特許第6912377号(P6912377)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6912377ラパログを含む合成ナノキャリアの生産における低HLB界面活性剤の使用に関連した方法および組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6912377
(24)【登録日】2021年7月12日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】ラパログを含む合成ナノキャリアの生産における低HLB界面活性剤の使用に関連した方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/436 20060101AFI20210727BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20210727BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20210727BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20210727BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20210727BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20210727BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20210727BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20210727BHJP
【FI】
   A61K31/436
   A61K9/51
   A61K47/10
   A61K47/12
   A61K47/14
   A61K47/34
   A61K39/00 G
   A61K39/00 H
   A61P37/04
【請求項の数】24
【全頁数】44
(21)【出願番号】特願2017-524450(P2017-524450)
(86)(22)【出願日】2015年11月5日
(65)【公表番号】特表2017-533243(P2017-533243A)
(43)【公表日】2017年11月9日
(86)【国際出願番号】US2015059349
(87)【国際公開番号】WO2016073798
(87)【国際公開日】20160512
【審査請求日】2018年10月29日
(31)【優先権主張番号】62/075,864
(32)【優先日】2014年11月5日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/075,866
(32)【優先日】2014年11月5日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511254321
【氏名又は名称】セレクタ バイオサイエンシーズ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】SELECTA BIOSCIENCES,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】オーネイル,コンリン
(72)【発明者】
【氏名】グリセット,アーロン,ピー.
(72)【発明者】
【氏名】アルトロイター,デービッド,エイチ.
【審査官】 小堀 麻子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−512175(JP,A)
【文献】 特表2014−513092(JP,A)
【文献】 Int J Nanomedicine,2007年,Vol.2,p.25-32
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
A61K 39/00
A61K 9/00
A61K 47/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性キャリア材料、
ラパログ、および
10以下の親水性−親油性バランス(HLB)値をもつ非イオン界面活性剤
を含む、合成ナノキャリアを含む組成物であって、
10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤の量が、≧0.01重量%であるが、≦20重量%である、10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤/疎水性キャリア材料の重量であり、
疎水性キャリア材料が、1以上の疎水性ポリマーを含むが、ただし1以上の疎水性ポリマーが、ポリ(スチレン)−ブロック−ポリ(メチルメタクリラート)(PS−PMMA)からならず、および
前記組成物が、最初に0.22μmフィルターを介して滅菌濾過するために用いるためのものである、前記組成物。
【請求項2】
(i)10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤が、10未満のHLB値をもつ非イオン界面活性剤である;
(ii)10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤が、9未満のHLB値をもつ非イオン界面活性剤である;
(iii)10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤が、8未満のHLB値をもつ非イオン界面活性剤である;
(iv)10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤が、7未満のHLB値をもつ非イオン界面活性剤である;
(v)10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤が、6未満のHLB値をもつ非イオン界面活性剤である;または
(vi)10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤が、5未満のHLB値をもつ非イオン界面活性剤である;
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(i)10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤が、ソルビタンエステル、脂肪アルコール、脂肪酸エステル、エトキシル化脂肪アルコール、ポロキサマーまたは脂肪酸を含む;
(ii)10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤が、ソルビタンエステル、脂肪アルコール、脂肪酸エステル、エトキシル化脂肪アルコール、ポロキサマーまたは脂肪酸を含み、
10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤が、SPAN 40、SPAN 20、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソプロピルパルミタート、グリセリンモノステアラート、BRIJ 52、BRIJ 93、Pluronic P-123、Pluronic L-31、パルミチン酸、ドデカン酸、グリセリルトリパルミタートまたはグリセリルトリリノレアートを含む;または
(iii)10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤が、SPAN 40である;
請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤が、合成ナノキャリアにおいて封入されるか、合成ナノキャリアの表面上に存在するか、またはその両方である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
(i)10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤の量が、≧0.1重量%であるが、≦15重量%である、10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤/疎水性キャリア材料の重量である;
(ii)10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤の量が、≧1重量%であるが、≦13重量%である、10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤/疎水性キャリア材料の重量である;または
(iii)10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤の量が、≧1重量%であるが、≦9重量%である、10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤/疎水性キャリア材料の重量である;
請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
(i)1以上の疎水性ポリマーがポリエステルを含み、ここで好ましくは、ポリエステルが、PLA、PLG、PLGAまたはポリカプロラクトンを含む;および/または
(ii)疎水性キャリア材料が、PLA−PEG、PLGA−PEGまたはPCL−PEGを含む;
請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
(i)合成ナノキャリアにおける疎水性キャリア材料の量が、5〜95重量%である、疎水性キャリア材料/全固体である;または
(ii)合成ナノキャリアにおける疎水性キャリア材料の量が、60〜95重量%である、疎水性キャリア材料/全固体である;
請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
(i)ラパログの量が、≧6重量%であるが、≦50重量%である、ラパログ/疎水性キャリア材料の重量である;
(ii)ラパログの量が、≧7重量%であるが、≦30重量%である、ラパログ/疎水性キャリア材料の重量である;または
(iii)ラパログの量が、≧8重量%であるが、≦24重量%である、ラパログ/疎水性キャリア材料の重量である;
請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
ラパログが合成ナノキャリアにおいて封入されている、および/またはラパログがラパマイシンである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
疎水性キャリア材料を得ることまたは提供すること、
10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤を得ることまたは提供すること、
ラパログを得ることまたは提供すること、
疎水性キャリア材料を10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤およびラパログと組み合わせて合成ナノキャリアを形成させること、および
得られた組成物を濾過すること
を含む、10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤およびラパログを含む合成ナノキャリアを生産するための方法であって、
濾過することが、最初に0.22μmフィルターを介して濾過することを含み、
合成ナノキャリアにおける10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤の量が、≧0.01重量%であるが、≦20重量%である、10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤/疎水性キャリア材料の重量であり、および
疎水性キャリア材料が、1以上の疎水性ポリマーを含むが、ただし1以上の疎水性ポリマーが、ポリ(スチレン)−ブロック−ポリ(メチルメタクリラート)(PS−PMMA)からならない、前記方法。
【請求項11】
疎水性キャリア材料、10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤およびラパログを溶媒において溶解させること;
別の界面活性剤を得るかまたは提供すること;
溶解された疎水性キャリア材料、10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤およびラパログ、および他の界面活性剤によって第一および次いで第二O/Wエマルションを形成させること;
第一および第二O/Wエマルションを混合すること;および
溶媒を蒸発させること、ここで好ましくは、溶媒は、ジクロロメタン、酢酸エチル、クロロホルム、またはプロピレンカルボナートである;
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
(i)10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤が、10未満のHLB値をもつ非イオン界面活性剤である;
(ii)10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤が、9未満のHLB値をもつ非イオン界面活性剤である;
(iii)10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤が、8未満のHLB値をもつ非イオン界面活性剤である;
(iv)10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤が、7未満のHLB値をもつ非イオン界面活性剤である;
(v)10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤が、6未満のHLB値をもつ非イオン界面活性剤である;または
(vi)10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤が、5未満のHLB値をもつ非イオン界面活性剤である;
請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
(i)10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤が、ソルビタンエステル、脂肪アルコール、脂肪酸エステル、エトキシル化脂肪アルコール、ポロキサマーまたは脂肪酸を含む;
(ii)10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤が、ソルビタンエステル、脂肪アルコール、脂肪酸エステル、エトキシル化脂肪アルコール、ポロキサマーまたは脂肪酸を含み、
10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤が、SPAN 40、SPAN 20、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソプロピルパルミタート、グリセリンモノステアラート、BRIJ 52、BRIJ 93、Pluronic P-123、Pluronic L-31、パルミチン酸、ドデカン酸、グリセリルトリパルミタートまたはグリセリルトリリノレアートを含む;または
(iii)10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤が、SPAN 40である
求項10また11に記載の方法。
【請求項14】
10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤が、合成ナノキャリアにおいて封入されるか、合成ナノキャリアの表面上に存在するか、またはその両方である、請求項10また11に記載の方法。
【請求項15】
(i)10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤の量が、≧0.1重量%であるが、≦15重量%である、10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤/疎水性キャリア材料の重量である;
(ii)10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤の量が、≧1重量%であるが、≦13重量%である、10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤/疎水性キャリア材料の重量である;または
(iii)10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤の量が、≧1重量%であるが、≦9重量%である、10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤/疎水性キャリア材料の重量である
求項10また11に記載の方法。
【請求項16】
(i)1以上の疎水性ポリマーがポリエステルを含み、ここで好ましくは、ポリエステルが、PLA、PLG、PLGAまたはポリカプロラクトンを含む;および/または
(ii)疎水性キャリア材料が、PLA−PEG、PLGA−PEGまたはPCL−PEGを含む;
求項10また11に記載の方法。
【請求項17】
(i)合成ナノキャリアにおける疎水性キャリア材料の量が、5〜95重量%である、疎水性キャリア材料/全固体である;または
(ii)合成ナノキャリアにおける疎水性キャリア材料の量が、60〜95重量%である、疎水性キャリア材料/全固体である
求項10また11に記載の方法。
【請求項18】
(i)ラパログの量が、≧6重量%であるが、≦50重量%である、ラパログ/疎水性キャリア材料の重量である;
(ii)ラパログの量が、≧7重量%であるが、≦30重量%である、ラパログ/疎水性キャリア材料の重量である;または
(iii)ラパログの量が、≧8重量%であるが、≦24重量%である、ラパログ/疎水性キャリア材料の重量である
求項10また11に記載の方法。
【請求項19】
ラパログが合成ナノキャリアにおいて封入されている、および/またはラパログがラパマイシンである、請求項10また11に記載の方法。
【請求項20】
(i)抗原をさらに含む;または
(ii)抗原をさらに含み、抗原が、組成物において合成ナノキャリアと混和されている;
請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
