【実施例】
【0030】
本発明の新規な実施例の構成による軸封装置を備えたロータリーバルブは、要素部材と
してのグランドパッキン及びVシールは、既に知られているものを用いながらも、新規な
構成のロータリーバルブにより、予期し得ない顕著な効果を奏するロータリーバルブ及び
その軸封装置を提供するものである。
【0031】
本発明においては、微細な繊維素材を圧縮成形した軸封装置としての新規な構成の複数
のグランドパッキンを用い、さらに、Vパッキンを備えて長時間の連続使用に耐える構成
のロータリーバルブとして、良好な軸封効果を奏する簡単な軸封止手段を考え出したもの
である。
【0032】
本発明のロータリーバルブ100は、
図1にその軸封部分の断面図を示すものであるが
、全体的な構成は
図5乃至7に示した既知のロータリーバルブの構成と概略同一であるの
で、共通する部分の機能・構成については詳細な説明を省略する部分もある。
【0033】
本実施例の微粉体を供給するロータリーバルブ100は、回転により微粉体を供給する
ために複数のブレードを設けたローターの主軸中空シャフト51を左右のスタッフィング
ボックス56,56により回転可能に支持している。該左右のスタッフィングボックス5
6,56には夫々軸封材充填用空間56aを形成し、該軸封材充填用空間56aには微細
繊維を編み組みしたフィルタ状の軸封材としての複数のグランドパッキン59a,59b
を収容している。夫々のグランドパッキン59a,59bは、フィルタ状のグランドパッ
キンの空隙を油性材料により満たすように浸漬処理をして、濾過性をなくし気体の通過を
阻止するように構成されている。
【0034】
ここで、グランドパッキンの単位体積当たりの空隙の割合を空隙率と称すれば、5%以
下、好ましくは3%以下の空隙率が望ましい。そのグランドパッキンの単処理方法は後述
する。本発明においては、空隙率とは、グランドパッキンの単位体積当たりに保持されて
いる空気を含んだ空間の割合を示し、空隙率0%とはグランドパッキン内に空気を保持し
ている空間はなく、全ての空間内は、空気に置き換わって油脂材料が含浸されていること
を意味する。この空隙率は、未処理のグランドパッキンの単位面積当たりの重量と、処理
済みのグランドパッキンの単位面積当たりの重量と含浸させる油脂の比重によって算出さ
れるものであり、油脂による含浸処理がされていない場合の空隙率を100%とし、全て
の空隙が含浸油脂により置き換えられた場合の空隙率は0%とする。
【0035】
さらに、本実施例の微粉体を供給するロータリーバルブ100の軸封装置においては、
複数のグランドパッキン59が、夫々複数の第1グランドパッキン59a及び第2グラン
ドパッキン59bから構成されており、複数の第1グランドパッキン59aと複数の第2
グランドパッキン59bの間に油脂留めのためのランタンリング58を設けている。ラン
タンリング58は、詳細構造は図示しないが、軸封材充填用空間56a内に収まり、主軸
中空シャフト51の外周を取り巻く環状部材であり、断面がH型或いはI型の環状部材で
あり、複数の第1グランドパッキン59aと複数の第2グランドパッキン59bの間に十
分な油脂溜まりを形成している。このランタンリング58は、円筒部材の外周と内周に溝
を形成して断面をH形状とし、疎と溝から内溝に向けて複数個の孔部を形成したものであ
る。これにより、ランタンリング58は、外溝部と内溝部に油脂を溜め、摺動による摩擦
熱や稼働による負荷熱により流出した油脂を回転するスリーブの外周に均一に補うことが
できる構造となっている。
【0036】
本実施例の微粉体を供給するロータリーバルブ100に用いる軸封装置は、回転により
微粉体を供給するために複数のブレードを設けたローターの主軸中空シャフト51を左右
のスタッフィングボックス56,56により回転可能に支持しており、スタッフィングボ
ックス66には軸封材充填用空間56aを形成し、該軸封材充填用空間56aには微細繊
維を編み組みしたフィルタ状の軸封材としての複数のグランドパッキン59a,59bを
収容しており、グランドパッキン59a,59bの内側には、グランドパッキン摺動部6
1を包むように、左右の中空のスリーブA52,B53が設けられており、夫々のスリー
ブA52,B53内には、主軸中空シャフト51から冷却水が流れ込む構成とされている
。また、夫々のグランドパッキン59a,59bは、フィルタ状のグランドパッキンの空
隙を加熱されたシリコンオイル内に浸漬させてグランドパッキンの濾過性をなくし、気体
