【文献】
Jonathan Engel, Jack Chen, Zhifang Fan, Chang Liu,Polymer micromachined multimodal tactile sensors ,Sensors and Actuators A,NL,Elsevier B. V.,2004年 7月28日,Vol.117,pp.50-61,URL,https://doi.org/10.1016/j.sna.2004.05.037
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
圧力感応素子と第1の選択トランジスタとを含む複数の第1のセンサセルと、温度検知素子又は湿度検知素子と第2の選択トランジスタとを含む複数の第2のセンサセルと、を含み、複数行及び複数列に渡って2次元状に配された複数のセンサセルと、
前記複数の第2のセンサセルの近傍に配置された複数の発熱器と、
前記第2のセンサセルを駆動するタイミングと同期した所定の期間に、駆動する前記第2のセンサセルの近傍に配置された前記発熱器を駆動する制御回路と
を有し、
前記制御回路は、
2次元圧力分布と対象物の温度又は湿度とを前記複数の発熱器を用いずに測定する第1の駆動モード、及び前記2次元圧力分布と前記対象物の温度又は湿度とを前記複数の発熱器を用いて測定する第2の駆動モードを選択可能に実行させ、
前記第1の駆動モードでは、前記複数の発熱器をオフ状態にしたままで、前記複数の第1のセンサセル及び前記複数の第2のセンサセルを順次オン状態にし、
前記第2の駆動モードでは、
前記複数の第1のセンサセル及び前記複数の第2のセンサセルを順次オン状態にし、
前記複数の第2のセンサセルを駆動する前または前記複数の第2のセンサセルを駆動した後の一定期間に、前記複数の発熱器を駆動させ、
前記第2の駆動モードにおいて、
前記複数の第1のセンサセルが前記対象物からの圧力を検知した場合に、前記制御回路は、前記複数の発熱器を駆動し、且つ所定時間後にオフ状態にし、
前記複数の第1のセンサセルが前記対象物からの圧力を検知しなかった場合に、前記制御回路は、前記複数の発熱器をオフ状態にする
ことを特徴とする接触検知装置。
圧力感応素子を含む複数の第1のセンサセルと、温度検知素子を含む複数の第2のセンサセルと、を含み、複数行及び複数列に渡って2次元状に配された複数のセンサセルと、前記複数の第2のセンサセルの近傍に配置された複数の発熱器と、を有する接触検知装置の駆動方法であって、
2次元圧力分布と対象物の温度とを前記複数の発熱器を用いずに測定する第1の駆動モード、及び前記2次元圧力分布と前記対象物の温度とを前記複数の発熱器を用いて測定する第2の駆動モードを選択可能に実行させるステップと、
前記対象物が接触したことによる前記温度検知素子の温度の変化に基づき、接触した前記対象物の材質を推測するステップと、
を含み、
前記第1の駆動モードは、前記複数の発熱器をオフ状態にしたままで、前記複数の第1のセンサセル及び前記複数の第2のセンサセルを順次オン状態にするステップを含み、
前記第2の駆動モードは、
前記複数の第1のセンサセル及び前記複数の第2のセンサセルを順次オン状態にするステップと、
前記複数の第2のセンサセルを駆動する前の一定期間に、前記複数の発熱器を駆動させるステップと
を含み、
前記第2の駆動モードは、
前記複数の第1のセンサセルが前記対象物からの圧力を検知した場合に、前記複数の発熱器を駆動し、且つ所定時間後にオフ状態にし、
前記複数の第1のセンサセルが前記対象物からの圧力を検知しなかった場合に、前記複数の発熱器をオフ状態にする
ことを特徴とする接触検知装置の駆動方法。
圧力感応素子を含む複数の第1のセンサセルと、湿度検知素子を含む複数の第2のセンサセルと、を含み、複数行及び複数列に渡って2次元状に配された複数のセンサセルと、前記複数の第2のセンサセルの近傍に配置された複数の発熱器と、を有する接触検知装置の駆動方法であって、
2次元圧力分布と対象物の湿度とを前記複数の発熱器を用いずに測定する第1の駆動モード、及び前記2次元圧力分布と前記対象物の湿度とを前記複数の発熱器を用いて測定する第2の駆動モードを選択可能に実行させるステップと、
前記第2のセンサセルを駆動した後の一定期間に前記発熱器を駆動して前記湿度検知素子を加熱し、前記対象物の接触によって前記湿度検知素子に付着した水分の蒸発を促進するステップと、
を含み、
前記第1の駆動モードは、前記複数の発熱器をオフ状態にしたままで、前記複数の第1のセンサセル及び前記複数の第2のセンサセルを順次オン状態にするステップを含み、
前記第2の駆動モードは、
前記複数の第1のセンサセル及び前記複数の第2のセンサセルを順次オン状態にするステップと、
前記複数の第2のセンサセルを駆動した後の一定期間に、前記複数の発熱器を駆動させるステップと
を含み、
前記第2の駆動モードは、
前記複数の第1のセンサセルが前記対象物からの圧力を検知しなかった場合に、前記複数の発熱器を駆動し、且つ所定時間後にオフ状態にし、
前記複数の第1のセンサセルが前記対象物からの圧力を検知した場合に、前記複数の発熱器をオフ状態にする
ことを特徴とする接触検知装置の駆動方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態による接触検知装置及びその駆動方法について、
図1乃至
図4を用いて説明する。
図1は、本実施形態による接触検知装置の構造を示す概略図である。
図2は、本実施形態による接触検知装置の検出回路の一例を示す図である。
図3及び
図4は、本実施形態による接触検知装置の駆動方法を示すタイミング図である。
【0013】
