(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6912241
(24)【登録日】2021年7月12日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】車両用衝突判定装置
(51)【国際特許分類】
B60R 19/48 20060101AFI20210727BHJP
B60R 19/18 20060101ALI20210727BHJP
B60R 21/013 20060101ALI20210727BHJP
B60R 21/34 20110101ALI20210727BHJP
【FI】
B60R19/48 G
B60R19/18 P
B60R21/013
B60R21/34
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-66467(P2017-66467)
(22)【出願日】2017年3月29日
(65)【公開番号】特開2018-167696(P2018-167696A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2019年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100142550
【弁理士】
【氏名又は名称】重泉 達志
(74)【代理人】
【識別番号】100180758
【弁理士】
【氏名又は名称】荒木 利之
(72)【発明者】
【氏名】山本 健太郎
【審査官】
久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−155411(JP,A)
【文献】
特開2016−037206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/00,
B60R 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向へ延びるバンパビームと、
前記バンパビームの前方に配置され車幅方向へ延びるバンパフェースと、
前記バンパビームと前記バンパフェースの間に配置される衝撃吸収部材と、
前記衝撃吸収部材と前記バンパビームの間に配置されるセンサチューブと、を備え、
前記衝撃吸収部材は、下側が、前端側と後端側とで不連続に形成され、
前記衝撃吸収部材の下側における前端側と後端側とで不連続に形成される部分は、前後方向について、前記センサチューブより前側に配置される車両用衝突判定装置。
【請求項2】
前記衝撃吸収部材は、下側に、前端側と後端側を不連続とする切欠部を有する請求項1に記載の車両用衝突判定装置。
【請求項3】
前記衝撃吸収部材は、下側に、前端側と後端側を不連続とする切込部を有する請求項1に記載の車両用衝突判定装置。
【請求項4】
前記衝撃吸収部材は、前記センサチューブより高い位置に、所定の上下寸法で、前記衝撃吸収部材の最前端から最後端まで連続的に形成される連続形成部を有する請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用衝突判定装置。
【請求項5】
前記衝撃吸収部材は、側面断面にて、前端の上下方向寸法が、他の部分の上下方向寸法と同じ若しくは大きい請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用衝突判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンパビームとバンパフェースの間に衝撃吸収部材及びセンサチューブが配置される車両用衝突判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歩行者との衝突を検知するために、バンパビームとバンパフェースの間に衝撃吸収部材及びセンサチューブが配置された車両用衝突判定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この車両用衝突判定装置は、衝撃吸収部材における車両上下方向の下部側に形成され、車両前後方向の前面が一般面から車両前方側に突出する突部を有している。これにより、ロードサイドマーカーなどの路上障害物と車両との衝突時には、衝撃吸収部材の下部側の突部で路上障害物を押し倒すことで、センサチューブへの荷重の伝達を減少させることができ、歩行者衝突検出センサにより衝突が検出されることを抑制することができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−131508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の車両用衝突判定装置では、路上障害物が押し倒すことのできないものの場合、却って衝撃吸収部材に大きな荷重が作用し、センサチューブにより衝突が検出されてしまう。
【0005】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、歩行者以外の路上障害物がバンパに衝突した際に、センサチューブ内の圧力変動をより確実に抑制することのできる車両用衝突判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明によれば、車幅方向へ延びるバンパビームと、前記バンパビームの前方に配置され車幅方向へ延びるバンパフェースと、前記バンパビームと前記バンパフェースの間に配置される衝撃吸収部材と、前記衝撃吸収部材と前記バンパビームの間に配置されるセンサチューブと、を備え、前記衝撃吸収部材は、下側が、前端側と後端側とで不連続に形成されている車両用衝突判定装置が提供される。