合成ナノキャリアの動的光散乱法を使用して得られた粒子サイズ分布の平均が、120nmより大きい直径であり、ここで好ましくは、直径が150nmより大きい、請求項1〜9および20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
薬学的に許容可能なキャリアをさらに含む、請求項1〜9、20および21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
請求項1〜9および20〜22のいずれか一項に記載の組成物を含む、キット。
【請求項24】
免疫応答の調節における使用のための、請求項1〜9および20〜22のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国仮出願第62/075,864号(2014年11月5日出願)および第62/075,866号(2014年11月5日出願)の35 U.S.C. §119の下、その利益を主張するものであり、これら各々の全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明の分野
本発明は、疎水性キャリア材料、ラパログ、および10以下の親水性−親油性バランス(HLB)値をもつ非イオン界面活性剤を含む、合成ナノキャリア、および関連した組成物および方法に関連する。
【発明の概要】
【0003】
本発明の概要
本明細書に提供されるものは、共投与された抗原などの抗原に対する免疫応答を阻害し得るか、または低減し得る合成ナノキャリアである。合成ナノキャリアは、疎水性キャリア材料、ラパログ、および10以下の親水性−親油性バランス(HLB)値をもつ非イオン界面活性剤を含む。合成ナノキャリア形成の間の配合におけるかかる非イオン界面活性剤の使用は、改善された安定性および性能をもつ合成ナノキャリアをもたらし得ることが驚くべきことに発見された。
一側面において、疎水性キャリア材料、ラパログ、および10以下の親水性−親油性バランス(HLB)値をもつ非イオン界面活性剤を含む合成ナノキャリアを含む組成物、ここで、10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤の量は、≧0.01重量%であるが、≦20重量%である、10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤/疎水性キャリア材料である、が提供される。
【0004】
本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの一態様において、重量は、合成ナノキャリアの配合の間に組み合わせる材料の処方された重量(recipe weight)である。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの一態様において、重量は、得られた合成ナノキャリア組成物における材料の重量である。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの一態様において、重量は、合成ナノキャリアの配合の間に組み合わせる材料の処方された重量である。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの一態様において、重量は、得られた合成ナノキャリア組成物における材料の重量である。
別の側面において、本明細書に提供される組成物のいずれか1つを含むキットが提供される。提供されるキットのいずれか1つの一態様において、組成物は、本明細書に提供される方法のいずれか1つにおける使用のためのものである。提供されるキットのいずれか1つの一態様において、組成物が抗原を含まないとき、キットは抗原をさらに含む。提供されるキットのいずれか1つの一態様において、組成物および抗原は、別個の容器において含有される。提供されるキットのいずれか1つの一態様において、組成物および抗原は、同じ容器において含有される。提供されるキットのいずれか1つの一態様において、キットは、提供されるキットのいずれか1つの一態様における使用のための説明書をさらに含み、使用のための説明書は、本明細書に提供される方法のいずれか1つの記載を含む。
【0005】
別の側面において、本明細書に提供される組成物のいずれか1つを対象へ投与することを含む方法が提供される。提供される方法のいずれか1つの一態様において、組成物が抗原を含まないとき、方法は抗原を対象へ投与することをさらに含む。提供される方法のいずれか1つの一態様において、抗原は、異なる合成ナノキャリアに含まれる。提供される方法のいずれか1つの一態様において、抗原は、いずれの合成ナノキャリアともカップリングされない。提供される方法のいずれか1つの一態様において、投与することは、皮内、筋肉内、静脈内、腹腔内または皮下の投与によるものである。
【0006】
別の側面において、疎水性キャリア材料を得ることまたは提供すること、10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤を得ることまたは提供すること、ラパログを得ることまたは提供すること、および疎水性キャリア材料、10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤およびラパログを組み合わせて合成ナノキャリアを形成することを含む、10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤およびラパログを含む合成ナノキャリアを生産するための方法、ここで、合成ナノキャリアにおける10以下のHLBをもつ非イオン界面活性剤の量は、≧0.01重量%であるが、≦20重量%である、10以下のHLBをもつ非イオン界面活性剤/疎水性キャリア材料である、が提供される。本明細書に提供される生産するための方法のいずれか1つの一態様において、方法は、溶媒において疎水性キャリア材料、10以下のHLBをもつ非イオン界面活性剤およびラパログを溶解させること、別の界面活性剤を得ることまたは提供すること、溶解された疎水性キャリア材料、10以下のHLBをもつ非イオン界面活性剤およびラパログ、および他の界面活性剤とともに、第一および次いで第二のO/Wエマルション形成させること、第一および第二のO/Wエマルションを混合すること、および溶媒を蒸発させることをさらに含む。本明細書に提供される生産するための方法のいずれか1つの一態様において、溶媒は、ジクロロメタン、酢酸エチル、クロロホルム、またはプロピレンカルボナートである。本明細書に提供される生産するための方法のいずれか1つの一態様において、方法は、得られた組成物を濾過することをさらに含む。本明細書に提供される生産するための方法のいずれか1つの一態様において、濾過することは、0.22μmフィルターを介して濾過することを含む。
【0007】
別の側面において、本明細書に提供される生産するための方法のいずれか1つによって生産される組成物が提供される。生産するための方法は、例において示される方法の1つなどの提供される生産するための方法のいずれか1つであり得る。
本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの一態様において、合成ナノキャリア組成物は、0.22μmフィルターを介して最初に滅菌濾過可能である。
本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの一態様において、10以下のHLBをもつ非イオン界面活性剤は、10未満のHLBをもつ非イオン界面活性剤である。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの一態様において、10以下のHLBをもつ非イオン界面活性剤は、9未満のHLBをもつ非イオン界面活性剤である。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの一態様において、10以下のHLBをもつ非イオン界面活性剤は、8未満のHLBをもつ非イオン界面活性剤である。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの一態様において、10以下のHLBをもつ非イオン界面活性剤は、7未満のHLBをもつ非イオン界面活性剤である。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの一態様において、10以下のHLBをもつ非イオン界面活性剤は、6未満のHLBをもつ非イオン界面活性剤である。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの一態様において、10以下のHLBをもつ非イオン界面活性剤は、5未満のHLBをもつ非イオン界面活性剤である。
【0008】
本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの一態様において、10以下のHLBをもつ非イオン界面活性剤は、ソルビタンエステル、脂肪アルコール、脂肪酸エステル、エトキシル化脂肪アルコール、ポロキサマー、脂肪酸、コレステロール、コレステロール誘導体、または胆汁酸または塩を含む。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの一態様において、10以下のHLBをもつ非イオン界面活性剤は、SPAN 40、SPAN 20、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソプロピルパルミタート、グリセリンモノステアラート、BRIJ 52、BRIJ 93、Pluronic P-123、Pluronic L-31、パルミチン酸、ドデカン酸、グリセリルトリパルミタートまたはグリセリルトリリノレアートを含む。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの一態様において、10以下のHLBをもつ非イオン界面活性剤はSPAN 40である。
【0009】
本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの一態様において、10以下のHLBをもつ非イオン界面活性剤は、合成ナノキャリアにおいて封入されるか、合成ナノキャリアの表面上に存在するか、または両方である。
本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの一態様において、10以下のHLBをもつ非イオン界面活性剤の量は、≧0.1であるが≦15重量%である、10以下のHLBをもつ非イオン界面活性剤/疎水性キャリア材料である。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの一態様において、10以下のHLBをもつ非イオン界面活性剤の量は、≧1であるが≦13重量%である、10以下のHLBをもつ非イオン界面活性剤/疎水性キャリア材料である。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの一態様において、10以下のHLBをもつ非イオン界面活性剤の量は、≧1であるが≦9重量%である、10以下のHLBをもつ非イオン界面活性剤/疎水性キャリア材料である。
【0010】
本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの一態様において、疎水性キャリア材料は、1以上の疎水性ポリマーまたは脂質を含む。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの一態様において、疎水性キャリア材料は、1以上の疎水性ポリマーを含み、ここで、1以上の疎水性ポリマーはポリエステルを含む。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの一態様において、ポリエステルは、PLA、PLG、PLGAまたはポリカプロラクトンを含む。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの一態様において、疎水性キャリア材料は、PLA−PEG、PLGA−PEGまたはPCL−PEGを含むか、またはさらに含む。
本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの一態様において、合成ナノキャリアにおける疎水性キャリア材料の量は、5〜95重量%である、疎水性キャリア材料/全固体である。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの一態様において、合成ナノキャリアにおける疎水性キャリア材料の量は、60〜95重量%である、疎水性キャリア材料/全固体である。
【0011】
本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの一態様において、ラパログの量は、≧6であるが≦50重量%である、ラパログ/疎水性キャリア材料である。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの一態様において、ラパログの量は、≧7であるが≦30重量%である、ラパログ/疎水性キャリア材料である。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの一態様において、ラパログの量は、≧8であるが≦24重量%である、ラパログ/疎水性キャリア材料である。
本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの一態様において、ラパログは、合成ナノキャリアにおいて封入される。
本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの一態様において、ラパログはラパマイシンである。
本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの一態様において、組成物は抗原をさらに含む。
本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの一態様において、抗原は、組成物において合成ナノキャリアとともに混和される。
【0012】
本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの一態様において、合成ナノキャリアの動的光散乱法を使用して得られた粒子サイズ分布の平均は、120nmより大きい直径である。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの一態様において、直径は150nmより大きい。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの一態様において、直径は200nmより大きい。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの一態様において、直径は250nmより大きい。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの一態様において、直径は300nm未満である。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの一態様において、直径は250nm未満である。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの一態様において、直径は200nm未満である。
本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの一態様において、組成物は、を薬学的に許容可能なキャリアをさらに含む。
【0013】
提供される組成物または方法のいずれか1つの一態様において、ラパログはラパマイシンであり、疎水性キャリア材料はPLAまたはPLGAおよびPLA−PEGを含み、10以下のHLBをもつ非イオン界面活性剤はソルビタンモノパルミタートであり、合成ナノキャリアの直径は、例の組成物のいずれか1つなどの、本明細書に提供される組成物のいずれか1つにおいて提供されるとおりである。提供される組成物または方法のいずれか1つの一態様において、ラパログはラパマイシンであり、疎水性キャリア材料はPLAまたはPLGAおよびPLA−PEGを含み、10以下のHLBをもつ非イオン界面活性剤はソルビタンモノパルミタートであり、合成ナノキャリアの直径および/またはラパマイシンの重量%は、例の組成物のいずれか1つなどの、本明細書に提供される組成物のいずれか1つにおいて提供されるとおりである。提供される組成物または方法のいずれか1つの一態様において、ラパログはラパマイシンであり、疎水性キャリア材料はPLAまたはPLGAおよびPLA−PEGを含み、10以下のHLBをもつ非イオン界面活性剤はソルビタンモノパルミタートであり、合成ナノキャリアの直径は、例の組成物のいずれか1つなどの、本明細書に提供される組成物のいずれか1つにおいて提供されるとおりであり、および/またはラパマイシンの重量%は、例の組成物のいずれか1つなどの、本明細書に提供される組成物のいずれか1つにおいて提供されるとおりであり、および/またはポリマー(単数または複数)の量は、例の組成物のいずれか1つなどの、本明細書に提供される組成物のいずれか1つにおいて提供されるとおりである。提供される組成物または方法のいずれか1つの一態様において、ラパログはラパマイシンであり、疎水性キャリア材料はPLAまたはPLGAおよびPLA−PEGを含み、10以下のHLBをもつ非イオン界面活性剤はソルビタンモノパルミタートであり、合成ナノキャリアの直径は、例の組成物のいずれか1つなどの、本明細書に提供される組成物のいずれか1つにおいて提供されるとおりであり、および/またはラパマイシンの重量%は、例の組成物のいずれか1つなどの、本明細書に提供される組成物のいずれか1つにおいて提供されるとおりであり、および/またはポリマー(単数または複数)の量は、例の組成物のいずれか1つなどの、本明細書に提供される組成物のいずれか1つにおいて提供されるとおりであり、および/またはソルビタンモノパルミタートの量は、例の組成物のいずれか1つなどの、本明細書に提供される組成物のいずれか1つにおいて提供されるとおりである。
【0014】
別の側面において、例の組成物のいずれか1つなどの、本明細書に提供される組成物のいずれか1つが提供される。
別の側面において、本明細書に提供される組成物またはキットのいずれか1つを製造する方法が提供される。一態様において、製造する方法は、例において提供される方法のいずれか1つのステップなどの、本明細書に提供される方法のいずれか1つのステップを含む。
別の側面において、対象において免疫寛容を促進するための薬剤の製造のための本明細書に提供される組成物またはキットのいずれか1つの使用が提供される。本明細書に提供される使用のいずれか1つの別の態様において、使用は本明細書に提供される方法のいずれか1つを達成するためのものである。