はじめに、本実施形態による接触検知装置の構造について、
図1及び
図2を用いて説明する。
【0014】
本実施形態による接触検知装置100は、
図1に示すように、センサアレイ10と、垂直走査回路20と、発熱器駆動回路30と、検出回路40と、制御回路50とを有する2次元センサである。
【0015】
センサアレイ10は、複数行(例えばm行)及び複数列(例えばn列)に渡って2次元状に配された複数のセルを含む。複数のセルのそれぞれは、センサセル12P、センサセル12T及び発熱器14のうちのいずれかからなる。例えば
図1には、第1行第1列のセル、第3行第n列のセル及び第5行第3列のセルとしてセンサセル12Tが配され、第1行第2列のセル、第4行第3列のセルとして発熱器14が配され、その他のセルとしてセンサセル12Pが配された例を示している。
【0016】
センサセル12Pは、選択トランジスタMと、圧力感応素子S1とを含む圧力センサセルである。また、センサセル12Tは、選択トランジスタMと、温度検知素子S2とを含む温度センサセルである。選択トランジスタMは、例えば、薄膜トランジスタからなる。圧力感応素子S1としては、例えば、導電性ゴムなどの圧力印加に伴って電気抵抗値が変化する感圧素材を一対の電極の間に挟持してなる素子を適用することができる。温度検知素子S2としては、例えば、温度の変化に伴って電気抵抗値が変化するサーミスタ素体を一対の電極の間に挟持してなる素子を適用することができる。圧力感応素子S1及び温度検知素子S2は、所定の入力に応じて抵抗値が変化する素子により構成することが可能である。
図1では、圧力感応素子S1と温度検知素子S2とを視覚的に判別しやすくするために、温度検知素子S2をボックスで記載している。
【0017】
発熱器14は、センサセル12Tを加熱するためのものであり、センサセル12Tの近傍に配置される。発熱器14としては、電気的に温度の制御が可能な素子、例えば、抵抗加熱素子やペルティエ素子等を適用することができる。
【0018】
なお、圧力感応素子S1、温度検知素子S2、発熱器14には、公知の素子を適用可能である。
【0019】
センサアレイ10内におけるセンサセル12P、センサセル12T、発熱器14の配置場所は、特に限定されるものではなく、接触検知装置100の使用目的等に応じて適宜選択可能である。例えば、センサをロボットの指に搭載する場合などにおいて、人間の指の特性と同程度の温度検知感度を実現するためには、1cm
2当たり1個程度のセンサセル12Tを配置すれば十分である。センサセル12Tが分散して配置される場合、センサアレイ10内における感度の面内均一性を向上する観点から、センサセル12Tは、センサアレイ10内に2次元的に等間隔に配置することが望ましい。凹凸などの物質の表面状態を検知することが主な目的の場合には、センサセル12Pをより高密度に配置し、高精細な2次元圧力分布を測定できるようにすることが望ましい。なお、センサセル12Pは、必ずしも設ける必要はなく、センサアレイ10内にセンサセル12Tと発熱器14だけを配置するようにしてもよい。
【0020】
発熱器14は、例えば、
図1において第1行第2列に配置された発熱器14のように、加熱対象のセンサセル12Tと同じ行に隣接して配置することができる。或いは、
図1において第4行第3列に配置された発熱器14のように、加熱対象のセンサセル12Tと同じ列に隣接して配置することができる。センサセル12Tとそのセンサセル12Tを加熱するための発熱器14とは、必ずしも配置される行又は列が同じである必要はない。例えば、第5行第3列に配置されたセンサセル12Tに対して斜め方向に隣接する第4行第2列のセル領域に発熱器14を配置するようにしてもよい。また、センサセル12Tと発熱器14とは必ずしも隣接している必要はなく、センサセル12Tと発熱器14との間にセンサセル12Pが配置されていてもよい。
【0021】
また、発熱器14は、必ずしも1つのセンサセル12Tに対して1つずつ設ける必要はなく、2つ以上のセンサセル12Tに対して1つであってもよいし、1つのセンサセル12Tに対して2つ以上であってもよい。また、必ずしも総てのセンサセル12Tの近傍に発熱器14を配置する必要はなく、例えば、
図1において第3行第n列に配置されたセンサセル12Tのように、近傍に発熱器14が配置されていないセンサセル12Tがあってもよい。
【0022】
センサアレイ10の各行には、行方向に延在して、第1駆動信号線X
1が配されている。
図1では、第1行、第2行、第3行、第4行、第5行、…、第m行に配された第1駆動信号線X
1を、それぞれ、第1駆動信号線X
11,X
12,X
13,X
14,X
15,…,X
1mと表記している。第1駆動信号線X
11,X
12,X
13,X
14,X
15,…,X
1mは、垂直走査回路20に接続されている。
【0023】
センサアレイ10の各列には、列方向に延在して、出力信号線Yが配されている。
図1では、第1列、第2列、第3列、…、第n列に配された出力信号線Yを、それぞれ、出力信号線Y
1,Y
2,Y
3,…,Y
nと表記している。出力信号線Y
1,Y
2,Y
3,…,Y
nは、検出回路40に接続されている。
【0024】
センサセル12Pの圧力感応素子S1は、一方の端子が電源電圧線に接続されており、他方の端子が選択トランジスタMのドレインに接続されている。選択トランジスタMのソースは、対応する列の出力信号線Yに接続されている。選択トランジスタMのゲートは、対応する行の第1駆動信号線X
1に接続されている。同様に、センサセル12Tの温度検知素子S2は、一方の端子が電源電圧線に接続されており、他方の端子が選択トランジスタMのドレインに接続されている。選択トランジスタMのソースは、対応する列の出力信号線Yに接続されている。選択トランジスタMのゲートは、対応する行の第1駆動信号線X
