(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6912047
(24)【登録日】2021年7月12日
(45)【発行日】2021年7月28日
(54)【発明の名称】中腰作業補助具
(51)【国際特許分類】
A47C 16/00 20060101AFI20210715BHJP
A47C 9/00 20060101ALI20210715BHJP
A01B 75/00 20060101ALI20210715BHJP
【FI】
A47C16/00 Z
A47C9/00 Z
A01B75/00
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-125128(P2020-125128)
(22)【出願日】2020年7月22日
【審査請求日】2020年8月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520273669
【氏名又は名称】佐々木 創太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135585
【弁理士】
【氏名又は名称】西尾 務
(74)【代理人】
【識別番号】100147038
【弁理士】
【氏名又は名称】神谷 英昭
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 創太郎
【審査官】
小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第02/067728(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0137574(US,A1)
【文献】
特開2001−025307(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3047612(JP,U)
【文献】
特開2002−360034(JP,A)
【文献】
韓国登録特許第10−1562177(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B51/00−61/04
A01B63/14−67/00
A01B71/00−79/02
A47C16/00
A47C 9/00
A47C 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中腰作業を行う作業者の腰に生じる負荷、それによる腰痛を軽減する中腰作業補助具であって、中腰姿勢の作業者の鳩尾部にあてがわれ、その鳩尾部に対応した大きさと形状の胸当てと、
この胸当ての中心から直角下方に伸びだし地面に向かう支軸と、
前記支軸の地面近傍の所定の高さから胸当てと同方向に伸び作業者の膝を支える膝当てと
前記膝当ての端部から前記支軸と同方向で地面に向かう2つの接地部とを備え、前記接地部のみで地面に接地することを特徴とする中腰作業補助具。
【請求項2】
請求項1記載の中腰作業補助具であって、その膝当てが支軸に対して上下位置を調整可能としたことを特徴とする中腰作業補助具
【請求項3】
請求項1または2のいずれかに記載された中腰作業補助具であって、その接地部の接地側により広い接地面を有する自在端部が設けられていることを特徴とする中腰作業補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、園芸作業や農作業、その他多分野の作業において、草刈りなど前傾で中腰作業を行う作業者の腰に生じる負荷、それによる腰痛を軽減する中腰作業補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の草取り作業用台車は、4輪の台車1(特許文献1の
図1。以下同じ。)の上に膝を受ける膝受けマット3と、胸部を受ける胸受けマット5とを備え、同文献の
図3に示されるように、草取り作業時に作業者の上半身が地面にほぼ水平なうつ伏せ状態となり、両手を使って確実な草取りをすることができる。
【0003】
特許文献2に記載の作業用補助椅子は、草取り等の作業に用いられるもので、杖状の軸1(特許文献2の
図1。以下同じ。)に腰掛ける為の座面3と地面側に短い軸2とを備え、同文献
図2に示されるように使用するもので、杖替わりになり、持ち運びができ、しゃがんだままの姿勢を長く保つことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3047612号公報
【特許文献2】実用新案登録第3074328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の草取り作業用台車によれば、4輪の台車であるため持ち運びが楽でなく、また、台車の上で水平な状態で作業するため、作業範囲はその姿勢で手の届く範囲に限られる、という問題があった。特許文献2に記載の作業用補助椅子によれば、持ち運びは楽ではあるが、支えられているのは座面にすわる腰だけで、しかも、同文献の