別の側面において、本明細書に提供される組成物またはキットのいずれか1つは、本明細書に提供される方法のいずれか1つにおける使用のためのものであり得る。
別の側面において、免疫寛容を促進することを意図した薬剤を製造する方法が提供される。一態様において、薬剤は、本明細書に提供される組成物のいずれか1つを含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図面の簡潔な記載
図1図1は、ラパマイシン(RAPA)とともに共投与されたナノキャリアおよびKLH(キーホールリンペットヘモシアニン)の寛容誘導能を実証する結果を示す。マウスの血清は、各KLHチャレンジの後にKLHに対する抗体について分析された。
図2図2は、低HLB界面活性剤をもつナノキャリアによる持続的な抗体力価の低減を実証する結果を示す。頭字語「tSIP」は、記載されるようなナノキャリアを指す。
図3図3は、マウスにおいて、遊離ラパマイシン+KLHと比較した、合成ナノキャリア+KLHの有効性を実証する結果を示す。合成ナノキャリア+KLHで処置されたかまたはされていないマウスについての、(2または3回のKLH単独チャレンジ後)第35および42日の抗体力価での抗KLH EC50(記号は幾何平均±95%CIを表す)。頭字語「NC」は、記載されるようなナノキャリアを指す。
図4図4は、例7についての処置プロトコールを示す。頭字語「NC」は、記載されるようなナノキャリアを指す。
図5図5は、マウスにおける合成ナノキャリア+KLHの抗原特異性を示す。合成ナノキャリア+KLHで処置されたかまたはされていないマウスについて第65日の抗体力価での抗OVA EC50(バーは幾何平均±95%CIを表す)。頭字語「NC」は、記載されるようなナノキャリアを指す。
【0016】
本発明の詳細な記載
本発明を詳細に記載する前に、具体的に例示された材料またはプロセスパラメータは当然に変動し得るものであるから、本発明はこれらに限定されないことが理解されるべきである。本明細書に使用される専門用語は、本発明のみの特定の態様を記載する目的のためのものであり、本発明を記載する代替的な専門用語の使用を限定することは意図されないこともまた理解されるべきである。
本明細書においてこの前後にかかわらず引用されたすべての刊行物、特許および特許出願は、すべての目的において、それらの全体を参照することによって本明細書に組み込まれる。
本明細書および添付のクレームにおいて使用されるとおり、単数形「a」、「an」および「the」は、内容が明確に他を示さない限り、複数の参照対象を含む。例えば、「ポリマー」への参照は、2以上のかかる分子の混合物または異なる分子量の単一のポリマー種の混合物を含み、「合成ナノキャリア」への参照は、2以上のかかる合成ナノキャリアまたは複数のかかる合成ナノキャリアなどの混合物を含む。
【0017】
本明細書に使用されるとおり、用語「含む(comprise)」または「含む(comprises)」もしくは「含むこと(comprising)」などのその変形は、いずれか列挙された整数(例として、特長(a feature)、要素、特徴、特性、方法/プロセスのステップまたは限定)または整数の群(例として、特長(features)、要素、特徴、特性、方法/プロセスのステップまたは限定)の包含を示すが、いずれの他の整数または整数の群の排除を示さないように読まれるべきである。よって、本明細書に使用されるとおり、用語「含むこと(comprising)」は包括的であり、列挙されていない追加の整数または方法/プロセスのステップを排除しない。
本明細書に提供される組成物および方法のいずれか1つの態様において、「含むこと(comprising)」は、「本質的に、〜からなること(consiting essentially of)」または「〜からなること(consisting of)」と置き換えられてもよい。句「本質的に、〜からなること」は、特定の整数(単数または複数)またはステップならびにクレームされた本発明の特徴または機能に実質的に影響を及ぼさないものを必要とするように本明細書に使用される。本明細書に使用されるとおり、用語「からなること(consisting)」は、列挙された整数(例として、特長、要素、特徴、特性、方法/プロセスのステップまたは限定)または整数の群(例として、特長、要素、特徴、特性、方法/プロセスのステップまたは限定)単独の存在を示すように使用される。
【0018】
A.緒言
ラパマイシンなどのラパログと組み合わされた疎水性キャリア材料を含む合成ナノキャリアが、0.22μmフィルターを介して滅菌濾過することが最初に困難であり得ることが見出された。合成ナノキャリアの生産におけるかかるフィルターの使用は、フィルターが、所望のレベルまで細菌を除去し得、in vivo投与のために使用される組成物について有益な特長である、より滅菌された組成物をもたらし得るため、重要である。驚くべきことに、かかる合成ナノキャリアの2疎水性構成要素の性質のため、合成ナノキャリアにおけるソルビタンモノパルミタートなどの非イオン界面活性剤の取り込みが、改善された濾過能力をもつ合成ナノキャリアをもたらし得、いくつかの態様において、改善されたラパログ負荷をもたらし得、したがって対象に投与されたときに有効性をもたらし得ることが発見された。結果的に、10以下の親水性−親油性バランス(HLB)をもつ非イオン界面活性剤の使用が、ラパログ(好ましくは疎水性のもの)をより有効な負荷とし得、一方、最初の滅菌濾過能力を改善もすることが見出された。
【0019】
例において示されるとおり、多数のかかる界面活性剤は、0.22μmフィルターを介して最初に通過したとき合成ナノキャリア配合の処理量を増加させた。かかる界面活性剤をもつ合成ナノキャリアが、疎水性ラパログなどのラパログのより高い負荷を提供し、対象における持続的な抗原特異的な寛容を提供し得ることも見出された。より高い親水性−親油性バランス(HLB)の界面活性剤の使用は、疎水性剤の溶媒への懸濁または溶解、ナノキャリアの配合の間のかかる剤の油溶解相への導入に典型的である一方、ナノキャリアにおいて高度に負荷された疎水性ラパログなどのラパログの最適化された製造を支持し得ない。それよりもむしろ、HLB≦10をもつソルビタンモノパルミタート(SPAN 40)(HLB6.7)などの非イオン界面活性剤は、最適化を補助する界面活性剤の分類を表す。
【0020】
結果的に、疎水性キャリア材料、ラパログ(好ましくは疎水性のもの)、および10以下の親水性−親油性バランス(HLB)をもつ非イオン界面活性剤を含む合成ナノキャリア、この組成物、およびこれに関連した方法が提供される。かかる組成物は、改善された最初の滅菌濾過能力を示し得、いくつかの態様において、改善された疎水性ラパログなどのラパログの負荷および性能を示し得、不必要な抗原特異的な免疫システム活性化を低減するための方法において使用され得、および/または抗原特異的な寛容を促進し得る。
ここで、本発明は、以下により詳細に記載されるであろう。
【0021】
B.定義
「投与すること(administering)」または「投与(administration)」または「投与する(administer)」は、薬理学的に有用であるやり方で材料を対象へ提供することを意味する。用語は、いくつかの態様において投与させることを含むことを意図する。「投与させること(Causing to be administered)」は、直接的にまたは間接的に、別の当事者に材料を投与するよう、引き起こすこと、促すこと、助長すること、補助すること、誘導すること、または指示することを意味する。
「混和された」は、組成物において、抗原などの1つの構成要素を、合成ナノキャリアなどの別のものと混合することを指す。混合される構成要素は、別個に作製されるかまたは得られ、一緒に置かれる。結果的に、構成要素は、組成物において一緒に置かれたときに生じてもよい、可能な非共有結合性の相互作用を除き、互いにカップリングしない。
対象への投与のための組成物または用量に即した「有効な量」は、対象における1以上の所望の応答、例えば抗原特異的寛容原性免疫応答の生成を引き起こす組成物または用量の量を指す。いくつかの態様において、有効な量は、薬力学的に有効な量である。したがって、いくつかの態様において、有効な量は、本明細書に提供されるとおりの1以上の所望の治療効果および/または免疫応答を引き起こす、本明細書に提供される組成物または用量のいずれかの量である。この量は、in vitroまたはin vivoでの目的のためであり得る。in vivoでの目的のために、量は、抗原特異的免疫寛容を必要とする対象にとって臨床的有益性を有してもよいと臨床医が考えるであろうものであり得る。本明細書に提供されるとおりの組成物のいずれか1つは、有効な量であり得る。
【0022】
有効な量は、所望されない免疫応答のレベルを低減することを伴い得るが、いくつかの態様において、それは、所望されない免疫応答を完全に予防することを伴う。有効な量はまた、所望されない免疫応答の出現を遅延させることも伴い得る。有効である量はまた、所望の治療エンドポイントまたは所望の治療結果を引き起こす量でもあり得る。他の態様において、有効な量は、治療エンドポイントまたは結果などの所望の応答のレベルを増強することを伴い得る。有効な量は、好ましくは、抗原に対して対象における寛容原性免疫応答をもたらす。前記したあらゆるものの達成は、慣例の方法によってモニターされ得る。
有効な量は、処置される特定の対象;症状、疾患または障害の重篤度;年齢、健康状態、サイズおよび重量を含む個々の患者のパラメータ;処置の持続期間;同時治療の性質(もしある場合);投与の具体的な経路ならびに医療関係者(the health practitioner)の知識および技能の範囲内の同様な因子に、当然に依存するであろう。これらの因子は、当業者に周知であり、ただの慣例にすぎない実験で対処され得る。最大用量が使用される、つまり、堅実な医学的判断に従う最大限に安全な用量が一般に好ましい。しかしながら、医学的理由、心理学的理由のために、または実際上いずれの他の理由のために、患者がより低い用量または耐容用量を求めてもよいことは、当業者によって理解されるであろう。
【0023】
一般に、本発明の組成物における構成要素の用量は、構成要素の量を指す。代替的に、用量は、所望の量を提供する合成ナノキャリアの数に基づいて投与され得る。
「抗原」は、B細胞抗原またはT細胞抗原を意味する。「抗原のタイプ(単数または複数)」は、同じかまたは実質的に同じ抗原の特徴を共有する分子を意味する。いくつかの態様において、抗原は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、リポタンパク質、糖脂質、ポリヌクレオチド、多糖類であってもよく、または細胞に含有または発現されている。いくつかの態様において、抗原が十分に定義されていないかまたは特徴付けられていないなどのとき、抗原は、細胞または組織の調製物、細胞残屑、細胞エキソソーム、馴化培地などの中に含有されていてもよい。
「抗原特異的」は、抗原またはその一部の存在に起因するか、または抗原を特異的に認識または結合する分子を生成する、いずれの免疫応答をも指す。例えば、免疫応答が抗原特異的抗体生産である場合、抗原に特異的に結合する抗体が生産される。別の例として、免疫応答が、抗原特異的なB細胞またはCD4+ T細胞の増殖および/または活性である場合、増殖および/または活性は、抗原またはその一部を単独で、またはMHC分子、B細胞などと複合して認識されることに起因する。
【0024】
「平均」は、本明細書に使用されるとおり、特記しない限り、算術平均を指す。
「封入する」は、合成ナノキャリア内に少なくとも一部の物質を囲い込むことを意味する。いくつかの態様において、物質は合成ナノキャリア内に完全に囲い込まれる。他の態様において、封入される物質の大半またはすべては、合成ナノキャリアの外の局所的な環境に対して露出されていない。他の態様において、たった50%、40%、30%、20%、10%または5%(重量/重量)しか局所的な環境に対して露出されていない。封入は、合成ナノキャリアの表面上に物質の大半またはすべてを置く吸収とは異なり、合成ナノキャリアの外の局所的な環境に対して物質を露出されたままにしておく。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの態様において、ラパログおよび/または10以下の親水性−親油性バランス(HLB)値をもつ非イオン界面活性剤が、合成ナノキャリア内に封入される。
【0025】
「疎水性キャリア材料」は、1以上の分子(例として、ラパログおよび10以下のHLBをもつ非イオン界面活性剤)を送達し得、疎水性の特徴を有する、いずれかの薬学的に許容可能なキャリアを指す。かかる材料は、合成ナノキャリアまたはその一部を形成し得、1以上の分子(例として、ラパログおよび10以下のHLBをもつ非イオン界面活性剤)を含み得るか、または当該1以上の分子によって負荷され得る材料を含む。一般に、キャリア材料は、1以上の分子(例として、ラパログおよび10以下のHLBをもつ非イオン界面活性剤)の標的部位または標的細胞への送達が、1以上の分子の制御された放出、および他の所望の活性を可能にする。疎水性キャリア材料の例は、限定することなく、合成ナノキャリアを形成するために使用され得、ポリエステルまたは脂質などの疎水性ポリマーなどの疎水性構成要素を含む材料を含む。「疎水性」は、水に対する水素結合に実質的に参加しない材料を指す。かかる材料は、一般に、非極性、主に非極性、または電荷において中性である。本明細書に記載される組成物に好適なキャリア材料は、いくつかのレベルで疎水性を示すそれに基づいて選択され得る。したがって、疎水性のキャリア材料は、全体として疎水性であるものであり、疎水性ポリマーまたは脂質などの疎水性の構成要素から完全になり得る。しかしながら、いくつかの態様において、疎水性キャリア材料は、全体として疎水性であり、疎水性ポリマーまたは脂質などの疎水性の構成要素を非疎水性の構成要素と組み合わせて含む。
【0026】
「最初に滅菌濾過可能」は、0.22μmフィルターなどのフィルターを介して、これまでは濾過されなかったが、少なくとも50グラムのナノキャリア/フィルター膜表面積のmの処理量で濾過され得る合成ナノキャリアの組成物を指す。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つのいくつかの態様において、処理量は、9mLの体積の合成ナノキャリア懸濁液を取り、いずれか1つの本明細書に提供されるとおりのフィルターのいずれか1つをもつ10mLのシリンジにそれを入れることによって決定される。合成ナノキャリア懸濁液は、次いで、さらなる懸濁材料がフィルターを介して通過しなくなるまで、フィルターを介して押される。処理量は、次いで、フィルターを介して押された材料、およびシリンジ中に残っている懸濁材料に基づいて計算され得る。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つのいくつかの態様において、最初に滅菌濾過可能な組成物は、非滅菌であるか、および/または、in vivo投与に好適ではない(すなわち、実質的に純粋ではなく、in vivoでの投与には決して望ましくない可溶性構成要素を含む)。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの他の態様において、最初に滅菌濾過可能な組成物は、生産されたが、医療グレードの材料を生産するためにさらに処理されていない合成ナノキャリアを含む。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つのいくつかの態様において、最初に滅菌濾過可能な組成物は、0.22μmフィルターなどのフィルターを介して、これまで濾過されなかったが、少なくとも60、70、80、90、100、120、130、140、160、200、250、300、350、500、750、1000または1500グラムのナノキャリア/フィルター膜表面積のmの処理量で濾過され得る。0.22μmフィルターは、0.22μmの孔サイズをもついずれのフィルターでもあり得る。かかるフィルターは、例えばポリエチレンスルホン、フッ化ポリビニリデン、混合セルロースエステル、無溶媒酢酸セルロース、再生セルロース、ナイロンなどの様々な材料から作製され得る。フィルターの具体的な例は、Millipore SLGPM33R、Millipore SLGVM33RS、Millipore SLGSM33SS、Sartorius 16534、Sartorius 17764、Sartorius 17845などを含む。
【0027】
「合成ナノキャリアの最大寸法」は、合成ナノキャリアのいずれかの軸に沿って測定されたナノキャリアの最大の寸法を意味する。「合成ナノキャリアの最小寸法」は、合成ナノキャリアのいずれかの軸に沿って測定された合成ナノキャリアの最小の寸法を意味する。例えば、球状の合成ナノキャリアについて、合成ナノキャリアの最大および最小寸法は、実質的に同一であろうし、その直径のサイズであろう。類似して、立方状の合成ナノキャリアについて、合成ナノキャリアの最小寸法は、その高さ、幅または長さのうち最小のものであろうが、合成ナノキャリアの最大寸法は、その高さ、幅または長さのうち最大のものであろう。態様において、試料における合成ナノキャリアの総数に基づいて、試料における合成ナノキャリアの少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最小寸法は、100nm以上である。態様において、試料における合成ナノキャリアの総数に基づいて、試料における合成ナノキャリアの少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最大寸法は、5μm以下である。好ましくは、試料における合成ナノキャリアの総数に基づいて、試料における合成ナノキャリアの少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最小寸法は、110nmより大きく、より好ましくは120nmより大きく、より好ましくは130nmより大きく、なおより好ましくは150nmより大きい。合成ナノキャリアの最大および最小寸法のアスペクト比は、態様に依存して変動し得る。例えば、合成ナノキャリアの最大寸法:最小寸法のアスペクト比は、1:1から1,000,000:1まで、好ましくは1:1から100,000:1まで、より好ましくは1:1から10,000:1まで、より好ましくは1:1から1000:1まで、なおより好ましくは1:1から100:1まで、さらにより好ましくは1:1から10:1まで変動し得る。
【0028】
