(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来から外周面に図柄が配列された複数の回転リールを備えた遊技機(回胴式遊技機、スロットマシン)が知られている。この種の遊技機は、メダルやパチンコ玉などの遊技媒体に対して一定の遊技価値を付与し、このような遊技媒体を獲得するための遊技を行うものである。また、この種の遊技機は、遊技者の回転開始操作を契機として、内部抽選を行うとともに複数の回転リールの回転を開始させ、遊技者の停止操作を契機として、内部抽選の結果に応じた態様で複数の回転リールを停止させる制御を行っている。そして、遊技の結果は、複数の回転リールが停止した状態における入賞判定ライン(有効ライン)上に表示された図柄組合せによって判定され、遊技の結果に応じてメダル等の払い出しなどが行われる。すなわち、有効ライン上に内部抽選で当選した役に対応する図柄組合せで図柄が停止すると役が入賞したことになり、メダルの払い出しなどが行われる。
【0003】
このようなスロットマシンでは、遊技者側となる前面側に設けられた前扉上部(上扉)の回転リールの表示窓を除く部分に、装飾のためにカラフルな透明樹脂が様々に造形され、背面からLEDで照らされるランプが設けられている。また、このようなスロットマシンでは、LEDを支持して点灯させるLED基板が複数設けられている。また、LED基板の他に、液晶ディスプレイ、スピーカ等が配置されている。また、スロットマシンによっては、前面側にモータ等のアクチュエータで駆動される可動役物が設けられている。したがって、スロットマシンの上扉では、多くの電子・電気機器やそれらを支持する部材等の部品が多数配置されており、上扉に空きスペースがほとんどない状態となっている。さらに、電子・電気機器の制御等のための信号線や、電子・電気機器への電力供給のための電力線等の配線が配置されている。また、スロットマシンにおいては、信号線や電力線に加えてアースのためのアース線が設けられる場合がある(例えば、特許文献1、2参照)。前扉の限られた空間に各種電子・電気機器やその他の部品や、各種配線を配設するためには、効率的なスペース配分とするためのレイアウトを考える必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、スロットマシンの上扉では、様々な配線が多数配置されることから、例えば、複数の配線が互いに近接して同じ方向に配置される場合がある。すなわち、複数の配線を効率的に配置する上では、各配線が互いに近接して略平行に配置される場合がある。但し、信号線とアース線とを互いに近接して比較的長い区間に渡って平行に配置するとアース線により信号線にノイズが発生する虞がある。なお、アース線と信号線が交差するような配置であればノイズの影響は少ない。したがって、アース線がある場合に信号線との配置を考慮して配線のレイアウトを考える必要があり、設計に手間がかかるともに、アース線の配置が設計の足かせとなる虞がある。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、アース線と信号線のレイアウトを容易にすることが可能な遊技機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の遊技機は、各種電子部品に接続される信号線と、遊技者により帯電する虞がある導体に対応して設けられたアース線とを備える遊技機であって、
前記アース線のうちの少なくとも1つと前記信号線のうちの少なくとも1つとが互いに近接して略平行に配置され、互いに近接して略平行に配置される前記信号線と前記アース線との間に、遮蔽壁が設けられていることを特徴とする。
【0008】
このような構成によれば、互いに近接して略平行に配置される前記信号線と前記アース線との間の遮蔽壁により、信号線側でノイズが発生するのを防止できる。したがって、遮蔽壁を設けることで、アース線と信号線とを近接して平行に配置できるので、信号線とアース線とのレイアウトを含む設計の自由度が高くなり、設計を容易にして設計のコストの低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の遊技機によれば、アース線と信号線のレイアウトが容易になる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
まず、遊技機の概略構成について説明する。なお、以下では遊技機の一つであるスロットマシンについて説明するが、本発明に係る遊技機は、スロットマシンに限ることなく、その他の遊技機であってもよい。
