(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
鉛直方向に延びる一対の柱材と、水平方向に延びる一対の構造材と、一方の柱材の中央から、他方の柱材と当該構造材との接合部に向けて延びる筋交い材とを備える木造建物に用いられ、前記柱材及び/又は前記構造材と、前記筋交い材と、に固定されるエネルギー吸収機構であって、
第1のバネ部と、第2のバネ部と、を備え、
前記第1のバネ部は、第1バネ定数K1が1.5〜7.5kN/mmの範囲であり、
前記第2のバネ部は、第2バネ定数K2が5.0〜30.0kN/mmの範囲であり、 下記数式1を満たし、かつ、下記数式2により導き出されるKの数値が1.4〜4.9の範囲内であり、
前記筋交い材の端部と、前記柱材又は前記構造材との間にクリアランスが生じるように設置される、エネルギー吸収機構。
K1<K2 ・・・(数式1)
K=(K1×K2)/(K1+K2) ・・・(数式2)
鉛直方向に延びる一対の柱材と、水平方向に延びる一対の構造材と、当該柱材と当該構造材との接合部に設置されるほおづえ型の筋交い材とを備える木造建物に用いられ、前記柱材及び/又は前記構造材と、前記筋交い材と、に固定されるエネルギー吸収機構であって、
第1のバネ部と、第2のバネ部と、を備え、
前記第1のバネ部は、第1バネ定数K1が1.5〜7.5kN/mmの範囲であり、
前記第2のバネ部は、第2バネ定数K2が5.0〜30.0kN/mmの範囲であり、 下記数式1を満たし、かつ、下記数式2により導き出されるKの数値が1.4〜4.9の範囲内であり、
前記筋交い材の端部と、前記柱材又は前記構造材との間にクリアランスが生じるように設置される、エネルギー吸収機構。
K1<K2 ・・・(数式1)
K=(K1×K2)/(K1+K2) ・・・(数式2)
鉛直方向に延びる一対の柱材と、水平方向に延びる一対の構造材と、当該柱材と当該構造材とにより構成される枠に設置される壁材とを備える木造建物に用いられ、前記柱材及び/又は前記構造材と、前記壁材と、の間に固定されるエネルギー吸収機構であって、
第1のバネ部と、第2のバネ部と、を備え、
前記第1のバネ部は、第1バネ定数K1が1.5〜7.5kN/mmの範囲であり、
前記第2のバネ部は、第2バネ定数K2が5.0〜30.0kN/mmの範囲であり、 下記数式1を満たし、かつ、下記数式2により導き出されるKの数値が1.4〜4.9の範囲内であり、
前記壁材と、前記柱材又は前記構造材との間にクリアランスが生じるように設置される、エネルギー吸収機構。
K1<K2 ・・・(数式1)
K=(K1×K2)/(K1+K2) ・・・(数式2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、特許文献2に記載の発明は、減衰材と高剛性部材を備えるダンパにより、地震等の振動によるエネルギーを吸収しようとするものである。なお、これら特許文献は、本願の発明者が発明したものであり、発明者は従来よりも効果的にエネルギーを吸収すべく鋭意研究を重ね、本願の発明をなした。
【0006】
本願の発明者は、ダンパ等のエネルギー吸収機構を構成する部材のバネ定数が極めて重要なファクターであることを見いだした。特許文献1及び2の記載によれば、減衰材等の特性としてせん断弾性率、等価粘性減衰定数を規定して、効果的なエネルギー吸収を得ようとするものである。
【0007】
しかし、これらは減衰材等の形状、例えば高減衰ゴムの形状(接着面の表面積×厚さ)によって、バネ定数は大きく変化する。すなわち、せん断弾性率が同一のゴムであっても、筋交いに生じる引張・圧縮によるせん断力が作用する接着面の表面積が同一である場合、厚さが小さくなるとバネ定数は大きくなり、厚さが大きくなるとバネ定数は小さくなる。
【0008】
このバネ定数が大き過ぎると、減衰材が変形することなく、振動によるエネルギーを吸収できず、ネジやボルトなどの締結部分に応力がかかり、変形が生じて破壊される。一方、バネ定数が小さ過ぎると、十分な剛性が確保できない。このように、バネ定数は制振において極めて大きなファクターである。
【0009】
そして、本願の発明者は、さらに研究を重ねることによって、エネルギー吸収機構を構成する2つのバネ部材の相関を見いだし、より効果的な制振効果を奏するエネルギー吸収機構を発明した。
【0010】
以上のように、本発明の目的は、エネルギー吸収機構を構成する2つの部材を規定することにより、振動によるエネルギーに対する減衰能力及び靭性能力の向上を図り、従来よりも制振効果の高いエネルギー吸収機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る一の態様のエネルギー吸収機構は、鉛直方向に延びる一対の柱材と、水平方向に延びる一対の構造材と、一方の柱材の中央から、他方の柱材と当該構造材との接合部に向けて延びる筋交い材とを備える木造建物に用いられ、前記柱材及び/又は前記構造材と、前記筋交い材と、に固定されるエネルギー吸収機構であって、第1のバネ部と、第2のバネ部と、を備え、前記第1のバネ部は、
第1バネ定数K1が1.5〜7.5kN/mmの範囲であり、前記第2のバネ部は、
第2バネ定数K2が5.0〜30.0kN/mmの範囲であり、下記数式1を満たし、かつ、下記数式2により導き出される
Kの数値が1.4〜4.9の範囲内であ
り、前記筋交い材の端部と、前記柱材又は前記構造材との間にクリアランスが生じるように設置されることを特徴とする。
K1<K2 ・・・(数式1)
K=(K1×K2)/(K1+K2) ・・・(数式2)