図2に示されるように、かなりの前傾姿勢で胸が膝に近くなる姿勢となり、さらなる改善を要するという問題があった。
【0006】
このような問題を解決するべく、本発明は、中腰作業に用いられ、持ち運びが容易で、少なくとも胸部を支えて、腰への負担をより軽減できる前傾姿勢を長く保持でき、より広範囲に作業できる、中腰作業補助具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の中腰作業補助具10(
図1、2)は、中腰作業を行う作業者の腰に生じる負荷、それによる腰痛を軽減するものであって、中腰姿勢の作業者の鳩尾部にあてがわれる胸当て1と
、この胸当て1はその鳩尾部に対応した大きさと形状であり、この胸当て1
中心から直角下方に伸びる支軸2の胸当て1とは反対側の端部である接地部3とを備え、この接地部3が地面にあてがわれることを特徴とする。
【0008】
この中腰作業補助具10によれば、
図1に示すように、胸当て1と
この胸当て1から直角下方に伸びる支軸2と、この支軸2の一部とされた接地部3とだけで構成され、その改良版である中腰作業補助具10Cの使用状態図(
図8)でも解るように、仮に木製だとして重量は軽く、持ち運びが容易である。
【0009】
また、胸当て1により作業者の鳩尾部が地面に対して中腰姿勢で保持され、腰への負担がより軽減できる前傾姿勢を長く保持できる。さらに、地面に当たっているのは、接地部3だけなので、補助具10を移動させることなく、作業者は接地部3を中心として前後左右に上体を動かすことができ、より広範囲に作業できる。
【0010】
本発明の中腰作業補助具10A(
図3)は、前記中腰作業補助具10であって、更に、支軸2の地面近傍の
所定の高さから胸当て1と同方向に伸び作業者の膝を支える膝当て6を設けたことを特徴とする。この中腰作業補助具10Aによれば、加えて、補助具10の中腰姿勢において膝も膝当て6で支えられるので、その改良版である中腰作業補助具10Cの使用状態図(
図8)でも解るように、腰への負担がさらに軽減される。また、腰への力を完全に脱力できる。
【0011】
本発明の中腰作業補助具10B(
図4、5)は、前記中腰作業補助具10Aであって、前記接地部3を、膝当て6Aの端部から地面に向かう2つの接地部3A
とし、前記接地部3Aのみで地面に接地するようにしたことを特徴とする。この中腰作業補助具10Bによれば、膝当て6Aの端部から地面に向かう2つの接地部3Aを備えているので、その改良版である中腰作業補助具10Cの使用状態図(
図8)でも解るように、作業者の鳩尾部と膝とがより安定的に支えられ、中腰作業を更に楽なものとすることができる。
【0012】
本発明の中腰作業補助具10C(
図6、7、8)は、中腰作業補助具10Bであって、その膝当て6Bが支軸2Bに対して上下位置を調整可能に固定したことを特徴とする。この中腰作業補助具10Cによれば、調整ピン7を抜き差しすることで、膝当て6から胸当て1までの間隔を調整でき、作業者の身体的相違(主に異なる身長)に対応することができる。
【0013】
本発明の中腰作業補助具10D(
図9)は、中腰作業補助具10Cであって、その接地部3Bの接地側により広い接地面を有する自在端部8が設けられていることを特徴とする。この中腰作業補助具10Dによれば、傾きのある地面に対応でき、また、広い面で接地するのでより柔らかい地面にでもめり込むことが少なくなる。
【0014】
本発明の中腰作業補助具10E(
図10)は、中腰作業補助具10から10Dであって、その補助具10から10Dを作業者の肩から腰に掛けて吊り下げる吊り下げバンド9を備えていることを特徴とする。この中腰作業補助具10Eによれば、補助具10から10Dの効果に加え、移動する際に補助具10Eを手で持つ必要がなく、例えば、一方の手に鎌Cを持ち、他方の手に作業に必要なものを入れた手提げ袋Kを持って移動し、別の場所での中腰作業を続けることができる。
【発明の効果】
【0015】
上記課題を解決するための手段で記載した通りである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図10】本発明の中腰作業補助具の他例を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0017】
上記課題を解決するための手段で記載した通りである。
【実施例1】
【0018】
図1、2は、本発明の一例である中腰作業補助具10を示している。
図1はその正面図、
図2はその側面図である。なお、これより図中同じ部分については同じ符号を付して、重複説明を省略する。
【0019】
中腰作業補助具10は、中腰作業を行う作業者の腰に生じる負荷、それによる腰痛を軽減するものであって、中腰姿勢の作業者の鳩尾部にあてがわれる胸当て1と、この胸当て1
