(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一絶縁部及び前記第二絶縁部は、前記超音波融着部との重なり長さが0.1mm以上5mm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の色素増感太陽電池。
前記第一絶縁部及び前記第二絶縁部のそれぞれの端部における前記超音波融着部との重なり開始位置からの先端までの長さ寸法Kを前記超音波融着部の幅寸法Lで割った値の範囲は、0<K/L<1.5の範囲で設定されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の色素増感太陽電池。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の色素増感太陽電池では、絶縁加工の距離が短く不十分であったり、あるいは超音波融着部の位置が長手方向にずれた位置に絶縁処理がなされるおそれがある。この場合、幅方向に隣り合うセル同士が絶縁されない部分が生じ、セル間で電気が流れてリークし、発電効率が低下するという問題があり、その点で改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、セル間を確実に絶縁することでセル間におけるリークの発生を抑制することができ、発電効率の低下を防ぐことができる色素増感太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る色素増感太陽電池は、第一基材の表面に透明導電膜が成膜され、前記第一基材の前記透明導電膜の表面に第一の方向に延在する色素が吸着した帯状の半導体層が複数形成された第一電極と、第二基材の表面に前記第一電極に対向するように対向導電膜が成膜された第二電極と、前記第一電極と前記第二電極との間で電解液を封止し、平面視で前記第一の方向に直交する第二の方向に複数のセルを配列する封止材と、前記封止材に覆われた状態で設けられ、前記第一電極と前記第二電極とを電気的に接続する導通材と、前記第一電極及び前記第二電極に対して前記第二の方向に延在し、前記第一の方向に分割されたサブモジュールを形成する超音波融着部と、前記第二の方向に隣り合う前記セル同士の間において、前記封止材に接して前記透明導電膜に形成され前記第一の方向に延びる第一絶縁部、及び前記封止材に接して前記対向導電膜に形成され前記第一の方向に延びる第二絶縁部と、を備え、隣り合う前記サブモジュールにおける前記第二の方向に並ぶ前記セル同士の間において、前記第一絶縁部及び前記第二絶縁部は、それぞれ前記超音波融着部によって絶縁される前記サブモジュール毎に前記導通材を挟んで前記第二の方向に交互にずれた位置に配置され、前記第一絶縁部及び前記第二絶縁部の端部側の少なくとも一部が前記超音波融着部の領域に重なるように前記第一の方向に延ばされていることを特徴としている。
【0007】
本発明では、第一絶縁部及び第二絶縁部の端部が超音波融着部の領域内まで延ばされた状態で配置され、これら端部が超音波融着部に重なるように配置されているので、製造過程において超音波融着部の位置が第一の方向にずれた位置に形成された場合でも、これら絶縁部と超音波融着部との間に離間が生じることを防止することができる。そのため、第二の方向に隣り合うセル同士が確実に絶縁されることから、これらセル間におけるリークの発生を抑制することができ、発電効率の低下を防ぐことが可能でセル同士が直列に電気的に接続される。
また、超音波融着部に重なる第一絶縁部及び第二絶縁部は、透明導電膜と対向導電膜の所定位置において、上述したように超音波融着部の領域に重なるように第一の方向に沿って例えば切込み加工やレーザー加工を施すことにより簡単に製造することが可能となる。そのため、ロール・ツー・ロール方式(以下、RtoR方式とする)にも簡単に適応できる。
【0008】
また、本発明に係る色素増感太陽電池は、隣り合う前記サブモジュール同士は、前記第二の方向の一方の端部側で配線材を介して直列配線により電気的に接続され、前記サブモジュールを流れる電流の向きは、前記第一の方向に配列される前記サブモジュール毎に交互に入れ替わる回路構成をなしていてもよい。
【0009】
