(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来から空調用、冷凍用、給湯用等の機器の熱交換器、機内配管、冷媒配管等には、JIS H 3300に定められたりん脱酸銅管(C1201T、C1220T)が広く用いられている。
りん脱酸銅管は、曲げ加工性、拡管加工性、縮管加工性やろう付け性に優れていて熱交換機等に加工しやすく、また一般に耐食性、耐候性もよく、更に導電率も高く、リサイクル性にも優れているためである。
【0003】
しかし、ごく稀に蟻の巣状腐食という腐食が発生して、熱交換器、配管等の銅合金管の肉厚部分に管外表面あるいは管内表面から穿孔が生じて、最終的に管内面の冷媒等が漏洩して機器が使えなくなるという不具合が生じることがあった。
蟻の巣状腐食の腐蝕媒としては、犠酸や酢酸、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなど低級のカルボン酸、アルデヒド類と言われている。
【0004】
低級のカルボン酸、アルデヒド類は、熱交換器の組み立て時に使用される加工油や工場等の環境中に浮遊する機械油が熱交換器や配管等に付着して、その油が熱交換器表面に生じる結露水などと加水分解を起こして生じるものと推定されている。
【0005】
更には、一般家屋の壁紙等から飛散するシックハウス症候群の原因となるような揮発性有機化合物にも、低級のカルボン酸、アルデヒド類が含まれる場合がある。
また最近では、芳香剤やエアコン洗浄剤に含まれるアルコール類からも、加水分解によって低級のカルボン酸、アルデヒド類が生成する可能性も指摘されている。
【0006】
蟻の巣状腐食対策として、以下の提案がなされている。例えば、特許文献1には、P:0.0025乃至0.01wt%を含み、残部がCuと通常の不純物とからなることを特徴とする耐食性高強度銅管が記載されている。また、特許文献2には、空調機器において湿潤環境下に配置されて、低級カルボン酸からなる腐食媒により、管表面から管肉厚方向に蟻の巣状に進行する腐食作用にさらされる伝熱管にして、Pを0.10乃至1.0重量%の割合で含有し、残部がCuと不可避不純物からなる、蟻の巣状腐食に対する高耐食性銅管からなることを特徴とする空調機器における伝熱管が記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る耐食性銅合金管(以下、銅合金管と称する)の実施形態について、詳細に説明する。
本発明の銅合金管は、P:0.001乃至1.0質量%を含有し、残部がCuと不可避不純物からなり、所定のPの濃度分布を有するものである。以下に、銅合金管の化学組成およびPの濃度分布の限定理由について説明する。
【0015】
(P:0.001乃至1.0質量%)
Pはりん脱酸銅の脱酸材として添加され、銅合金管の蟻の巣状腐食を抑制するために添加されている。Pが0.001質量%未満であると、脱酸効果が不十分であり、水素脆化を起こしやすくなる。Pが1.0質量%を超えると、銅合金管の熱間加工性、冷間加工性が阻害される。また、Pは、銅合金管の加工性の観点から0.04質量%以下が好ましい。
【0016】
(残部)
残部は、Cuと不可避不純物からなる。不可避不純物は、Pb、S、Se、As、In、Bi、Sb、Te等であり、その含有量が総量で0.03質量%以下であれば、銅合金管の耐蟻の巣状腐食性を劣化させることがない。
【0017】
(その他の成分)
銅合金管は、前記組成にMn及び/またはMgを所定量添加したものであってもよい。Mn及び/またはMgの含有量が各々で0.005乃至0.07質量%であれば、銅合金管の耐蟻の巣状腐食性が向上すると共に、銅合金管の加工性も低下しない。
また、銅合金管は、Zn、Sn、Zr、Co、Ni、Cr、TiおよびFeからなる群から選択された1種以上の元素を所定量さらに添加したものであってもよい。Zn、Sn、Zr、Co、Ni、Cr、TiおよびFeからなる群から選択された1種以上の元素の含有量が総量で0.05質量%以下であれば、銅合金管の耐蟻の巣状腐食性が向上すると共に、銅合金管の加工性も低下しない。
