(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6912087
(24)【登録日】2021年7月12日
(45)【発行日】2021年7月28日
(54)【発明の名称】トイレ用手摺装置
(51)【国際特許分類】
A47K 17/02 20060101AFI20210715BHJP
【FI】
A47K17/02 A
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-178428(P2017-178428)
(22)【出願日】2017年9月16日
(65)【公開番号】特開2019-51176(P2019-51176A)
(43)【公開日】2019年4月4日
【審査請求日】2020年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】599117255
【氏名又は名称】株式会社 シコク
(74)【代理人】
【識別番号】100144509
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 洋三
(72)【発明者】
【氏名】古瀬 幸司
【審査官】
広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−151908(JP,A)
【文献】
特開2002−282175(JP,A)
【文献】
特開2014−233428(JP,A)
【文献】
米国特許第6324705(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 13/00−17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋式便器をその左右両側から挟むように対向設置されるとともにその対向間隔が変更可能とされた左右一対のサイド支柱部をその対向方向に連結して一体化するとともに、該各サイド支柱部の上端にはそれぞれ前後方向に延出する側部肘掛を設けてなるトイレ用手摺装置であって、
上記左右一対のサイド支柱部の後方側には、上記洋式便器の使用者の背部を支持する背もたれが、上記各サイド支柱部の後端部間に跨って且つ該各サイド支柱部の対向方向へ移動可能に固定された支持材を介して取り付けられていることを特徴とするトイレ用手摺装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記左右一対のサイド支柱部は、その高さが調整可能に構成されていることを特徴とするトイレ用手摺装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記支持材は、上記各サイド支柱部からその後方側への延出量が調整可能とされていることを特徴とするトイレ用手摺装置。
【請求項4】
請求項1、2又は3において、
上記背もたれは、上記支持材を傾動中心として前後方向に傾動可能とされていることを特徴とするトイレ用手摺装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、洋式トイレの近傍に設置されるトイレ用手摺装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トイレ用手摺装置においては、用便時にトイレ使用者の背部をサポートして着座姿勢の保持に伴う負担を軽減するという思想があり、これに応えるものとして例えば、特許文献1〜3に開示されるものが知られている。
【0003】
特許文献1に示されるものは、便器後部寄りの左右両側に立設された支柱のそれぞれに「背もたれ半体」を回動可能に取付け、これら左右一対の「背もたれ半体」を対向方向の内側へ回動させて張出すことで一つの「背もたれ」を構成するようにしたものである。
【0004】
特許文献2に示されるものは、手摺装置の後端部において左右のフレームからそれぞれ立ち上がる左右一対の支柱の上端同士を横材で連結し、この横材に背もたれを取り付けたものである。
【0005】
特許文献3に示されるものは、便器の後部左右にそれぞれ立設される支柱の上端同士を横設される架設部材で連結するとともに、この架設部材に背もたれを着脱可能に取付けたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−73582号公報
【特許文献1】特開2010−201019号公報
【特許文献1】特開2014−87462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、トイレ使用者は便座に座った状態でその背部を背もたれに預けることでその姿勢を保持するが、この際の快適性とか安楽性は、同一構成の背もたれであっても全てのトイレ使用者に一律に得られるものではなく、例えば、トイレ使用者の体格とか体形状、あるいは好み等によって異なるものである。