1に接続されている。
【0025】
発熱器14には、それぞれ別々の第2駆動信号線X
2が接続されている。ここでは、第1行第2列に配された発熱器14に第2駆動信号線X
21が接続され、第4行第3列に配された発熱器14に第2駆動信号線X
24が接続されているものとする。なお、
図1では第2駆動信号線X
21,X
24を行方向に延在する信号線として記載しているが、第2駆動信号線X
21,X
24の配置は特に限定されるものではない。第2駆動信号線X
21,X
24は、発熱器駆動回路30に接続されている。
【0026】
垂直走査回路20は、デコーダやシフトレジスタで構成される。垂直走査回路20は、第1駆動信号線X
11,X
12,X
13,X
14,X
15,…,X
1mに、駆動信号PTX
11,PTX
12,PTX
13,PTX
14,PTX
15,…,PTX
1mを、それぞれ供給する。これら駆動信号PTX
1は、第1駆動信号線X
1に接続された選択トランジスタMの駆動信号である。この意味で、垂直走査回路20は、選択トランジスタMの駆動回路でもある。例えば、選択トランジスタMがN型トランジスタの場合、駆動信号PTX
1がハイレベルのとき、対応する行の選択トランジスタMはオン状態になる。また、駆動信号PTX
1がローレベルのとき、対応する行の選択トランジスタMがオフ状態になる。
【0027】
発熱器駆動回路30は、第2駆動信号線X
21,X
24に、駆動信号PHEATを供給する。駆動信号PHEATは、発熱器14を駆動するための信号であり、発熱器14のオン/オフを切り替えるスイッチの制御信号であってもよいし、発熱器14の駆動電源そのものであってもよい。
【0028】
検出回路40は、出力信号線Y
1,Y
2,Y
3,…,Y
nの電圧を検出するための回路である。出力信号線Yの電圧を検出することで、センサセル12Pからの出力信号に対しては圧力感応素子S1に加わっている圧力を、センサセル12Tからの出力に対しては温度検知素子S2が検知した温度を、それぞれ検知することができる。
【0029】
検出回路40は、特に限定されるものではないが、抵抗値の変化を利用した圧力感応素子S1や温度検知素子S2を用いる場合には、例えば
図2に示すように、センサアレイ10の列毎に、A/Dコンバータ42と、抵抗Rとを有する検出回路を適用可能である。A/Dコンバータ42の入力端子は、出力信号線Yに接続されている。抵抗Rは、出力信号線YとA/Dコンバータ42の入力端子との間の接続ノードと、接地電圧線との間に設けられている。これにより、センサセル12P又はセンサセル12Tの選択トランジスタMがオン状態になることによって、圧力感応素子S1又は温度検知素子S2と抵抗Rとが直列に接続された構成となる。そして、圧力感応素子S1又は温度検知素子S2と抵抗Rとの間の接続ノードの電圧が、A/Dコンバータ42に入力されるようになっている。
【0030】
制御回路50は、垂直走査回路20、発熱器駆動回路30及び検出回路40に接続されている。制御回路50は、垂直走査回路20、発熱器駆動回路30及び検出回路40の動作やそのタイミングを制御する。制御回路50は、検出回路40から出力される接触検知の情報に応じて、垂直走査回路20及び発熱器駆動回路30を制御することも可能である。
【0031】
次に、本実施形態による接触検知装置の駆動方法について、
図3及び
図4を用いて説明する。なお、
図3及び
図4において、駆動信号PTX
11,PTX
12,PTX
13,PTX
14,PTX
15,…,PTX
1mは、ハイレベルのときに選択トランジスタMがオン状態になり、ローレベルのときに選択トランジスタMがオフ状態になるものとする。また、駆動信号PHEATは、ハイレベルのときに発熱器14がオン状態になり、ローレベルのときに発熱器14がオフ状態になるものとする。駆動信号PHEAT
1,PHEAT
4は、第2駆動信号線X
21,X
24に供給される発熱器14の駆動信号である。
【0032】
本実施形態による接触検知装置は、駆動モードとして、例えば、発熱器14を用いない第1の駆動モードと、発熱器14を用いる第2の駆動モードとを実行可能である。第1の駆動モードは、2次元圧力分布の測定とともに接触した対象物の温度を測定するモードである。第2の駆動モードは、2次元圧力分布の測定とともに接触した対象物の材質を検知するモードである。
【0033】
第1の駆動モードでは、制御回路50の制御のもと、垂直走査回路20から第1駆動信号線X
1に供給する駆動信号PTX
1を行順次で駆動する。例えば
図3に示すように、第1駆動信号線X
11,X
12,X
13,X
14,X
15,…,X
1mに供給する駆動信号PTX
11,PTX
12,PTX
13,PTX
14,PTX
15,…,PTX
1mを、順次ローレベルからハイレベルへと遷移する。発熱器14は、オフ状態のまま維持する。
【0034】
これにより、第1駆動信号線X
1に接続されたセンサセル12P,12Tの選択トランジスタMがオン状態となり、センサセル12Pに接続された出力信号線Yには、圧力感応素子S1への物体の接触状態に応じた電圧が出力される。また、センサセル12Tに接続された出力信号線Yには、温度検知素子S2に接触した物体の温度に応じた電圧が出力される。この動作を第1行から第m行について順次行うことで、圧力の2次元分布を高精度で測定することができ、接触した物体の凹凸などの表面状態を知ることができる。また、接触した物体の温度から、例えば、その物体が人物であるのかそれ以外の物であるのかを知ることができる。
【0035】