【0018】
(管表面におけるPの濃度分布)
管表面におけるPの濃度分布を、以下のとおり限定する。本発明において、「管表面」とは、銅合金管の管外表面および管内表面の少なくとも一方の管表面を意味する。
Pの濃度分布は、SIMSにより分析した際、管表面の長さ100μmの領域におけるPの濃度分布が下式(1)を満足する。
ΔP≦1.3×[P]
0.98・・・(1)
ここで、ΔPは分析されたPの濃度(質量%)の最大値[P]
MAXと最小値[P]
MINとの差、[P]は銅合金管におけるPの含有量(質量%)を表す。
また、「管表面の長さ100μmの領域」は、「管表面において管軸に平行な管長さ方向の長さ100μmの領域」、または、「管表面において管軸に垂直な管周方向の長さ100μmの領域」を意味する。
【0019】
上式(1)は、銅合金管の管表面でのPの濃度差と耐蟻の巣状腐食性との関係を調べる予備実験を行うことによって導き出された関係式である。また、上式(1)における係数である「1.3」、指数である「0.98」は、予備実験の結果を考慮して決定した数値である。さらに、予備実験においては、「長さ100μmの領域」のPの濃度分布が、「管全長」のPの濃度分布と同一であることが確認されている。
【0020】
銅合金管は、Pの含有量である[P]によって、蟻の巣状腐食性は影響を受けるが、[P]が同じであった場合には、SIMSで分析されたPの濃度差であるΔPが「1.3×[P]
0.98」で示される値以下の場合に、その[P]において優れた耐蟻の巣状腐食性が発揮される。
【0021】
ΔPが「1.3×[P]
0.98」で示される値を超える場合には、管表面にPの濃度が高い部分と低い部分とが生じていることを意味する。そして、銅合金管の管表面が低級カルボン酸やアルデヒド類を含む腐食媒の液膜に覆われた場合には、Pの濃度が高い部分と低い部分とでCuの溶出度合に差が生じて、蟻の巣状腐食が発生する可能性が高くなる。逆に言うとPの濃度差を小さくして、均一に近づけることでより均一に腐食するようになり、深さ方向の腐食進行を遅くすることができる。
【0022】
SIMSで分析されたPの濃度の最大値[P]
MAXおよび最小値[P]
MINの値は、SIMSで得られたPの二次イオン強度をI
P、Pの同位体存在度をA
P、マトリックス(Cu)の二次イオン強度をI
M、マトリックスの同位体存在度をA
M、相対感度係数(RSF)の実測値をRSF
Pとして、
[P]
MEA=(I
P×A
P/I
M×A
M)×RSF
P
で求められる長さ100μmの領域のラインプロファイルの最大値と最小値である。[P]
MEAは各プロットでのPの濃度を表している。
【0023】
銅合金管のPの含有量である[P]は、銅合金管の製造工程における溶解・鋳造工程でのCu溶湯へのPの添加量によって制御されるもので、銅合金管において分析されるPの濃度である[P]
MEAの平均値(平均濃度)である。そして、銅合金管の管表面で分析されるPの濃度の濃度差であるΔPは、銅合金管の製造工程におけるソーキング工程での温度、時間によって制御される。また、ΔPは、熱間押出工程における押出素管の冷却速度でも制御することが好ましい。
【0024】
本発明に係る銅合金管は、内面溝付管であることが好ましい。本発明において、内面溝付管とは、管内面に所定形状の溝が形成された銅合金管である。また、溝数、溝間に形成されたフィンの高さ、溝底肉厚、溝リード角等の溝形状は、従来公知の溝付管の溝形状を用いることができる。
【0025】
次に、銅合金管の製造方法について、平滑管または内面溝付管の場合を例にとって、説明する。
平滑管の製造方法は、溶解・鋳造工程と、ソーキング工程と、熱間押出工程と、圧延・抽伸工程と、焼鈍工程とを含むものである。
【0026】
(溶解・鋳造工程)
