特許第6912223号(P6912223)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6912223
(24)【登録日】2021年7月12日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】フレームレス覆蓋および覆蓋の形成方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 90/02 20190101AFI20210727BHJP
   B65D 88/06 20060101ALI20210727BHJP
   E04H 7/06 20060101ALI20210727BHJP
【FI】
   B65D90/02 Q
   B65D88/06 Z
   E04H7/06 302
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-40568(P2017-40568)
(22)【出願日】2017年3月3日
(65)【公開番号】特開2018-144842(P2018-144842A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2020年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000204192
【氏名又は名称】太陽工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 良平
(72)【発明者】
【氏名】関根 義昭
(72)【発明者】
【氏名】三輪 渉
(72)【発明者】
【氏名】前城 直輝
(72)【発明者】
【氏名】本田 道紀
(72)【発明者】
【氏名】中原 圭仁
(72)【発明者】
【氏名】村上 祐一
【審査官】 植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−327176(JP,A)
【文献】 特開2002−081876(JP,A)
【文献】 特開平09−112078(JP,A)
【文献】 実開昭60−061343(JP,U)
【文献】 特開2001−171788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 88/00−90/66
E04H 5/00−5/12
E04H 7/00−7/32
E04H 12/00−15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のタンクの上端を塞ぐフレームレス覆蓋であって、
上膜と下膜とが組み合わされてなる中空の本体膜と、
前記本体膜の内部空間において前記上膜と前記下膜とを接合する仕切部材と、
前記上膜の上面に配設されたカバー材と、
前記カバー材の上面に設けられ水切り膜と、を備え、
前記カバー材の周縁は、前記本体膜の周縁に固定されていて、
前記本体膜の周縁に、前記タンクへ固定するための固定部が形成されており、
前記水切り膜は、内径が前記カバー材の直径よりも小さく、外径が前記本体膜の外径および前記タンクの外形よりも大きい円帯状に形成されていて、前記カバー材の周縁、前記本体膜の周縁および前記固定部を覆っていることを特徴とするフレームレス覆蓋。
【請求項2】
前記固定部が、前記本体膜の周縁に固定された複数の引き込みベルトを有していることを特徴とする、請求項1に記載のフレームレス覆蓋。
【請求項3】
前記仕切部材が、環状であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のフレームレス覆蓋。
【請求項4】
前記上膜および前記下膜は、複数の扇形状の膜材を組み合わせることにより平面視円形に形成されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のフレームレス覆蓋。
【請求項5】
中空の本体膜内に給気して当該本体膜を膨らませる作業と、
前記本体膜をタンクの上方に配設する作業と、
前記本体膜の周縁に固定された複数の引き込みベルトを利用して前記タンクの上端部に前記本体膜を固定する作業と、
