特許第6912061号(P6912061)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6912061
(24)【登録日】2021年7月12日
(45)【発行日】2021年7月28日
(54)【発明の名称】燃料給油管の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/01 20060101AFI20210715BHJP
   B05D 1/32 20060101ALI20210715BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20210715BHJP
   B23K 9/04 20060101ALI20210715BHJP
   B23K 26/354 20140101ALI20210715BHJP
   B62D 65/10 20060101ALI20210715BHJP
【FI】
   B60K15/01 Z
   B05D1/32 B
   B05D7/14 K
   B23K9/04 G
   B23K26/354
   B62D65/10 Z
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-216773(P2017-216773)
(22)【出願日】2017年11月9日
(65)【公開番号】特開2019-85050(P2019-85050A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2020年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(73)【特許権者】
【識別番号】590000721
【氏名又は名称】株式会社キーレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】高村 秀治
(72)【発明者】
【氏名】岡村 寛之
(72)【発明者】
【氏名】家敷 敏光
(72)【発明者】
【氏名】三代 聡
【審査官】 福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−182385(JP,A)
【文献】 特開2015−77612(JP,A)
【文献】 特開2011−79013(JP,A)
【文献】 特開2006−255718(JP,A)
【文献】 特開2004−250786(JP,A)
【文献】 特開2003−181658(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0236564(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/01
B05D 1/32
B05D 7/14
B23K 26/354
B23K 9/04
B62D 65/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に非導電性の塗装が施され、且つ、固定具を用いて車体に固定され、当該車体への接地用の非塗装部を上記固定具に対応する位置に有する金属製の燃料給油管の製造方法であって、
機械加工工程、拡管工程、曲げ工程及び溶接組立工程を経て金属管から給油管本体を得る際、産業用ロボットのアーム先端部に取り付けられた加工手段を用いて上記給油管本体における非塗装部の形成予定位置に加熱処理を施して変色させるか、或いは、肉盛溶接を行って目印部を形成し、
次いで、上記給油管本体に塗装前処理を施し、
しかる後、上記目印部にシール材を貼り付けるとともに上記給油管本体の表面全域に亘って非導電性の塗装を施した後、上記シール材を上記給油管本体から剥がして上記非塗装部を形成するか、或いは、上記給油管本体の表面全域に亘って非導電性の塗装を施した後、上記目印部に対応する塗装部分を研磨して上記目印部を露出させて上記非塗装部を形成することを特徴とする燃料給油管の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料給油管の製造方法において、
上記加工手段は、レーザ発振器で励起させたレーザ光を照射可能な加工ヘッドであり、
当該加工ヘッドから照射するレーザ光の熱によって上記給油管本体の表面を変色させることにより上記目印部を形成し、その後、当該目印部にシール材を貼り付けるとともに上記給油管本体の表面に非導電性の塗装を施した後、上記シール材を上記給油管本体から剥がして上記非塗装部を形成することを特徴とする燃料給油管の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料給油管の製造方法において、
