(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
液体が流れる管の途中に設けられかつ両端に直角に曲がった屈曲部を有する流量計測管の上流側位置及び下流側位置に対向配置され、前記流量計測管を介して超音波を交互に伝播させる一対の超音波センサと、
前記流量計測管の上流側及び下流側の前記屈曲部に前記超音波センサを押し当てるための付勢力を付与する付勢部材と、
前記流量計測管、前記一対の超音波センサ及び前記付勢部材を収納する収納ケースと
を備え、前記一対の超音波センサ間で送受信される超音波の伝播時間の差に基づいて、前記液体の流量を計測する超音波流量計であって、
前記収納ケースは、計測管収納部を有する計測管ホルダと、上流側の前記超音波センサを収納し前記計測管ホルダの長さ方向における第1端に対して連結される第1のセンサカバーと、下流側の前記超音波センサを収納し前記計測管ホルダの長さ方向における第2端に対して連結される第2のセンサカバーとを含んで構成され、
前記計測管収納部は、前記流量計測管の周囲を覆うとともに前記流量計測管における流入口側の端部及び流出口側の端部を前記計測管ホルダの周面に露出させ、
前記第1のセンサカバー及び前記第2のセンサカバーのうち前記付勢部材が収納されていない側のセンサカバーが、前記計測管ホルダに対して着脱可能に装着される
ことを特徴とする超音波流量計。
前記第1のセンサカバー及び前記第2のセンサカバーのうち前記計測管ホルダに対して着脱可能に装着されるセンサカバーは、回転させることにより前記計測管ホルダに連結するネジ式キャップであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の超音波流量計。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
[第1実施形態]
以下、本発明を輸液システムに具体化した第1実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0032】
図1に示されるように、本実施形態の輸液システム1は、輸液W1(薬液などの液体)が流れる管である輸液チューブ2を備えている。輸液チューブ2は、可撓性を有する透明なチューブであり、その外径は例えば3mm程度である。また、輸液チューブ2は、基端に輸液バッグ3が接続されるとともに先端に注射器4が装着されている。このため、輸液チューブ2から注射器4を介して患者5の静脈等に輸液W1が投与されるようになる。なお、輸液チューブ2の形成材料としては、BDR樹脂(ポリブタジエン樹脂)、PU樹脂(ポリウレタン樹脂)、PO樹脂(ポリオレフィン樹脂)、PTFE樹脂(ポリテトラフルオロエチレン樹脂)、シリコーンゴムなどを用いることができる。
【0033】
さらに、輸液チューブ2の途中にはクレンメ6(調節つまみ)が設置されている。クレンメ6は、輸液チューブ2の軸線方向にスライド可能に設けられたローラ(図示略)を有している。クレンメ6は、ローラを操作することにより、輸液チューブ2内の流路を閉塞状態及び開放状態に切り替えるようになっている。また、クレンメ6は、開放状態におけるローラの操作量に応じて、輸液W1の流速や流量を調整可能に構成されている。さらに、輸液チューブ2における輸液バッグ3とクレンメ6との間の位置には、輸液バッグ3内の輸液W1を輸液チューブ2の先端に向けて送出するポンプ装置7(送液手段)が設置されている。
【0034】
そして、輸液チューブ2の途中、具体的に言うと、輸液チューブ2における輸液バッグ3とポンプ装置7との間の位置には、流量計測管11が設けられている。本実施形態の流量計測管11は、例えばポリカーボネート樹脂などの透明な樹脂材料を用いて形成されている。
図2〜
図4に示されるように、流量計測管11における流入口12(
図3参照)側の端部には、輸液チューブ2の上流側部分(輸液バッグ3側の部分)が接続され、流量計測管11における流出口13(
図2,
図3参照)側の端部には、輸液チューブ2の下流側部分(ポンプ装置7側の部分)が接続されている。本実施形態の流量計測管11では、流入口12から流出口13に向けて輸液W1が流れるようになっている。
【0035】
また、流量計測管11は、ストレート状に延設された直管部14を有するとともに、直管部14の両端にそれぞれ屈曲部15,16を有している。上流側の屈曲部15は、直管部14の上流側端部に接続され、かつ直管部14に対して直角に曲がった形状をなしており、先端に流入口12を有している。下流側の屈曲部16は、直管部14の下流側端部に接続され、かつ直管部14に対して直角に曲がった形状をなしており、先端に流出口13を有している。そして、本実施形態の流量計測管11は、上流側の屈曲部15及び下流側の屈曲部16が直管部14を介して互いに反対方向に曲がった形状(クランク状)をなしている。
【0036】
