(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6912188
(24)【登録日】2021年7月12日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】セラミック磁器、配線基板および電子部品
(51)【国際特許分類】
C04B 35/20 20060101AFI20210727BHJP
H01B 3/12 20060101ALI20210727BHJP
H01L 23/13 20060101ALI20210727BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20210727BHJP
H01L 23/373 20060101ALI20210727BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20210727BHJP
【FI】
C04B35/20
H01B3/12 333
H01B3/12 338
H01L23/12 C
H01L23/12 D
H01L23/36 M
H05K1/03 610D
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-229567(P2016-229567)
(22)【出願日】2016年11月25日
(65)【公開番号】特開2018-83746(P2018-83746A)
(43)【公開日】2018年5月31日
【審査請求日】2019年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】犬山 重俊
【審査官】
小川 武
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−033516(JP,A)
【文献】
特開平10−106880(JP,A)
【文献】
特開平03−097670(JP,A)
【文献】
特開昭60−054970(JP,A)
【文献】
特開2005−093546(JP,A)
【文献】
特開2001−130952(JP,A)
【文献】
特開2003−342059(JP,A)
【文献】
特開2010−241685(JP,A)
【文献】
特開2002−068829(JP,A)
【文献】
特開2005−306714(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/058697(WO,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第01096674(EP,A1)
【文献】
SHEN YANGYUN and R.J. BROOK,Preparation and Strength of Forsterite-Zirconia Ceramic Composites,CERAMICS INTERNATIONAL,1983年,Vol. 9. n. 2,p.39-45
【文献】
守吉 佑介,材料基礎講座 第9回 セラミックスの焼結メカニズム,エレクトロニクス実装学会誌,2003年,Vol.6 No.3,P.266-273
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00−35/84
H01B 3/12
H01L 23/12,23/13,23/373
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の結晶粒子と、粒界相と、を有するセラミック磁器を含む絶縁体と、
前記絶縁体の表面および内部に設けられた配線導体と、を備える配線基板であって、
前記複数の結晶粒子は、フォルステライト結晶粒子であるか、または、フォルステライト結晶粒子およびスピネル結晶粒子であり、
前記粒界相には、複数のジルコニア結晶粒子が含まれ、
前記複数の結晶粒子の体積比率は74〜90%で、前記ジルコニア結晶粒子の体積比率は10〜26%であり、
前記複数の結晶粒子の粒子径は1〜7μmで、前記ジルコニア結晶粒子の粒子径は0.1〜0.7μmであり、
前記複数のジルコニア結晶粒子が、互いに接して連なって前記結晶粒子を取り囲んでいることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記ジルコニア結晶粒子同士は互いに結合していることを特徴とする請求項1記載の配線基板。
【請求項3】
