特許第6912135号(P6912135)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6912135
(24)【登録日】2021年7月12日
(45)【発行日】2021年7月28日
(54)【発明の名称】首掛け型装置装着用の衣服
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/00 20060101AFI20210715BHJP
【FI】
   A41D13/00 102
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2021-44472(P2021-44472)
(22)【出願日】2021年3月18日
【審査請求日】2021年3月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513190830
【氏名又は名称】Fairy Devices株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】久池井 淳
(72)【発明者】
【氏名】木村 浩
(72)【発明者】
【氏名】村西 秀一
(72)【発明者】
【氏名】藤野 真人
(72)【発明者】
【氏名】竹崎 雄一郎
【審査官】 塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−037959(JP,A)
【文献】 特開2017−119928(JP,A)
【文献】 米国特許第10602253(US,B2)
【文献】 米国特許第05212734(US,A)
【文献】 特表2018−503341(JP,A)
【文献】 特開2000−073208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/00−13/12
A41D 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの首元を挟んだ位置に配置可能な2つの腕部を備える首掛け型装置を、前記ユーザの首周りに装着するための衣服であって、
前記2つの腕部を前記ユーザからみて外側に開く方向に付勢した状態で、前記2つの腕部の両方を、前記衣服の本体に保持するための保持手段を備える
衣服。
【請求項2】
前記保持手段は、伸縮部材によって構成されている
請求項1に記載の衣服。
【請求項3】
前記保持手段は、前記腕部が挿通される伸縮性を持つループ部と、前記ループ部を前記衣服の本体に固定するための固定部を有する
請求項1又は請求項2に記載の衣服。
【請求項4】
ユーザの首元を挟んだ位置に配置可能な2つの腕部を備える首掛け型装置を、前記ユーザの首周りに装着するための衣服であって、
前記首掛け型装置は、前記2つの腕部を前記ユーザの首裏に相当する位置にて連結する本体部を有し、
前記本体部は、前記2つの腕部よりも下方に向かって延出する下垂部を含むように構成されており、
前記衣服は、
前記2つの腕部の両方又は少なくともいずれか一方を、前記衣服の本体に保持するための保持手段と、
少なくとも前記本体部の前記下垂部を収納可能な本体収納部を備え
衣服。
【請求項5】
ユーザの首元を挟んだ位置に配置可能な2つの腕部を備える首掛け型装置を、前記ユーザの首周りに装着するための衣服であって、
前記首掛け型装置は、前記2つの腕部を前記ユーザの首裏に相当する位置にて連結する本体部を有し、
前記衣服は、
前記2つの腕部の両方又は少なくともいずれか一方を、前記衣服の本体に保持するための保持手段と、
前記保持手段によって前記腕部が保持された状態において、少なくとも前記本体部を被覆するためのカバーを備える
衣服。
【請求項6】
前記カバーを収納するためのカバー収納部と、前記カバーと前記衣服の本体とを着脱自在に締結するための締結手段との両方又はいずれか一方を、さらに備える
請求項に記載の衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、首掛け型装置を装着するために用いられる衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
本願出願人は、いわゆるウェアラブルデバイスの一種として、装着者の首周りに装着される首掛け型装置を提案している(特許文献1,特許文献2)。本願出願人が提案する首掛け型装置は、ユーザの首元を挟んだ位置に配置可能な2つの腕部を備えており、各腕部にマイクや、カメラ、各種センサなどが搭載されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6786139号公報