図1に示されるように、輸液チューブ2における輸液バッグ3とポンプ装置7との間の位置には、流量計測管11が収納された超音波流量計20が設置されている。超音波流量計20は、例えば医療現場において、輸液チューブ2を流れる輸液W1の流量を超音波伝播時間差方式で測定するためのものである。
【0037】
図3,
図4に示されるように、超音波流量計20は、一対の超音波センサ21,22を備えている。両超音波センサ21,22は、流量計測管11の直管部14を介して対向配置されている。具体的に言うと、第1の超音波センサ21は直管部14の上流側位置に設けられ、第2の超音波センサ22は直管部14の下流側位置に設けられている。なお、両超音波センサ21,22は、ともに同じ構造を有するセンサである。具体的に言うと、超音波センサ21,22は、直径が10mmの小型のセンサであり、凸曲面状の超音波放射面23を先端部に有している。また、超音波センサ21,22は、基端部にフランジ部24を有するキャップ状のセンサケース25と、センサケース25に内蔵され、超音波の送受信が可能な超音波振動子(図示略)とを備えている。超音波振動子は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの圧電セラミックスを用いて円板状、角板状などに形成された圧電素子である。
【0038】
なお、センサケース25は、先端部の内面に超音波振動子の振動面が接着されているため、先端部の外面が超音波放射面23となる。また、センサケース25の先端部の外側面は、ゴムシート26に覆われている。よって、第1の超音波センサ21は、ゴムシート26を介して超音波放射面23を流量計測管11の屈曲部15の基端部分に押し当てた状態で、超音波放射面23から超音波を放射するようになる。同様に、第2の超音波センサ22は、ゴムシート26を介して超音波放射面23を流量計測管11の屈曲部16の基端部分に押し当てた状態で、超音波放射面23から超音波を放射するようになる。また、第1の超音波センサ21の超音波振動子には2本の内部配線27aが接続され、第2の超音波センサ22の超音波振動子には2本の内部配線(図示略)が接続されている。なお、第1の超音波センサ21の超音波振動子に接続された内部配線27aは、センサケース25の基端部の外面の中央部から引き出されている。また、第2の超音波センサ22の超音波振動子に接続された内部配線は、センサケース25の基端部の外面の中央部から引き出され、配線チューブ28によって結束されている。
【0039】
図3,
図4に示されるように、超音波流量計20はバネユニット31(付勢部材)を備えている。バネユニット31は、上流側の屈曲部15に第1の超音波センサ21の超音波放射面23を押し当てるとともに下流側の屈曲部16に第2の超音波センサ22の超音波放射面23を押し当てるための付勢力を付与するようになっている。また、バネユニット31は、圧縮バネ32、キャップ33及び加圧調整ネジ34等を備えている。キャップ33は、略円筒状をなし、内面側(
図3では上面側)に凸部35を有している。また、キャップ33には、圧縮バネ32の基端部を収納するバネ収納孔36が貫通形成されている。バネ収納孔36は、キャップ33の中心部において軸方向に沿って延びている。さらに、バネ収納孔36には加圧調整ネジ34が螺着されている。加圧調整ネジ34は、円環状のスペーサ37(銅板)を介して圧縮バネ32を基端部側から押さえ付ける機能を有している。なお、加圧調整ネジ34の螺着量を変更することにより、圧縮バネ32を押圧する押圧量が調整されるようになる。また、加圧調整ネジ34の中央部には、同加圧調整ネジ34の軸方向に沿って延びる貫通孔34aが設けられている。一方、圧縮バネ32の先端部は、円環状のスペーサ38(銅板)を介して第2のセンサ固定部材69に当接しており、圧縮バネ32の付勢力が第2のセンサ固定部材69を介して第2の超音波センサ22に作用するようになっている。
【0040】
図2〜
図4に示されるように、超音波流量計20は、流量計測管11、超音波センサ21,22及びバネユニット31を収納する収納ケース41を備えている。収納ケース41は、略円筒状をなし、計測管ホルダ42、第1のセンサカバー51及び第2のセンサカバー61を含んで構成されている。
【0041】
計測管ホルダ42は、例えばポリカーボネート樹脂などの透明な樹脂材料を用いて略円筒状に形成されている。計測管ホルダ42は、流量計測管11の周囲を覆うとともに流量計測管11における流入口12側の端部及び流出口13側の端部を外周面42cに露出させる計測管収納部43を有している。計測管収納部43は、流量計測管11の直管部14を収納する直管部収納部44と、流量計測管11の上流側の屈曲部15を収納する溝部45と、流量計測管11の下流側の屈曲部16を収納する溝部46とを有している。直管部収納部44は、小径部47と、小径部47の上流側端部及び下流側端部にそれぞれ位置する大径部48,49とからなっている。小径部47内には直管部14が配置されている。また、上流側の大径部48には、直管部14の上流側端部と屈曲部15の基端部とが配置され、下流側の大径部49には、屈曲部16の基端部が配置されている。