【0012】
この構成によれば、第1のバネ部及び第2のバネ部を具備するエネルギー吸収機構により、振動エネルギーに対する減衰能力及び靭性能力を向上し、効果的な制振効果を得ることができる。また、筋交い材と、柱材又は構造材との間にクリアランスが形成されるため、筋交いの圧縮及び引張りのいずれの方向にもエネルギー吸収機構を効かせることができる。これにより、地震などの揺れによるエネルギーを効率良く吸収する。ここで、第1のバネ部及び第2のバネ部を具備するエネルギー吸収機構には、例えばゴムと金属など異なる部材を組み合わせたものや、金属などの同素材が連続して構成され、バネ定数が異なる第1の部分と第2の部分を具備するものが含まれる。
【0013】
また、第1バネ定数K1が1.0kN/mm未満であると耐震性能が低すぎて耐震要素として成り立たず、20.0kN/mmを超えると強度が高すぎて吸収性能を発揮できない。また、第2バネ定数K1が3.0kN/mm未満であると固定部が先に変形してしまい耐震要素として成り立たず、50.0kN/mmを超えると強度が高すぎて吸収性能を発揮できない。
また、耐震性能と吸収性能をより高めるため、好ましくは、第1バネ定数K1が1.5〜7.5kN/mmであり、第2バネ定数K2が5.0〜30.0kN/mmであり、Kの数値が1.4〜4.9の範囲内である。
【0014】
また
、前記筋交い材の端部と、前記柱材又は前記構造材との間にクリアランスを設けて設置され
るため、筋交いの圧縮及び引張りのいずれの方向にもエネルギー吸収機構を効かせることができる。これにより、地震などの揺れによるエネルギーを効率良く吸収する。
【0015】
本発明に係る一の態様のエネルギー吸収機構は、鉛直方向に延びる一対の柱材と、水平方向に延びる一対の構造材と、当該柱材と当該構造材との接合部に設置されるほおづえ型の筋交い材とを備える木造建物に用いられ、前記柱材及び/又は前記構造材と、前記筋交い材と、に固定されるエネルギー吸収機構であって、第1のバネ部と、第2のバネ部と、を備え、前記第1のバネ部は、
第1バネ定数K1が1.5〜7.5kN/mmの範囲であり、前記第2のバネ部は、
第2バネ定数K2が5.0〜30.0kN/mmの範囲であり、下記数式1を満たし、かつ、下記数式2により導き出される
Kの数値が1.4〜4.9の範囲内であ
り、前記筋交い材の端部と、前記柱材又は前記構造材との間にクリアランスが生じるように設置されることを特徴とする。また、第1バネ定数K1、第2バネ定数K2の範囲の上下限については、前記と同様である。
【0016】
本発明に係る一の態様のエネルギー吸収機構は、鉛直方向に延びる一対の柱材と、水平方向に延びる一対の構造材と、当該柱材と当該構造材とにより構成される枠に設置される壁材とを備える木造建物に用いられ、前記柱材及び/又は前記構造材と、前記壁材と、の間に固定されるエネルギー吸収機構であって、第1のバネ部と、第2のバネ部と、を備え、前記第1のバネ部は、
第1バネ定数K1が1.5〜7.5kN/mmの範囲であり、前記第2のバネ部は、
第2バネ定数K2が5.0〜30.0kN/mmの範囲であり、下記数式1を満たし、かつ、下記数式2により導き出される
Kの数値が1.4〜4.9の範囲内であ
り、前記壁材と、前記柱材又は前記構造材との間にクリアランスが生じるように設置されることを特徴とする。また、第1バネ定数K1、第2バネ定数K2の範囲の上下限については、前記と同様である。
【0017】
また、このエネルギー吸収機構は、前記クリアランスに、エネルギー吸収材が配されている。この構成によれば、建物の揺れを別途配されるエネルギー吸収材によっても吸収することができる。ここで、エネルギー吸収材の材質は、例えば金属、鋼材、粘弾性体、弾性体、粘性体であり、また弾性体と鋼材の組み合わせなど、これらを複数組み合わせたエネルギー吸収材としてもよい。
【0018】
また、このエネルギー吸収機構は、前記第1のバネ部は、弾性材からなる第1板状部を備え、前記第2のバネ部は、金属又は樹脂からなり、前記第1のバネ部より剛性が高い第2板状部を備え、前記第1板状部と、前記第2板状部とが接合されてなる。ここで、弾性体には、例えば天然ゴムなどのほか、高減衰ゴムなどの粘弾性体が含まれる。また、第1板状部と第2板状部との接合は、例えば接着による。
【0019】
また、このエネルギー吸収機構は、前記第2のバネ部が、一対の第2板状部を備え、前記第1板状部が、一対の前記第2板状部により挟持されてなる。これにより、第1板状部が一対の第2板状部に挟まれた構成となる。
【0020】
また、このエネルギー吸収機構は、前記第2のバネ部が、一対の前記第2板状部を接続する接続部を備える。ここで、接続部は、例えばブリッジ状に形成され、当該接続部も1つのバネとして機能する。
【0021】
また、このエネルギー吸収機構は、前記接続部が、一対の前記第2板状部を結合する複数のブリッジである。この構成によれば、複数のブリッジがバネとして機能する。
【0022】
また、このエネルギー吸収機構は、前記第2のバネ部が、前記柱材及び/又は前記構造材と固定する取付部を備える。これにより、エネルギー吸収機構の柱材や構造材への取付が容易となる。
【0023】
また、このエネルギー吸収機構は、前記第1板状部及び前記第2板状部及び前記取付部が、貫通孔を備える。ここで、貫通孔は、エネルギー吸収機構を筋交いに固定する際に、ネジやボルトが通る孔となる。
【0024】
また、このエネルギー吸収機構は、前記第2板状部の表面を被覆する、弾性材からなる被覆部をさらに備え、前記被覆部は、前記第1のバネ部と一体に形成されてなる。この被覆部は、第1のバネ部と一体となり、第1のバネ部として機能する。