【特許文献2】特許第6719140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、首掛け型装置は、ユーザの両肩の上に置くようにして装着することを想定した構造となっているが、ユーザはその装着中に、歩行したり、前屈みになったり、後ろに仰け反ったりするなど、様々な動作を行うことが予想される。そして、ユーザによってこのような動作が行われると、首掛け型装置の装着位置にずれが生じるおそれがある。特に、本願出願人が提案する首掛け型装置は、腕部の先端面にカメラが搭載されており、ユーザの正面側の風景を撮影することを特徴の一つとしたものであるが、首掛け型装置の装着位置がずれてしまうと、ユーザが見ているものとカメラによって撮影した風景が異なるという不具合が発生する。
【0005】
そこで、本発明は、首掛け型装置の装着位置にずれが生じる事態を効果的に抑制することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、首掛け型装置をユーザの首周りに装着するための衣服に関する。「衣服」の種類は、特に制限されず、ユーザの上半身や首周りや頭部などに身に着けられるものであればよい。衣服としては、例えば、ハーネス、ベスト、Tシャツ、襟付きシャツ、カットソー、ジャケット、セーター、カーディガンなどの上半身に着るものの他、マフラー、ストール、ネックウォーマーなどの首周りに着るものや、帽子、サンバイザー、ヘルメットなどの頭部に付けるものも含まれる。また、「首掛け型装置」は、ウェアラブルデバイスの一種であって、マイクや、カメラ、各種センサなどを搭載した電子機器である。首掛け型装置は、ユーザの首元を挟んだ位置に配置可能な2つの腕部を備える。なお、本発明の対象は、首掛け型装置の装着を補助するための衣服であり、首掛け型装置自体は本発明に含まれない。ここで、本発明に係る衣服は、首掛け型装置の2つの腕部の両方又は少なくともいずれか一方を、衣服の本体に保持するための保持手段を備える。「保持手段」は、首掛け型装置をユーザの肩上にただ載置するだけの場合と比較して、比較して首掛け型装置の装着位置のずれが抑制できるものであればよく、首掛け型装置を衣服の本体に着脱自在に保持できる手段であれば特に制限されない。保持手段の例は、ループ部材や、バンド部材、クリップ部材、粘着部材、吊り下げ部材、及び嵌め込み部材が挙げられるが、これらに限られない。また、保持手段としては、例えばマグネット同士、金属とマグネット、面ファスナー(メカニカルファスナー)、ネジとボルトなど、衣服側に備え付けられた部品と首掛け型装置側に備え付けられた部品とが互いに係合する機構を採用することもできる。
【0007】
上記のように、衣服に首掛け型装置の保持手段を設けておき、この衣服をユーザに身に着けさせることで、首掛け型装置の装着位置にずれが生じることを効果的に抑制できる。特に、首掛け型装置の腕部を保持手段によって押さえることで、この腕部に設けられたカメラの撮影ミスやセンサの検知ミスを減らすことが可能となる。
【0008】
本発明に係る衣服において、保持手段は伸縮部材によって構成されていることとしてもよい。伸縮部材によって首掛け型装置の腕部を保持することで、首掛け型装置の着脱が容易になるとともに、首掛け型装置の腕部がユーザの動作に追随しやすくなるため、首掛け型装置を装着することによってユーザの動きが制限されることを抑制できる。
【0009】
本発明に係る衣服において、保持手段は、首掛け型装置の腕部が挿通される伸縮性を持つループ部と、このループ部を衣服の本体に固定するための固定部を有することとしてもよい。このように、ループ部と固定部を別に構成することで、首掛け型装置の着脱がさらに容易になる。また、首掛け型装置の腕部がユーザの動作にさらに追随しやすくなる。
【0010】
本発明に係る衣服において、保持手段は、首掛け型装置の2つの腕部をユーザからみて外側に開く方向に付勢した状態で、2つの腕部の両方を保持するものであることが好ましい。この場合に、保持手段は、2つの腕部を外側に向かって引っ張るように構成されたものであってもよいし、2つの腕部を外側に向かって押し込むように構成されたものであってもよい。首掛け型装置の腕部を外側に開くように付勢することで、これに対抗して首掛け型装置の腕部には内側に閉じようとする力が生じる。このように、腕部を外側に開く力と内側に閉じる力を発生させることで、これらの力に首掛け型装置の荷重の一部又は全部が負担させることができるため、ユーザの両肩に掛かる首掛け型装置の荷重を分散することができる。これにより、首掛け型装置の位置ずれを抑制しつつ、首掛け型装置を装着することによって生じるユーザの負担を軽減することが可能である。