【0042】
図2〜
図4に示されるように、各溝部45,46は、直管部収納部44を介して互いに反対側に配置されている。各溝部45,46は、計測管ホルダ42の第1端42aにて開口するU字状をなしている。また、溝部45は、直管部収納部44の大径部48に連通し、かつ、計測管ホルダ42の外周面42cにて開口するようになっている。一方、溝部46は、直管部収納部44全体に連通し、かつ、計測管ホルダ42の外周面42cにて開口するようになっている。よって、溝部46の深さ(計測管ホルダ42の軸方向における長さ)は、溝部45の深さよりも大きくなっている。また、各溝部45,46の幅は、互いに等しく、かつ直管部収納部44の内径よりも小さくなっている。
【0043】
図3,
図4に示されるように、計測管ホルダ42の外周部には、同計測管ホルダ42の第1端42a側と第2端42b側とを連通する連通孔71が一対設けられている。両連通孔71は、直管部収納部44を介して互いに反対側に配置されている。そして、各連通孔71の第1端42a側の開口部には、それぞれホルダ側接触子72が取り付けられている。ホルダ側接触子72は、連通孔71に挿入された内部配線27bの一端に接続されている。
【0044】
また、ホルダ側接触子72は、本体部72aと、本体部72aに対して出没可能なピン72bとを備えている。ピン72bは、第1のセンサカバー51が計測管ホルダ42に連結された際にカバー側接触子82に接触することにより、本体部72a内に没入する方向(
図3において下方)に移動するようになっている。また、ピン72bは、第1のセンサカバー51が計測管ホルダ42から離間した際にカバー側接触子82から離間することにより、本体部72a内のコイルバネ(図示略)に付勢されて本体部72aから突出する方向(
図3において上方)に移動するようになっている。
【0045】
図2〜
図4に示されるように、第1のセンサカバー51は、第1の超音波センサ21を収納し、計測管ホルダ42の第1端42aに対して連結されている。第1のセンサカバー51は、例えばPOM樹脂(ポリアセタール樹脂)などの樹脂材料を用いて形成され、回転することにより計測管ホルダ42に連結されるネジ式キャップである。
【0046】
また、第1のセンサカバー51には、略円筒状をなす第1のセンサホルダ52が取り付けられている。第1のセンサホルダ52には、前端面53と後端面54とを連通する収納孔55が設けられ、収納孔55には第1の超音波センサ21が収納されている。
図3に示されるように、収納孔55は、小径部56と、小径部56よりも後端面54側に位置する大径部57とからなっている。小径部56と大径部57との接続部分には、第1の超音波センサ21のフランジ部24を係止させるための段差面58が形成されている。そして、収納孔55の大径部57には、円環状をなす第1のセンサ固定部材59が螺着されている。第1センサ固定部材59は、第1の超音波センサ21を基端部側から押さえ付けるとともに、第1の超音波センサ21の先端部(超音波放射面23)を第1のセンサホルダ52の前端面53から突出させた状態で固定するようになっている。また、第1のセンサ固定部材59の貫通孔59aには、第1の超音波センサ21の超音波振動子に接続された2本の内部配線27aが挿通するようになっている。
【0047】
なお、第1のセンサホルダ52に第1の超音波センサ21を固定した状態で、第1のセンサホルダ52に設けられたネジ孔52aにネジ52bを挿通し、挿通したネジ52bの先端部を第1のセンサカバー51に螺着させる(
図4参照)。その結果、第1のセンサホルダ52が第1のセンサカバー51に取り付けられるようになる。
【0048】
図3,
図4に示されるように、第1のセンサホルダ52の外周部には、同第1のセンサホルダ52の軸方向に沿って延びる貫通孔81が一対設けられている。両貫通孔81は、収納孔55を介して互いに反対側に配置されている。そして、各貫通孔81には、それぞれカバー側接触子82が取り付けられている。カバー側接触子82は、第1の超音波センサ21から延びる内部配線27aの一端に接続されている。カバー側接触子82は、第1のセンサカバー51が計測管ホルダ42に連結された際にホルダ側接触子72のピン72bに接触するように、ホルダ側接触子72に対して対向配置されている。
【0049】
図2〜
図4に示されるように、第2のセンサカバー61は、第2の超音波センサ22及びバネユニット31を収納するためのものである。第2のセンサカバー61は、例えばPOM樹脂などの樹脂材料を用いて形成されている。また、第2のセンサカバー61の第1端61aは、計測管ホルダ42の第2端42bに対して連結されている。具体的に言うと、第2のセンサカバー61に設けられたネジ孔(図示略)にネジ61cを挿通し、挿通したネジ61cの先端部を計測管ホルダ42に螺着させる(