【0007】
この車両用衝突判定装置によれば、バンパに歩行者が衝突した場合、歩行者の脚部付近がバンパの上下方向にわたって接触する。このとき、歩行者の重心はバンパよりも上方にあるため、バンパフェースを介して衝撃吸収部材に、前端の上端側から斜め下方へ向かって荷重が加わる。そして、衝撃吸収部材は、前部上側の部分から後部下側へ向かって順次、押圧されて変形していく。このとき、変形された衝撃吸収部材がセンサチューブを押圧し、センサチューブ内の圧力変動により歩行者がバンパに衝突したことが検知される。
一方、路上マーカー、小動物等の路上障害物がバンパに接触した場合、バンパフェースを介して衝撃吸収部材に、前端の下端側から斜め上方へ向かって荷重が加わる。そして、衝撃吸収部材は、前部下側の部分から後部上側へ向かって順次、押圧されて変形していく。ここで、衝撃吸収部材の下側は前端側と後端側とで不連続に形成されていることから、前端側は後端側と独立して後部上側へ向かって変形し、後端側の変形が抑制される。従って、センサチューブを押圧し難く、センサチューブ内の圧力変動は歩行者の場合と比べて大幅に低減される。
【0008】
また、上記車両用衝突判定装置において、前記衝撃吸収部材は、下側に、前端側と後端側を不連続とする切欠部を有してもよい。
【0009】
また、上記車両用衝突判定装置において、前記衝撃吸収部材は、下側に、前端側と後端側を不連続とする切込部を有してもよい。
【0010】
また、上記車両用衝突判定装置において、前記衝撃吸収部材は、前記センサチューブより高い位置に、所定の上下寸法で、前記衝撃吸収部材の最前端から最後端まで連続的に形成される連続形成部を有していてもよい。
【0011】
この車両用衝突判定装置によれば、連続形成部により、衝突時における十分なエネルギ吸収量を確保することができる。
【0012】
また、上記車両用衝突判定装置において、前記衝撃吸収部材は、側面断面にて、前端の上下方向寸法が、他の部分の上下方向寸法と同じ若しくは大きくともよい。
【0013】
この車両用衝突判定装置によれば、衝撃吸収部材の前端の面積を大きくして、衝突初期のエネルギ吸収量を大きくすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、歩行者以外の路上障害物がバンパに衝突した際に、センサチューブ内の圧力変動をより確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態を示し、センサチューブの設置状態を示す自動車車両の前部の概略斜視図である。
【
図2】歩行者とバンパの位置関係を示す説明図である。
【
図4】歩行者が衝突した際に、衝撃吸収部材に斜め下方へ向かって荷重が加わる状態を示す説明図である。
【
図5】歩行者が衝突した際の衝撃吸収部材の変形状態を示す説明図である。
【
図6】歩行者が衝突した際の衝撃吸収部材の圧潰状態を示す説明図である。
【
図7】路上障害物が衝突した際の衝撃吸収部材の変形状態を示す説明図である。
【
図8】変形例を示すバンパ構造の断面説明図である。
【
図9】路上障害物が衝突した際の衝撃吸収部材の変形状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1から
図7は本発明の一実施形態を示し、
図1はセンサチューブの設置状態を示す自動車車両の前部の概略斜視図、
図2は歩行者とバンパの位置関係を示す説明図、
図3はバンパ構造の断面説明図、
図4は歩行者が衝突した際に衝撃吸収部材に斜め下方へ向かって荷重が加わる状態を示す説明図、
図5は歩行者が衝突した際の衝撃吸収部材の変形状態を示す説明図、
図6は歩行者が衝突した際の衝撃吸収部材の圧潰状態を示す説明図、
図7は路上障害物が衝突した際の衝撃吸収部材の変形状態を示す説明図である。尚、
図1は説明のため、バンパフェース及び衝撃吸収部材を省略して図示している。
【0017】
この自動車車両は、例えば鉄系、アルミニウム系等の金属板をプレス成型したパネル状の部材を集成し、スポット溶接等で接合した車体を有している。
図1に示すように、自動車車両は車体として、車幅方向へ延びるバンパビーム10を有する。バンパビーム10は、前後方向へ延びる左右一対のサイドフレームに接続される。バンパビーム10は、車幅方向について、中央部が各端部よりも前方へ張り出すように、湾曲して形成されている。
図2に示すように、バンパビーム10は、側面視の断面が閉断面となるよう形成されている。
【0018】
図2に示すように、バンパビーム10の前方には車幅方向へ延びるバンパフェース20が配置される。バンパフェース20は、例えば樹脂からなり、前面が自動車車両の意匠面をなしている。
【0019】
図2に示すように、バンパビーム10とバンパフェース20の間には、衝撃吸収部材30が配置される。衝撃吸収部材30は、例えば発泡樹脂からなり、例えばウレタンフォームとすることができる。
図2に示すように、衝撃吸収部材30の高さは、一般的な成人男性を想定した場合、おおよそ歩行者の脚部の膝付近となる。
【0020】
