特許第6912295号(P6912295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6912295
(24)【登録日】2021年7月12日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】端子付き電線
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20210727BHJP
   H01R 4/70 20060101ALI20210727BHJP
   H01R 4/72 20060101ALI20210727BHJP
【FI】
   H01R4/18 A
   H01R4/70 F
   H01R4/72
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-133579(P2017-133579)
(22)【出願日】2017年7月7日
(65)【公開番号】特開2019-16535(P2019-16535A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2020年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】杉野 純希
【審査官】 内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−213089(JP,A)
【文献】 実開昭54−065393(JP,U)
【文献】 特開平11−238531(JP,A)
【文献】 特開2014−211959(JP,A)
【文献】 特開2013−196832(JP,A)
【文献】 特開2010−055874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 3/00 − 4/22
H01R 4/58 − 4/72
H01R 43/027− 43/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線が絶縁被覆によって覆われ、端末部の前記芯線が前記絶縁被覆より露出された電線と、
端末部の露出された前記芯線が超音波溶接で接続され、且つ、前記芯線を圧着接続する芯線圧着部を有する端子と、
端末部の露出された前記芯線と前記芯線圧着部を封止する収縮チューブとを備え、
前記芯線圧着部より突出した前記芯線の先端高さが、接続前に前記端末部の露出された前記芯線の接続箇所の上部全体又は先端側の上部が切断されて除去されることにより前記絶縁被覆で覆われた前記芯線の高さより低く形成されたことを特徴とする端子付き電線。
【請求項2】
請求項1記載の端子付き電線であって、
前記芯線圧着部より突出した前記芯線の先端高さは、前記端末部の露出された前記芯線の接続箇所の上部全体が切断されて除去されることにより低く形成されたことを特徴とする端子付き電線。
【請求項3】
請求項1記載の端子付き電線であって、
前記芯線圧着部より突出した前記芯線の先端高さは、前記芯線圧着部より突出した前記芯線の箇所が切断されて除去されることにより低く形成されたことを特徴とする端子付き電線。
【請求項4】
請求項3記載の端子付き電線であって、
前記芯線圧着部より突出した前記芯線の箇所は、切断によって先端に向かうに従って低くなる傾斜面に形成されていることを特徴とする端子付き電線。
【請求項5】
請求項3記載の端子付き電線であって、
前記芯線圧着部より突出した前記芯線の箇所は、切断によって前記芯線の上部全体が一段低い面に形成されていることを特徴とする端子付き電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の芯線と端子との接続箇所を収縮チューブで防水する端子付き電線に関する。
【背景技術】
【0002】
収縮チューブで防水する端子付き電線の従来例として、特許文献1に開示されたものがある。この端子付き電線50は、図13に示すように、芯線61が絶縁被覆62によって覆われ、端末部の芯線61が絶縁被覆62より露出された電線Wと、端末部の露出された芯線61が超音波溶接で接続された端子51と、端末部の露出された芯線61よりも先端位置で端子51に装着された弾性リング70と、弾性リング70と端末部の露出された芯線61と端子51の芯線接続箇所を封止する熱収縮チューブ80とを備えている。