原料の電気銅を還元性雰囲気中で溶解し、Cu溶湯にCu−P中間合金、例えばCu−15質量%P中間合金の投入によりPを添加して、溶湯組成、特にPの含有量([P])を所定量、具体的にはP:0.001乃至1.0質量%に調整する。次いで、その溶湯を、従来公知の鋳造法、例えば、半連続鋳造法で鋳造して、所定寸法のビレットを製造する。
【0027】
本発明の銅合金管では、管表面におけるPの濃度分布は、下式(1)式で示されるPの濃度分布を満たしている。このような銅合金管を製造するには、鋳塊のソーキング工程において、Pの拡散がおきやすく、Pの濃度が均質化されるよう、鋳塊表面から中心部までの二次デンドライトアーム間隔を可能な限り小さくすることが望ましい。鋳塊の二次デンドライトアーム間隔は、鋳塊の凝固時の冷却速度((液相線温度−固相線温度)/凝固時間))が大きくなるほど小さくなる。そのため、鋳塊各部の冷却速度が大きくなるよう、一次冷却帯(鋳型長さ)を短くする、鋳造速度を大きくする、二次冷却の水量を多くする、鋳塊の径を小さくする等の方法が有効である。
【0028】
(ソーキング工程)
ビレットを、750乃至950℃で15分間乃至2時間加熱して、銅合金中の化学成分、特にPの偏析を除去または減少させる。
その結果、SIMSで分析した際の平滑管の管表面におけるPの濃度差であるΔPが下式(1)を満足する。
ΔP≦1.3×[P]
0.98・・・(1) ここで、[P]は平滑管のPの含有量である。
なお、従来の製造方法では、りん脱酸銅管、銅合金管のソーキングにおける750乃至950℃での保持時間は最大5分間程度である。
【0029】
ソーキング工程での加熱温度が750℃未満、または、加熱時間が15分間未満であると、銅合金中のPの偏析が抑制できないため、平滑管の管表面におけるΔPが、上式(1)を満足しない。また、加熱温度が950℃を超える、または、加熱時間が2時間を超えると、銅合金中のPの偏析抑制のさらなる向上が期待できず、ソーキング工程における加熱コストが高くなる。また酸化スケールの成長などを助長して品質にも悪い影響を与える。したがって、ソーキング工程における加熱条件は、750乃至950℃で15分間乃至2時間とする。
【0030】
(熱間押出工程)
ソーキング工程後の加熱ビレットに穿孔加工を行い、750乃至950℃で熱間押出して、所定寸法の押出素管を製造する。熱間押出の加工率、具体的には、加工後の断面減少率で定義される[穿孔されたビレットの断面積−熱間押出後の押出素管の断面積]/[穿孔されたビレットの断面積]×100(%)が、80%以上であることが好ましく、90%以上であることが更に好ましい。加工率が80%以上であると、次工程において加工率が適正となり、表面欠陥及び内部割れを低減できる。
【0031】
押出素管におけるPの偏析を低く抑えて、管表面におけるPの濃度差(ΔP)を小さくするため、熱間押出後の押出素管に冷却処理を行うことが好ま
しい。具体的には、熱間押出後、押出素管の表面温度が300℃になるまでの冷却速度が
10℃/秒以上20℃/秒以下、或いは、15℃/秒以上20℃/秒以下となるように
冷却する。
【0032】
(圧延・抽伸工程)
押出素管に圧延加工を行なって圧延素管を製造し、その後、圧延素管に抽伸加工を行なって、所定の寸法の抽伸素管を製造する。
【0033】
圧延加工率は、加工後の断面減少率で95%以下、好ましくは90%以下である。圧延加工率が95%以下であると、表面欠陥及び内部割れを低減できる。また、抽伸加工は、通常、何台かの抽伸機を用いて行うが、各抽伸機による加工率(断面減少率)は40%以下とする。加工率が40%以下であると、表面欠陥及び内部割れを低減できる。
【0034】
(焼鈍工程)
抽伸素管を所定の焼鈍条件で焼鈍して、平滑管を製造する。焼鈍条件としては、抽伸素管の実体温度:350乃至700℃で5分間乃至120分間程度保持することが好ましい。また、抽伸素管の実体温度を室温から所定温度まで昇温する際、平均昇温速度は、10℃/分以下、好ましくは5℃/分以下である。このような焼鈍条件で焼鈍を行うことによって、作製される平滑管の硬度が適切なものとなり、平滑管に内面溝付加工等の加工を施しやすくなる。なお、通常、ローラーハース炉による連続焼鈍が行われるが、高周波誘導加熱炉を用い、高速昇温、短時間加熱、高速冷却する短時間加熱の焼鈍を行ってもよい。
