(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1熱伝導式センサ素子及び前記第2熱伝導式センサ素子及び前記第1発熱手段が、Pt、Ni、及びCuからなる群より選ばれる金属のスパッタ膜からなることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項記載の熱伝導式センサ。
前記第1熱伝導式センサ素子及び前記第2熱伝導式センサ素子が、半導体拡散抵抗体で構成されたブリッジヒータ上にPN接合ダイオードを搭載した熱伝導式センサ素子からなり、前記第1発熱手段が半導体拡散抵抗体で構成されたブリッジヒータからなることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項記載の熱伝導式センサ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0011】
<第1実施形態>
(全体構成)
図1に示す熱伝導式センサ1は、センサ本体2として、順に積層された底面基板10、センサ素子保持基板11、流路形成基板12、上面基板13を備える。熱伝導式センサ1は、センサ本体2の一端に気体入口4と、前記一端に対向した他端に気体出口5と、気体入口4から前記センサ本体2内部を通って気体出口5へ繋ぐ気体流路6とを備えるフローセルである。これらの基板は、セラミック基板、ガラスエポキシ基板、又はポリイミドシート基板であってよく、好ましくはセラミック基板である。測定対象は空気、排ガス等の気体であるが、霧状の液体、煙霧状の微小固体が含まれていてもよい。該気体は、気体入口4から入って、気体流路6を通って、気体出口5から出る。
【0012】
気体流路6の、前記気体入口4側に第1熱伝導式センサ素子16、前記気体出口5側に第2熱伝導式センサ素子17、前記第1熱伝導式センサ素子16及び前記第2熱伝導式センサ素子17の間に第1発熱手段18がそれぞれ配置されている。第1熱伝導式センサ素子16、第2熱伝導式センサ素子17、及び第1発熱手段18は、センサ素子保持基板11に架橋支持又は片持ち支持され、センサ素子保持基板11から熱的に分離されている。第1発熱手段18は、気体流路6において結露等により多量の水滴が浸入した場合でも、気体流路6及び該気体流路6内の気体を直接加熱することで、熱伝導式センサ1を復帰することができる。熱伝導式センサ1は、自然乾燥に比べて復帰時間を短縮できる。第1熱伝導式センサ素子16、第2熱伝導式センサ素子17は、Pt、Ni、及びCuからなる群より選ばれる金属の細線であってもよく、好ましくはPtの細線からなる。第1発熱手段18は、レーザ加工又は放電加工等されたニクロム(Ni−Cr合金)、又はカンタル(Fe‐Cr‐Al‐Co合金)の薄板からなることが好ましい。
【0013】
底面基板10のセンサ素子保持基板11側の面上には、底面基板10を加熱する第2発熱手段19が設けられている。上面基板13のセンサ素子保持基板11側の面上には、上面基板13を加熱する第3発熱手段20が設けられている。第2発熱手段19及び第3発熱手段20は、底面基板10及び上面基板13における結露を防止する。
【0014】
図2に示すように、底面基板10は、四角形状の基板本体22と、当該基板本体22の表面に設けられた第2発熱手段19とを有する。基板本体22の4隅には、積層用貫通孔24が設けられている。第2発熱手段19は、基板本体22の略全面を覆うサーペンタイン形状を有し、基板本体22と一体化されている。第2発熱手段19の両端はリード25に接続される。リード25は、リード取り出し側10fに引き出される。
【0015】
センサ素子保持基板11は、保持基板本体26、保持基板本体26上に設けられた第1発熱手段18、第1熱伝導式センサ素子16及び第2熱伝導式センサ素子17を有する。保持基板本体26は、表面に気体入口側端部27と気体出口側端部28を結ぶ帯状の第1溝部29と、当該第1溝部29の略中央に厚さ方向に貫通した矩形状の第1開口部30と、4隅に積層用貫通孔24とを有する。第1発熱手段18、第1熱伝導式センサ素子16及び第2熱伝導式センサ素子17は、その長手方向が、第1溝部29の長手方向と直交するように配置されている。第1発熱手段18は、第1開口部30の中央であって、第1溝部29を挟んで両側の岸部31、32に架橋支持されている。第1発熱手段18はサーペンタイン形状を有する。第1熱伝導式センサ素子16及び第2熱伝導式センサ素子17は、第1発熱手段18を挟んで両側に、第1発熱手段18と平行して、岸部31、32に架橋支持されている。