この場合には、隣り合うサブモジュール同士が第二の方向の一方の端部側で配線材を介して電気的に直列に接続されているから、一方のサブモジュールにおいて第二の方向の他端側から一端側へ電気が流れるとともに、一端側の電気が他方のサブモジュールの一端側に配線材を介して流れ、さらに他方のサブモジュールにおいて第二の方向の一端側から他端側へ電気が流れる回路構成を実現することができる。
【0010】
また、本発明に係る色素増感太陽電池は、前記セル同士の間において、隣り合う前記サブモジュールのうち一方の前記絶縁部と他方の前記絶縁部の互いに近接する側の端部同士が前記第一の方向に重なっていることが好ましい。
【0011】
この場合には、第一絶縁部及び第二絶縁部の端部同士が超音波融着部の領域内で第一の方向に重なっていることから、第二の方向に隣り合うセル同士を確実に絶縁することができる。
【0012】
また、本発明に係る色素増感太陽電池は、前記第一絶縁部及び前記第二絶縁部は、前記超音波融着部との重なり長さが0.1mm以上5mm以下であることが好ましい。
【0013】
この場合には、重なり長さの範囲を0.1mm以上5mm以下に設定することで、RtoR方式による製造方法において超音波融着部の第一の方向への標準的なずれ量(例えば0.1mm)が生じた場合でも、第一絶縁部及び第二絶縁部が超音波融着部から離間する可能性が小さくなり、第二の方向に隣り合うセル間のリークを防止することができる。
【0014】
また、本発明に係る色素増感太陽電池は、前記第一絶縁部及び前記第二絶縁部のそれぞれの端部における前記超音波融着部との重なり開始位置からの先端までの長さ寸法Kを前記超音波融着部の幅寸法Lで割った値の範囲は、0<K/L<1.5の範囲で設定されていることが好ましい。
また、前記K/Lの範囲は、0.5<K/L<1.5の範囲で設定されていることがより好ましい。
さらに、前記K/Lの範囲は、1.0<K/L<1.5の範囲で設定されていることがより好ましい。
【0015】
この場合には、RtoR方式による製造方法において超音波融着部の第一の方向への標準的なずれ量(例えば0.1mm)が生じた場合でも、第一絶縁部及び第二絶縁部が超音波融着部から離間する可能性が小さくなり、第二の方向に隣り合うセル間のリークを防止することができる。しかも、K/Lの値が1.5より小さいことから、一方のサブモジュールの絶縁部の先端が他方のサブモジュール側に突出する長さも小さく抑えることができるので、他方のサブモジュールにおける電気抵抗となることを抑制することができる。
また、K/Lの値が0.5を超えるときには、上述したような超音波のずれに対してもより確実に対応することができ、かつ、超音波部が第一絶縁部または第二絶縁部にかからないほどずれた場合であっても、電気の通り道が絶縁部を迂回するように流れるために抵抗が高くなり、電池性能の低下を軽減できる。さらに1.0を超えるときには、上述したような超音波融着部のずれや第一絶縁部または第二絶縁部にかからないほどのずれに対してもさらに確実な改善効果が望め、製造される電池性能の安定性を高めることができる。
【0016】
また、本発明に係る色素増感太陽電池は、前記超音波融着部によって前記第一の方向に分割された一対の前記サブモジュールから構成され、前記第二の方向の一端側のみが前記配線材によって電気的に接続された回路構成をなしていることを特徴としてもよい。
【0017】
この場合には、第二の方向の一方の端部側のサブモジュール同士が配線材によって電気的に接続され、一対のサブモジュールを分割する超音波融着部に対して各サブモジュールの絶縁部の端部が重なった状態となる。そのため、各サブモジュールにおいて、第二の方向に隣り合うセル同士を確実に絶縁することができ、全体が平面視でU字状に電気が流れる構造を実現することができる。したがって、本発明では、取り出し電極(正極、負極)を第二の方向の他方の端部側のみで同じ側に配置することが可能となり、配線構造が簡略化でき、配線作業を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の色素増感太陽電池によれば、セル間を確実に絶縁することでセル間におけるリークの発生を抑制することができ、発電効率の低下を防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態による色素増感太陽電池について、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明で用いる図面は模式的なものであり、長さ、幅、及び厚みの比率、構造等は実際のものと同一とは限らず、適宜変更できる。