【0025】
また、このエネルギー吸収機構は、前記被覆部が、板状であり、貫通孔を備える。ここで、貫通孔は、エネルギー吸収機構を筋交いに固定する際に、ネジやボルトが通る孔となる。
【0026】
本発明に係る一の態様の木造建物は、上記のエネルギー吸収機構と、前記柱材と、前記構造材と、前記筋交い材とを備え、前記エネルギー吸収機構は、前記筋交い材の端部と、前記柱材及び/又は前記構造材とに固定されている。
【0027】
本発明に係る一の態様の木造建物は、上記のエネルギー吸収機構と、前記柱材と、前記構造材と、前記壁材とを備え、前記エネルギー吸収機構は、前記壁材と、前記柱材及び/又は前記構造材とに固定されている。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、
耐震性能と吸収性能が高く、従来よりも制振効果の高いエネルギー吸収機構となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の一実施形態に係るエネルギー吸収機構を適用した耐力壁の模式図である。
【
図2】試験による引張り時の筋交いの軸力−エネルギー吸収機構の各変位の関係を示すグラフである。
【
図3】試験と解析による水平荷重−層間変位の比較を示すグラフである。
【
図4】解析により得られる筋交い引張り時の水平荷重−層間変位の関係を示すグラフである。
【
図5】第1バネ部材のバネ定数から壁倍率を算出するための表である。
【
図6】壁倍率とバネ定数K1の関係を示すグラフである。
【
図7】壁倍率とバネ定数K2の関係を示すグラフである。
【
図8】等価粘性減衰定数とバネ定数K1の関係を示すグラフである。
【
図9】壁倍率1.0の時のバネ定数K1とバネ定数K2の関係を示すグラフである。
【
図10】壁倍率1.0〜2.5の時のバネ定数K1とバネ定数K2の関係を示すグラフである。
【
図11】壁倍率に対するバネ定数K1の下限・上限を示す表である。
【
図12】本発明の一実施形態に係るエネルギー吸収機構を柱および構造材に取り付けた状態を示す図である。
【
図13】(a)は
図12における正面図、(b)は同側面図である。
【
図14】(a)はエネルギー吸収機構の斜視図、(b)は第1バネ部材を省略した斜視図である。
【
図15】(a)はエネルギー吸収機構の裏側からの斜視図、(b)は第1バネ部材を省略した斜視図である。
【
図17】(a)はエネルギー吸収機構の変形例1の斜視図、(b)は第1バネ部材を省略した斜視図である。
【
図18】エネルギー吸収機構の変形例2を柱及び構造材に取り付けた図である。
【
図19】エネルギー吸収機構の変形例3の要部断面図である。
【
図20】別の実施形態に係るエネルギー吸収機構を柱および構造材に取り付けた状態を示す図である。
【
図21】(a)は
図20における正面図、(b)は同側面図である。
【
図22】
図20の変形例に係るエネルギー吸収機構を柱および構造材に取り付けた状態を示す図である。
【
図23】(a)は
図22における正面図、(b)は同側面図である。
【
図24】
図20の変形例に係るエネルギー吸収機構を柱および構造材に取り付けた状態を示す図である。
【
図25】(a)は
図24における正面図、(b)は同側面図である。
【
図26】
図20の変形例に係るエネルギー吸収機構を柱および構造材に取り付けた状態を示す図である。
【
図27】
図22の変形例に係るエネルギー吸収機構を柱および構造材に取り付けた状態を示す図である。
【
図28】
図24の変形例に係るエネルギー吸収機構を柱および構造材に取り付けた状態を示す図である。
【
図29】別の実施形態に係るエネルギー吸収機構を柱および構造材に取り付けた状態を示す図である。
【
図30】別の実施形態に係るエネルギー吸収機構を柱および構造材に取り付けた状態を示す図である。
【
図31】別の実施形態に係るエネルギー吸収機構を柱および構造材に取り付けた状態を示す図である。
【
図32】(a)は
図31における正面図、(b)は同側面図である。
【
図33】本発明の別の実施形態に係るエネルギー吸収機構(ダンパ)を柱材に取り付けた状態と、同ダンパを模式的に示す図である。
【
図34】
図33の変形例のダンパを柱材に取り付けた状態と、同ダンパを模式的に示す図である。
【
図35】
図33の変形例のダンパを柱材に取り付けた状態と、同ダンパを模式的に示す図である。
【
図36】別の実施形態に係るダンパを柱材に取り付けた状態と、同ダンパを模式的に示す図である。
【
図37】別の実施形態に係るダンパを柱材に取り付けた状態と、同ダンパを模式的に示す図である。
【
図38】
図37の変形例のダンパを柱材に取り付けた状態と、同ダンパを模式的に示す図である。
【
図39】(a)は
図33のダンパの機構を説明する図である。(b)は
図36のダンパの機構を説明する図である。
【
図40】(a)は
図33のダンパにゴムを被覆した状態を示す図である。(b)は
図36のダンパにゴムを被覆した状態を示す図である。(c)は
図37のダンパにゴムを被覆した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る一実施形態を図面に基づき説明するが、本発明は下記実施形態に限定されるものではない。まず、本実施形態について模式図を用いて説明し、続き具体的な実施形態を説明する。
【0031】
<第1実施形態>
(耐力壁の構造)