第2の駆動モードでは、制御回路50の制御のもと、垂直走査回路20から第1駆動信号線X
1に供給する駆動信号PTX
1を行順次で駆動する。また、制御回路50の制御のもと、駆動信号PTX
1によりセンサセル12Pを駆動するタイミングと同期した所定のタイミングで発熱器14をオンにする。すなわち、センサセル12Tが属する行の第1駆動信号線X
1にハイレベルの駆動信号PTX
1を供給する直前に、当該センサセル12Tを加熱するための発熱器14をオンにする。
【0036】
例えば
図4に示すように、第1駆動信号線X
11に供給する駆動信号PTX
11がハイレベルになる直前のタイミングで、第2駆動信号線X
21を介して駆動信号PHEAT
1により対応する発熱器14をオンにする。また、第1駆動信号線X
15に供給する駆動信号PTX
15がハイレベルになる直前のタイミングで、第2駆動信号線X
24を介して駆動信号PHEAT
4により対応する発熱器14をオンにする。これにより、センサセル12Tの温度検知素子S2が所定のタイミングで加熱される。発熱器14は、駆動信号PTX
1がハイレベルになるよりも前の所定のタイミングでオフにする。
【0037】
発熱器14によって温度検知素子S2を加熱した後に温度検知素子S2で温度を測定すると、接触した物体の熱伝導度に応じた速度で温度検知素子S2の温度が低下する。したがって、温度検知素子S2を加熱した後にセンサセル12Tを駆動して温度検知素子S2により温度の測定を行うことで、接触した物体の材質を推測することができる。
【0038】
例えば、接触した物体が金属やプラスチックの場合、通常これら物体の温度は室温と同じになるため、第1の駆動モードの温度測定によっては、その物体が金属であるのかプラスチックであるのかを判別することはできない。しかしながら、金属はプラスチックよりも熱伝導率が大きいため、第2の駆動モードを用いて温度測定を行うと、金属の場合の方がプラスチックの場合よりも温度の低下が大きくなる。材質の違いによって温度変化がどのように異なるのかを予めデータベース化しておくことにより、接触した物体の材質を推測することが可能となる。
【0039】
或いは、発熱器14は、例えば
図4に駆動信号PHEATとして示すように、垂直走査回路20による行順次走査の間、一定の発熱量で発熱するように常時加熱するようにしてもよい。この場合、物体が接触したときの温度検知素子S2の温度変化は小さくなることもあるが、上記と同様の材質の推測が可能である。本駆動方法は制御が簡略化できる点で有効ではあるが、消費電力を低減する観点からは、温度測定の直前の一定期間に発熱器14を駆動する前述の駆動方法が望ましい。
【0040】
第2の駆動モードにおいて、一部のセンサセル12Tに加熱を行わないようにすれば、加熱を行わないセンサセル12Tからは、第1の駆動モードと同様、接触した物体の温度に応じた電圧を出力することができる。この駆動によれば、接触した物体の温度と材質との双方を知ることができる。なお、加熱を行わないセンサセル12Tは、例えば
図1の第3行第n列に配されたセンサセル12Tのように、そのセルを加熱する発熱器14を持たないセンサセル12Tであってもよい。
【0041】
なお、発熱器14を加熱する目的は接触した物体の材質を知ることであり、消費電力低減等の観点からは、物体が接触していない期間には発熱器14を駆動しないことが望ましい。このような駆動例としては、特に限定されるものではないが、例えば、直前の走査期間においてセンサセル12Pが物体の接触を検知しなかったときには次の走査期間では発熱器14を加熱しないようにするなどの方法を適用可能である。このような駆動は、検出回路40からの出力に基づき制御回路50が発熱器駆動回路30を制御することで実現することができる。
【0042】
このように、本実施形態によれば、接触した物体の表面状態や温度に加え、材質をも推測することができ、人体の感覚により近い触感を検知することが可能となる。
【0043】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態による接触検知装置及びその駆動方法について、
図5及び
図6を用いて説明する。
図5は、本実施形態による接触検知装置の構造を示す概略図である。
図6は、本実施形態による接触検知装置の駆動方法を示すタイミング図である。第1実施形態による接触検知装置と同様の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略し或いは簡潔にする。
【0044】
はじめに、本実施形態による接触検知装置の構造について、
図5を用いて説明する。
【0045】
本実施形態による接触検知装置100は、
図5に示すように、センサセル12Tの代わりにセンサセル12Hが設けられているほかは、第1実施形態による接触検知装置と同様である。
【0046】
センサセル12Hは、選択トランジスタMと、湿度検知素子S3とを含む湿度センサセルである。湿度検知素子S3は、特に限定されるものではないが、例えば、高分子抵抗式の湿度センサを適用することができる。高分子抵抗式の湿度センサは、感湿性高分子の含有水分に応じた電気抵抗の変化を利用したものであり、第1実施形態のセンサセル12Tと同様の検出回路40により湿度の測定が可能である。
【0047】
湿度センサを用いることで接触した物体の湿度を測定することはできるが、湿度センサから物体が離れた後も一定期間、上述の感湿性高分子等の湿度検出材料に付着した水分が残ることがある。そのため、連続して正確な測定を行うためには水分の蒸発を待つ必要があり、応答速度が悪化してしまう。そこで、本実施形態による接触検知装置では、センサセル12Hの近傍に、センサセル12Hを加熱するための発熱器14を配置している。センサセル12Hの近傍に発熱器14を配置し、湿度測定の後、発熱器14を加熱して湿度検出材料からの水分の蒸発を促進することにより、応答速度を改善することができる。