【0035】
次に、内面溝付管の製造方法は、溶解・鋳造工程と、ソーキング工程と、熱間押出工程と、圧延・抽伸工程と、焼鈍工程と、溝付転造加工工程とを含むものである。また、必要に応じて、溝付転造加工工程後に最終焼鈍工程を含んでもよい。また、溶解・鋳造工程と、ソーキング工程と、熱間押出工程と、圧延・抽伸工程と、焼鈍工程については、前記した平滑管の製造方法と同様であるので、説明を省略する。
【0036】
(溝付転造加工工程)
前記のようにして製造した平滑管を素管として、その内面に溝付加工をする。即ち、焼鈍した平滑管に溝付転造加工を行って内面溝付管を製造する。
具体的には、平滑管内に、縮径プラグと、縮径プラグと連結棒にて回転可能に連結された溝付プラグとを挿入する。そして、縮径プラグ及び縮径ダイスによる平滑管の縮径を行う。次いで、溝付プラグの位置にて、平滑管の管外面を転造ボール又は転造ロールで押圧して、溝付プラグの外面に形成された溝を、平滑管の内面に転写して内面溝付管を製造する。なお、溝付プラグの外面に形成される溝形状は、前記した内面溝付管の溝形状に対応したものである。また、必要に応じて、内面溝付管を縮径ダイスによって縮径加工してもよい。
【0037】
(最終焼鈍工程)
内面溝付管に必要に応じて焼鈍処理する。焼鈍条件は、前記した平滑管の焼鈍工程と同様である。
【実施例】
【0038】
次に、本発明の実施例について、本発明の特許請求の範囲から外れる比較例と比較して説明する。
(第1実施例)
第1実施例は、平滑管についてのものである。平滑管(供試材No.1〜25)を、以下の方法で製造した。
【0039】
電気銅を溶解した溶湯に、Cu−15質量%P中間合金を添加することにより、所定組成の溶湯を作製し、表1に示すP含有量の直径300mmのビレットを鋳造した。その後、ビレットを表1に示す温度に加熱して、その温度で表1に示す時間保持するソーキングを行った。次に、ビレットを加熱した後、ビレット中心を穿孔加工し、表1に示す温度で熱間押出して外径90mm、肉厚10mmの押出素管を製造した。押出素管における断面減少率は96%であった。その後、押出素管を
水冷した。押出直後から水冷までの時間及び水冷後の押出素管の表面温度等により、300℃までの平均冷却速度は12℃/秒であった。次に、圧延における断面減少率を90%以下、抽伸における1パスあたりの加工率を40%以下に設定して、押出素管を圧延及び抽伸して、外径9.52mm、肉厚0.80mmの抽伸素管を製造した。その後、還元性ガス雰囲気にしたローラーハース炉で抽伸素管を焼鈍して、平滑管を製造した。なお、焼鈍条件は、抽伸管を表1に示す温度(実体温度)に加熱し、その温度で表1に示す時間保持した後、室温まで冷却することとした。
【0040】
製造された平滑管(供試材No.1〜25)について、二次イオン質量分析装置を用いて、管外面の管長さ方向に100μmの領域について、表面から深さ3μmまでのPの濃度分布を分析した。SIMSに用いた機器類及び条件等は表2に示すとおりである。その結果を表1に示す。
【0041】
まず、
図1(a)に示すように、平滑管1から長さ10mm、幅10mmの試験片2を切り出した。次に、
図1(b)、(c)に示すように、切り出した試験片2をエポキシ樹脂3に埋め込み、エポキシ樹脂3の上面を、埋め込んだ試験片2の管外面が露出するまで研磨した。次に、研磨によって露出した試験片2の管外面について、管長さ方向に100μmの領域でのPの濃度を、二次イオン質量分析装置を用いて測定した。なお、Pの濃度の測定は、試験片2の管端部2aでは測定値に乱れが生じるため、管端部2aを除いた管外面で行った。
【0042】
表1において、ΔPは分析されたPの濃度の最大値と最小値との差であって、
判定として、ΔPが「1.3×[P]0.98」以下を「○」、ΔPが「1.3×[P]0.98」超えを「×」とした。また、[P]は平滑管におけるPの含有量を表す。