【0003】
弾性リング70の端子表面からの高さh1は、芯線61の端子表面からの高さh2よりも低く形成されている。弾性リング70を装着しない場合に比べて、端子51の表面からの段差を(h2−h1)だけ低くなる。これにより、熱収縮チューブ80が熱収縮する際の収縮差を小さくし、熱収縮チューブ80の先端部が端子51の外周面の全域に密着し(いわゆる、熱収縮チューブが閉じ)、確実に防水するようにしている。
【0004】
つまり、熱収縮チューブ80で端子付き電線50を防水する場合に、熱収縮チューブ80の先端側が端子51の表面に隙間なく密着し、熱収縮チューブ80の後端側が絶縁被覆62に隙間なく密着する必要がある。熱収縮チューブ80の後端側(絶縁被覆62に密着する側)は、小さな収縮差しか発生しないため、絶縁被覆62に隙間なく密着する。しかし、熱収縮チューブ80の先端側(端子51に密着する側)は、端子51の表面と芯線61の先端との間に大きな段差が形成されるため、熱収縮チューブ80が端子51に隙間なく密着しない可能性がある。
【0005】
これを解決するため、前記従来例では、芯線61の先端面より前位置に弾性リング70を配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016−184493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の端子付き電線50では、弾性リング70が熱収縮チューブ80の収縮時に位置ずれする可能性があり、防水性能を損なう可能性がある。
【0008】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、確実に防水性を確保できる端子付き電線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、芯線が絶縁被覆によって覆われ、端末部の前記芯線が前記絶縁被覆より露出された電線と、端末部の露出された前記芯線が超音波溶接で接続され、且つ、前記芯線を圧着接続する芯線圧着部を有する端子と、端末部の露出された前記芯線と前記芯線圧着部を封止する収縮チューブとを備え、前記芯線圧着部より突出した前記芯線の先端高さが、接続前に前記端末部の露出された前記芯線の接続箇所の上部全体又は先端側の上部が切断されて除去されることにより前記絶縁被覆で覆われた前記芯線の高さより低く形成されたことを特徴とする端子付き電線である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、端子の表面からの芯線の先端高さ自体が低くなっているため、確実に防水性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態を示し、端子付き電線の側面図である。
図2】本発明の第1実施形態を示し、(a)〜(d)は端子付き電線の各製造工程を示す側面図である。
図3】本発明の第2実施形態を示し、端子付き電線の側面図である。
図4】本発明の第2実施形態を示し、(a)〜(d)は端子付き電線の第1製造方法による各製造工程を示す側面図である。
図5】本発明の第2実施形態を示し、(a)〜(d)は端子付き電線の第2製造方法による各製造工程を示す側面図である。
図6】本発明の第2実施形態を示し、(a)〜(d)は端子付き電線の第3製造方法による各製造工程を示す側面図である。
図7】本発明の第3実施形態を示し、端子付き電線の側面図である。
図8】本発明の第3実施形態を示し、(a)〜(d)は端子付き電線の各製造工程を示す側面図である。
図9】本発明の第4実施形態を示し、端子付き電線の側面図である。
図10】本発明の第4実施形態を示し、(a)〜(d)は端子付き電線の第1製造方法による各製造工程を示す側面図である。
図11】本発明の第4実施形態を示し、(a)〜(d)は端子付き電線の第2製造方法による各製造工程を示す側面図である。
図12】本発明の第5実施形態を示し、(a)は端子付き電線の側面図、(b)は端末部の露出された芯線の上部を切断した端子付き電線の側面図である。