また、以下の説明においては、基本的に「前後」とは、スロットマシンの前側に遊技者が居る場合に、遊技者側が「前」で、スロットマシン側が「後」を意味し、「上下」とはスロットマシンの上面側が「上」で、下面側が「下」を意味し、「左右」とはスロットマシンを遊技する遊技者の左手側が「左」を意味し、右手側が「右」を意味する。
【0012】
まず、発明が適用されるスロットマシンMの概略構成について説明する。
図1はスロットマシンMを示す斜視図である。このスロットマシンMは、筐体1を備えており、この筐体1は、底板、左右の側板、天板および背板を備え、当該筐体1の正面側に開口する正面開口部を有する箱形に形成されている。なお、底板の上面には、図示は省略するが、各部品に電力を供給するための電源装置を内蔵した電源ユニット、メダルを貯留するとともにメダルを払い出す払い出し装置としてのホッパーユニット等が設けられている。
【0013】
また、筐体1の正面には、筐体1の正面開口部を開閉可能に閉塞する前扉3が設けられており、この前扉3は、前記正面開口部の開口上部を開閉可能に閉塞する上扉30と、開口下部を開閉可能に閉塞する下扉40とを備えている。
前記筐体1内には、図示は省略するが、交換ユニットが着脱可能に設けられている。交換ユニットは、種々の部品を設置あるいは固定するための支持体としての枠体と、この枠体に固定されたリールユニットおよび基板ユニットとから構成されている。ここで、リールユニットは、周囲に複数の図柄を表示した3個の回転リールと、回転リールを回転させるための駆動モータ(ステッピングモータ)を有している。また、基板ユニットは、CPU、ROM、RAM、I/O等の電子部品を備えた基板を、基板ケースに収納したものである。そして、基板ユニットは、スロットマシンMの遊技を制御するための遊技制御装置として機能する。
【0014】
図1に示すように、上扉30の下部中央には、表示窓31が設けられ、この表示窓31の奥には、前記3個の回転リールが横一列に設けられている。各回転リールの外周面には複数種類の図柄が配列されており、回転リールが停止すると表示窓を通して1リール当たり3個の図柄が表示される。スロットマシンMでは、横3本と斜め2本とからなる計5本の入賞有効ラインが設定されている。
そして、3個の回転リールが停止したときに入賞有効ライン上に停止した図柄の組み合わせによって当選役が入賞したか否かが表示される。
また、上扉30の上部中央には、表示窓31の上方に表示窓32が設けられている。この表示窓32は上扉30に設けられた液晶表示パネルを有する画像表示装置(ディスプレイ)の表示面を見るために設けられたものであり、この画像表示装置では、その表示面に遊技機における演出用の画像が表示されるようになっている。なお、画像表示装置は、演出用の画像を表示できるものであれば、液晶ディスプレイ以外のディスプレイであってもよい。
また、上扉30の表示窓32の上部および左右両側部には、報知や演出などを行うためのランプ33a,33bが設けられている。
【0015】
また、上扉30は、筐体1内に設けられた前記交換ユニットにヒンジを介して回動可能に連結されることで、筐体1の開口上部を開閉するようになっている。また、下扉40は筐体1にヒンジを介して回動可能に連結されることで、筐体1の開口下部を開閉するようになっている。
【0016】
なお、このスロットマシンMは、分離型筐体タイプの構造を有するものであり、遊技店における機種の交換時に、上扉30が回動自在に取り付けられた交換ユニットを交換するようになっており、機種の交換時に筐体1、下扉40および筐体1内の電源ユニットやホッパーユニット等は、遊技店の島設備に取り付けられたままで、交換されないようになっている。また、スロットマシンMは、分離型筐体タイプに限られるものではなく、機種交換時にスロットマシン全体を交換するものであってもよい。この場合に、前扉3を上扉30と下扉40とに分けない一体の構造としてもよい。また、上扉30と下扉40とに分ける場合に、上扉30を、筐体1の側板にヒンジを介して回動自在に取り付けてもよい。
また、上扉30の下端部には、下扉40の前面より後方側で下扉40の上端より下側に突出する係合部が設けられ、下扉40が閉じた状態で、上扉30を開放することができない構造になっている。
【0017】
また、下扉40の上部には、スロットマシンMを操作するための操作部50が設けられている。操作部50には、クレジットされたメダルを払い出すための精算スイッチ52、ゲームを開始させるためのスタートレバー53、回転リールの回転を停止させるためのストップスイッチ54、メダルを投入するためのメダル投入口42、メダル投入口42の下方のメダル通路内で発生したメダル詰まりを解消するリジェクトボタン55、最大数の3枚のメダルをゲームに投資するときに操作されるMAXベットスイッチボタン56等が設けられる他、遊技の演出等を選択するための操作盤57や、表示ユニット58が設けられている。操作盤57は操作部50の幅方向(左右方向)の略中央部に配置され、メダル投入口42およびリジェクトボタン55を挟んで、右側に表示ユニット58が配置されている。なお、操作盤57には、演出等の選択用の十字キー、決定ボタン、キャンセルボタン等を有している。