図1は、本発明の一実施形態に係るエネルギー吸収機構を適用した耐力壁の模式図であ
る。耐力壁とは、木造建物の軸組において、地震や台風により木造建物に生じる力を主として負担する壁のことである。本発明の一実施形態に係るエネルギー吸収機構は、この耐力壁に取り付けられている。
【0032】
図1に示すように、耐力壁Wは、鉛直方向に延びる一対の柱材100と、水平方向に延びる一対の構造材101とがそれぞれ接合され、一の接合部と他の接合部を結ぶ対角線方向に延びる筋交い材102が配されている。そして、各接合部と筋交い102の各端部との間に、エネルギー吸収機構Sが介在している。
【0033】
エネルギー吸収機構Sは、バネ特性をもつ材料・機構・構造から構成されるもので、
図1に示すように、所定のバネ定数(K1)の第1バネ部材S1と、所定のバネ定数(K2)の第2バネ部材S2を備える。本実施形態のエネルギー吸収機構Sは、一例として構造材100および筋交い102の端部に取り付けられるダンパであり、このダンパの詳細については後述する。なお、エネルギー吸収機構Sは、ダンパに限られない。
【0034】
エネルギー吸収機構Sは、構造材100及び筋交い102の端部にそれぞれ固定されている。固定の方法としては、例えばネジやボルトを用いる。また、第1バネ部材S1は、例えば高減衰ゴム、ポリウレタンゴム、ブチルゴム、天然ゴムなどの弾性体(粘弾性体を含む)である。また、第2バネ部材S2は、第1バネ部材S1よりも剛性が高いもので、例えば鋼板などの金属板、FRPなどの合成樹脂板等、比較的高い剛性をもつ部材である。
【0035】
そして、エネルギー吸収機構Sは、地震等により木造建物にエネルギーが入力された時、このエネルギーを吸収するデバイスとして機能する。すなわち、第1バネ部材S1が、主としてエネルギー吸収バネとして機能し、第2バネ部材S2が剛性を確保するとともに高剛性のバネとして機能する。なお、ネジやボルトなどの固定部材も第2バネ部材を補強する。これにより、エネルギー吸収機構S全体がバネ機構として機能し、木造建物に対するエネルギーを吸収する。
【0036】
このように、第1バネ部材S1は、主としてエネルギーを吸収するバネ特性を備える材料・機構・構造からなり、第2バネ部材S2は、主として剛性を確保し、高剛性のバネとしても機能するバネ特性を備える材料・機構・構造からなる。
【0037】
また、第1バネ部材S1は、バネ定数K1が1.5〜7.5kN/mmであり、第2バネ部材S2は、バネ定数K2が5.0〜30.0kN/mmであり、下記の数式1を満たし、かつ、下記の数式2より算出されるKの数値が1.4〜4.9の範囲内である。
K1<K2 ・・・(数式1)
K=(K1×K2)/(K1+K2) ・・・(数式2)
【0038】
この条件を満たす、第1バネ部材S1及び第2バネ部材S2を備えるエネルギー吸収機構Sを耐力壁に用いることで、十分な強さを確保しつつ、効果的に木造建物にかかるエネルギーを吸収して地震等による被害を最大限に抑制することができる。
【0039】
また、次の場合には、以下の条件を満たす第1バネ部材S1と第2バネ部材S2を備えるエネルギー吸収機構Sがより好ましい。筋交い102が30mm×90mmの矩形断面又はこれと同等の断面の場合は、第1バネ定数K1が1.5〜5.5kN/mmであり、Kの数値が1.4〜3.9であることが望ましい。
【0040】
また、筋交い102が45mm×90mmの矩形断面又はこれと同等の断面の場合は、第1バネ定数K1が2.5〜7.5kN/mmであり、Kの数値が2.1〜4.9である
ことが望ましい。また、筋交い102が90mm×90mmの矩形断面又はこれと同等の断面の場合は、第1バネ定数K1が1.5〜5.5kN/mmであり、Kの数値が1.4〜3.9であることが望ましい。
【0041】
(検証)
また、発明者は、上記のエネルギー吸収機構が十分な効果を得られるかについて試験を行った。以下、当該試験の詳細を説明する。この試験は、
図1に示す耐力壁のモデルに対する増分解析法に基づく解析と荷重試験により行った。なお、エネルギー吸収機構Sとして、板状の一対の第2バネ部材S2と、板状の第1バネ部材S1とで構成され、第1バネ部材S1が一対の第2バネ部材S2に挟まれる形で介在し、これらが接着された構造を用いた。
【0042】
解析においては、第1バネ部材S1のバネ定数K1を2〜20kN/mmと変化させ、所定の水平荷重Pを掛け、エネルギー吸収機構Sに引張り応力を生じさせた時に得られる耐力壁の強さ(壁倍率)を算出した。
【0043】
このときの筋交いに用いる材料のヤング係数Eは12kN/mm2である。また、エネルギー吸収機構Sにおける第2バネ部材S2のバネ定数K2は14kN/mmとした。
【0044】
まず、上記壁倍率の算出に必要な特性値を算定するため、上記のエネルギー吸収機構Sを適用して静的せん断加力試験を行った。
図2にその結果を示す。
【0045】
次に、解析の信頼性を確認するため、実際の実験結果と本解析の水平荷重−変位関係を比較したところ、両データが精度良く一致していることが分かった。
図3にその比較図を示す。
【0046】
次に、実験結果を基にした解析によって、バネ機構Sの引張り応力時における第1バネ部材S1のバネ定数K1と壁倍率の関係、第1バネ部材S1のバネ定数K1と第2バネ部材S2のバネ定数K2の関係を求めた。
図4ないし
図6にK1−壁倍率の関係、
図7にK1−K2の関係を示す。
【0047】
なお、
図5の表において、壁倍率は、以下の数式3により求めた。
壁倍率=P0×(1/1.96)×(1/L) ・・・(数式3)
