(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第一成分として、下記式
(1’)
【化8】
(式
(1’)中、R
1,R
2は、それぞれ同一または異なって
、R,ROCO,RCOOを表わし、Rはアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を示す。該アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基はハロゲン原子又はシアノ基により置換されていてもよく、該アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基中のCH
2基の一部は、−O−、−CO−又は−COO−で置き換えられていてもよい。
Xはハロゲン原子を表わす。)
で表わされるシクロヘキサン化合物群の少なくとも1種類の化合物を含有し、
第二成分として、式(2)
【化2】
(式(2)中、
R
3、R
4は独立して水素、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、炭素数2から11のアルケニルオキシ、又は任意の水素がフッ素で置換された炭素数2から12のアルキル又はアルケニルであり、
X
1、X
2は、独立してフッ素又は塩素であり、
Z
1、Z
2は、独立してメチレンオキシ、カルボニルオキシ、エチレン又は単結合であり、
nは、0、1又は2であり、
mは、0又は1であり、
pは、0、1又は2であり、
qは、0、1、2又は3である。)
で表わされる各化合物群の少なくとも1種類の化合物を含有する液晶組成物
であって、
第一成分として、100ppm未満の下記式(3’)
【化10】
(式(3’)中、R1,R2は、それぞれ式(1’)中におけるR1,R2と同義であり、Xはハロゲン原子を表わす。)
で表わされるシクロヘキサン化合物群の少なくとも1種類の化合物を含有する、液晶組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は、液晶ディスプレイの応答速度を改善する液晶組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
液晶組成物について永年研究してきた本発明者は、母液晶に特定の立体構造を有する低分子化合物を配合した液晶組成物が、応答速度の改善された液晶パネル、特にTN(Twisted Nematic)方式、VA(Vertical Alignment)方式、及びIPS(In−Plane−Switching)方式において応答速度の改善された液晶パネルを与えることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
本発明は以下を包含する。
[1] 第一成分として、下記式(1)
【化1】
(式(1)中、R
1(e),R
2(e)は、それぞれ同一または異なって、エカトリアル位に置換したR,ROCO,RCOOを表わし、Rはアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を示す。該アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基はハロゲン原子又はシアノ基により置換されていてもよく、該アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基中のCH
2基の一部は、−O−、−CO−又は−COO−で置き換えられていてもよい。X(e)はエカトリアル位に置換したハロゲン原子を表わす。)
で表わされるシクロヘキサン化合物群の少なくとも1種類の化合物を含有し、
第二成分として、式(2)
【化2】
(式(2)中、
R
3、R
4は独立して水素、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、炭素数2から11のアルケニルオキシ、又は任意の水素がフッ素で置換された炭素数2から12のアルキル又はアルケニルであり、
X
1、X
2は、独立してフッ素又は塩素であり、
Z
1、Z
2は、独立してメチレンオキシ、カルボニルオキシ、エチレン又は単結合であり、
nは、0、1又は2であり、
mは、0又は1であり、
pは、0、1又は2であり、
qは、0、1、2又は3である。)
で表わされる各化合物群の少なくとも1種類の化合物を含有する液晶組成物。
[2] 第一成分として、痕跡量未満の下記式(3)
【化3】
(式(3)中、R
1(e),R
2(e)は、それぞれ式(1)中におけるR
1(e),R
2(e)と同義であり、X(a)はアキシアル位に置換したハロゲン原子を表わす。)
で表わされるシクロヘキサン化合物群の少なくとも1種類の化合物を含有する、[1]に記載の液晶組成物。
[3] 下記式(4)
【化4】
(式(1)中、R
1,R