前記本体膜の周縁および前記タンクの上端部を水切り膜により覆う作業と、を備える覆蓋の形成方法であって、
前記タンクの上端部に固定された引き込み治具を利用して、前記複数の引き込みベルトに対して均等に張力を付与した状態で前記本体膜を固定することを特徴とする、覆蓋の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレームレス覆蓋および覆蓋の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
円筒状のタンクの解体時等において、タンク内への雨水の浸入防止や、タンク内からの粉塵等の飛散防止等を目的として、タンク上端の開口部を覆蓋により遮蔽する場合がある。このような覆蓋には、工期短縮および費用削減を図る上で、短時間で容易に脱着することができ、かつ、繰り返し使用できる構造であることが求められる。
特許文献1には、二重空気膜構造として、複数のブラケットが取り付けられた周囲梁(フレーム)と、周囲梁の上下部に二重に張設された膜により構成されたものが開示されている。この二重空気膜構造は、タンク等の構造物に対して、ブラケットを介して容易に着脱することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平02−62667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の二重空気膜構造は、タンク等の大規模な構造物に使用する場合には、鋼管や形鋼材等からなるフレームによって重量が重くなるため、能力の大きいクレーンが必要となる。また、施工過程で二重空気膜構造を取り外した際には、二重空気膜構造を仮置きするための大きな用地を確保する必要がある。
このような観点から、本発明は、軽量で取扱いやすく、仮設ヤードとして比較的狭隘なスペースしか確保することができない施工現場においても使用することが可能なフレームレス覆蓋およびこれを利用した覆蓋の形成方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明のフレームレス覆蓋は、円筒状のタンクの上端を塞ぐものであって、上膜と下膜とが組み合わされてなる中空の本体膜と、前記本体膜の内部空間において前記上膜と前記下膜とを接合する仕切部材と、前記上膜の上面に配設されたカバー材と、前記カバー材の上面に設けられ水切り膜とを備えている。前記カバー材の周縁は、前記本体膜の周縁に固定されていて、前記本体膜の周縁に前記タンクへ固定するための固定部が形成されている。前記水切り膜は、内径が前記カバー材の直径よりも小さく、外径が前記本体膜の外径および前記タンクの外形よりも大きい円帯状に形成されていて、前記カバー材の周縁、前記本体膜の周縁および前記固定部を覆っている。
なお、前記フレームレス覆蓋は、前記上膜の上面だけでなく、前記下膜の下面にもカバー材が配設されていてもよい。
かかるフレームレス覆蓋は、フレーム(枠部材)を使用することなく、複数の膜を組み合わせることにより形成されているため、軽量で取扱いやすい。また、このフレームレス覆蓋は、折り畳むことができるため、仮置きに大きな用地を必要としない。本体膜は、仕切部材により上下方向の膨張が制限されているため、上下方向に必要以上に膨らむことはなく、したがって蓋材としての機能が低下することはない。また、カバー材により本体膜が補強されているとともに、上面に雨水が溜まることが防止されている。さらに、水切り膜によって本体膜の周縁とタンクとの接合部を覆うことで、タンク内への雨水等の浸入を防ぐことができる。
【0006】
前記固定部が、前記本体膜の周縁に固定された複数の引き込みベルトを有している場合には、各引き込みベルトに対して均等に張力を付与するとともに、当該引き込みベルトを利用してタンクに固定すればよい。こうすることで、本体膜の形状のバランスを保つとともに、応力集中による破損を防止することができる。
また、前記仕切部材が環状であれば、フレームレス覆蓋を吊り上げた際の形状が安定し、作業効率が向上する。なお、仕切部材に通気孔を形成しておけば、一つの給気口から本体膜に給気しても、本体膜全体に空気が行き渡るようになる。