上記給油管本体は、その表面にメッキ層を有しており、
上記レーザ発振器は、上記メッキ層が蒸発して上記給油管本体の素材表面が露出しない熱量となるレーザ光を上記加工ヘッドから照射するよう制御されることを特徴とする燃料給油管の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の燃料給油管の製造方法において、
上記加工手段は、放電被覆用トーチであり、
上記給油管本体表面に上記放電被覆用トーチの電極材を転移させて上記給油管本体の表面を変色させることにより上記目印部を形成し、その後、当該目印部にシール材を貼り付けるとともに上記給油管本体の表面に非導電性の塗装を施した後、上記シール材を上記給油管本体から剥がして上記非塗装部を形成することを特徴とする燃料給油管の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の燃料給油管の製造方法において、
上記加工手段は、MIGロウ付け可能な溶接トーチであり、
上記給油管本体表面に上記溶接トーチのロウ材を付着させて肉盛りを行うことにより上記目印部を形成し、その後、上記給油管本体の表面全域に亘って非導電性の塗装を施した後、上記目印部に対応する塗装部分を研磨して上記目印部を露出させて上記非塗装部を形成することを特徴とする燃料給油管の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定具を用いて車体に固定される燃料給油管の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の燃料給油管は、表面に防錆塗装を施して錆対策を行うだけでなく、その内部に流れる燃料の流動によって帯電するおそれがあるので、火花放電による燃料への引火を防ぐための接地箇所を設けるのが一般的である。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されている燃料給油管は、2つのブラケットを用いて車体に取り付ける構造になっていて、その表面には、防錆塗装が施されている。給油管本体の中途部における一部表面には、塗装の施されていない非塗装部が設けられ、給油管本体の非塗装部に対応する部分には、導電性の熱収縮チューブが巻き付けられている。そして、導電性を有する2つのブラケットで給油管本体におけるチューブが巻き付けられた部分を挟んで把持するとともに、アース用固定ボルトによって両ブラケットを車体に固定することにより、非塗装部、導電性チューブ及び各ブラケットを介して給油管本体を車体に接地させて帯電させないようにしている。
【0004】
ところで、上述の如き給油管本体の非塗装部は、一般的に、曲げ加工等が施された給油管本体の所望する位置にマスキング用のシール材を貼り付けた後、給油管本体の表面全域を塗装し、その後、シール材を給油管本体から剥がすことによって形成される。したがって、燃料給油管を製造する際、作業者等が給油管本体に対するシール材の貼付位置を間違えないように、給油管本体におけるシール材の貼付位置を明確にしておく必要がある。
【0005】
これに対応するために、例えば、特許文献2では、作業者等が被塗装体にマスキング用のシール材を貼り付ける際において、被塗装体に対するシール材の貼付位置に可視光領域のレーザ光を照射してその反射位置を目印にシール材を貼り付けるようにしていて、この方法を利用することで給油管本体に対するシール材の貼付位置を明確にすることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−127676号公報
