【実施例1】
【0019】
図1乃至
図3は本発明の型枠装置1を示し、
図1は曲率半径が大きい、即ち緩やかなカーブのアーチ状コンクリート製品を製造するための型枠装置1で、
図2が曲率半径が小さい、即ち急なカーブのアーチ状コンクリート製品を製造するための型枠装置1を示したものである。更に、
図3は変形板2の一部をくの字形状とした直線状コンクリート製品を製造するための型枠装置1を示したものである。
【0020】
先ず、アーチ状コンクリート製品を製造するための型枠装置1について説明する。
図1及び
図2に示すアーチ状コンクリート製品を製造する型枠装置1は、
図5に示す凹状に反り変形させた変形板2を外型2A、
図6に示す凸状に反り変形させた変形板2を内型2Bとして用い、更に、コンクリート製品の端部を形成するための妻板3、3とを備えているものである。
【0021】
更に、
図7に示す如く、外型2Aを所望の曲率半径とするための外ゲージ4Aと、内型2Bを所望の曲率半径とするための内ゲージ4Bと、コンクリート製品の正面又は裏面を成型する座板5と、前記変形板2を内外ゲージ4A、4Bに合わせた曲率半径に保持するための内外ストッパー6A、6Bとを備えているもので、これら妻板3、3、内外ゲージ4A、4B、座板5、内外ストッパー6A、6Bは都度必要になる部品である。
【0022】
図8には、内外ストッパー6A、6Bを多数枚積み上げた状態を示し、所望の曲率半径を得るため、外ストッパー6A、内ストッパー6Bそれぞれで同じ寸法のものを多数枚用意する必要がある。
【0023】
次に、変形板2の構成について
図9乃至
図12を用いて説明する。
前記変形板2は一面にコンクリート製品と接する成型面7を有すると共に、この成型面7の反対側の面には、所定間隔で複数の変形規制部8が配置されている。この変形規制部8は下方開口した桝状であり、隣り合う変形規制部8間には、この変形規制部8の近接方向又は引き離す方向の移動を許容する可撓許容部9が形成されている。
【0024】
また、
図10乃至
図12に示す如く、前記変形規制部8には、変形操作機構10が設けられており、この変形操作機構10は、変形規制部8に溶接にて取り付けられた支持部11と、隣り合う支持部11間に設けられ、支持部11同士を近接方向又は引き離す方向に移動させる操作部12とよりなるものである。
【0025】
前記支持部11は前記変形規制部8に取り付けられた2枚の側板13を備えており、この側板13間には、前記支持部11間の近接方向の移動を規制するための内外ストッパー6A、6Bを着脱可能に取り付けるストッパー取付部14が設けられている。
【0026】
更に、前記操作部12は、前記側板13間に回動可能に取り付けられた回動部15A、15Bと、この回動部15A、15Bを挿通する調整ボルト16と、調整ボルト16のヘッド18の前記回動部15Aを挟んだ反対側に設けられたナット17とよりなるものである。
【0027】
このナット17は調整ボルト16の螺子部19に溶接固定され、前記回動部15Aには通し穴を形成することで、調整ボルト16を所定位置で回転自在としている。また、相対向する側の回動部15Bには、調整ボルト16の螺子部19が螺合する雌螺子加工が施されている。
【0028】
このような変形操作機構10は、直線状に配置しても良いが、調整ボルト16を回す際に作業しやすいよう、1セット毎に互い違いに配置することが望ましい。
【0029】
以上の構成にして、アーチ状コンクリート製品を製造する場合、外型2Aを形成するため、
図4の直線状の変形板2を
図5に示す凹状に反り変形させる。この際、所望の曲率半径とするため外ゲージ4Aに合わせて曲げていくものである、
【0030】
変形板2を外ゲージ4Aに合わせて曲げるため、即ち、凹状の反り変形させるため、操作部12の調整ボルト16を前記支持部11、11間が離れる方向に回し、十分に引き離したところで前記外ストッパー6Aをストッパー取付部14に取り付ける。その後、操作部12の調整ボルト16を、前記支持部11、11間が外ストッパー6Aで規制させるまで近づく方向に回すことで、前記変形板2が適切な角度となる。
【0031】
以上の操作により、支持部11と共に変形規制部8同士が離れる方向に移動し、変形板2は所定の角度で曲がることとなる。この曲げ角度は変形板2の耐久性等を考慮して7度以下とすることが望ましい。そして、複数の変形操作機構10でこのような操作を行うことにより、変形板2は所望の凹状に反り変形し、外型2Aとして用いることができるようになる。