性物質の通過を阻止するように構成されている。
【0037】
本実施例の軸封装置のフィルタ状のグランドパッキン59a,59bは、加熱されたシ
リコンオイル内に浸漬させて、グランドパッキンの油性材料の含浸率が空隙率を5%以下
、好ましくは3%以下として濾過性をなくし、気体の通過を阻止するようにした。
【0038】
以下、さらに詳細に実施例を説明する。
図1乃至4には図示はしていないが、ロータリ
ーバルブ100のケーシングは、従来のものと同様に、上側開口部を微粉体の供給口とし
、下側開口部をその排出口として、供給口と排出口の間にローターが回転する円筒状のロ
ーター室を形成している。また、ケーシングの左右両側面には、回転軸であるローター軸
としての主軸中空シャフト51の軸受部としてスタッフィングボックス56,56が固定
されている。各スタッフィングボックス56の内周には主軸中空シャフト51の軸封材と
して複数のグランドパッキン59を収納するための軸封材充填用空間56aがグランドパ
ッキン室として形成されている。従来同様に、複数のグランドパッキン59は、成形され
た微細繊維の網み組み構造であり、軸封材充填用空間56a内に、ボルト締めで進退する
グランドパッキン押え60により押さえ付けられている。
【0039】
左右のスタッフィングボックス56,56部に対応して左右に中空のスリーブA52及
びスリーブB53が設けられている。これらの左右の中空のスリーブA52及びスリーブ
B53は左右のスタッフィングボックス56,56部において主軸中空シャフト51を包
み込むようにしてOリング等の封止手段を介して取り付けられている。左右のスリーブA
52及びスリーブB53の内部は、冷却水が流れるように中空状であり、主軸中空シャフ
ト51に形成された冷却水路A63又は冷却水路B64に連通する流入口A67及び流出
口B68が形成されており、グランドパッキン摺動部61を冷却している。
【0040】
本実施例においては、後述される油脂が含浸された複数のグランドパッキン59は、さ
らに、軸封用の油脂を貯留する断面H形又はI型の環状のランタンリング58(図示は断
面I型)を挟んで4個組の第1のグランドパッキン59a群と4個組の第2のグランドパ
ッキン59b群で構成されている。グランドパッキン59に対しては、ランタンリング5
8により油脂が供給される構成を備えており、給脂口57を介して油脂が供給され、ラン
タンリング58の周りに油脂を貯留させ、全グランドパッキン59は油脂により浸されて
いる。
【0041】
主軸中空シャフト51の左右スタッフィングボックス56に対応する外周部分には、グ
ランドパッキン摺動部61を囲むように、夫々、中空のスリーブA52(左側スリーブ)
及びスリーブB53(右側スリーブ)が備えられている。
ロータリーバルブ100の回転軸である主軸中空シャフト51は、内部に冷却水が通る
貫通孔を有する中空状であり、冷却水が通る貫通孔は、仕切板62により上下に冷却水路
A63と冷却水路B64に分けられている。勿論、主軸中空シャフト51は回転するので
、冷却水路A63と冷却水路B64の上下関係は交互に反転する。
【0042】
図1の上流側から下流側に向かう冷却水路A63を流れる冷却水は、左側のスリーブA
52に対応して形成された流入口A67から主軸中空シャフト51の外周と左側のスリー
ブA52の内周の間の中空部に流れ込み、スリーブA52のグランドパッキン摺動部61
を冷却し、冷却水路B64を流れる冷却水は、別流水路が構成されているために、左側の
スリーブA52には流入せず、右側のスリーブB53に対応して形成された流入口から主
軸中空シャフト51の外周と左側のスリーブB53の内周の間に流れ込み、スリーブB5
3内のグランドパッキン摺動部61を冷却し、各グランドパッキン59を冷却しその過熱
を防いでいる。
【0043】
流入口A67から左側のスリーブA52内に流入した冷却水は、スリーブA52の中空
部の内周部に形成された螺旋案内板66により螺旋状に流れて流出口B68から冷却水路
A63に戻される。冷却水路A63の冷却水を、流入口A67から主軸中空シャフト51
の外周と左側のスリーブA52の内周の間の中空部に流し込むために冷却水路A63を閉
塞して流れを左側のスリーブA52内に導く半月形塞止板66が設けられている。
【0044】
右側の中空スリーブB53は、右側のスタッフィングボックス56に対応する位置に設
けられており、冷却水路B64からの冷却水が流入するように、半月形塞止板66は仕切