ただし、1.96:壁倍率=1を算定する数値(kN/m)
L:試験体の壁の長さ(m)
【0048】
図6のグラフから、壁倍率1.0の時の第1バネ部材S1のバネ定数K1は2.03kN/mmとなり、K1<K2を満たし、数式2より算出されるKの数値は2.03×14/(2.03+14)=1.78であった。以上より、第1バネ部材S1のバネ定数K1、第2バネ部材S2の第2バネ定数K2、数値Kが本発明の規定の範囲内にある時、必要な耐力壁の強さを得られることが確認された。
【0049】
また、壁倍率1.5の時の第1バネ部材S1のバネ定数K1は3.34kN/mmとなり、K1<K2を満たし、数式2より算出されるKの数値は2.69であった。これにより、必要な耐力壁の強さを得られることが確認された。
【0050】
さらに、第1バネ部材S1のバネ定数K1を5.5kN/mmを超えて大きくしても、剛性から求まる壁倍率は高くなるが、ほぼ一定値である降伏耐力から求まる壁倍率のほうが相対的に小さく支配的になるため、壁倍率は2.0近傍以上には大きくならないことが確認された。
【0051】
また、発明者は、第2バネ部材のバネ定数K2について、第1バネ部材のバネ定数K1が所定数値の場合の、壁倍率とバネ定数K2との関係を算出した。その結果を
図7に示す。
図7は、上記と同様の増分解析において、バネ定数K1を一定とし、バネ定数K2を増加させたときの壁倍率との関係を示す図である。これにより、バネ定数K2は5.0以上が好ましく、5.0から30.0がより好ましいことがわかる。K2が30.0を超えると、壁倍率が減少し、すなわち、壁の強さが弱まる傾向にあるためである。なお、バネ定数K2の上限を75.0としているのは、75.0を超えると、第2バネ部材S2が変形せず、固定部材であるネジのみが変形するためである。
【0052】
さらに、発明者は、第1バネ部材のバネ定数K1についても検証した。
図8は、等価粘性減衰定数(heq)と第1バネ部材のバネ定数K1との関係を示すグラフである。
図8は、バネ定数K1の所定値に対して適用されるバネ部材の形状と材質(剛性率(せん断弾性率))の関係から算出したものである。なお、等価粘性減衰定数とは、建物のエネルギー吸収能力を示す数値である。
図8によれば、1.5kN/mm―7.5kN/mmにおいて、等価粘性減衰定数が略15%を超え、エネルギー吸収能力が高くなることがわかる。バネ定数K1の等価粘性減衰定数が15%を超えるあたりから制振の効果が発揮されるためである。
【0053】
これらより、本実施形態におけるバネ定数K1とK2の特定が、剛性の確保及びエネルギー吸収において、非常に効果的であることがわかる。
【0054】
次に発明者は、壁倍率1.0の第1バネ部材S1のバネ定数K1と第2バネ部材S2のバネ定数K2の関係を確認した。
図9にその関係を示す。同様に、壁倍率1.0〜2.5の時のバネ定数(K1、K2)の関係も求めた。
図10にその関係を示す。
【0055】
また、バネ定数(K1、K2)の関係において、第1バネ部材S1が主としてエネルギーを吸収し、第2バネ部材S2が主として剛性の確保と、強いエネルギーが入力された場合にエネルギーの吸収を行う機能を発揮することから、このエネルギー吸収機構Sにおいては、K1<K2であることが必要となる。
【0056】
このことから、
図9のグラフにより、壁倍率1.0の場合、第1バネ部材S1のバネ定数K1は1.78kN/mm以上、3.56kN/mm以下であり、第2バネ部材S2のバネ定数K2は3.56kN/mm以上であることが確認できた。
【0057】
同様に、
図10のグラフにより、壁倍率1.0〜2.5の場合、第1バネ部材S1のバネ定数K1の下限値、上限値を確認した。
図11の表に壁倍率1.0〜2.5の場合の第1バネ部材S1のバネ定数K1の下限値、上限値を示す。
【0058】
壁倍率1.0と認定する範囲を1.0以上、1.5未満とし、壁倍率1.5と認定する範囲を1.5以上、2.0未満とし、
図11の表をもとにして、第1バネ部材S1のバネ定数K1の範囲を表1にまとめた。
【0060】
以上より、本実施形態のエネルギー吸収機構Sにおける第1バネ部材S1と第2バネ部材S2のバネ定数の条件を規定することにより、必要な壁倍率を確保しつつ、木造建物に入力されるエネルギーに対する減衰能力及び靭性能力の向上を図れることが確認された。
【0061】
(エネルギー吸収機構の構造)
続き、本実施形態に用いたエネルギー吸収機構Sの構造について説明する。以下の説明において、本実施形態のエネルギー吸収機構Sをダンパ1とし、第2バネ部材S2を剛性部材2とし、第1バネ部材S1を弾性部材3として説明する。なお、この構造は一例であり、他の形状を用いてもよく、本発明はこの構造に限定されない。
【0062】
図12は、
図1の模式図における接合部の拡大図であり、本実施形態に係るエネルギー吸収機構Sの一例としてダンパ1を用い、ダンパ1を木造建物の柱及び筋交いに取り付けた状態を示す斜視図である。
図13(a)(b)は、同正面図、同側面図である。
【0063】
図12、
図13(a)(b)に示すように、ダンパ1は、柱材100と、これに対し傾斜する方向に延びる筋交い102との間に取り付けられる。具体的には、柱材100は、水平方向に延びる下側の構造材101(土台101)に突き合わせて接合され、この接合部分において柱材100および土台101に対し筋交い102の端部が当接するように配置され、柱材100と筋交い102との間にダンパ1が取り付けられている。
【0064】
図14(a)及び
図15(a)に示すように、ダンパ1は、剛性部材2と、弾性部材3とを備える。