前記ジルコニア結晶粒子は3次元網目状の結合状態であることを特徴とする請求項2記載の配線基板。
【請求項4】
前記ジルコニア結晶粒子の結晶構造が、正方晶系であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の配線基板。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の配線基板と、
前記配線基板に実装され、前記配線導体と電気的に接続する電子素子と、を備えることを特徴とする電子部品。
【請求項6】
複数の結晶粒子と、粒界相と、を有するセラミック磁器であって、
前記複数の結晶粒子は、フォルステライト結晶粒子およびスピネル結晶粒子であり、
前記粒界相には、複数のジルコニア結晶粒子が含まれ、
前記フォルステライト結晶粒子の体積比率は23〜50%で、前記スピネル結晶粒子の体積比率は30〜58%で、前記ジルコニア結晶粒子の体積比率は10〜26%であり、
前記フォルステライト結晶粒子および前記スピネル結晶粒子の粒子径は1〜7μmで、前記ジルコニア結晶粒子の粒子径は0.1〜0.7μmであり、
前記複数のジルコニア結晶粒子が、互いに接して連なっていることを特徴とするセラミック磁器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック磁器、配線基板および電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
情報機器、通信機器および家電機器に至る各種電子機器は、高性能化のために配線基板が大型化する傾向がある。例えば、センサ装置では、種類の異なる複数のセンサ素子を搭載するために大きな配線基板が用いられる。配線基板の絶縁体としては、機械的強度および熱伝導性等の観点からセラミック磁器が好適である。
【0003】
セラミック磁器による配線基板が大型化した場合、実装するプリント配線基板等との熱膨張率の違いにより、熱応力が生じて配線基板が割れてしまう。
【0004】
特許文献1には、主結晶相として、MgAl
2O
4結晶相と、Mg
3B
2O
6結晶相およびMg
2B
2O
5結晶相の少なくとも1種と、が析出している絶縁体磁器が記載されており、高熱膨張係数を実現している。また、特許文献2には、アルミナ粒子中にジルコニア粒子を分散させ、内部欠陥のサイズを規定した複合セラミック体が記載されており、高機械的強度を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−29834号公報
【特許文献2】特開2012−166987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の絶縁体磁器は、熱膨張率が高く実装基板との熱膨張率差を小さくして生じる熱応力を抑制している。特許文献2記載の複合セラミック体は、機械的強度を高めて、熱応力が生じても割れにくくしている。
【0007】
しかしながら、熱膨張係数を高くすれば機械的強度が低下してしまう。機械的強度を高くするためにジルコニアを含むと寄生容量が大きくなり、配線基板に設けられた配線を伝送する信号の伝送速度が遅くなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態である
配線基板は、複数の結晶粒子と、粒界相と、を有するセラミック磁器
を含む絶縁体と、
前記絶縁体の表面および内部に設けられた配線導体と、を備える配線基板であって、
前記複数の結晶粒子は、フォルステライト結晶粒子であるか、または、フォルステライト結晶粒子およびスピネル結晶粒子であり、
前記粒界相には、複数のジルコニア結晶粒子が含まれ、
前記
複数の結晶粒子の体積比率は74〜90%で、前記ジルコニア結晶粒子の体積比率は10〜26%であり、
前記
複数の結晶粒子の粒子径は1〜7μmで、前記ジルコニア結晶粒子の粒子径は0.1〜0.7μmであり、
前記複数のジルコニア結晶粒子が、互いに接して連なって前記結晶粒子を取り囲んでいることを特徴とする。
【0010】
本発明の実施形態である電子部品は、上記の配線基板と、
前記配線基板に実装され、前記配線導体と電気的に接続する電子素子と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態である
配線基板によれば、フォルステライト結晶粒子周辺の粒界相に、複数のジルコニア結晶粒子が、互いに接して連なって前記結晶粒子を取り囲んでいる