【0018】
また、下扉40の下部には、スロットマシンM内部よりメダルを排出するためのメダル払い出し口と、メダル払い出し口から排出されたメダルを溜めておくためのメダル受け皿43とが形成されている。また、操作部50とメダル受け皿43との間には液晶表示パネル45が取り付けられている。また、この液晶表示パネル45の左右両側にはそれぞれ報知や演出などを行うためのランプ33dが設けられている。
【0019】
図2は、スロットマシンMの上扉30の前部を構成する装飾ユニットの角部を示す図であり、
図3は、
図2に示す部分の内部を背面側から見た図である。装飾ユニットは、上述の上部のランプ33aと、左右の側部のランプ33bが表示窓32を囲むように門形状に配置されたものである。上部のランプ33aは、その正面部分に配置された上部レンズユニットと、上部レンズユニットの背面に配置された上部LED基板91と、上部レンズユニットの背面の左右側部に配置されてスピーカを有するスピーカ基板62と、このスピーカ基板62の正面部分に配置されたスピーカカバー61とを有し、このような上部のランプ33aが上部意匠ユニットを構成している。
なお、
図2および
図3は、門形状の意匠ユニットの左右の角部のうちの一方の角部だけを図示している。
【0020】
スピーカカバー61は、スロットマシンMの遊技者側に露出するパンチングメタルからなる。したがって、スピーカカバー61は、帯電する可能性のある導体であり、例えば、遊技者の手が近接したり、接触したりした場合に帯電する。ここで、スピーカカバー61とスピーカを有するスピーカ基板62は近接しており、スピーカカバー61が帯電した場合に、スピーカ基板62も帯電する可能性が高い。基本的に帯電する導体に対して電子基板等を約20mm以上離して配置することで、静電気(例えば、2万ボルトまでの静電気)の影響を回避する設計としているが、スペース状の問題やスピーカの音響と配置の関係で、スピーカカバー61とスピーカ基板62が20mm以上離れておらず、スピーカカバー61とスピーカ基板62が20mmより短い距離まで近接している。
【0021】
そこで、
図3に示すように、スピーカカバー61に近接するスピーカ基板62が、帯電したスピーカカバー61により帯電した場合に、速やかに静電気を逃がすためのアース線82がスピーカ基板62に接続されている。アース線82は、一端がスピーカ基板62にビス止めされた状態で上扉30の意匠ユニットの側部のランプ33bの背面側を上から下に向かいスロットマシンMの外部に繋がるアース用の導体に接続されている。また、上扉30の意匠ユニットの側部のランプ33bの背面側には、上部のランプ33aの光源となる上部LED基板91と、側部のランプ33bの光源となる側部LED基板92とを繋ぐように配線される信号線81が設けられている。なお、
図3においては、信号線81の上部LED基板91および側部LED基板92とのコネクタの図示を省略している。また、上部のランプ33aには、その中央分部に、ロゴマークが設けられているが、このロゴマークおよびその近傍の表面には、蒸着やメッキ9により導体71が設けられている。このメッキや蒸着等により形成された導体71においては、人が触ろうとすることなどにより、帯電する。このロゴマークの導体71は、スピーカ基板62に対して20mmより短い距離しか離れていない分部があり、上述のようにスピーカ基板62にアース線82を接続する必要がある。すなわち、スピーカ基板62は、導体であるスピーカカバー61およびロゴマークの導体71に近接しており、いずれか一方だけが近接する構造であってもスピーカ基板62をアースする必要がある。
【0022】
信号線81は、上部のランプ33a背面部分に設けられた上部LED基板91から上扉の左右のうちの一方の角部に向かって略水平に配置された後に、一方の側部のランプ33bの背面を下に向かって略垂直に配置されて、側部のランプ33bの背面部分に設けられた側部LED基板92に至るように配置される。
【0023】
信号線81は、上部LED基板91と側部LED基板92との間で、上部のランプ33aの背面部分に設けられたフック83およびフック84と、側部のランプ33bの背面部分に設けられたフック88とに係止されて保持された状態となっている。また、アース線82は、側部のランプ33bの背面部分に設けられたフック85およびフック88に係止されて保持された状態となっている。