図13】従来例の端子付き電線の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1及び図2は本発明の第1実施形態を示す。第1実施形態の端子付き電線1Aは、芯線11が絶縁被覆12によって覆われた電線Wと、電線Wに接続された端子2と、端子2と電線Wの接続箇所を封止する熱収縮チューブ(収縮チューブ)20とを備えている。
【0014】
電線Wは、端末部の絶縁被覆12が剥ぎ取られ、端末部の芯線11が絶縁被覆12より露出されている。芯線11は、多数の素線(図示せず)を撚り合わせて形成されている。端末部の露出された芯線11は、全域に亘ってその上部全体が切断によって除去されている。これにより、露出された芯線11の先端高さH1は、絶縁被覆12で覆われた芯線11の高さH2より低く形成されている。
【0015】
端子2は、フラットな基底部3と、基底部3の両側端より延設された芯線圧着部4と、基底部3の両側端より延設された被覆圧着部5とを有する。基底部3の先端には、接続部6が設けられている。接続部6には、穴6aが形成されている。端末部の露出された芯線11は、超音波溶接で基底部3に接続(固着)されている。端末部の露出された芯線11は、芯線圧着部4によって端子2に圧着されている。電線Wの端末部に近い絶縁被覆12は、被覆圧着部5によって端子2に圧着されている。
【0016】
熱収縮チューブ20は、端末部の露出された芯線11と芯線圧着部4を封止している。具体的には、熱収縮チューブ20は、その先端部が端子2の基底部3の全外周に隙間なく密着し、その後端部が電線Wの絶縁被覆12の全外周に隙間なく密着している。熱収縮チューブ20は、その先端部と後端部の間が芯線11と端子2の外形輪郭に沿ってほぼ密着している。尚、図1では、熱収縮チューブ20内の収容部位を明確に表示するため、熱収縮チューブ20を仮想線で示してある。
【0017】
熱収縮チューブ20は、熱による収縮前にあって、図2(d)に示すように、先端側が徐々に縮径している筒形状である。尚、図1では、熱収縮チューブ20は、内部の部位が分かるように仮想線で示されている。
【0018】
次に、端子付き電線1Aの製造手順を説明する。図2(a)に示すように、電線Wは、端末部の絶縁被覆12を除去し、芯線11が露出されている。端末部の露出された芯線11の接続箇所の上部全体を溶着前に切断によって除去する。次に、図2(b)に示すように、電線Wの端末部の露出された芯線11を端子2の基底部3に載せ、超音波溶接を行う。これで、芯線11と端子2の基底部3を溶着する。尚、超音波溶接は、芯線11に圧縮力を作用させると共に芯線11が少し溶解するため、芯線11の高さは若干だけ低くなる。
【0019】
次に、図2(c)に示すように、電線Wの端末部に近い絶縁被覆12を被覆圧着部5で加締め圧着し、電線Wの端末部の露出された芯線11を芯線圧着部4で加締め圧着する。次に、図2(d)に示すように、熱収縮チューブ20を露出された芯線11を完全に覆う位置に挿入する(図2(d)では、熱収縮チューブ20内の収容部位を明確に表示するため、熱収縮チューブ20を仮想線で示してある)。そして、熱収縮チューブ20に熱を加える。すると、熱収縮チューブ20が内部に収容された部位(端子2と電線W)の外形輪郭に沿った形状に収縮する。これで、図1に示す端子付き電線1Aが作製される。
【0020】
この第1実施形態では、芯線圧着部4より突出した芯線11の先端高さH1が、絶縁被覆12で覆われた芯線11の高さH2より低く形成されている。つまり、端子2の表面に対する芯線11の先端段差が、切断せずに超音波溶接のみを行った場合に較べて低くなっている。これにより、熱収縮チューブ20が熱収縮する際の大きな収縮差が形成される部位がなく、熱収縮チューブ20の先端部が端子2の外周面の全域に密着し(いわゆる、熱収縮チューブ20が閉じ)、確実に防水性を確保できる。
【0021】
芯線11の先端高さH1は、切断の位置によって調整できるため、熱収縮チューブ20の先端部が端子2の外周面の全域に確実に密着させる(いわゆる、熱収縮チューブ20が閉じる)ようにできる。
【0022】