セラミック磁器が、高い熱膨張係数と、高い機械的強度と、低い比誘電率を実現で
き、このようなセラミック磁器を用いることにより、信頼性が高く、高速な信号伝送を実現できる。
【0013】
本発明の実施形態である電子部品によれば、上記の配線基板を用いることにより、信頼性が高く、高速な信号処理を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態のセラミック磁器を模式的に示す断面図である。
【
図2】本実施形態の配線基板を模式的に示す斜視図である。
【
図3】本実施形態の電子部品の模式図であり、(a)は、斜視図であり、(b)は、(a)のX−X線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(セラミック磁器)
本実施形態のセラミック磁器は、複数の結晶粒子と、粒界相と、を有している。複数の結晶粒子は、フォルステライト結晶粒子を含み、結晶粒界は、複数のジルコニア結晶粒子を含んでいる。複数のジルコニア結晶粒子の少なくとも一部は、互いに接して連なっている。
【0016】
本実施形態のセラミック磁器は、以下のような作用により、高い熱膨張係数と、高い機械的強度と、低い比誘電率を実現できる。フォルステライト結晶粒子を含むことにより、アルミナ結晶粒子を含む構成に比べて高い熱膨張係数を実現できる。ジルコニア結晶粒子は、比較的高い比誘電率を示すが、粒界相に存在しており、比較的低い比誘電率を示すフォルステライト結晶粒子を含むことにより、セラミック磁器全体としては、アルミナ結晶粒子を含む構成と同程度の比誘電率に抑えられる。
【0017】
また、フォルステライト結晶粒子の機械的強度は比較的小さいが、ジルコニア結晶粒子が、粒界相において、互いに接して連なった状態で存在することにより、フォルステライト結晶粒子を取り囲み、セラミック磁器全体としては、比較的高い機械的強度を実現できる。フォルステライト結晶粒子においてクラックが発生したときに、粒界相に存在するジルコニア結晶粒子が、クラックの進展を抑制し、機械的強度の低下を抑制する。ジルコニア結晶粒子は、必ずしもフォルステライト結晶粒子の1つ1つを取り囲んでいなくてもよい。例えば隣接する2つ以上のフォルステライト結晶粒子の周りを複数のジルコニア粒子で取り囲んでいてもよい。
【0018】
本実施形態のセラミック磁器は、熱膨張係数が7.0×10
−6/K以上、機械的強度が270MPa以上、比誘電率が11以下の特性を有する。
【0019】
他の実施形態として、粒界相に存在するジルコニア結晶粒子同士は、互いに結合しており、その結合部分がネック構造を有していることにより、さらに機械的強度を向上させることができる。ネック構造は、焼結による結合状態であり、ジルコニア結晶粒子同士が強固に結合されている。また、粒界相は、フォルステライト結晶粒子間に3次元網目状に存在し、粒界相において、互いに結合したジルコニア結晶粒子も3次元網目状の結合状態となる。ジルコニア結晶粒子が、フォルステライト結晶粒子の周囲を取り囲み、3次元網目状構造に結合することにより、セラミック磁器全体としてさらに機械的強度を向上させる。
【0020】
ジルコニア結晶粒子の結晶構造には、単斜晶系、正方晶系、立方晶系があり、どのような結晶構造であっても、機械的強度を向上させるが、他の実施形態として、ジルコニア結晶粒子の結晶構造を正方晶系とすることにより、さらに機械的強度を向上させることができる。ジルコニア結晶粒子は、外部からの圧力印加によって、その結晶構造が、正方晶系から単斜晶系へと相転移する。この相転移において、体積膨張が生じる。ジルコニア結晶粒子の結晶構造が、正方晶系である場合、クラックは、すなわち外部圧力の印加であるので、フォルステライト結晶粒子で生じたクラックがジルコニア結晶粒子に達すると、その部分において、正方晶系から単斜晶系に相転移して体積が膨張し、クラックの進展が抑制される。したがって、粒界相に存在するジルコニア結晶粒子は、その結晶構造が、正方晶系であることが好ましい。
【0021】
他の実施形態として、複数の結晶粒子が、さらにスピネル結晶粒子を含んでいる。この場合のセラミック磁器の断面を模式的に
図1に示す。スピネル結晶粒子は、フォルステライト結晶粒子と同様に、アルミナ結晶粒子を含む構成に比べて高い熱膨張係数を実現できる。さらにスピネル結晶粒子は、フォルステライト結晶粒子と同様に、比較的低い比誘電率を示し、フォルステライト結晶粒子よりも機械的強度が高い。したがって、スピネル結晶粒子を含むことにより、高い熱膨張係数と、低い比誘電率を実現と、を実現し、さらに、高い機械的強度を実現できる。