さらに、前記上膜および前記下膜は、複数の扇型状の膜材を組み合わせることにより平面視円形に形成されているのが望ましい。こうすることで、上膜および下膜を構成する膜材同士の接合部が放射状になるため、本体膜内に給気した際に各膜材に作用する圧力が均等になる。
【0007】
また、本発明の覆蓋の形成方法は、中空の本体膜内に給気して当該本体膜を膨らませる作業と、前記本体膜をタンクの上方に配設する作業と、前記本体膜の周縁に固定された複数の引き込みベルトを利用して前記タンクの上端部に前記本体膜を固定する作業と、前記本体膜の周縁および前記タンクの上端部を水切り膜により覆う作業とを備えている。タンクの上端部に本体膜を固定する際には、前記タンクの上端部に固定された引き込み治具を利用して、前記複数の引き込みベルトに対して均等に張力を付与した状態で行う。
かかる覆蓋の形成方法によれば、枠部材を要しない軽量で安価な覆蓋を簡易に形成することができる。また、複数の引き込みベルトに対して均等に張力を付与するため、本体膜の形状バランスを保ちつつ、タンクに固定することができる。さらに、タンクと本体膜との接合部は、水切り膜によって覆われているため、内部に雨水等の浸透を防止する覆蓋が形成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明のフレームレス覆蓋および覆蓋の形成方法によれば、軽量で取扱いやすく、仮設ヤードとして比較的狭隘なスペースしか確保することができない施工現場においても簡易かつ安価に構造物に覆蓋を設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(a)本実施形態のフレームレス覆蓋が設置されたタンクを示す立面図、(b)はフレームレス覆蓋の平面図である。
図2】フレームレス覆蓋の縁部分を示す断面図である。
図3】(a)は固定部を示す平面図、(b)は固定部の斜視図である。
図4】カバー材と水切り膜の一部を示す平面図である。
図5】架台を示す図であって、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は正面図である。
図6】(a)および(b)覆蓋の形成方法の作業状況を示す図である。
図7】(a)は引き込み治具を示す斜視図、(b)はフレームレス覆蓋の端部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態では、図1に示すように、円形タンク(円筒状のタンクT)の上部を覆う(塞ぐ)フレームレス覆蓋1について説明する。フレームレス覆蓋1は、タンクTの解体工事において、作業休止中等のタンクTの上部に設置されることで、タンクT内に雨水の流入を防止するとともにタンクT内から外部に粉塵等が飛散することを防止する。フレームレス覆蓋1は、タンクTへの着脱が容易に構成されていて、解体作業時はタンクTの上部から撤去する。
本実施形態のフレームレス覆蓋1は、図1および図2に示すように、本体膜2、仕切部材3、カバー材4および水切り膜5を備えている。
【0011】
本体膜2は、図2に示すように、上膜21と下膜22とを組み合わせることにより形成されている。上膜21と下膜22は、周縁のみが直接つながれている。図1(b)に示すように、上膜21および下膜22は、8枚の扇形状の本体膜用膜材20,20,…を組み合わせることにより平面視円形状に形成されている。上膜21および下膜22の直径は、タンクTの外径と同等あるいはタンクTの外径よりも大きい。なお、上膜21または下膜22を構成する膜材の枚数は限定されるものではなく、適宜決定すればよい。本体膜用膜材20は、織布に樹脂をコーティングすることにより、空気および水分が透過することがないように構成されている。隣り合う本体膜用膜材20同士は、直線部分(半径方向に沿った縁)において接合されている。なお、本体膜用膜材20同士の接合方法は限定されるものではないが、例えば、溶着または縫着すればよい。本体膜2は、図2に示すように、上膜21と下膜22とを縁部分で密閉することにより形成されている。上膜21と下膜22との接合方法は限定されるものではないが、例えば、縁を全周に渡って溶着または縫着すればよい。なお、本体膜2の周縁は、上膜21と下膜22の周縁部分を上下に重ね合わせた状態で帯状に縫い付けることで補強されている。