電線Wの芯線11と端子2は、超音波溶接と芯線圧着部4で接続(固着)されるため、超音波溶接のみ、又は、芯線圧着部4のみで接続(固着)される場合に比べて強固に接続(固着)される。仮に、熱収縮チューブ20内に何らかの理由によって水が浸入し、腐食による接続不良箇所が発生しても、強固な接続によって断線等を極力防止できる。また、この第1実施形態では、端末部の露出された芯線11全体が細径化されているため、電線Wの芯線11と端子2間の確実な接続(固着)を確保できる。
【0023】
(第2実施形態)
図3図6は本発明の第2実施形態を示す。第2実施形態の端子付き電線1Bは、端末部の露出された芯線11の構成のみが相違する。つまり、第2実施形態では、芯線圧着部4より突出した芯線11の先端高さH1は、芯線圧着部4より突出した芯線11の箇所(芯線11の全体ではない)が切断されて除去されることにより低く形成されている。更に詳細には、芯線圧着部4より突出した芯線11の箇所は、切断によって先端に向かうに従って低くなる傾斜面11aに形成されている。
【0024】
他の構成は、前記第1実施形態と同様であるため、同一構成箇所には第1実施形態と同じ符号を付して説明を省略する。
【0025】
次に、端子付き電線1Bの第1〜第3の製造手順を順次説明する。
【0026】
先ず、第1製造方法について説明する。図4(a)に示すように、電線Wは、端末部の絶縁被覆12が除去され、芯線11が露出されている。電線Wの端末部を端子2の基底部3に載せ、芯線11と端子2間の超音波溶接を行う。これで、芯線11と端子2の基底部3を溶着する。尚、超音波溶接は、芯線11に圧縮力を作用させると共に芯線11が少し溶解するため、芯線11の高さは若干だけ低くなる。
【0027】
次に、図4(b)に示すように、端末部の露出された芯線11の先端側の上部をテーパ状に切断する。これで、端末部の露出された芯線11の先端部に、先端に向かうに従って低くなる傾斜面11aを形成する。次に、図4(c)に示すように、電線Wの端末部に近い絶縁被覆12を被覆圧着部5によって加締め圧着し、電線Wの端末部の露出された芯線11を芯線圧着部4によって加締め圧着する。次に、図4(d)に示すように、熱収縮チューブ20を露出された芯線11を完全に覆う位置に挿入する(図4(d)では、熱収縮チューブ20内の収容部位を明確に表示するため、熱収縮チューブ20を仮想線で示してある)。そして、熱収縮チューブ20に熱を加える。すると、熱収縮チューブ20が内部に収容された部位(端子2と電線W)の外形輪郭に沿った形状に収縮する。これで、図2に示す端子付き電線1Bが作製される。
【0028】
次に、第2製造方法について説明する。図5に示すように、第2製造方法は、第1製造方法と比較するに、先に、電線Wの圧着工程(図5(b)参照)を行い、その後、端末部の露出された芯線11の先端側の切断工程(図5(c)参照)を行う点が相違する。これ以外は、第1製造方法と同じであるため、重複説明を省略する。
【0029】
次に、第3製造方法について説明する。図6に示すように、第3製造方法は、第1製造方法と比較するに、先に、端末部の露出された芯線11の先端側の切断工程(図6(a)参照)を行い、その後、超音波溶接工程(図6(b)参照)を行う点が相違する。これ以外は、第1製造方法と同じであるため、重複説明を省略する。
【0030】
この第2実施形態では、芯線圧着部4より突出した芯線11の先端高さH1が、絶縁被覆12で覆われた芯線11の高さH2より低く形成されている。つまり、端子2の表面に対する芯線11の先端段差が、切断せずに超音波溶接のみを行った場合に較べて低くなっている。これにより、熱収縮チューブ20が熱収縮する際の大きな収縮差が形成される部位がなく、熱収縮チューブ20の先端部が端子2の外周面の全域に密着し(いわゆる、熱収縮チューブ20が閉じ)、確実に防水性を確保できる。
【0031】
芯線11の先端高さH1は、切断の位置によって調整できるため、熱収縮チューブ20の先端部が端子2の外周面の全域に確実に密着させる(いわゆる、熱収縮チューブ20が閉じる)ようにできる。
【0032】
電線Wの芯線11と端子2は、超音波溶接と芯線圧着部4で接続(固着)されるため、超音波溶接のみ、又は、芯線圧着部4のみで接続(固着)される場合に比べて強固に接続(固着)される。
【0033】
(第3実施形態)