【0021】
(第1の実施の形態)
図1に示すように、本実施の形態の色素増感太陽電池1は、後述するロール・ツー・ロール方式(以下、RtoR方式と記載する)によって作製された第一の方向(長手方向X1)に長く延在するフィルム型の色素増感太陽電池を所定の長さに切断することにより製造される。
【0022】
なお、
図1において、矢印は電気の流れを示し(
図2も同様)、記号+(プラス)、−(マイナス)はそれぞれ正極、負極を示している(他の図も同様)。
ここで、色素増感太陽電池1において、上述したように、長手方向X1をサブモジュールRの配列方向とし、幅方向X2を平面視で長手方向X1に直交する方向として、以下統一して用いる。
【0023】
本実施の形態の色素増感太陽電池1は、
図2に示すように、光電極11と、該光電極11と対向して設けられる対向電極12とを有する色素増感太陽電池セル(以下、単にセルCという)が、一対の基材3A、3Bの間に介挿された構造を有してなる。そして、色素増感太陽電池1は、一対の基材3A、3Bのそれぞれの内面が導電性を有する導電膜11A、12Aが成膜されており、導電膜11A、12Aに対して光電極11の半導体層11B及び対向電極12の触媒層12Bが電気的に接続され、概略構成される。
【0024】
色素増感太陽電池1は、上述したように光電極11と対向電極12とが封止機能付きの導通材14を介して対向配置され、第一基材3A及び第二基材3Bの間に形成された複数のセルC,C,…が幅方向X2に沿って電気的に直列接続されている。
【0025】
具体的に色素増感太陽電池1は、第一基材3Aと、第二基材3Bと、光電極11(第一電極)と、対向電極12(第二電極)と、電解液13と、導通材14と、封止材15と、第一絶縁部16と、第二絶縁部17と、超音波融着部18と、を備えている。
光電極11は、第一基材3A上に積層された透明導電膜11Aと、透明導電膜11A上に積層された多孔質の半導体層11Bと、を備えている。対向電極12は、第二基材3B上に積層された対向導電膜12Aと、対向導電膜12A上に積層された触媒層12Bと、を備えている。
【0026】
第一基材3A及び第二基材3Bの材質は、特に限定されず、例えば、フィルム状の樹脂等の絶縁体、半導体、金属、ガラス等が挙げられる。前記樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリイミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド等が挙げられる。薄くて軽いフレキシブルな色素増感太陽電池1を製造する観点からは、基材は透明樹脂製であることが好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム又はポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムであることがより好ましい。なお、第一基材3Aの材質と第二基材3Bの材質とは、異なっていても構わない。
【0027】
光電極11は、第一基材3Aの表面に透明導電膜11Aが成膜され、第一基材3Aの透明導電膜11Aの表面に長手方向X1に延在する色素が吸着した帯状の半導体層11Bが複数形成されている。対向電極12は、光電極11に対向するように対向導電膜12Aが成膜されている。
【0028】
透明導電膜11A、対向導電膜12Aの種類や材質は、特に限定されず、公知の色素増感太陽電池に使用される導電膜が適用可能であり、例えば、金属酸化物で構成される薄膜が挙げられる。前述の金属酸化物としては、スズドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アルミドープ酸化亜鉛(ATO)、酸化インジウム/酸化亜鉛(IZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)等が例示できる。
【0029】
