(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
円周方向外側に向いた凸部(13b)を有する雄継手(10)を有する鋼管(1b)と、円周方向内側に向いた凸部(23b)を有する雌継手(20)を有する鋼管(1a)を、前記雄雌継手(10、20)を介して互いに嵌合させたのち、一方又は両方を回転させることで、互いの凸部(13b、23b)同士の位置を相対的にずらし、鋼管の軸方向において両者の投影断面が重なるように接続する鋼管継手構造であって、前記軸方向の溝(24)に出没自在に設けた回転阻止部材(26)によって接続後の前記雄雌継手(10、20)の相対的な回転を阻止する鋼管継手装置。
上記回転阻止部材(26)は、雄雌継手(10、20)の一方(20)に設けられ、他方の継手(10)の回り止め凸部(13a)に係止することによって雄雌継手(10、20)の相対的な回転を阻止する請求項1に記載の鋼管継手装置。
上記他方の継手(10)は雄継手(10)であって、その上記回り止め凸部(13a)は、上記円周方向外側に向いた凸部(13b)から軸方向にずれて設けられている請求項2に記載の鋼管継手装置。
上記雄継手(10)の嵌り合った雌継手(20)との対向周面は開口側から反対側に向かって二段階に大径となる2つの外周面(12a、12b)となり、雌継手(20)の嵌り合った雄継手(10)との対向周面は開口側から反対側に向かって二段階に小径となる2つの内周面(22a)となっており、
上記雄継手(10)の円周方向外側に向いた凸部(13b)は上記2つの外周面(12a、12b)の開口側の外周面(12b)に形成され、上記雌継手(20)の円周方向内側に向いた凸部(23b)は上記2つの内周面(22a)の反開口側の内周面に形成され、
上記雄継手(10)の回り止め凸部(13a)は上記2つの外周面(12a、12b)の反開口側の外周面(12a)に形成されている請求項3に記載の鋼管継手装置。
上記一方の継手(20)を雌継手(20)として、その雌継手(20)に上記回転阻止部材(26)の出没する軸方向の穴(25)を形成し、その穴(25)から前記雌継手(20)の外周面に貫通する軸方向に長い案内孔(29)を形成し、上記回転阻止部材(26)から前記案内孔(29)を通って前記雌継手外周面に至る案内杆(28)を設け、前記回転阻止部材(26)が穴(25)から突出した際、前記案内杆(28)が前記案内孔(29)の端に当接して前記回転阻止部材(26)のそれ以上の突出を阻止することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一つに記載の鋼管継手構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1記載の鋼管継手装置は、回転阻止部材8が係合突起7上に溶接や接着によって仮止めしているだけでその状態が不安定であり、また、自重で軸方向溝6a内を落下する構成であるため、その作用が不安定となって(周方向溝6bを確実に塞ぐかが確かではなく)、上・下の杭の接続固定が不安定となっている(特許文献1段落0010参照)。
【0006】
この発明は、上記係合突起による上下の杭の接続固定を安定とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、この発明は、円周方向外側に向いた凸部を有する雄継手を有する鋼管と、円周方向内側に向いた凸部を有する雌継手を有する鋼管を、雄雌継手を介して互いに嵌合させたのち、一方又は両方を回転させることで、互いの凸部同士の位置を相対的にずらし、鋼管の軸方向において両者の投影断面が重なるように接続する鋼管継手構造において、前記軸方向の溝に出没自在に設けた回転阻止部材によって接続後の雄雌継手の相対的な回転を阻止する構成としたのである。
【0008】
この構成において、上記回転阻止部材は、雄雌継手の一方に設けられ、他方の継手の回り止め凸部に係止することによって雄雌継手の相対的な回転を阻止するようにしたり、また、前記他方の継手を雄継手とし、前記回り止め凸部は、上記円周方向外側に向いた凸部から軸方向にずれて設けられているものとしたり、さらに、雄継手の嵌り合った雌継手との対向周面の内側は開口側から反対側に向かって二段階に大径となる2つの外周面となり、雌継手の嵌り合った雄継手との対向周面は開口側から反対側に向かって二段階に小径となる2つの内周面となっており、雄継手の円周方向外側に向いた凸部は2つの外周面の開口側の外周面に形成され、雌継手の円周方向内側に向いた凸部は2つの内周面の反開口側の内周面に形成され、雄継手の回り止め凸部は2つの外周面の反開口側の外周面に形成されている構成としたりすることができる。