【0016】
流路形成基板12は、センサ素子保持基板11側の面の、第1溝部29に対応する箇所に第2溝部33と、前記第1開口部30に対応する箇所に厚さ方向に貫通した第2開口部34と、4隅に積層用貫通孔24とを有する。流路形成基板12とセンサ素子保持基板11を積層したとき、第2溝部33と第1溝部29により気体流路6が形成される。第2溝部33は第1熱伝導式センサ素子16と前記第2熱伝導式センサ素子17の上側の流路を、第1溝部29は第1熱伝導式センサ素子16と第2熱伝導式センサ素子17の下側の流路となる。第1溝部29と第2溝部33の溝の深さを調整することによって、気体流路6の体積を調整することができ、これによって気体の流速を調整することができる。なお、第1開口部30と第2開口部34は、後述するブリッジヒータにより測定対象の気体を直接加熱する場合においてのみ必須要素であり、凹部であってもよい。
【0017】
上面基板13は、四角形状の基板本体35と、当該基板本体35の表面に設けられた第3発熱手段20とを有する。基板本体35の4隅には、積層用貫通孔24が設けられている。第3発熱手段20は、第2発熱手段19と同じである。第3発熱手段20の両端はリード36に接続される。リード36は、リード取り出し側13fに引き出される。
【0018】
図3に示すように、保持基板本体26は、リード取り出し側11fの岸部32に、第1熱伝導式センサ素子16及び前記第2熱伝導式センサ素子17を支持するセンサ用凹部37と、第1発熱手段18を支持する発熱手段用に2つの端子用溝38とを有する。リード取り出し側11fに対向した岸部31にはセンサ用のスルーホール39と、発熱手段用凹部40が設けられている。当該スルーホール39は、図示しないが、底面基板10の基板本体22の対応箇所に設けられたスルーホールを介して、基板本体22の裏側へと通じており、基板本体22の裏面に設けられた配線を通じてリード取り出し側10fへ引き出されたリードに接続されている。但し、センサ素子保持基板11が第1開口部30に代えて、凹部を備える場合には、保持基板本体26の裏面に配線を設けて、リード取り出し側11fへ引き出されたリードに接続してもよい。
図2に示した第2発熱手段19からのリード25及び第3発熱手段20からのリード36と共に、同じリード取り出し側10f、11f、13fにリードを集中させることで、例えば人工呼吸器等の配管内に熱伝導式センサ1を挿入して、配管内を流れる呼気中の湿度等の計測を行う際に、一方向にまとめてリードを取り出せるため、作業性に優れる。
【0019】
(製造方法)
底面基板10及び上面基板13の加工は、例えばセラミック基板のグリーンシート上にPt、Pt−Pd合金、Ag−Pd合金等の白金系又は銀パラジウム系発熱体ペーストを所定のパターンに印刷し、基板とヒータを同時焼成して行うことができる。
【0020】
センサ素子保持基板11は、まず、機械加工又はドライエッチング加工等により、第1溝部29、第1開口部30、センサ用凹部37、端子用溝38、スルーホール39、発熱手段用凹部40を形成する。端子用溝38に導電ペーストを塗布して薄膜電極を形成する。第1及び第2熱伝導式センサ素子16、17は、好ましくはPtの細線を、第1発熱手段18はレーザ加工又は放電加工等された、ニクロム(Ni−Cr合金)、又はカンタル(Fe‐Cr‐Al‐Co合金)の薄板を、夫々、対応する薄膜電極に接続することによって形成することができる。流路形成基板12は、機械加工又はドライエッチング加工等により、第2溝部33、第2開口部34を形成することにより作製できる。
【0021】
底面基板10、センサ素子保持基板11、流路形成基板12、上面基板13は、各基板の4隅の対応する箇所に設けられた積層用貫通孔24に、例えばセラミック製のボルトを挿入し、当該ボルトにナットを締め込むことにより固定することによって積層される。基板間の熱伝導性を高めるために、各基板上に放熱グリスを塗布してから積層してもよい。上記のようにして熱伝導式センサ1を作製することができる。