【特許文献2】特開平05−169010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述の如き燃料給油管の製造は、金属管に曲げ加工や拡管成形を施して給油管本体を得た後、当該給油管本体に対して脱脂洗浄や化成処理等の塗装前処理を行い、その後、給油管本体に対して所望する位置にマスキング用のシール材を貼り付けた後、塗装を施すようになっている。したがって、もし仮に、特許文献2の如き方法を用いて給油管本体の所望する位置にシール材を貼ろうとすると、塗装前処理工程と塗装工程との間のマスキング工程において給油管本体の位置決めを行う冶具とレーザ発振器とを設置する必要があり、これら設備を設置する広いスペースが生産ラインに追加で必要になるとともに、費用が嵩むという問題が発生してしまう。また、燃料給油管の生産ラインでは、塗装前処理工程から塗装工程までの間、給油管本体を吊り掛けて搬送しながら処理を施すのが一般的であるので、このような吊り掛け搬送システムに上述の如き冶具やレーザ発振器を組み込むとなると、既存設備を利用した生産ラインの設計を行うのが難しくなってしまう。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、無駄にスペースを広げることなく既存設備を利用した生産ラインの設計ができる低コストな燃料給油管の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、金属管に曲げ加工や拡管成形を施して塗装前処理前の給油管本体を得る際に、マスキング用シール材の貼付位置の目印を給油管本体に形成するようにしたことを特徴とする。
【0010】
具体的には、表面に非導電性の塗装が施され、且つ、固定具を用いて車体に固定され、当該車体への接地用の非塗装部を上記固定具に対応する位置に有する金属製の燃料給油管の製造方法において、次のような解決手段を講じた。
【0011】
すなわち、第1の発明では、機械加工工程、拡管工程、曲げ工程及び溶接組立工程を経て金属管から給油管本体を得る際、産業用ロボットのアーム先端部に取り付けられた加工手段を用いて上記給油管本体における非塗装部の形成予定位置に加熱処理を施して変色させるか、或いは、肉盛溶接を行って目印部を形成し、次いで、上記給油管本体に塗装前処理を施し、しかる後、上記目印部にシール材を貼り付けるとともに上記給油管本体の表面全域に亘って非導電性の塗装を施した後、上記シール材を上記給油管本体から剥がして上記非塗装部を形成するか、或いは、上記給油管本体の表面全域に亘って非導電性の塗装を施した後、上記目印部に対応する塗装部分を研磨して上記目印部を露出させて上記非塗装部を形成することを特徴とする。
【0012】
第2の発明では、第1の発明において、上記加工手段は、レーザ発振器で励起させたレーザ光を照射可能な加工ヘッドであり、当該加工ヘッドから照射するレーザ光の熱によって上記給油管本体の表面を変色させることにより上記目印部を形成し、その後、当該目印部にシール材を貼り付けるとともに上記給油管本体の表面に非導電性の塗装を施した後、上記シール材を上記給油管本体から剥がして上記非塗装部を形成することを特徴とする。
【0013】
第3の発明では、第2の発明において、上記給油管本体は、その表面にメッキ層を有しており、上記レーザ発振器は、上記メッキ層が蒸発して上記給油管本体の素材表面が露出しない熱量となるレーザ光を上記加工ヘッドから照射するよう制御されることを特徴とする。
【0014】
第4の発明では、第1の発明において、上記加工手段は、放電被覆用トーチであり、上記給油管本体表面に上記放電被覆用トーチの電極材を転移させて上記給油管本体の表面を変色させることにより上記目印部を形成し、その後、当該目印部にシール材を貼り付けるとともに上記給油管本体の表面に非導電性の塗装を施した後、上記シール材を上記給油管本体から剥がして上記非塗装部を形成することを特徴とする。
【0015】
第5の発明では、第1の発明において、上記加工手段は、MIGロウ付け可能な溶接トーチであり、上記給油管本体表面に上記溶接トーチのロウ材を付着させて肉盛りを行うことにより上記目印部を形成し、その後、上記給油管本体の表面全域に亘って非導電性の塗装を施した後、上記目印部に対応する塗装部分を研磨して上記目印部を露出させて上記非塗装部を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明では、目印部の形成時に必要な給油管本体を固定する冶具を機械加工工程から溶接組立工程までにおいて予め据えられている冶具を利用でき、塗装前処理工程と塗装工程との間に目印部を形成するためだけに新規に冶具を設置する必要が無いので、生産ラインのスペースを無駄に広げる必要が無く、しかも、設備コストを低く抑えることができる。また、一般的な生産ラインにおける塗装前処理工程から塗装工程までの間の吊り掛け搬送システムに手を加える必要が無いので、既存設備を利用した生産ラインの設計をすることができる。
【0017】
第2の発明では、加工速度が速いので、目印部の形成速度が速くなり、効率良く燃料給油管を製造することができる。
【0018】