本体膜2には、図1(b)に示すように、少なくとも1個所の給気口23が形成されていて、内部に給気することが可能に構成されている。本実施形態では上膜21に給気口23が1個所形成されているが、給気口23の数、配置、形状等は限定されるものではなく、適宜決定すればよい。本体膜2の内部に給気すると、上膜21と下膜22とが上下に離隔するように膨張する。図1(a)に示すように、本体膜2の内部には、膨張した際の上膜21と下膜22との間隔を制御するための仕切部材3が設けられている。すなわち、上膜21と下膜22は、周縁において接合されているとともに、中心部から縁までの間において仕切部材3を介して接合されている。
【0012】
仕切部材3は、本体膜2の内部空間において上膜21と下膜22とを接合している。本実施形態の仕切部材3は、帯状の織布の端部同士を接合することにより環状(筒状)に形成されている。仕切部材3の上端は上膜21に接合されていて、仕切部材3の下端は下膜22に接合されている。仕切部材3と上膜21および下膜22との接合方法は限定されるものではないが、例えば、縫着すればよい。図1(b)に示すように、本実施形態では、本体膜2の中心から縁までの間に、2つの仕切部材3,3が等間隔に配設されている。すなわち、本体膜2の内部空間には、仕切部材3が2重に配設されている。内側の仕切部材3は、外側の仕切部材3よりも小さい径を有しているとともに、外側の仕切部材3よりも大きな高さ(幅)を有している。なお、仕切部材3の数や形状寸法は限定されるものではなく、適宜決定すればよい。また、仕切部材3は、必ずしも環状である必要はなく、例えば、平面視格子状であってもよい。仕切部材3には、複数の通気口(図示せず)が形成されていて、給気口23から給気された空気が、仕切部材3によって遮断されることなく、本体膜2の内部空間の全体にいきわたるように構成されている。通気口の形状寸法、配置や数等は限定されるものではなく、適宜決定すればよい。また、仕切部材3を構成する織布は、帯状に限定されるものではなく、例えば、格子状やはしご状の織布であってもよい。また、仕切部材3は、織布(膜材)に限定されるものではなく、例えば、上膜21と下膜22とを接合する複数の紐等であってもよい。
【0013】
本体膜2の周縁には、複数の固定部6が所定の間隔をあけて形成されている。固定部6は、本体膜2をタンクTへ固定するために設けられており、本実施形態では、図3(a)に示すように、引き込みベルト61を有している。引き込みベルト61は、本体膜2の縁から外方向(放射状)に延設されている。なお、引き込みベルト61の数、配置、長さ等は限定されるものではなく、適宜決定すればよい。本実施形態の引き込みベルト61は、本体膜2の縁部分に固定されたサンドイッチプレート62に固定されている。なお、引き込みベルトの固定方法は限定されるものではなく、例えば、本体膜2に直接縫い付けてもよい。
【0014】
サンドイッチプレート62は、図3(b)に示すように、本体膜2を上下から挟むように配設された一対の鋼製プレート63,63からなる。一対の鋼製プレート63,63は、本体膜2を挟んだ状態でボルト接合されている。鋼製プレート63は、矩形状断面の本体膜側の角部が隅切されていることで、角部によって膜材(本体膜2等)が損傷しないように構成されている。図2および図3に示すように、引き込みベルト61の一端部は、折り返した状態で重ねられた先端部が縫着されている。一方の鋼製プレート63を引き込みベルト61の折り返し部分(端部に形成された筒状部)に挿入した状態で、本体膜2の端部に添設し、本体膜2の反対側に添設された鋼製プレート63とボルト接合することで、引き込みベルト61が本体膜2に固定されている。本実施形態では、図3に示すように、引き込みベルト61を挟んで対向する2箇所で鋼製プレート63同士をボルト接合している。
【0015】