図3に示すように、衝撃吸収部材30は後端がバンパビーム10に固定され、衝撃吸収部材30の後端における上下方向所定位置には、センサチューブ40を受容する凹状の受容部31が形成される。衝撃吸収部材30は、下側が、前端側と後端側とで不連続に形成されている。具体的に、衝撃吸収部材30は、下側に、前端側と後端側を不連続とする切欠部32を有している。本実施形態においては、衝撃吸収部材30の下面33は略水平に形成され、切欠部32は矩形状に形成される。
【0021】
図3に示すように、センサチューブ40は、衝撃吸収部材30とバンパビーム10の間に配置される。
図1に示すように、センサチューブ40は、バンパビーム10の前面に沿って車幅方向へ延びて配置される。センサチューブ40は、例えば樹脂からなり、断面が円形に形成される。センサチューブ40の両端には、チューブ内の圧力変化を検出する圧力検出部が接続される。センサチューブ40が押圧されて変形すると、圧力変化に対応する信号が圧力検出部からECUへ出力される。ECUは、当該信号に基づいて、バンパへの衝突体が、歩行者であるのか、路上マーカー、小動物等の路上障害物であるのかを判定するようになっている。
【0022】
図3に示すように、衝撃吸収部材30は、センサチューブ40より高い位置に、所定の上下寸法で、衝撃吸収部材30の最前端から最後端まで連続的に形成される連続形成部34を有する。連続形成部34の上下寸法は、衝撃吸収部材30全体の上下寸法の1/3以下とすることが好ましく、本実施形態においては1/3である。
【0023】
また、本実施形態においては、衝撃吸収部材30の上面35は略水平に形成され、衝撃吸収部材30は側面断面にて、前端の上下方向寸法が、他の部分の上下方向寸法と同じ若しくは大きくなっている。
【0024】
以上のように構成された車両用衝突判定装置によれば、バンパに歩行者が衝突した場合、
図4に示すように、歩行者の脚部付近がバンパの上下方向にわたって接触する。このとき、歩行者の重心はバンパよりも上方にあるため、バンパフェース20を介して衝撃吸収部材30に、前端の上端側から斜め下方へ向かって荷重が加わる。そして、
図5に示すように、衝撃吸収部材30は、前部上側の部分から後部下側へ向かって順次、押圧されて変形していく。このとき、変形された衝撃吸収部材30がセンサチューブ40を押圧し、センサチューブ40内の圧力変動により歩行者がバンパに衝突したことが検知される。
図6に示すように、この後も衝撃吸収部材30は変形をし続け、最終的には前後方向に薄く潰れることとなる。
【0025】
一方、路上マーカー、小動物等の路上障害物がバンパに接触した場合、バンパフェース20を介して衝撃吸収部材30に、前端の下端側から斜め上方へ向かって荷重が加わる。そして、
図7に示すように、衝撃吸収部材30は前部下側の部分から後部上側へ向かって順次、押圧されて変形していく。ここで、衝撃吸収部材30の下側は前端側と後端側とで不連続に形成されていることから、前端側は後端側と独立して後部上側へ向かって変形し、後端側の変形が抑制される。従って、センサチューブ40を押圧し難く、センサチューブ40内の圧力変動は歩行者の場合と比べて大幅に低減される。
【0026】
この結果、ECUは、バンパへの衝突体が、歩行者であるのか、路上マーカー、小動物等の路上障害物であるのかを確実に判定することができる。従って、従来公知のもののように路上障害物を押し倒ざずとも、センサチューブ40内の圧力変動の抑制が実現される。
【0027】
また、本実施形態の車両用衝突判定装置によれば、衝撃吸収部材30が最前端から最後端まで連続的に形成される連続形成部34を有しているので、衝突時における十分なエネルギ吸収量が確保される。ここで、連続形成部34の上下寸法は、衝撃吸収部材30全体の上下寸法の1/3以下であり、
図6に示すように、衝突時に衝撃吸収部材30が前後方向に潰れる際に、衝撃吸収部材30は連続形成部34以外の部分に入り込んで変形していき、最終的に前後方向に薄く潰れることとなる。これにより、バンパ側から歩行者への入力の低減を図ることができる。
【0028】
また、本実施形態の車両用衝突判定装置によれば、衝撃吸収部材30は側面断面にて、前端の上下方向寸法が、他の部分の上下方向寸法と同じ若しくは大きくなっている。これにより、衝撃吸収部材30の前端の面積を大きくして、衝突初期のエネルギ吸収量を大きくすることができる。
【0029】
尚、衝撃吸収部材30は、下側が、前端側と後端側とで不連続に形成されていれば、その形状を自動車車両の仕様、要求性能等に応じて任意に変更することができる。例えば、
図8に示すように、前記実施形態の切欠部32に代えて、衝撃吸収部材130の下側に切込部132を形成してもよい。この衝撃吸収部材130は、下面133が後方へ向かって下方へ傾斜し、上面135が後方へ向かって上方へ傾斜している。この衝撃吸収部材130であっても、
図9に示すように、路上障害物がバンパに接触した場合に、前端側は後端側と独立して後部上側へ向かって変形し、後端側の変形が抑制される。
【0030】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0031】
10 バンパビーム
20 バンパフェース
30 衝撃吸収部材
31 受容部
32 切欠部
33 下面
34 連続形成部
35 上面
40 センサチューブ
130 衝撃吸収部材
132 切込部
133 下面
135 上面