【0008】
ところが、特許文献1に示されるものでは、上記「背もたれ半体」は、それぞれ高さ位置の調整は可能であるものの、便器の幅寸法に対応して左右の支柱間隔が拡大してもこれに追従して上記左右の背もたれ半体の間隔を調整する機構が備えられていないため、場合によっては「背もたれ半体」の間隔が広すぎて十分なサポート効果が得られないという事態も考えられる。
【0009】
特許文献2に示されるものでは、左右一対の支柱の高さを調整することで、横材に取り付けられた背もたれの高さを調整できるものの、それ以外の調整機構は設けられていない。
【0010】
特許文献3に示されるものでは、左右の支柱に高さを調整することで、これに架設部材を介して取り付けられた上記背もたれの高さを調整するようになっているが、それ以外の調整機構は設けられていない。
【0011】
したがって、これら各特許文献1〜3を組み合わせても、単に背もたれの高さ調整についての機構が得られるのみで、例えば、トイレ使用者の体格等に対応し得る背もたれの調整機構は得られず、トイレ使用者の要求を満たすものとはなり得ない。
【0012】
そこで本願発明は、トイレ使用者の背もたれに対する多様な要求に対処すべく、多様な背もたれ調整機構を備えたトイレ用手摺装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明ではかかる課題を解決するための具体的手段として次のような構成を採用している。
【0014】
本願の第1の発明では、洋式便器をその左右両側から挟むように対向設置されるとともにその対向間隔が変更可能とされた左右一対のサイド支柱部をその対向方向に連結して一体化するとともに、該各サイド支柱部の上端にはそれぞれ前後方向に延出する側部肘掛を設けてなるトイレ用手摺装置において、上記左右一対のサイド支柱部の後方側に、上記洋式便器の使用者の背部を支持する背もたれを、上記各サイド支柱部の後端部間に跨って且つ該各サイド支柱部の対向方向へ移動可能に固定された支持材を介して取り付けたことを特徴としている。
【0015】
本願の第2の発明では、上記第1の発明に係るトイレ用手摺装置において、上記左右一対のサイド支柱部の高さを調整可能に構成したことを特徴としている。
【0016】
本願の第3の発明では、上記第1又は第2の発明に係るトイレ用手摺装置において、上記支持材の上記各サイド支柱部からその後方側への延出量が調整可能とされていることを特徴としている。
【0017】
本願の第4の発明では、上記第1、第2又は第3の発明に係るトイレ用手摺装置において、上記背もたれを、上記支持材を傾動中心として前後方向に傾動可能に構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本願発明では次のような効果が得られる。
【0019】
(a)本願の第1の発明によれば、洋式便器をその左右両側から挟むように対向設置されるとともにその対向間隔が変更可能とされた左右一対のサイド支柱部をその対向方向に連結して一体化するとともに、該各サイド支柱部の上端にはそれぞれ前後方向に延出する側部肘掛を設けてなるトイレ用手摺装置において、上記左右一対のサイド支柱部の後方側に、上記洋式便器の使用者の背部を支持する背もたれを、上記各サイド支柱部の後端部間に跨って且つ該各サイド支柱部の対向方向へ移動可能に固定された支持材を介して取り付けているので、例えば、上記洋式便器の取り替え等によって該洋式便器の幅寸法が変更され、これに伴って上記左右一対のサイド支柱部の対向間隔が変更される場合、この対向間隔の変更に対応して上記支持材を各サイド支柱部の対向方向へ適宜移動させることで、該支持材に取り付けられた上記背もたれを上記洋式便器の幅方向の略中央に位置させることができ、その結果、洋式便器に着座したトイレ使用者に対する背部サポート作用が常時適正に維持され、延いては、トイレ使用者に対する高度の支援性が担保される。
【0020】
(b)本願の第2の発明に係るトイレ用手摺装置によれば、上記(a)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記左右一対のサイド支柱部の高さを調整可能に構成したので、例えば、トイレ使用者の体格等に応じてサイド支柱部の高さ調整を行った場合、このサイド支柱部の高さを調整と一体的に上記背もたれの高さ調整も行われ、トイレ使用者は上記背もたれによってその背部が常に適正な高さ位置でサポートされることになり、トイレ使用者に対する高度の支援性が担保される。
【0021】