図7及び図8は本発明の第3実施形態を示す。第3実施形態の端子付き電線1Cは、第2実施形態と同様に、芯線圧着部4より突出した芯線11の先端高さH1は、芯線圧着部4より突出した芯線11の箇所が切断されて除去されることにより低く形成されているが、その切断の仕方が相違する。つまり、芯線圧着部4より突出した芯線11の箇所は、切断によって芯線の上部全体が一段低い面11bに形成されている。
【0034】
他の構成は、前記第1実施形態と同様であるため、同一構成箇所には第1実施形態と同じ符号を付して説明を省略する。
【0035】
第3実施形態の端子付き電線1Cの製造方法は、露出された芯線11の先端部の切断方法以外は第2実施形態とほぼ同様の製造方法で製造できる。例えば、図8には第3製造方法(図6に対応)が示されている。図8に示すように、芯線11と端子2間の超音波溶接工程、端子2の圧着工程、芯線11の先端部の切断工程、熱収縮チューブ20による封止工程の順に行う。
【0036】
この第3実施形態では、芯線圧着部4より突出した芯線11の先端高さH1が、絶縁被覆12で覆われた芯線11の高さH2より低く形成されている。つまり、端子2の表面に対する芯線11の先端段差が、切断せずに超音波溶接のみを行った場合に較べて低くなっている。これにより、熱収縮チューブ20が熱収縮する際の大きな収縮差が形成される部位がなく、熱収縮チューブ20の先端部が端子2の外周面の全域に密着し(いわゆる、熱収縮チューブ20が閉じ)、確実に防水性を確保できる。
【0037】
芯線11の先端高さH1は、切断の位置によって調整できるため、熱収縮チューブ20の先端部が端子2の外周面の全域に確実に密着させる(いわゆる、熱収縮チューブ20が閉じる)ようにできる。
【0038】
電線Wの芯線11と端子2は、超音波溶接と芯線圧着部4で接続(固着)されるため、超音波溶接のみ、又は、芯線圧着部4のみで接続(固着)される場合に比べて強固に接続(固着)される。
【0039】
(第4実施形態)
図9図11は本発明の第4実施形態を示す。第4実施形態の端子付き電線1Dは、前記第1実施形態と比較するに、端末部の露出された芯線11のみが超音波溶接によって芯線11の素線間が溶接されているが、端末部の露出された芯線11が、超音波溶接で端子2の基底部3に接続(固着)されていない点が相違する。端末部の露出された芯線11は、芯線圧着部4によってのみ端子2に接続(固着)されている。
【0040】
他の構成は、前記第1実施形態と同様であるため、同一構成箇所には第1実施形態と同じ符号を付して説明を省略する。
【0041】
次に、端子付き電線1Dの第1、第2の製造手順を順次説明する。
【0042】
先ず、第1製造方法について説明する。図10(a)に示すように、電線Wは、端末部の絶縁被覆12が除去され、芯線11が露出されている。端末部の露出された芯線11のみを超音波溶接する。これで、芯線11の素線間を溶着する。尚、超音波溶接は、芯線11に圧縮力を作用させると共に芯線11が少し溶解するため、芯線11の高さは若干だけ低くなる。
【0043】
次に、図10(b)に示すように、電線Wの端末部に近い絶縁被覆12を被覆圧着部5によって加締め圧着し、電線Wの端末部の露出された芯線11を芯線圧着部4によって加締め圧着する。
【0044】
次に、図10(c)に示すように、端末部の露出された芯線11の先端側の上部をテーパ状に切断する。これで、端末部の露出された芯線11の先端部に、先端に向かうに従って低くなる傾斜面11aを形成する。
【0045】
次に、図10(d)に示すように、熱収縮チューブ20を露出された芯線11を完全に覆う位置に挿入する(図10(d)では、熱収縮チューブ20内の収容部位を明確に表示するため、熱収縮チューブ20を仮想線で示してある)。そして、熱収縮チューブ20に熱を加える。すると、熱収縮チューブ20が内部に収容された部位(端子2と電線W)の外形輪郭に沿った形状に収縮する。これで、図9に示す端子付き電線1Dが作製される。
【0046】
次に、第2製造方法について説明する。図11に示すように、第2製造方法は、第1製造方法と比較するに、先に、端末部の露出された芯線11の先端側の切断工程(図11(b)参照)を行い、その後、電線Wの圧着工程(図11(c)参照)を行う点が相違する。これ以外は、第1製造方法と同じであるため、重複説明を省略する。
【0047】