カバー材4は、本体膜2の外面を覆っている。図2に示すように、本実施形態では、一対のカバー材4が本体膜2の上面および下面にそれぞれ配設されている。カバー材4は、複数の扇形状のカバー用膜材を組み合わせることにより平面視円形状に形成されている。なお、カバー材4を構成するカバー用膜材の形状は限定されるものではない。また、カバー材4を構成する材料は膜材に限定されるものではなく、例えば、網材(ネット)等であってもよい。カバー用膜材は、織布に樹脂をコーティングすることにより、空気および水分が透過することがないように構成されている。カバー材4の径は、本体膜(上膜または下膜)の径よりも小さい。そのため、カバー材4により本体膜2を覆うと、本体膜2の縁部分がカバー材4の縁から突出する。一対のカバー材4,4の周縁は、本体膜2の周縁に固定されている。本実施形態では、本体膜2の周縁に固定された円帯膜7を介して、カバー材4を本体膜2に固定する。すなわち、カバー材4は、本体膜2に対して直接固定されておらず、円帯膜7を介して縁部分のみが本体膜2に固定されている。
【0016】
円帯膜7は、本体膜2の上下にカバー材4を添設するためのシート材である。円帯膜7は、図2に示すように、本体膜2の縁部分の上下にそれぞれ配設された円形状の膜材である。円帯膜7の外縁は、本体膜2(上膜21または下膜22)の周縁に重ねた状態で縫い付けられている。すなわち、本体膜2の縁部分は、上から順に円帯膜7、上膜21、下膜22、円帯膜7が重ねた状態で縫い付けられている。円帯膜7の内縁には、図3(a)に示すように、複数の貫通孔71,71,…が所定の間隔で設けられている。なお、貫通孔71の周囲は金属部材(いわゆるハトメ)により補強されている。また、カバー材4の周縁にも、円帯膜7と同様に、ハトメで補強された貫通孔41,41,…が形成されている。カバー材4と円帯膜7は、カバー材4の貫通孔41と、円帯膜7の貫通孔71とを挿通させたロープ72により連結されている。なお、カバー材4と本体膜2との固定方法は限定されるものではない。
【0017】
水切り膜5は、図2に示すように、上側のカバー材4の上面に設けられている。本実施形態の水切り膜5は、複数の水切り膜用膜材51,51がカバー材4の周方向に沿って配設されていることにより、円帯状に形成されている(図4参照)。なお、水切り膜5は、1枚の円帯状の膜材により構成されていてもよい。水切り膜用膜材51は、織布に樹脂をコーティングすることにより、空気および水分が透過することがないように構成されている。水切り膜5の内径は、カバー材4の直径よりも小さく、水切り膜5の外形(外径)は、本体膜2およびタンクTの外形(外径)よりも大きい。水切り膜用膜材51の内縁は、図4に示すように、カバー材4の貫通孔41よりも内側(中心側)において、カバー材4の上面に固定されている。なお、水切り膜用膜材51の固定方法は限定されるものではないが、本実施形態では溶着している。隣り合う水切り膜用膜材51は、互いの端部(側縁)同士が重なり合うように配置されている。水切り膜用膜材51の外縁には、タンクTに固定するために使用する、複数の貫通孔52,52,…が所定の間隔をあけて設けられている。なお、貫通孔52は、金属部材(いわゆるハトメ)により補強されている。また、貫通孔52は、水切り膜5のタンクTへの固定方法に応じて形成すればよい。
【0018】
次に、タンクTの上端を塞ぐ覆蓋の形成方法について説明する。
まず、図5(a)〜(c)に示すように、フレームレス覆蓋1を固定するための複数の架台8をタンクTに設置する。複数の架台8は、フレームレス覆蓋1の固定部の位置に応じて、タンクTの上端部に配設する。架台8は、溝型鋼からなる本体部81に、回転止部材82,82、引き込み治具用フック83および水切り膜用フック84が固定されたものである。
【0019】
本体部81は、タンクTの頂部に設けられたフランジ(山型鋼)Tの上面に固定する。本体部81は、本体部81およびフランジTを貫通させたボルトBを利用してタンクTに固定する。本体部81の両側面には、回転止め部材82,82が固定されている。
回転止部材82は、本体部81の側面とフランジTの端面との角部の位置において、下端部が本体部81の底面から下向きに突出した状態で固定されている。本実施形態の回転止め部材82は、丸鋼を本体部81に溶接することにより構成されている。なお、回転止め部材82を構成する材料は限定されるものではなく、例えば、角鋼、平鋼または鉄筋であってもよい。
【0020】