好ましくは、試料における合成ナノキャリアの総数に基づいて、試料における合成ナノキャリアの少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最大寸法は、3μm以下、より好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下、より好ましくは800nm以下、より好ましくは600nm以下、なおより好ましくは500nm以下である。好ましい態様において、試料における合成ナノキャリアの総数に基づいて、試料における合成ナノキャリアの少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最小寸法は、100nm以上、より好ましくは120nm以上、より好ましくは130nm以上、より好ましくは140nm以上、なおより好ましくは150nm以上である。合成ナノキャリア寸法(例として有効直径)の測定は、いくつかの態様において、合成ナノキャリアを液体(通常は水性の)媒体に懸濁させ、動的光散乱法(DLS)を使用することによって(例としてBrookhaven ZetaPALS instrumentを使用して)得られてもよい。例えば、合成ナノキャリアの懸濁液は、およそ0.01〜0.5mg/mLの合成ナノキャリア懸濁液の最終濃度を達成するために、水性緩衝液から精製水中へ希釈され得る。希釈された懸濁液は、DLS分析に好適なキュベットの内部で直接的に調製されてもよく、または当該キュベットへ移されてもよい。次いでキュベットは、DLSに置かれ、制御された温度まで平衡化させ、次いで媒体の粘性および試料の屈折率にとって適切なインプットに基づいて安定した再現性のある分布を取得するのに充分な時間、スキャンされてもよい。次いで、分布の有効直径または平均が報告される。高いアスペクト比または非球状の合成ナノキャリアの有効サイズを決定することは、より正確な測定値を得るために、電子顕微鏡などの増進技術を必要としてもよい。合成ナノキャリアの「寸法」または「サイズ」または「直径」は、例えば、動的光散乱法を使用して得られた粒子サイズ分布の平均を意味する。
【0029】
「10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤」または「低HLB界面活性剤」は、本明細書に使用されるとおり、少なくとも1つの疎水性テールおよび親水性ヘッドを含む構造を有するか、または疎水性の基または領域および親水性の基または領域を有する、非イオン性の両親媒性分子を指す。界面活性剤のテール部分は、一般に、炭化水素鎖からなる。界面活性剤は、親水性のヘッド部分または基または領域の荷電特性に基づいて分類され得る。本明細書に使用されるとおり、「HLB」は、界面活性剤の親水性(hydrophilic)−親油性(lipophilic)バランス、または親水性(hydrophile)−親油性(lipophile)バランスを指し、界面活性剤の親水性または親油性の性質の測定値である。
【0030】
本明細書に提供される界面活性剤のいずれか1つのHLBは、Griffinの方法またはDavieの方法を使用して計算されてもよい。例えばGriffinの方法を使用すると、界面活性剤のHLBは、界面活性剤の親水性部分の分子質量を、界面活性剤全体の分子質量で除したものに20を乗じた積である。HLB値は、0から20までの尺度であり、0は完全に疎水性(親油性)の分子に対応し、20は完全に親水性(疎油性)の分子に対応する。いくつかの態様において、本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの界面活性剤のHLBは、(例えば、GriffinまたはDavieの方法によって決定されるとおり)0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。本明細書に提供される組成物および方法のいずれか1つにおける使用のためのかかる界面活性剤の例は、限定することなく、SPAN 40、SPAN 20などのソルビタンエステル;オレイルアルコール、ステアリルアルコールなどの脂肪アルコール;イソプロピルパルミタート、グリセロールモノステアラートなどの脂肪酸エステル;BRIJ 52、BRIJ 93などのエトキシル化脂肪アルコール;Pluronic P-123、Pluronic L-31などのポロキサマー;パルミチン酸、ドデカン酸などの脂肪酸;グリセリルトリパルミタート、グリセリルトリリノレアートなどのトリグリセリド;コレステロール;硫酸コレステリルナトリウム、コレステリルドデカノアートなどのコレステロール誘導体;および、リトコール酸、リトコール酸ナトリウムなどの胆汁塩または酸を含む。かかる界面活性剤のさらなる例は、ソルビタンモノステアラート(SPAN 60)、ソルビタントリステアラート(SPAN 65)、ソルビタンモノオレアート(SPAN 80)、ソルビタンセスキオレアート(SPAN 83)、ソルビタントリオレアート(SPAN 85)、ソルビタンセスキオレアート(Arlacel 83)、ソルビタンジパルミタート、脂肪酸のモノおよびジグリセリド、ポリオキシエチレンソルビタントリオレアート(Tween 85)、ポリオキシエチレンソルビタンヘキサオレアート(G 1086)、ソルビタンモノイソステアラート(Montane 70)、ポリオキシエチレンアルコール、ポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル、ポリオキシエチレン(2)オレイルエーテル(BRIJ 93)、ポリオキシエチレンセチルエーテル(BRIJ 52)、ポリエチレングリコールドデシルエーテル(BRIJ L4);1−モノテトラデカノイル−rac−グリセロール;グリセリルモノステアラート;グリセロールモノパルミタート;エチレンジアミンテトラドキステトラオール(Tetronic 90R4、Tetronic 701)、ポリオキシエチレン(5)ノニルフェニルエーテル(IGEPAL CA-520)、MERPOL A界面活性剤、MERPOL SE界面活性剤、およびポリ(エチレングリコール)ソルビトールヘキサオレアートを含む。さらなる例もまた当業者に明らかであろう。
【0031】
「薬学的に許容可能な添加剤」または「薬学的に許容可能なキャリア」は、組成物を配合するための薬理学的に活性な材料と一緒に使用される薬理学的に不活性な材料を意味する。薬学的に許容可能な添加剤は、糖類(例えばグルコース、ラクトースなど)、抗菌剤などの防腐剤、再構成補助剤、着色剤、生理食塩水(リン酸緩衝生理食塩水など)、および緩衝液を含むが、これらに限定されない、当該技術分野において知られている様々な材料を含む。
「提供すること」は、本発明の実践のための必要とされる物品または物品のセットまたは方法を供給する、個人が実施する活動または活動のセットを意味する。活動または活動のセットは、自身によって直接的または間接的のいずれかで取られ得る。
「ラパログ」は、ラパマイシンおよびラパマイシン(シロリムス)に構造的に関連した分子(アナログ)を指し、好ましくは疎水性である。ラパログの例は、限定することなく、テムシロリムス(CCI-779)、デフォロリムス、エベロリムス(RAD001)、リダフォロリムス(AP-23573)、ゾタロリムス(ABT-578)を含む。ラパログの追加の例は、例としてWO公報WO 1998/002441およびUS特許第8,455,510号において見出され得、かかるラパログの開示は、それらの全体を参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0032】
「溶媒」は、本明細書に提供されるとおりの合成ナノキャリアの構成要素のいずれか1以上などの溶質を溶解し得る物質を指す。いくつかの態様において、溶媒は、エマルションプロセス(例として二重エマルションプロセス)などにおける合成ナノキャリアの形成に有用である。かかる溶媒の例は、ジクロロメタン、酢酸エチル、クロロホルム、およびプロピレンカルボナートを含む。例はまた、低水溶性の有機溶媒と、アセトン、エタノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ホルムアミドなどの水混和性の溶媒との組み合わせである溶媒混合物も含む。さらなる例は当業者に知られているであろう。
「対象」は、ヒトおよび霊長類などの温血哺乳動物;鳥類;ネコ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマおよびブタなどの家庭内で飼育された動物または家畜;マウス、ラットおよびモルモットなどの実験動物;魚類;爬虫類;動物園の動物および野生動物;および同種のものを含む動物を意味する。
【0033】
「界面活性剤」は、2つの液体間または液体と固体との間の表面張力を低下させ得る化合物を指す。界面活性剤は、洗剤、湿潤剤、乳化剤、発泡剤、および分散剤として働いてもよく、本明細書に提供されるとおり合成ナノキャリアの形成において使用され得る。いくつかの態様において、界面活性剤は、10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤である。
「合成ナノキャリア(単数または複数)」は、天然で見出されていない、5ミクロン以下のサイズである少なくとも1つの寸法を保有する、分離した物体を意味する。本明細書に提供されるとおり、合成ナノキャリアは、疎水性キャリア材料を含む。結果的に、合成ナノキャリアは、疎水性ポリマーのナノ粒子ならびに脂質ベースのナノ粒子を含む合成ナノキャリアであり得るが、これに限定されない。合成ナノキャリアは、球状、立方状、錐体状、長方形(楕円)状、円柱状、ドーナツ状などを含むが、これらに限定されない様々な異なる形状であり得る。本発明に従う合成ナノキャリアは、1以上の表面を含む。態様において、合成ナノキャリアは、1:1、1:1.2、1:1.5、1:2、1:3、1:5、1:7より大きい、または1:10より大きいアスペクト比を保有してもよい。
【0034】
約100nm以下、好ましくは100nm以下の最小寸法を有する本発明に従う合成ナノキャリアは、補体を活性化するヒドロキシル基をもつ表面を含まないか、または代替的に、本質的に、補体を活性化するヒドロキシル基ではない部分からなる、表面を含む。好ましい態様において、約100nm以下、好ましくは100nm以下の最小寸法を有する本発明に従う合成ナノキャリアは、補体を実質的に活性化する表面を含まないか、または代替的に、本質的に、補体を実質的に活性化しない部分からなる、表面を含む。より好ましい態様において、約100nm以下、好ましくは100nm以下の最小寸法を有する本発明に従う合成ナノキャリアは、補体を活性化する表面を含まないか、または代替的に、本質的に、補体を活性化しない部分からなる、表面を含む。
【0035】
「全固体」は、合成ナノキャリアの組成物または懸濁液に含有される全構成要素の総重量を指す。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つのいくつかの態様において、全固体の量は、懸濁液のmLあたりの乾燥ナノキャリアの総質量として決定される。これは、重量測定法によって決定され得る。
「重量%」は、1つの重量の別の重量に対する、100倍の比率を指す。例えば、重量%は、1つの構成要素の重量の別のものに対する、100倍の比率、または1つの構成要素の、1より多い構成要素の総重量に対する、100倍の比率であり得る。一般に、重量%は、合成ナノキャリアの集団にわたる平均、または組成物もしくは懸濁液における合成ナノキャリアにわたる平均として測定される。
【0036】
C.組成物および関連した方法
改善された最初の滅菌濾過能力、および、いくつかの態様において、改善されたラパログ負荷、および、したがって対象に投与されたとき有効性をもつ合成ナノキャリア組成物が本明細書に提供される。かかる合成ナノキャリアは、疎水性のキャリア材料ならびに好ましくは疎水性であるラパログを含む。驚くべきことに、界面活性剤、10以下の親水性−親油性バランス(HLB)をもつ非イオン界面活性剤の所定の分類が、改善された最初の滅菌濾過能力、および、いくつかの態様において、合成ナノキャリアにおけるラパログのより有効な負荷を与えることを可能にすることが見出された。例に示されるとおり、0.22μmフィルターを介して最初に通過したとき、合成ナノキャリア組成物の増加した処理量が、合成ナノキャリア組成物においてSPAN 40などの界面活性剤が取り込まれたとき見出された。例においてもまた示されるとおり、10以下の親水性−親油性バランス(HLB)をもつ非イオン界面活性剤とともに配合された多数のかかる合成ナノキャリアもまた、対象における持続的な抗原特異的な寛容を提供することが可能であった。
【0037】
本明細書に提供されるとおりの合成ナノキャリアにおける10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤の最適化された量もまた発見された。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つのいくつかの態様において、合成ナノキャリアにおける10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤の量は、≧0.01であるが≦20重量%(10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤/疎水性キャリア材料)である。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つのいくつかの態様において、合成ナノキャリアにおける10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤の量は、≧0.1であるが≦15重量%、≧0.5であるが≦13重量%、≧1であるが≦9または10重量%(10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤/疎水性キャリア材料)である。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの他の態様において、合成ナノキャリアにおける10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤の量は、≧0.01であるが≦17重量%、≧0.01であるが≦15重量%、≧0.01であるが≦13重量%、≧0.01であるが≦12重量%、≧0.01であるが≦11重量%、≧0.01であるが≦10重量%、≧0.01であるが≦9重量%、≧0.01であるが≦8重量%、≧0.01であるが≦7重量%、≧0.01であるが≦6重量%、≧0.01であるが≦5重量%(10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤/疎水性キャリア材料)などである。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つのなお他の態様において、合成ナノキャリアにおける10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤の量は、≧0.1であるが≦15重量%、≧0.1であるが≦14重量%、≧0.1であるが≦13重量%、≧0.1であるが≦12重量%、≧0.1であるが≦11重量%、≧0.1であるが≦10重量%、≧0.1であるが≦9重量%、≧0.1であるが≦8重量%、≧0.1であるが≦7重量%、≧0.1であるが≦6重量%、≧0.1であるが≦5重量%(10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤/疎水性キャリア材料)などである。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つのなお他の態様において、合成ナノキャリアにおける10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤の量は、≧0.5であるが≦15重量%、≧0.5であるが≦14重量%、≧0.5であるが≦13重量%、≧0.5であるが≦12重量%、≧0.5であるが≦11重量%、≧0.5であるが≦10重量%、≧0.5であるが≦9重量%、≧0.5であるが≦8重量%、≧0.5であるが≦7重量%、≧0.5であるが≦6重量%、≧0.5であるが≦5重量%(10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤/疎水性キャリア材料)などである。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つのなお他の態様において、合成ナノキャリアにおける10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤の量は、≧1であるが≦9重量%、≧1であるが≦8重量%、≧1であるが≦7重量%、≧1であるが≦6重量%、≧1であるが≦5重量%(10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤/疎水性キャリア材料)などである。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つのなお他の態様において、合成ナノキャリアにおける10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤の量は、≧5であるが≦15重量%、≧5であるが≦14重量%、≧5であるが≦13重量%、≧5であるが≦12重量%、≧5であるが≦11重量%、≧5であるが≦10重量%、≧5であるが≦9重量%、≧5であるが≦8重量%、≧5であるが≦7重量%、≧5であるが≦6重量%(10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤/疎水性キャリア材料)などである。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つのいくつかの態様において、合成ナノキャリアにおける10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤の量は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20重量%(10以下のHLB値をもつ非イオン界面活性剤/疎水性キャリア材料)である。本明細書に提供されるHLB値のいずれか1つは、GriffinまたはDavieの方法を使用して決定されてもよい。
【0038】