このとき、上記一方の継手を雌継手として、その雌継手に回転阻止部材の出没する軸方向の穴を形成し、その穴から雌継手の外周面に貫通する軸方向に長い案内孔を形成し、回転阻止部材から案内孔を通って雌継手外周面に至る案内杆を設け、回転阻止部材が穴から突出した際、案内杆が案内孔の端に当接して回転阻止部材のそれ以上の突出を阻止するようにすることができる。
【0009】
より具体的な一構成としては、2つの鋼管を接続する鋼管継手装置であって、鋼管にそれぞれ固定される対の筒状雄雌継手からなって、その雄雌継手は筒軸方向で嵌り合っており、雄雌継手の嵌り合った両対向周面の一方に凸部が形成され、同他方には前記凸部が嵌る溝状凹部が形成されており、その凹部は、雄雌継手の一方の端面に開口し、その開口の反対側の筒軸方向に延びる軸方向溝部と、その軸方向溝部の先端から周方向に延びる周方向溝部とから成り、雄雌継手が筒軸方向で嵌り合う際、凸部が凹部の開口から軸方向溝部に入り込んでその軸方向溝部の底面に至った後、雄雌継手を相対的に回転させると、凸部が凹部の周方向溝部に入り込んで、雄雌継手がその筒軸方向に抜け止めされ、凹部の底面には筒軸方向の穴が形成されて、その穴に、回転阻止材(回転阻止部材)が出没自在に装填されているとともに回転阻止材を突出方向に押圧する押圧材が装填されており、その回転阻止材は、雄雌継手が筒軸方向で嵌り合う際、凸部に押されて穴に没して凸部の軸方向溝部への入り込みを許容し、凸部が凹部の周方向溝部に入り込んで雄雌継手が筒軸方向に抜け止めされると、押圧材に押圧されて凹部の軸方向溝部に突出して嵌り込んで雄雌継手の相対的な回転を阻止する構成を採用することができる。
【0010】
また、より具体的な他の構成として、2つの鋼管を接続する鋼管継手装置であって、鋼管にそれぞれ固定される対の筒状雄雌継手からなって、その雄雌継手は筒軸方向で嵌り合っており、雄雌継手の嵌り合った両対向周面の内側は、その内側の雄雌継手の嵌り合って対向する開口側から反対側に向かって二段階に大径となる2つの外周面となり、同外側は、その外側の同開口側から反対側に向かって二段階に小径となる2つの内周面となっており、開口側の両対向周面の一方に抜け止め凸部が形成され、開口側以外の他の各両対向周面の他方には前記抜け止め凸部が嵌る溝状凹部が形成されており、その凹部は、二段階に小径となった内周面の境界段差面に開口し、その開口の反対側の筒軸方向に延びる軸方向溝部と、その軸方向溝部の先端から周方向に延びる周方向溝部とから成り、開口側以外の他の各両対向周面の一方に、抜け止め凸部から筒軸方向の反開口側に間隔を隔てて回り止め凸部が形成され、開口側の両対向周面の他方にも回り止め凸部が形成されており、雄雌継手が筒軸方向で嵌り合う際、抜け止め凸部が凹部の開口から軸方向溝部に入り込んでその軸方向溝部の底面に至った後、雄雌継手を相対的に回転させると、抜け止め凸部が凹部の周方向溝部に入り込んで、雄雌継手がその筒軸方向に抜け止めされ、かつ、境界段差面には筒軸方向の穴が形成されて、その穴に、回転阻止材が出没自在に装填されているとともに回転阻止材を突出方向に押圧する押圧材が装填されており、雄雌継手が筒軸方向で嵌り合うと、回転阻止材は間隔を隔てた回り止め凸部に押されて穴に没した後、雄雌継手を相対的に回転させると、間隔を隔てた回り止め凸部が周方向に移動して開口側の両対向周面の他方の回り止め凸部に当接するとともに、回転阻止材の穴への押し込みを解除し、その解除に伴い、回転阻止材が押圧材に押圧されて間隔を隔てた回り止め凸部の側面に位置し、その間隔を隔てた回り止め凸部と回転阻止材との係止によって雄雌継手の相対的な回転を阻止する構成を採用することができる。
【0011】
この他の構成にすると、間隔を隔てた回り止め凸部と開口側の回り止め凸部及び回転阻止材との係わりによって、雄雌継手の周方向の一体化を担保し、反開口側の(奥側の)抜け止め凸部と凹部の係わりによって雄雌継手の軸方向の一体化を担保するようになり、周方向と軸方向の一体化(抗力)を別々の凸部(凹部)の係わりで分担して担うため、結合(連結)強度の高い雄雌継手となる。
