(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
<スチレン系樹脂組成物>
本発明のスチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂(A)99.90〜65質量%及び、下記の一般式(1)で表されるジアセタール化合物(B)0.10〜35質量%を含む。
【化3】
[但し、式中R
1〜R
10は、同一または異なって、それぞれ水素原子もしくは炭素数が1〜20のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、カルボキシ基、ハロゲン基、フェニル基であり、R
11は、水素原子もしくは炭素数が1〜20のアルキル基であり、nは0、1または2である。]
ここで、ジアセタール化合物(B)は、0.20〜10質量%であることが好ましく、0.30〜8質量%であることが更に好ましい。ジアセタール化合物(B)が0.10質量%未満の場合、押出発泡体の気泡セルの微細化効果が得られない。また、ジアセタール化合物(B)が35質量%を超える場合、強度や押出発泡体の発泡倍率が低下するため、好ましくない。
【0011】
本発明のスチレン系樹脂組成物の200℃、49N荷重の条件にて測定したメルトマスフローレート(MFR)は、0.1〜30g/10分が好ましく、0.5〜25g/10分であることが更に好ましい。メルトマスフローレート(MFR)が0.1g/10分未満では、押出発泡体の生産性が悪化し、30g/10分を超えると、発泡剤の量を増やした際に、ダイス内の圧力を高く維持することが難しくなり、発泡倍率が上がらない場合がある。
【0012】
本発明のスチレン系樹脂組成物のビカット軟化温度は95〜130℃が好ましく、更に好ましくは100〜125℃である。ビカット軟化温度が95℃未満の場合、押出発泡体の耐熱性が不十分となり、ビカット軟化温度が130℃を超える場合、押出発泡体の成形加工性が低下する。
【0013】
<スチレン系樹脂(A)>
本発明のスチレン系樹脂(A)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)が10万〜70万であることが好ましく、15万〜60万であることが更に好ましい。Mwが10万未満では押出発泡体の強度が低下し、Mwが70万を超える場合には流動性が低下するため好ましくない。スチレン系樹脂(A)のMwは、重合工程の反応温度、滞留時間、重合開始剤の種類及び添加量、連鎖移動剤の種類及び添加量、重合時に使用する溶媒の種類及び量によって調整することができる。
【0014】
本発明のスチレン系樹脂(A)は、Z平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)の比(Mz/Mw)が1.5〜3.5であることが好ましく、1.7〜3.0であることが更に好ましい。Z平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)の比(Mz/Mw)が1.5未満では、発泡倍率が低下する場合があり、(Mz/Mw)が3.5を超える場合には、押出発泡体の成形加工性が悪化する。
【0015】
本発明のスチレン系樹脂(A)は原料としてスチレンモノマーを必須成分(必須の含有成分)とするが、スチレンの単独重合体の他に、スチレンと共重合可能なビニル系モノマーを50質量%以下の割合で含んでいても良い。ビニル系モノマーの例としてはαメチルスチレンやp−メチルスチレン等の置換スチレンやアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル等のアクリル系モノマー、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系モノマー、無水マレイン酸等が挙げられる。
【0016】
本発明のスチレン系樹脂(A)の重合方法としては塊状重合法、溶液重合、懸濁重合法等の公知のスチレン重合法が挙げられる。また、溶媒として例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、及びキシレン等のアルキルベンゼン類やアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素等が使用できる。反応器の様式としては、完全混合型反応器、プラグフロー反応器、ループ型反応器等を組み合わせた連続重合方式が好適に用いられる。
【0017】
本発明のスチレン系樹脂(A)を製造する際には、重合反応の制御の観点から、必要に応じて重合溶媒、有機過酸化物等の重合開始剤や脂肪族メルカプタン等の連鎖移動剤を使用することができる。
【0018】
重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましく、公知慣用の例えば、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ジ(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ジ(t−アミルパーオキシ)シクロヘキサン等のパーオキシケタール類、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシアセテート、t−アミルパーオキシイソノナノエート等のアルキルパーオキサイド類、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート等のパーオキシエステル類、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ポリエーテルテトラキス(t-ブチルパーオキシカーボネート)等のパーオキシカーボネート類、N,N’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、N,N’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、N,N’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、N,N’−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等が挙げられ、これらの1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0019】