第3の発明では、目印部を形成する際に、給油管本体表面の目印部に対応する領域にメッキ層が残って給油管本体の素材表面が露出しないので、製造後の燃料給油管における非塗装部がさらに錆難くなり、防錆力の高い燃料給油管にできる。
【0019】
第4の発明では、第2及び第3の発明の如きランニングコストが高いレーザ発振器を用いずに目印部を形成することができるので、コストを低く抑えて燃料給油管を製造することができる。
【0020】
第5の発明では、目印部を形成した際、給油管本体表面の目印部の領域が他の領域よりも盛り上がって目立つようになるので、目印部の視認性が良くなる。したがって、第2〜第4の発明の如きシール材を目印部に貼り付けるマスキング工程の必要が無くなって、燃料給油管1の製造の作業効率をさらに良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態1における製造方法を用いて製造した燃料給油管を示す斜視図である。
図2図1における燃料給油管の車体への取付構造部分を拡大した図である。
図3図2のIII−III線における断面図である。
図4】本発明の実施形態1における製造方法が適用された生産ラインのブロック図を示す。
図5】溶接組立工程において給油管本体にリテーナを組み付けるとともに目印部を形成している状態を示す図である。
図6図5のVI−VI線における断面図である。
図7図6の後、マスキング工程にて目印部にシール材を貼り付けた状態を示す図である。
図8図7の後、塗装工程にて給油管本体表面に塗装を施した状態を示す図である。
図9図8の後、艤装組立工程にて給油管本体表面からシール材を剥がした状態を示す図である。
図10】本発明の実施形態2に係る図6相当図である。
図11図10の後、マスキング工程にて目印部にシール材を貼り付けた状態を示す図である。
図12図11の後、塗装工程にて給油管本体表面に塗装を施した状態を示す図である。
図13図12の後、艤装組立工程にて給油管本体表面からシール材を剥がした状態を示す図である。
図14】本発明の実施形態3に係る図4相当図である。
図15】本発明の実施形態3に係る図6相当図である。
図16図15の後、塗装工程にて給油管本体表面に塗装を施した状態を示す図である。
図17図16の後、艤装組立工程にて塗装層における目印部に対応する領域を研磨した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0023】
《発明の実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係る製造方法で製造された燃料給油管1を示す。該燃料給油管1は、円筒状の金属管から形成され、表面にメッキ層10a(図6参照)を有する給油管本体1cと、短い円筒状をなす金属製のリテーナ1dと、細長い円筒状をなす金属製のブリーザ管2とを備えている。
【0024】
給油管本体1cの一端は、車両の燃料タンク(図示せず)に接続される一方、給油管本体1cの他端側には、拡管部1eが形成されている。
【0025】
給油管本体1cは、表面に有機皮膜処理(カチオン電着塗装又は粉体塗装等)が施されて非導電性の塗膜層10d(図8及び図9参照)が形成されているが、図3に示すように、中途部に一か所だけ円形状の第1非塗装部1bが形成されている。
【0026】
リテーナ1dは、表面に有機被膜処理(カチオン電着塗装又は粉体塗装等)が施されて非導電性になっており、一端が給油口1aを構成する一方、他端側が拡管部1eに嵌挿されてレーザ溶接により接続されている(図5参照)。
【0027】
ブリーザ管2は、表面に有機皮膜処理(カチオン電着塗装又は粉体塗装等)が施されて非導電性になっており、リテーナ1d及び給油管本体1cを用いて燃料を燃料タンクに給油する際において、気化した燃料を含む空気を燃料タンクから給油管本体1cの給油口1a側に抜くようになっている。
【0028】
燃料給油管1は、図3に示すように、固定具3を用いて車体Bの所定位置に取り付けられるようになっている。
【0029】
固定具3は、燃料給油管1及びブリーザ管2を把持する把持具4と、該把持具4を車体Bに固定する金属性の固定ボルト5と、中央に貫通孔6aが形成された厚みを有する板状のゴム部材6とを備えている。
【0030】
把持具4は、給油管本体1cの径方向で、且つ、給油管本体1c及びブリーザ管2の並設方向と直交する方向に対向配置されたブラケット7及びカバーパネル8を備えている。
【0031】