【0022】
ジルコニア結晶粒子は、複数の結晶粒子の間の粒界相に存在するので、スピネル結晶粒子を含む場合は、スピネル結晶粒子も取り囲み、スピネル結晶粒子で発生したクラックの進展を抑制し、機械的強度の低下を抑制する。この場合も、ジルコニア結晶粒子は、必ずしもフォルステライト結晶粒子およびスピネル結晶粒子の1つ1つを取り囲んでいなくてもよい。例えば隣接するフォルステライト結晶粒子とスピネル結晶粒子の周りを複数のジルコニア粒子で取り囲んでいてもよい。
【0023】
粒界相に存在するジルコニア結晶粒子の粒子径は、フォルステライト結晶粒子の粒子径およびスピネル結晶粒子の粒子径よりも小さい。フォルステライト結晶粒子およびスピネル結晶粒子の粒子径は、例えば、1〜7μmであり、ジルコニア結晶粒子の粒子径は、例えば、0.1〜0.7μmである。粒界相は、ジルコニア結晶粒子以外の部分として、例えばシリカ(SiO
2)を含んでいてもよい。粒界相におけるジルコニア結晶粒子に対するシリカの比率は、例えば、体積比率で2%〜10%とすることができる。シリカはセラミック磁器を作製する際の原料粉末として加えたものであってもよいし、スピネル結晶粒子を含むセラミック磁器を作製する際に、原料のフォルステライト粉末とアルミナ粉末とからスピネル結晶粒子が生成される際に生成されるものであってもよい。
【0024】
本実施形態のセラミック磁器に含まれる各結晶相の含有比率(体積比率)は、フォルステライト結晶粒子とジルコニア結晶粒子とを含みスピネル結晶粒子を含まない場合は、フォルステライト結晶粒子が80〜90%であり、ジルコニア結晶粒子が10〜20%である。さらにスピネル結晶粒子を含む場合は、フォルステライト結晶粒子が
23〜50%であり、スピネル結晶粒子が、30〜
58%であり、ジルコニア結晶粒子が10〜
26%である。
【0025】
(測定方法)
・結晶相の特定
本実施形態のセラミック磁器に含まれる結晶粒子について、その結晶相の特定方法は、公知の方法を用いることができ、例えば、X線回折法によって結晶相を特定することができる。
【0026】
・結晶相含有比率
本実施形態のセラミック磁器に含まれる各結晶相の含有比率について、その測定方法は、公知の方法を用いることができ、例えば、EPMA(Electron Probe Micro Analysis)マッピングを利用する。セラミック磁器の断面を、コロイダルシリカなどのポリシング研磨剤またはイオンミリング加工で加工し、SEM(Scanning Electron Microscope)により倍率×10,000で観察する。EPMAマッピングによりMg、Al、Si、Zrをマッピングし、断面画像における各結晶の領域を可視化する。可視化した各領域の面積および面積比率を算出し、面積比率をフォルステライト、スピネル、ジルコニアの各結晶相の含有比率とみなすことができる。面積比率からさらに体積比率を算出して含有比率とみなすこともできる。
【0027】
・結晶粒子径測定
本実施形態のセラミック磁器に含まれる各結晶粒子の粒子径について、その測定方法は、公知の方法を用いることができ、例えば、切片法を利用する。セラミック磁器の断面を、コロイダルシリカなどのポリシング研磨剤またはイオンミリング加工で加工し、SEMにより倍率×10,000で観察する。
【0028】
単位面積13μm×9μmの画像として、画像に含まれる結晶粒子に対して、長さ10μmの直線を引き、その直線上に存在する粒子数を計数する。直線の長さ10μmを、計数した粒子数で除した長さを粒子径として算出する。対象となる画像を変更して、3回繰り返し、平均値を本実施形態における各結晶粒子の粒子径とする。
【0029】
(セラミック磁器の製造方法)
ここで、本実施形態のセラミック磁器の製造方法について説明する。このセラミック焼結体の作製には、原料粉末として、フォルステライト粉末、ジルコニア粉末およびアルミナ粉末を用いる。セラミック磁器が、フォルステライト結晶粒子とジルコニア結晶粒子とを含みスピネル結晶粒子を含まない場合は、原料粉末として、フォルステライト粉末およびジルコニア粉末を用い、スピネル結晶粒子を含む場合は、フォルステライト粉末、ジルコニア粉末およびアルミナ粉末を用いる。スピネル結晶粒子を含む場合、スピネル粉末を用いなくても、添加したアルミナ粉末がフォルステライト粉末と反応してフォルステライト結晶粒子に隣接してスピネル結晶粒子が形成される。このようなスピネル結晶をMg−Al系スピネル結晶と言う。一方、ジルコニア粉末は、焼成後にも原料の組成割合のままで結晶相として残り、フォルステライト結晶およびスピネル結晶相と共存した結晶組織となる。