半導体層11Bは、吸着した光増感色素から電子を受け取ることが可能な材料によって構成され、通常は多孔質であることが好ましい。半導体層11Bを構成する材料は特に限定されず、公知の半導体層11Bの材料が適用可能であり、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ等の金属酸化物半導体が挙げられる。
半導体層11Bに担持される光増感色素は特に限定されず、例えば有機色素、金属錯体色素等の公知の色素が挙げられる。前述の有機色素としては、例えば、クマリン系、ポリエン系、シアニン系、ヘミシアニン系、チオフェン系等が挙げられる。前記金属錯体色素としては、例えば、ルテニウム錯体等が好適に用いられる。
【0030】
触媒層12Bを構成する材料は、特に限定されず、公知の材料を適用可能であり、例えば、白金、カーボンナノチューブ等のカーボン類、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)等の導電性ポリマー等が挙げられる。
【0031】
電解液13は、光電極11の半導体層11Bと対向電極12との間に封止されている。電解液13としては、公知の色素増感太陽電池で使用されている電解液を適用でき、例えばヨウ素とヨウ化ナトリウムが有機溶媒に溶解された電解液等が挙げられる。電解液13が接触する半導体層11Bにおいて多孔質内部を含む表面には、図示しない公知の光増感色素が吸着している。
【0032】
封止材15は、電解液13を封止するとともに、幅方向X2に分割された複数のセルCを配列する構成となっている。封止材15は、対向する第一基材3A及び第二基材3Bを接着し、且つこれら基材3A、3B間に形成されたセルCを封止することが可能な非導電性の部材であれば特に制限されない。
【0033】
封止材15の材料としては、例えば、ホットメルト接着剤(熱可塑性樹脂)、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、並びに、紫外線硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂を含んだ樹脂等、一時的に流動性を有し、適当な処理により固化される樹脂材料等が挙げられる。前記ホットメルト接着剤としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。前記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ベンゾオキサゾン樹脂等が挙げられる。前記紫外線硬化性樹脂としては、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等の光重合性のモノマーを含むものが挙げられる。
【0034】
導通材14は、封止材15によって幅方向X2の両側が覆われた状態で設けられ、光電極11の透明導電膜11Aと対向電極12の対向導電膜12Aとに直接接触し、光電極11と対向電極12とを電気的に接続する。
【0035】
導通材14は、光電極11と対向電極12との間で互いに平行に配され、第一基材3A上の光電極11と第二基材3B上の対向電極12とに接している。導通材14は、例えば、導線、導電チューブ、導電箔、導電板および導電メッシュ、導電ペーストから選ばれる1種以上が用いられる。ここで導電ペーストとは、比較的剛性が低く、柔らかい形態の導電性材料であり、例えば固形の導通材が有機溶媒、バインダー樹脂等の粘性を有する分散媒に分散された形態を有し得る。導通材14は、両面接着タイプの銅テープのように、導通と接着の両方の機能を有していても良い。
【0036】
導通材14に用いる導電材料としては、例えば、金、銀、銅、クロム、チタン、白金、ニッケル、タングステン、鉄、アルミニウム等の金属、或いはこれらの金属のうち2種以上の合金等が挙げられるが、特に限定されない。また、導電性の微粒子(例えば、前記金属又は合金の微粒子、カーボンブラックの微粒子等)が分散された、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の樹脂組成物等も前記材料として挙げられる。
【0037】
導通材14の幅方向X2の両側には封止材15,15が配され、導通材14と封止材15とにより、光電極11と対向電極12との間を接着している。また、色素増感太陽電池1には、
