(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
生タイヤを把持離脱するバーチカルローダーと、上下共に内部及び外部リングにより保持された上部リング及び下部リングで支持されるブラダーの長手方向の高さ調整及び上昇下降を中心機構によって行うブラダー調整装置と、前記ブラダー内に流体を供給する供給手段と、下金型に固定されている下部ビードリング及び上金型に固定されている上部ビードリングを備えた加硫機と、を備えた生タイヤ製造方法であって、
前記バーチカルローダーで把持した前記生タイヤを、前記下部ビードリングと離間する前記ブラダーの外側に配置する第一の工程と、
前記供給手段により前記ブラダー内に水蒸気又はN2ガス(窒素ガス)による低圧のシェーピングを行いながら、前記生タイヤの幅以下に前記上部リングを下降させる、又は、前記生タイヤの幅以下に前記上部リングを下降及び前記下部リングを上昇させる第二の工程と、
前記ブラダー内に水蒸気又はN2ガス(窒素ガス)による中圧のシェーピングを行い、前記ブラダーが前記生タイヤの内側センターから徐々に内側上下ショルダー、内側上下サイドウォール、内側上下ビードを押圧することによる前記生タイヤと前記ブラダーとの間の空気の排出に合わせて、前記上部リングの上昇と、前記下部リングの下降が同時に行われる第三の工程と、
前記バーチカルローダーで把持した前記生タイヤを離脱する第四の工程と、
前記加硫機の上金型に固定されている上部ビードリングが前記上金型の下降に合わせ下降し、前記上部ビードリングと前記生タイヤの上ビードとの間隔WTが狭まって来た時、前記間隔WTと前記下部ビードリングと前記生タイヤの下ビードの間隔WBが等しくなる様に前記ブラダー及び前記生タイヤの下降を制御する第五の工程と、
前記上部ビードリングと前記生タイヤの上ビードの接触と、前記下部ビードリングと前記生タイヤの前記下ビードの接触を同時に行う第六の工程と、を備え、
前記生タイヤの前記上ビードと前記下ビードの形状を均一に成形することができることを特徴としたタイヤ製造方法。
前記第二の工程における前記上部リングの下降、又は、前記上部リングの下降及び前記下部リングの上昇は、前記上部リングの表面から前記生タイヤの上ビードの上端までの幅HTと、前記下部リングの表面から前記生タイヤの下ビードの下端までの幅HBと、が均等であることを特徴とした請求項1に記載のタイヤ製造方法。
前記ブラダーは、その表面に、エアー抜き用の加工が施されていること、又は、平滑加工が施されていること、を特徴とした、請求項1又は請求項2に記載のタイヤ製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に係る発明のような、タイヤ加硫用ブラダーの高さ制御用シリンダーやスペーサーを備えた従来例においては、ブラダーの上昇時の高さと、下降時の高さの調整は、その都度スペーサーを入れ替える事が必要で、かつ、ブラダーの細かな高さ調整に限界がある場合があり、また、高さ変更作業に時間を要しており労力が掛っていた。また、シリンダー内に水圧が掛っているため駆動源である水等がシール不良等によってブラダー内に侵入し、ブラダー内部に水圧が漏れ込み、内圧用の高温水の溶存酸素がブラダー上部に溜るため、ブラダー上部がブラダーの下部と比較しゴムの劣化が早くなっていた。
【0007】
特許文献2に係る発明は、シェーピング準備工程では、センターポストを縮めて上部リングを生タイヤの上端まで下降させ、ブラダー内への加熱加圧媒体の供給量および上部リングの下降時間(シェーピング準備時間)を適正に設定することにより、シェーピング前の生タイヤの内周面の全面にわたってブラダーを適正な圧力で接触させている。しかし、ブラダーをタイヤの幅以下に縮小させるもではないないため、ブラダーが生タイヤの内側センターから徐々に内側上下ショルダー、内側上下サイドウォール、内側上下ビードを押圧することによる生タイヤとブラダーとの間の空気のスムーズな排出が行われない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明は、ブラダーの高さ調整用のスペーサーを用いず、ブラダーの高さを調節するための上部リング上昇下降装置の上昇下降を電動モーター等で行い、ブラダーをタイヤの幅以下に縮小させ、ブラダーが生タイヤの内側センターから徐々に内側上下ショルダー、内側上下サイドウォール、内側上下ビードを押圧することによる生タイヤとブラダーとの間の空気のスムーズな排出が行われるタイヤ製造方法及びこの製造方法に使用するブラダー調整装置を提供するものである。
【0009】
請求項1の発明は、生タイヤを把持離脱するバーチカルローダーと、上下共に内部及び外部リングにより保持された上部リング及び下部リングで支持されるブラダーの長手方向の高さ調整及び上昇下降を中心機構によって行うブラダー調整装置と、前記ブラダー内に流体を供給する供給手段と、下金型に固定されている下部ビードリング及び上金型に固定されている上部ビードリングを備えた加硫機と、を備えた生タイヤ製造方法であって、
前記バーチカルローダーで把持した前記生タイヤを、前記下部ビードリングと離間する前記ブラダーの外側に配置する第一の工程と、前記供給手段により前記ブラダー内に水蒸気又はN2ガス(窒素ガス)による低圧のシェーピングを行いながら、前記生タイヤの幅以下に前記上部リングを下降させる、又は、前記生タイヤの幅以下に前記上部リングを下降及び前記下部リングを上昇させる第二の工程と、前記ブラダー内に水蒸気又はN2ガス(窒素ガス)による中圧のシェーピングを行い、前記ブラダーが前記生タイヤの内側センターから徐々に内側上下ショルダー、内側上下サイドウォール、内側上下ビードを押圧することによる前記生タイヤと前記ブラダーとの間の空気の排出に合わせて、前記上部リングの上昇と、前記下部リングの下降
が同時に行われる第三の工程と、前記バーチカルローダーで把持した前記生タイヤを離脱する第四の工程と、前記加硫機の上金型に固定されている上部ビードリングが前記上金型の下降に合わせ下降し、前記上部ビードリングと前記生タイヤの上ビードとの間隔WTが狭まって来た時、前記間隔WTと前記下部ビードリングと前記生タイヤの下ビードの間隔WB
が等しくなる様に前記ブラダー及び前記生タイヤの下降を制御する第五の工程と、前記上部ビードリングと前記生タイヤの上ビードの接触と、前記下部ビードリングと前記生タイヤの前記下ビードの接触