図14(b)及び
図15(b)に示すように、剛性部材2は、柱材100に固定される板状固定部4と、この板状固定部4に結合部6を介して略90度をなすように連設され筋交い102に固定される筒状固定部5とを有する。なお、結合部6には、ダンパ1の断面二次モーメントを上げるために、リブ加工により凸部9が設けられている。
【0065】
筒状固定部5は、板状固定部4が連設される略矩形状の第1の板部分5aと、第1の板部分5aに対応する大きさを有し第1の板部分5aと平行に延びる第2の板部分5bと、並んで配置され第1及び第2の板部分5a,5bを接続する複数のブリッジ部5cとを有する。これにより、第1及び第2の板部分5a,5b並びにブリッジ5cによって囲まれる、狭い幅Wを有する空隙Cが形成される。なお、第2の板部分5bは、板状固定部4の屈曲方向とは反対側に配置されている。
【0066】
ブリッジ部5cは、略断面逆U字形をして、建物に入力されるエネルギーをその変形により弾性部材3と共に吸収するもので、かかるブリッジ部5cは、
図14(b)及び
図15(b)に示すように、第1の板部分5aの上下部の幅方向中央および幅方向両端に設け
られている。各ブリッジ部5cの幅は、例えばそれぞれ0.5mm以上の幅で、第1の板部分5aの上部あるいは下部の全幅に対し、全体で2〜60%、好ましくは3〜50%、より好ましくは5〜30%の幅に設定されている。このように全体で少なくとも2%〜60%とすることで、建物に入力されるエネルギーをブリッジ部5cによっても吸収することができる。なお、この実施の形態では同じ幅のブリッジ部5cを3つ設けているが、ブリッジ部5cの幅や数は異なっていてもよい。
【0067】
また、例えば巨大地震など大きなエネルギーの入力等何らかの原因によって弾性部材3との接着が剥がれたとき若しくはゴムが破断したときでもブリッジ部5cが塑性変形して残エネルギーを吸収する。つまり、大エネルギーの入力によって弾性部材3の接着が剥がれたとき若しくはゴムが破断したときに、各ブリッジ部5cはフォールトトレランス機構として作用し、塑性変形してエネルギーを吸収し、耐震性能・制振性能の信頼性を高める機能を発揮する。
【0068】
弾性部材3は、筒状固定部5の内部空間内に内在されるだけでなく、筒状固定部5の外表面に表面層を形成している。そして、隣り合うブリッジ部5cの間には、ブリッジ部5cの表面層の表面と面一になるように弾性部材3が設けられ、その部分で前記内部空間内の弾性部材3と、表面層となる弾性部材3とが一体的に結合されている。
【0069】
また、板状固定部4が連設される側とは反対側の、筒状固定部5の端部には、その端面の表面層の表面と面一になるように弾性部材3が設けられ、同様に、その部分で前記内部空間内の弾性部材3と、表面層となる弾性部材3とが一体的に結合されている。つまり、弾性部材3は、筒状固定部5の内部空間内に内在する部分3a(
図16参照)と、外表面に表面層として設けられる部分3bとが、筒状固定部5の端部に設けられる部分3cと、ブリッジ部5cの間に設けられる部分3dとによって一体的に結合されている。
【0070】
その結果、弾性部材3は、筒状固定部5の周囲を取り囲み、筒状固定部5が外部から見えないように筒状固定部5全体を被覆していることになる。なお、筒状固定部5の外表面及び内表面を含めて、弾性部材3の筒状固定部5への接触部分は、筒状固定部5に接着され、筒状固定部5と弾性部材3とは一体化されることとなる。
【0071】
このように、筒状固定部5の内部空間内に内在する部分3aと、外表面に表面層として設けられる部分3bとが、ブリッジ部5cの間に設けられる部分3dによって結合され一体となっているので、弾性部材3と筒状固定部5との結合力が強固になっている。さらに、筒状固定部5の端部に設けられる部分3cによっても結合されるようにしているので、弾性部材3と筒状固定部5との結合力がより強固になっている。
【0072】
剛性部材2の板状固定部4には、その板状固定部4を複数の第1の固定具7(例えば木ねじ)により柱材100に固定するための複数の取付孔4aが開設されている。
【0073】
また、このダンパ1の弾性部材3は一例として加硫成形により成型されており、筒状固定部5の第1の板部分5aには、筋交い102に固定するために用いる第1の貫通孔5dに加えて、加硫成形時に、前記内部空間内に弾性部材3を流入するための第2の貫通孔5eが形成されている。第2の板部分5bにも、第1の板部分5aの外側から複数の第2の固定具8(例えば木ねじ)により筋交い102に固定するために用いる第3の貫通孔5fに加えて、加硫成形時に、前記内部空間内に弾性部材3が流入するための第4の貫通孔5gが形成されている。
【0074】
そして、
図16に示すように、第1の板部分5aの外側から、複数の第2の固定具8により第2の板部分5bを筋交い102に固定する。なお、第1及び第2の固定具7,8と
しては、それぞれ木ねじの代わりに釘などを用いてよい。
【0075】
また、第2の貫通孔5e及び第4の貫通孔5gに充填される減衰材部分によっても、筒状固定部5の内部空間内に内在する部分3aと、外表面に表面層として設けられる部分3bとが結合されているので、この部分によっても弾性部材3と筒状固定部5との結合力が高められている。
【0076】
(変形例)
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。例えば、前述したダンパ1のほか、本実施形態のエネルギー吸収機構Sは、次のようにして実施することができる。
【0077】