連鎖移動剤としては、例えば、脂肪族メルカプタン、芳香族メルカプタン、ペンタフェニルエタン、α−メチルスチレンダイマー及びテルピノーレン等の単官能連鎖移動剤や、エチレングリコール、テトラエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール水酸基をチオグリコール酸、またはメルカプトプロピオン酸でエステル化した多官能メルカプタン類等の多官能連鎖移動剤が挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
<ジアセタール化合物(B)>
本発明のジアセタール化合物(B)は、下記の一般式(1)で表される。
【化4】
【0021】
但し、式中R
1〜R
10は、同一または異なって、それぞれ水素原子もしくは炭素数が1〜20のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、カルボキシ基、ハロゲン基、フェニル基であり、R
11は、水素原子もしくは炭素数が1〜20のアルキル基であり、nは0、1または2である。上記一般式(1)の中でも、R
1〜R
10は、それぞれ水素原子もしくは炭素数が1〜20のアルキル基であり、R
11は、水素原子もしくは炭素数が1〜20のアルキル基であり、nは1であることが好ましい。
【0022】
上記一般式(1)のジアセタール化合物(B)の具体例としては、1,3:2,4−ビス−O−(ベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(4−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(4−エチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(4−イソプロピルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(4−n−プロピルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(4−n−ブチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,5−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(2,4,5−トリメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(4−メチルオキシカルボニルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフタレン)−1−メチレン]−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフタレン)−1−メチレン]−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−4−メチルベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−4−メチルベンジリデン−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−(2,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3−O−(2,4−ジメチルベンジリデン)−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−(3,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3−O−(3,4−ジメチルベンジリデン)−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール等のソルビトール系化合物や、1,2,3−トリデオキシ−4,6:5,7−ビス−O−(4−n−プロピルベンジリデン)−ノニトール等のノニトール系化合物等が挙げられ、これらの1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
<スチレン系樹脂組成物の製造方法>
本発明のスチレン系樹脂組成物の製造方法については、特に制限されるものではなく、公知のブレンド方法を用いることができる。例えば、タンブラーやヘンシェルミキサー、ホッパーブレンダ―等でドライブレンドし、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、バンバリーミキサー、ニーダー等で溶融コンパウンドする方法が挙げられ、ジアセタール化合物(B)を所定の配合量より多く調整したマスターバッチをあらかじめ作成しておき、押出発泡体の製造時にスチレン系樹脂(A)とブレンドする方法も採用することもできる。また、溶融コンパウンド時の樹脂温度は、ジアセタール化合物(B)の融点以上の温度とすることが好ましい。ジアセタール化合物(B)の融点未満の温度で溶融コンパウンドした場合、スチレン系樹脂(A)中にジアセタール化合物(B)が均一に分散せず、微細発泡効果が得られない場合がある。
【0024】