図4参照)。その結果、第2のセンサカバー61が計測管ホルダ42に取り付けられるようになる。
【0050】
また、第2のセンサカバー61には、略円筒状をなす第2のセンサホルダ62が収納されている。第2のセンサホルダ62には、前端面63と後端面64とを連通する収納孔65が設けられ、収納孔65には第2の超音波センサ22が収納されている。
図3に示されるように、収納孔65は、小径部66と、小径部66よりも後端面64側に位置する大径部67とからなっている。小径部66と大径部67との接続部分には、第2の超音波センサ22のフランジ部24を係止させるための段差面68が形成されている。そして、収納孔65の大径部67には、略円筒状をなす第2のセンサ固定部材69が螺着されている。第2のセンサ固定部材69は、第2の超音波センサ22を基端部側から押さえ付けるとともに、第2の超音波センサ22の先端部(超音波放射面23)を第2のセンサホルダ62の前端面63から突出させた状態で固定するようになっている。また、第2のセンサ固定部材69の貫通孔69aには、第2の超音波センサ22の超音波振動子に接続された内部配線と配線チューブ28とが挿通するようになっている。
【0051】
図3,
図4に示されるように、第2のセンサカバー61の外周部には、同第2のセンサカバー61の軸方向に沿って延びるとともに、計測管ホルダ42の連通孔71に連通する連通孔73が一対設けられている。両連通孔73は、収納孔65を介して互いに反対側に配置されている。そして、各連通孔73には、連通孔71の第2端42b側の開口部から延出された内部配線27bが挿通するようになっている。
【0052】
また、
図2〜
図4に示されるように、第2のセンサカバー61の第2端61b側開口は、上記したバネユニット31のキャップ33によって塞がれている。そして、凸部35を第2のセンサカバー61の第2端61b側開口に嵌め込んだ状態で、キャップ33の外周部に設けられたネジ孔33aにネジ33bを挿通し、挿通したネジ33bの先端部を第2のセンサカバー61に螺着させる。その結果、キャップ33が第2のセンサカバー61に取り付けられるようになる。
【0053】
図3,
図4に示されるように、キャップ33の外周部には、同キャップ33の軸方向に沿って延びるとともに、第2のセンサカバー61の連通孔73に連通する連通孔74が一対設けられている。両連通孔74は、上記したバネ収納孔36を介して互いに反対側に配置されている。そして、各連通孔74には、連通孔73の第2端61b側の開口部から延出された内部配線27bが挿通するようになっている。
【0054】
従って、上記したホルダ側接触子72に接続された内部配線27bは、計測管ホルダ42の連通孔71、第2のセンサカバー61の連通孔73、及び、キャップ33の連通孔74を順番に挿通し、超音波流量計20の外部に引き出される。そして、超音波流量計20の外部に引き出された内部配線27bは、計測制御装置90(
図5参照)に接続される。また、上記した第2の超音波センサ22に接続された内部配線は、配線チューブ28に結束された状態で、第2のセンサ固定部材69の貫通孔69a、圧縮バネ32の内側空間、キャップ33のバネ収納孔36、及び、加圧調整ネジ34の貫通孔34aを順番に挿通し、超音波流量計20の外部に引き出される。そして、第2の超音波センサ22に接続され、かつ超音波流量計20の外部に引き出された内部配線は、計測制御装置90に接続されるようになる。なお、第1の超音波センサ21に接続された内部配線27b、及び、第2の超音波センサ22に接続された内部配線は、超音波流量計20の外部において配線チューブ(図示略)に結束されるようになる。
【0055】
なお、本実施形態では、収納ケース41を構成する2つのセンサカバー51,61のうち、バネユニット31が収納されていない側の第1のセンサカバー51が、計測管ホルダ42に対して着脱可能に装着されている。詳述すると、第1のセンサカバー51が計測管ホルダ42から分離した際に、カバー側接触子82とホルダ側接触子72とが分離するのに伴い、第1の超音波センサ21と計測制御装置90とを繋ぐ内部配線27が内部配線27aと内部配線27bとに分離される。このため、第1のセンサカバー51は、計測管ホルダ42に対して着脱可能となる。一方、内部配線27は、第2のセンサカバー61と計測管ホルダ42との連結部分において分離される訳ではない。このため、第2のセンサカバー61は、計測管ホルダ42に対して着脱不能となる。
【0056】
次に、輸液システム1の電気的構成について説明する。
【0057】