【0048】
センサセル12Hのセンサアレイ10内における配置場所、配置数、発熱器14が配置されたセルとの位置関係等は、第1実施形態のセンサセル12Tの場合と同様である。
【0049】
次に、本実施形態による接触検知装置の駆動方法について、
図6を用いて説明する。
【0050】
本実施形態による接触検知装置は、駆動モードとして、例えば、発熱器14を用いない第1の駆動モードと、発熱器14を用いる第2の駆動モードとを実行可能である。第1の駆動モード及び第2の駆動モードは、いずれも、2次元圧力分布の測定とともに接触した対象物の湿度を測定するモードである。第2の駆動モードでは、発熱器14を用いて水分の蒸発を促進することにより、測定間隔を狭め、応答速度を向上することができる。
【0051】
第1の駆動モードにおける動作は、第1実施形態による接触検知装置の第1の駆動モードにおける動作(
図3)と同様である。第1の駆動モードでは、制御回路50の制御のもと、垂直走査回路20から第1駆動信号線X
1に供給する駆動信号PTX
1を行順次で駆動する。例えば
図3に示すように、第1駆動信号線X
11,X
12,X
13,X
14,X
15,…,X
1mに供給する駆動信号PTX
11,PTX
12,PTX
13,PTX
14,PTX
15,…,PTX
1mを、順次ローレベルからハイレベルへと遷移する。発熱器14は、オフ状態のまま維持する。
【0052】
これにより、第1駆動信号線X
1に接続されたセンサセル12P,12Hの選択トランジスタMがオン状態となり、センサセル12Pに接続された出力信号線Yには、圧力感応素子S1への物体の接触状態に応じた電圧が出力される。また、センサセル12Hに接続された出力信号線Yには、湿度検知素子S3に接触した物体の湿度に応じた電圧が出力される。この動作を第1行から第m行について順次行うことで、圧力の2次元分布を高精度で測定することができ、接触した物体の凹凸などの表面状態を知ることができる。また、接触した物体の湿度から、例えば、その物体が人物である場合には、発汗状態などを知ることができる。
【0053】
第2の駆動モードでは、制御回路50の制御のもと、垂直走査回路20から第1駆動信号線X
1に供給する駆動信号PTX
1を行順次で駆動する。また、制御回路50の制御のもと、駆動信号PTX
1によりセンサセル12Pを駆動するタイミングと同期した所定のタイミングで発熱器14をオンにする。すなわち、センサセル12Hが属する行の第1駆動信号線X
1にハイレベルの駆動信号PTX
1を供給した直後に、当該センサセル12Hを加熱するための発熱器14をオンにする。
【0054】
例えば
図6に示すように、第1駆動信号線X
11に供給する駆動信号PTX
11がハイレベルからローレベルに遷移した直後のタイミングで、第2駆動信号線X
21を介して駆動信号PHEAT
1により対応する発熱器14をオンにする。また、第1駆動信号線X
15に供給する駆動信号PTX
15がハイレベルからローレベルに遷移した直後のタイミングで、第2駆動信号線X
24を介して駆動信号PHEAT
4により対応する発熱器14をオンにする。これにより、センサセル12Hの湿度検知素子S3が所定のタイミングで加熱される。発熱器14は、次の行の駆動信号PTX
1がハイレベルになるよりも前の所定のタイミングでオフにする。
【0055】
センサセル12Hによる測定の後、発熱器14によりセンサセル12Hの湿度検知素子S3を加熱して水分の蒸発を促進することにより、次の走査期間を実行するまでの時間を短縮することができる。これにより、接触検知装置の応答速度を向上することができる。
【0056】
なお、発熱器14を加熱する目的は湿度検知素子S3から物体が離れた後に湿度検知素子S3の状態を初期化することであり、湿度検知素子S3に物体が接触している期間には発熱器14を駆動しないことが望ましい。このような駆動例としては、特に限定されるものではないが、例えば、直前の走査期間においてセンサセル12Pが物体の接触を検知したときには次の走査期間では発熱器14を加熱しないようにするなどの方法を適用可能である。このような駆動は、検出回路40からの出力に基づき制御回路50が発熱器駆動回路30を制御することで実現することができる。
【0057】
本実施形態では、センサセル12Pとセンサセル12Hとを含む接触検知装置に発熱器14を設けた構成を示したが、第1実施形態に示したセンサセル12Tを更に含む構成としてもよい。この場合、発熱器14は、温度検知素子S2及び湿度検知素子S3を加熱するために用いることができる。温度検知素子S2を加熱する発熱器14と湿度検知素子S3を加熱する発熱器14とは、同じであってもよいし、別々であってもよい。
【0058】
このように、本実施形態によれば、接触した物体の表面状態に加え、湿度測定を行うことができる。また、発熱器を動作することで、接触検知装置の応答速度を向上することができる。
【0059】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態による接触検知装置について、
図7及び
図8を用いて説明する。
図7は、本実施形態による接触検知装置の構造を示す概略図である。
図8は、本実施形態による接触検知装置のセンサセルの構造を示す概略断面である。第1及び第2実施形態による接触検知装置と同様の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略し或いは簡潔にする。