合成ナノキャリア組成物における疎水性キャリア材料の最適化された量もまた決定された。好ましくは、本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つのいくつかの態様において、合成ナノキャリア組成物における疎水性キャリア材料の量は、5〜95重量%(疎水性キャリア材料/全固体)である。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの他の態様において、合成ナノキャリアにおける疎水性キャリア材料の量は、10〜95、15〜90、20〜90、25〜90、30〜80、30〜70、30〜60、30〜50重量%(疎水性キャリア材料/全固体)などである。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つのなお他の態様において、合成ナノキャリアにおける疎水性キャリア材料の量は、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90または95重量%(疎水性キャリア材料/全固体)の量である。
【0039】
さらに、合成ナノキャリアにおけるラパマイシンなどのラパログの量もまた最適化され得る。好ましくは、かかる量は、合成ナノキャリアが対象へ投与されるとき、有効な結果(例として、持続的な抗原特異的寛容)をもたらし得る。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つのいくつかの態様において、合成ナノキャリアは、≧6であるが≦50重量%である、ラパログ/疎水性キャリア材料を含む。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つのいくつかの態様において、合成ナノキャリアは、≧6であるが≦45重量%、≧6であるが≦40重量%、≧6であるが≦35重量%、≧6であるが≦30重量%、≧6であるが≦25重量%、≧6であるが≦20重量%、≧6であるが≦15重量%である、ラパログ/疎水性キャリア材料を含む。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つの他の態様において、合成ナノキャリアは、≧7であるが≦45重量%、≧7であるが≦40重量%、≧7であるが≦35重量%、≧7であるが≦30重量%、≧7であるが≦25重量%、≧7であるが≦20重量%、≧7であるが≦15重量%である、ラパログ/疎水性キャリア材料を含む。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つのなお他の態様において、合成ナノキャリアは、≧8であるが≦24重量%である、ラパログ/疎水性キャリア材料を含む。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つのいくつかの態様において、合成ナノキャリアは、6、7、8、9、10、12、15、17、20、22、25、27、30、35、45以上の重量%である、ラパログ/疎水性キャリア材料を含む。
【0040】
本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つについて本明細書に列挙されたような構成要素または材料の量は、当業者に知られている方法またはさもなくば本明細書に提供される方法を使用して決定され得る。例として、10以下のHLBをもつ非イオン界面活性剤の量は、抽出に続くHPLC法による定量によって測定され得る。疎水性キャリア材料の量は、HPLCを使用して決定され得る。かかる量の決定は、いくつかの態様において、プロトンNMR、またはMALDI−MSなどの他の直交法(other orthogonal methods)の使用に続き、疎水性キャリア材料の同一性を決定し得る。同様な方法が、本明細書に提供される組成物のいずれか1つにおけるラパログの量を決定するために使用され得る。いくつかの態様において、ラパログの量は、HPLCを使用して決定される。構成要素または材料の量を決定するための方法のさらなる例は、例などの本明細書に他の箇所で提供されるとおりである。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つについて、構成要素または材料の量もまた、ナノキャリア配合物の処方された重量に基づいて決定され得る。結果的に、本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つのいくつかの態様において、本明細書に提供される構成要素のいずれか1つの量は、合成ナノキャリアの配合の間の水相における構成要素のものである。本明細書に提供される組成物または方法のいずれか1つのいくつかの態様において、構成要素のいずれか1つの量は、生産された合成ナノキャリア組成物における構成要素、および、配合プロセスの結果のものである。
【0041】
本明細書に提供されるような合成ナノキャリアは、疎水性ポリマーまたは脂質などの疎水性キャリア材料を含む。したがって、いくつかの態様において、本明細書に提供される合成ナノキャリアは、1以上の脂質を含む。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、脂質二重層を含み得る。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、脂質一重層を含み得る。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、脂質層(例として、脂質二重層、脂質一重層など)によって囲まれたポリマーマトリクスを含むコアを含み得る。さらに疎水性キャリア材料は、脂質(合成および天然)、脂質−ポリマーコンジュゲート、脂質−タンパク質コンジュゲート、および架橋性油、ワックス、脂質などを含む。本明細書に提供されるような疎水性キャリア材料としての使用のための脂質材料のさらなる例は、例としてPCT公報第WO2000/006120号および第WO2013/056132号において見出され得、かかる材料の開示は、これら全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0042】
結果的に、いくつかの態様において、本明細書に提供される合成ナノキャリアは、リポソームであり得る。リポソームは、Kim et al.(1983, Biochim. Biophys. Acta 728, 339-348);Liu et al.(1992, Biochim. Biophys. Acta 1104, 95-101);Lee et al.(1992, Biochim. Biophys. Acta. 1103, 185-197)、Brey et al.(US特許出願公報20020041861)、Hass et al.(US特許出願公報20050232984)、Kisak et al.(US特許出願公報20050260260)およびSmyth-Templeton et al.(US特許出願公報20060204566)によって報告されたものなどの標準的な方法によって生産され得、かかるリポソームおよびそれらの生産のための方法の開示は、これら全体は参照により本明細書に組み込まれる。
本明細書に提供されるような疎水性キャリア材料は、1以上の疎水性ポリマーまたはその単位を含む。しかしながら、いくつかの態様において、疎水性キャリア材料が全体として疎水性である一方、疎水性キャリア材料は、疎水性ではないポリマーまたはその単位をも含み得る。
【0043】
結果的に、本明細書に提供されるような疎水性キャリア材料は、疎水性ポリエステルなどのポリエステルを含み得る。ポリエステルは、本明細書において「PLGA」として集合的に言及される、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)およびポリ(ラクチド−co−グリコリド)などの乳酸およびグリコール酸単位を含むコポリマー;ならびに、本明細書において「PGA」として言及される、グリコール酸単位を含むホモポリマー、および本明細書において「PLA」として集合的に言及される、ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸、ポリ−D,L−乳酸、ポリ−L−ラクチド、ポリ−D−ラクチドおよびポリ−D,L−ラクチドなどの乳酸単位を含む。いくつかの態様において、例示的なポリエステルは、例えば、ポリヒドロキシ酸;PEGコポリマー、およびラクチドとグリコリドとのコポリマー(例として、PLA−PEGコポリマー、PGA−PEGコポリマー、PLGA−PEGコポリマー、およびそれらの誘導体)を含む。いくつかの態様において、ポリエステルは、例えば、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(カプロラクトン)−PEGコポリマー、ポリ(L−ラクチド−co−L−リシン)、ポリ(セリンエステル)、ポリ(4−ヒドロキシ−L−プロリンエステル)、ポリ[α−(4−アミノブチル)−L−グリコール酸]、およびそれらの誘導体を含む。
【0044】
いくつかの態様において、疎水性キャリア材料のポリマーは、PLGAであってもよい。PLGAは、乳酸およびグリコール酸の生体適合性および生分解性のコポリマーであり、PLGAの多様な形態が、乳酸:グリコール酸の比率によって特徴付けられる。乳酸は、L−乳酸、D−乳酸、またはD,L−乳酸であり得る。PLGAの分解速度は、乳酸:グリコール酸の比率を変えることによって調節され得る。いくつかの態様において、本発明に従って使用されるPLGAは、およそ85:15、およそ75:25、およそ60:40、およそ50:50、およそ40:60、およそ25:75、またはおよそ15:85の、乳酸:グリコール酸の比率によって特徴付けられる。
【0045】
本明細書に提供されるとおりの疎水性キャリア材料は、非メトキシ末端の、pluronicポリマーである1以上のポリマー、またはそれらの単位を含んでもよい。「非メトキシ末端のポリマー」は、メトキシ以外の部分で終わる少なくとも1つの末端を有するポリマーを意味する。いくつかの態様において、ポリマーは、メトキシ以外の部分で終わる少なくとも2つの末端を有する。他の態様において、ポリマーは、メトキシで終わる末端を有しない。「非メトキシ末端の、pluronicポリマー」は、両末端にメトキシをもつ直鎖状pluronicポリマー以外のポリマーを意味する。
疎水性キャリア材料は、いくつかの態様において、ポリヒドロキシアルカノアート、ポリアミド、ポリエーテル、ポリオレフィン、ポリアクリラート、ポリカルボナート、ポリスチレン、シリコーン、フルオロポリマー、またはそれらの単位を含んでもよい。本明細書に提供される疎水性キャリア材料において含まれていてもよいポリマーのさらなる例は、ポリカルボナート、ポリアミド、またはポリエーテル、またはそれらの単位を含む。他の態様において、疎水性キャリア材料のポリマーは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリプロピレングリコール、またはそれらの単位を含んでもよい。
【0046】
いくつかの態様において、疎水性キャリア材料が生分解性であるポリマーを含むことが好ましい。したがって、かかる態様において、疎水性キャリア材料のポリマーは、ポリ(エチレングリコール)またはポリプロピレングリコールなどのポリエーテルまたはそれらの単位を含んでいてもよい。加えて、ポリマーは、ポリエーテルおよび生分解性ポリマーのブロックコポリマーを含んでいてもよく、これにより、ポリマーは生分解性である。他の態様において、ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)またはポリプロピレングリコールまたはそれらの単位などの、ポリエーテルまたはそれらの単位を単独で含まない。
本発明における使用に好適なポリマーの他の例は、ポリエチレン、ポリカルボナート(例として、ポリ(1,3−ジオキサン−2オン))、ポリ無水物(例として、ポリ(セバシン無水物))、ポリプロピルフメラート、ポリアミド(例として、ポリカプロラクタム)、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリエステル(例として、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリラクチド−co−グリコリド、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酸(例として、ポリ(β−ヒドロキシアルカノアート)))、ポリ(オルトエステル)、ポリシアノアクリラート、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリホスファゼン、ポリアクリラート、ポリメタクリラート、ポリ尿素、ポリスチレン、およびポリアミン、ポリリシン、ポリリシン−PEGコポリマー、およびポリ(エチレンイミン)、ポリ(エチレンイミン)−PEGコポリマーを含むが、これらに限定されない。
【0047】
疎水性キャリア材料に含まれていてもよいポリマーのなお他の例は、例えば、アクリル酸およびメタクリル酸コポリマー、メチルメタクリラートコポリマー、エトキシエチルメタクリラート、シアノエチルメタクリラート、アミノアルキルメタクリラートコポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミドコポリマー、ポリ(メチルメタクリラート)、ポリ(メタクリル酸無水物)、メチルメタクリラート、ポリメタクリラート、ポリ(メチルメタクリラート)コポリマー、ポリアクリルアミド、アミノアルキルメタクリラートコポリマー、グリシジルメタクリラートコポリマー、ポリシアノアクリラート、および前記ポリマーの1以上を含む組み合わせなどのアクリルポリマーを含む。
【0048】
いくつかの態様において、疎水性キャリア材料のポリマーは、結合してポリマーマトリクスを形成し得る。多種多様なポリマーおよびそれからポリマーマトリクスを形成するための方法が従来知られている。いくつかの態様において、疎水性ポリマーマトリクスを含む合成ナノキャリアは、合成ナノキャリア内で疎水性の環境を生成する。
いくつかの態様において、ポリマーは、1以上の部分および/または官能基によって改変されてもよい。様々な部分または官能基は、本発明に従って使用され得る。いくつかの態様において、ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、炭水化物、および/または、多糖類に由来する非環式ポリアセタールにより、改変されてもよい(Papisov, 2001, ACS Symposium Series, 786:301)。ある態様は、Gref et al.のUS特許第5543158号、またはVon Andrian et al.によるWO公報WO2009/051837の一般の教示を使用してなされてもよい。
【0049】
いくつかの態様において、ポリマーは、脂質または脂肪酸基で改変されてもよい。いくつかの態様において、脂肪酸基は、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、またはリグノセリン酸の1以上であってもよい。いくつかの態様において、脂肪酸基は、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、アルファ−リノール酸、ガンマ−リノール酸、アラキドン酸、ガドレイン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、またはエルカ酸の1以上であってもよい。
いくつかの態様において、ポリマーは生分解性であることが好ましい。いくつかの態様において、本発明に従うポリマーは、21 C.F.R. § 177.2600の下で米国食品医薬品局(FDA)によってヒトにおける使用について承認されたポリマーを含む。
【0050】
ポリマーは、天然または非天然(合成)ポリマーであってもよい。ポリマーは、2以上の単量体を含むホモポリマーまたはコポリマーであってもよい。配列に関して、コポリマーはランダム、ブロックであってもよい、またはランダムおよびブロック配列の組み合わせを含んでもよい。典型的には、本発明に従うポリマーは、有機ポリマーである。
いくつかの態様において、ポリマーは、直鎖状または分枝状のポリマーであり得る。いくつかの態様において、ポリマーは、デンドリマーであり得る。いくつかの態様において、ポリマーは、相互に実質的に架橋され得る。いくつかの態様において、ポリマーは、実質的に架橋のないものであり得る。いくつかの態様において、ポリマーは、本発明に従って、架橋するステップを経ることなく使用され得る。合成ナノキャリアが、前記および他のポリマーのいずれかの、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、ブレンド、混合物、および/または、付加物を含んでもよいことがさらに理解されるべきである。当業者は、本明細書に列挙されたポリマーが、ただし当該ポリマーが所望の基準を満たすならば、本発明に従って使用され得る、例示的であるが包括的ではないポリマーのリストを表すことを認識するであろう。
【0051】
これらのおよび他のポリマーの特性およびそれらを調製するための方法は、当該技術分野において周知である(例えば、US特許6,123,727;5,804,178;5,770,417;5,736,372;5,716,404;6,095,148;5,837,752;5,902,599;5,696,175;5,514,378;5,512,600;5,399,665;5,019,379;5,010,167;4,806,621;4,638,045;および4,946,929;Wang et al., 2001, J. Am. Chem. Soc., 123:9480;Lim et al., 2001, J. Am. Chem. Soc., 123:2460;Langer, 2000, Acc. Chem. Res., 33:94; Langer, 1999, J.Control. Release, 62:7;およびUhrich et al., 1999, Chem. Rev., 99:3181を参照)。より一般に、ある好適なポリマーを合成するための様々な方法は、Concise Encyclopedia of Polymer Science and Polymeric Amines and Ammonium Salts, Ed. by Goethals, Pergamon Press, 1980;Principles of Polymerization by Odian, John Wiley & Sons, Fourth Edition, 2004;Contemporary Polymer Chemistry by Allcock et al., Prentice-Hall, 1981;Deming et al., 1997, Nature, 390:386;およびUS特許6,506,577、6,632,922、6,686,446、および6,818,732において記載されている。