図1及び
図3に示すように、長手方向X1に複数のサブモジュールR、R、…を画成するように、幅方向X2に沿って延びる超音波融着部18が形成されている。超音波融着部18は、超音波融着等の手段(
図4に示す超音波融着手段46参照)により絶縁及び接着されることにより形成される。
このようにして、それぞれに半導体層11Bを有するセルCは、導通材14によって、光電極11と対向電極12の間に形成される厚み方向の間隙内に電解液13が液密に封止された状態で形成されている。
【0038】
透明導電膜11A及び対向導電膜12Aの所定の箇所には、それぞれ例えば刃物を備えた切込み装置やレーザー照射装置等を用いて絶縁処理された複数のパターニング部(第一絶縁部16、第二絶縁部17)が設けられている。つまり、
図2に示すように、第一絶縁部16は、透明導電膜11Aにおける所定の封止材15に接触する位置において、上述した絶縁処理により長手方向X1に延びて形成されている(
図5参照)。第二絶縁部17は、対向導電膜12Aにおける所定の封止材15に接触する位置において、上述した絶縁処理により長手方向X1に延びて形成されている(
図6参照)。そして、本色素増感太陽電池1では、幅方向X2に隣り合うセルC、Cのうち一方のセルC(
図2のC1)における第一基材3Aに形成される隣り合う第一絶縁部16、16同士の間の透明導電膜11Aと、他方のセルC(
図2のC2)における第二基材3Bに形成される隣り合う第二絶縁部17、17同士の間の対向導電膜12Aとが、一方のセルC1と他方のセルC2との間に配置される導通材14に接続されている。
【0039】
また、
図5に示すように、サブモジュールR、Rのうち一方のサブモジュールRの第一絶縁部16と、他方のサブモジュールRの第一絶縁部16とは、幅方向X2にずれた位置にパターニングされている。これは、
図6に示す第二絶縁部17についても同様である。
【0040】
図7及び
図8に示すように、第一絶縁部16及び第二絶縁部17は、幅方向X1に配置されるセルC、C同士の間において、超音波融着部18によって絶縁されるサブモジュールR毎に幅方向X2で導通材14を挟んで交互にずれた位置に配置されている。そして、
図9(a)、(b)に示すように、セルC、C同士の間において、隣り合うサブモジュールR、Rのそれぞれに形成される第一絶縁部16の端部16a、及び第二絶縁部17の端部17aは、超音波融着部18に重なるように長手方向X1で超音波融着部18の領域内まで延ばされた状態で配置されている。さらに、セルC、C同士の間において、隣り合うサブモジュールR、Rのうち一方の絶縁部16、17と他方の絶縁部16、17の互いに近接する側の端部16a、17a同士が長手方向X1に重なっている。
なお、第一絶縁部16及び第二絶縁部17は、超音波融着部との重なり長さK(
図9(a))が0.1mm以上5mm以下に設定されている。
【0041】
次に、本実施の形態の色素増感太陽電池1におけるRtoR方式による製造方法について、図面を用いて具体的に説明する。
図4に示すように、色素増感太陽電池1を製造方法は、先ず、半導体電極形成部(図示省略)において、例えばエアロゾルデポジション(AD)法を用いることにより、透明導電膜11Aが成膜された第一基材3A上にTiO2を積層することで半導体層11Bを幅方向X2に間隔をあけて形成した後、半導体層11B上に色素を一般的な手法によって吸着させることで、光電極11を形成する。また、対向電極形成部(図示省略)において、スパッタリング法により対向導電膜12Aが成膜された第二基板3B上に白金(Pt)を積層して触媒層12Bを形成することで、対向電極12を形成する。
【0042】
半導体電極形成部で作製された光電極11を形成し第一移動方向P1に移動する第一基材3Aでは、切込み加工装置50において、半導体層11Bと半導体層11Bとの間の位置で半円刃52の回転により長手方向X1と平行に延びる第一絶縁部16を形成する絶縁加工が行われる。このとき、第一絶縁部16は、
図5に示すように、一定の間隔(サブモジュールRの長手方向X1の長さ)毎に幅方向X2に交互にずれた位置となる規則的な絶縁加工パターンが形成される。このように交互に絶縁加工パターンを配置することで、サブモジュールR毎に+極(正極)と−極(負極)の位置を規則的に入れ替えることができる。