2は、それぞれ同一または異なって、R,ROCO,RCOOを表わし、Rはアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を示す。該アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基はハロゲン原子又はシアノ基により置換されていてもよく、該アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基中のCH
2基の一部は、−O−、−CO−又は−COO−で置き換えられていてもよい。X、Yは各々独立に同一又は異なるハロゲン原子を表わす。または、Xは酸素原子を表わし、Yは該酸素原子への直接結合を表わす。)
で表わされるシクロヘキサン化合物群の少なくとも1種類の化合物を更に含む、
[1]又は[2]に記載の液晶組成物。
[4] 液晶組成物を製造するための、下記式(1)
【化5】
(式(1)中、R
1(e),R
2(e)は、それぞれ同一または異なって、エカトリアル位に置換したR,ROCO,RCOOを表わし、Rはアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を示す。該アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基はハロゲン原子又はシアノ基により置換されていてもよく、該アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基中のCH
2基の一部は、−O−、−CO−又は−COO−で置き換えられていてもよい。X(e)はエカトリアル位に置換したハロゲン原子を表わす。)
で表わされるシクロヘキサン化合物の使用。
[5] 液晶セルに[1]乃至[3]のいずれか一項に記載の液晶組成物が封入されている電気光学表示素子。
[6] TN(Twisted Nematic)方式、VA(Vertical Alignment)方式、又はIPS(In−Plane−Switching)方式の液晶パネルである、[5]に記載の電気光学表示素子
[7] 電気光学表示素子を製造するための、下記式(1)
【化6】
(式(1)中、R
1(e),R
2(e)は、それぞれ同一または異なって、エカトリアル位に置換したR,ROCO,RCOOを表わし、Rはアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を示す。該アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基はハロゲン原子又はシアノ基により置換されていてもよく、該アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基中のCH
2基の一部は、−O−、−CO−又は−COO−で置き換えられていてもよい。X(e)はエカトリアル位に置換したハロゲン原子を表わす。)
で表わされるシクロヘキサン化合物の使用。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る液晶組成物は、減粘効率、熱安定性、母液晶との相溶性等の諸特性に優れるため、液晶パネル、特にTN(Twisted Nematic)方式、VA(Vertical Alignment)方式、及びIPS(In−Plane−Switching)方式の液晶パネルに応用すると、その応答速度を格段に改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書における用語の使い方は次のとおりとする。
「液晶組成物」とは、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を有する化合物の1種又は2種以上の混合物、及び液晶相を有する1種又は2種以上の化合物と1種又は2種以上の液晶相を有さない化合物の混合物を意味する。
「液晶表示素子」とは、液晶表示パネル又は液体表示モジュールを意味する。
「式(1)の化合物」とは、式(1)で表わされる1種又は2種以上の化合物を意味し、2種以上の化合物については化合物群と称する場合もある。また、式(1)の化合物に属する化合物を式(1−1)、式(1−2)等と記載することがあり、さらに式(1−1)の化合物に属する化合物を式(1−1−1)、式(1−1−2)等と記載することがある。なお、式(1)、式(1−1)等と記載せず、式を略し(1)、(1−1)とのみ記載することもある。式(2)以下についても同様である。
【0011】
1.第一成分
1.1.式(1)の化合物
本発明に係る液晶組成物を構成する第一成分は、下記一般式(1)で表わされるシクロヘキサン化合物である。第一成分は一種の化合物であっても二種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0012】
【化7】
(式(1)中、R
1(e),R