【0052】
多種多様な合成ナノキャリアは、本発明に従って使用され得る。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、球体または球状である。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、平面またはプレート形状である。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、立方体または立方体状である。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、楕円または長円である。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、円柱、円錐または角錐である。
いくつかの態様において、各合成ナノキャリアが類似の特性を有するように、サイズまたは形状に関して相対的に均一である合成ナノキャリアの集団を使用することが望ましい。例えば、合成ナノキャリアの総数に基づいて、合成ナノキャリアの少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%は、合成ナノキャリアの平均直径または平均寸法の5%、10%、または20%以内に入る最小寸法または最大寸法を有していてもよい。
【0053】
本発明に従う組成物は、防腐剤、緩衝液、生理食塩水、またはリン酸緩衝生理食塩水などの薬学的に許容可能な添加剤と組み合わせて要素を含み得る。組成物は、有用な剤形を作り上げるための従来の医薬の製造および調合技術を使用して作製されてもよい。態様において、合成ナノキャリアを含む組成物などのものは、防腐剤と一緒に注射するための滅菌生理食塩水溶液において懸濁されている。
いくつかの態様において、本明細書に提供されるとおりの合成ナノキャリアのいずれの構成要素は、単離されていてもよい。単離されていることは、その本来の環境とは別個であり、その同定または使用を容認するのに充分な分量で存在する要素を指す。これは、例えば、要素がクロマトグラフィーまたは電気泳動法によって精製されてもよいことを意味する。単離されている要素は、実質的に純粋であってもよいが、実質的に純粋である必要はない。単離されている要素は、医薬調製物において薬学的に許容可能な添加剤とともに混和されてもよいため、要素は調製物のわずかな重量パーセントしか含んでいなくてもよい。要素は、それにもかかわらず、生体システムに関連してもよい物質から分離されている、すなわち、他の脂質またはタンパク質から単離されている点において、単離されている。本明細書に提供される要素のいずれも、単離され、組成物に含まれてもよく、または単離された形態で方法において使用されてもよい。
【0054】
D.組成物を作製し、使用する方法および関連の方法
合成ナノキャリアは、当該技術分野において知られている多種多様な方法を使用して調製されてもよい。例えば、合成ナノキャリアは、ナノ沈殿、流体チャネルを使用する収束流(flow focusing)、噴霧乾燥、一重および二重エマルション溶媒蒸発、溶媒抽出、相分離、粉砕(凍結粉砕を含む)、超臨界流体(超臨界二酸化炭素など)処理、微細エマルション手順、微細加工、ナノ加工、犠牲層、単純および複雑なコアセルベーション、および当業者に周知の他の方法などの方法によって形成され得る。代替的にまたは加えて、単分散の半導体、伝導性、磁性、有機、および他のナノ材料のための、水性および有機溶媒の合成が記載されている(Pellegrino et al., 2005, 小, 1:48;Murray et al., 2000, Ann. Rev. Mat. Sci., 30:545;およびTrindade et al., 2001, Chem. Mat., 13:3843)。追加の方法は、文献(例として、Doubrow, Ed., “Microcapsules and Nanoparticles in Medicine and Pharmacy,” CRC Press, Boca Raton, 1992;Mathiowitz et al., 1987, J. Control. Release, 5:13;Mathiowitz et al., 1987, Reactive Polymers, 6:275;およびMathiowitz et al., 1988, J. Appl. Polymer Sci., 35:755;US特許5578325および6007845;P. Paolicelli et al., “Surface-modified PLGA-based Nanoparticles that can Efficiently Associate and Deliver Virus-like Particles” Nanomedicine. 5(6):843-853 (2010)を参照)において記載されている。
【0055】
様々な材料が、C. Astete et al., “Synthesis and characterization of PLGA nanoparticles” J. Biomater. Sci. Polymer Edn, Vol. 17, No. 3, pp. 247-289 (2006);K. Avgoustakis “Pegylated Poly(Lactide) and Poly(Lactide-Co-Glycolide) Nanoparticles: Preparation, Properties and Possible Applications in Drug Delivery” Current Drug Delivery 1:321-333 (2004);C. Reis et al., “Nanoencapsulation I. Methods for preparation of drug-loaded polymeric nanoparticles” Nanomedicine 2:8- 21 (2006);P. Paolicelli et al., “Surface-modified PLGA-based Nanoparticles that can Efficiently Associate and Deliver Virus-like Particles” Nanomedicine. 5(6):843-853 (2010)を含むが、これらに限定されない様々な方法を使用して、所望するとおりに合成ナノキャリア中へ封入されてもよい。2003年10月14日に発行されたUngerの合衆国特許6,632,671において開示された方法を限定することなく含む、材料を合成ナノキャリア中へ封入するのに好適な他の方法が使用され得る。
【0056】
ある態様において、合成ナノキャリアはナノ沈殿プロセスまたは噴霧乾燥によって調製される。合成ナノキャリアを調製することに使用される条件は、所望のサイズまたは特性(例として、疎水性、親水性、外部のモルホロジー(external morphology)、「粘り」、形状など)の粒子を生み出すために変えられてもよい。合成ナノキャリアを調製する方法および使用される条件(例として、溶媒、温度、濃度、空気流量など)は、合成ナノキャリアおよび/またはキャリアマトリクスの組成物において含まれる材料に依存してもよい。
上の方法のいずれかによって調製される合成ナノキャリアが、所望の範囲外のサイズ範囲を有する場合、かかる合成ナノキャリアは、例えばふるいを使用して、大きさが決められ得る。
【0057】
態様において、合成ナノキャリアは、同じビヒクルまたは送達システムにおいて混和することによって抗原または他の組成物と組み合わされ得る。
本明細書に提供される組成物は、無機または有機緩衝液(例として、リン酸、炭酸、酢酸またはクエン酸のナトリウムまたはカリウム塩)およびpH調節剤(例として、塩酸、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム、クエン酸または酢酸の塩、アミノ酸およびそれらの塩)、抗酸化剤(例として、アスコルビン酸、アルファ−トコフェロール)、界面活性剤(例として、polysorbate 20、polysorbate 80、ポリオキシエチレン9〜10ノニルフェノール、デスオキシコール酸ナトリウム)、溶液のおよび/または低温/凍結(cryo/lyo)の安定剤(例として、スクロース、ラクトース、マンニトール、トレハロース)、浸透圧調節剤(例として、塩または糖)、抗細菌剤(例として、安息香酸、フェノール、ゲンタマイシン)、抗発泡剤(例として、ポリジメチルシロゾン)、防腐剤(例として、チメロサール、2−フェノキシエタノール、EDTA)、ポリマー安定剤および粘性調節剤(例として、ポリビニルピロリドン、ポロキサマー488、カルボキシメチルセルロース)および共溶媒(例として、グリセロール、ポリエチレングリコール、エタノール)を含んでもよい。
【0058】
本発明に従う組成物は、薬学的に許容可能な添加剤を含んでいてもよい。組成物は、有用な剤形を作り上げるための、従来の薬学的な製造および調合技術を使用して作製されてもよい。本発明を実践するのにおける使用に好適な技術は、Handbook of Industrial Mixing: Science and Practice, Edited by Edward L. Paul, Victor A. Atiemo-Obeng, and Suzanne M. Kresta, 2004 John Wiley & Sons, Inc.;およびPharmaceutics: The Science of Dosage Form Design, 2nd Ed. Edited by M. E. Auten, 2001, Churchill Livingstoneから見出されるものであってもよい。態様において、組成物は、防腐剤と一緒に注射用滅菌生理食塩水溶液に懸濁される。
本発明の組成物は、いずれの好適なやり方でも作製され得ること、および、本発明は、本明細書に記載の方法を使用して生産され得る組成物に何ら限定されないことが理解されるべきである。適切な製造の方法の選択は、特定の要素の特性が関連していることに注意する必要があり得る。
【0059】
いくつかの態様において、組成物は、滅菌条件の下で製造されるか、または、最初にもしくは最後に滅菌される。その結果得られた組成物が滅菌されて非感染性であることが、これによって確保され得、よって非滅菌の組成物と比較されたとき安全性が改善される。とくに組成物を与えられている対象が免疫欠如を有するか、感染症を患っているか、および/または、感染症を起こしやすいとき、これによって貴重な安全対策が提供される。いくつかの態様において、組成物は、長期間活性を失わない配合ストラテジー(the formulation strategy)に応じて、凍結乾燥されて、懸濁状態でまたは凍結乾燥粉末として保管されてもよい。
本発明に従う投与は、皮内、筋肉内、皮下、静脈内および腹腔内の経路を含むがこれらに限定されない多様な経路によってもよい。本明細書において言及される組成物は、従来の方法を使用して投与のために製造および調製されてもよい。
【0060】
本発明の組成物は、本明細書中の他にも記載の有効な量などの有効な量で投与され得る。剤形の用量は、本発明に従う、様々な量の要素を含有してもよい。本発明の剤形に存在する要素の量は、それらの性質、成し遂げられるべき治療的有用性、および他のかかるパラメータに従って変動され得る。態様において、用量決定試験(dose ranging studies)は、剤形に存在する最適治療量を定めるために行われ得る。態様において、要素は、対象への投与の際に所望の効果および/または軽減された免疫応答を生み出させるのに有効な量で剤形に存在する。対象において従来の用量決定試験および技術を使用して所望の結果を達成するための量を決定することは可能であり得る。本発明の剤形は、多様な頻度にて投与されてもよい。態様において、本明細書に提供される組成物の少なくとも1回の投与は、薬理学的に妥当な応答を生み出させるのに十分である。
【0061】
本開示の別の側面は、キットに関する。いくつかの態様において、キットは、本明細書に提供される組成物のいずれか1つを含む。提供されるキットのいずれか1つのいくつかの態様において、キットは、ラパログ、疎水性キャリア材料および10以下の親水性−親油性バランス(HLB)をもつ非イオン界面活性剤を含む。提供されるキットのいずれか1つのいくつかの態様において、ラパログ、疎水性キャリア材料および10以下の親水性−親油性バランス(HLB)をもつ非イオン界面活性剤の量は、それぞれ、その構成要素について本明細書に提供されるいずれか1つの量である。提供されるキットのいずれか1つのいくつかの態様において、キットはさらに、抗原を含む。提供されるキットのいずれか1つのいくつかの態様において、組成物またはそれらの要素は、キットにおける別個の容器中にまたは同じ容器中に含有され得る。提供されるキットのいずれか1つのいくつかの態様において、容器は、バイアルまたはアンプルである。提供されるキットのいずれか1つのいくつかの態様において、組成物またはそれらの要素は、組成物または要素が以降のある時点にて容器へ加えられてもよいように、容器とは別個の溶液中に含有される。提供されるキットのいずれか1つのいくつかの態様において、組成物またはそれらの要素は、それらが以降のある時点にて再構成されてもよいように、別個の容器または同じ容器の各々において凍結乾燥された形態である。提供されるキットのいずれか1つのいくつかの態様において、キットはさらに、再構成、混合、投与などのための説明書を含む。提供されるキットのいずれか1つのいくつかの態様において、説明書は、本明細書に記載の方法の説明を含む。説明書は、例として印刷された挿入物またはラベルなどのいずれか好適な形態であり得る。提供されるキットのいずれか1つのいくつかの態様において、キットはさらに、合成ナノキャリアをin vivoで対象へ送達し得る1以上のシリンジまたは他のデバイス(単数または複数)を含む。
【0062】

例1-低HLB界面活性剤であるSMは、RAPAの負荷および合成ナノキャリアの濾過可能性を増大させる
ポリマーであるPLA(固有粘度 0.41dL/g)およびPLA−PEG(5kDaのPEGブロック、固有粘度 0.50dL/g)ならびに疎水性薬物であるラパマイシン(RAPA)を含有するナノキャリア組成物を、油中水エマルション蒸発法を使用して、低HLB界面活性剤であるソルビタンモノパルミタート(SM)の添加ありまたはなしで合成した。有機相を、ポリマーおよびRAPAをジクロロメタンに溶解することによって形成した。エマルションを、プローブチップソニケーター(probe-tip sonicator)を使用し、界面活性剤であるPVAを含有する水相中で有機相を均質化することによって形成した。次いでエマルションを、より大量の水性緩衝液と組み合わせて、溶媒の溶解および蒸発が可能となるように混合した。その結果得られたナノキャリアを洗浄し、0.22μmフィルターに通して濾過した。すべての組成物は100mgのポリマーを含有していた。種々の組成物中のRAPA含量は異なっていた。
【0063】
【表1】
【0064】
界面活性剤であるSMを含有しない組成物(試料1、2および3)について、ナノキャリア組成物中に完全にRAPAを組み込むという能力を制限する兆候が、RAPAの添加量が増えるにつれ、いくつか観察された。SM不在下での濾過前と濾過後と間のナノキャリアサイズの差異が、より高いレベルのRAPA配合レベルにて増大することは、洗浄および/または濾過のプロセスの間に除去されるより大きな微粒子(個々の粒子または凝集体)の存在を示した。これはまた、詰まる前の減少した濾過処理量によっても示された。最後に、SMなしで漸増量のRAPAをナノキャリア組成物へ加えることは、増大したRAPA負荷(例として試料3と比較した試料1)をもたらさなかった。これは、追加のRAPAが、バルクのナノキャリアから分離可能であったことと、洗浄および/または濾過ステップの間に除去されたこととを示す。
【0065】
対照的に、界面活性剤であるSMを含有する組成物は容易に、漸増量のRAPAを組み込んだ。ナノキャリアサイズは濾過による影響を受けなかった。組成物へ加えられた漸増量のRAPAは、ナノキャリアの増大したRAPAの負荷をもたらした。いくらかの濾過処理量の低減が、最も高い負荷レベルにて観察されたが(試料6)、これは、本質的により大きなナノキャリアサイズに起因する可能性がある。つまり、SMの組み込みは、合成ナノキャリア組成物のRAPAの負荷および濾過可能性を増大させるのに役立った。
【0066】
例2−SMおよびコレステロールは、RAPAの負荷および濾過可能性を増大した
ナノキャリア組成物を、例1に記載されたとおりの材料および方法を使用して生産した。ポリマーおよびRAPAを含有するナノキャリアを、RAPA負荷レベルを変動させて生産した。加えて、RAPAがより高度に負荷されたナノキャリアもまた、3.2:1の添加剤:RAPA質量比で、添加剤、界面活性剤であるSMまたはコレステロールを使用して生産した。
【0067】
【表2】
【0068】
添加剤の不在下で生産されたナノキャリアの試料(試料7および8)は、見掛けのナノキャリア飽和点を超えたRAPA負荷の増大が、濾過処理量の低減につながる傾向があることを実証した。SMまたはコレステロールのいずれかの添加は、安定性を維持しつつ、より大きなRAPA負荷をもたらした(試料9および10)。
組成物の免疫寛容誘導能を査定するために、マウスに、共投与されるナノキャリアおよびKLH(キーホールリンペットヘモシアニン)を、同じRAPA用量で毎週3回静脈内注射し、次いでKLHのみで毎週チャレンジした。次いでマウスの血清を、各KLHチャレンジ後にKLHに対する抗体について分析した(図1)。
【0069】
RAPAナノキャリア処置を受けているすべてのマウスが、同じ用量のRAPAを受けたにもかかわらず、種々の群において、KLHに対する寛容化の程度が異なることを示した。最も低い負荷をもつナノキャリア組成物(試料7)を受けた全5匹のマウスは、3回目の(第40日にて)KLHチャレンジ後、抗KLH抗体の定量化可能な力価を有した。この群のマウスは、PBSしか受けなかったマウスと比較して、低減した力価の抗KLH抗体を発生させたが、他のナノキャリア群と比較して、最も小さい寛容化を呈した。添加剤(SMまたはコレステロール)の不在下でナノキャリアのRAPAの負荷を増大させることは(試料8)、寛容化を有意に改善し、3回の(第40日にて)KLHチャレンジ後、5匹中たった2匹のマウスではあるが、定量化可能な力価を実証した。添加剤としてコレステロールを含有する組成物(試料10)は、ナノキャリアのRAPAの負荷が高いにもかかわらず、5匹中4匹のマウスが、たった2回の(第33日にて)チャレンジ後、有意な抗KLH抗体力価を実証したという結果をもたらした。SMを含有するナノキャリア組成物(試料9)は、5匹中たった1匹のマウスが、3回の(第40日にて)KLHチャレンジ後、定量化可能な力価の抗KLH抗体を発生させたことから、高処理量(生産の間の0.22μm濾過処理量)と優れた寛容化との両方を実証した。この研究の結果は、両添加剤(SMおよびコレステロール)が、濾過処理量によって示されるとおり、寛容を誘導する性能と処理の好ましさとに矛盾せず、増大したナノキャリア負荷を可能にしたことを示す。低HLB界面活性剤であるSMは、ナノキャリアの安定性を増大するのに必要とされる特性を提供し、より高い性能を実証した。