【0022】
(作用・効果)
次に、上記熱伝導式センサ1の作用及び効果について説明する。熱伝導式センサ1は、例えば500℃に加熱された白金製熱伝導式センサ素子から雰囲気への熱伝導が雰囲気の湿度に応じて変化することを利用して気体中の絶対湿度、即ち空気の単位体積当たりの水蒸気の質量(g/m
3)を測定するのに適する。気体中の湿度が高くなると熱伝導式センサ素子から気体への熱伝導性が高くなるので、第1及び第2熱伝導式センサ素子16、17に流す電流が一定の場合には、第1及び第2熱伝導式センサ素子16、17の温度が下がって出力電圧が低くなる。一方、気体中の湿度が低くなると熱伝導式センサ素子から気体への熱伝導性が低くなるので、第1及び第2熱伝導式センサ素子16、17に流す電流が一定の場合には、第1及び第2熱伝導式センサ素子16、17の温度が高くなり、出力電圧が高くなる。
【0023】
熱伝導式センサ1において、気体入口4から入った気体は、第1発熱手段18、第2発熱手段19、第3発熱手段20によって、35〜110℃、好ましくは100〜110℃に加熱される。米国呼吸療法学会(AARC:American Association of Respiratory Care)により、人工呼吸器の加温加湿器の設定温度は33℃±2、相対湿度100%が目安とされており、35℃未満では十分な結露防止効果が得られない。一方、110℃を超えても結露を防止する上でのさらなる効果は無く、却って人工呼吸器の安全性の点で問題となる可能性があり、また熱伝導式センサ素子の校正を適切に行うことが難しくなる。当該気体は第1熱伝導式センサ素子16の近傍を通過した後、第1発熱手段18によって加熱されて第2熱伝導式センサ素子17の近傍を通過するため、第2熱伝導式センサ素子17の近傍の周囲温度は、第1熱伝導式センサ素子16の近傍の周囲温度よりも高くなる。その結果、第2熱伝導式センサ素子17の出力電圧が、第1熱伝導式センサ素子16の出力電圧よりも高くなる。第1及び第2熱伝導式センサ素子16、17の出力の平均を検出することによって、気体の流速の影響を打ち消して気体中の絶対湿度を求めることができる。但し、気体の流れが激しい乱流である場合や、流速が非常に速い場合は、出力の平均を検出するだけでは流速の影響を打ち消すことが難しくなる場合がある。そこで、センサ本体2の大きさ、気体入口4と気体出口5の断面積等を調整して気体の流速を制御し、第1及び第2熱伝導式センサ素子16、17の少なくとも周辺においては層流になるようにすることが好ましい。また、予め、種々の流速及び湿度について測定データを蓄積しておき、これらのデータに基づき第1及び第2熱伝導式センサ素子16、17の出力を校正するようにしてもよい。
【0024】
第1及び第2熱伝導式センサ素子16,17は、熱時定数の少なくとも5倍以上のパルス幅、例えば熱時定数が10msecの場合にはパルス幅50msec以上、のパルスを印加して加熱することにより、絶対湿度を検出することができる。また、パルス電流は、第1及び第2熱伝導式センサ素子16、17の所望の感度が得られる温度、例えば500℃〜600℃、に応じて適宜設定することができる。
【0025】
熱伝導式センサ1は、第1発熱手段18、第2発熱手段19、第3発熱手段20によって、第1及び第2熱伝導式センサ素子16、17及び各基板上での結露を防止するので、より適切な測定をすることができる。
【0026】
熱伝導式センサ1は、上記のように第1発熱手段18、第2発熱手段19、第3発熱手段20が気体を迅速に加熱することによって、応答速度を向上することができる。応答速度をより高めるためには、熱伝導式センサ1を構成する気体流路6、底面基板10、センサ素子保持基板11、流路形成基板12および上面基板13の寸法をより小さくし、基板材料としてはセラミックなどの熱伝導率の大きな絶縁材料を選ぶことが望ましい。
【0027】