2(e)は、それぞれ同一または異なって、エカトリアル位に置換したR,ROCO,RCOOを表わし、Rはアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を示す。該アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基はハロゲン原子又はシアノ基により置換されていてもよく、該アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基中のCH
2基の一部は、−O−、−CO−又は−COO−で置き換えられていてもよい。X(e)はエカトリアル位に置換したハロゲン原子を表わす。)
【0013】
式(1)の化合物は例えば以下の立体配置を有する。
【化8】
【0014】
Rの炭素原子数は、液晶表示素子の性能を損なわない限り特に限定されないが、好ましくはC1−12、より好ましくはC1−8である。Rで表わされる基の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ビニル、アリル、ブテニル、エチニル、プロピニル、ブチニル、メトキシメチル、エトキシメチル、プロポキシメチル、ブトキシメチル、メトキシエチル、エトキシエチル、パーフルオロメチル、パーフルオロエチル、パーフルオロプロピル、モノフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、パーフルオロビニル、パーフルオロアリル、イソプロピル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、2−ブチルメチル、3−メチルブチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルペンチル、1−メチルペンチル等が挙げられる。
R
1及びR
2は、好ましくは非置換のアルキル基、非置換のアルケニル基である。
【0015】
式(1)で表わされる化合物群の代表的な具体例としては、下記式の化合物が挙げられる。ただし、これらの化合物群に限定されるものではない。
【0017】
なお、式(1)で表わされる本発明の化合物とはX、R
1及びR
2の位置の異なる複数の立体異性体が存在するが、これらは式(1)の化合物とは区別されなければならない。
【0018】
式(1)のシクロヘキサン化合物を製造する方法は、特に限定されるものではない。例えば特開2012−180284号公報に記載の方法によって製造することができる。具体的な方法については、後記する実施例においても説明する。
【0019】
本発明の液晶組成物における式(1)のシクロヘキサン化合物の含有量は、特に制限されるものではなく、目的とする特性が得られるように適宜な量を選択すればよいが、1〜100質量%、特に5〜90質量%の範囲から選択するのが好ましい。
【0020】
1.2.式(3)の化合物
本発明に係る液晶組成物中には、下記式(3)
【化9】
(式(3)中、R
1(e),R
2(e)は、それぞれ式(1)中におけるR
1(e),R
2(e)と同義であり、X(a)はアキシアル位に置換したハロゲン原子を表わす。)
で表わされるシクロヘキサン化合物群の少なくとも1種類の化合物が痕跡量未満であることが好ましい。
【0021】
式(3)の化合物は例えば以下の立体配置を有する。
【化10】
【0022】
Rの炭素原子数、Rで表わされる基の例、X、R
1及びR
2については、式(1)の化合物について上記したとおりである。
【0023】
「痕跡量未満」とは、所定の分析機器による検出限界未満の量であることをいい、その趣旨は、本発明に係る液晶組成物には式(3)の化合物がまったく含まれないことが好ましいものの、実際には合成経路等による技術的制約や分離精製処理に伴う経済的制約等により、式(3)の化合物が不可避的に液晶組成物中に混在する場合もあるので、そのような場合も本発明の技術的思想の範囲内とする、ということである。例えば、現今の技術的、経済的状況下では、式(3)の化合物が100ppm程度まで混在しても本発明の効果は認められるであろう。
【0024】
式(1)のシクロヘキサン化合物を製造する際に式(3)の化合物も副生する場合が多いが、慣用の方法によって両者を分離精製することができる。具体的な方法については、後記する実施例においても説明する。
【0025】
1.3.式(4)の化合物
本発明に係る液晶組成物中には、下記式(4)
【化11】
(式(1)中、R
1,R
2は、それぞれ同一または異なって、R,ROCO,RCOOを表わし、Rはアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を示す。該アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基はハロゲン原子又はシアノ基により置換されていてもよく、該アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基中のCH