本発明のスチレン系樹脂組成物には、耐熱性や強度、耐油性を上げる目的で、別の熱可塑性樹脂やゴム補強材を本発明の効果を損なわない範囲で配合する事ができる。
【0025】
熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリL−乳酸、ポリD−乳酸、ポリD、L−乳酸等の脂肪族ポリエステル系樹脂等が挙げられ、これら1種若しくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
ゴム補強材の具体例としては、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリクロロプレン、ポリスルフィドゴム、チオコールゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、水素添加スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、水素添加スチレン−イソプレンブロック共重合体、水素添加スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体などのスチレン系ゴム、さらにはエチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、直鎖状低密度ポリエチレン系エラストマー等のオレフィン系ゴム、あるいはブタジエン−アクリロニトリル−スチレン−コアシェルゴム、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム、メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−スチレン−コアシェルゴム、オクチルアクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム、アルキルアクリレート−ブタジエン−アクリロニトリル−スチレン−コアシェルゴム、ハイインパクトポリスチレンが挙げられ、これら1種若しくは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
本発明のスチレン系樹脂組成物には、添加剤として、リン系、フェノール系、アミン系等の酸化防止剤、ステアリン酸等の高級脂肪酸、及びその塩やエチレンビスステアリルアミド等の滑剤、流動パラフィン、シリコーンオイル、ポリエチレンワックス等の可塑剤、タルク、炭酸カルシウム、クレー等の無機フィラー、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、着色剤、顔料、消臭剤、防曇剤等を必要に応じて添加する事ができる。
【0028】
<押出発泡シート、容器の製造方法>
本発明のスチレン系樹脂組成物は、公知の押出発泡シート製造方法を用いて、押出発泡シートに加工することができる。具体的には、単軸押出機や二軸押出機を2基直列に配置し、1基目の押出機で発泡剤とともに溶融混錬し、2基目の押出機で冷却により樹脂温度を120℃〜180℃に調整した後、サーキュラーダイスにより大気に放出し減圧発泡する方法が挙げられる。
【0029】
発泡剤としては、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロブタン、シクロペンタン等の環式脂肪族炭化水素、トリクロロフロロメタン、ジクロロジフロロメタン、1,1−ジフルオロエタン、1,1−ジフルオロ−クロライド、メチレンクロライド等のハロゲン化炭化水素等の物理発泡剤を用いることができる。また、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾビスイソブチロニトリル、重炭酸ナトリウム、クエン酸等の分解型発泡剤、二酸化炭素、窒素等の無機ガスや水を使用することもできる。これら発泡剤を適宜混合して使用できるが、工業的にはブタンが使用されることが多く、発泡押出性や発泡シートの二次成形性、発泡性の観点から、イソブタンとノルマルブタンからなる混合ブタンを使用することが好ましい。ブタンはポリスチレン系樹脂に対する透過速度が遅いため、発泡押出直後は押出発泡シート中に通常0.5〜3質量%程度残存する。この残存量は二次成形における二次発泡厚や熱成形性に影響するため、一定の熟成期間を設けることで適宜調整する。
【0030】
本発明の押出発泡シートの厚さは0.5〜4.0mmが好ましく、1.0〜3.0mmがより好ましい。押出発泡シートの厚さが0.5mm未満では、2次成形後の容器の強度や断熱性が低下する。押出発泡シートの厚さが4.0mmを超える場合、2次成形時にシートの温度ムラが発生しやすく、成形性が悪化する。
【0031】
本発明の押出発泡シートの密度は30〜500kg/m
3であることが好ましく、50〜300kg/m
3であることがより好ましい。押出発泡シートの密度が30kg/m
3未満では、強度が低下し、500kg/m
3を超える場合、断熱性が不十分となる。
【0032】
本発明の押出発泡シートの厚み方向の平均セル径X、押出方向の平均セル径Y、幅方向の平均セル径Zは、それぞれ0.01〜200μmであることが好ましく、それぞれ0.1〜100μmであることがより好ましい。平均セル径が0.01μm未満であると押出発泡シートの密度が大きくなるため、断熱性の面で、好ましくない。平均セル径が200μmを超える場合、押出発泡シートの強度と断熱性が低下する。
【0033】
また、本発明の押出発泡シートには、厚み方向の中央部に比べて密度が大きい、いわゆるスキン層と呼ばれる表面層をシートの表裏面に設けることができる。スキン層を設けることで、シートの強度を上げることができ、外観も美麗に仕上がる。スキン層はサーキュラーダイスを出た直後の発泡シート表面を風冷することによって調整できる。
【0034】