引き込み治具用フック83は、本体部81の先端部(タンクTとの接合部と反対側の端部)において、上向きに突出するように固定された門型部材である。本実施形態の引き込み治具用フック83は、丸鋼をコ字状に加工することにより構成されている。引き込み治具用フック83は、両端部を本体部81の外側面に溶接することにより形成されている。なお、引き込み治具用フック83を構成する材料は限定されるものではなく、例えば、角鋼、平鋼または鉄筋であってもよい。また、引き込み治具用フック83の形状は限定されるものではない。
水切り膜用フック84は、本体部81の先端部(タンクTとの接合部と反対側の端部)において、下向きに突出するように固定されたU字状部材である。本実施形態の水切り膜用フック84は、丸鋼をコ字状に加工することにより構成されている。水切り膜用フック84は、引き込み治具用フック83よりもタンクT側において、両端部を本体部81の外側面に溶接することにより形成されている。なお、水切り膜用フック84を構成する材料は限定されるものではなく、例えば、角鋼、平鋼または鉄筋であってもよい。また、水切り膜用フック84の形状は限定されるものではない。
【0021】
次に、図6(a)に示すように、中空の本体膜2内に給気して当該本体膜2を膨らませる。本実施形態では、地上部において本体膜2を膨らませる。本体膜2は、折り畳まれた状態で保管されていたものを地上で広げた後、コンプレッサーCから供給された空気を、給気管を介して給気口23から供給することにより膨らませる。
本体膜2を膨らませたら、図6(b)に示すように、クレーンMにより、フレームレス覆蓋1をタンクTの上方に配設する。本体膜2の周縁には、図1(b)に示すように、吊上げ用プレート24が固定されている。フレームレス覆蓋1を吊持する際には、クレーンMから延設されたワイヤWを吊上げ用プレート24に係止させた状態で行う。本実施形態では、4つの吊上げ用プレート24が等間隔で配設されているが、吊上げ用プレート24の数は限定されるものではない。
【0022】
フレームレス覆蓋1をタンクTの上端部に配置したら、タンクTに固定する。フレームレス覆蓋1のタンクTへの固定は、図7(a)に示すように、本体膜2の周縁に固定された複数の引き込みベルト61を引き込み治具9によって巻き取ることにより行う。
引き込み治具9は、引き込みベルト61を巻き付ける巻き込み部91と、巻き込み部91に回転させるハンドル92と、架台8に係止するためのフック93とを備えている。そして、フック93を架台8の引き込み治具用フック83に係止させた状態で、巻き込み部91に引き込みベルト61を巻き付ける。次にハンドル92を操作することにより引き込みベルト61を巻き取ることで、フレームレス覆蓋1をタンクTに固定する。このとき、複数の引き込み治具9を順番に操作することにより、本体膜2の周縁に固定された複数の引き込みベルト61に対して均等に張力を付与する。すなわち、フレームレス覆蓋1の固定は、本体膜2の一部に応力が集中することがないように、均等に張力が作用するように行う。
【0023】
フレームレス覆蓋1の固定作業中は、図4に示すように、水切り膜5をカバー材4の上に配置させておき、本体膜2の縁(外周部分)を露出させた状態で行う。本実施形態では、上側のカバー材4の上面に、帯状の面ファスナー53が半径方向に沿って固定されている。水切り膜5の外縁にも面ファスナー(図示せず)が固定されている。そのため、固定作業中は、水切り膜5の面ファスナーをカバー材4の面ファスナー53に固定することにより、本体膜2の外周部分を露出させている。なお、フレームレス覆蓋1の固定作業中のカバー材4の仮止め方法は限定されるものではない。
【0024】
フレームレス覆蓋1を固定したら、図7(a)および(b)に示すように、水切り膜5により取付部分を覆う。水切り膜5の先端(外縁)は、架台8の下面において、架台8の水切り膜用フック84に固定する。すなわち、水切り膜5は、カバー材4と円帯膜7の連結部、本体膜2の周縁および引き込み治具9(架台8)の上方を覆うとともに、架台8の端面を巻き込んだ状態で、周縁が架台8の下方に配設されている。そして、水切り膜5の周縁に形成された貫通孔を挿通させたロープ54を水切り膜用フック84に結び付けることで、水切り膜5を架台8に固定する。なお、水切り膜5の架台8への固定方法は限定されるものではなく、例えば、フック等の治具を利用してもよい。