また、それらの凸部及び凹部を、嵌り合った雄雌継手の二段階の対向周面に形成しているため、雄雌継手の嵌合深さ(オーバーラップ)が長くなり、軸方向における曲げモーメントを受けたとき、その抗力を有効に発揮する。
なお、雄雌継手の相対的な回転阻止は、間隔を隔てた回り止め凸部と回転阻止材とが係止(当接)する回転方向の回転が阻止されるが、前記間隔を隔てた回り止め凸部を回転阻止材と両対向周面の他方の回り止め凸部とで挟持するようにすれば、雄雌継手の相対的な正逆の両回転を阻止することができる。
【0012】
上記穴に回転阻止材を装填する場合、上記雄雌継手の嵌り合った外側の継手に前記穴を形成し、その穴から継手外周面に貫通する筒軸方向に長い案内孔を形成し、回転阻止材から案内孔を通って継手外周面に至る案内杆を向け、回転阻止材が穴から突出した際、案内杆が案内孔の端に当接して回転阻止材のそれ以上の突出を阻止するようにすることが好ましい。
このように構成すると、案内杆の案内孔内の位置で、回転阻止材の位置を確認できて、雄雌継手の筒軸方向の接続強度度合いを確認できる。また、案内孔の長さ設定によって回転阻止材の穴からの突出度合いの調整を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、以上のように構成したので、鋼管を作業性良く確実に連結することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明に係る鋼管継手装置の一実施形態を
図1〜
図7に示し、この実施形態の鋼管継手装置Aも対の筒状雄継手10と筒状雌継手20とからなる。鋼管1a、1b(総称符号:1)はJIS G 3444 一般構造用炭素鋼鋼管(STK)やJIS A 5525に規定する鋼管杭(SKK)が使用され、この両継手10、20はその鋼管1に溶接可能な金属からなる。通常、鋼管杭は、外径:165.2mm以上のものを採用する。雄雌継手10、20の嵌り込み長さは連結強度を考慮して適宜に設定すれば良いが、例えば、継手外径:270mm前後の場合、90mm程度とする。
【0016】
雄継手10は、
図3、
図4に示すように、上縁11が全周に亘って欠如(切削)されてその外周面が鋼管1の内径とほぼ同一となっており、鋼管1(1b)の一端に嵌めて溶接aにより鋼管1に一体化される(
図1参照)。このとき、鋼管1の外周面と雄継手10の外周面は面一となって接続部にほぼ突起物がない状態となる。
その上縁11から下方に向かう雄継手10の外周面は二段階に小径となる(開口側から反対側に向かって二段階に大径となる)外周面12a、12bとなっており、その各外周面12a、12bにそれぞれ凸部(歯状部)13a、13bが形成されている。上側の凸部13aは周囲等間隔に8個形成されており、下側の凸部13bは周囲等間隔に12個形成されている。これら凸部13a、13bの数は任意であり、その間隔も等間隔でなくても良い。要は、後述の上下方向及び周方向(回転方向)の阻止作用を担保し得る間隔や数であって、連結された鋼管1、1に回転力を伝達し得る係合力が担保されれば良い。嵌め合い部分には面取りを行うことが好ましい。
【0017】
両凸部13a、13bは上下方向に所要の間隔tを持って位置する(
図4参照)。この間隔tは、雄雌継手10、20が嵌り合った際、
図6に示すように、雄継手10の上下の凸部13a、13bの間に下記雌継手20の凸部23bが入り得る大きさとする。
また、凸部13bの頂面は下記雌継手20の反開口側(下側)の内周面22b及び凸部23aの頂面より雄雌継手10、20の嵌り合った内側(中心側)に位置するように設定されて(
図2参照)、凸部13bが雌継手20の境界段差面22cに当たることなく下記凹部24に入り込み得るようになっている。
【0018】
雌継手20は、
図3、
図5に示すように、下縁21が全周に亘って欠如(切削)されてその外周面が鋼管1の内径とほぼ同一となっており、鋼管1(1a)の一端に嵌めて溶接aにより鋼管1a(1)に一体化される(
図1、
図5参照)。このとき、鋼管1の外周面と雌継手20の外周面は面一となって接続部にほぼ突起物がない状態となる。