【0070】
例3−RAPAの負荷および濾過可能性に対する低HLB界面活性剤の効果
材料および方法
0.41dL/gの固有粘度をもつPLAを、Lakeshore Biomaterials(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード100 DL 4A)。およそ5,000kDaのメチルエーテル末端PEGブロックおよび全体的に見て0.50DL/gの固有粘度をもつPLA−PEG−OMeブロックコポリマーを、Lakeshore Biomaterials(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード100 DL mPEG 5000 5CE)。ラパマイシンを、Concord Biotech Limited(1482-1486 Trasad Road, Dholka 382225, Ahmedabad India)から購入した(製品コード SIROLIMUS)EMPROVE(登録商標)Polyvinyl Alcohol 4-88、USP(85〜89%加水分解、3.4〜4.6mPa・sの粘度)を、EMD Chemicals Inc.(480 South Democrat Road Gibbstown, NJ 08027)から購入した(製品コード 1.41350)。Dulbecco’s リン酸緩衝生理食塩水 1×(DPBS)を、Lonza(Muenchensteinerstrasse 38, CH-4002 Basel, Switzerland)から購入した(製品コード 17-512Q)。ソルビタンモノパルミタートを、Croda International(300-A Columbus Circle, Edison, NJ 08837)から購入した(製品コード SPAN 40)。Polysorbate 80を、NOF America Corporation(One North Broadway, Suite 912 White Plains, NY 10601)から購入した(製品コード Polysorbate80 (HX2))。ソルビタンモノラウラート(SPAN 20)を、Alfa Aesar(26 Parkridge Rd Ward Hill, MA 01835)から購入した(製品コード L12099)。ソルビタンステアラート(SPAN 60)を、Sigma-Aldrich(3050 Spruce St. St. Louis, MO 63103)から購入した(製品コード S7010)。ソルビタンモノオレアート(SPAN 80)を、Tokyo Chemical Industry Co., Ltd.(9211 North Harborgate Street Portland, OR 97203)から購入した(製品コード S0060)。オクチルβ−D−グルコピラノシドを、Sigma-Aldrich(3050 Spruce St. St. Louis, MO 63103)から購入した(製品コード O8001)。オレイルアルコールを、Alfa Aesar(26 Parkridge Rd Ward Hill, MA 01835)から購入した(製品コード A18018)。パルミチン酸イソプロピルを、Sigma-Aldrich(3050 Spruce St. St. Louis, MO 63103)から購入した(製品コード W515604)。ポリエチレングリコールヘキサデシルエーテル(BRIJ 52)を、Sigma-Aldrich(3050 Spruce St. St. Louis, MO 63103)から購入した(製品コード 388831)。ポリエチレングリコールオレイルエーテル(BRIJ 93)を、Sigma-Aldrich(3050 Spruce St. St. Louis, MO 63103)から購入した(製品コード 388866)。ポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(プロピレングリコール)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)(Pluronic L-31)を、Sigma-Aldrich(3050 Spruce St. St. Louis, MO 63103)から購入した(製品コード 435406)。ポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(プロピレングリコール)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)(Pluronic P-123)を、Sigma-Aldrich(3050 Spruce St. St. Louis, MO 63103)から購入した(製品コード 435465)。パルミチン酸を、Sigma-Aldrich(3050 Spruce St. St. Louis, MO 63103)から購入した(製品コード P0500)。DL−α−パルミチンを、Sigma-Aldrich(3050 Spruce St. St. Louis, MO 63103)から購入した(製品コード M1640)。トリパルミチン酸グリセリルを、Sigma-Aldrich(3050 Spruce St. St. Louis, MO 63103)から購入した(製品コード T5888)。
【0071】
試料11について、溶液を以下のように調製した:
溶液1:ポリマーおよびラパマイシンの混合物を、PLAを75mg/mLにて、PLA−PEG−Omeを25mg/mLにて、およびラパマイシンを16mg/mLにて、ジクロロメタンに溶解することによって調製した。溶液2:Polysorbate80混合物を、Polysorbate80を80mg/mLにて、ジクロロメタンに溶解することによって調製した。溶液3:ポリビニルアルコールを、100mMのリン酸緩衝液(pH8)において50mg/mLにて調製した。
【0072】
O/Wエマルションを、溶液1(0.5mL)、溶液2(0.1mL)、ジクロロメタン(0.4mL)および溶液3(3.0mL)を小ガラス圧力管中で組み合わせて、10秒間ボルテックス混合し、次いで、圧力管を氷水浴中に浸しながら、Branson Digital Sonifier 250を使用して30%の振幅にて1分間の超音波処理によって調製した。次いでエマルションを、DPBS(30mL)を含有する50mLビーカーへ加えた。第二O/Wエマルションを、上と同じ材料および方法を使用して調製し、次いで第一エマルションおよびDPBSを含有する同じ容器へ加えた。次いでこれを室温にて2時間撹拌することで、ジクロロメタンを蒸発させてナノキャリアを形成した。ナノキャリア懸濁液を遠心管へ移し、75,600×gおよび4℃にて50分間遠心分離し、上清を除去し、0.25%(w/v)のPVAを含有するDPBS中にペレットを再懸濁することによって、ナノキャリアの一部を洗浄した。洗浄手順を繰り返し、次いでペレットを、0.25%(w/v)のPVAを含有するDPBS中に再懸濁することで、ポリマーベースで10mg/mLの設定濃度を有するナノキャリア懸濁液が得られた。次いでナノキャリア懸濁液を、0.22μmPESメンブレンシリンジフィルター(Millipore 品番 SLGP033RB)を使用して濾過した。次いで、濾過されたナノキャリア懸濁液を−20℃にて保管した。
【0073】
試料12〜25について、溶液を以下のように調製した:
溶液1:ポリマーおよびラパマイシンの混合物を、PLAを75mg/mLにて、PLA−PEG−Omeを25mg/mLにて、およびラパマイシンを16mg/mLにて、ジクロロメタンに溶解することによって調製した。溶液2:HLB混合物を、HLB界面活性剤を5.0mg/mLにてジクロロメタンに溶解することによって調製した。HLB界面活性剤は、SPAN 20、SPAN 40、SPAN 60、SPAN 80、オクチルβ−D−グルコピラノシド、オレイル酸(oleyl acid)、パルミチン酸イソプロピル、BRIJ 52、BRIJ 93、Pluronic L-31、Pluronic P-123、パルミチン酸、DL−α−パルミチン、およびトリパルミチン酸グリセリルを含む。溶液3:ポリビニルアルコールを、100mMのリン酸緩衝液(pH8)において62.5mg/mLにて調製した。
【0074】
O/Wエマルションを、小ガラス圧力管中、溶液1(0.5mL)、溶液2(0.5mL)および溶液3(3.0mL)を組み合わせ、10秒間ボルテックス混合し、次いで圧力管を氷水浴に浸しながら、Branson Digital Sonifier 250を使用して、30%の振幅にて1分間超音波処理することによって調製した。次いでエマルションを、DPBS(30mL)を含有する50mLビーカーへ加えた。第二O/Wエマルションを、上と同じ材料および方法を使用して調製し、次いで第1エマルションおよびDPBSを含有する同じビーカーへ加えた。次いでこれを室温にて2時間撹拌することで、ジクロロメタンを蒸発させ、ナノキャリアを形成させた。ナノキャリア懸濁液を遠心管へ移し、75,600×gおよび4℃にて50分間遠心分離し、上清を除去し、0.25%(w/v)のPVAを含有するDPBSにペレットを再懸濁することによって、ナノキャリアの一部を洗浄した。洗浄手順を繰り返し、次いでペレットを、0.25%(w/v)のPVAを含有するDPBSに再懸濁することで、ポリマーベースで10mg/mLの設定濃度を有するナノキャリア懸濁液が得られた。次いでナノキャリア懸濁液を、0.22μmPESメンブレンシリンジフィルター(Millipore 品番 SLGP033RB)を使用して濾過した。次いで、濾過されたナノキャリア懸濁液を−20℃にて保管した。
【0075】
【表3】
【0076】
HLBを、低HLB界面活性剤のほとんどについて、公的に入手可能な情報を使用して決定した。DL−α−パルミチンについて、HLBを、以下の式を使用して計算した:Mw=330.5g/mol、親水性部分=119.0g/mol;HLB=119.0/330.5*100/5=7.2。パルミチン酸グリセリルについて、HLBを、以下の式を使用して計算した:Mw=807.3g/mol、親水性部分h=173.0g/mol;HLB=173.0/807.3*100/5=4.3。パルミチン酸イソプロピルについて、HLBを、以下の式を使用して計算した:Mw=298.5g/mol、親水性部分=44.0g/mol;HLB=44.0/298.5*100/5=2.9。オレイルアルコールについて、HLBを、以下の式を使用して計算した:Mw=268.5g/mol、親水性部分=17.0g/mol;HLB=17.0/268.5*100/5=1.3。加えて、低HLB界面活性剤の負荷を、抽出に続くHPLC法による定量化によって測定した。
【0077】
動物への注射に先立ち、バルクのナノキャリア懸濁液を、室温の水浴中30分間解凍した。ナノキャリアをDPBSで希釈することで、所望の濃度の278μg/mLラパマイシンになった。6週齢のC57BL/6メスマウスを、d0、7および14に、130μLの10×KLH(キーホールリンペットヘモシアニン)と混合されたナノキャリア(1.17mL)で静脈内処置した。マウスを、第21、28、35および42日に、200μgのKLHでブーストした。抗KLH IgG力価(ELISAにより測定した)を、第40、47および61日に読み取った。結果は、低HLB界面活性剤が、実質的なラパマイシンの負荷および合成ナノキャリアの濾過可能性をもたらし得ることを実証する。加えて、図2に示されるような低HLB界面活性剤によるナノキャリアのすべてが、少なくとも40および47日間、低減された抗体力価をもたらした。
【0078】
例4-合成ナノキャリアの濾過可能性に対する低HLB界面活性剤の効果
材料および方法
およそ5,000Daのメチルエーテル末端PEGブロックおよび全体的に見て0.50DL/gの固有粘度をもつPLA−PEG−OMeブロックコポリマーを、Evonik Industries(Rellinghauser Strasse 1-11 45128 Essen, Germany)から購入した(製品コード 100 DL mPEG 5000 5CE)。0.41dL/gの固有粘度をもつPLAを、Evonik Industries(Rellinghauser Strasse 1-11 45128 Essen Germany)から購入した(製品コード 100 DL 4A)。ラパマイシンを、Concord Biotech Limited(1482-1486 Trasad Road, Dholka 382225, Ahmedabad India)から購入した(製品コード SIROLIMUS)。エベロリムスは、LC Laboratories(165 New Boston Street Woburn, MA 01801)から購入された(品番E-4040)。テムシロリムスはLC Laboratories(165 New Boston Street Woburn, MA 01801)から購入された(品番T-8040)。ソルビタンモノパルミタートを、Croda(315 Cherry Lane New Castle Delaware 19720)から購入した(製品コード SPAN 40)。ジクロロメタンを、Spectrum(14422 S San Pedro Gardena CA, 90248-2027)から購入した(品番M1266)。EMPROVE(登録商標)Polyvinyl Alcohol 4-88、USP(85〜89%加水分解、3.4〜4.6mPa・sの粘度)を、EMD Chemicals Inc.(480 South Democrat Road Gibbstown, NJ 08027)から購入した(製品コード1.41350)カルシウムおよびマグネシウムなしのDulbecco’s Phosphate Buffered Saline、1×、0.0095M(PO4)を、BioWhittaker(8316 West Route 24 Mapleton, IL 61547)から購入した(品番#12001、製品コード Lonza DPBS)。乳化を、1/8”先細チップチタンプローブをもつBranson Digital Sonifier 250を使用して実行した。
【0079】
溶液を以下のように調製した:
溶液1:ポリマー混合物を、PLA−PEG−OMe(100 DL mPEG 5000 5CE)を1mLあたり50mgにて、PLA(100 DL 4A)をmLあたり150mgにて、ジクロロメタンに溶解することによって調製した。溶液2:ラパマイシンを、ジクロロメタンに1mLあたり160mgにて溶解した。溶液3:エベロリムスは、ジクロロメタンにおいて1mLあたり150mgで溶解された。溶液4:テムシロリムスは、ジクロロメタンにおいて1mLあたり150mgで溶解された。溶液5:ソルビタンモノパルミタート(SPAN 40)を、ジクロロメタンに1mLあたり50mgにて溶解した。溶液6:ジクロロメタンを、0.2μmPTFEメンブレンシリンジフィルター(VWR 品番 28145-491)を使用して滅菌濾過した。溶液7:ポリビニルアルコール溶液を、ポリビニルアルコール(EMPROVE(登録商標)Polyvinyl Alcohol 4-88)を1mLあたり75mgにて、100mMのリン酸緩衝液(pH8)に溶解することによって調製した。溶液8:ポリビニルアルコールおよびDulbecco’s リン酸緩衝生理食塩水、1×、0.0095M(PO4)の混合物を、ポリビニルアルコール(EMPROVE(登録商標)Polyvinyl Alcohol 4-88)を1mLあたり2.5mgにて、Dulbecco’s リン酸緩衝生理食塩水、1×、0.0095M(PO4)(Lonza DPBS)に溶解することによって調製した。
【0080】
試料26について、O/Wエマルションを、小ガラス圧力管中、溶液1(0.5mL)、溶液2(0.1mL)、溶液5(0.1mL)および溶液6(0.30mL)を組み合わせることによって調製した。溶液を、ピペッティングを繰り返すことによって混合した。次に、溶液7(3.0mL)を加え、配合物を10秒間ボルテックス混合した。次いで配合物を、圧力管を氷浴に浸しながら、30%の振幅にて1分間超音波処理した。次いでエマルションを、Lonza DPBS(30mL)を含有する開口の50mLビーカーへ加えた。次いで、これを室温にて2時間撹拌することで、ジクロロメタンを蒸発させ、ナノキャリアを形成した。ナノキャリア懸濁液を遠心管へ移し、75,600×gおよび4℃にて50分間遠心分離し、上清を除去し、ペレットを溶液8に再懸濁することによって、ナノキャリアの一部を洗浄した。洗浄手順を繰り返し、次いでペレットを溶液8に再懸濁することで、ポリマーベースでmLあたり10mgの設定濃度を有するナノキャリア懸濁液が得られた。ナノキャリア配合物を、0.22μmPESメンブレンシリンジフィルター(Millex 品番 SLGP033RS)を使用して濾過した。ナノキャリア溶液濾過処理量の質量を測定した。次いで、濾過されたナノキャリア溶液を−20℃にて保管した。
【0081】
試料27について、O/Wエマルションを、小ガラス圧力管中、溶液1(0.5mL)、溶液2(0.1mL)および溶液6(0.40mL)を組み合わせることによって調製した。溶液を、ピペッティングを繰り返すことによって混合した。次に、溶液7(3.0mL)を加え、配合物を10秒間ボルテックス混合した。次いで配合物を、圧力管を氷浴に浸しながら、30%の振幅にて1分間超音波処理した。次いでエマルションを、Lonza DPBS(30mL)を含有する50mL開口ビーカーへ加えた。次いでこれを室温にて2時間撹拌することで、ジクロロメタンを蒸発させ、ナノキャリアを形成した。ナノキャリア懸濁液を遠心管へ移し、75,600×gおよび4℃にて50分間遠心分離し、上清を除去し、ペレットを溶液8に再懸濁することによって、ナノキャリアの一部を洗浄した。洗浄手順を繰り返し、次いでペレットを溶液8に再懸濁することで、ポリマーベースでmLあたり10mgの設定濃度を有するナノキャリア懸濁液が得られた。ナノキャリア配合物を、0.22μmPESメンブレンシリンジフィルター(Millex 品番 SLGP033RS)を使用して濾過した。ナノキャリア溶液濾過処理量の質量を測定した。次いで、濾過されたナノキャリア溶液を−20℃にて保管した。