を同時に行う第六の工程と、を備え、前記生タイヤの前記上ビードと前記下ビードの形状
を均一に成形することができることを特徴としたタイヤ製造方法である。
【0010】
請求項2の発明は、前記第二の工程における前記上部リングの下降、又は、前記上部リングの下降及び前記下部リングの上昇は、前記上部リングの表面から前記生タイヤの上ビードの上端までの幅HTと、前記下部リングの表面から前記生タイヤの下ビードの下端までの幅HBと、
が均等であることを特徴とした請求項1に記載のタイヤ製造方法である。
【0011】
請求項3の発明は、前記ブラダーは、その表面に、エアー抜き用の加工が施されていること、又は、平滑加工が施されていること、を特徴とした、請求項1又は請求項2に記載のタイヤ製造方法である。
【0013】
請求項
4の発明は、請求項1乃至請求項
3のうちいずれか一に記載の
タイヤ製造方法において使用するブラダー調整装置であって、
前記ブラダー調整装置は、生タイヤ加硫用のブラダーと、前記ブラダーの上部開口端部全周を把持する前記上部リングと、前記ブラダーの下部開口端部全周を把持する前記下部リングと、前記ブラダーを保持し上昇又は下降する中心機構と、を備え、
前記上部リングと、前記下部リングを同一構造とし、これら前記上部リングと前記下部リングとを互換可能としたことを特徴とした、ブラダー調整装置である。
【0014】
請求項
5の発明は、請求項1乃至請求項
3のうちいずれか一に記載の
タイヤ製造方法において使用するブラダー調整装置であって、
前記上部リング及び前記下部リングを構成する前記外部リングと前記内部リングは、締結具で上下一体に上部リング上昇下降装置及び下部リング上昇下降装置に固定され、
前記上部リング上昇下降装置は、液圧シリンダー内を摺動可能なセンターポストに上下動自在に嵌挿され、前記下部リング上昇下降装置は、前記センターポストに固設され、
前記上部リング上昇下降装置及び前記下部リング上昇下降装置は、前記センターポストから脱着自在で互換可能であることを特徴とした、請求項
4に記載のブラダー調整装置である。
【0015】
請求項
6の発明は、請求項1乃至請求項
3のうちいずれか一に記載の
タイヤ製造方法において使用するブラダー調整装置であって、
前記ブラダーを把持する前記上部リングが固定されている前記上部リング上昇下降装置は、屈曲性材料を介して電動モーターに連結され、
前記ブラダーを把持する前記下部リングが固定されている前記下部リング上昇下降装置は、前記センターポストを介して前記液圧シリンダーに連結され、
前記上部リング上昇下降装置の上昇下降を前記電動モーターで行い、前記下部リング上昇下降装置の上昇下降を前記液圧シリンダーで行うことを特徴とした、請求項
4又は請求項
5に記載のブラダー調整装置である。
【0016】
請求項
7の発明は、請求項1乃至請求項
3のうちいずれか一に記載の
タイヤ製造方法において使用するブラダー調整装置であって、
前記上部リング及び前記下部リングを構成する前記外部リングと前記内部リングは、締結具で上下一体に上部リング上昇下降装置及び下部リング上昇下降装置に固定され、
前記上部リング上昇下降装置は、液圧内部シリンダー内及び外部センターポスト内を摺動可能な内部センターポストに固設され、
前記下部リング上昇下降装置は、液圧外部シリンダー内及び内部センターポストの外周を摺動可能な外部センターポストに固設され、
前記上部リング上昇下降装置及び前記下部リング上昇下降装置は、前記内外部センターポストから脱着自在で互換可能であることを特徴とした、請求項
4に記載のブラダー調整装置である。
【0017】
請求項
8の発明は、請求項1乃至請求項
3のうちいずれか一に記載の
タイヤ製造方法において使用するブラダー調整装置であって、
前記ブラダーを把持する前記上部リングが固定されている前記上部リング上昇下降装置は、セットキャップにより前記内部センターポストを介して前記液圧内部シリンダーに連結され、
前記ブラダーを把持する前記下部リングが固定されている前記下部リング上昇下降装置は、前記外部センターポストを介して前記液圧外部シリンダーに連結され、
前記上部リング上昇下降装置の上昇下降を前記液圧内部シリンダーで行い、前記下部リング上昇下降装置の上昇下降を前記液圧外部シリンダーで行うことを特徴とした、請求項
4又は請求項
7に記載のブラダー調整装置である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1から請求項3の発明によれば、上部ビードリング及び下部ビードリングの閉作業に入るまでは、下部ビードリングとブラダーは離間した状態とし、下部リングに生タイヤの下ビードが接触するときと、上部リングに生タイヤの上ビードが接触するときのタイミングを調整することによって、タイヤのビード部に関して品質(形状等)にばらつきをなくし、均一なタイヤを製造することができることができる。また、請求項4の発明によれば、請求項1から請求項3の発明による製造物であるタイヤを得ることができる。
【0019】
請求項5から請求項9に記載のブラダー調整装置によれば、ブラダーの長手方向の収縮に関し従来のような水圧シリンダーを使用しないので、ブラダー内に常温の水が流れ込まず、ブラダー内の温度低下と上下温度差が出難くなり、加硫時間の短縮や上下温度差による品質の低下を防止することができる。また、ブラダーの高さ調整が鉄や銅製のスペーサーを使用するシリンダーによる従来の水圧シリンダー方式ではなく、ワイヤー、チェーン、鎖等の屈曲性材料を使用し、モーターで高さ調整が瞬時にmm単位で自由にできる。さらに、内部リング、外部リングの上下のリング形状を同一にする事で、リング種の減少から部品点数の減少、作業の簡素化、ブラダー上下逆転化によるブラダー寿命を延ばすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明はタイヤ製造方法及びこの製造方法で使用するブラダー調整装置である。まず、本発明のタイヤ製造方法、その後にブラダー調整装置について各図に基づいて各実施形態について説明する。
【0022】
本発明に係るタイヤ製造方法は、タイヤ加硫用装置を使用して行われ、このタイヤ加硫用装置としては、生タイヤを把持離脱するバーチカルローダーBL、タイヤ加硫機内に配置され、内部リング15、25及び外部リング13、23により構成される上部リング10及び下部リング20で支持されるブラダー80の長手方向80aの高さ調整及び上昇下降を中心機構によって行うブラダー調整装置1、ブラダー80内に流体を供給する供給手段(不図示)と、加硫機の下金型に固定されている下部ビードリングBMB及び加硫機の上金型に固定されている上部ビードリングTMBと、を備えている。