この第4実施形態は、芯線11が絶縁被覆12によって覆われ、端末部の前記芯線11が前記絶縁被覆12より露出され、露出された芯線11が超音波溶接された電線Wと、 端末部の露出された前記芯線11を圧着接続する芯線圧着部4を有する端子2と、端末部の露出された前記芯線11と前記芯線圧着部4を封止する収縮チューブ20とを備え、前記芯線圧着部4より突出した前記芯線11の先端高さが、前記絶縁被覆12で覆われた前記芯線11の高さより低く形成されたことを特徴とする端子付き電線1Dである。
【0048】
第4実施形態では、芯線圧着部4より突出した芯線11の先端高さH1が、絶縁被覆12で覆われた芯線11の高さH2より低く形成されている。つまり、端子2の表面に対する芯線11の先端段差が、切断せずに超音波溶接のみを行った場合に較べて低くなっている。これにより、熱収縮チューブ20が熱収縮する際の大きな収縮差が形成される部位がなく、熱収縮チューブ20の先端部が端子2の外周面の全域に密着し(いわゆる、熱収縮チューブ20が閉じ)、確実に防水性を確保できる。
【0049】
芯線11の先端高さH1は、切断の位置によって調整できるため、熱収縮チューブ20の先端部が端子2の外周面の全域に確実に密着させる(いわゆる、熱収縮チューブ20が閉じる)ようにできる。
【0050】
端末部の露出された芯線11の箇所が超音波溶接されているので、芯線11を構成する素線間の電気的接続が確保され易くなる。これにより、電線Wと端子2間の接続箇所における電気抵抗の低減を図ることができる。
【0051】
(第5実施形態)
図12は本発明の第5実施形態を示す。第5実施形態の端子付き電線1Eは、図12(a)に示すように、第1実施形態と同様に、芯線11が絶縁被覆12によって覆われた電線Wと、電線Wに接続された端子2と、端子2と電線Wの接続箇所を封止する熱収縮チューブ(収縮チューブ)20とを備えている。第1実施形態と異なるのは、電線Wの芯線11と端子2間が超音波溶接されずに、芯線圧着部4の圧着のみで接続されている点である。
【0052】
電線Wの端末部の露出された芯線11は、図12(b)に示すように、その上部全体が切断によって除去されている。
【0053】
従って、この第5実施形態でも、芯線圧着部4より突出した芯線11の先端高さH1が、絶縁被覆12で覆われた芯線11の高さH2より低く形成されている。つまり、端子2の表面に対する芯線11の先端段差が、切断せずに超音波溶接のみを行った場合に較べて低くなっている。これにより、熱収縮チューブ20が熱収縮する際の大きな収縮差が形成される部位がなく、熱収縮チューブ20の先端部が端子2の外周面の全域に密着し(いわゆる、熱収縮チューブ20が閉じ)、確実に防水性を確保できる。
【0054】
芯線11の先端高さH1は、切断の位置によって調整できるため、熱収縮チューブ20の先端部が端子2の外周面の全域に確実に密着させる(いわゆる、熱収縮チューブ20が閉じる)ようにできる。
【0055】
(変形例など)
各実施形態にあって、電線Wは、アルミ電線、銅電線、アルミ・銅の混合電線等に適用可能である。特に、電線Wがアルミ電線又はアルミ・銅の混合電線の場合には、端子付き電線1A〜1Dにおいて水による腐食が発生しやすいため、各実施形態は有効である。
【0056】
各実施形態では、熱収縮チューブ20は、熱による収縮前にあって、図2(d)等に示すように、先端側が徐々に縮径している筒形状である。熱収縮チューブ20は、全域に亘って同じ径の円筒状であっても良い。しかし、各実施形態の形状のものを用いる方が熱収縮量が小さいため、端子2に対する密着性の向上が図れる。
【0057】
各実施形態では、収縮チューブとして熱収縮チューブ20を用いているが、収縮チューブは物理的・科学的作用によって収縮するチューブであれば良い。
【0058】
各実施形態において、超音波溶接工程を行う場合には、端子2の被覆圧着部5を電線Wの絶縁被覆12に圧着した状態で行っても良い。
【符号の説明】
【0059】
1A〜1E 端子付き電線
2 端子
4 芯線圧着部
11 芯線
11a 傾斜面
11b 一段低い面
12 絶縁被覆
20 熱収縮チューブ(収縮チューブ)
図1
図2
図3
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図5
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図12
図13