(c)本願の第3の発明に係るトイレ用手摺装置によれば、上記(a)又は(b)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記支持材の上記各サイド支柱部からその後方側への延出量が調整可能とされているので、例えば、この支持材の上記各サイド支柱部からその後方側への延出量をトイレ使用者の体格とか体形状に応じて調整する(即ち、体格が大きいほど上記支持材の上記各サイド支柱部からその後方側への延出量を大きく設定する)ことで、トイレ使用者の体格とか体形状に左右されることなく、上記支持材に取り付けられた上記背もたれによって洋式便器に着座したトイレ使用者の背部を常時的確にサポートすることができ、トイレ使用者に対する高度の支援性が担保される。
【0022】
(d)本願の第4の発明に係るトイレ用手摺装置によれば、上記(a)、(b)又は(c)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記背もたれを、上記支持材を傾動中心として前後方向に傾動可能に構成したので、トイレ使用者の常態としての用便時の姿勢、特に、背部の形状とか傾斜状態において、トイレ使用者の背部に上記背もたれを的確に沿わせて安定的にサポートすることができ、例えば、背部への背もたれの片当りによる疼痛感、違和感を生じることもなく、トイレ使用者に対する高度の支援性が担保される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本願発明の実施形態に係るトイレ用手摺装置の全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本願発明の実施形態に係るトイレ用手摺装置Zの構成等を説明する。
【0025】
図1〜
図4には、本願発明の実施形態に係るトイレ用手摺装置Zを示している。このトイレ用手摺装置Zは、洋式便器10をその左右両側から挟むように配置される次述の左右一対のサイド支柱部1、1を、その前部側において連結材2によって連結してこれを一体化して構成される。
【0026】
上記サイド支柱部1は、上記洋式便器3の前後方向に向けて配置されるベース材11と、該ベース材11の前端部から立ち上がると共にその上端には前側受材14を備えた伸縮式の前側支柱12と、該ベース材11の中間位置から立ち上がると共にその上端には後側受材15を備えた伸縮式の後側支柱13と、上記前側受材14と上記後側受材15に跨ってその上面側に固定された側部肘掛16と、上記前側受材14の前端部に回動支持材18を介して跳ね上げ可能に取り付けられた前側肘掛17を備える。
【0027】
したがって、上記サイド支柱部1は、上記前側支柱12と後側支柱13の伸縮によってその高さ調整が行われ、このサイド支柱部1の高さ調整に伴って、上記側部肘掛16と前側肘掛17の高さ調整、及び後述する背もたれ4もその高さが調整される。
【0028】
そして、この左右一対のサイド支柱部1,1の上記前側支柱12,12同士を上記連結材2によって連結することで上記トイレ用手摺装置Zが構成される。なお、この連結材2は、伸縮可能に構成され、上記洋式便器10の幅寸法に対応してこれら一対のサイド支柱部1、1の対向間隔が調整可能とされる。また、上記トイレ用手摺装置Zは、上記連結材2を上記洋式便器10の前部に当接させてこれを支持するとともに、左右一対の後側支柱13、13間に張設された固定ベルト3によって上記洋式便器10の後部を抱持することで、該洋式便器10側に固定され、安定した設置状態が確保される。
【0029】
一方、上記一対のサイド支柱部1、1の上記後側受材15の後端部には、略L形に屈曲形成された伸縮支持材19が、その一端側を上記後側受材15の後端側に伸縮可能に内挿した状態で取り付けられている。そして、この伸縮支持材19の上記後側受材15に対する内挿量(伸縮量)は、該伸縮支持材19側に所定間隔で設けた複数の孔と、側後側受材15側に所定間隔で設けた複数の孔を適宜合致させ、ここに固定ピン21を嵌挿することで調整される。
【0030】
さらに、上記左右一対の上記各サイド支柱部1、1に設けた上記各伸縮支持材19の他端には、それぞれクランプ材20が取り付けられている。そして、この左右一対のクランプ材20、20には、直棒状の支持材5が着脱可能に把持されている。また、この支持材5の軸方向の略中央位置には、矩形板状の背もたれ4がブラケット22によって固定されている。
【0031】
したがって、上記クランプ材20,20を緩めることで、上記支持材5はその軸方向へ自由に移動することができる。この支持材5の移動機能によって、例えば、上記洋式便器10の幅寸法の変更に対応して上記一対のサイド支柱部1、1の対向間隔を変更した場合においても、上記背もたれ4を上記洋式便器10の幅方向略中央に位置させることが可能となる。この調整機能によれば、洋式便器10に着座したトイレ使用者に対する背部サポート作用が常時適正に維持され、延いては、トイレ使用者に対する高度の支援性が担保される。