【0023】
図1は、本発明に係るタイヤ製造方法(センター合せ方式)の工程の一例を示す工程図であり、
図1(a)から(h)に順に示す製造工程を繰り返し行ってタイヤの製造を行う。また、
図2は、本発明に係るタイヤ製造方法(下部合せ方式)の工程の一例を示す主要工程を
図2(a)から(c)で図示している。なお、下部合せ方式でもセンター合わせ方式の
図1(d)以降の工程と同様の工程を経るため、
図1(d)以降の工程に相当する下部合せ方式の説明は省略する。
【0024】
図1(a)、
図2(a)では、生タイヤTを掴んだバーチカルローダーBLが加硫機(ブラダー80)上で待機した状態を図示している。一般的には、加硫前の生タイヤTを加硫機へ搬送する際には、バーチカルローダーBLを用いて行われ、バーチカルローダーBLの爪で生タイヤTの上ビードTBを掴んで鉛直方向Xや水平方向Yの移動によって目的の場所(位置)まで搬送する。
【0025】
本発明の特徴の一つとして、タイヤの製造を行う本発明の各工程を図示した
図1、
図2では、下部ビードリングBMBとブラダー80は離間している。従来の加硫(製造)工程においては、各工程において下部ビードリングBMB上方とブラダー80の下方が既に接触している状態であるが(
図3(a)〜
図3(d)参照)、本発明の各工程では、下部ビードリングBMBとブラダー80は接触しておらず離間している。
【0026】
従来の製造工程は、タイヤ製造の初期の段階、具体的には、バーチカルローダーBLで掴んだ生タイヤTをブラダー80の外側に配置する前の段階から下部ビードリングBMBとブラダー80は接触しており、バーチカルローダーBLで掴んだ生タイヤTをブラダー80の外側に配置する際には生タイヤTの下ビードBBも下部ビードリングBMBに接触し、その後各工程が進んだ後、生タイヤTの上ビードTBに上部ビードリングTMBが接触するという製造工程の流れである。
【0027】
下部ビードリングBMBは加硫機の下金型に固定されており、また、上部ビードリングTMBは加硫機の上金型に固定されているため、下部ビードリングBMB、上部ビードリングTMB共に常時高温(およそ130〜160℃)となっており、上述のような従来の工程では、下部ビードリングBMBに生タイヤTの下ビードBBが接触するときと、上部ビードリングTMBに生タイヤTの上ビードTBが接触するときに加熱温度差が生じるため、タイヤの特に両ビードTB、BBに関して品質不良につながることがあった。また、タイヤの耐久性能の低下といった問題も生じていた。
【0028】
このような問題点を解決するため、本発明は、上部ビードリングTMB及び下部ビードリングBMBの閉作業に入るまでは、下部ビードリングBMBとブラダー80は離間した状態とし、下部ビードリングBMBに生タイヤTの下ビードBBが接触するときと、上部ビードリングTMBに生タイヤTの上ビードTBが接触するときのタイミングを調整することによって、タイヤの両ビードTB、BBに関して品質(形状等)にばらつきをなくし、均一なタイヤを製造することができるものである。
【0029】
図1(b)では、バーチカルローダーBLで掴んだ生タイヤTが下降し、生タイヤTを下部ビードリングBMBと離間するブラダー80の外側に配置する第一の工程を図示している。本図では、バーチカルローダーBLで掴んだ生タイヤTが所定の位置(高さ)で下降停止した状態となっている。ここでいう所定の位置とは、(b)で図示する一の例では、生タイヤTの幅方向(幅)Taの中心線(センターライン)がブラダー80の長手方向80aの略中心となる位置である。すなわち、生タイヤTの幅方向(幅)Taの中心に直交するセンターラインとブラダー80の長手方向の中心に直交するセンターラインが重なった位置(ラインC)で生タイヤTの下降を停止する。この一の例は、生タイヤTのセンターラインとブラダー80のセンターラインを合わせる方式であるため、「センター合せ方式」と称呼する。
【0030】
また、
図2(b)で図示する他の例の所定の位置としては、生タイヤTの下ショルダーBSとブラダー80の下部82が略一致した位置である。すなわち、生タイヤTの下ショルダーBSとブラダー80の下部82が重なった位置(ラインD)で生タイヤTの下降を停止する。この他の例は、生タイヤTの下ショルダーBSとブラダー80の下部82を合わせる方式であるため、「下部合せ方式」と称呼する。
【0031】
図1(b)のセンター合せ方式、
図2(b)の下部合せ方式共に上部リングの下降及び下部リングの上昇過程に於いて、流体である水蒸気又はN2ガス(窒素ガス)による低圧(0.1〜1.0Kg/cm2)シェーピングを圧入しながら行うか、乃至は全くシェーピングの圧入は無しの状態で行うかは、ブラダー80の大きさやブラダー80のゲージ(ゴムの厚さ)等の要因によりその要否は変化するので特に規定せずどちらでも良い。
【0032】
次の第二の工程では、センター合せ方式の場合は上部リング10の下降及び下部リング20の上昇(
図1(c)参照)によって、また、下部合せ方式の場合は上部リング10の下降のみ(
図2(c)参照)によって生タイヤTの幅Ta以下にブラダー80を縮小する。上部リング10の下降及び下部リング20の上昇は、上部リング10で把持するブラダー80の上部81と生タイヤTの上ショルダーTSが重なった位置(ラインU)、下部リングのブラダーの下部82と生タイヤTの下ショルダーBSが重なった位置(ラインD)で停止させる。換言すると、上部リング10の表面10aから生タイヤTの上ビードTBの上端TBEまでの幅HTと、下部リング20の表面20aから生タイヤTの下ビードBBの下端BBEまでの幅HBと、が略均等となる。
図1(c)のセンター合せ方式、
図2(c)の下部合せ方式共に停止精度は生タイヤTの各ショルダーTS、BS中心位置からクラウン側及びサイド側にそれぞれ30mm程度ならずれても問題無い事と、故意に位置調整する事も当然可能とする。なお、上記説明においては、幅HTを上部リング10の表面10aからとしているが、ブラダー80の上部81からであってもよい。また、幅HBを下部リング20の表面20aからとしているが、ブラダー80の下部82からであってもよい。
【0033】