図5に示されるように、輸液システム1の計測制御装置90は、超音波センサ21,22で送受信される超音波の伝播時間差に応じて、輸液W1の流量を演算により求めるための装置である。計測制御装置90は、信号処理部91、演算処理部92、入力装置93及び表示装置94等を備えている。信号処理部91は、各超音波センサ21,22を駆動するための駆動信号を出力する回路や、超音波の伝播時間を検出する回路などを含んでいる。演算処理部92は、従来周知のCPU95やメモリ96等を含んで構成された処理回路である。メモリ96には、制御プログラムやデータが記憶されており、CPU95は、メモリ96に記憶されている制御プログラムに基づいて流量の演算処理や表示処理を行う。
【0058】
詳述すると、信号処理部91は、各超音波センサ21,22を駆動することにより、流量計測管11を介して超音波を交互に伝播させる。そして、信号処理部91は、第1の超音波センサ21から送信され、第2の超音波センサ22で受信された超音波の正方向の伝播時間(輸液W1が流れる方向と同一方向に伝播した超音波の伝播時間)を検出する。また、信号処理部91は、第2の超音波センサ22から送信され、第1の超音波センサ21で受信された超音波の逆方向の伝播時間(輸液W1が流れる方向とは逆方向に伝播した超音波の伝播時間)を検出する。そして、信号処理部91は、正方向の伝播時間と逆方向の伝播時間とを演算処理部92に出力する。演算処理部92は、信号処理部91から出力された正方向の伝播時間と逆方向の伝播時間とを取り込み、伝播時間の差に基づいて、輸液W1の流量を演算により算出する。
【0059】
また、
図5に示されるように、入力装置93は、各種の操作ボタンを有し、測定の開始・終了、表示モードの設定などを行う。表示装置94は、例えば、液晶ディスプレイであり、演算処理部92にて算出された流量を表示する。
【0060】
次に、超音波流量計20の使用方法を説明する。
【0061】
本実施形態の超音波流量計20に取り付けられる流量計測管11は、使い捨ての流量計測管であるため、定期的な交換が必要となる。そこで、流量計測管11の交換方法を以下に説明する。具体的には、まず、第1のセンサカバー51を反時計回り方向に回転させて計測管ホルダ42から離間させ、計測管ホルダ42の第1端42a側にて直管部収納部44及び溝部45,46を開口させる。次に、計測管ホルダ42の計測管収納部43内から流量計測管11を取り出す。そして、流量計測管11の屈曲部15,16から輸液チューブ2を取り外した後、予め準備しておいた別の流量計測管11の屈曲部15,16に対して、取り外した輸液チューブ2を取り付ける。
【0062】
次に、組立工程を行い、計測管ホルダ42に対して、輸液チューブ2の途中に設けられた状態の流量計測管11を収納し、かつ第1のセンサカバー51を連結させる。具体的には、流量計測管11を計測管ホルダ42の軸方向(長さ方向)に沿って移動させ、計測管ホルダ42の第1端42a側から計測管収納部43内に流量計測管11を収納する。このとき、直管部14が直管部収納部44内に収納され、屈曲部15が溝部45内に収納され、屈曲部16が溝部46内に収納される。次に、第1のセンサカバー51を計測管ホルダ42の第1端42a側の開口部付近に載置し、この状態で第1のセンサカバー51を時計回り方向に回転させる。その結果、第1のセンサカバー51が、計測管ホルダ42の軸方向に沿って移動して計測管ホルダ42に連結され、計測管ホルダ42の第1端42a側にて直管部収納部44及び溝部45,46が閉口する。この時点で、流量計測管11の交換が終了する。
【0063】
組立工程後の計測工程では、流量計測を行う。具体的に言うと、信号処理部91は、第1の超音波センサ21から送信され第2の超音波センサ22で受信された超音波の正方向の伝播時間(輸液W1の流れに対して正方向に伝播した超音波の伝播時間)を計測する。また、信号処理部91は、第2の超音波センサ22から送信され第1の超音波センサ21で受信された超音波の逆方向の伝播時間(輸液W1の流れに対して逆方向に伝播した超音波の伝播時間)を計測する。そして、演算処理部92は、計測された正方向の伝播時間と逆方向の伝播時間との差に基づいて、輸液W1の流速を算出し、算出した輸液W1の流速を変換することにより、輸液W1の流量を算出する。
【0064】
そして、演算処理部92は、算出した流量のデータを表示装置94に出力し、表示装置94の表示画面に輸液W1の流量を表示させる。また、演算処理部92は、算出された流量と、入力装置93で設定した流量とを比較し、流量が異なる場合には、流量の異常と判定して表示装置94に異常を表示させる制御を行う。
【0065】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0066】