【0011】
首掛け型装置は、2つの腕部をユーザの首裏に相当する位置にて連結する本体部を有する。このとき、首掛け型装置の本体部は、2つの腕部よりも下方に向かって延出する下垂部を含むように構成されていてもよい。この場合に、本発明に係る衣服は、首掛け型装置の本体部全体又は少なくとも下垂部を収納可能な本体収納部を有することが好ましい。このように、首掛け型装置の本体部の全部又は一部(下垂部)を衣服に収納できるようにすることで、首掛け型装置の装着位置のずれの抑制効果がさらに向上する。また、首掛け型装置の本体部には衝撃や水分に弱い電子部品が搭載されていることが想定されるが、その全部又は一部を衣服内に収納することで、首掛け型装置を保護して、故障が発生する事態を抑制できる。
【0012】
本発明に係る衣服は、保持手段によって首掛け型装置の腕部が保持された状態において、首掛け型装置全体又は少なくともその本体部を被覆するためのカバーをさらに備えることが好ましい。このように、衣服にカバーを備え付けておくことで、例えば屋外での作業において急に雨が降り出したような場合でも、首掛け型装置を保護して故障が発生することを防止できる。
【0013】
本発明に係る衣服は、カバーを収納するためのカバー収納部と、カバーと衣服の本体部とを着脱自在に締結するための締結手段との両方又はいずれか一方を、さらに備えることが好ましい。不要な場合には衣服のカバーを収納できるようにしておくことで、衣服の利便性が向上する。また、カバーと衣服本体との締結手段(例えば面ファスナー等)を設けることで、カバーによって首掛け型装置を覆った状態を維持しやすくなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明よれば、首掛け型装置の装着位置にずれが生じる事態を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明に係る衣服の一実施形態を示した正面図である。
図2図2は、本発明に係る衣服の一実施形態を示した背面図であり、一部構造を省略して描画している。
図3図3は、衣服に装着可能な首掛け型装置の一例を示している。
図4図4は、首掛け型装置を衣服に装着した状態を模式的に示している。
図5図5は、衣服に備え付けられたカバーの使用方法を模式的に示している。
図6図6は、衣服に取付可能なポーチの一例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は、以下に説明する形態に限定されるものではなく、以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
【0017】
[1.衣服]
図1及び図2を参照して、本発明に係る衣服の一実施形態として、ハーネス型に構成された衣服1について説明する。ただし、前述したとおり、本発明は、ここに図示したハーネス型の衣服に限定されず、ユーザの上半身や首周りや頭部などに身に着けられるものであれば、あらゆる種類の衣服に適用することができる。
【0018】
図1及び図2に示されるように、本実施形態に係る衣服1は、基本的に、衣服本体10と、この衣服本体10に首掛け型装置を取り付けるのに用いられる左右の保持具20,30とを含む。首掛け型装置の取り付け方の詳細については後述する。
【0019】
衣服本体10は、ユーザが衣服1を身に着けた状態において、ユーザの左肩から左胸部辺りを覆う左前身頃11と、ユーザの右肩から右胸部辺りを覆う右前身頃12と、ユーザの背部を覆うと共にこれらの左右の前身頃11,12を繋ぐ後身頃13とを含んで構成されている。また、左前身頃11は、ユーザの左肩周辺に位置する左肩部11aを有し、右前身頃12は、ユーザの左肩周辺に位置する右肩部12aを有している。この左肩部11aと右肩部12aには、それぞれ左腕保持具20と右腕保持具30が固定されている。また、左右の前身頃11,12は、公知のファスナーによって開閉できる収納部11b,12bを有する。この収納部11b,12bには、首掛け型装置の交換用バッテリーやその他周辺機器など、任意の物を収納できる。また、左右の前身頃11,12には、それぞれ雄バックル11cと雌バックル11dとが取り付けられており、これらの雄バックル11cと雌バックル11dを嵌合することで、衣服1がしっかりとユーザの上半身に装着される。また、左右の前身頃11,12は、後述するベルト40を吊り下げるための係止具11d,12dを取り付けておくこともできる。