このようなブラダーの調整は、生タイヤTのサイズに合わせて、ブラダー80が収縮した時の最低高さ(最収縮した状態)と、生タイヤT高さに合わせた時の最高高さ(最膨張)及び到達するまでの時間をデジタル設定や後述する液圧シリンダー53に取り付けられている位置決めセンサー等による制御装置(不図示)により管理する。
【0034】
第三の工程では、ブラダー80に中圧のシュエーピングを入れることによって断面方向(長手方向80a)に縮小状態のブラダー80を生タイヤT内面形状に合わせた形状(空豆型)となり、未加硫タイヤの内側TIでブラダー80が膨張し、この膨張するブラダー80が生タイヤTの内側TIの各部位を押圧する工程である。
【0035】
図1(d)では、ブラダー80内に流体である水蒸気又はN2ガス(窒素ガス)による中圧(0.3〜1.2Kg/cm2)のシェーピングを行い、ブラダー80が生タイヤTの内側TIセンターTCから徐々に内側TI上下ショルダーTS、BS、内側TI上下サイドウォールTW、BW、内側TI上下ビードTB、BBを押圧することによる生タイヤTとブラダー80との間の空気の排出に合わせて、上部リング10の上昇と、下部リング20の下降が略同時に行われる第三の工程を図示している。
【0036】
ブラダー80が最初に生タイヤTの内側TIセンターTCに当たることによってこの内側TIセンターTCを押圧する。さらに中圧シェーピングを行うことによって内側TIセンターTCから徐々に内側TI上ショルダーTSと内側TI下ショルダーBS、内側TI上サイドウォールTWと内側TI下サイドウォールBW、内側TI上ビードTBと内側TI下ビードBBの順に沿って押圧する。この押圧によって生タイヤTとブラダー80との間の空気が、内側TIセンターTCから内側TI上ショルダーTSと内側TI下ショルダーBS、内側TI上サイドウォールTWと内側TI下サイドウォールBW、内側TI上ビードTBと内側TI下ビードBBにかけて排出される。
【0037】
そして、このブラダー80の膨張による生タイヤTとブラダー80との間の空気の排出と、上部リング10の上昇及び下部リング20の下降が略同時に行われる(
図1(e)参照)。すなわち、生タイヤTの幅方向(幅)Taの幅まで上部リング10の上昇及び下部リング20の下降が行われる。具体的には、上部リング10の上昇は、上部リング10の表面10aと生タイヤTの上ビードTBの上端TBEが略面一となった状態で停止し、下部リング20の下降は、下部リング20の表面20aと生タイヤTの下ビードBBの下端BBEが略面一となった状態で停止する。換言すると、上部リング10の表面10aと上ビードTVBの上端TBEが略重なった位置(ラインVU)で停止し、下部リング20の表面20aと下ビードBBの下端BBEが略重なった位置(ラインVD)で停止する。
【0038】
図1(f)では、上部ビードリングTMB及び下部ビードリングBMBの閉作業に入る前の工程で、バーチカルローダーBLで掴んでいる生タイヤTを離脱する第四の工程(2)を図示している。なお、この後バーチカルローダーBLは上昇し、次の生タイヤT搬送作業に移る。
【0039】
そして、上部ビードリングTMB及び下部ビードリングBMBの閉作業に入る。
図1(g)では、加硫機の上金型に固定されている上部ビードリングTMBが上金型の下降に合わせ下降し、上部ビードリングTMBと生タイヤTの上ビードTBとの間隔WTが狭まって来た時、間隔WTと下部ビードリングBMBと生タイヤTの下ビードBBの間隔WBがほぼ等しくなる様にブラダー80及び生タイヤTの下降を制御する第五の工程を図示している。ここでは上部ビードリングTMBの下降とブラダー80及び生タイヤTの下降が行われる。
【0040】
ブラダー80及び生タイヤTの下降に関しては、ブラダー80が膨張することによって生タイヤTの内側TI全般に入り込み、生タイヤTがブラダー80を抱持しているような状態となっているが、このブラダー80を抱持している状態の生タイヤTが上部ビードリングTMBの下降に合わせて下降する。
【0041】
ここで、間隔WTと間隔WBは常に均等であることが望ましいが、常に均等でなくてもよい。後述するように第六の工程のように、上部ビードリングTMBと生タイヤTの上ビードTBの接触と、下部ビードリングBMBと生タイヤTの下ビードBBの接触を略同時に行うことができれば、間隔WT、間隔WBの多少のずれ(5mm程度)は許容範囲内とする。
【0042】
図1(h)では、上部ビードリングTMBと生タイヤTの上ビードTBの接触と、下部ビードリングBMBと生タイヤの下ビードBBの接触を略同時に行う第六の工程を図示している。
【0043】
略同時に接触することによって、上ビードTBと下ビードBBの形状が略同じとなり、品質にばらつきがなくなる。
【0044】
これにより上部ビードリングTMB及び下部ビードリングBMBの閉作業が完了し、ブラダー内に、さらに高圧(略6.0〜25Kg/cm2)の流体である水蒸気又はN2ガス(窒素ガス)による高圧の内圧を入れることによって、未加硫の生タイヤTを加硫金型(モールド)に押し付けて加硫成形する。生タイヤTが加硫成形されると、最終的にタイヤが完成する。
【0045】
以上の第一の工程から第六の工程を経ることによって、上ビードTBと下ビードBBの形状を略均一に成形したタイヤを製造することができる。
【0046】
上記説明した製造方法によってタイヤを製造するためには、タイヤを製造するための各装置(タイヤ加硫用装置)である、バーチカルローダーBL、加硫機、加硫機を構成する加硫金型(上金型、下金型)やブラダー80、ブラダー調整装置1、また、ブラダー80に流体を供給する供給手段等の構成物品が挙げられ、これらを連携的に利用することによって生タイヤTを加硫生成し、完成品となるタイヤを製造することができる。以下、これらの構成物品について説明する。
【0047】
生タイヤTを把持離脱するバーチカルローダーBLは、生タイヤTを約6本〜8本の爪で生タイヤTのビード部(上ビードTB)を内側TIから掴み、加硫機上からブラダー80の外側に自動で配置するロボットアームで、各実施形態においては周知のものを利用する。
【0048】
生タイヤ加硫用のブラダー80とは、周知のとおり、生タイヤ加硫時に内部流体(スチーム、窒素等)によって拡張することで生タイヤTを金型との間に挟み込んで、生タイヤTを金型に押圧する拡張体(主にブチルゴム製)であるが、本発明であるブラダー調整装置1は、このブラダー80を上下で支持(把持)し、そして、ブラダー80の上下(長手方向80a)の間隔を調整する装置である。なお、ブラダー80は周知のものを利用する。