2基の一部は、−O−、−CO−又は−COO−で置き換えられていてもよい。X、Yは各々独立に同一又は異なるハロゲン原子を表わす。または、Xは酸素原子を表わし、Yは該酸素原子への直接結合を表わす。)
で表わされるシクロヘキサン化合物群の少なくとも1種類の化合物を更に含むことが好ましい。
【0026】
Rの炭素原子数、Rで表わされる基の例、X、R
1及びR
2については、式(1)の化合物について上記したとおりである。
【0027】
式(4)の化合物は例えば以下の立体配置を有する。
【化12】
【化13】
【0028】
式(4)で表わされる化合物群の代表的な具体例としては、下記式の化合物が挙げられる。ただし、これらの化合物群に限定されるものではない。
【0030】
式(4)のシクロヘキサン化合物を製造する方法は、特に限定されるものではない。例えば特開2012−180284号公報に記載の方法によって製造することができる。
【0031】
2.第二成分(母液晶)
本発明に係る液晶組成物を構成する第二成分は、下記一般式(2)で表わされる化合物である。第二成分は一種の化合物であっても二種以上の化合物の混合物であってもよい。
【化14】
(式(2)中、
R
3、R
4は独立して水素、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、炭素数2から11のアルケニルオキシ、又は任意の水素がフッ素で置換された炭素数2から12のアルキル又はアルケニルであり、
X
1、X
2は、独立してフッ素又は塩素であり、
Z
1、Z
2は、独立してメチレンオキシ、カルボニルオキシ、エチレン又は単結合であり、
nは、0、1又は2であり、
mは、0又は1であり、
pは、0、1又は2であり、
qは、0、1、2又は3である。)
【0032】
一般式(2)で表わされる化合物の具体例をいくつか挙げると以下のとおりである。
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【0033】
本発明のシクロヘキサン化合物(第一成分)は、第二成分(母液晶)に配合することにより、本発明の液晶組成物を構成する。配合の方法は特に限定されず、慣用の方法によって行うことができる。
【0034】
3.応用
本発明の液晶組成物は、液晶セルに封入されて、種々の電気光学表示素子を構成することができる。電気光学表示素子としては、例えば、動的散乱型(DS)、ゲスト・ホスト型(GH)、ねじれネマチック型(TN、超ねじれネマチック型(STN)、薄膜トランジスター型(TFT)、薄膜ダイオード型(TFD)、強誘電液晶型(FLC)、反強誘電液晶型(AFLC)、高分子分散液晶型(PDLC)、垂直配向(VA)、インプレーンスイッチング(IPS)等の種々の表示モードが適用され、また、スタティック駆動方式、時分割駆動方式、アクティブマトリックス駆動方式、2周波駆動方式等の種々の駆動方式が適用される。特にTN(Twisted Nematic)方式、VA(Vertical Alignment)方式、及びIPS(In−Plane−Switching)方式の液晶パネルに応用すると、その応答速度を格段に改善することができる。
【0035】
本発明のシクロヘキサン化合物を用いてなる電気光学表示素子は、時計、電卓をはじめ、測定器、自動車用計器、複写機、カメラ、OA機器、携帯用パソコン、携帯電話等の用途に使用することができる。また、それ以外の用途、例えば、調光窓、光シャッタ、偏光交換素子等にも用いることができる。
以下、実施例をもって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例によってなんら制限を受けるものではない。
【実施例】
【0036】
以下に実施例等を参照して本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例等によってなんら制限を受けるものではない。
尚、パーセンテージは重量パーセントである。温度は全て摂氏温度で示される。
【0037】
以下の化合物の表示において、数字でアルキル基の炭素数を表し、Hでシクロヘキサン環を表し、Kでケト基を表し、Fでフルオロ基を表し、Vでビニル基を表す場合がある。例示すると以下のとおりである。
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【0038】
1.原料となるアルコールの合成
【化32】
500mL容のナスフラスコに3HKH3を3.97g(15mmol)入れ、フラスコ内をアルゴン置換し、メタノール(超脱水、和光純薬工業株式会社製)190mLで溶解した。反応系を0℃以下とし、NaBH
4(キシダ化学株式会社製)の結晶を0.85g(1.5等量、22.5mmol)加えた。30分後、TLCで反応の進行を確認し、40分後にイオン交換水で失活させた。反応系から溶媒を溜去した後、CH
2Cl
2で3回抽出し、得られた抽出液をNa
2SO