ブラケット7は、帯状の金属プレートをプレス成形することにより得たものであり、表面に有機皮膜処理(カチオン電着塗装又は粉体塗装等)が施されて非導電性となっている。
【0032】
ブラケット7の長手方向一端中央には、カバーパネル8の反対側に折り曲げて形成された断面略L字状の係合爪71が設けられている。
【0033】
ブラケット7の長手方向一端側における係合爪71に連続する部分には、カバーパネル8の反対側に窪むように湾曲する第1把持部72が形成され、該第1把持部72は、給油管本体1cの外周面に対応する形状をなしている。
【0034】
第1把持部72には、カバーパネル8の反対側に窪む嵌合凹部72aが形成され、その底面中央には、給油管本体1c側に略半球状に張り出す張出部72bが形成されている。
【0035】
該張出部72bの先端面には、塗装が施されずに金属部分が剥き出しとなった第2非塗装部72cが形成されている。
【0036】
そして、嵌合凹部72aには、張出部72bを貫通孔6aに対応させた状態でゴム部材6を嵌合可能になっている。
【0037】
ブラケット7の中途部における第1把持部72に連続する部分には、ブラケット7の長手方向に延びる長孔73が形成され、ブラケット7におけるカバーパネル8の反対側には、座金付きの取付ナット9aが長孔73に対応するように溶着されている。
【0038】
また、ブラケット7の長手方向他端側には、カバーパネル8の反対側に窪むように湾曲する第2把持部74が形成され、該第2把持部74は、ブリーザ管2の外周面に対応する形状をなしている。
【0039】
カバーパネル8は、図2に示すように、ブラケット7側に開放する断面が幅広な略U字状をなすプレス部品であり、表面に有機皮膜処理(カチオン電着塗装又は粉体塗装等)が施されて非導電性になっている。
【0040】
カバーパネル8は、給油管本体1c及びブリーザ管2の並設方向に対向する一対の立壁部81と、該両立壁部81の一方の縁部同士を繋ぐ略矩形板状のカバー部82とを備えている。
【0041】
立壁部81の他方の各縁部には、互いに離れる方向に突出し、且つ、給油管本体1cに沿って延びるフランジ部83がそれぞれ形成され、該各フランジ部83には、カバーパネル8を車体Bに取り付けるための取付孔83aが形成されている。
【0042】
また、一方の立壁部81には、図3に示すように、ブラケット7の係合爪71が係合可能な係合孔81aが形成されている。
【0043】
カバー部82における給油管本体1cの延長方向一側中央には、図1乃至図3に示すように、ブラケット7側に窪む凹陥部84が形成されている。
【0044】
該凹陥部84の底面には、平坦部84aが形成され、該平坦部84aの中央には、ボルト差込孔84bが形成されている。
【0045】
平坦部84aにおけるブラケット7の反対側のボルト差込孔84b周縁には、図3に示すように、塗装が施されていない第3非塗装部84cが形成され、ボルト差込孔84bに取付ボルト9bをブラケット7の反対側から挿通させると、取付ボルト9bの頭部が第3非塗装部84cに接触するようになっている。
【0046】
カバー部82における一方の立壁部81と凹陥部84との間には、図3に示すように、ブラケット7の反対側に窪むように湾曲する第3把持部85が形成され、該第3把持部85は、給油管本体1cの外周面に対応する形状をなしている。
【0047】
一方、カバー部82における他方の立壁部81と凹陥部84との間には、ブラケット7の反対側に窪むように湾曲する第4把持部86(図2参照)が形成され、該第4把持部86は、ブリーザ管2の外周面に対応する形状をなしている。
【0048】
そして、把持具4は、ブラケット7の嵌合凹部72aにゴム部材6を嵌合させた状態において、ブラケット7の第1把持部72とカバーパネル8の第3把持部85との間に給油管本体1cを配置するとともに、ブラケット7の第2把持部74とカバーパネル8の第4把持部86との間にブリーザ管2を配置し、且つ、係合爪71を係合孔81aに係合させるとともにブラケット7とカバーパネル8とを互いに接近させることにより、ブラケット7とカバーパネル8とで給油管本体1c及びブリーザ管2を各々の径方向から挟んで把持するようになっている。
【0049】