【0049】
加硫機には、生タイヤTを加硫成形するための周知の構成である、上金型に固定されている上部ビードリングTMB、下金型に固定されている下部ビードリングBMB、加硫金型等の他、本発明のブラダー調整装置1を備える。
【0050】
加硫金型はトレッドリング部(クラウン部)とサイドモールド部(サイド部)に分けられ、トレッドリング部は、生タイヤTのトレッドの表面にトレッド溝によるトレッドパターンを成形するものである。トレッドリング部にサイドモールド部が保持されて一体化された金型となっている。
【0051】
図示しないが、未加硫タイヤの内側に配置されるブラダー80の内部に窒素ガス等の不活性ガスや高圧スチーム(流体)を供給することによってブラダー80を拡張させる供給手段が加硫機の近傍に備えられている。
【0052】
本発明のタイヤ製造方法に使用し、加硫機の一部を構成する本発明のブラダー調整装置1について説明するが、本発明においては、主にブラダー80を支持(把持)し上昇又は下降する中心機構の構造に関して第一実施形態と第二実施形態に大別できる。まず、第一実施形態について説明する。
【0053】
図4で図示する本発明の第一実施形態のブラダー調整装置1は、タイヤの製造方法の第二の工程(
図1(c)、
図2(c))以降で説明した上部リング10の上昇下降及び下部リング20の上昇下降を行う装置である。その主な構成物品は、ブラダー80の上部81(上端部)を支持(把持)する上部リング10、ブラダー80の下部82(下端部)を支持(把持)する下部リング20、上部リング10が固定された上部リング上昇下降装置17、下部リング20が固定された下部リング上昇下降装置27等を備え、上部リング上昇下降装置上昇用モーター40によって上部リング10が固定された上部リング上昇下降装置17を昇降させる電動式機構と、液圧シリンダー53とセンターポスト50の間への作動流体の流入・排出によって下部リング20が固定された下部リング上昇下降装置27を固設したセンターポスト50を昇降させるシリンダー式機構とのハイブリッド機構で構成される。以下、第一実施形態のブラダー調整装置1について説明する。
【0054】
上述のとおり、ブラダー調整装置1は、ブラダー80の上部開口端部81a全周を支持(把持)する上部リング10と、ブラダー80の下部開口端部82a全周を支持(把持)する下部リング20と、ブラダー80を保持し上昇又は下降する中心機構と、を備えている。
【0055】
上部リング10及び下部リング20は、それぞれ外部リング13、23と、内部リング15、25とで構成する。すなわち、上部リング10は外部リング13と内部リング15とで構成し、同じく下部リング20も外部リング23と内部リング25とで構成する。
【0056】
上部リング10を構成する外部リング13及び内部リング15は平面視略円形状であり、ともに略中心には上部リング上昇下降装置17嵌合用の貫通穴が穿設している。内部リング15には内側に段部15bを備えている。
【0057】
下部リング20を構成する外部リング23及び内部リング25も平面視略円形状であり、ともに略中心には下部リング上昇下降装置27嵌合用の貫通穴が穿設している。内部リング25には内側に段部25bを備えている。
【0058】
外部リング13と内部リング15は、締結具16で上下一体に固定されることによって上部リング10となり、同じく、外部リング23と内部リング25は、締結具26で上下一体に固定されることによって下部リング20となる。具体的には、外部リング13、23と内部リング15、25にはともに上下一体に合わさって固定される位置にネジ溝が螺設されたネジ穴が複数個(6〜8個程)穿設されており、これらのネジ穴に締結具16、26を取り付けることにより、外部リング13、23と内部リング15、25が上下一体となる。
【0059】
そして、締結具18を介して上部リング10と上部リング上昇下降装置17が一体化され、締結具28を介して下部リング20と下部リング上昇下降装置27が一体化される。上部リング上昇下降装置17及び下部リング上昇下降装置27は平面視すると外周面を凹凸形状とした略円形状であり、略中心にはセンターポスト50に挿通するための昇降穴17a、27aを穿設し、さらには、昇降穴17a、27aの近傍に屈曲性材料30を挿通できる挿通穴17b、27bを二ヶ所程穿設している。
【0060】
下部リング上昇下降装置27には、ブラダー80内に不活性ガス等を供給する供給流路(不図示)を備える。すなわち、ブラダー80内に流体を供給する供給手段と下部リング上昇下降装置27が耐圧ホース等を介して連結されている。また、下部リング上昇下降装置27には排気流路(不図示)も備えており、ブラダー80内に供給した流体を回収することによってブラダー80の内圧回収及び排気を行うことができる。
図8で図示したように、下部リング上昇下降装置27には、供給流路の入口である供給口27I、排気流路の出口である排気口27Oを備えている。
【0061】
以上のように、上下一体の外部リング13と内部リング15からなる上部リング10が上部リング上昇下降装置17と一体となり、また、上下一体の外部リング23と内部リング25からなる下部リング20が下部リング上昇下降装置27と一体となっている。
【0062】
本発明の特徴点の一つとして、上部リング上昇下降装置17に固定された外部リング13と下部リング上昇下降装置27に固定された外部リング23は同一構造(形状)とし、上部リング上昇下降装置17に固定された内部リング15と下部リング上昇下降装置27に固定された内部リング25は同一構造(形状)とする。したがって、これら外部リング13、23同士、また、内部リング15、25同士を互換可能としている。
【0063】
上部リング10が固定された上部リング上昇下降装置17及び下部リング20が固定された下部リング上昇下降装置27は、共に何種類かの生タイヤTを保持し取り替え可能であるため、上部リング上昇下降装置17及び下部リング上昇下降装置27も締結具で取り付け取り外し可能である。なお、生タイヤTの種類としては、一例として、生タイヤリム径10インチ〜13インチ用をSグループ、14インチ〜17インチ用をMグループ、18インチ〜22インチ用をLグループ等の3種類が挙げられるが、他のサイズの組み合わせであってもよい。
【0064】