【0020】
衣服本体10の後身頃13は、左右方向の中央付近において上縁部分に切り欠き部13aが形成されている。この切り欠き部13aは、後述するように首掛け型装置の近接センサを避けるために形成されたものである。また、図2に示されるように、後身頃13の背面側には、公知のファスナーによって開閉できる本体収納部13bが形成されている。この本体収納部13bには、首掛け型装置100の本体部130を収納できる。また、後身頃13の背面には、挿入孔13cが形成されており、この挿入孔13cは、本体収納部13bの収納空間に繋がっている。例えば、首掛け型装置100の本体部130に接続されたケーブル類を、この挿入孔13cを通じて収納空間から外に出すことができる。また、図1に示されるように、後身頃13の正面側には、カバー収納部14が設けられている。詳しくは後述するが、このカバー収納部14には、雨避け用のカバーが収納されている。
【0021】
また、この衣服1は、さらにベルト40を含む。ベルト40は、ユーザの腰回りに巻き付けられる帯状の部材であり、ユーザの上半身に対する衣服1の装着状態をさらに強固にする。ベルト40の腹部側の端部には、雄バックル41と雌バックル42が設けられており、これらのバックル41,42を嵌合させることで、ベルト40の帯状部分がユーザの腰回りに巻き付くようになる。また、ベルト40にも係止具43,44が設けられており、これらを左右の前身頃11,12に設けられた係止具11d,12dに係合させることで、ベルト40の帯状部分が左右の前身頃11,12に吊り下げられた状態となる。
【0022】
[2.首掛け型装置]
続いて、図3を参照して、本実施形態に係る衣服1に取り付けることのできる首掛け型装置100の一例について説明する。この首掛け型装置100については、特許文献1(特許第6786139号公報)及び特許文献2(特許第6719140号公報)に記載された構成を参照できる。この首掛け型装置100は、複数の集音部(マイク)を備えていることから、装着者又はその対話者の発した音声を録音することができる。また、この首掛け型装置100は、撮像部(カメラ)を備えていることから、ユーザに装着された状態でその前方の風景を撮像することができる。以下では、主に首掛け型装置100のハードウェアについて説明する。
【0023】
図3に示されるように、首掛け型装置100を構成する筐体は、左腕部110、右腕部120、及び本体部130を備える。左腕部110と右腕部120は、本体部130の左端と右端から前方に向かって延出しており、首掛け型装置100は、平面視したときに装置全体として略U字をなす構造となっている。首掛け型装置100を装着する際には、本体部130を装着者の首裏に接触させ、左腕部110と右腕部120を装着者の首横から胸部側に向かって垂らすようにして、装置全体を首元に引っ掛ければよい。首掛け型装置100の筐体内には、各種の電子部品が格納されている。
【0024】
左腕部110と右腕部120には、複数の集音部(マイク)141〜145が設けられている。各集音部141〜145としては、ダイナミックマイクやコンデンサマイク、MEMS(Micro-Electrical-Mechanical Systems)マイクなど、公知のマイクロホンを採用すればよい。集音部141〜145は、主に装着者とその対話者の音声を取得することを目的として配置されている。図1に示されるように、左腕部110に第1集音部141と第2集音部142を設け、右腕部120に第3集音部143と第4集音部144を設けることが好ましい。また、任意の要素として、左腕部110と右腕部120に、一又は複数の集音部を追加で設けることとしてもよい。図1に示した例では、左腕部110に、さらに第5集音部145を設けることとしている。これらの集音部141〜145によって取得した音信号は、本体部130内に設けられた制御部(メインCPU)へ伝達されて所定の解析処理が行われる。また、本体部130には、このような制御部を含む電子回路やバッテリーなどの制御系が内装されている。
【0025】