ブラケット7とカバーパネル8とで給油管本体1c及びブリーザ管2を把持した状態で取付ボルト9bをボルト差込孔84b及び長孔73に順に通過させるとともに取付ナット9aに螺合させると、ブラケット7及びカバーパネル8によって給油管本体1c及びブリーザ管2を把持する状態が維持されるようになっている。このとき、張出部72bが貫通孔6aを通過した状態になって第2非塗装部72cが第1非塗装部1bに圧接するようになっている。また、給油管本体1cの第1非塗装部1bとブラケット7の第2非塗装部72cとがゴム部材6に対応する位置となり、ゴム部材6はブラケット7と燃料給油管1との間に圧縮した状態で配設されていて、第1非塗装部1bを覆うとともに第2非塗装部72cを覆うようになっている。
【0050】
そして、給油管本体1cは、第1非塗装部1b、第2非塗装部72c、取付ナット9a、取付ボルト9b、第3非塗装部84c及び固定ボルト5によって車体Bに接地されるようになっている。
【0051】
給油管本体1c及びリテーナ1dは、図5に示すように、組立装置20を用いて組み立てられている。
【0052】
該組立装置20は、給油管本体1cの拡管部1eにリテーナ1dを嵌挿した状態で給油管本体1c及びリテーナ1dをセット可能な回転治具12と、レーザ発振器11で励起させたレーザ光Lzを照射可能な加工ヘッド11a(加工手段)と、該加工ヘッド11aがアーム先端に取り付けられた産業用ロボット13と、レーザ発振器11、回転治具12及び産業用ロボット13に接続された制御部14とを備え、該制御部14は、レーザ発振器11から照射されるレーザ光Lzの出力、回転治具12の回転動作及び産業用ロボット13の移動動作を制御するようになっている。
【0053】
回転治具12は、水平方向に延びるとともに図示しないサーボモータの回転駆動に連動して回転する回転軸12aを有し、給油管本体1cに嵌挿したリテーナ1dに回転軸12aを挿入して回転させることにより、給油管本体1c及びリテーナ1dがその重合部分の筒中心線周りに一体的に回転するようになっている。
【0054】
そして、制御部14は、回転治具12に作動信号を出力して給油管本体1c及びリテーナ1dを回転させながらレーザ発振器11に作動信号を出力して給油管本体1cの開口周縁にレーザ光Lzを照射することにより、給油管本体1cとリテーナ1dとを隅肉溶接により接続するようになっている。
【0055】
また、制御部14は、産業用ロボット13に作動信号を出力して加工ヘッド11aを第1非塗装部1bの形成予定位置の近くまで移動させるとともに、図6に示すように、レーザ発振器11に作動信号を出力して第1非塗装部1bの形成予定位置に加工ヘッド11aからレーザ光Lzを照射させて給油管本体1cの表面を変色させることによって給油管本体1cの表面に目印部10bを形成するようになっている。このとき、加工ヘッド11aから照射されるレーザ光Lzは、メッキ層10aが蒸発して給油管本体1cの素材表面が露出しない熱量になっている。
【0056】
次に、燃料給油管1の製造について詳述する。
【0057】
燃料給油管1の生産ラインには、図4に示すように、機械加工工程S1、拡管工程S2、第1溶接組立工程S3、曲げ工程S4、第2溶接組立工程S5、水没リーク検査工程S6、塗装前処理工程S7、マスキング工程S8、塗装工程S9、焼付乾燥工程S10、艤装組立工程S11及び水没リーク検査工程S12が順に設けられている。
【0058】
まず、機械加工工程S1において、給油管本体1cやブリーザ管2になる各金属管を一定寸法に切断する切断加工や、リテーナ1dになる鋼板のプレス加工を行う。
【0059】
次に、拡管工程S2において、直線状の給油管本体1cの一端側にパンチ型(図示せず)を圧入して拡管部1eを拡管成形する。
【0060】
その後、第1溶接組立工程S3において、給油管本体1cの拡管部1eにリテーナ1dを嵌挿させるとともに、図5に示すように、産業用ロボット13のアーム先端部に取り付けられた加工ヘッド11aを用いて給油管本体1cとリテーナ1dとを隅肉溶接により接続する。
【0061】
また、第1溶接組立工程S3において、図6に示すように、加工ヘッド11aを用いて給油管本体1cにおける第1非塗装部1bの形成予定位置に加熱処理を施すことにより変色させて目印部10bを形成する。
【0062】
次いで、曲げ工程S4において、給油管本体1c及びブリーザ管2をそれぞれ曲げ成形する。
【0063】
しかる後、第2溶接組立工程S5において、MIGロウ付けによってブリーザ管2の一端を給油管本体1cの拡管部1eに接合して塗装前の燃料給油管1を得る。
【0064】
その後、水没リーク検査工程S6において、塗装前の燃料給油管1をその開口部分を塞いだ状態で水没させて気泡が発生するか否かを見て気密性を確認する。
【0065】
