイルや、導体パターンで形成されるキャパシタ、各種フィルタ(ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタ、バンドエリミネーションフィルタ)等の周波数フィルタが形成されていてもよい。また、樹脂基板には、他の各種伝送線路(マイクロストリップライン、コプレーナライン等)が、形成されていてもよい。さらに、樹脂基板には、チップ部品等の各種電子部品が実装または埋設されていてもよい。
【0144】
以上に示した各実施形態では、1または2の伝送線路が構成された樹脂基板の例を示したが、この構成に限定されるものではなく、伝送線路の数は樹脂基板に形成される回路構成によって適宜変更可能である。
【0145】
以上に示した各実施形態では、矩形の実装電極が、絶縁基材の第2主面VS2に形成される例を示したが、この構成に限定されるものではない。実装電極の形状・個数・位置は、本発明の作用・効果を奏する範囲において適宜変更可能である。実装電極の平面形状は、例えば、多角形、円形、楕円形、円弧状、リング状、L字形、U字形、T字形、Y字形、クランク形等であってもよい。また、実装電極は、絶縁基材の第1主面VS1および第2主面VS2にそれぞれ設けられていてもよい。
【0146】
最後に、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【符号の説明】
【0147】
DL1,DL2…分割線
EG1,EG2…(回路基板の)グランド電極
EP11,EP12…(回路基板の)外部電極
F1…第1部分
F2A,F2B…第2部分
F3…第3部分
LC,LX,LY…光
OG1,OG2,OP11,OP12,OP21,OP22…開口
P11,P12,P21,P22…実装電極
PG1,PG2…グランド電極
R1,R1A,R1B…第1領域
R2,R2A,R2B…第2領域
R3…第3領域
S21…(回路基板の)第1面
S22…(回路基板の)第2面
V11,V12,V13,V14,V21,V22,V23,V24,VG1,VG2,VG3…層間接続導体
VS1…絶縁基材の第1主面
VS2…絶縁基材の第2主面
1,2…保護層
3,4…偏光板
5…導電性接合材
10A,10B,10C,10D,10DP,10E…絶縁基材
11a,11b,11c,11d,12a,12b,12c,12d,13a,13b,13c,13d…樹脂層
31,32…導体
40,41,42…信号線
51,52,53…グランド導体
101,101A,102,103,104,104A,105A…樹脂基板
201,202…回路基板
301,302…電子機器
図1
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