板62の反対側に設けられている。その他は、左側のスリーブA52と同様の構成を備え
ている。このような構成により、左側のスリーブA52部分と右側のスリーブB53部分
のグランドパッキン摺動部61を夫々別水路の冷却水により冷却するので、効果的な冷却
手段として構成することができる。
【0045】
本発明のロータリーバルブ100の軸封装置の別実施例として、
図4に示すように、左
側のスリーブA52及び右側のスリーブB53の外周で各グランドパッキン摺動部61の
外側に複数のVパッキン70を、ボルト締めにて進退可能なVパッキン押え71により固
定している。これにより、より確実な封止が可能とされるものである。
【0046】
既に述べたように、従来、微粉体のロータリーバルブにおいてグランドパッキンを用い
る理由は、それが網み組み構造であるために柔軟に成形できることや、復元性を有するこ
とや、及び濾過性を有することである。ところが、従来のグランドパッキンは、網み組み
構造であるために必然的に濾過性を有しており、如何に、給脂口57を介して油脂を供給
し、ランタンリング58の周りに油脂を貯留させて、全グランドパッキン59を油脂によ
り浸したとしても、ロータリーバルブの軸封止部材として長時間使用した場合には、微粉
体自体の封止は期待できるが、気体成分の封止は完全ではなく、長時間の使用によっては
漏れが発生する危険性がある。
【0047】
そこで、本発明は、このような課題を解決するものである。本発明においては、フィル
タ状のグランドパッキン59内に微細繊維により形成されている空隙を油性材料により略
完全に満たすように浸漬処理をして、グランドパッキン59の空隙に油性材料を含浸させ
、空隙率を5%以下、好ましくは3%以下として濾過性をなくし気体の通過を阻止するよ
うに構成したものである。
【0048】
以下、本発明の油脂含浸グランドパッキン59を得るための処理手順を説明する。
(1)従来と同様の網み組みグランドパッキンを準備する。
(2)浸漬槽にシリコンオイルを充填し、100℃以上で200℃以下、好ましくは17
0〜180℃となるように加熱する。
(3)上記(1)で準備されたグランドパッキンを上記(2)の加熱シリコンオイルの浸
漬槽中に12〜15分程度浸漬する。
(4)浸漬槽内に浸漬したグランドパッキンから気泡が上がらないようになるのを確認し
て、グランドパッキンの上下をひっくり返す。
(5)上記(3)(4)の手順を数回繰り返す。
(6)グランドパッキンを浸漬槽から取出し、15〜20分程度冷却し、外周にシリコン
グリースを塗布する。
(7)軸封材充填用空間56a内に所定数のグランドパッキンを装着する。
(8)真空状態を確保しながら、グランドパッキンを装着した軸封材充填用空間56a内
部の空間に、更にシリコンオイルを流し込む。
(9)グランドパッキン押え60により、複数のグランドパッキンを締め込んで押さえる
。
【0049】
以上のようにして構成された軸封装置により、グランドパッキンの濾過性は油性材料に
より阻止され、微粉体は勿論、ガス流も阻止されて良好な軸封効果が達成されるものであ
る。
【0050】
さらに本発明は、別実施例(
図4)として説明したVパッキンを有効に冷却することに
より、経年による軸等の損傷による軸封効果の毀損を避けることができる。
【0051】
以上、本発明の一実施例を詳述したが、本発明は、記載した実施例に限定されるもので
はなく、本願発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、実施例では、
ロータリーバルブの用途として、微粉炭を処理して気体燃料に変換する石炭ガス化炉にお
ける微粉炭の供給機構(排出機構)に用いた場合を例として説明したが、各種のロータリ
ーバルブや軸封部を備えた各種微粉体処理機械に広く利用可能である。例えば、ロータリ
ーバルブに限らずスクリューコンベアやバタフライバルブ、ゲートバルブ、フラップダン
パーといった各種微粉体搬送装置の軸封として広く適用可能である。さらに、ロータリー
バルブの基本的構造についても実施例に限定されるものはなく、適宜選定すればよい。ま
た、グランドパッキンの圧縮率についても、圧縮率の異なる複数組のグランドパッキンを
配列し、複数組のグランドパッキンによる圧縮率の低い領域と複数組のグランドパッキン
による圧縮率の高い領域とを形成してもよく、また、ローター側から外側に向かって次第
に圧縮率が高くなるように個々のグランドパッキンの圧縮率を調整してもよい。さらに、
圧縮率の異なるグランドパッキンの比率も1個対3個に限るものではない。