【0025】
タンクTの解体作業を再開する際には、フレームレス覆蓋1をタンクTの上端から撤去する。撤去したフレームレス覆蓋1は、折り畳んだ状態で保管しておく。また、タンクTの上端に設けられた架台8は、解体作業の進行に伴い盛り替える(着脱する)。
【0026】
本実施形態のフレームレス覆蓋1によれば、フレーム(枠部材)を使用することなく、複数の膜を組み合わせることにより形成されているため、軽量で取扱いやすい。そのため、フレームレス覆蓋1の着脱作業の効率化を図ることができ、ひいては、工期短縮化を図ることができる。また、揚重機(クレーン等)Mの省力化が可能なため、経済的である。また、フレームレス覆蓋1は、折り畳むことができるため、仮置きに大きな用地を必要としない。また、軽量で、かつ、折り畳むことで小さくできるため、個別の搬入、搬出用の大型車両を必要とせず、輸送コストの低減化が可能である。
【0027】
本体膜2は、仕切部材3により上下方向の膨張が制限されているため、上下方向に必要以上に膨らむことはない。そのため、フレームレス覆蓋1とタンクTとの間に隙間が形成されることがなく、蓋材としての密封性が維持され、ひいては、タンクT内への雨水等の浸入およびタンクT内から粉塵等の飛散を防止することができる。また、本体膜2の周縁とタンクTとの接合部は、水切り膜5によって覆われているため、接合部からタンクT内への雨水等の浸入が防止されている。
また、カバー材4により本体膜2が覆われているため、何らかの原因によって本体膜2が破損することが防止されている。また、仕切部材3の接合部において本体膜2の上面に溝が形成された場合であっても、カバー材4により覆われていることで、本体膜2の上面に雨水が溜まることが防止されている。
【0028】
本体膜2(上膜21および下膜22)およびカバー材4は、扇型状の膜材を組み合わせることにより、膜材同士が半径方向に沿って放射状に接合されているため、本体膜2内に給気した際の作用圧力や、タンクTへの固定時に作用する引張力が、一箇所に集中することなく均等に作用する。そのため、フレームレス覆蓋1の破損が抑制され、繰り返し長期使用することが可能となる。
また、タンクTの頂部に固定する際に各引き込みベルト61に対して均等に張力を付与することで、本体膜2の形状のバランスを保つとともに、応力集中による破損を防止することができる。そのため、密封性に優れた覆蓋が形成される。
また、本体膜2の内部に環状の仕切部材3が配設されているため、フレームレス覆蓋1を円盤状の形状を維持したまま吊り上げることができる。そのため、吊持した際に折れ曲がった場合の修復に要する手間等を省略することができ、簡易に着脱作業を行うことができる。また、仕切部材3に通気孔が形成されているため、本体膜2全体に空気が行き渡る。
【0029】
引き込み治具9として一般的に使用されている装置を使用することで、特殊な技能を要することなく簡易にフレームレス覆蓋1の着脱作業を行うことができる。また、一般的な装置に流通している装置を使用することによってコスト削減も図ることができる。
また、簡易な構成の架台8を使用しているため、多数使用する架台8の製造コストが安価である。また、タンクTへの架台8の着脱も容易なため、施工性に優れている。
【0030】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
前記実施形態では、地上で本体膜に給気する場合について説明したが、本体膜をタンクの頂部に固定した後に給気してもよい。例えば、強風時等において、膨らませたフレームレス覆蓋を吊持するのが危険な場合にこのようにすれば、風の影響を受け難くなる。
前記実施形態では、本体膜の上面と下面にカバー材がそれぞれ配設されている場合について説明したが、カバー材は、少なくとも本体膜の上面に配設されていればよい。
【符号の説明】
【0031】
1 フレームレス覆蓋
2 本体膜
20 本体膜用膜材(膜材)
21 上膜
22 下膜
3 仕切部材
4 カバー材
5 水切り膜
6 固定部
61 引き込みベルト
8 架台
9 引き込み治具
T タンク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7