左腕部110には、さらに撮像部160が設けられている。具体的には、左腕部110の先端面112に撮像部160が設けられており、この撮像部160によって装着者の正面側の静止画像や動画像を撮影することができる。撮像部160としては一般的なデジタルカメラを採用すればよい。撮像部160は、例えば、撮影レンズ、メカシャッター、シャッタードライバ、CCDイメージセンサユニットなどの光電変換素子、光電変換素子から電荷量を読み出し画像データを生成するデジタルシグナルプロセッサ(DSP)、及びICメモリで構成される。また、撮像部160は、撮影レンズから被写体までの距離を測定するオートフォーカスセンサ(AFセンサ)と、このAFセンサが検出した距離に応じて撮影レンズの焦点距離を調整するための機構とを備えることが好ましい。また、撮像部160は、いわゆる広角レンズを備えるものであることが好ましい。撮像部160によって取得された画像は、本体部130内の制御部に伝達され、画像データとして記憶される。また、撮像部160によって取得された画像をインターネットでサーバ装置へ送信することとしてもよい。
【0026】
右腕部120には、さらに非接触型のセンサ部170が設けられている。センサ部170は、主に首掛け型装置100の正面側における装着者の手の動きを検知することを目的として、右腕部120の先端面122に配置されている。センサ部170の検知情報は、撮像部160の起動や、撮影の開始、停止など、主に撮像部160の制御に利用される。例えば、センサ部170は、装着者の手などの物体がそのセンサ部170に近接したことを検知して撮像部160を制御することとしてもよいし、あるいはセンサ部170の検知範囲内で装着者が所定のジェスチャーを行ったことを検知して撮像部160を制御することとしてもよい。センサ部170の例は、近接センサ又はジェスチャーセンサである。近接センサは、例えば装着者の手指が所定範囲まで近接したことを検知する。近接センサとしては、光学式、超音波式、磁気式、静電容量式、又は温感式などの公知のものを採用できる。ジェスチャーセンサは、例えば装着者の手指の動作や形を検知する。ジェスチャーセンサの例は光学式センサであり、赤外発光LEDから対象物に向けて光を照射し、その反射光の変化を受光素子で捉えることで対象物の動作や形を検出する。また、センサ部170での検知情報を、撮像部160、集音部141〜145、及び/又は制御部(メインCPU)の起動に利用することも可能である。なお、本実施形態において、左腕部110の先端面112に撮像部160を配置し、右腕部120の先端面122にセンサ部170を配置することとしているが、撮像部160とセンサ部170の位置を入れ替えることも可能である。
【0027】
上記した左腕部110と右腕部120は、装着者の首裏に当接する位置に設けられた本体部130によって連結されている。この本体部130には、プロセッサやバッテリーなどの電子部品が内装されている。例えば、本体部130には、回路基板やCPU等の制御装置、メモリやストレージ等の記憶装置、通信装置、各種のセンサ装置が内装される。本体部130を構成する筐体は、図1に示されるように、ほぼ平坦な形状となっており、平面状(板状)の回路基板やバッテリーを格納することができる。また、本体部130は、左腕部110及び右腕部120よりも下方に向かって延出する下垂部131を有する。本体部130に下垂部131を設けることで、制御系回路を内装するための空間を確保している。また、本体部130には制御系回路が集中して搭載されている。このため、首掛け型装置100の全重量を100%とした場合に、本体部130の重量は40〜80%又は50%〜70%を占める。このような重量の大きい本体部130を装着者の首裏に配置することで、装着時における安定性が向上する。また、装着者の体幹に近い位置に重量の大きい本体部130を配置することで、装置全体の重量が装着者に与える負荷を軽減できる。
【0028】
また、本体部130の内側(装着者側)には近接センサ180が設けられている。近接センサ180は、物体の接近を検出するためのものであり、首掛け型装置100が装着者の首元に装着されると、その首元の接近を検出することとなる。このため、近接センサ180が物体の近接を検出している状態にあるときに、各集音部141〜145、撮像部160、及びセンサ部170などの機器をオン(駆動状態)とし、近接センサ180が物体の近接を検出していない状態にあるときには、これらの機器をオフ(スリープ状態)、もしくは起動できない状態とすればよい。これにより、バッテリーの電力消費を効率的に抑えることができる。なお、近接センサ180としては公知のものを用いることができるが、光学式のものが用いられる場合には、近接センサ180の検出光を透過するために、本体部筐体に検出光を透過する透過部を設けるとよい。近接センサ180としては、光学式、超音波式、磁気式、静電容量式、又は温感式などの公知のものを採用できる。
【0029】