(1)本実施形態の超音波流量計20では、流量計測管11を計測管ホルダ42の軸方向に沿って移動させて、計測管ホルダ42の第1端42a側から計測管収納部43内に流量計測管11を収納する。そして、第1のセンサカバー51を同じく計測管ホルダ42の軸方向に沿って移動して計測管ホルダ42に連結させることにより、流量計測管11を固定することができる。即ち、一方向(計測管ホルダ42の軸方向)への操作を行うだけで、流量計測管11の収納と第1のセンサカバー51の連結とが完了するため、流量計測管11の取り付け、ひいては、流量計測管11の交換を容易に行うことができる。また、本実施形態では、計測管ホルダ42によって流量計測管11の周囲が覆われている。このため、例えば、輸液チューブ2が引っ張られるなどして、流量計測管11における流入口12側の端部や流出口13側の端部に意図しない外力が作用したとしても、計測管ホルダ42からの流量計測管11の脱落を防止することができる。
【0067】
(2)ところで、特許文献1に記載の超音波流量計では、スライドバーがホルダから突出するように設けられているため、スライドバーに輸液チューブが引っ掛かる可能性がある。これに対して、本実施形態の超音波流量計20には、スライドバーのような突起が存在しないため、超音波流量計20に輸液チューブ2が引っ掛かるという問題が生じにくくなる。
【0068】
(3)本実施形態では、バネユニット31の付勢力により、第1の超音波センサ21の超音波放射面23が流量計測管11の上流側の屈曲部15に押し当てられるとともに、第2の超音波センサ22の超音波放射面23が流量計測管11の下流側の屈曲部16に押し当てられる。その結果、各超音波センサ21,22によって流量計測管11がクランプされるようになる。また、各超音波センサ21,22の超音波放射面23は、ゴムシート26を介して流量計測管11に密着する。このため、超音波センサ21,22の超音波放射面23から流量計測管11内の輸液W1中に超音波を効率良く伝播させることができ、輸液W1の流量計測を確実に行うことができる。
【0069】
(4)本実施形態では、第1の超音波センサ21とカバー側接触子82とを繋ぐ内部配線27aが、収納ケース41の外部に露出しないようになっている。また、ホルダ側接触子72と計測制御装置90とを繋ぐ内部配線27bは、キャップ33の連通孔74から収納ケース41の外部に引き出され、収納ケース41の外周側には露出しないようになっている。その結果、第1の超音波センサ21と計測制御装置90とを繋ぐ内部配線27に輸液チューブ2が引っ掛かりにくくなるため、例えば、輸液チューブ2が引っ掛かることにより内部配線27が切断される等の問題を解消することができる。
【0070】
(5)本実施形態では、計測管ホルダ42及び流量計測管11が透明な材料によって形成されているため、計測管ホルダ42の計測管収納部43内に流量計測管11を収納した際に、流量計測管11内を流れる輸液W1の様子を確認することができる。
【0071】
(6)本実施形態では、輸液W1が流れる輸液チューブ2の途中に流量計測管11が設けられている。また、輸液チューブ2は細い(外径が3mm程度)ため、それに繋がる流量計測管11を細く形成することができる。その結果、流量計測管11に押し当てられる超音波センサ21,22として、直径が10mmの小型センサを用いることができるため、超音波流量計20をコンパクトに形成することができる。
【0072】
[第2実施形態]
以下、本発明を具体化した第2実施形態を図面に基づいて説明する。ここでは、前記第1実施形態と相違する部分を中心に説明する。本実施形態では、第1の超音波センサ21に接続された内部配線の取り回しが前記第1実施形態とは異なっている。
【0073】
詳述すると、
図6〜
図8に示されるように、本実施形態の超音波流量計100では、第1の超音波センサ21の超音波振動子に2本の内部配線(図示略)が接続され、両内部配線が配線チューブ101によって結束されている。また、収納ケース102を構成する第1のセンサカバー103の中央部には、同第1のセンサカバー103の軸方向に沿って延びる貫通孔103aが設けられている。
【0074】
なお、第1の超音波センサ21に接続された内部配線は、配線チューブ101に結束された状態で、第1のセンサ固定部材59の貫通孔59a、及び、第1のセンサカバー103の貫通孔103aを順番に挿通し、超音波流量計100の外部に引き出される。そして、第1の超音波センサ21に接続され、かつ超音波流量計100の外部に引き出された内部配線は、計測制御装置90(
図5参照)に接続されるようになる。
【0075】
従って、本実施形態によれば、上記第1実施形態のホルダ側接触子72やカバー側接触子82といった構成が不要となるため、超音波流量計100の部品コストを抑えることができる。
【0076】
なお、上記各実施形態を以下のように変更してもよい。
【0077】