雌継手20の下方に向かう内周面は二段階に小径となる内周面22a、22bとなっており、その各内周面22a、22bにそれぞれ凸部(歯状部)23a、23bが形成されている。上側の凸部23aは周囲等間隔に8個形成されており、下側の凸部23bは周囲等間隔に12個形成されている。これら凸部23a、23bの数は任意であり、その間隔も等間隔でなくても良い。要は、後述の上下方向及び周方向(回転方向)の阻止作用を担保し得る間隔や数であって、連結された鋼管1、1に回転力を伝達し得る噛み合い力が担保されれば良い。嵌め合い部分には面取りを行うことが好ましい。
【0019】
なお、この実施形態においては、請求項でいう「雌継手20の開口側から反対側に向かって二段階に小径となる2つの内周面」は、「内周面22aと各凸部23bの頂面で形成する円状内周面」を言う。
このため、上記凹部は、
図5(b)、
図6(a)の符号24の鎖線で示す、凸部23a、23aの間を経た後、上記二段階に小径となった内周面22a、22bの境界段差面22cに開口する凸部23b、23b間の軸方向溝部24aと、その後、凸部23bの下方に延びる空間の周方向溝部24bとからなるL字状空間(溝)で形成される。
【0020】
この雌継手20の内周面22a、22bの境界段差面22cにおける上側凸部23a、23a間には、軸方向の穴25が形成されている。この穴25は全ての凸部23a、23a間に設ける必要はなく、少なくとも一つ設ければ良い。複数の穴25を形成する場合は、周方向に等間隔とする。この実施形態では、等間隔に4個形成している。
各穴25には、有蓋の筒状回転阻止部材26が上下動自在に嵌られている。その回転阻止部材26の中にコイルバネ27が装填され、このコイルバネ27によって筒状回転阻止部材26は穴25から突出方向に付勢される。コイルバネ27に代えて回転阻止部材26を穴25から突出し得る弾性樹脂等の種々の弾性体を使用し得る。
【0021】
また、回転阻止部材26には皿ボルト(皿ねじ)からなるピン(案内杆)28が設けられ、このピン28は上下方向の長孔(案内孔)29を介して雌継手20の外面に至っている。この長孔29にピン28が嵌っていることにより、回転阻止部材26の穴25からの飛び出しが阻止されるとともに、回転阻止部材26の穴25内の位置が確認できる。すなわち、回転阻止部材26が穴25に没した状態であるか、穴25から突出した状態であるかを目視によって確認できる。ピン28は雌継手20の外周面から支障がない限り所要長さ突出させることができる。
【0022】
この実施形態の鋼管継手装置Aは以上の構成であり、工場において、接続用鋼管1の一方1bの端(例えば、下端)に雄継手10が溶接aによって取付けられ、他方1aの端(同上端)に雌継手20が溶接aによって取付けられる。なお、杭の先端となる鋼管杭の先にはオーガドリルやビット等を有する掘削具が取り付けられ、打ち込み用駆動機は雌継手20に嵌って鋼管1に回転力及び掘削力を付与する態様のものが使用される。
【0023】
その掘削具を有する鋼管1(1a)を回転させつつ地中に圧入して埋め込み、その圧入途中で施工を一時的に中止して先行きの鋼管1aに後行きの鋼管1bをこの鋼管継手装置Aによって接続する。その接続は、先行きの鋼管1aの上端の雌継手20に後行きの鋼管1bの下端の雄継手10を嵌め込むことによって行う。
このとき、雄継手10の外周面12aの径は雌継手20の各凸部23aの頂面がなす円周面の径と嵌め代を持ってほぼ同一に、雄継手10の外周面12bの径は雌継手20の各凸部23bの頂面がなす周面の径と嵌め代を持ってほぼ同一に、雌継手20の内周面22aの径は雄継手10の凸部13aの頂面がなす円周面の径と嵌め代を持ってほぼ同一に、雌継手20の内周面22bの径は雄継手10の凸部13bの頂面がなす円周面の径と嵌め代を持ってほぼ同一に、それぞれ設定されているため、雄継手10は雌継手20内に筒軸方向に円滑に嵌り込む(
図2参照)。
【0024】
また、雌継手20は、
図6(a)に示すように、回転阻止部材26が穴25から突出した状態となっており、打ち込まれた鋼管1aにつぎの鋼管1bを継ぎ足す際、その先行の鋼管1a端の雌継手20につぎ(後行)の鋼管1b端の雄継手10を嵌め込むと、
図6(a)→
図6(b)→