また、左腕部110には、操作部150が設けられている。操作部150は、装着者による操作の入力を受け付ける。操作部150としては、公知のスイッチ回路又はタッチパネルなどを採用することができる。操作部150は、例えば音声入力の開始又は停止を指示する操作や、装置の電源のON又はOFFを指示する操作、スピーカの音量の上げ下げを指示する操作、その他首掛け型装置100の機能の実現に必要な操作を受け付ける。
【0030】
また、図示は省略しているが、本体部130の外側(装着者の反対側)には放音部(スピーカ)が設けられている。放音部は、本体部130の外側に向かって音を出力するように配置されている。
【0031】
また、首掛け型装置100の構造的特徴として、左腕部110と右腕部120は、本体部130との連結部位の近傍にフレキシブル部111,121を有する。フレキシブル部111,121は、ゴムやシリコーンなどの可撓性材料で形成されている。このため、首掛け型装置100の装着時に、左腕部110及び右腕部120が装着者の首元や肩上にフィットしやすくなる。なお、フレキシブル部111,121にも、各集音部141〜145や撮像部160等を本体部130内の制御部に接続する配線が挿通されている。
【0032】
[3.衣服への首掛け型装置の取り付け方]
続いて、図4を参照して、衣服1に首掛け型装置100を取り付ける方法について説明する。前述した通り、衣服本体10の左前身頃11の左肩部11aと右前身頃12の右肩部12aには、それぞれ左腕保持具20と右腕保持具30が取り付けられている。本実施形態において、これら左右の保持具20,30は、伸縮性を有するループ部21,31と、このループ部21,31を衣服本体10に固定するための固定部22,32を有する。つまり、保持具20,30は、固定部22,32が衣服本体10に対して不動状態となるように縫い付けられているが、ループ部21,31は衣服本体10に対しては固定されていない自由部分となっている。本実施形態に係るループ構造付きの保持具20,30としては、ゴムやシリコーンなどの公知の伸縮性材料を用いればよい。
【0033】
そして、首掛け型装置100を衣服1に取り付ける際には、左右の保持具20,30のループ部21,31に、首掛け型装置100の左右の腕部110,120を挿通させる。すなわち、左腕保持具20のループ部21に首掛け型装置100の左腕部110を挿し込むとともに、右腕保持具30のループ部31に首掛け型装置100の右腕部120を差し込むこととなる。これにより、首掛け型装置100は、衣服1に取り付けられた状態となる。ユーザは、この衣服1を着用することで、首掛け型装置100の装着位置のずれを抑制しつつ、首掛け型装置100を安定的に使用することができる。
【0034】
さらに具体的に説明すると、左右の保持具20,30の固定部22,32は、装着者から見て、ループ部21,31よりも外側に設けられている。つまり、ループ部21,31と固定部22,32は横並びに配置されており、ループ部21,31よりも外側に固定部22,32が設けられている。これにより、ループ部21,31に左右の腕部110,120の差し込んだ状態では、このループ部21,31の伸縮性によって、左右の腕部110,120は、装着者からみて外側に向かって開くように付勢されることとなる。なお、図4では、左右の保持具20,30が左右の腕部110,120を引っ張る方向を黒色の矢印で示している。一方で、保持具20,30によって左右の腕部110,120が外側に開く方向に付勢されると、これに対する応力として、左右の腕部110,120には内側に向かって閉じようとする力が働く。図4では、この応力を白色の矢印で示している。このように、左右の腕部110,120に外向きの力と内向きの力を発生させることで、装着者に掛かる首掛け型装置100の荷重が軽減されることとなる。このように、本実施形態では、保持具20,30を利用して首掛け型装置100の荷重を分散させることで、装着者に与える負担を軽減することとしている。
【0035】
また、前述のとおり、首掛け型装置100の本体部130の内側には近接センサ180が設けられているが、このセンサが衣服1の後身頃13によって覆われてしまうと、首掛け型装置100がユーザによって装着されているか否かに関わらず、近接センサ180が常に物体の近接を検知し続けることになり誤作動を惹き起こす。このため、図4に示したように、本実施形態では、衣服1の後身頃13の上縁部分に切り欠き部13aを形成して、近接センサ180を露出させることとしている。これにより、首掛け型装置100が取り付けられた衣服1をユーザが着用したときに、近接センサ180によってユーザの近接状態を正常に検知できるようになる。