【0032】
また、内型2Aを形成するためには、
図4の直線状の変形板2を
図6に示す凸状に反り変形させる。この際、所望の曲率半径とするため内ゲージ4Bに合わせて曲げていくものである、
【0033】
変形板2を内ゲージ4Bに合わせて曲げるため、即ち、凸状の反り変形させるため、一度、操作部12の調整ボルト16を前記支持部11、11間が離れる方向に回し、十分に引き離したところで前記内ストッパー6Bをストッパー取付部14に取り付ける。その後、操作部12の調整ボルト16を、前記支持部11、11間が内ストッパー6Bで規制させるまで近づく方向に回すことで、前記変形板2が適切な角度となる。
【0034】
以上の操作により、支持部11と共に変形規制部8同士が近づく方向に移動し、変形板2は所定の角度で凸状に曲がることとなる。この曲げ角度は変形板2の耐久性等を考慮して7度以下とすることが望ましい。そして、複数の変形操作機構10でこのような操作を行うことにより、変形板2は所望の凸状に反り変形し、内型2Bとして用いることができるようになる。
【0035】
このように変形板2を凹状、凸状に反り変形させ外型2A、内型2Bを形成し、これら内外型2A、2Bを床板20にマグネット固定やボルト止めで固定し、座板5、妻板3を設置することで型枠装置1を構成するものである。そして、これら型枠装置1の内外型2A、2B、妻板3、座板5により囲われた空間に生コンクリートを流し込んで、インナーバイブで締め固めてアーチ状コンクリート製品を製造するものである。
【0036】
尚、23は前記内外型2A、2Bの直立を保持するための直立保持板であり、この直立保持板23は、内外型2A、2Bを座板5に合わせる、胴締めする、下支えするなどと共に前記内外型2A、2Bのねじれ防止に貢献するものである。
【0037】
以上の説明では、内外ストッパー6A、6Bを変形操作機構10のストッパー取付部14に取り付けていたが、隣り合う変形規制部8間に形成された可撓許容部9に
図13に示す如き可撓許容部用の内外ストッパー21A、21Bを取り付けても良い。この可撓許容部用の内外ストッパー21A、21Bも、前述した内外ストッパー6A、6B同様に変形規制部8の移動を規制するものである。
【0038】
また、この可撓許容部用の内外ストッパー21A、21Bには、脱落防止のためボルトが挿通する挿通穴22が形成されており、取り付ける場合には、前記変形規制部8と共にボルトで固定されるものである。
【0039】
次に、
図3に示す、変形板2の一部がくの字形状をした直線状コンクリート製品を製造するための型枠装置1について説明する。この直線状の型枠装置1は、
図4に示す変形板2の一部を凹状、又は凸状に変形させて内外型2A、2Bとして用いるもので、コンクリート製品の端部を形成するためのL字型の端板22を備えているものである。
【0040】
更に、コンクリート製品の正面又は裏面を成型する座板と、前記変形板2を所定形状にするための図示しないゲージと、曲線部分を形成する内外ストッパー6A、6Bとを備えているもので、これら端板22、ゲージ、座板、内外ストッパー6A、6Bは都度必要になる部品である。
【0041】
以上の構成にして、
図3に示すコンクリート製品の如く、変形板2の一部をくの字形状とすることにより、板厚の厚い箇所と薄い箇所を形成した直線状コンクリート製品を製造する場合、先のアーチ状コンクリート製品と異なり、
図4に示す変形板2の一部のみを変形させ、それ以外を直線とした外型2A、内型2Bを用いる。
【0042】
外型2Aの変形については、変形操作機構10を用いて変形板2の曲げたい部分のみ凹状に反り変形させることとなる。即ち、操作部12の調整ボルト16を前記支持部11、11間が離れる方向に回し、十分に引き離したところで前記外ストッパー6Aをストッパー取付部14に取り付ける。その後、操作部12の調整ボルト16を、前記支持部11、11間が外ストッパー6Aで規制させるまで近づく方向に回すことで、前記変形板2が適切な角度となる。以上の操作により、支持部11と共に変形規制部8同士が離れる方向に移動し、変形板2は所定の角度で曲がることとなる。
【0043】
尚、前記内外ストッパー6A、6Bを支持部11間に取り付ける代わりに、隣り合う変形規制部8間に形成された可撓許容部9に