本タイヤ製造方法の発明の第二の工程に相当する過程において、従来は上部リング10等の降下等によるブラダー80の収縮に水圧式のピストン101及びシリンダー100を使用していた(
図3参照)。しかし、この水圧式のピストン101及びシリンダー100では上部リング10の上下の調整を行うのに機構内に鉄製又は銅製のスペーサーZを使用しているため交換する手間がかかり、また、シリンダー100内に水圧(略20Kg/cm2)が掛っているため駆動源である水等がシール不良等によってブラダー80内に侵入し、ブラダー80内部に水圧が漏れ込み、内圧用の高温水の溶存酸素がブラダー80上部81に溜るため、ブラダー80上部81がブラダー80の下部82と比較しゴムの劣化が早くなっていた。
【0065】
そこで、このような課題を解決するため、本発明においては、ブラダー80の上下を逆、すなわち、ブラダーを保持(把持)した状態の上部リング10と下部リング20を上下反転させにすることでブラダー80の劣化を抑え、ブラダー80の上下を逆にしない従来の場合においてはブラダー80の寿命が、ブラダー80の上下を逆にすることによっておよそ10%以上延びる。
【0066】
内部リング15、25及び外部リング13、23によるブラダー80の把持(取付け)について説明する。最初に、ブラダー80の上部81側から説明する。まず、ブラダー80の上部81の開口からブラダーの中に内部リング15を入れる。この状態ではブラダー80の上部開口端部81aの下側全周に内部リング15が存在する。次に、ブラダー80の外側から内部リング15に合わせ内部リング15と外部リング13でブラダー80を把持し締結具16で締める。以上により、ブラダー80の上部開口端部81a全周を内部リング15と外部リング13で把持することとなる。
【0067】
次にブラダー80の下部82側について説明する。まず、ブラダー80の下部82の開口からブラダー80の中に内部リング25を入れる。この状態ではブラダー80の下部開口端部82aの上側全周に内部リング25が存在する。次に、ブラダー80の外側から内部リング25に合わせ内部リング25と外部リング23でブラダー80を把持し締結具26で締める。以上により、ブラダー80の下部開口端部82a全周を内部リング25と外部リング23で把持することとなる。
【0068】
このような作業を行うことによって、ブラダー80の上部81及び下部82の両端を内部リング15、25及び外部リング13、23で把持された状態になる。
【0069】
なお、上記のとおり、内部リング15、25はブラダー80の内部にあり、外部リング13、23はブラダー80の外部にあるため、このような称呼としているが、同様の機能を実現できる構成であれば、このような称呼に限定されるものではない。また、ブラダー80の把持に関しても、ブラダー80の上部開口付近や下部開口付近を支持することができればどのような構成の上部リング10、下部リング20であってもよい。
【0070】
上部リング上昇下降装置17と上部リング10の係合固定について具体的に説明する。内部リング15には上部リング上昇下降装置17の凸部17cが載置される環状面15dがあり、この環状面15dを被覆するように複数個(3個〜8個)の凸部15cを等間隔に備えている。また、上部リング上昇下降装置17は外周に複数個(3個〜8個)の凸部17cを形成している。上方から、内部リング15の凸部15cに隣接する凹部に上部リング上昇下降装置17の凸部17cを合わせ、内部リング15に上部リング上昇下降装置17を入れ込む。この状態では内部リング15の貫通穴15aに上部リング上昇下降装置17の円筒凸部17dが嵌合し、内部リング15の環状面15dに上部リング上昇下降装置17の凸部17cが載置されている。そして、上部リング上昇下降装置17を回転させ、内部リング15の凸部15cと上部リング上昇下降装置17の凸部17cを合わせる。最後に、内部リング15の凸部15c及び上部リング上昇下降装置17の凸部17cに穿設したボルト穴に廻り止めとして廻り止めボルト18を取り付ける。以上により、上部リング上昇下降装置17に上部リング10が係合固定される。
【0071】
下部リング上昇下降装置27と下部リング20の係合固定について説明する。内部リング25には下部リング上昇下降装置27の凸部27cが載置される環状面25dがあり、この環状面25dを被覆するように複数個(3個〜8個)の凸部25cを等間隔に備えている。また、下部リング上昇下降装置27は外周に複数個(3個〜8個)の凸部27cを形成している。上方から、内部リング25の凸部25cに隣接する凹部に下部リング上昇下降装置27の凸部27cを合わせ、内部リング25に下部リング上昇下降装置27を入れ込む。この状態では内部リング25の貫通穴25aに下部リング上昇下降装置27の円筒凸部27dが嵌合し、内部リング25の環状面22dに下部リング上昇下降装置27の凸部27cが載置されている。そして、下部リング上昇下降装置27を回転させ、内部リング25の凸部25cと下部リング上昇下降装置27の凸部27cを合わせる。最後に、内部リング25の凸部25c及び下部リング上昇下降装置27の凸部27cに穿設したボルト穴に廻り止めとして廻り止めボルト28を取り付ける。以上により、下部リング上昇下降装置27に下部リング20が係合固定される。
【0072】
そして、上部リング上昇下降装置17に固定された上部リング10及び下部リング上昇下降装置27に固定された下部リング20によって把持されたブラダー80をブラダー調整装置1の中心機構の構成物品であるセンターポスト50に固設する。上部リング上昇下降装置17及び下部リング上昇下降装置27は、センターポスト50から脱着自在であり、また、上部リング上昇下降装置17と下部リング上昇下降装置27を互換可能としている。
【0073】
ここで、ブラダー80を保持(把持)し上昇又は下降する中心機構としては、主に、上部リング上昇下降装置17と、上部リング上昇下降装置上昇用モーター40と、上部リング上昇下降装置下降用モーター45と、下部リング上昇下降装置27と、作動液を水又は油とした複動式の液圧シリンダー53から成るセンターポスト上昇下降用液圧シリンダーと、この液圧シリンダー53内に収容され、液圧シリンダー53内を摺動するセンターポスト50等とからなる。
【0074】