の中心から直角下方に伸びだし地面に向かう支軸2と、この支軸2の胸当て1とは反対側の端部である接地部3とを備え、この接地部3が地面にあてがわれるものである。
【0020】
胸当て1は、作業者の鳩尾部にあてがわれるもので、その鳩尾部に対応した大きさと形状になっている。その平面形状は、
図2の視Aで解るように長方形であるが、この形状に限定されず、円形や、楕円形や、正方形や、輪形状などであってもよい。また、角部を丸くして、人体へのあたりを柔らかくするようにしてもよい。
【0021】
更に、胸当て1の形状は、立体的にかまぼこ形や、ドーム形状とすれば、より作業者の鳩尾部に対応しやすい、ということもある。
【0022】
一方、この補助具10では、胸当て1の作業者側にクッション1が設けてある。これは、あればより人当りが柔らかくなるが、必ずしも必須のものではない。クッション1の形状は、胸当て1の形状にそったものである。
【0023】
クッション1の素材は、スポンジゴムなどが好適だが、これに限定されず、同様のクッション機能を発揮するものであれば、いずれも採用可能である。
【0024】
支軸2は丸棒形状であるが、これに限定されず、角棒形状、三角棒形状などであってもよい。角棒形状の場合、角部に丸みをつけるようにしてもよい。
【0025】
接地部3は、この例では、支軸2の接地側の先端部分であるが、必ずしもこれに限定されるものではなく、支軸2を直接または間接に支え、地面に接触し、あてがわれるものであれば良い。また、この例では、接地部3の先端部分をキャップ4で覆っているので、このキャップ4を適度な硬さの合成樹脂製とすれば、当たりが柔らかくなる。しかしながら、このキャップ4は必須のものではない。
【0026】
胸当て1、支軸2、接地部3の素材は、例えば木材とするのが良い。木材で製作した場合の重さは400グラム程度であり、作業者が女性であっても持ち歩くのに支障はない。また、素材は木材に限定されず、アルミや鉄の角パイプと丸パイプの組み合わせや、合成樹脂製などとしてもよい。その重さは、なるべく軽くするようにするのが良い。
【実施例2】
【0027】
図3は、本発明の他例である中腰作業補助具10Aの正面図を示している。この中腰作業補助具10Aは、中腰作業補助具10に比べ、支軸2の地面近傍
の所定の高さから胸当て1と同方向に伸びる膝当て6が追加されている点が異なる。この膝当て6は、作業者が中腰作業において、胸当て1を鳩尾部にあてがった際にちょうど、その両膝部分が乗っかるような高さに設けられている。よって、胸当て1と同方向に長辺のある長方形形状であり、支軸2から両膝が乗せられる程度に横方向に延びだしている。
【0028】
膝当て6の形状や素材も、胸当て1と同様に構成することができる。この中腰作業補助具10Aによれば、補助具10の効果に加えて、中腰姿勢において膝も膝当て6で支えられるので、その改良版である中腰作業補助具10C(
図6、7、8)でも解るように、腰への負担がさらに軽減され、腰への力を完全に脱力できる。
【0029】
中腰作業補助具10Cにおける膝当て6Bと同様に、この補助具6Aで作業する際には、作業者の鳩尾部と膝との両方が支えられるので、作業者はちょうど中腰姿勢で補助具6Aに乗っかり、宙に浮いたような状態となり、腰への負担は大幅に軽減され、かつ、地面に対しては、適度な前傾姿勢なので、作業者への負荷が大幅に軽減される。
【0030】
また、膝当て6は、支軸2の左右に延びているが、作業者によっては、片膝だけを乗せ、他方は乗せないで中腰作業を行うことができる。加えて、適度な高さの椅子に座っての中腰作業でも、この補助具10Aを好適に使うことができる。この点、補助具10Aは、文献1のものに比べ、中腰作業における自由度が高い。
【0031】
この中腰作業補助具10Aの重さは、補助具10に比べ、膝当て6の部分だけ(500グラム程度)重くなるが、それでも全体で1キログラム以下であり、女性の作業者でも容易に持ち運ぶことができる。なお、胸当て1、支軸2、接地部3、膝当て6の形状と素材とを工夫することにより更に軽量化が可能である。
【実施例3】
【0032】
図4、5は、本発明の他例である中腰作業補助具10Bの正面図と側面図を示している。この中腰作業補助具10Bは、上記の中腰作業補助具10Aに比べ、接地部3を、膝当て6Aの端部から地面に向かう2つの接地部3Aとしたことを特徴とする。
【0033】
この中腰作業補助具10Bによれば、膝当て6Aの端部から地面に向かう2つの接地部3Aを備えているので、その改良版である中腰作業補助具10Cの使用状態図(
図8)でも解るように、作業者の鳩尾部と膝とがより安定的に支えられ、中腰作業を更に楽なものとすることができる。つまり、ひとつの接地部3を2つの接地部3Aとしたことで、補助具10Bを作業員が使い始める時には左右にグラグラしないので、安定して補助具10Bを鳩尾部、膝にあてがうことができる。一方、作業範囲の自由度の点では、左の接地部3Aでより左側へ、右の接地部3Aでより右側へ、作業者の手の届く範囲をより広げることができる。