図6(c)に示すように、雄継手10の嵌り込みに伴って(凸部13bの凹部24の軸方向部24aへの入り込みに伴って)、凸部13aにより回転阻止部材26が雄継手10の上側凸部13aに押されコイルバネ27に抗して穴25内に後退して(没して)雄継手10の嵌り込みを許容し、やがて、雄継手10が押し込まれて、雄雌継手10、20の対向端面が当接する(
図6(b))。このとき、雄継手10の下側凸部13bは雌継手20の下側凸部23bの上下方向の下位に位置する(凹部24の軸方向部24aの下端に位置する)。
【0025】
この状態で、雄継手10(鋼管1b)をその軸周りに回転すると、
図6(c)に示すように、雄継手10の下側凸部13bが雌継手20側の下側凸部23bの下側に嵌り込むと共に(凸部13bが凹部24の周方向部24bに入り込んで、鋼管1a、1bの軸方向において両者13b、23bの投影断面が重なるように接続すると共に)、雄継手10の上側凸部13aが雌継手20側の上側凸部23aに当接する。すなわち、両凸部13b、23bが雄雌継手10、20(鋼管1a、1b)の軸方向の抜け止め作用を担うとともに、両凸部13a、23aが回り止めとなって、雄雌継手10、20のそれ以上の回転移動が阻止されて雄雌継手10、20の周方向の位置決めがなされる。すると、回転阻止部材26の凸部13aによる押さえが解除され、コイルバネ27によって回転阻止部材26が突出して、雄継手10の上側凸部13aと雌継手20の上側凸部23aの間(間隙)に入り込む(
図6(c))。
この状態は、雄継手10の凸部13bと雌継手20の凸部23bの上下方向の係合によって上下の鋼管1a、1bが軸方向(上下方向)に連結されるとともに、雄継手10側の凸部13aを雌継手20側の凸部23aと回転阻止部材26とによる挟持により、上下の鋼管1a、1bが周方向(回転方向)に連結される。このとき、前記挟持により、上下の鋼管1a、1bの正逆の両回転方向が連結(回転阻止)される。
【0026】
この作用時、ピン28が長孔29の上端に位置すれば、上記回転阻止部材26が凸部13aと凸部23aの間に位置して雄雌継手10、20が周方向に一体になっていることを確認できる(
図6(c)参照)。ピン28が長孔29の上端に位置していなければ、ドライバー等によりピン28を長孔29の上端に位置させて回転阻止部材26が凸部13a、23a間に位置した状態にして雄雌継手10、20が周方向に一体になっている状態とする。このように、全てのピン28が長孔29の上端に位置すれば、それを目視することにより、雄雌継手10、20が上下方向及び周方向において強固に一体化していることが確認できる。
【0027】
以上の作用により、
図1に示すように、この雄雌継手10、20によって接続された鋼管1a、1bは、回転方向及び上下方向(離反方向)において一体化される。この状態で、上側の鋼管1bからの圧入を開始する。以後、同様な作用によって所要数の鋼管1を継ぎ足して所要長さの鋼管杭を打ち込む(圧入する)。
このとき、凸部13a、23a、回転阻止部材26の係わりによって、雄雌継手10、20の周方向の一体化を担保し、凸部13bと凹部24の周方向部24b(凸部23b)の係わりによって雄雌継手10、20の軸方向の一体化を担保する。このため、周方向と軸方向の一体化(抗力)を別々の凸部(凹部)の係わりで分担して担うため、結合(連結)強度の高い鋼管継手装置となる。
また、抜け止め用の凸部13b、23bが雄雌継手10、20が嵌り合った内側(奥)に位置して係合しているため、鋼管1a、1bに曲げモーメントを受けたとき、その抗力を有効に発揮する。
【0028】
地中に打ち込んだ鋼管杭を抜く場合は、その杭(鋼管1a、1b)を逆転するなどによって各鋼管1を地上に抜き出し、その各鋼管1、1の鋼管継手装置Aにおいて、ピン28を下方に下ろして、回転阻止部材26を穴25に没し、上方の鋼管1bを回転し(凸部13bを凹部24の周方向部24b内を移動させ)、雄継手10の上下の凸部13a、13bを雌継手20の凸部23a、23a間に位置させて(凹部24の軸方向部24aに位置させて)両継手10、20を離脱可能とし、その状態で、下側の鋼管1aに対し上側の鋼管1bを引き離すことによって行う。
【0029】
上記実施形態は、雄雌継手10、20の内外周面を二段階に大径又は小径となる外周面12a、12b又は内周面22a、22bとし、それぞれに、凸部13a、13b、23a、23bを2段に形成したが、内外周面12、22を一段とした態様とすることができる。