熱伝導式センサ1は、内部に水滴が浸入した場合でも、第1発熱手段18、第2発熱手段19、第3発熱手段20がより水滴を迅速に除去することにより、第1及び第2熱伝導式センサ素子16、17の損傷を予防すると共に、第1及び第2熱伝導式センサ素子16、17が正常に動作するまでに要する復帰時間を短縮することができる。復帰時間をより短縮するためには、熱伝導式センサ1を構成する気体流路6、底面基板10、センサ素子保持基板11、流路形成基板12および上面基板13の寸法をより小さくし、基板材料としてはセラミックなどの熱伝導率の大きな絶縁材料を選ぶことにより熱応答速度を向上させることが望ましい。
【0028】
熱伝導式センサ1は、第1発熱手段18、第2発熱手段19、第3発熱手段20により被測定対象である気体の温度がほぼ一定となるので、第1及び第2熱伝導式センサ素子16、17に流す電流を一定にした場合に、これらの素子の絶対湿度に対する感度がほぼ一定の条件で測定できる。しかしながら、絶対湿度に対する感度、つまり絶対湿度の変化量に対する熱伝導率の変化量は、温度依存性を持っており110℃付近を境に温度が高くなればなるほど大きくなる。そのため、気体の流速の影響により、第1熱伝導式センサ素子16の近傍の周囲温度に比べて、第2熱伝導式センサ素子17の近傍の周囲温度が高くなるにつれて、絶対湿度に対する感度は一定ではなくなる。さらには、気体流路6の加熱温度つまり周囲温度を35〜110℃に設定できるようにした場合には、周囲温度の変化に対して感度は一定ではなくなる。絶対湿度に対して一定の感度が得られるようにするためには、電流一定条件ではなく、温度が一定となるように熱伝導式センサ素子に印加する電圧を制御して、印加電圧をセンサの出力電圧として測定する必要がある。具体的には、絶対湿度に対して不感帯となる110℃付近と特定温度(例えば500℃)の2点において検出を行い、110℃付近では周囲温度に対するセンサ出力の校正(キャリブレーション)を行うことが望ましい。
【0029】
熱伝導式センサは、例えば人工呼吸器の吸気又は呼気配管等の湿度が高い流路に挿入して湿度をモニターするのに大変有用である。
【0030】
(変形例)
上記実施形態の場合、センサ本体2が順に積層された底面基板10、センサ素子保持基板11、流路形成基板12、上面基板13を備える場合について説明したが、本発明はこれに限らない。センサ本体2は壁面で囲まれた気体流路を備える任意の形態であってよい。例えばセラミック製、金属製の筒状体、箱状体、又はこれらと基板との複合体であってよい。例えば筒状体である場合、該筒状体の一の端面の略中央部に気体入口4と、該端面に対向する他の端面に気体出口5と、該筒状体内部に第1熱伝導式センサ素子16、第2熱伝導式センサ素子17、及び第1発熱手段18を気体流路6に略直交して保持するための保持手段と、該内部下部に第2発熱手段19と、該内部上部に第3発熱手段20とを備えることとしてもよい。
【0031】
第1及び第2熱伝導式センサ素子16、17の出力の平均を検出することによって、気体の流速の影響を打ち消して気体中の絶対湿度を求める場合について説明したが、本発明はこれに限らない。第1及び第2熱伝導式センサ素子16、17の出力の差電圧を検出することによって、流速を測定することもできる。
【0032】
熱伝導式センサ1は、
図4に示すように、熱均一化基板42をさらに備えることとしてもよい。熱均一化基板42はセンサ素子保持基板11と底面基板10の間に備えられる。熱均一化基板42は、四角形状であって、底面基板10側表面にリード用溝43と、4隅に積層用貫通孔24とを有する。熱均一化基板42は、第2発熱手段19の熱を底面基板10全面に亘って均一化することにより、底面基板10の端部においても結露を防止することができる。図示しないが、熱均一化基板42は、さらに流路形成基板12と上面基板13の間に設けてもよい。
【0033】
熱伝導式センサ1は、
図5に示すようにセンサ素子保持基板11の裏側に、ブリッジヒータ44を備えることとしてもよい。本図の場合、センサ素子保持基板11と底面基板10の間に、第1ブリッジヒータ保持基板45が設けられる。
【0034】
図6に示すように、第1ブリッジヒータ保持基板45は、保持基板本体26の第1開口部30に対応する部分に第1ブリッジヒータ用凹部46と、第1ブリッジヒータ用凹部46に架橋支持されたブリッジヒータ44とを備える。なお、上記第1発熱手段18も、架橋支持される場合にはブリッジヒータと称し得るが、第1発熱手段18は第1及び第2熱伝導式センサ素子16、17の形態に応じて片持ち支持であってもよい。なお、第1ブリッジヒータ用凹部46に代えて、厚さ方向に貫通したブリッジヒータ用開口部を設けてもよい。