【0043】
ここで、第一絶縁加工部41は、
図10及び
図11に示すように、本実施の形態では複数の半円刃52を備えた切込み加工装置50を採用している。切込み加工装置50は、軸O1を中心にして回転自在に設けられた回転軸51と、回転軸51の周囲に軸O1方向に所定間隔をあけて配置された半円刃52と、を備え、回転軸51の軸O1方向を幅方向X2に向けて配置されている。
半円刃52は、回転軸51の外周面の円周方向に沿って180°の範囲に連続して設けられ、軸O1方向から見て全周のうち所定の半周部分の領域に配置された第一半円刃52Aと、第一半円刃52Aが配置されていない別の半周部分の領域に配置された第二半円刃52Bと、からなる。これら複数の第一半円刃52Aは、超音波融着部18によって長手方向X1に画成される第一基材3AのサブモジュールRのうち隣接する一方のサブモジュールRの複数の絶縁部16を同時に形成する。また、複数の第二半円刃52Bは、前記隣接するサブモジュールRのうち他方の領域の複数の絶縁部16を同時に形成する。半円刃52の周長(外周長)は、サブモジュールRにおいて絶縁加工される絶縁部16の長手方向X1の長さに一致するように設定されている。
【0044】
軸O1方向に隣り合う第一半円刃52A同士の間隔と、軸O1方向に隣り合う第二半円刃52B同士の間隔は、等距離に設定されている。また、第一半円刃52Aと第二半円刃52Bとは、同一円周上には配置されず、軸O1方向にずれた位置に設けられている。
また、半円刃52(52A、52B)は、導電膜11A、12Aが成膜された基材3A、3Bの表面に対して回転軸51とともに回転されたときに、導電膜11A、12Aのみに溝状の切込みを形成する。つまり、導電膜11A、12Aは厚さ方向に切込みが形成され、基材3A、3Bの厚さ方向の一部が切り込まれても全体が切り込まれないように設定されている。
なお、半円刃52の軸O1方向の間隔、周長、第一半円刃52Aと第二半円刃52Bの軸O1方向のずれ量は、絶縁部16の設定に応じて適宜変更することができる。
【0045】
次に、光電極11の第一絶縁部16の加工後、封止材塗工部42によって第一基材3Aの所定領域に形成された光電極11に封止材15を塗工する。このとき、半導体層11Bに封止材15が被覆されないように塗布される。
そして、導通材配置部43において封止材15同士の間に導通材14を配置した後、電解液塗工部44において第一基材3Aにおける封止材15の未塗工領域に電解液13を塗工する。
【0046】
一方で、対向電極形成部で作製された対向電極12を形成し第二移動方向P2に移動する第二基材3Bでは、切込み加工装置50において、触媒層12Bと触媒層12Bとの間の位置で半円刃52の回転により長手方向X1と平行に延びる第二絶縁部17を形成する絶縁加工が行われる(
図10及び
図11参照)。このとき、第二絶縁部17は、
図6に示すように、一定の間隔(サブモジュールRの長手方向X1の長さ)毎に幅方向X2に交互にずれた位置となる規則的な絶縁加工のパターンが形成される。このように交互に配置することで、サブモジュールR毎に+極と−極の位置を規則的に入れ替えることができる。
【0047】
次いで、基材貼合せ部45において、硬化処理部(図示省略)によって封止材15が硬化されるとともに、絶縁加工された第一基材3Aと第二基材3Bとを重ね合わせた状態で一対の貼合せローラー45A、45Bを通過させることで、両基材3A、3Bを接着して貼り合せる。このとき、貼り合わされた状態で、
図7に示すように、第一基材3Aの第一絶縁部16と第二基材3Bの第二絶縁部17とが幅方向X2にずれた位置となり、これにより導通材14(
図2参照)を介して幅方向X2に分割して配列される複数のセルCが電気的に直列に接続された状態になる。
【0048】
次に、
図4及び
図8に示すように、貼り合せをした後、超音波融着手段46において、長手方向X1に一定間隔をあけて第一基材3Aと第二基材3Bを超音波振動により融着させて幅方向X2に沿って延びる超音波融着部18を形成し、複数のサブモジュールR、R、…に分割する。
【0049】
さらに、