本実施形態の
図1では、筋交いの両端部にエネルギー吸収機構Sを設けているが、一方端部のみにエネルギー吸収機構Sを取り付ける構成としてもよい。その場合、エネルギー吸収機構Sが設けられていない他方端部においては、筋交い102と、柱材100と構造材101との固定は、例えばボルト締結などバネ値の高い固定方法を用いる。一方端部のエネルギー吸収機構Sを効かせるためである。
【0078】
また、
図17(a)(b)に示すように、第2の板部分5b’を、第1の板部分5a’の、板状固定部4が設けられている側とは反対側から板状固定部4の屈曲方向と同じ側あるいは反対側にブリッジ部5c’を介して屈曲させる構造にしてもよい。この場合、第2の板部分のブリッジ部5c’が設けられている部分と反対側は板状固定部4に接触するようにしているが、一部を差し込む結合構造にしてもよい。
【0079】
また、
図18に示すように、板状固定部4は、柱材100だけに固定されるようにしているが、柱材100に加えて、土台101にも固定される板状固定部4Aをさらに設けることもできる。この場合、板状固定部4と板状固定部4Aとは,90°の角度をなしている。
【0080】
また、
図19に示すように、筒状固定部5の内部空間は、ブリッジ部5cに対応する部分について、隣り合うブリッジ部5cの間も含め、弾性部材3が設けられず、空隙Cとする構成としてもよい。
【0081】
また、図示しないが、弾性部材3の表面層を備えず、かつ、剛性部材2のブリッジ部を備えない構成としてもよい。すなわち、別体で構成された一対の板状の剛性部材と、これらに挟持される板状の弾性部材よりなるエネルギー吸収機構である。
【0082】
また、剛性部材2には金属板を用いているが、FRPなどの合成樹脂板などを用いることも可能である。弾性部材3には、高減衰のゴムを用いているが、ポリウレタンゴム、ブチルゴムなどの他の粘弾性体、天然ゴムなどの弾性体を用いてよい。
【0083】
(その他の実施形態)
次に、上記の実施形態とは別の実施形態A1〜A3について説明する。これら実施形態A1〜A3と上記実施形態との主な相違点は、筋交い102と、柱材100及び/又は構造材101との間にクリアランスが生じるようにダンパ1を設置している点である。
【0084】
実施形態A1は、
図20又は
図21に示すように、筋交い102と、構造材101との間にクリアランスが生じるようにダンパ1を設置したものである。実施形態A2は、
図22又は
図23に示すように、筋交い102と、柱材100との間にクリアランスが生じる
ようにダンパ1を設置したものである。実施形態A3は、
図24又は
図25に示すように、筋交い102と、柱材100及び構造材101との間にクリアランスが生じるようにダンパ1を設置したものである。これらの構造によれば、筋交いの圧縮及び引張りのいずれの方向にもダンパ1を効かせることができ、地震などの揺れによるエネルギーを効率良く吸収する。
【0085】
また、
図26〜
図28に示す構造は、実施形態A1〜A3の変形例であり、これらのクリアランスに別途エネルギー吸収材10を配したものである。この構成によれば、建物の揺れをエネルギー吸収材10によって、さらに吸収することができる。
【0086】
また、
図29に示す構造は、さらに別の実施形態Bである。この実施形態Bと上記実施形態との主な相違点は、筋交いの構造である。実施形態Bの筋交い202は、ほおづえ型の筋交いであり、柱材100と構造材101との接合部に設置されている。そして、2つのダンパ1が、筋交い202の各端部と、柱材100又は構造材101との間に、それぞれ固定されていて、建物の揺れを吸収する。なお、筋交い202の各端部と、柱材100又は構造材101とは当接している構造でもよいし、これらの間にクリアランスを設ける構造としてもよい。さらに、このクリアランスに別途エネルギー吸収材10を配してもよい。
【0087】
また、
図30に示す構造は、さらに別の実施形態Cである。この実施形態Cと上記実施形態との主な相違点は、筋交いの構造である。実施形態Cの筋交い302は、K型の筋交いであり、一方の柱材100の中央部付近から、他方の柱材100と構造材101との各接合部に向けてそれぞれのびる筋交いである。そして、ダンパ1が、筋交い302の一方端部と、一方の柱材100との間に取り付けられている。また、ダンパ1は、筋交い302の他方端部と、他方の柱材100と構造材101との間にも取り付けられている。なお、筋交い302の各端部と、柱材100又は構造材101とは当接している構造でもよいし、これらの間にクリアランスを設ける構造としてもよい。さらに、このクリアランスに別途エネルギー吸収材10を配してもよい。
【0088】
また、
図31又は
図32に示す構造は、さらに別の実施形態Dである。この実施形態Dと上記実施形態との主な相違点は、筋交いの有無である。実施形態Dは、筋交いの代わりに壁材402を用いていて、一対の柱材100と一対の構造材101とで構成される面に壁材402が取り付けられた構造である。そして、ダンパ1が、壁材402と、一対の柱材100と一対の構造材101とが接合される4隅に取り付けられている。なお、ダンパ1は、4隅の接合部以外にも、壁材402と柱材100との間や、壁材402と構造材101との間などに取り付けられる構造でもよい。
【0089】
<第2実施形態>
(エネルギー吸収機構の構造)
次に、上記した実施形態とはまた別の実施形態について説明する。この実施形態は、上記したものとエネルギー吸収機構Sの構造が異なる。すなわち、ダンパ1とは別の構造のダンパ20である。以下、この実施形態のダンパ20の構造について説明する。