・上記第1実施形態では、第1のセンサカバー51及び第2のセンサカバー61のうち、バネユニット31が収納されていない側のセンサカバーである第1のセンサカバー51が、計測管ホルダ42に対して着脱可能に装着されていた。しかし、バネユニット31が収納されている側のセンサカバーである第2のセンサカバー61が、計測管ホルダ42に対して着脱可能に装着されていてもよい。また、第1のセンサカバー51及び第2のセンサカバー61の両方が、計測管ホルダ42に対して着脱可能に装着されていてもよい。
【0078】
なお、第1のセンサカバー51が計測管ホルダ42に対して着脱可能に装着される場合、第1のセンサカバー51が計測管ホルダ42から離間した際に、計測管ホルダ42の第1端42a側にて直管部収納部44及び溝部45,46が開口する。そして、第1のセンサカバー51が計測管ホルダ42に連結した際に、計測管ホルダ42の第1端42a側にて直管部収納部44及び溝部45,46が閉口する。一方、第2のセンサカバー61が計測管ホルダ42に対して着脱可能に装着される場合には、第2のセンサカバー61が計測管ホルダ42から離間した際に、計測管ホルダ42の第2端42b側にて直管部収納部及び溝部が開口し、第2のセンサカバー61が計測管ホルダ42に連結した際に、計測管ホルダ42の第2端42b側にて直管部収納部及び溝部が閉口する。
【0079】
・また、上記第1実施形態では、計測管ホルダ42に対して着脱可能に装着されるセンサカバー(第1のセンサカバー51)が、回転させることにより計測管ホルダ42に連結するネジ式キャップであった。しかし、計測管ホルダ42に対して着脱可能に装着されるセンサカバーは、接着剤またはネジを用いて計測管ホルダ42に連結されるものであってもよいし、計測管ホルダ42の第1端42aや第2端42bに嵌め込まれるものであってもよい。また、
図9に示されるように、第1のセンサカバー171は、ユニオンナット172を有するユニオンネジ式キャップであってもよい。この場合、ユニオンナット172を回転して計測管ホルダ173に螺着させることにより、第1のセンサカバー171が計測管ホルダ173に連結されるようになる。このようにすれば、計測管ホルダ173への連結時において、第1のセンサカバー171や、第1のセンサカバー171に固定された第1のセンサホルダ174が回転することはない。その結果、第1のセンサホルダ174に保持された第1の超音波センサ175を覆うゴムシート176が歪んだり、同じく第1のセンサホルダ174に保持されたカバー側接触子177が位置ずれしたりするなどの不具合が生じにくくなる。
【0080】
・上記各実施形態の流量計測管11は、上流側の屈曲部15及び下流側の屈曲部16が直管部14を介して互いに反対方向に直角に曲がった形状(クランク状)をなしていたが、これに限定されるものではない。具体的には、
図10に示されるように、流量計測管111は、上流側の屈曲部112及び下流側の屈曲部113が、互いに同一方向に曲がった形状(コ字状)をなしていてもよい。また、流量計測管は、上流側の屈曲部及び下流側の屈曲部が直管部を介して互いに反対方向に鋭角に曲がった形状(Z字状)をなしていてもよい。
【0081】
・上記各実施形態の収納ケース41は円筒状をなしていたが、楕円筒状、矩形筒状などの他の筒状をなしていてもよい。また、収納ケースは、円柱状、四角柱状などの柱状をなしていてもよい。なお、収納ケースが柱状をなす場合、計測管収納部は、例えば計測管ホルダに切欠形成される。
【0082】
・上記各実施形態では、計測制御装置90に、輸液W1の流量を表示する表示装置94が設けられていた。しかし、超音波流量計、具体的には、超音波流量計を構成する第1のセンサカバーに表示装置が設けられていてもよい。また、
図11に示されるように、超音波流量計120を構成する第2のセンサカバー121に表示装置122が設けられていてもよい。さらに、
図12に示されるように、超音波流量計130は、第2のセンサカバー131から延びるクリップ132を介して図示しない点滴スタンド(ガートル台)に取り付けられるものであってもよい。なお、第2のセンサカバー131には表示装置133が設けられ、超音波流量計130に収納される流量計測管134は、上流側の屈曲部135及び下流側の屈曲部136が互いに同一方向に曲がった形状(コ字状)をなしている。また、
図13に示されるように、超音波流量計140が、表示装置141を有する電装部142に対してフレキシブルケーブル143を介して接続され、電装部142が点滴スタンド144に取り付けられていてもよい。
【0083】
・上記各実施形態において、流量計測管の形状及び寸法に応じて異なる複数種類の計測管ホルダを予め準備しておき、それらの中から流量計測管の形状及び寸法に応じて1つの計測管ホルダを選択することにより、流量計測管を交換してもよい。ここで、計測管ホルダとしては、上記各実施形態において用いられる計測管ホルダ42や、