【0060】
本実施形態による接触検知装置100は、発熱器14が独立したセル領域に配置されているのではなく、温度検知素子S2が配置されたセル領域内に配置されている点で、
図1に示す第1実施形態による接触検知装置とは異なっている。
【0061】
すなわち、本実施形態による接触検知装置は、
図7に示すように、第1行第1列のセル及び第5行第3列のセルが、選択トランジスタMと、温度検知素子S2と、発熱器14とを含むセンサセル12THにより構成されている。温度検知素子S2が配置されたセル領域内に発熱器14を配置することで、発熱器14を独立して配置していたセル領域にもセンサセル12を配置できるようになる。これにより、センサセル12の配置密度を高めることができ、検出感度を向上することができる。
【0062】
1つのセル領域内に温度検知素子S2と発熱器14とを配置する場合、温度検知素子S2と発熱器14とは、例えば
図8(a)に示すように、センサ基材60の同じ面上に配置することができる。或いは、例えば
図8(b)に示すように、温度検知素子S2と発熱器14とによりセンサ基材60を挟むように配置することもできる。特に、
図8(b)の配置ではセル領域の面積を増大することなく温度検知素子S2と発熱器14とを配置できるため、センサセル12の配置密度を高めて検出感度を向上することが可能である。なお、
図8の各図において、上側が物体の接触を検知するセンサ面である。
【0063】
本実施形態では、温度検知素子S2と発熱器14とを1つのセル領域内に配置する例を示したが、第2実施形態の接触検知装置において、湿度検知素子S3と発熱器14とを1つのセル領域内に配置するようにしてもよい。また、温度検知素子S2と発熱器14とを含むセンサセル12Tと、湿度検知素子S3と発熱器14とを含むセンサセル12Hとを、センサアレイ10内に配置するようにしてもよい。
【0064】
このように、本実施形態によれば、センサセルの配置密度を高め、検出感度を向上することができる。
【0065】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態による接触検知装置について、
図9を用いて説明する。
図9は、本実施形態による接触検知装置の構造を示す概略図である。第1乃至第3実施形態による接触検知装置と同様の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略し或いは簡潔にする。
【0066】
第1乃至第3実施形態では、1つのセル領域に1つのセンサ素子を含むセンサセル12を配置したが、1つのセル領域に複数のセンサ素子を含むセンサセル12を配置してもよい。本実施形態では、1つのセル領域に複数のセンサ素子を含むセンサセル12を配置した接触検知装置の一例を示す。
【0067】
本実施形態による接触検知装置100は、
図9に示すように、2次元状に配された複数のセルのうちの一部のセルが、センサセル12PTにより構成されている。
図9には、第1行第1列のセル、第3行第n列のセル及び第5行第3列のセルとしてセンサセル12PTが配され、第1行第2列のセル、第4行第3列のセルとして発熱器14が配され、その他のセルとしてセンサセル12Pが配された例を示している。センサセル12PTは、選択トランジスタM1,M2と、圧力感応素子S1と、温度検知素子S2とを含む。
【0068】
センサアレイ10の各行には、行方向に延在して、第1駆動信号線X
1が配されている。
図9では、第1行、第2行、第3行、第4行、第5行、…、第m行に配された第1駆動信号線X
1を、それぞれ、第1駆動信号線X
11,X
12,X
13,X
14,X
15,…,X
1mと表記している。また、センサアレイ10の行のうち、センサセル12PTが配置された行には、第3駆動信号線X
3が配されている。
図9では、第1行、第3行、第5行に配された第3駆動信号線X
3を、それぞれ、第3駆動信号線X
31,X
33,X
35と表記している。第1駆動信号線X
11,X
12,X
13,X
14,X
15,…,X
1m及び第3駆動信号線X
31,X
33,X
35は、垂直走査回路20に接続されている。
【0069】
発熱器14には、それぞれ別々の第2駆動信号線X
2が接続されている。ここでは、第1行第2列に配された発熱器14に第2駆動信号線X
21が接続され、第4行第3列に配された発熱器14に第2駆動信号線X
24が接続されているものとする。なお、
図9では第2駆動信号線X
21,X
24を行方向に延在する信号線として記載しているが、第2駆動信号線X
21,X
24の配置は特に限定されるものではない。第2駆動信号線X
21,X
24は、発熱器駆動回路30に接続されている。
【0070】
センサアレイ10の各列には、列方向に延在して、出力信号線Y
1が配されている。
図9には、第1列、第2列、第3列、…、第n列に配された出力信号線Y
1を、出力信号線Y
11,Y
12,Y
13,…,Y
1nと表記している。また、センサアレイ10の列のうち、センサセル12PTが配置された列には、出力信号線Y
2が配されている。
図9では、第1列、第3列、第n列に配された出力信号線Y
2を、出力信号線Y
21,Y
23,Y
2nと表記している。出力信号線Y
11,Y
12,Y
13,…,Y
1n,Y
21,Y
23,Y
2nは、検出回路40に接続されている。
【0071】
センサセル12PTの圧力感応素子S1は、一方の端子が電源電圧線に接続されており、他方の端子が選択トランジスタM1のドレインに接続されている。選択トランジスタM1のソースは、対応する列の出力信号線Y
1に接続されている。選択トランジスタM1のゲートは、対応する行の第1駆動信号線X