図13に示す如き可撓許容部用の内外ストッパー21A、21Bを取り付けても良い。この可撓許容部用の内外ストッパー21A、21Bも、前述した内外ストッパー6A、6B同様に変形規制部8の移動を規制するものである。
【0044】
そして、先の説明同様、変形板2をゆるい凸状に反り変形させ内型2Bを形成し、これら内外型2A、2Bを床板20にマグネット固定やボルト止めで固定し、座板5、L字型の端板22を設置することで型枠装置1を構成するものである。そして、これら型枠装置1の内外型2A、2B、端板22、座板5により囲われた空間に生コンクリートを流し込んで、インナーバイブで締め固めて直線状コンクリート製品を製造するものである。
【0045】
このように、本発明では前述した変形操作機構10を操作することで変形板2を所望の形状に変形させることができるため、直線状、くの字状やアーチ状のみならず、S字状などの曲線状コンクリート製品も製造することが可能である。
【0046】
更に、本発明の型枠装置1は分解してコンクリート製品の施工現場に持っていき、現場でコンクリート製品を製造しても良い。この場合、型枠装置1の変形板2は隣り合う変形箇所間の中央、即ち、隣り合う前記変形操作機構10の間などで切断しておき、現場にてボルト等の接続具で接続する。
【0047】
以上詳述した如く本発明によれば、型枠装置1は、コンクリート製品と接する成型面7を有すると共に、凹状又は凸状の反り変形を可能とする変形板2と、この変形板2の成型面7の反対側の面に設けられ、変形板2を凹状又は凸状に反らせる複数の変形操作機構10と、この変形操作機構10は、前記変形板2に設けられた一対の支持部11と、この支持部11間の距離を調整する操作部12とよりなるものである。
【0048】
これにより、コンクリート製品を製造する場合、複数の変形操作機構10の操作部12を操作することで、この操作部12を支持している一対の支持部11が近接方向又は引き離す方向に移動し、変形板2が凹状又は凸状の反り変形する。また、前記変形操作機構10は複数設けられているため、変形板2の複数個所で凹状、凸状いずれにも変形板2を曲げることができ、一つの型枠装置1で種々の幅、曲率半径、形状のコンクリート製品を製造することができるものである。
【0049】
また、変形操作機構10の支持部11間に着脱可能なストッパー6A、6Bを取り付けることにより、変形板2の必要以上の変形を制限することができる。
【0050】
更に、前記変形板2の成型面7の反対側の面に、変形板2の凸状の反り変形を規制する複数の変形規制部8と、この変形規制部8間に形成される空間であって、変形規制部8の移動を許容する可撓許容部9とを形成し、前記変形操作機構10の支持部11を変形規制部8に設け、前記可撓許容部9間に着脱可能なストッパー21A、21Bを取り付ける。そして、このストッパー21A、21Bを取り付けることにより、変形板2の必要以上の変形を制限することができる。
【0051】
そして、アーチ状のコンクリート製品を製造する場合、アーチの外側に位置する型枠の変形板2(外型2A)を、前記変形操作機構10の支持部11間、又は前記変形規制部8間の可撓許容部9にストッパー6A、6B、21A、21Bを取り付けることにより、所定の曲率半径の凹状に反り変形させることができ、更にアーチの内側に位置する変形板2(内型2B)を同様に所定の曲率半径の凸状に反り変形させることで、所望のアーチ状コンクリート製品を得ることができるものである。
【0052】
また、直線状やくの字状のコンクリート製品を製造する場合、前記変形操作機構10の支持部11間、又は前記変形規制部8間の可撓許容部9にストッパー6A、6B、21A、21Bを取り付けることにより、変形板2の必要以上の変形を防止できるため、コンクリート製品の厚みを一定にすることができる。更にストッパー6A、6B、21A、21Bの大きさを変えることで、コンクリート製品の一部を厚くすることも、薄くすることも可能となるものである。
【0053】
このように、一つの型枠装置1でありながら、種々の寸法、形状のコンクリート製品に対応することができるものであるため、コンクリート製品毎に様々な種類の型枠を用意する必要が無くなり、要望にあったアーチ、S字などの曲線状、直線状、くの字状など種々のコンクリート製品を低コストで提供できるものである。