4で乾燥し、CH
2Cl
2を溜去し、真空乾燥を行った。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(内径4cm、シリカゲル120gを21cm高さに充填、ヘキサン:酢酸エチル=15:1の混合溶媒を20mLずつ分注)にて精製し、アキシアル−アルコール(1a)(エカトリアル−アルコール(1b)を2%含む)2.071g、エカトリアル−アルコール(1b)1.039g、両者の混合物0.869gを得た(合計3.98g)。
【0039】
アキシアル−アルコール(1a) 無色結晶 融点134℃
【表3】
エカトリアル−アルコール(1b) 無色結晶 融点60℃
【表4】
【0040】
2.モノフッ素化誘導体の合成
【化33】
エカトリアル−フッ素化誘導体(4)
50mL容のナスフラスコにエカトリアル−アルコール(1b)を1.07g(4mmol)入れ、フラスコ内をアルゴン置換し、CH
2Cl
2(超脱水、和光純薬工業株式会社製)10mLで溶解した。反応系を−78℃以下冷却後、三フッ化N,N−ジエチルアミノ硫黄(DAST)0.8mL(1.5等量、6mmol、和光純薬工業株式会社製)を滴下し、室温まで昇温して撹拌した。1時間後、TLCで反応の進行を確認し、1時間30分後に5%NaHCO
3水溶液で失活させた。これをCH
2Cl
2で3回抽出し、得られた抽出液をMgSO
4で乾燥し、CH
2Cl
2を溜去し、真空乾燥を行った。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(内径4cm、シリカゲル120gを21cm高さに充填、溶媒としてヘキサンを20mLずつ分注)にて精製し、アルケン体0.106g、エカトリアル−フッ素化誘導体(4)とアキシアル−フッ素化誘導体(5)との混合物0.593g(57%)、エカトリアル−フッ素化誘導体(4)0.220g(20%)を単離した。
【0041】
エカトリアル−フッ素化誘導体(4) 無色油
【表5】
【0042】
3.モノフッ素化誘導体の構造決定
エカトリアル−フッ素化誘導体(4)の構造決定は、Figure6(
図1)に示したNMRデータに基づいて行った。
19F−NMRでは−174ppmにdoubletでピークが見られたため、化合物にフッ素が導入されたことが確認できた。また、
13C−NMRでは93.1ppmにdoublet(J=173Hz)のフッ素が付加したような炭素のピークが確認されたことから、この化合物にはフッ素が導入されたと考えられる。さらに、
1H−NMRでは低磁場側の4.34ppmに(1H,dtd,J=50,10.5,4.7Hz)でピークが観察され、50Hzという大きな結合定数から同一炭素上にフッ素が存在し、さらにその水素は結合定数からアキシアル配座を取っており、フッ素はエカトリアル配座を取っていると考えられる。以上の結果から、エカトリアル−フッ素化誘導体(4)であると構造を決定した。
【0043】
(実施例1、実施例2、比較例1)
式(2)の化合物群の内、以下に示す式(2−1)から(2−3)の化合物を均等に混合した。均等に混合とは、この3種類の各化合物を各々同じ重量にて混合したという意味である。「下記表1に示す各化合物」:「前記(2−1)から(2−3)からなる混合物」を25:75の重量比で混合した試料をそれぞれ実施例1、実施例2、比較例1とする。
【0044】
【化34】
【化35】
【化36】
【0045】
【表6】
【0046】
上記表1の応答速度は、印加電圧10Volt、周波数60Hz、方形波の300msec印加時においてセルギャップ3μm垂直勾配セルにて測定した結果である。立ち下がり時間とは、誘電率が電圧オフ時に最大誘電率から50%変化するまでの時間をいう。表1は、いずれもmillisecond(msec)にて表わしている。この時間が短縮されることにより応答速度は改善される。
【0047】
(実施例3、実施例4、比較例2)
式(2)の化合物群の内、以下の表に示す化合物を以下の表に示す混合割合で混合した。
【0048】
【表7】
【0049】
「下記表2に示す各化合物」:「表7に示す混合物」を20:80の重量比で混合した試料をそれぞれ実施例3、実施例4、比較例2とする。
【表8】
【0050】
上記表2の応答速度は、印加電圧10V、周波数60Hzの印加時において、セルギャップ4μm、TNセルにて測定した結果である。立ち下がり時間とは、誘電率が電圧オフ時に最大誘電率から50%変化するまでの時間をいう。表2ではいずれもmillisecond(msec)にて表わしている。この時間が短縮されることにより応答速度は改善される。
【0051】
(実施例5、実施例6)
3HFH3(エカトリアル体単独)及び3HFH3(エカトリアル体/アキシアル体=7/3混合物)の2試料を、ギアオーブン中に100℃にて1時間保存した後の残存率をHPLCにより確認した。エカトリアル体はアキシアル体に比較して明らかに高い耐熱性を示した。
【表9】