1に接続されている。
【0072】
また、センサセル12PTの温度検知素子S2は、一方の端子が電源電圧線に接続されており、他方の端子が選択トランジスタM2のドレインに接続されている。選択トランジスタM2のソースは、対応する列の出力信号線Y
2に接続されている。選択トランジスタM2のゲートは、対応する行の第3駆動信号線X
3に接続されている。
【0073】
第3駆動信号線X
3が配された行のセンサセル12Pの選択トランジスタMのゲートは、その行の第1駆動信号線X
1及び第3駆動信号線X
3に接続されている。第3駆動信号線X
3が配されていない行のセンサセル12Pの選択トランジスタMのゲートは、その行の第1駆動信号線X
1に接続されている。
【0074】
第1実施形態による接触検知装置では、センサセル12Pの一部をセンサセル12Tに置き換えており、センサセル12Pをセンサセル12Tに置き換えたセル領域では圧力検出はできないため、その分、検出精度は低下する。その点、本実施形態による接触検知装置では、1つのセル領域に圧力感応素子S1と温度検知素子S2とを含むセンサセルPTを配置しているため、温度検知機能を追加したことによる圧力検出精度の低下を防止することができる。
【0075】
図9に示す接触検知装置において、第1駆動信号線X
1にハイレベルの駆動信号PTX
1を供給すると、各列の出力信号線Y
1には、センサセル12P又はセンサセル12PTの圧力感応素子S1への物体の接触状態に応じた電圧が出力される。また、第3駆動信号線X
3にハイレベルの駆動信号PTX
3を供給すると、センサセル12PTが配された列の出力信号線Y
2には、センサセル12PTの温度検知素子S2に接触した物体の温度に応じた電圧が出力される。その他の列の出力信号線Y
1には、センサセル12Pの圧力感応素子S1への物体の接触状態に応じた電圧が出力される。
【0076】
したがって、高精細の2次元圧力分布を測定することが求められる場合には、第1駆動信号線X
1を用いてセンサセル12P,12PTを駆動すればよい。また、2次元圧力分布の測定に加えて温度測定や材質検知を行う場合には、第3駆動信号線X3を用いてセンサセル12P,12PTを駆動すればよい。
【0077】
なお、
図9の例では、第3駆動信号線X
3を、センサセル12PTの選択トランジスタM2のゲートとセンサセル12Pの選択トランジスタMのゲートとに接続しているが、センサセル12PTの選択トランジスタM2のゲートだけに接続するようにしてもよい。この場合、第3駆動信号線X3を用いてセンサセル12PTを駆動することで、温度や材質検知に関する情報だけを取得することができる。
【0078】
このような駆動を行う場合、出力信号線Y
1と出力信号線Y
2とは兼用することができるため、出力信号線Yは各列に1本でもよい。
【0079】
或いは、第1駆動信号線X
1と第3駆動信号線X
3とを同時に用いてセンサセル12P,12PTを駆動することも可能である。この場合、出力信号線Y
1からはセンサセル12P又はセンサセル12PTの圧力感応素子S1への物体の接触状態に応じた電圧が、出力信号線Y
2からはセンサセル12PTの温度検知素子S2に接触した物体の温度に応じた電圧が、同時に出力される。
【0080】
このような駆動を行う場合、第1駆動信号線X
1と第3駆動信号線X
3とは兼用することができるため、センサセル12P,12PTを駆動する駆動信号線X
1,X
3は各行に1本でもよい。
【0081】
各行に配する駆動信号線の本数及び各列に配する出力信号線の本数は、求められる駆動方法等に応じて適宜選択することができる。
【0082】
本実施形態では、発熱器14を独立したセル領域に配置しているが、第3実施形態と同様、発熱器14を、センサセル12PTが配置されたセル領域内に配置するようにしてもよい。また、総ての或いは一部のセンサセル12PTの圧力感応素子S1又は温度検知素子S2に換えて、第2実施形態の湿度検知素子S3を用いるようにしてもよい。
【0083】
このように、本実施形態によれば、2次元応力分布の測定能力を損なうことなく、
接触した物体の温度、材質、湿度を推測することができる。
【0084】
[第5実施形態]
本発明の第5実施形態による接触検知装置について、
図10及び
図11を用いて説明する。
図10は、本実施形態による接触検知装置の構造を示す概略図である。
図11は、本実施形態による接触検知装置の駆動方法を示すタイミング図である。第1乃至第4実施形態による接触検知装置と同様の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略し或いは簡潔にする。
【0085】
はじめに、本実施形態による接触検知装置の構造について、第1実施形態と異なる点を中心に、
図10を用いて説明する。
【0086】
本実施形態による接触検知装置が第1実施形態と異なる第1の点は、センサセル12Pを駆動する駆動信号線とセンサセル12Tを駆動する駆動信号線とが別々の信号線であることである。
【0087】
センサアレイ10の各行には、行方向に延在して、センサセル12Pの選択トランジスタMのゲートに接続された第1駆動信号線X
1が配されている。
図10では、第1行、第2行、第3行、第4行、第5行、…、第m行に配された第1駆動信号線X
1を、それぞれ、第1駆動信号線X
11,X
12,X
13,X
14,X
15,…,X
1mと表記している。第1駆動信号線X
11,X
12,X
13,X
14,X
15,…,X
1mは、垂直走査回路20に接続されている。
【0088】
また、センサセル12Tが配されたセンサアレイ10の一部の行には、行方向に延在して、センサセル12Tの選択トランジスタMのゲートに接続された第3駆動信号線X