【0030】
(配線基板)
図2は、本実施形態の配線基板を模式的に示す斜視図である。本実施形態の配線基板Aは、絶縁体1の第1面1aに、接続パッド2および接続パッド2に接続するように設けられた配線導体3を備えたものを基本構造とし、絶縁体1に上記のセラミック磁器を適用したものである。この場合、絶縁体1となるセラミック磁器が高い熱膨張係数と高い機械的強度と低い比誘電率を有していることから、これにより、信頼性が高く、高速な信号伝送を実現できる配線基板Aを得ることができる。
【0031】
(電子部品)
図3は、本実施形態の電子部品の模式図であり、(a)は、斜視図であり、(b)は、(a)のX−X線断面図である。本実施形態の電子部品Bは、上記の配線基板Aの表面に、半導体素子、センサ素子および受動部品などの電子素子5が実装されているものである。この場合、電子素子5は、配線基板Aを構成する絶縁体1の表面1aに設けられた配線導体3との間で接続部材6を介して電気的に接続されている。この場合、接続部材6としては、接続部材6の配線長を短くできるという点からはんだボールを用いることができる。この電子部品Bにおいて、電子素子5は配線基板Aを構成する絶縁体1の表面1aだけではなく、絶縁体1の内部に配置されていてもよい。信頼性が高く、高速な信号伝送を実現できる配線基板Aを有していることから、信頼性が高く、高速な信号処理を実現できる電子部品Bを得ることができる。搭載される電子素子5は複数であってもよい。
【実施例】
【0032】
以下、本実施形態のセラミック磁器を具体的に作製し、次いで、セラミック磁器を適用した配線基板を作製した。
【0033】
まず、グリーンシートを作製するための混合粉末として、平均粒径が4μmのフォルステライト粉末、平均粒径が3μmのアルミナ粉末および平均粒径が0.3μmのイットリア安定化ジルコニア粉末を準備し、表1に示す割合で添加してスラリーを調製した。また、平均粒径が2μmのシリカ粉末をイットリア安定化ジルコニア粉末に対して、体積比率で2%添加した。スラリーの調製にはアクリル系バインダーとトルエンとを用いた。
【0034】
次に、調製したスラリーを用いて、ドクターブレード法により厚さ120μmのグリーンシートを作製した。
【0035】
得られたグリーンシートを複数枚重ねて所定厚みになるように加圧積層した。この後、特性評価用の試料となるように所定のサイズに切断して成形体を作製した。
【0036】
次に、作製した成形体を所定の条件にて焼成し、特性評価用の試料となるセラミック磁器を作製した。この場合、焼成の最高温度を1350℃とし、露点温度を19℃に設定して、窒素−水素の混合雰囲気中にて、最高温度での保持時間を1時間として焼成を行った。
【0037】
X線回折法を用いてセラミック磁器中に含まれる結晶相の特定を行った。
【0038】
また、作製したセラミック磁器を加工して、JISR1601に基づき3点曲げ強度を測定した。
【0039】
また、セラミック磁器を直径10mmのサイズに加工し、周波数1MHzにて比誘電率を測定した。
【0040】
また、セラミック磁器を加工し、熱機械分析装置(TMA)を用いて線熱膨張係数の測定を行った。
【0041】
【表1】
【0042】
試料No.1およびNo.8は、フォルステライト結晶粒子とジルコニア結晶粒子とを含みスピネル結晶粒子を含まない実施例である。試料No.2〜No.7は、フォルステライト結晶粒子、スピネル結晶粒子およびジルコニア結晶粒子を含む実施例である。試料No.9は、フォルステライト結晶粒子を含まない比較例であり、焼成の最高温度は1600℃で作製したものである。
【0043】
試料No.9は、機械的強度は高いが、比誘電率が高過ぎるので、配線基板としたときに、信号の伝送速度が大きく遅延してしまう。試料No.1〜No.8は、高い熱膨張係数と、高い機械的強度と、低い比誘電率を実現している。これらのうち、スピネル結晶粒子を含まない試料No.1およびNo.8は、より高い熱膨張係数を示した。また、ジルコニア結晶粒子の結晶構造が単斜晶を含まず、正方晶のみが含まれる試料No.2およびNo.3は、より高い機械的強度を示した。
【符号の説明】
【0044】
1 絶縁体
2 接続パッド
3 配線導体
5 電子素子
6 接続部材
A 配線基板
B 電子部品