例えば、
図8に示すように、雄雌継手10、20の外周面12及び内周面22にそれぞれ凸部13a、13b、23a、23bを軸方向にずらして設け、雄継手10の上下の凸部13a、13bは同一軸上とするとともに、雌継手20の凸部23a、23bも同一軸上としてコ字状に連結したものとすることができる。この場合、凹部24は、軸方向溝部(空間)24aと2つの周方向溝部(空間)24bとからなり、
図9(a)→
図9(b)→
図9(c)に示すように、雄継手10の雌継手20への嵌り込み・回転に伴って、雄継手10の凸部13a、13bと雌継手20の凸部23a、23bの上下方向の係合によって上下の鋼管1a、1bが軸方向に連結されるとともに、同凸部13a、13bと同凸部23a、23bの回転阻止部材26を介した周方向(回転方向)の係合によって、上下の鋼管1a、1bが周方向(回転方向)に連結される。このため、この実施形態においては、凸部13a、13bと凸部23a、23bの個々の噛み合い(入り込み)によって回転止めと抜け止めの両者が行われている。
【0030】
また、
図8、
図9の実施形態において、雄継手10の上下一方の凸部13a、13bを省略し(一方の凸部のみとし)、同様に、雌継手20の上下一方の凸部23a、23bを省略した(一方の凸部のみとした)ものとすることができる。例えば、
図10、
図11に示すように、下側の凸部13b、23bのみとしたり、
図12、
図13に示すように、上側の凸部13a、23aのみとしたりすることができる。このとき、雌継手20の凸部23b、23aは正面視逆L字状とする。
【0031】
この両実施形態においては、雌継手20に雄継手10を嵌め込むと、
図11(a)→
図11(b)→
図11(c)又は
図13(a)→
図13(b)→
図13(c)に示すように、雄継手10の嵌り込みに伴って、回転阻止部材26が雄継手10の下側凸部13b又は上側凸部13aに押されコイルバネ27に抗して穴25内に後退して(没して)雄継手10の嵌り込みを許容する。やがて、雄継手10が押し込まれて、雄雌継手10、20の対向端面が当接すると(
図11(b)、
図13(b))、雄継手10の凸部13b又は13aは雌継手20の凸部23b又は23aの上下方向の下位に位置する(凹部24の軸方向部24aの下端に位置する)。
【0032】
この状態で、雄継手10(鋼管1b)をその軸周りに回転すると、
図11(c)、
図13(c)に示すように、雄継手10の凸部13b又は13aが雌継手20側の凸部23b又は23aの下側に嵌り込むと共に、その凸部13b又は13aの移動に伴って回転阻止部材26の凸部13b又は13aによる押さえが解除され、コイルバネ27によって回転阻止部材26が突出して、雄継手10の凸部13b又は13a間(間隙)に入り込む(
図11(c)、
図13(c))。
この状態は、雄継手10の凸部13b又は13aと雌継手20の凸部23b又は23aの上下方向の係合によって上下の鋼管1a、1bが軸方向(上下方向)に連結されるとともに、雄継手10の凸部13b、13b又は13a、13aの間に回転阻止部材26が入り込んだことによって周方向(回転方向)の回転が阻止され、上下の鋼管1a、1bが周方向(回転方向)に連結される。このとき、雌継手20側の凸部23bも周方向の連結に寄与する場合もある(
図9(c)参照)。
【0033】
なお、上記各実施形態においては、雌継手20を下側(先行)鋼管1aに、雄継手10を上側(後行)鋼管1bに溶接取付けしたが、雌継手20を上側(後行)鋼管1aに、雄継手10を下側(先行)鋼管1bに溶接取付けすることができる。
また、雄雌継手10を雌継手20に対し軸心右周りで凸部13b、23bが係合するようにしたが、同左周りで係合するようにすることができる。このとき、隣接する凸部23b、23bの位置及び間隔は、右回りの場合の逆とする。
さらに、鋼管杭に限らず、この発明は各種の鋼管の継手として採用し得る。
このように、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。 例えば、この発明は、2段階の内外周面12a、12b、22a、22bとしているが、2段階以上の内外周面、例えば、3段階、4段階等においても、この発明の2段階の内外周面を有する場合は、この発明の範囲に含まれる。