3が配されている。
図10では、第1行、第3行、第5行に配された第3駆動信号線X
3を、それぞれ、第3駆動信号線X
31,X
33,X
35と表記している。第3駆動信号線X
31,X
33,X
35は、電圧供給回路70に接続されている。第3駆動信号線X
31,X
33,X
35には、電圧供給回路70から共通の駆動信号が供給される。
【0089】
また、本実施形態による接触検知装置が第1実施形態と異なる第2の点は、発熱器14に駆動信号を供給する複数の第2駆動信号線X
2に、発熱器駆動回路30から共通の駆動信号が供給できるように構成されていることである。
図10では、第1行、第4行に配された第2駆動信号線X
2を、それぞれ、第2駆動信号線X
21,X
24と表記している。
【0090】
すなわち、本実施形態による接触検知装置は、センサアレイ10内に配された総てのセンサセル12Tが、共通の駆動信号によって同時に駆動できるように構成されている。また、センサアレイ10内に配された総ての発熱器14が、共通の駆動信号によって同時に駆動できるように構成されている。
【0091】
このような駆動を可能にするために、本実施形態による接触検知装置では、センサセル12Tの数を、各列に1個以下としている。なお、複数の列のうち、センサセル12Tが配置されていない列があってもよい(例えば、
図10において第2列)。センサセル12Tは、同じ行に複数個(1個以上)あってもよい。複数の行のうち、センサセル12Tが配置されていない行があってもよい(例えば、
図10において第2行、第4行、第m行)。
【0092】
次に、本実施形態による接触検知装置の駆動方法について、
図11を用いて説明する。
【0093】
まず、制御回路50の制御のもと、発熱器駆動回路30から総ての発熱器14に、同時に駆動信号PHEATを供給し、センサセル12Tの温度検知素子S2を加熱する。
【0094】
次いで、発熱器14をオフにした後、制御回路50の制御のもと、電圧供給回路70から第3駆動信号線X
3に供給する駆動信号PT
3をローレベルからハイレベルへと遷移する。これにより、総てのセンサセル12Tの選択トランジスタMが同時にオンになり、各センサセル12Tから温度検知素子S2の温度に応じた電圧が対応する出力信号線Yに同時に出力される。なお、第3駆動信号線X
3に接続されたセンサセル12Tの数は各列に1個以下であるため、1つの列の複数のセンサセル12において選択トランジスタMが同時にオンになることはない。
【0095】
次いで、第1実施形態と同様にして、第1行から第m行の第1駆動信号線X
1を行毎に個別に駆動し、センサセル12Pによる圧力の2次元分布の測定を実行する。
【0096】
本実施形態による接触検知装置及びその駆動方法により奏される効果について、以下に説明する。
【0097】
圧力感応素子S1は、温度特性を有するものがあり、発熱器14の熱が圧力感応素子S1に伝わると正しい圧力を測定できなくなることがある。特に、本実施形態の接触検知装置のように発熱器14が局所的に配置されているような場合には、センサアレイ10の面内で温度の分布が生じ、面内で均一な感度を得られなくなることも想定される。
【0098】
第1実施形態の駆動方法において発熱器14からの影響を低減するためには、発熱器14の駆動信号PHEATの次に駆動する駆動信号PTX
1のタイミングを遅らせて、発熱器14の温度が下がるのを待つことが考えられる。しかし、このような駆動では、センサセル12Tが設けられた行が多くなるほどに総ての行を走査するのに必要な時間が長くなり、応答速度が低下する。
【0099】
本実施形態の駆動方法のように、センサセル12Tによる測定を先に一括して行い、その後にセンサセル12Pによる測定を行順次で行うようにすることで、応答速度の低下を抑制しつつ、圧力感応素子S1の温度特性の影響を低減することができる。
【0100】
本実施形態では、第1実施形態による接触検知装置への適用例を示したが、同様の構成及び駆動方法は、第2乃至第4実施形態による接触検知装置へも適用可能である。
【0101】
このように、本実施形態によれば、接触した物体の表面状態や温度に加え、材質をも推測することができ、人体の感覚により近い触感を検知することが可能となる。また、応答速度の低下を抑制しつつ、圧力感応素子S1の温度特性の影響を低減することができる。
【0102】
[変形実施形態]
本発明は、上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
【0103】
例えば、上記実施形態では、通常動作モードにおいて、総ての行の第1駆動信号線X
1を行順次で駆動したが、必ずしも総ての行を駆動する必要はない。
【0104】
また、上記実施形態では、本発明の接触検知装置をロボットの指に搭載する例を示したが、本発明の接触検知装置は、圧力等の2次元分布測定やタッチセンシングの機能が求められる種々の装置に搭載可能である。例えば、本発明の接触検知装置を、タッチセンサ一体型表示装置のタッチパネルに適用することも可能である。
【0105】
また、上記実施形態では、圧力感応素子S1、温度検知素子S2、湿度検知素子S3として、所定の入力に応じて抵抗値が変化する素子を例示したが、必ずしも抵抗値の変化を利用した素子である必要はない。圧力感応素子S1、温度検知素子S2、湿度検知素子S3は、接触検知装置の使用目的等に応じて、好ましい原理のセンサ素子を適宜選択すればよい。発熱器14についても同様である。
【0106】
なお、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。