以上のように配置されるアース線82と、信号線81とは、側部のランプ33bの背面側で互いに近接するとともに略平行に配置されている。すなわち、アース線82が信号線81にノイズを発生させる可能性がある配置となっている。側部のランプ33bの背面側には、信号線81に対するアース線82の影響を抑制するために、信号線81とアース線82を隔離する隔壁部材89が設けられている。隔壁部材89は、上下に長い矩形状のベース板87の上下方向に沿う一方の側縁部で、ベース板87に立設された隔壁(遮蔽壁)86を備える。隔壁86は、上述のように側部のランプ33bの背面分部で、上下に延在するともに、互いに近接して平行な信号線81と、アース線82との間に配置されている。隔壁部材89は、アース線82と、信号線81とは、導電性のシールドとなる隔壁86により隔てられており、アース線82の影響で信号線81にノイズが発生するのを抑制するようになっている。また、隔壁部材89は、アース線82を保持するフック85を備えている。なお、隔壁86を有する隔壁部材89は、例えば、樹脂製であるが、高いシールド性を有する導電性の板金、すなわち、導体である金属製の部品であっても良いし、導電性樹脂であってもよい。
【0024】
したがって、アース線82と、信号線81とが隔壁86により隔てられることにより、互いにシールドされた状態となるので、アース線82と、信号線81とを互いに近接して平行に配置するものとしてもノイズの発生を抑制することができるので、あえて信号線81とアース線82を互いに近接して平行な状態に配置することが可能となり、配線のレイアウトの自由度が高くなる。
また、アース線82を保持するフックのうちのフック85は、隔壁部材89に設けられており、アース線82を隔壁86で仕切られる一方の空間に保持し、アース線82が隔壁86に対して信号線81と同じ側の空間に配置されてしまうのを抑制している。なお、隔壁部材89に、信号線81を隔壁86に仕切られた二つの空間のうちのアース線82が配置されてない空間側で、保持するフックを設けてもよい。
【0025】
このような遊技機にあっては、信号線とアース線とを互いに近接して平行とするような配線レイアウトを行っても、隔壁86をアース線82と信号線81との間に配置することで、信号線81におけるノイズの発生を防止できる。したがって、信号線81とアース線82との配線レイアウトにおいて、これらを近接して平行に配置するレイアウトも許容されるので、レイアウトの自由度が高くなり、設計が容易となる。なお、隔壁86は、アース線82と信号線81とが略平行に配置された状態で、アース線82が配置される空間と、信号線81が配置される空間とを仕切れる形状となっていればよく、例えば、リブ状や壁状となっていればよい。
【0026】
また、上述の信号線81およびアース線82は、スロットマシンMの左右で同じ配置となっており、隔壁86を有する隔壁部材89は、スロットマシンMの左右に配置されている。
図3に示す隔壁部材89は、正面から見て右側に配置されている。
図4、
図5に、左側の隔壁部材89を示す。左側の隔壁部材89は、可動役物を作動させるモータ100の近傍で前側(遊技者側)に配置されている。また、隔壁部材89の前側には、側部のランプ33bの金属が蒸着された装飾部材110が配置されている。モータ100には、モータ100を駆動制御する駆動制御装置からのハーネスが接続されるコネクタ101が設けられている。また、モータ100は、減速機が内蔵された減速機付きモータであり、出力軸102が、モータ100の図示しない回転軸に対して偏心している。したがって、スロットマシンMの左右に同じ向きで一対のモータ100を配置すると、本実施の形態では、出力軸102に対して本体が右よりに配置される。これにより、本実施例では、右のモータ100より左のモータ100のコネクタ101が、金属が蒸着された装飾部材110の近くに配置される。この場合に、遊技者から装飾部材110に静電気が流れた際に、静電気が装飾部材110からモータ100のコネクタ101のハーネスに飛んで、ハーネスが接続されたモータ100の駆動制御装置に不具合を起こす虞がある。そこで、左側の隔壁部材89には、モータ100のコネクタ101のハーネス側と金属が蒸着された装飾部材110との間に突出部115が配置されるように設けられおり、この突出部115がコネクタ101に接続されたハーネスと装飾部材110との間をシールドするとともに、ハーネスが装飾部材110に近づくのを防止している。なお、右側の隔壁部材89においては、左側よりモータ100のコネクタ101と装飾部材110の距離が長いので、突出部115を必ずしも必要としないが、右の隔壁部材89には、左より小さな突出部93(
図3に図示)が設けられている。