上部リング上昇下降装置17や下部リング上昇下降装置27の固設に関しては、まず、センターポスト50に下部リング上昇下降装置27の昇降穴27aを挿通し、締結具を介して下部リング上昇下降装置27をセンターポスト50に固設する。下部リング上昇下降装置27の固設においては、下部リング上昇下降装置27の下面に、昇降穴が穿設されたベース29を添設し、締結具29aで固定するのが望ましい。この場合、ベース29にも当然に屈曲性材料30挿通用の挿通穴、供給流路の入口である供給口27I、排気流路の出口である排気口27Oも穿設されることとなる。
【0075】
次に、センターポスト50に上部リング上昇下降装置17の昇降穴17aを挿通し、上部リング上昇下降装置17をセンターポスト50に嵌挿固設する。このように上部リング上昇下降装置17はセンターポスト50に上下動自在に嵌挿されている。換言すると、上部リング上昇下降装置17はセンターポスト50に対して摺動可能に固設されている。そして、センターポスト50の上方には、上部リング上昇下降装置17の抜け防止と後述する屈曲性材料30のガイド(滑車等)を兼務する構成物品としてトップボルト55を装着している。
【0076】
本発明のように、上部リング上昇下降装置17の上昇下降を電動モーター40、45で行う場合は、ブラダー80の高さ調整用デジタル指示値を変更することによって、ブラダー80の高さ調整時間を秒単位、また、ブラダー80の高さをmm単位で変更指示が可能となる。また、ブラダー80内に従来のようなシリンダー100内の操作水が入る恐れは全くなくなり、ブラダー80内の温度が安定する。以下、上部リング上昇下降装置17の上昇下降に関する構成について説明する。
【0077】
上部リング上昇下降装置17と上部リング上昇下降装置上昇用モーター40(電動モーター)が、ワイヤーやチェーン等といった屈曲性材料30を介して連結されている。上部リング上昇下降装置上昇用モーター40に連結する屈曲性材料30は、センターポスト50内に挿通し、センターポスト50上方のトップボルト55を介在して上部リング上昇下降装置17に連結されている。なお、屈曲性材料30は、センターポスト50上方側において二又に分かれており、上部リング上昇下降装置17の二ヶ所で連結される。
【0078】
上部リング上昇下降装置17と上部リング上昇下降装置下降用モーター45(電動モーター)が、ワイヤーやチェーン等といった屈曲性材料30を介して連結されている。上部リング上昇下降装置下降用モーター45に連結する屈曲性材料30は、下部リング上昇下降装置27に穿設された二ヶ所の貫通穴27bに上下動可能に挿通し、上部リング上昇下降装置17の下方(下面)に連結されている。なお、屈曲性材料30は、上部リング上昇下降装置下降用モーター45側において二又に分かれており、上部リング上昇下降装置17の下方(下面)二ヶ所で連結される。
【0079】
上部リング上昇下降装置17とセンターポスト50との間にはオーリングO、望ましくは耐熱性オーリングHOを装着する。また、センターポスト50と液圧シリンダー53との間にはオーリングOを装着する。その他、各部の連結部分には気密等のために適宜オーリングOを設けている。また、上部リング上昇下降装置17と下部リング上昇下降装置27との間には適宜案内管35を配置することが望ましく、この案内管35の貫通穴に屈曲性材料30を挿通させる。
【0080】
以上のように、屈曲性材料30、上部リング上昇下降装置上昇用モーター40又は上部リング上昇下降装置下降用モーター45により、上部リング上昇下降装置17を上下に摺動することができる。
【0081】
下部リング上昇下降装置27の上昇下降は、液圧シリンダー53で行われる。以下、下部リング上昇下降装置27の上昇下降に関する構成について説明する。
【0082】
例えば、図示しないエアーポンプにより油タンク又は水タンクから液圧シリンダー53内に油又は水を圧入して液圧シリンダー53内のセンターポスト50を上下に摺動する。このように、作動油又は作動水により、液圧シリンダー53内においてセンターポスト50が上下に摺動するため、センターポスト50に固設されている下部リング上昇下降装置27も上昇下降する。なお、下部リング上昇下降装置27はセンターポスト50にボルト等の締結具等を介して固設されているため下部リング上昇下降装置27はセンターポスト50に対して摺動不可となっている。
【0083】
上述のとおり、上部リング上昇下降装置17の上昇下降は各電動モーター40、45により、また、下部リング上昇下降装置27の上昇下降は液圧シリンダー53内に圧入する水圧又は油圧による液圧により行われるが、加硫機側に設けられた制御装置によって数値設定及び制御される。
【0084】
ブラダー80の表面89について説明する。一般的な生タイヤの加硫方法においては、未加硫の生タイヤTの内側TIに配置されたブラダー80の内部に、窒素ガス等の不活性ガスをブラダー80に供給し、ブラダー80と生タイヤTとの間の滞留空気を逃がしてブラダー80と生タイヤTを密着させるが、その際、生タイヤTとブラダー80との間の空気を除去するために、通常はブラダー80の表面に空気を逃がすための溝や、これと同様な機能を有する凹凸を設けている。
【0085】
このようなブラダー80表面に形成される空気を除去するための溝は凹溝89aタイプが多く、この凹溝89aを形成するためのコストが掛かってしまい、また、使用時において応力が凹溝89aの底に集中し、そこから亀裂85が発生するのでブラダー80の寿命が低下していた(
図10参照)。したがって、ブラダー80の表面に凹溝89aを無くしてブラダー80の表面を平滑とすれば、凹溝89aへの応力の集中がなくなり、凹溝89aからの亀裂85も発生しなくなるので、必然的にブラダー80の寿命が延びることとなる。
【0086】
また、生タイヤTの加硫の際は、ブラダー80を膨張させることによりブラダー80表面89の凹溝89aで生タイヤのインナーライナーINを押圧することから、タイヤのインナーライナーINに凹溝89aに対応する凸部ILaが形成されるが、生タイヤのインナーライナーIN側の重要な確保すべきゲージG(ゴムの厚さ)は、凸部ILaは含まず、凸部ILaを除いた部分が真に必要なインナーライナーILゲージGである。したがって、ブラダーの凹溝89aが無ければ、生タイヤTのインナーライナーILの凸部ILaも必要なくなるので、インナーライナーINの凸部ILaの部分の材料費が減少する分、タイヤのコストダウンにつながる。
【0087】
以上のような理由から、タイヤ内側のインナーライナーILの表面を平滑化したタイヤに関するタイヤ製造方法におい使用するブラダー80は、その表面に、平滑加工89b(梨地加工を含む)が施されていることをその特徴の一つとする(
