(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0024】
本発明の実施の形態に係るシリカ含有水の処理方法およびシリカ含有水の処理装置では、マグネシウム塩と酸とを混合し、pH7以下で反応させてマグネシウム含有液を調製し(マグネシウム溶解工程)、シリカ含有水と得られたマグネシウム含有液とを混合した混合液を、pH10〜12の範囲で反応させる(マグネシウム反応工程)。マグネシウム反応工程の後、必要に応じて、マグネシウム反応工程における反応により得られた不溶化物を分離、除去する(除去工程)。
【0025】
マグネシウム含有液を調製するためのマグネシウム溶解槽と、シリカ含有水と得られたマグネシウム含有液とを混合した混合液を反応させるためのマグネシウム反応槽とを備える処理装置の例を以下に示すが、以下の構成に限定されるものではない。本実施形態に係るシリカ含有水の処理方法を適応した処理装置の例として、マグネシウム溶解槽を、シリカ含有水からマグネシウム反応槽を経て処理水を得る流れと切り離した装置例1(
図1)と、シリカ含有水から、直列に配置したマグネシウム溶解槽とマグネシウム反応槽とを経て処理水を得る装置例2(
図2)とを以下に挙げ、その構成について説明する。
【0026】
[装置例1]
図1に示すシリカ含有水の処理装置1は、マグネシウム塩と酸とを混合し、pH7以下で反応させてマグネシウム含有液を調製するためのマグネシウム溶解槽10と、シリカ含有水とマグネシウム含有液とを混合して、得られた混合液をpH10〜12の範囲で反応させるためのマグネシウム反応槽12とを備える。シリカ含有水の処理装置1は、マグネシウム溶解槽10を、シリカ含有水からマグネシウム反応槽12を経て処理水を得る流れと切り離した装置例である。
【0027】
マグネシウム反応槽12のシリカ含有水入口には、シリカ含有水配管18が接続され、処理水出口には、処理水配管20が接続されている。マグネシウム溶解槽10の出口と、マグネシウム反応槽12のマグネシウム含有液入口とは、マグネシウム含有液配管26により接続されている。マグネシウム溶解槽10およびマグネシウム反応槽12には、撹拌手段として撹拌羽根を備える撹拌装置14,16がそれぞれ設置されている。マグネシウム溶解槽10には、酸添加配管22およびマグネシウム塩添加配管24が接続されている。マグネシウム反応槽12には、pH調整剤添加配管28が接続されている。
【0028】
本実施形態に係るシリカ含有水の処理方法およびシリカ含有水の処理装置1の動作について説明する。
【0029】
マグネシウム溶解槽10に、酸添加配管22を通して酸が添加され、マグネシウム塩添加配管24を通して例えばマグネシウム塩の水スラリーが添加され、撹拌装置14により撹拌されてマグネシウム塩と酸とが混合され、pH7以下で反応されてマグネシウム含有液が調製される(マグネシウム溶解工程)。固体のマグネシウム塩がそのままマグネシウム溶解槽10に添加されて酸と混合されてもよい。
【0030】
一方、シリカを含有するシリカ含有水は、シリカ含有水配管18を通して、マグネシウム反応槽12に供給される。マグネシウム反応槽12において、マグネシウム溶解工程で得られたマグネシウム塩と酸とを含むマグネシウム含有液が、マグネシウム含有液配管26を通してシリカ含有水に添加され、撹拌装置16により撹拌されて混合される。また、マグネシウム反応槽12において、pH調整剤が、pH調整剤添加配管28を通してマグネシウム含有液に添加され、pH10から12の範囲で反応されて、シリカが不溶化される(マグネシウム反応工程)。反応液は、処理水として処理水配管20を通して排出される。または、反応液は、マグネシウム反応工程の後、必要に応じて、図示しない除去手段によって、マグネシウム反応工程における反応により得られた不溶化物が分離、除去されてもよい(除去工程)。
【0031】