【0043】
また、平滑管(供試材No.1〜25)について、以下の方法により蟻の巣状腐食試験を実施して最大腐食深さを測定した。その結果を表1に示す。
【0044】
蟻の巣状腐食試験は、以下の手順で行った。なお、試験サンプルとして、長さ200mmの平滑管を使用した。
まず、0.5体積%に調製した蟻酸水溶液500mlを2L(リットル)の密閉容器に注いだ。平滑管の両管端を封止し、外面のみが雰囲気に曝露されるようにして、密閉容器内に水平に吊るすようにして保持した。この密閉容器を、40℃、22時間と20℃、2時間のヒートサイクルに設定した乾燥炉に60日間保管した。その後、保管後の平滑管において輪切り断面をエポキシ樹脂に埋め込んで研磨し、長さ1mmごとに3か所、管外面から観察される腐食深さを測定した。3か所の内で腐食深さが最大のものを最大腐食深さとした。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
表1に示すように、供試材No.1〜3、6〜8、11〜13、16〜18、21〜23(実施例)は、ΔPが所定値(1.3×[P]
0.98)以下となり、管外面におけるPの濃度分布が小さくなる。その結果、いずれのP含有量においても、同一のP含有量の比較例(供試材No.4、5、9、10、14、15、19、20、24、25)よりも最大腐食深さが浅くなり、耐蟻の状腐食性に優れていた。
【0048】
これに対し、供試材No.4、5、9、10、14、15、19、20、24、25(比較例)は、ΔPが所定値(1.3×[P]
0.98)を超え、管外面におけるPの濃度分布が大きくなる。その結果、いずれのP含有量においても、同一のP含有量の実施例(供試材No.1〜3、6〜8、11〜13、16〜18、21〜23)よりも最大腐食深さが深くなり、耐蟻の状腐食性に劣っていた。
ここで、供試材No.9は、特許文献1に相当する平滑管である。また、供試材No.25は、特許文献2に相当する平滑管である。
【0049】
(第2実施例)
第2実施例は、内面溝付管についてのものである。内面溝付管(供試材No.26〜50)を、以下の方法で製造した。
【0050】
第1実施例と同様にして平滑管(No.26〜50)を製造し、内面溝付加工用の素管として用いた。なお、平滑管のソーキング条件及び熱間押出条件を表2に示す。平滑管に溝付転造加工を行い、外径7mm、底肉厚0.24mmの内面溝付管を製造した。このとき、溝形状は、フィン高さを0.12mm、溝リード角を40°、溝数を65とした。その後、内面溝付管を焼鈍炉にて、還元性ガス雰囲気中で、最終焼鈍した。このとき、最終焼鈍条件は、内面溝付管が表3に示す温度(実体温度)、時間となるように加熱帯を通過させ、その後冷却帯を通過させて室温まで徐冷することとした。
【0051】
製造された内面溝付管(供試材No.26〜50)について、第1実施例と同様にして、管外面のPの濃度分布を分析すると共に、蟻の巣状腐食試験を実施して最大腐食深さを測定した。その結果を表3に示す。ただし、蟻の巣状腐食試験における乾燥炉への保管は、30日間とした。
【0052】
【表3】
【0053】
表3に示すように、供試材No.26〜28、31〜33、36〜38、41〜43、46〜48(実施例)は、ΔPが所定値(1.3×[P]
0.98)以下となり、管外面におけるPの濃度分布が小さくなる。その結果、いずれのP含有量においても、同一のP含有量の比較例(供試材No.29、30、34、35、39、40、44、45、49、50)よりも最大腐食深さが浅くなり、耐蟻の状腐食性に優れていた。
【0054】
これに対し、供試材No.29、30、34、35、39、40、44、45、49、50(比較例)は、ΔPが所定値(1.3×[P]
0.98)を超え、管外面におけるPの濃度分布が大きくなる。その結果、いずれのP含有量においても、同一のP含有量の実施例(供試材No.26〜28、31〜33、36〜38、41〜43、46〜48)よりも最大腐食深さが深くなり、耐蟻の状腐食性に劣っていた。