【0035】
熱伝導式センサ1は、
図7に示すようにセンサ素子保持基板11の表側に、ブリッジヒータ44を備えることとしてもよい。本図の場合、流路形成基板12の直上に第2ブリッジヒータ保持基板47が備えられる。第2ブリッジヒータ保持基板47は、流路形成基板12の第2開口部34に対応する部分に第2ブリッジヒータ用凹部48と、第2ブリッジヒータ用凹部48に架橋支持されたブリッジヒータ44とを備える。なお、第2ブリッジヒータ用凹部48に代えて、厚さ方向に貫通したブリッジヒータ用開口部を設けてもよい。
【0036】
熱伝導式センサ1は、ブリッジヒータ44が気体流路6中に存在する気体を直接加熱することによって、結露を防止するだけでなく、気体を迅速に加熱することによって応答速度をより向上することができる。応答速度を高めるためには、気体流路6の容積をより小さくすると共に、ブリッジヒータ44の構造については、サーペンタイン形状をより微細にする等により表面積を大きくすることで、ブリッジヒータ44の熱が気体に伝導しやすくすることが望ましい。
【0037】
熱伝導式センサ1は、底面基板10及び上面基板13に上記熱均一化基板42を設ける場合、センサ素子保持基板11と熱均一化基板42の間にそれぞれ第1ブリッジヒータ保持基板45、第2ブリッジヒータ保持基板47を備えることとしてもよい。
【0038】
以下、本発明の他の実施形態について説明するが、第1実施形態と異なる点についてのみ説明し、例えば底面基板10、上面基板13等の共通部分については説明を省略する。
【0039】
<第2実施形態>
第2実施形態のセンサ素子保持基板について説明する。
図8に示すセンサ素子保持基板としてのMEMS(Micro Electro Mechanical System:微小電気機械システム)チップ保持基板50は、MEMSチップ51を備える。
【0040】
図9に示すように、MEMSチップ保持基板50は、保持基板本体52と、MEMSチップ51とを備え、流路形成チップ53及び流路形成チップ保持基板54が積層される。
【0041】
保持基板本体52は、一端から他端を結ぶ溝部55と、厚さ方向に凹となる中央凹部56と、当該中央凹部56に設けられたスルーホール57とを有する。
【0042】
保持基板本体52は、中央凹部56にMEMSチップ51を保持する。MEMSチップ51は、気体入口側端部58と気体出口側端部59を結ぶ第1溝部60を備える。MEMSチップ51は、第1溝部60の気体入口側端部58側に架橋支持された第1熱伝導式センサ素子61、気体出口側端部59側に架橋支持された第2熱伝導式センサ素子62、及び、前記第1熱伝導式センサ素子61と前記第2熱伝導式センサ素子62の間に架橋支持された第1発熱手段63とを備える。第1熱伝導式センサ素子61、第2熱伝導式センサ素子62、及び第1発熱手段63の両端子部にはスルーホール64が設けられている。スルーホール64は、保持基板本体52の対応するスルーホール57と電気的に接続されて、保持基板本体52の裏面へ通じており、当該裏面に設けられた配線(図示しない)に接続されている。
【0043】
流路形成チップ53は、矩形の板状部材であり、MEMSチップ51の第1溝部60に対応する第2溝部65を有する。流路形成チップ53とMEMSチップ51を積層したとき、第2溝部65と第1溝部60により気体流路が形成される。このように、MEMSチップ51に対応したサイズの気体流路として微細化することで、熱伝導式センサ1の応答速度をより向上することができる。
【0044】
流路形成チップ保持基板54は、一端から他端を結ぶ溝部66と、厚さ方向に凹となる中央凹部67とを有する。流路形成チップ保持基板54は、中央凹部67に流路形成チップ53を保持する。
【0045】
MEMSチップ51は、例えばSOI基板を用いて、下記方法により作ることができる。