シリカ含有水の処理装置1では、マグネシウム溶解槽10、撹拌装置14等が、マグネシウム塩と酸とを混合し、pH7以下で反応させてマグネシウム含有液を調製するマグネシウム溶解手段として機能し、マグネシウム反応槽12、撹拌装置16等が、シリカ含有水とマグネシウム含有液とを混合した混合液を、pH10〜12の範囲で反応させるマグネシウム反応手段として機能する。
【0032】
本発明者らは、酸とマグネシウム塩とをpH7以下で反応させてマグネシウム含有液を調製し、得られたマグネシウム含有液とシリカ含有水とを混合した混合液を、pH10〜ら12で反応させることで、効率よくシリカ含有水を処理することができることを見出した。さらにマグネシウム反応槽12の後段で、不溶化されたシリカを分離、除去する(除去工程)ことにより、シリカ除去率が大きく向上することを見出した。
【0033】
これにより、シリカ含有水の処理装置1の後段で逆浸透膜装置等を用いて処理水を回収再利用しようとした場合、シリカが高度に除去された処理水が得られるため、シリカスケールの生成を抑制し、回収率を向上させることが可能となる。
【0034】
[装置例2]
図2に示すシリカ含有水の処理装置3は、マグネシウム塩と酸とをシリカ含有水中で混合し、pH7以下で反応させてマグネシウム含有液とシリカ含有水とを混合した混合液を調製するためのマグネシウム溶解槽30と、混合液をpH10〜12の範囲で反応させるためのマグネシウム反応槽32とを備える。シリカ含有水の処理装置3は、シリカ含有水から、直列に配置したマグネシウム溶解槽30とマグネシウム反応槽32とを経て処理水を得る装置例である。
【0035】
マグネシウム溶解槽30のシリカ含有水入口には、シリカ含有水配管38が接続されている。マグネシウム溶解槽30の出口とマグネシウム反応槽32の入口とは、マグネシウム含有液配管40により接続されている。マグネシウム反応槽32の出口には、処理水配管42が接続されている。マグネシウム溶解槽30およびマグネシウム反応槽32には、撹拌手段として撹拌羽根を備える撹拌装置34,36がそれぞれ設置されている。マグネシウム溶解槽30には、酸添加配管44およびマグネシウム塩添加配管46が接続されている。マグネシウム反応槽32には、pH調整剤添加配管48が接続されている。
【0036】
本実施形態に係るシリカ含有水の処理方法およびシリカ含有水の処理装置3の動作について説明する。
【0037】
シリカを含有するシリカ含有水は、シリカ含有水配管38を通して、マグネシウム溶解槽30に供給される。マグネシウム溶解槽30において、シリカ含有水に酸添加配管44を通して酸が添加され、マグネシウム塩添加配管46を通して例えばマグネシウム塩の水スラリーが添加される。撹拌装置34により撹拌されてマグネシウム塩と酸とシリカ含有水とが混合され、pH7以下で反応されてマグネシウム含有液とシリカ含有水とが混合された混合液が調製される(マグネシウム溶解工程)。固体のマグネシウム塩がそのままマグネシウム溶解槽10に添加されて酸と混合されてもよい。
【0038】
マグネシウム溶解工程で得られたマグネシウム塩と酸とを含むマグネシウム含有液とシリカ含有水とが混合された混合液は、マグネシウム含有液配管40を通してマグネシウム反応槽32に供給され、撹拌装置36により撹拌される。また、マグネシウム反応槽32において、pH調整剤が、pH調整剤添加配管48を通して混合液に添加され、pH10から12の範囲で反応されて、シリカが不溶化される(マグネシウム反応工程)。反応液は、処理水として処理水配管42を通して排出される。または、反応液は、マグネシウム反応工程の後、必要に応じて、図示しない除去手段によって、マグネシウム反応工程における反応により得られた不溶化物が分離、除去されてもよい(除去工程)。
【0039】