次に、塗装前処理工程S7において、塗装前の燃料給油管1を脱脂洗浄した後、化成処理を施し、その後、水洗いをして乾燥させる。
【0066】
次いで、マスキング工程S8において、図7に示すように、作業者が給油管本体1cの目印部10bにマスキング用の樹脂製シール材10cを貼り付ける。
【0067】
そして、塗装工程S9において、図8に示すように、給油管本体1cの表面全域に有機被膜処理が施されて塗膜層10dが形成される。
【0068】
しかる後、焼付乾燥工程S10において、給油管本体1cの表面全域に形成された塗膜層10dを硬化させる。
【0069】
その後、艤装組立工程S11において、図9に示すように、給油管本体1cに貼り付けられているシール材10cを剥がして第1非塗装部1bを形成した後、取付ナット9a及び取付ボルト9bを用いて燃料給油管1にブラケット7及びカバーパネル8を組み付ける。
【0070】
そして、水没リーク検査工程S12において、ブラケット7等が組み付けられた燃料給油管1をその開口部分を塞いだ状態で水没させて気泡が発生するか否かを見て気密性を確認し、燃料給油管1の製造を終了する。
【0071】
尚、図6乃至図9のメッキ層10a、シール材10c及び塗膜層10dの厚みは誇張して記載している。
【0072】
以上より、本発明の実施形態1によると、目印部10bの形成時に必要な給油管本体1cを固定する冶具を第1溶接組立工程S3において予め据えられている冶具を利用でき、塗装前処理工程S7と塗装工程S9との間に目印部10bを形成するためだけに新規に冶具を設置する必要が無いので、生産ラインのスペースを無駄に広げる必要が無く、しかも、設備コストを低く抑えることができる。
【0073】
また、一般的な生産ラインにおける塗装前処理工程S7から塗装工程S9までの間の吊り掛け搬送システムに手を加える必要が無いので、既存設備を利用した生産ラインの設計をすることができる。
【0074】
また、加工ヘッド11aから照射されるレーザ光Lzによるレーザ加工は、加工速度が速いので、給油管本体1c表面に対する目印部10bの形成速度が速くなり、効率良く燃料給油管1を製造することができる。
【0075】
さらに、目印部10bを形成する際、加工ヘッド11aから照射されるレーザ光Lzは、メッキ層10aが蒸発して給油管本体1cの素材表面が露出しない熱量になっているので、給油管本体1c表面の目印部10bに対応する領域にメッキ層10aが残って給油管本体1cの素材表面が露出しない。したがって、製造後の給油管本体1cにおける第1非塗装部1bがさらに錆難くなり、防錆力の高い燃料給油管1にできる。
【0076】
《発明の実施形態2》
図10乃至図13は、本発明の実施形態2における目印部10bの形成方法を示す。この実施形態2では、目印部10bを形成するための加工手段が実施形態1と異なるだけでその他は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と異なる部分のみを詳細に説明する。
【0077】
実施形態2では、放電被覆用トーチ15(加工手段)を用いて給油管本体1cに目印部10bを形成するようになっている。すなわち、実施形態2の第1溶接組立工程S3では、放電被覆用トーチ15がアーム先端部分に取り付けられた産業用ロボット13aが配置され、放電被覆用トーチ15の電極材15aを回転させながら給油管本体1cにおける第1非塗装部1bの形成予定位置に擦り付けて転移させることにより給油管本体1cの表面を変色させて目印部10bを形成するようになっている。
【0078】
尚、実施形態2における目印部10bの形成は、第1溶接組立工程S3で行われている。したがって、燃料給油管1の製造工程は、目印部10bを形成する加工手段が異なる以外は実施形態1と同じであるので、詳細な記載は割愛する。
【0079】
また、図10乃至図13のメッキ層10a、シール材10c及び塗膜層10dの厚みは誇張して記載している。
【0080】
以上より、本発明の実施形態2によると、実施形態1の如きランニングコストが高いレーザ発振器11を用いずに目印部10bを形成することができるので、コストを低く抑えて燃料給油管1を製造することができる。
【0081】
尚、本発明の実施形態1,2では、第1溶接組立工程S3において、目印部10bを形成しているが、これに限らず、機械加工工程S1、拡管工程S2、曲げ工程S4及び第2溶接組立工程S5において目印部10bを形成する構成であってもよい。
【0082】
《発明の実施形態3》