【0032】
また、上記クランプ材20,20を緩めて上記支持材5をそれぞれの軸心回りに回動させることで、該支持材5に固定された上記背もたれ4は、該支持材5を傾動中心として前後方向に傾動可能とされる(
図3に鎖線図示する背もたれ4Aを参照)。この調整機能によれば、トイレ使用者の常態としての用便時の姿勢、特に、背部の形状とか傾斜状態において、トイレ使用者の背部に上記背もたれを的確に沿わせて安定的にサポートすることができることとなり、例えば、背部への背もたれの片当りによる疼痛感、違和感を生じることもなく、トイレ使用者に対する高度の支援性が担保される。
【0033】
さらに、上記背もたれ4は、上記左右一対の伸縮支持材19、19の上記各後側受材15、15に対する伸縮量を調整することで、上記各サイド支柱部1、1の後方側への延出量が増減調整される(
図3及び
図4にそれぞれ鎖線図示する支持材5A及び背もたれ4Bを参照)。この調整機能によれば、例えば、上記支持材5の上記各サイド支柱部1、1からその後方側への延出量をトイレ使用者の体格とか体形状に応じて調整する(即ち、体格が大きいほど上記支持材5の上記各サイド支柱部1、1からその後方側への延出量を大きく設定する)ことで、トイレ使用者の体格とか体形状に左右されることなく、上記支持材5に取り付けられた上記背もたれ4によって洋式便器10に着座したトイレ使用者の背部を常時的確にサポートすることができ、トイレ使用者に対する高度の支援性が担保される。
【0034】
一方、上記背もたれ4の洋式便器10からの設置高さの調整は、上述のように、上記各サイド支柱部1、1の各前側支柱12及び後側支柱13を伸縮させることで、上記側部肘掛16及び前側肘掛17の高さ調整と一体的に行われる。ここで、トイレ使用者が洋式便器10に着座した状態では、通常、上記背もたれ4によるサポートが望ましい部分、即ち、要部から背部にかけての部分の高さと、腕を折り曲げた時の肘の高さは略等しい。このため、この実施形態のように、上記背もたれ4の高さ調整と上記側部肘掛16及び前側肘掛17の高さ調整が一体的に同時に行われるように構成することで、例えば、トイレ使用者の体格に応じて上記側部肘掛16及び前側肘掛17の高さ調整を行った場合には、これと同時に上記背もたれ4の高さ調整も行われ、該トイレ使用者はその背部が常に適正な高さ位置で上記背もたれ4によってサポートされることになり、上記各調整機能の場合と同様に、トイレ使用者に対する高度の支援性が担保される。
【0035】
その他
(1)この実施形態においては、上記背もたれ4の上記支持材5周りの傾動を、該背もたれ4が固定された上記支持材5を、上記クランプ材20、20を緩めて回動させることで実現しているが、本願発明は係る構成に限定されるものではなく、例えば、上記支持材5に対して上記背もたれ4を適宜に相対回動可能に構成し、これによって該背もたれ4の傾動動作を実現することもできる。さらに、この場合、上記背もたれ4と上記支持材5の支承部分に適宜の弾性復元機構を設け、被使用時には背もたれ4を略直立姿勢に保持する一方、使用時にはトイレ使用者の背部からの押付力を受けて該背部に沿うように傾動させるようにすることもできる。
【0036】
(2)この実施形態においては、上記側部肘掛16の他に、上記前側肘掛17も備えているが、本願発明においては上記前側肘掛17の設置は必ずしも必要ではなく、任意に設置できるものである。
【0037】
(3)この実施形態においては、上記背もたれ4の高さ調整は、上記サイド支柱部1の高さ調整によって上記側部肘掛16及び前側肘掛17の高さ調整と同時に行われるように構成しているが、他の実施形態においては、例えば、上記支持材5と上記背もたれ4の取付部に上下方向へのスライド機構を設けるとか、略L形の上記伸縮支持材19を上記後側受材15に対して相対回動可能に構成し、該伸縮支持材19の傾動によって上記クランプ材20にクランプされた上記支持材5の高さが調整できるようにし、これによって上記背もたれ4の高さ調整を、上記サイド支柱部1側の高さ調整とは別個独立に行えるようにすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本願発明に係るトイレ用手摺装置は、主として介護福祉分野において、被介護者の用便時の支援手段として広く利用できるものである。
【符号の説明】
【0039】
1・・サイド支柱部
2・・連結材
3・・固定ベルト
4・・背もたれ
5・・支持材
10・・洋式便器
11・・ベース材
12・・前側支柱
13・・後側支柱
14・・前側受材
15・・後側受材
16・・側部肘掛
17・・前側肘掛
18・・回動支持材
19・・伸縮支持材
20・・クランプ材
21・・固定ピン
22・・ブラケット
Z・・手摺装置