シリカ含有水の処理装置3では、マグネシウム溶解槽30、撹拌装置34等が、マグネシウム塩と酸とを混合し、pH7以下で反応させてマグネシウム含有液を調製するマグネシウム溶解手段として機能し、マグネシウム反応槽32、撹拌装置36等が、シリカ含有水とマグネシウム含有液とを混合した混合液を、pH10〜12の範囲で反応させるマグネシウム反応手段として機能する。
【0040】
図1に示すシリカ含有水の処理装置1を用いた場合、マグネシウム塩と酸とをマグネシウム溶解槽10で直接混合するため、マグネシウム塩の溶解時間を短くすることができ、マグネシウム溶解槽の容積を小さくすることが可能となる。また、マグネシウム溶解工程をバッチ処理とすることができる。さらに、処理対象のシリカ含有水中のシリカ濃度が変動した場合でも処理への影響を低減することができる。
【0041】
図2に示すシリカ含有水の処理装置3は、シリカ含有水が酸性の場合、有効な装置である。また、シリカ含有水中のシリカと溶解したマグネシウムが共存した状態でマグネシウム反応槽32へ流入するため、シリカとマグネシウムの反応性が高く、処理装置1よりも高いシリカ除去率を得ることができる。
【0042】
処理対象となるシリカ含有水中のシリカの濃度は、例えば、10mg/L〜500mg/Lの範囲である。
【0043】
処理対象となるシリカ含有水としては、シリカを含有する水であればよく、特に制限はないが、例えば、半導体製造工場から発生するシリカ含有水、発電所から発生するシリカ含有水等が挙げられる。
【0044】
マグネシウム塩としては、酸化マグネシウム(MgO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)
2)、塩化マグネシウム(MgCl
2・6H
2O)等のマグネシウム塩またはその水和物であればよく、特に制限はないが、薬品コスト等の観点から、水酸化マグネシウム(Mg(OH)
2)が好ましい。マグネシウム塩としては、CaMg(CO
3)
2の化学式で代表されるドロマイト等のマグネシウム含有鉱物を用いてもよい。また、マグネシウム塩は、取り扱い性等の点から、水等の溶媒のスラリーとして用いることが好ましい。
【0045】
酸としては、特に制限はないが、塩酸、硫酸等の無機酸を用いればよい。酸としてシュウ酸やクエン酸等の有機酸を添加してもよいが、原水によってはマグネシウムとキレート反応を起こすために、シリカの除去率を下げてしまう可能があるので注意が必要である。
【0046】
マグネシウム塩の添加量は、シリカ含有水中のシリカの重量濃度に対して、マグネシウム濃度として0.1〜10倍量の範囲であることが好ましく、0.5〜5倍量の範囲であることがより好ましい。マグネシウム塩の添加量がシリカ含有水中のシリカの重量濃度に対して0.1倍量未満であると、シリカの不溶化反応が不十分となる場合があり、10倍量を超えると、汚泥発生量が過剰になってしまう場合がある。
【0047】
マグネシウム溶解工程におけるpHは7以下であればよいが、4〜7の範囲であることが好ましく、4〜6の範囲であることがより好ましい。マグネシウム溶解工程におけるpHが7を超えると、マグネシウム塩の溶解が不十分となり、4未満であると、シリカ除去率はほとんど上昇しないため、酸注入コストが無駄になる場合がある。ただし、pHを下げると、マグネシウム溶解工程の反応時間をより短くすることが可能である。
【0048】
マグネシウム溶解工程における温度は、マグネシウムが溶解することができればよく、特に制限はないが、例えば、1℃〜50℃未満の範囲であり、10℃〜50℃未満の範囲であることがより好ましい。マグネシウム溶解工程における温度が1℃未満であると、マグネシウム塩の溶解が不十分となる場合があり、50℃以上であると、処理コストが高くなる場合がある。
【0049】