図14乃至図17は、本発明の実施形態3における目印部10bの形成方法を示す。この実施形態3では、目印部10bを形成するための加工手段と生産ラインにおける一部工程とが実施形態1と異なるだけでその他は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と異なる部分のみを詳細に説明する。
【0083】
実施形態3では、MIGロウ付け可能な溶接トーチ16(加工手段)を用いて給油管本体1cに目印部10bを形成するようになっている。すなわち、実施形態3の第2溶接組立工程S5では、溶接トーチ16がアーム先端部分に取り付けられた産業用ロボット13bが配置され、給油管本体1cにおける第1非塗装部1bの形成予定位置にロウ材16aを付着させて肉盛りを行うことによって目印部10bを形成するようになっている。
【0084】
そして、第1非塗装部1bは、図16及び図17に示すように、給油管本体1cの表面全域に亘って有機被膜処理を施した後、艤装組立工程S11において目印部10bに対応する塗膜層10dを研磨して目印部10bを露出させることにより形成するようになっている。
【0085】
尚、図15乃至図17のメッキ層10a、目印部10b及び塗膜層10dの厚みは誇張して記載している。
【0086】
次に、燃料給油管1の製造について詳述する。尚、実施形態3では、実施形態1の如きマスキング工程S8が無い点、及び、第1溶接組立工程S3、第2溶接組立工程S5及び艤装組立工程S11の作業内容の一部が異なっている点を除いて実施形態1と同じであるため、異なる部分のみを詳細に説明する。
【0087】
実施形態3の第1溶接組立工程S3では、実施形態1のように加工ヘッド11aを用いて目印部10bを形成していない。
【0088】
実施形態3の第2溶接組立工程S5では、図15に示すように、ブリーザ管2の一端を給油管本体1cの拡管部1eに接合するためのMIGロウ付け用の溶接トーチ16を用いて給油管本体1cにおける第1非塗装部1bの形成予定位置にロウ材16aを付着させて肉盛りを行うことによって目印部10bを形成する。
【0089】
そして、塗装工程S9において、図16に示すように、給油管本体1cの表面全域に亘って有機被膜処理を施して塗膜層10dを形成した後、焼付乾燥工程S10において給油管本体1cの表面全域に形成された塗膜層10dを硬化させる。その後、艤装組立工程S11において、図17に示すように、給油管本体1cにおける目印部10bに対応する塗膜層10dを研磨して目印部10bを露出させて第1非塗装部1bを形成する。しかる後、燃料給油管1は、水没リーク検査工程S12を経て完成となる。
【0090】
以上より、本発明の実施形態3によると、目印部10bを形成した際、給油管本体1c表面の目印部10bの領域が他の領域よりも盛り上がって目立つようになるので、目印部10bの視認性が良くなる。したがって、実施形態1,2の如きシール材10cを目印部10bに貼り付けるマスキング工程S8の必要が無くなって、燃料給油管1の製造の作業効率をさらに良くすることができる。
【0091】
尚、本発明の実施形態3では、第2溶接組立工程S5において、目印部10bを形成しているが、これに限らず、機械加工工程S1、拡管工程S2、第1溶接組立工程S3及び曲げ工程S4において目印部10bを形成する構成であってもよい。
【0092】
また、本発明の実施形態1〜3では、加工ヘッド11aを用いて給油管本体1cとリテーナ1dとを隅肉溶接により接続しているが、これに限らず、溶接トーチ16を用いて給油管本体1cとリテーナ1dとをMIGロウ付けにより接続するようにしてもよい。
【0093】
また、本発明の実施形態1〜3では、表面にメッキ層10aを有する給油管本体1cに目印部10bを形成しているが、表面にメッキ層10aの無い給油管本体1cにも本発明の製造方法を用いて目印部10bを形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、固定具を用いて車体に固定される燃料給油管の製造方法に適している。
【符号の説明】
【0095】
1 燃料給油管
1b 第1非塗装部
1c 給油管本体
3 固定具
10a メッキ層
10b 目印部
10c シール材
10d 塗膜層
11 レーザ発振器
11a 加工ヘッド(加工手段)
13,13a,13b 産業用ロボット
15 放電被覆用トーチ(加工手段)
16 溶接トーチ(加工手段)
B 車体
Lz レーザ光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17