本発明の押出発泡シートは、その片面もしくは両面に熱可塑性樹脂シート又はフィルムを積層することにより、成形性、強度、剛性を改良することができる。上記、シートやフィルムを構成する熱可塑性樹脂としてはポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン等のポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられるが、接着層を用いなくても積層可能でリサイクル性も良好なポリスチレン系樹脂が好ましい。
【0035】
前記で積層される熱可塑性樹脂シート又はフィルムの厚みに特に制限はないが、10〜300μmが好ましく、50〜250μmがより好ましく、70〜200μmが特に好ましい。シート又はフィルムの厚みが厚い方が深絞り成形には有利であるが、厚すぎると容器重量が増えるため望ましくない。
【0036】
本発明の押出発泡シートは、真空成形や圧空成形などの熱成形することで、トレー、即席麺容器、納豆容器、カップ等の容器に二次成形することができる。
【0037】
<板状押出発泡体の製造方法>
本発明の押出発泡用スチレン系樹脂組成物は、上記の押出発泡シートの製造方法において、サーキュラーダイスに変えて、長方形断面のスリットを有するダイを使用することで、板状押出発泡体に加工することができる。
【0038】
また、板状押出発泡体を製造する際には、公知の難燃剤を使用することができ、例えば、ヘキサブロモシクロドデカン、ジブロモネオペンチルグリコール、デカブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモフタル酸ジオール、テトラブロモフェノール、ポリペンタブロモベンジルアクリレート等の臭素系難燃剤、リン酸グアニール尿素、ポリフォスファゼン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、赤リン等のリン系難燃剤が挙げられる。
【0039】
本発明の板状押出発泡体の密度は5〜100kg/m
3であることが好ましく、10〜50kg/m
3であることがより好ましい。板状押出発泡体の密度が5kg/m
3未満では、強度が低下し、100kg/m
3を超える場合、断熱性が不十分となる。
【0040】
本発明の板状押出発泡体は、強度と断熱性に優れるため、一般建築物等の床材や壁材、天井材、畳の心材に好適に使用することができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0042】
<スチレン系樹脂A−1〜A−4の製造>
(1)スチレン系樹脂A−1の製造
下記第1〜第3反応器を直列に接続して重合工程を構成した。
【0043】
第1反応器:容積39Lの攪拌翼付完全混合型反応器
第2反応器:容積39Lの攪拌翼付完全混合型反応器
第3反応器:容積16Lのスタティックミキサー付プラグフロー反応器
【0044】
各反応器の条件は以下の通りとした。
【0045】
第1反応器:[反応温度] 117℃
第2反応器:[反応温度] 125℃
第3反応器:[反応温度] 流れ方向に130〜140℃の温度勾配がつくように調整
【0046】
原料液としては、以下のものを用いた。
【0047】
スチレン90質量部、エチルベンゼン10質量部に対して、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.02質量部を混合した原料液
【0048】
原料液を13.5kg/hrの供給速度で117℃に設定した第1反応器に連続的に供給し重合した後、次いで125℃に設定した第2反応器に連続的に装入し重合した。第2反応器出口での重合転化率は55%であった。更に130〜140℃の温度勾配がつくように調整した第3反応器にて重合転化率が70%になるまで重合を進行させた。
この重合液を直列に2段より構成される予熱器付き真空脱揮槽に導入し、未反応スチレン及びエチルベンゼンを分離した後、ストランド状に押し出して冷却した後切断してペレット化した。なお、1段目の予熱器の温度は200℃に設定し、真空脱揮槽の圧力は66.7kPaとし、2段目の予熱器の温度は240℃に設定し、真空脱揮槽の圧力は0.9kPaとした。得られたスチレン系樹脂PS−1の特性を表1に示す。
【0049】
(2)スチレン系樹脂A−2の製造
以下の原料液を用い第1〜3反応器の温度条件を以下のように変更し、原料液の供給速度を16.5kg/hrとした以外はA−1の製造と同様にした。その特性を表1に示す。
【0050】
<原料液>
スチレン92質量部、エチルベンゼン8質量部に対して、2,2−ビス(4,4−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン0.020質量部を混合した原料液
【0051】
<条件>
第1反応器:[反応温度] 113℃
第2反応器:[反応温度] 119℃
第3反応器:[反応温度] 流れ方向に170〜180℃の温度勾配がつくように調整
【0052】
(3)スチレン系樹脂A−3の製造
以下の原料液を用い第1〜3反応器の温度条件を以下のように変更し、原料液の供給速度を16.5kg/hrとした以外はA−1の製造と同様にした。その特性を表1に示す。
【0053】
<原料液>
スチレン94質量部、エチルベンゼン6質量部を混合した原料液
【0054】
<条件>
第1反応器:[反応温度] 150℃
第2反応器:[反応温度] 150℃
第3反応器:[反応温度] 流れ方向に140〜150℃の温度勾配がつくように調整
【0055】
(4)スチレン系樹脂A−4の製造
以下の原料液を用い第1〜3反応器の温度条件を以下のように変更し、原料液の供給速度を17.6kg/hrとした以外はA−1の製造と同様にした。その特性を表1に示す。
【0056】
<原料液>
スチレン90質量部、エチルベンゼン10質量部を混合した原料液
【0057】
<条件>
第1反応器:[反応温度] 150℃