(1)表面に熱酸化膜を有するSOI基板上の、第1熱伝導式センサ素子61、第2熱伝導式センサ素子62、及び、第1発熱手段63の各形成部位にレジストパターンを形成した後、ウェット又はドライエッチングにより各形成部位と第1溝部60の一部を形成する。さらに、レジストパターンを剥離した後、エッチングにより垂直面に露出するシリコン表面を保護するために、再度熱酸化膜を形成する。
(2)第1熱伝導式センサ素子61、第2熱伝導式センサ素子62、及び、第1発熱手段63を、例えばPt、Ni、及びCuからなる群より選ばれる金属のスパッタ膜により形成する。又は、第1熱伝導式センサ素子61及び第2熱伝導式センサ素子62を、半導体拡散抵抗体で構成したブリッジヒータ上にPN接合ダイオードからなる温度センサを搭載することによって形成し、第1発熱手段63として半導体拡散抵抗体ヒータを形成する。
(3)定法に従いスルーホール及び電極パッドを形成する。
(4)埋め込み酸化膜層をウェットエッチングした後、アルカリ性エッチング液を用いてシリコン支持層に対して異方性エッチングを行い、第1溝部60の残りの部分を形成する。
【0046】
<第3実施形態>
第3実施形態に係るセンサ素子保持基板について説明する。
図10に示すセンサ素子保持基板としてのMEMSチップ保持基板70は、MEMSチップ71を保持すると共に、裏側に第1ブリッジヒータ保持基板72が積層される。
【0047】
図11に示すように、MEMSチップ保持基板70は、気体入口側溝部73と気体出口側溝部74、及びその間にMEMSチップ保持用開口部75を備える。MEMSチップ保持基板70は、MEMSチップ保持用開口部75の略中央部にMEMSチップ71を保持する。
【0048】
本実施形態では、MEMSチップ保持基板70の直下に、第1ブリッジヒータ保持基板72が積層される。第1ブリッジヒータ保持基板72は、保持基板本体76と、保持基板本体76上にブリッジヒータ77、77とを有する。保持基板本体76は、気体入口側溝部73側と気体出口側溝部74側とに、ブリッジヒータ用凹部78、79を左右一対有する。保持基板本体76の表面には、ブリッジヒータ用凹部78、79の周囲にヒータ設置溝80が形成されている。ブリッジヒータ用凹部78、79に代えて、厚さ方向に開口したブリッジヒータ用開口部を設けてもよい。
【0049】
ブリッジヒータ77、77は、それぞれ、ブリッジヒータ用凹部78、79に対応してヒータ設置溝80に設置される。ブリッジヒータ77、77は、MEMSチップ71を挟んで両側に配置される。ブリッジヒータ77、77同士は、接続溝81において図示しない導体によって電気的に接続される。
【0050】
図12に示すように、MEMSチップ保持基板70の直上に、流路形成チップ保持基板82及び第2ブリッジヒータ保持基板83が順に積層される。流路形成チップ保持基板82は、気体入口側溝部84と気体出口側溝部85、及びその間に厚さ方向に開口した流路形成チップ保持用開口部86を備える。流路形成チップ保持基板82は、流路形成チップ保持用開口部86のMEMSチップ71に対応する箇所に流路形成チップ87を保持する。流路形成チップ87は、MEMSチップ71の第1溝部88に対応する第2溝部89を備える。流路形成チップ保持基板82とMEMSチップ保持基板70を積層したとき、第1溝部88と第2溝部89によって気体流路が形成される。
【0051】
第2ブリッジヒータ保持基板83は、第1ブリッジヒータ保持基板72と同様、保持基板本体90と、保持基板本体90上の凹部に備えられたブリッジヒータ77、77とを有する。ブリッジヒータ77、77は、MEMSチップ71を挟んで両側に配置される。
【0052】
ブリッジヒータ77、77は、MEMSチップ71の周辺の気体を直接加熱することで、MEMSチップ71の気体流路中の気体を加熱する。これにより結露を防止するだけでなく、気体を迅速に加熱することによって応答速度をより向上することができる。より応答速度を高めるためには、MEMSチップ保持用開口部75及び流路形成チップ保持用開口部86とその周辺の空洞部の容積をより小さくすると同時に、ブリッジヒータ77、77の構造については、サーペンタイン形状をより微細にするなどにより表面積を大きくすることで、ブリッジヒータ77、77の熱がMEMSチップ71の周辺および気体流路に伝導しやすくすることが望ましい。