図14(a),(b)に示す計測管ホルダ151,161等を挙げることができる。なお、計測管ホルダ151には、上流側の屈曲部152及び下流側の屈曲部153が互いに同一方向に曲がった形状(コ字状)をなす流量計測管154が収納されている。また、計測管ホルダ161には、上記各実施形態の直管部14よりも長い直管部162を有する流量計測管163が収納されている。そして、選択された計測管ホルダには、第1のセンサカバー51及び第2のセンサカバー61の両方が着脱可能に装着される。
【0084】
以下に流量計測管の交換方法を説明する。まず、第1のセンサカバー51及び第2のセンサカバー61を取り外した後、計測管ホルダ42から流量計測管11を取り出す。次に、準備選択工程を行い、予め準備しておいた3種類の計測管ホルダ42,151,161の中から1つの計測管ホルダを選択する。続く組立工程では、選択した計測管ホルダに対して、同計測管ホルダに対応する流量計測管を輸液チューブ2を接続した状態で収納し、第1のセンサカバー51及び第2のセンサカバー61を連結させる。この時点で、流量計測管の交換が終了する。その後、計測工程において流量計測を行う。
【0085】
このようにした場合、流量計測管11の交換時に、計測管ホルダ42(及び流量計測管11)のみを交換し、第1のセンサカバー51及び第2のセンサカバー61はそのまま使用できるため、収納ケース41全体を交換する場合と比較して、部品コストを低減することができる。因みに、特許文献1に記載の超音波流量計では、形状及び寸法が異なる流量計測管をホルダに装着しようとすると、流入口や流出口が開口する方向に応じてホルダの設計変更が必要となるため、流量計測管の装着部をそのまま使用することができない。この場合、部品コストが高くなるという問題がある。
【0086】
・上記各実施形態の超音波流量計20,100は、超音波センサ21,22を用いて、流量計測管11を流れる輸液W1の流量を計測するようになっていた。しかし、超音波流量計20,100は、輸液W1の流量を検知する機能に加えて、輸液W1中に混在する気泡を検知する機能をさらに有していてもよい。詳述すると、輸液W1中に気泡が混在する場合には、超音波センサ21,22により受信される超音波の受信信号の感度が低下する。よって、計測制御装置90は、受信信号の感度の低下に基づいて、輸液W1中に混在する気泡を検知する。このようにすれば、流量計測と気泡検知とで別々に超音波センサを設ける場合と比較して、超音波センサの設置スペースを小さくすることができ、超音波流量計20,100の小型化が可能となる。さらに、信号処理部91や演算処理部92等の回路部品を共通化できるため、計測制御装置90の部品コストを抑えることができる。
【0087】
・上記各実施形態の超音波流量計20,100は、超音波センサ21,22を用いて、流量計測管11を流れる輸液W1の流量を計測するようになっていた。しかし、超音波流量計20,100は、輸液W1の流量を検知する機能に加えて、輸液W1の濃度を測定する機能をさらに有していてもよい。このようにすれば、流量計測と濃度測定とで別々に超音波センサを設ける場合と比較して、超音波センサの設置スペースを小さくすることができ、超音波流量計20,100の小型化が可能となる。さらに、信号処理部91や演算処理部92等の回路部品を共通化できるため、計測制御装置90の部品コストを抑えることができる。
【0088】
・上記各実施形態では、輸液チューブ2における輸液バッグ3とポンプ装置7との間の位置に、超音波流量計20が設置されていたが、輸液チューブ2におけるポンプ装置7とクレンメ6との間の位置に、超音波流量計20を設置してもよい。
【0089】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0090】
(1)請求項1乃至10のいずれか1項において、前記流量計測管の上流側及び下流側の前記屈曲部は、互いに同一方向または反対方向に曲がった形状をなしていることを特徴とする超音波流量計。
【0091】
(2)請求項1乃至10のいずれか1項において、前記超音波流量計は、前記超音波センサにより受信された超音波の受信信号に基づいて、前記液体中に混在する気泡を検知する機能をさらに有することを特徴とする超音波流量計。
【0092】
(3)請求項1乃至10のいずれか1項において、前記超音波流量計は、前記液体の濃度を測定する機能をさらに有することを特徴とする超音波流量計。
【0093】
(4)液体である輸液を流す輸液チューブは、可撓性を有し、基端に輸液バッグが接続されるとともに、同輸液チューブの途中に調節つまみが設置され、前記輸液チューブにおける前記輸液バッグと前記調節つまみとの間の位置に、前記輸液バッグ内の前記輸液を前記輸液チューブの先端に向けて送出する送液手段が設置され、前記輸液チューブにおける前記輸液バッグと前記送液手段との間の位置、または、前記輸液チューブにおける前記送液手段と前記調節つまみとの間の位置に、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の超音波流量計が設置されることを特徴とする輸液システム。