【実施例4】
【0034】
図6、7は、本発明の他例である中腰作業補助具10Cの正面図と
斜視図とを示し、
図8は、中腰作業補助具10Cの使用状態を示している。この中腰作業補助具10Cは、その膝当て6Bが支軸2Bに対して上下位置を調整可能としたことを特徴とする。
【0035】
支軸2Bには、接地側に複数の調整孔2aが設けられ、また、膝当て6Bには、この調整孔2aに対応した位置に一つの貫通孔6aが設けられている。これらの調整孔2aと貫通孔6aとは同じ内径とするのがよい。調整ピン7は、貫通孔6aと調整孔2aとを貫通して反対側に突出している。
【0036】
この例では、図示はされていないが、調整ピン7の突出部には、中心軸を通るピン孔が設けられ、このピン孔にスナップピン(JIS B 1360:2006)を抜き差しし、調整ピン7を抜け止め可能に貫通孔6aと調整孔2aとに差し入れ、また、抜くこともできる。この膝当て6Bを支軸2Bに対して上下位置を調整可能にする固定する方法は、一例であり、これに限定されない。
【0037】
この中腰作業補助具10Cによれば、これまでの補助具10から10Bの効果に加え、調整ピン7を抜き差しすることで、膝当て6Bから胸当て1までの間隔を調節でき、作業者の身体的相違(主に異なる身長)に対応することができる。
【0038】
図8に示すように作業者Hは、補助具10Cによれば、自分の身長に合わせて調整ピン7を抜き差しして、膝当て6Bを支軸2Bに固定して、鎌Cで草刈り作業などをできるので、作業がより楽になる。
【実施例5】
【0039】
図9は、本発明の他例である中腰作業補助具10Dの斜視図を示している。この中腰作業補助具10Dは、その接地部3Bの接地側により広い接地面を有する自在端部8が設けられていることを特徴とする。
【0040】
この中腰作業補助具10Dによれば、
図9に符号Eで示したように、傾きのある地面に対応でき、また、広い面で接地するのでより柔らかい地面にでもめり込むことが少なくなる。よって、補助具10Dは、雨中や雨後などの中腰作業でも、好適に用いることができる。
【0041】
自在端部8は、一般に市販されているものでも良いが、この市販品に適切な追加工したものであっても良く、全部を自作したものでもよい。
【実施例6】
【0042】
図10は、本発明の他例である中腰作業補助具10Eの斜視図を示している。この中腰作業補助具10Eは、中腰作業補助具10から10Dのいずれかを作業者の肩から腰に掛けて吊り下げる吊り下げバンド9を備えていることを特徴とする。
【0043】
吊り下げバンド9は、B部詳細に示すように、支軸2Bの適切な位置に巻き付け固定される固定リング9aと、この固定リング9aの外径に、回転可能で上下移動は制限されるように嵌められている回転リング9bと、この回転リング9bの外径の一部から延びだしたバンド掛け9cと、このバンド掛け9cに通されたバンド部9dとを備えている。
【0044】
吊り下げバンド9は、作業者への巻き付け長さと、巻き付け部分からの伸びだし長さが調節可能なものがよく、一般に市販されているものが好適だが、これに限定されない。
【0045】
この中腰作業補助具10Eによれば、補助具10から10Dの効果に加え、移動する際に補助具10Eを手で持つ必要がなく、例えば、一方の手に鎌Cを持ち、他方の手に作業に必要なものを入れた手提げ袋Kを持って移動し、別の場所での中腰作業を続けることができる。
【0046】
なお本発明の形態と作用効果は、上記の例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の中腰作業補助具は、園芸作業や農作業、その他多分野(例えば、大工、左官、造園、植林、美術製作、地生作物の収穫、介護、家事など)の作業において、草刈りなど前傾で中腰作業を行う作業者の腰に生じる負荷、それによる腰痛を軽減することが要請される産業分野に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0048】
1 胸当て
2〜2B 支軸
3〜3B 接地部
4 接地キャップ
5 クッション
6〜6B 膝当て
7 調節ピン
8 自在端部
9 吊り下げバンド
10〜10E 中腰作業補助具
【要約】
【課題】農作業や園芸作業、その他多分野の作業において、草刈りなど前傾で中腰作業を行う作業者の腰に生じる負荷、それによる腰痛を軽減する中腰作業補助具10を提供することを課題とする。
【解決手段】中腰姿勢の作業者の鳩尾部にあてがわれる胸当て1と、この胸当て1から伸びだし地面に向かう支軸2と、この支軸2の胸当て1とは反対側の端部である接地部3とを備え、この接地部3が地面にあてがわれることを特徴とする中腰作業補助具10。
【選択図】
図1