マグネシウム溶解工程における反応時間は、マグネシウムが溶解することができればよく、特に制限はないが、例えば、1分〜60分の範囲であり、5分〜30分の範囲であることがより好ましい。マグネシウム溶解工程における反応時間が1分未満であると、マグネシウム塩の溶解が不十分となる場合があり、60分を超えると、反応槽が過大になる場合がある。上記のとおり、マグネシウム溶解工程のpHを下げることで、反応時間を短くすることができる。
【0050】
pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等のアルカリを用いればよく、必要に応じて塩酸、硫酸等の無機酸を用いてもよい。
【0051】
マグネシウム反応工程におけるpHはpH10〜12の範囲であればよいが、10.5〜11.5の範囲であることが好ましく、11〜11.5の範囲であることがより好ましい。マグネシウム反応工程におけるpHが10未満、または12を超えると、シリカ除去率が低くなる。
【0052】
マグネシウム反応工程における温度は、シリカの不溶化反応が進行する温度であればよく、特に制限はないが、例えば、1℃〜50℃未満の範囲であり、10℃〜50℃未満の範囲であることがより好ましい。マグネシウム反応工程における温度が1℃未満であると、シリカの不溶化反応が不十分となる場合があり、50℃以上であると、処理コストが高くなる場合がある。
【0053】
マグネシウム反応工程における反応時間は、シリカの不溶化反応が進行することができればよく、特に制限はないが、例えば、1分〜60分の範囲であり、5分〜30分の範囲であることがより好ましい。マグネシウム反応工程における反応時間が1分未満であると、シリカの不溶化反応が不十分となる場合があり、60分を超えると、反応槽が過大になる場合がある。
【0054】
シリカの分離除去は、例えば、凝集沈殿法、加圧浮上法、砂ろ過法、膜ろ過法(例えば、精密ろ過膜(MF膜)、限外ろ過膜(UF膜)等を用いる膜ろ過)等によるシリカ低減方法を用いればよく、汚泥発生量等の点から凝集沈殿法が好ましい。
【0055】
シリカ含有水の処理装置1,3の後段において、不溶化されたシリカを分離、除去した後、さらに逆浸透膜(RO膜)処理、脱炭酸処理、イオン交換処理、蒸留処理等を行ってもよい。シリカ含有水の処理装置1,3の後段において不溶化されたシリカを分離、除去して得られる処理水は、高いシリカ除去率でシリカが除去されているので、後段においてこれらの処理を行っても、スケール発生のリスクが低減される。
【0056】
[装置例3]
マグネシウム反応槽の後段で凝集沈殿法により不溶化されたシリカの分離除去を行う場合のシリカ含有水の処理装置の一例の概略構成を
図3に示す。
【0057】
図3に示すシリカ含有水の処理装置5は、
図2の構成のシリカ含有水の処理装置3のマグネシウム反応槽32の後段において凝集沈殿処理を行う場合の構成の一例である。
図3のシリカ含有水の処理装置5は、マグネシウム塩と酸とをシリカ含有水中で混合し、pH7以下で反応させてマグネシウム含有液とシリカ含有水とを混合した混合液を調製するためのマグネシウム溶解槽30と、混合液をpH10〜12の範囲で反応させるためのマグネシウム反応槽32と、除去手段として、凝集槽50と、フロック形成槽52と、沈殿槽54とを備える。
【0058】
マグネシウム溶解槽30のシリカ含有水入口には、シリカ含有水配管38が接続されている。マグネシウム溶解槽30の出口とマグネシウム反応槽32の入口とは、マグネシウム含有液配管40により接続されている。マグネシウム反応槽32の出口と凝集槽50の入口とは、反応液配管60により接続されている。凝集槽50の出口とフロック形成槽52の入口とは、凝集液配管62により接続されている。フロック形成槽52の出口と沈殿槽54の入口とは、フロック形成液配管64により接続されている。沈殿槽54の処理水出口には、処理水配管66が接続されている。沈殿槽54の汚泥出口には、汚泥配管68が接続されている。マグネシウム溶解槽30、マグネシウム反応槽32、凝集槽50、フロック形成槽52には、撹拌手段として撹拌羽根を備える撹拌装置34,36,56,58がそれぞれ設置されている。マグネシウム溶解槽30には、酸添加配管44およびマグネシウム塩添加配管46が接続されている。マグネシウム反応槽32には、pH調整剤添加配管48が接続されている。凝集槽50には、無機凝集剤添加配管70が接続されている。フロック形成槽52には、高分子凝集剤添加配管72が接続されている。