図11参照)。したがって、このような表面に平滑加工89bが施されているブラダー80を用いて生タイヤTの加硫を行うと、インナーライナーINの表面に凸部ILaがなく平滑なタイヤが製造されることとなる。なお、ブラダー80の平滑加工89bについては、どのような加工方法でもよい。
【0088】
なお、従来から用いられている表面に空気抜き用の加工が施されているブラダー80を利用してもよい。空気抜き用の加工としては、例えば、エアー抜き用の凹凸の溝、グルーブ、リッヂ、凹凸の模様、腐食加工等が挙げられる。
【0089】
次に
図5で図示する本発明の第二実施形態のブラダー調整装置について説明する。本発明の第二実施形態のブラダー調整装置1は、先に説明した第一実施形態と中心機構の一部が相違する。
【0090】
本発明の第二実施形態のブラダー調整装置1も、タイヤの製造方法の第二の工程(
図1(c)、
図2(c))以降で説明した上部リング10の上昇下降及び下部リング20の上昇下降を行う装置であるが、第一実施形態の中心機構のような電動式機構とシリンダー式機構とのハイブリッド機構ではなく、液圧内部シリンダー63と内部センターポスト60の間への作動流体の流入・排出によって上部リング10が固定された上部リング上昇下降装置17を固設した内部センターポスト60を昇降させ、また、液圧外部シリンダー73と外部センターポスト70の間への作動流体の流入・排出によって下部リング20が固定された下部リング上昇下降装置27を固設した外部センターポスト70を昇降させる内外二重のシリンダー式機構で構成される。以下、説明する。なお、その他の構成に関しては第一実施形態と同様であるため、ここでの説明を割愛する。
【0091】
上部リング上昇下降装置17や下部リング上昇下降装置27を上昇下降させる機構としては、上部リング上昇下降装置17を上昇下降させる液圧内部シリンダー63及び内部センターポスト60、下部リング上昇下降装置27を上昇下降させる液圧外部シリンダー73及び外部センターポスト70に分けられる。
【0092】
これらの機構の関係は、液圧内部シリンダー63内を内部センターポスト60が上下に摺動し、液圧外部シリンダー73内を外部センターポスト70が上下に摺動する。また、外部センターポスト70内を内部センターポスト60が上下に摺動する。
【0093】
液圧外部シリンダー73と液圧内部シリンダー63は上下に連設する。具体的には、地面に液圧内部シリンダー63を設置し、その上に締結具を介して液圧外部シリンダー73を固定する。これによって、上側の液圧外部シリンダー73と下側の液圧内部シリンダー63が上下一体となる。
【0094】
下側の液圧内部シリンダー63内の内部センターポスト60は、上方の液圧外部シリンダー73を貫通し、さらに、液圧外部シリンダー73内の外部センターポスト70内に挿通される。すなわち、外部センターポスト70は筒状体であり、この筒状体である外部センターポスト70内に内部センターポスト60が摺動自在に収容されている。
【0095】
上部リング上昇下降装置17は中心機構を構成する上下動自在の内部センターポスト60に固設されるが、具体的には、内部センターポスト60の上方側にセットキャップ57及びトップボルト55を介して上部リング上昇下降装置17が固設される。また、下部リング上昇下降装置27は中心機構を構成する上下動自在の外部センターポスト70に固設されるが、具体的には、外部センターポスト70の上方側に締結具を介して下部リング上昇下降装置27が固設される。以上より、上部リング上昇下降装置17は、液圧内部シリンダー63内及び外部センターポスト70内を摺動可能な内部センターポスト60に固設される。また、下部リング上昇下降装置27は、液圧外部シリンダー73内及び内部センターポスト60の外周を軸方向に沿って摺動可能な外部センターポスト70に固設される。
【0096】
このような構成により、外部センターポスト70は、液圧外部シリンダー73内及び内部センターポスト60の外周を摺動するが、内部センターポスト60は、液圧内部シリンダー63内及び上方の外部センターポスト70内を摺動する。
【0097】
上部リング上昇下降装置17は、上部リング上昇下降装置17を内部センターポスト60の上方に固定するセットキャップ57及びトップボルト55により内部センターポスト60を介して液圧内部シリンダー63に連結されている。
【0098】
また、下部リング上昇下降装置27は、外部センターポスト70を介して液圧外部シリンダー73に連結されている。
【0099】
以上のように、本発明の第二実施形態では、上部リング上昇下降装置17の上昇下降を液圧内部シリンダー63への液圧(水圧又は油圧)で行い、また、下部リング上昇下降装置の27上昇下降を液圧外部シリンダー73内への液圧(水圧又は油圧)で行うことを特徴としている。この液圧の制御は、加硫機側に設けられた制御装置によって数値設定及び制御される。
【0100】
以上、各実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、各実施形態に記載の技術、又は、その他の公知や周知の技術を組み合わせるようにしてもよい。また、ブラダー80の取付け順序や、各構成物品の固定や取付け等の順序は特に問わない。
【0101】
各図において各実施形態を図示したが、図を分かりやすくする等のために、一部構成を省略、簡略化した部分があるため、本発明は図示した実施形態に限定されるものではない。
【課題】従来のようなブラダーの高さ調整用のスペーサーを用いず、ブラダーをタイヤの幅以下に縮小させ、生タイヤとブラダーとの間の空気のスムーズな排出が行われるタイヤ製造方法及びこの製造方法に使用するブラダー調整装置を提供する。
【解決手段】ブラダー80内にシェーピングを行いながら、生タイヤTの幅以下に上部リング10を下降及び下部リング20を上昇等させる工程と、ブラダー内にシェーピングを行い、ブラダーが生タイヤの内側を押圧することによる空気の排出に合わせて、上部リングの上昇と下部リングの下降が略同時に行われる工程と、上部ビードリングTMBと生タイヤの上ビードTBの接触と、下部ビードリングBMBと生タイヤの下ビードBBの接触を略同時に行う工程等を備え、生タイヤの上ビードと下ビードの形状を略均一に成形することができるタイヤ製造方法及びこの製造方法に使用するブラダー調整装置である。