図1に示すように、貼り合せた両基材3A、3Bの幅方向X2の両端部に、長手方向X1に沿うように配線材19を例えば銅テープや半田付けにより貼り付ける。このとき、配線材19は、長手方向X1に配列される超音波融着部18の端部を幅方向X2に交互に被覆した状態で配置される。これにより、直列配線されたサブモジュールR同士のセルCを直列に接続した色素増感太陽電池1を製造することができ、電気がサブモジュールR毎に幅方向X2に交互(
図1の矢印E方向)に流れることになる。そして、色素増感太陽電池1は、超音波融着部18に沿って切断可能であり、必要な任意の長さの位置で切断され、所望の長さの色素増感太陽電池1を生産することができる。
【0050】
次に、上述した色素増感太陽電池1の作用について図面を用いて詳細に説明する。
本実施の形態による色素増感太陽電池1では、
図9(a)、(b)に示すように、第一絶縁部16及び第二絶縁部17の端部16a、17aが超音波融着部18の領域内まで延ばされた状態で配置され、これら端部16a、17aが超音波融着部18に重なるように配置されているので、製造過程において超音波融着部18の位置が
図12(a)、(b)及び
図13(a)、(b)に示すように、長手方向X1にずれた位置に形成された場合でも、これら絶縁部16、17と超音波融着部18との間に離間が生じることを防止することができる。
【0051】
図12(a)、(b)は、製造過程において、超音波融着部18が正規の中心軸Oに対して紙面左側にずれた位置で絶縁処理された場合を示している。また、
図13(a)、(b)は、製造過程において、超音波融着部18が正規の中心軸Oに対して紙面右側にずれた位置で絶縁処理された場合を示している。このように本実施の形態では、超音波融着部18が施工誤差によりずれた場合でも、第一絶縁部16及び第二絶縁部17の端部16a、17aが超音波融着部18に重なった状態を維持することができる。
【0052】
そのため、幅方向X2に隣り合うセルC、C同士が確実に絶縁されることから、これらセルC、C間におけるリークの発生を抑制することができ、発電効率の低下を防ぐことが可能でセルC、C同士が直列に電気的に接続される。
しかも、本実施の形態では、第一絶縁部16及び第二絶縁部17の端部16a、17a同士が超音波融着部18の領域内で長手方向X1に重なっていることから、幅方向X2に隣り合うセルC、C同士を確実に絶縁することができる。
【0053】
このように本実施の形態では、隣り合うサブモジュールR、R同士が幅方向X2の一方の端部側で配線材19(
図1参照)を介して電気的に直列に接続されているから、一方のサブモジュールRにおいて幅方向X2の他端側から一端側へ電気が流れるとともに、一端側の電気が他方のサブモジュールRの一端側に配線材19を介して流れ、さらに他方のサブモジュールRにおいて幅方向X2の一端側から他端側へ電気が流れる回路構成を実現することができる。
【0054】
また、超音波融着部18に重なる第一絶縁部16及び第二絶縁部17は、透明導電膜11Aと対向導電膜12Aの所定位置において、上述したように超音波融着部18の領域に重なるように長手方向X1に沿って例えば切込み加工やレーザー加工を施すことにより簡単に製造することが可能となる。そのため、RtoR方式にも簡単に適応できる。
【0055】
また、本実施の形態では、
図9(a)に示すように、各絶縁部16、17と超音波融着部18との重なり長さKの範囲を0.1mm以上5mm以下に設定されていてもよい。このような数値範囲とすることで、RtoR方式による製造方法において超音波融着部18の長手方向X1への標準的なずれ量(例えば0.1mm)が生じた場合でも、第一絶縁部16及び第二絶縁部17が超音波融着部18から離間することがなくなり、幅方向X2に隣り合うセルC、C間のリークを防止することができる。
【0056】
さらに、
図14(a)、(b)に示すように、各絶縁部16、17のそれぞれの端部における超音波融着部との重なり開始位置16b、17bからの先端16c、17cまでの長さ寸法Kを超音波融着部18の幅寸法Lで割った値が、0<K/L<1.5の範囲となるように設定されていてもよい。また、このK/Lの範囲は、0.5<K/L<1.5の範囲で設定されていることが好ましく、さらに1.0<K/L<1.5の範囲で設定されていることがより好ましい。