【0059】
シリカを含有するシリカ含有水は、シリカ含有水配管38を通して、マグネシウム溶解槽30に供給される。マグネシウム溶解槽30において、シリカ含有水に酸添加配管44を通して酸が添加され、マグネシウム塩添加配管46を通して例えばマグネシウム塩の水スラリーが添加される。撹拌装置34により撹拌されてマグネシウム塩と酸とシリカ含有水とが混合され、pH7以下で反応されてマグネシウム含有液とシリカ含有水とが混合された混合液が調製される(マグネシウム溶解工程)。固体のマグネシウム塩がそのままマグネシウム溶解槽10に添加されて酸と混合されてもよい。
【0060】
マグネシウム溶解工程で得られたマグネシウム塩と酸とを含むマグネシウム含有液とシリカ含有水とが混合された混合液は、マグネシウム含有液配管40を通してマグネシウム反応槽32に供給され、撹拌装置36により撹拌される。また、マグネシウム反応槽32において、pH調整剤が、pH調整剤添加配管48を通して混合液に添加され、pH10から12の範囲で反応されて、シリカが不溶化される(マグネシウム反応工程)。反応液は、反応液配管60を通して凝集槽50へ供給される。
【0061】
凝集槽50において、無機凝集剤が、無機凝集剤添加配管70を通して反応液に添加され、不溶化物が凝集される(凝集工程)。凝集液は、凝集液配管62を通してフロック形成槽52へ供給される。
【0062】
フロック形成槽52において、高分子凝集剤が、高分子凝集剤添加配管72を通して凝集液に添加され、フロックが形成される(フロック形成工程)。フロック形成液は、フロック形成液配管64を通して沈殿槽54へ供給される。
【0063】
沈殿槽54において、フロック形成された凝集物が固液分離される(固液分離工程)。処理水は、処理水配管66を通して排出される。一方、汚泥は、汚泥配管68を通して排出される。
【0064】
シリカ含有水の処理装置5の後段において、さらに逆浸透膜(RO膜)処理、脱炭酸処理、イオン交換処理、蒸留処理等を行ってもよい。シリカ含有水の処理装置5で得られる処理水は、高いシリカ除去率でシリカが除去されているので、後段においてこれらの処理を行っても、スケール発生のリスクが低減される。
【0065】
凝集工程で用いられる無機凝集剤としては、塩化鉄等の鉄系無機凝集剤、ポリ塩化アルミニウム(PAC)等のアルミニウム系無機凝集剤等が挙げられ、薬品コストおよび凝集pH範囲等の点から、鉄系無機凝集剤が好ましい。
【0066】
無機凝集剤の添加量は、添加したマグネシウム塩の量に対して重量比で0.1〜10倍量の範囲であることが好ましく、1〜5倍量の範囲であることがより好ましい。無機凝集剤の添加量が添加したマグネシウム塩の量に対して重量比で0.1倍量未満であると、凝集が不十分となる場合があり、10倍量を超えると、汚泥発生量が過剰になる場合がある。
【0067】
凝集工程におけるpHは、例えば、3〜11の範囲である。凝集工程におけるpHが3未満、または11を超えると、凝集不良を生じる場合がある。さらに、凝集工程におけるpHが9未満となると、フロックからシリカが溶け出してしまうことがあることから、pH9〜11の範囲で凝集工程を行うことが望ましい。
【0068】
凝集工程における温度は、例えば、1℃〜80℃の範囲である。凝集工程における温度が1℃未満、または80℃を超えると、凝集不良を生じる場合がある。
【0069】