第2反応器:[反応温度] 156℃
第3反応器:[反応温度] 流れ方向に170〜180℃の温度勾配がつくように調整
【0058】
【表1】
【0059】
<実施例1〜6、比較例1〜3>
上記の方法で製造したスチレン系樹脂(A−1〜A−4)とジアセタール化合物(B−1〜B−3)、もしくはタルクを、表2に示す質量%比率にてヘンシェルミキサーで混合し、230〜270℃に設定した二軸押出機(神戸製鋼所製、KTX30α)にて溶融コンパウンドした。このときのダイス樹脂温度は290℃であった。樹脂特性を表2に示す。
【0060】
なお、ジアセタール化合物は以下のものを用いた。
<ジアセタール化合物>
B−1:1,3:2,4−ビス−O−(4−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール(新日本理化社製 ゲルオールMD)
B−2:1,3:2,4−ビス−O−(ベンジリデン)−D−ソルビトール(新日本理化社製 ゲルオールD)
B−3:1,2,3−トリデオキシ−4,6:5,7−ビス−O−(4−n−プロピルベンジリデン)−ノニトール(ミリケン・アンド・カンパニー社製 ミラッドNX8000)
タルクは以下のものを用いた。
<タルク>
東洋スチレン社製 DSM1401A(40%マスターバッチ)
【0061】
次にスクリュー径40mmφと50mmφのタンデム式押出機にて押出発泡シートを製造した。まず、前記の溶融コンパウンドした樹脂を、スクリュー径40mmφの押出機に供給した。更に、発泡剤としてブタンガスを押出機先端より樹脂100質量部に対して2.0質量部の割合で圧入し溶融混合した。このときのシリンダー温度230〜270℃、樹脂温度235〜250℃、圧力12〜18MPaであった。
その後、210℃に設定した連結管を介してスクリュー径50mmφの押出機に移送し、シリンダー温度150〜170℃、出口の樹脂温度を140℃、樹脂圧力を15MPaに調整し、リップ開度0.6mm、口径40mmのサーキュラーダイスより吐出量10kg/hrで押出し直径152mmの円筒に添わせて引取り、円周の下部1点でカッターにより切開して押出発泡シートを得た。その特性を表2に示す。
【0062】
<実施例7〜8>
上記、実施例において、溶融コンパウンドした樹脂100質量部に対して、ヘキサブロモシクロドデカンを4質量部ブレンド後、スクリュー径40mmφの押出機に供給し、ブタンガスを5.0質量部圧入し、スクリュー径50mmφの押出機の出口の樹脂温度を120℃、樹脂圧力を12MPaに調整し、サキュラーダイスに変えて、厚さ4mm、幅方向40mmの長方形断面のスリットを有するダイを使用し、板状押出発泡体を得た。その特性を表2に示す。
【0063】
なお、各種物性、性能評価は以下の方法で行った。
【0064】
(1)分子量
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、次の条件で測定した。
GPC機種:昭和電工株式会社製Shodex GPC−101
カラム:ポリマーラボラトリーズ社製 PLgel 10μm MIXED−B
移動相:テトラヒドロフラン
試料濃度:0.2質量%
温度:オーブン40℃、注入口35℃、検出器35℃
検出器:示差屈折計
本発明の分子量の測定は、単分散ポリスチレンの溶出曲線より各溶出時間における分子量を算出し、ポリスチレン換算の分子量として算出した。
【0065】
樹脂特性は以下の方法により評価した。
(2)メルトマスフローレイト
JIS K7210に基づき200℃、49N荷重の条件により求めた。
(3)ビカット軟化温度
射出成型機を用いて試験片を作成し、JIS K7206に基づき50N荷重の条件により求めた。
(4)シャルピー衝撃強さ
射出成型機を用いて試験片を作成し、JIS K7111により求めた。
【0066】
押出発泡体の特性は以下の方法により評価した。
(5)厚み
押出発泡体の両端5mmを除き、幅10mm間隔の位置を測定点とした。この測定点をダイヤルシックネスゲージ ピーコック型式G(尾崎製作所社製)を使用し、試験片が変形しないように注意しながら、厚みを最小単位0.01mmまで測定し、この平均値を押出発泡体の厚み(mm)とした。
(6)密度
押出発泡体から縦10cm×横10cmの試験片を材料のセル構造が壊れないように注意深く切り出し、試験片の重量及び厚みから以下の式により算出した。
密度(kg/m
3)=試験片の重量(g)/試験片の厚み(mm)×100
(7)平均セル径
発泡発泡体の厚み方向の平均セル径X、押出方向の平均セル径Y、幅方向の平均セル径ZはASTM D2842−06の試験法により測定された平均弦長に基づいて算出した。
厚み方向の平均セル径Xは、走査型電子顕微鏡で観察した押出方向の垂直断面において、発泡体の全厚みにわたって垂直な直線を引き、該直線の長さと該直線と交差するセル数より平均弦長X1を求め、X1/0.616より算出した。
押出方向の平均セル径Yは、走査型電子顕微鏡で観察した押出方向の垂直断面を厚み方向に4等分し、表層付近、厚み方向中央部、裏面付近の計3本の線分の各々において、該直線の長さと該直線と交差するセル数より平均弦長Y1を求め、Y1/0.616より各々の線分の平均セル径を算出し、これらの算術平均値をもって押出方向の平均セル径Yとした。
幅方向の平均セル径Zは、走査型電子顕微鏡で観察した幅方向の垂直断面を厚み方向に4等分し、表層付近、厚み方向中央部、裏面付近の計3本の線分の各々において、該直線の長さと該直線と交差するセル数より平均弦長Z1を求め、Z1/0.616より各々の線分の平均セル径を算出し、これらの算術平均値をもって幅方向の平均セル径Zとした。
【0067】
【表2】
【0068】
実施例のスチレン系樹脂組成物を用いることで、低い発泡体密度を維持しつつ、従来のタルクを発泡核剤とする方法に比べて、気泡セル径を微細化できる。