この場合には、RtoR方式による製造方法において超音波融着部18の長手方向X1への標準的なずれ量(例えば0.1mm)が生じた場合でも、第一絶縁部16及び第二絶縁部17が超音波融着部18から離間する可能性が小さくなり、幅方向X2に隣り合うセルC、C間のリークを防止することができる。しかも、K/Lの値が1.5より小さいことから、一方のサブモジュールRの絶縁部16、17の先端16c、17cが反対側の他方のサブモジュールR側に突出する長さも小さく抑えることができるので、他方のサブモジュールRにおける電気抵抗となることを抑制することができる。また、K/Lの値が0.5を超えるときには、上述したような超音波のずれに対してもより確実に対応することができ、かつ、超音波部が第一絶縁部16または第二絶縁部17にかからないほどずれた場合であっても、電気の通り道が絶縁部16、17を迂回するように流れるために抵抗が高くなり、電池性能の低下を軽減できる。
【0057】
なお、K/Lは2.0より小さい範囲としてもよいが、この値が1.5以上2.0未満の場合には、上述したような反対側のサブモジュールR側への突出長が大きくなるので、電気抵抗が増え、性能が低下することになる。
そして、
図14(a)、(b)に示す第1変形例では、K/Lが1.0を超えているので、上述したような超音波融着部18のずれや第一絶縁部16または第二絶縁部17にかからないほどのずれに対してもさらに確実な改善効果が望め、製造される電池性能の安定性を高めることができる。
【0058】
さらにまた、本実施の形態では、
図9(a)に示すように、一方のサブモジュールRの第一絶縁部16と他方のサブモジュールの第二絶縁部17の長手方向X1の重なり(オーバーラップ長l)を超音波融着部18の幅寸法Lで割った値が、0<K/L<1.5の範囲となるように設定されていてもよい。
【0059】
(第2の実施の形態)
図15に示す第2の実施の形態による色素増感太陽電池1Aは、幅方向X2に配列される複数のセルCから構成される2つの区画(サブモジュールR、R)を長手方向X1に隣接させた電池構造であり、隣接するサブモジュールR、R同士を幅方向X2の一端1a側で電気的に接続した構造となっている。
超音波融着部18は、各サブモジュールR、Rにおける幅方向X2で一端1a側の配線材19を残した状態で他端1bから一端1a側に向けて延びている。つまり、サブモジュールR、Rにおけるそれぞれの光電極11と対向電極12は、配線材19によって電気的に接続された電気回路を構成している。
【0060】
第2の実施の形態では、長手方向X1の一端1a側のサブモジュールR、R同士が配線材19によって電気的に接続され、一対のサブモジュールR、Rを分割する超音波融着部18の領域に対して各サブモジュールRの絶縁部16、17の端部16a、17aが重なった状態となる。そのため、各サブモジュールRにおいて、幅方向X2に隣り合うセルC、C同士を確実に絶縁することができ、全体が平面視でU字状に電気Eが流れる構造を実現することができる。したがって、本実施の形態では、取り出し電極(正極31、負極32)を幅方向X2の他端1b側のみで同じ側に配置することが可能となり、配線構造が簡略化でき、配線作業を容易に行うことができる。
【0061】
以上、本発明による色素増感太陽電池の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上述の実施の形態では、セルC、C同士の間において、隣り合うサブモジュールR、Rのうち一方の絶縁部16、17と他方の絶縁部16、17の互いに近接する側の端部16a、17a同士が長手方向X1に重なった構成としているが、このような構成に限定されることはい。例えば、
図16(a)、(b)に示す第2変形例のように、端部16a、17a同士が長手方向X1に離間していて重ならない構成であってもかまわない。要は、第一絶縁部16及び第二絶縁部17の端部16a、17aが超音波融着部18に重なるように長手方向X1で超音波融着部18の領域内まで延ばされた状態で配置されていればよいのである。そして、その領域内の長さ寸法(絶縁部16、17と超音波融着部18との重なり長さK)も上述した実施の形態の設定範囲(0.1mm以上5mm以下)とすることにも限定されることはない。
【0062】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。