フロック形成工程で用いられる高分子凝集剤としては、ポリアクリルアミド系、ポリアクリル酸エステル系等のカチオン系高分子凝集剤、アニオン系高分子凝集剤、ノニオン系高分子凝集剤等が挙げられ、凝集性等の点から、カチオン系高分子凝集剤が好ましい。
【0070】
市販の高分子凝集剤としては、オルフロックOX−304(オルガノ株式会社製)等のカチオン系高分子凝集剤が挙げられる。
【0071】
高分子凝集剤の添加量は、原水の水量に対して0.1〜10mg/Lの範囲であることが好ましく、1〜5mg/Lの範囲であることがより好ましい。高分子凝集剤の添加量が原水の水量に対して0.1mg/L未満であると、フロック形成が向上しない場合があり、10mg/Lを超えると、処理水中に溶存の高分子凝集剤が残留してしまう場合がある。
【0072】
フロック形成工程におけるpHは、例えば、3〜11の範囲である。フロック形成工程におけるpHが3未満、または11を超えると、凝集不良を生じる場合がある。さらに、フロック工程におけるpHが9未満となると、フロックからシリカが溶け出してしまうことがあることから、pH9〜11の範囲でフロック形成工程を行うことが望ましい。
【0073】
フロック形成工程における温度は、例えば、1℃〜80℃の範囲である。フロック形成工程における温度が1℃未満、または80℃を超えると、凝集不良を生じる場合がある。
【0074】
上記凝集処理では、凝集工程およびフロック形成工程として、無機凝集剤および高分子凝集剤を用いているが、無機凝集剤、高分子凝集剤等のうちの少なくとも1つを用いればよく、鉄系無機凝集剤およびカチオン系高分子凝集剤のうちの少なくとも1つを用いることが好ましい。マグネシウム塩と反応し不溶化されたシリカを凝集させる際、鉄系無機凝集剤およびカチオン系高分子凝集剤のうちの少なくとも1つを用いることで、凝集性および固液分離性が向上する。
【0075】
固液分離としては、沈降分離の他に、加圧浮上処理、膜ろ過処理等が挙げられ、分離性等の点から、沈降分離が好ましい。
【実施例】
【0076】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0077】
<実施例1および比較例1>
図3に示す処理装置5を用い、シリカ含有水に対し、マグネシウム溶解槽におけるpHを4,5,6,7(以上、実施例1)、8,9,10(以上、比較例1)と変化させて、連続通水実験を行い、シリカの除去効果を確認した。実験条件を表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
実験結果を
図4に示す。なお、シリカ濃度は分光光度計(株式会社日立ハイテクサイエンス製、U−3900)を用いて、モリブデン黄吸光光度法で測定した。
【0080】
図4に示すように、マグネシウム溶解槽におけるpHを7以下とすることで、凝集沈殿処理水のシリカ濃度を大きく低減できることを確認した。
【0081】
<比較例2>
非特許文献1の記載の条件(マグネシウム塩:Mg(OH)
2+硫酸、溶解pH:9.5、反応pH:11)で、マグネシウム塩の添加量を変えて(250mg/L、500mg/L、750mg/L、1000mg/L、1500mg/L)、本方法を適応した場合の実験結果を
図5に示す。マグネシウム溶解槽におけるpHを7とした実施例1の結果(マグネシウム塩の添加量:230mg/L、460mg/L、920mg/L)も併せて
図5に示す。
【0082】
図5に示す通り、同じマグネシウム塩の添加量で比較すると、非特許文献1に記載の比較例2の方法よりも実施例1の方法の方が、シリカ除去率が高い結果となった。
【0083】
以上の結果から、シリカが高度に除去された処理水が得られるため、後段において逆浸透膜処理を行い、処理水を回収再利用する場合でも、シリカスケール等のリスクを低減することができる。
【0084】
このように、実施例の方法により、効率よくシリカ含有水を処理することができた。