【0036】
また、図2に示したように、衣服1の後身頃13の背面側には、本体収納部13bが設けられている。後身頃13の背面側に設けられたファスナーを開封して、この本体収納部13bに、首掛け型装置100の本体部130を挿し込むことが可能である。本実施形態では、本体部130の下垂部131が、後身頃13の本体収納部13b内に挿し込まれる。これにより、首掛け型装置100の本体部130を外部からの衝撃から保護することできる。また、この本体部130を後身頃13の本体収納部13b内に挿し込むことで、首掛け型装置100の装着位置もずれにくくなる。
【0037】
[4.オプション部品]
続いて、図5及び図6を参照して、本発明に係る衣服1に任意に付加することのできるオプション部品の一例について説明する。
【0038】
図5は、雨避け用のカバー50を示している。図5に示されるように、衣服1の後身頃13の正面側には、カバー収納部14が設けられており、その内部にカバー50が収納されている。カバー50は、防水性のプラスチックフィルム等で形成されており、基端側がカバー収納部14内に固定され、先端側がカバー収納部14から延出して自由に広げることができるようになっている。
【0039】
また、カバー50の先端側には、例えば面ファスナーのフック材51が一又は複数箇所に取り付けられている。一方で、衣服1の後身頃13の正面側の下方には、このフック材51と係合する面ファスナーのループ材15が設けられている。そして、図5に示したように、カバー50の先端側をカバー収納部14から引き出した後、後身頃13の背面側を通って、このカバー50の先端側に取り付けられたフック材51を、後身頃13の正面側に取り付けられたループ材15に係合させる。これにより、衣服1に首掛け型装置100を装着した状態において、このカバー50によって、首掛け型装置100の本体部130を覆うことができる。前述したように、首掛け型装置100の本体部130には電子部品が集約されているため、この本体部130を防水性のカバー50で覆うことで、屋外での作業時に急に雨が降り出したような状況でも、本体部130を雨から守って、故障を防ぐことができる。
【0040】
図6は、衣服1に着脱可能なポーチ60を示している。ポーチ60を衣服1に装着することで、収納容積を拡張することできる。図6に示したポーチ60は、図1に示した衣服1に装着することを想定して作成されたものである。具体的には、装着者からみて、ポーチ60の右端部に取り付けられた雄バックル61を、ベルト40の雌バックル42に嵌合させる。また、ポーチ60の左端部に取り付けられた雌バックル62を、ベルト40の雄バックル41に嵌合させる。さらに、ポーチ60の上端部に取り付けられた2つの係止具63,64を、左前身頃11の係止具11dと右前身頃12の係止具12dにそれぞれ係合させることにより、このポーチ60を左右の前身頃11,12に吊り下げる。このようにして、図6に示したポーチ60を、衣服1に合体させて、装着者の腹部前辺りに配置することが可能である。
【0041】
なお、衣服1のオプション部品は、ここに挙げたものに限られず、適宜公知のものを採用することが可能である。
【0042】
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以上、本願明細書では、本発明の内容を表現するために、図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
【符号の説明】
【0043】
1…衣服 10…衣服本体
11…左前身頃 12…右前身頃
13…後身頃 14…カバー収納部
15…ループ材(面ファスナー) 20…左腕保持具(保持手段)
21…ループ部 22…固定部
30…右腕保持具(保持手段) 31…ループ部
32…固定部 40…ベルト
50…カバー 51…フック材(面ファスナー)
60…ポーチ 100…首掛け型装置
110…左腕部 120…右腕部
130…本体部 141〜145…集音部
150…操作部 160…撮像部
170…センサ部 180…近接センサ
【要約】
【課題】首掛け型装置の装着位置にずれが生じることを抑制する。
【解決手段】本発明は、ユーザの首元を挟んだ位置に配置可能な2つの腕部を備える首掛け型装置をユーザの首周りに装着するための衣服1である。衣服1は、首掛け型装置が持つ2つの腕部の両方又は少なくともいずれか一方を、衣服本体10に保持するための保持手段20,30を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6