【0090】
図33は、ダンパ20を示す模式図である。
図33に示すように、ダンパ1と同様、ダンパ20は、柱材100と、これに対し傾斜する方向に延びる筋交い102との間に取り付けられる。上記したダンパ1と大きく異なる点は、ダンパ20が、ゴムを使用せず、金属のみを用いてバネ定数の異なる部分を設けた構造である点である。ダンパ20は、金属板が加工されて形成され、バネ定数の異なる第1バネ部21と、第2バネ部22と、板状固定部23とを備える。
【0091】
板状固定部23は、柱材100にネジ等で固定される。第2バネ部22は、板状固定部23から略90度折り曲げられて連設されており、筋交い102の方向に延在し、筋交い102にネジ等で固定される。第1バネ部21は、第2バネ部22と同一面上に連設され、筋交い102と反対面に山を成すように折り曲げられていて、一部が切り欠かれている。
【0092】
また、第2バネ部22は、板状固定部23に続く矩形状の部分と、そこから第1バネ部21の一方端部に続き、第1バネ部21を超えて、第1バネ部21の他方端部に続く部分とを有する。
【0093】
これにより、第1バネ部21は、第2バネ部22に比べてバネ定数が小さくなっていて、振動を吸収する。一方、第2バネ部22はバネ定数が高く剛性が高い。これらの組み合わせにより、剛性と吸収性を兼ね備え、振動に対して効果的なダンパとなる。
【0094】
次に、ダンパ20の機構について説明する。
図39(a)に示すように、ダンパ20は、振動が生じると、山折り状の第1バネ部21が変形することで振動を吸収する。なお、振動が大きい場合は、第2バネ部22がきくこととなる。
【0095】
なお、
図40(a)に示すように、ダンパ20は、第1バネ部21を覆うように、ゴム部材で被覆された構造としてもよい。ゴム部材を被覆することで、バネ定数が上昇し、耐振動性が向上する。すなわち、金属のみの場合よりも、大きい振動に対応可能となる。
【0096】
(変形例)
また、
図34にダンパ20の変形例を示す。
図34に示すように、ダンパ20が板状固定部23により柱材のみに固定されるのに対し、ダンパ30は、2つの板状固定部33、34を備え、柱材100及び横架材(土台)101にネジ等により固定される構造である。
【0097】
また、
図35に示すように、ダンパ40は、ダンパ20の第2バネ部22が板状固定部23に続く部分が矩形状であるのに対し、第2バネ部42が三角形状で構成されている。そして、第2バネ部42の三角形状の斜辺から、山状に折り曲げられた第1バネ部41が続く構造である。なお、ダンパ30及びダンパ40も、第1バネ部31、41がゴム部材で被覆された構造としてもよい。
【0098】
(その他のエネルギー吸収機構)
次に、上記したダンパとは別の構造のダンパについて説明する。
図36に示す、ダンパ50は、金属板が加工されて形成され、バネ定数の異なる第1バネ部51と、第2バネ部52と、板状固定部53とを備える。
【0099】
板状固定部53は、柱材100にネジ等で固定される。第2バネ部52は、板状固定部53から略90度折り曲げられて連設されており、筋交い102の方向に延在している。また、第2バネ部52は、板状固定部53に続く三角形状の部分と、三角形状の斜辺に続く第1バネ部51を超えて、第1バネ部51の端部に続く部分とを有する。
【0100】
第1バネ部51は、第2バネ部52の三角形状の斜辺から続いていて、板状の第2バネ部の両面に突出するように、台形状に折り曲げられて構成されている。具体的には、板状の金属板に切り込みが設けられ、第2バネ部52の面に対して表面側と裏面側に交互に突出するように形成されている。そして、第1バネ部51の筋交い側に突出した一方の面が、筋交い102にネジ等で固定されている。
【0101】
これにより、第1バネ部51は、第2バネ部52に比べてバネ定数が小さくなっていて、振動を吸収する。一方、第2バネ部52はバネ定数が高く剛性が高い。これらの組み合わせにより、剛性と吸収性を兼ね備え、振動に対して効果的なダンパとなる。
【0102】
次に、ダンパ50の機構について説明する。
図39(b)に示すように、ダンパ50は、振動が生じると、台形状の第1バネ部51が変形することで振動を吸収する。なお、振動が大きい場合は、第2バネ部52がきくこととなる。
【0103】
また、
図40(b)に示すように、ダンパ50は、第1バネ部51を覆うように、ゴム部材で被覆された構造としてもよい。ゴム部材を被覆することで、バネ定数が上昇し、耐振動性が向上する。すなわち、金属のみの場合よりも、大きい振動に対応可能となる。
【0104】
次に、ダンパ50とはまた別の構造のダンパ60について説明する。
図37に示すダンパ60は、ダンパ50と、主として第1バネ部の構造が異なる。ダンパ60の第1バネ部61は、第2バネ部62の面から、筋交い102と反対面側に突出する。第1バネ部61は、第2バネ部62から垂直に立ち上がり、そこから第2バネ部62の面と平行に折り曲げられて延在し、そこからさらに第2バネ部62の面に向けて垂直に折り曲げられ、略直方体が突出した構造となっている。そして、この略直方体状の突出部が2つ存在する。
【0105】
また、
図38に示すダンパ70は、ダンパ60が第1バネ部61と第2バネ部62からなる部分が筋交い102に沿った形状で構成されているのに対し、柱材100から真横に伸びる長方形状で構成されている。また、
図40(c)に示すように、ダンパ60及びダンパ70も、第1バネ部61、71がゴム部材で被覆された構造としてもよい。