【0082】
試料28について、O/Wエマルションは、小ガラス圧力管において、溶液1(0.5mL)、溶液3(0.2mL)、溶液5(0.1mL)、および溶液6(0.20mL)を組み合わせることによって調製された。溶液は、繰り返しピペッティングすることによって混合された。次に、溶液7(3.0mL)が加えられ、配合物は10秒間ボルテックスで混合された。配合物は次いで氷浴において浸漬された圧力管によって30%の振幅にて1分間超音波処理された。エマルションは、Lonza DPBS(30mL)を含有する50mL開口ビーカーへ次いで加えられた。これは、次いで室温で2時間撹拌され、ジクロロメタンを蒸発させ、ナノキャリアを形成させた。ナノキャリアの一部は、ナノキャリア懸濁液を遠心管へ移し、75,600×gおよび4℃で50分間遠心分離し、上清を除去し、溶液8においてペレットを再懸濁することによって洗浄された。洗浄手順は、繰り返され、次いでペレットは溶液8において再懸濁され、ポリマー基準で1mLあたり10mgの設定濃度を有するナノキャリア懸濁液を達成した。ナノキャリア配合物は、0.22 μm PESメンブレンシリンジフィルター(Millex品番SLGP033RS)を使用して濾過された。ナノキャリア溶液の濾過処理量が測定された。濾過されたナノキャリア溶液は次いで−20℃で保存された。
【0083】
試料29について、O/Wエマルションは、小ガラス圧力管において溶液1(0.5mL)、溶液3(0.2mL)、および溶液6(0.30mL)を組み合わせることによって調製された。溶液は、繰り返しピペッティングすることによって混合された。次に、溶液7(3.0mL)が加えられ、配合物はボルテックスで10秒間混合された。配合物は次いで氷浴において浸漬された圧力管によって30%の振幅にて1分間超音波処理された。エマルションは、次いでLonza DPBS(30mL)を含有する50mL開口ビーカーへ加えられた。これは、次いで室温で2時間撹拌され、ジクロロメタンを蒸発させ、ナノキャリアを形成させた。ナノキャリアの一部は、ナノキャリア懸濁液を遠心管へ移し、75,600×gおよび4℃で50分間遠心分離し、上清を除去し、溶液8におけるペレットを再懸濁することによって洗浄された。洗浄手順は繰り返され、次いでペレットは溶液8において再懸濁され、ポリマー基準で1mLあたりの10mgの設定濃度を有するナノキャリア懸濁液を達成した。ナノキャリア配合物は、0.22 μm PESメンブレンシリンジフィルター(Millex品番SLGP033RS)を使用して濾過された。ナノキャリア溶液の濾過処理量が測定された。濾過されたナノキャリア溶液は次いで−20℃で保存された。
【0084】
試料30について、O/Wエマルションは、小ガラス圧力管において溶液1(0.5mL)、溶液4(0.2mL)、溶液5(0.1mL)、および溶液6(0.20mL)を組み合わせることによって調製された。溶液は、繰り返しピペッティングすることによって混合された。次に、溶液7(3.0mL)が加えられ、配合物はボルテックスで10秒間混合された。配合物は、次いで氷浴において浸漬された圧力管によって30%の振幅にて1分間超音波処理された。エマルションは次いでLonza DPBS(30mL)を含有する50mL開口ビーカーへ加えられた。これは、次いで室温で2時間撹拌され、ジクロロメタンを蒸発させ、ナノキャリアを形成させた。ナノキャリアの一部は、ナノキャリア懸濁液を遠心管へ移し、75,600×gおよび4℃で50分間遠心分離し、上清を除去し、溶液8においてペレットを再懸濁することによって洗浄された。洗浄手順は繰り返され、次いでペレットは溶液8において再懸濁され、ポリマー基準で1mLあたり10mgの設定濃度を有するナノキャリア懸濁液を達成した。ナノキャリア配合物は、0.22 μm PESメンブレンシリンジフィルター(Millex品番SLGP033RS)を使用して濾過された。ナノキャリア溶液の濾過処理量が測定された。濾過されたナノキャリア溶液は、次いで−20℃で保存された。
【0085】
試料31について、O/Wエマルションは、小ガラス圧力管において溶液1(0.5mL)、溶液4(0.2mL)、溶液6(0.30mL)を組み合わせることによって調製された。溶液は繰り返しピペッティングすることによって混合された。次に、溶液7(3.0mL)が加えられ、配合物は10秒間ボルテックスで混合された。配合物は、次いで氷浴において浸漬された圧力管によって30%の振幅にて1分間超音波処理された。エマルションは次いでLonza DPBS(30mL)を含有する50mL開口ビーカーへ加えられた。これは、次いで室温で2時間撹拌され、ジクロロメタンを蒸発させ、ナノキャリアを形成させた。ナノキャリアの一部は、ナノキャリア懸濁液を遠心管へ移し、75,600×gおよび4℃で50分間遠心分離し、上清を除去し、溶液8においてペレットを再懸濁することによって洗浄された。洗浄手順は繰り返され、次いでペレットは溶液8において再懸濁され、ポリマー基準で1mLあたり10mgの設定濃度を有するナノキャリア懸濁液を達成した。ナノキャリア配合物は、0.22 μm PESメンブレンシリンジフィルター(Millex品番SLGP033RS)を使用して濾過された。ナノキャリア溶液の濾過処理量が測定された。濾過されたナノキャリア溶液は、次いで−20℃で保存された。
【0086】
ナノキャリアサイズを、動的光散乱法によって決定した。ナノキャリアにおけるラパログの量をHPLC分析によって決定した。懸濁液mLあたりの乾燥ナノキャリアの全質量を重量法によって決定した。濾過可能性を、第1フィルターを通過した濾過物の量によって評価した。
データは、多数のラパログについて、合成ナノキャリアにおけるSPAN 40の組み込みが、合成ナノキャリア組成物の濾過可能性における増大をもたらしたことを示す。
【0087】
【表4】
【0088】
例5−非ポリエステルポリマーを含む合成ナノキャリアの濾過能力へのSPAN 40の効果
材料および方法
ラパマイシンは、Concord Biotech limited(1482-1486 Trasad Road, Dholka 382225、Ahmedabad India)から購入された(製品コード SIROLIMUS)。およそ700〜1,100Daのメチルエーテル末端のPEGブロックをもつポリ(スチレン)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)(PS−PEG)は、Sigma Aldrich(3050 Spruce St. St. Louis, MO 63103)から購入された(品番686476)。1:1のメタクリラート:スチレン比をもつポリ(スチレン)−ブロック−ポリ(メチルメタクリラート)(PS−PMMA)(Mw=30,000Da)は、Sigma Aldrich(3050 Spruce St. St. Louis, MO 63103)から購入された(品番749184)。1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DMPC)は、Avanti Polar Lipids, Inc(Avanti Polar Lipids, Inc. 700 Industrial Park Drive Alabaster, Alabama 35007-9105)から購入された(品番850345P)。20:70:20のPEG:PPG:PEG比をもつポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(プロピレングリコール)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)(P−123)は、Sigma Aldrich(3050 Spruce St. St. Louis, MO 63103)から購入された(製品コードPluronic(登録商標)P-123、品番435465)。ジクロロメタンは、Spectrum(14422 S San Pedro Gardena CA, 90248-2027)から購入された(品番M1266)。ソルビタンモノパルミタートは、Croda(315 Cherry Lane New Castle Delaware 19720)から購入された(製品コードSPAN 40)。EMPROVE(登録商標)ポリビニルアルコール4−88(PVA)、USP(85−89%加水分解、3.4〜4.6mPa・sの粘性)は、EMD Chemicals Inc.(480 South Democrat Road Gibbstown, NJ 08027)から購入された(製品コード1.41350)。カルシウムおよびマグネシウムなしのDulbeccoのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)、1X、0.0095M(PO4)は、BioWhittaker(8316 West Route 24 Mapleton, IL 61547)から購入された(品番17-512Q)。乳化は、1/8”先細チップチタンプローブをもつBranson Digital Sonifier 250を使用して行われた。
【0089】
溶液は、以下のとおり調製された:
溶液1:ポリマーおよびラパマイシン溶液は、ジクロロメタンにおいて1mLあたり50mgのPS−PEGおよび1mLあたり8mgのラパマイシンを溶解することによって調製された。溶液2:ポリマーおよびラパマイシン溶液は、ジクロロメタンにおいて1mLあたり50mgのPS−PMMA(Mw=30,000Da)および1mLあたり8mgのラパマイシンを溶解することによって調製された。溶液3:脂質およびラパマイシン溶液は、ジクロロメタンにおいて1mLあたり50mgのDMPCおよび1mLあたり8mgのラパマイシンを溶解することによって調製された。溶液4:ポリマーおよびラパマイシン溶液は、ジクロロメタンにおいて1mLあたり50mgの(P−123)および1mLあたり8mgのラパマイシンを溶解することによって調製された。溶液5:ジクロロメタンは、0.2μm PTFEメンブレンシリンジフィルター(VWR品番28145-491)を使用して滅菌濾過された。溶液6:SPAN 40は、ジクロロメタンにおいて1mLあたり50mgで溶解された。溶液7:PVAは、100mMのpH8リン酸緩衝液において1mLあたり62.5mgで溶解された。
【0090】
試料28について、O/Wエマルションは、氷水浴において>4分、予め冷却された小ガラス圧力管において溶液1(1.0mL)および溶液5(0.05mL)を組み合わせることによって調製された。次に、溶液7(3.0mL)が加えられ、圧力管はボルテックスで10秒間混合された。エマルションは、次いで氷浴において浸漬された圧力管によって30%の振幅にて1分間超音波処理された。得られたナノエマルションは、次いでDPBS(15mL)を含有する50mL開口ビーカーへ加えられ、アルミニウムホイルの切れ端が開口ビーカー上に置かれた。第二エマルションは、同じ手順を使用して調製され、DPBS(15mL)の新しい分量をもつ同じ50mLビーカーにおける第一エマルションへ加えられた。ビーカーはふたを取ったままとし、アルミニウムホイルは捨てられた。これは、次いで室温で2時間撹拌され、ジクロロメタンを蒸発させ、ナノキャリアを形成させた。ナノキャリアの一部は、ナノキャリア懸濁液を遠心管へ移し、75,600×gおよび4℃で50分間遠心分離し、上清を除去し、DPBSにおいてペレットを再懸濁することによって洗浄された。洗浄手順は、繰り返され、次いでペレットはDPBSにおいて再懸濁されて、ポリマー基準で1mLあたり10mgの設定濃度を有するナノキャリア懸濁液を達成した。ナノキャリア配合物は、0.22 μm PESメンブレンシリンジフィルター(Millex品番SLGP033RS)を使用して濾過された。ナノキャリア溶液の濾過処理量が測定された。濾過されたナノキャリア溶液は、次いで−20℃で保存された。
【0091】
試料29は、溶液5の代わりに溶液6を使用して試料28と同様に調製された。試料30は、溶液1の代わりに溶液2を使用して試料28と同様に調製された。試料31は、溶液5の代わりに溶液6を使用して試料30と同様に調製された。試料32は、溶液1の代わりに溶液3を使用して試料28と同様に調製された。試料33は、溶液5の代わりに溶液6を使用して試料32と同様に調製された。試料34は、溶液1の代わりに溶液4を使用して試料28と同様に調製された。試料35は、溶液5の代わりに溶液6を使用して試料34と同様に調製された。
【0092】
ナノキャリアサイズは、動的光散乱法によって決定された。ナノキャリアにおけるラパマイシンの量は、HPLC分析によって決定された。懸濁液の1mLあたりの総乾燥ナノキャリア質量は、重量測定方法によって決定された。濾過能力は、最初の33mmのPES膜0.22μmシリンジフィルターを介したナノキャリア濾過液の質量によって評価された。
以下の結果は、最適化されていないが、非ポリエステルポリマーをもつ合成ナノキャリアにおけるSPAN 40の包含が、いくつかの態様において、合成ナノキャリアの濾過能力を増加し得ることを示す。
【0093】
【表5】
【0094】
例6−SPAN 40は、ポリエステルポリマーを含む合成ナノキャリアの濾過可能性を大きく増大する
材料および方法
0.41dL/gの固有粘度をもつPLA(100 DL 4A)を、Evonik Industries AG(Rellinghauser Strasse 1-11, Essen Germany)から購入した(製品コード 100 DL 4A)。およそ5,000Daのメチルエーテル末端PEGブロックおよび全体的に見て0.50DL/gの固有粘度をもつPLA−PEG−OMeブロックコポリマーを、Evonik Industries AG(Rellinghauser Strasse 1-11, Essen Germany)から購入した(製品コード 100 DL mPEG 5000 5CE)。ラパマイシンを、Concord Biotech Limited(1482-1486 Trasad Road, Dholka 382225, Ahmedabad India)から購入した(製品コード SIROLIMUS)。EMPROVE(登録商標)Polyvinyl Alcohol 4-88 (PVA)、USP(85〜89%加水分解、3.4〜4.6mPa・sの粘度)を、EMD Chemicals Inc.(480 South Democrat Road Gibbstown, NJ 08027)から購入した(製品コード 1.41350)。Dulbecco’s リン酸緩衝生理食塩水 1×(DPBS)を、Lonza(Muenchensteinerstrasse 38, CH-4002 Basel, Switzerland)から購入した(製品コード 17-512Q)。ソルビタンモノパルミタート(SPAN 40)を、Croda International(300-A Columbus Circle, Edison, NJ 08837)から購入した(製品コード Span 40)。およそ54重量%のラクチドおよび46重量%のグリコリドならびに0.24dL/gの固有粘度をもつPLGA(5050 DLG 2.5A)を、Evonik Industries AG(Rellinghauser Strasse 1-11, Essen Germany)から購入した(製品コード 5050 DLG 2.5A)。およそ73重量%のラクチドおよび27重量%のグリコリドならびに0.39dL/gの固有粘度をもつPLGA(7525 DLG 4A)を、Evonik Industries AG(Rellinghauser Strasse 1-11, Essen Germany)から購入した(7525 DLG 4A)。平均14,000DaのMwおよび10,000DaのMnのポリカプロラクトン(PCL)を、Sigma-Aldrich(3050 Spruce St. St. Louis, MO 63103)から購入した(製品コード 440752)。
【0095】
試料1、3、5および7について、溶液を以下のように調製した:
溶液1:PLA−PEG−OmeをmLあたり50mgにて、Span 40をmLあたり10mgにて、およびラパマイシンをmLあたり32mgにて、ジクロロメタンに溶解した。溶液2:100 DL 4Aを、mLあたり150mgにてジクロロメタンに溶解した。溶液3:5050 DLG 2.5Aを、mLあたり150mgにてジクロロメタンに溶解した。溶液4:7525 DLG 4Aを、mLあたり150mgにてジクロロメタンに溶解した。溶液5:PCLを、mLあたり150mgにてジクロロメタンに溶解した。溶液6:PVAを、mLあたり75mgにて、100mMのリン酸緩衝液(pH8)において調製した。
【0096】
O/Wエマルションを、溶液1(0.5mL)を厚肉ガラス圧力管へ移すことによって調製した。これへ、溶液2(0.5mL)を加えロット1とし、溶液3(0.5mL)を加えロット3とし、4(0.5mL)を加えロット5とし、溶液5(0.5mL)を加えロット7とした。次いで2つの溶液を、ピペッティングを繰り返すことによって混合した。次に溶液6(3.0mL)を加え、管を10秒間ボルテックス混合し、次いで圧力管を氷水浴に浸しながら、Branson Digital Sonifier 250を使用し30%の振幅にて1分間超音波処理によって乳化した。次いでエマルションを、DPBS(30mL)を含有する50mLビーカーへ加えた。次いでこれを、室温にて2時間撹拌することで、ジクロロメタンを蒸発させ、ナノキャリアを形成した。ナノキャリア懸濁液を遠心管へ移し、75,600×gにて50分間遠心分離し、上清を除去し、ペレットをDPBSに再懸濁させることによって、ナノキャリアの一部を洗浄した。洗浄手順を繰り返し、次いでペレットをDPBSに再懸濁することで、ポリマーベースで10mg/mLの設定濃度を有するナノキャリア懸濁液が得られた。次いでナノキャリア懸濁液を、0.22μmのPESメンブレンシリンジフィルター(Millipore 品番 SLGP033RB)ならびに必要ならば:0.45μmのPESメンブレンシリンジフィルター(PALL 品番 4614)および/または1.2μmのPESメンブレンシリンジフィルター(PALL 品番 4656)を使用して、濾過した。次いで、濾過されたナノキャリア懸濁液を−20℃にて保管した。
【0097】
ナノキャリアサイズを動的光散乱法によって決定した。ナノキャリアにおけるラパマイシンの量をHPLC分析によって決定した。濾過可能性を、第1滅菌0.22μmフィルターのフロースルーの重量を、ブロッキングに先立ち前記フィルターを通過したナノキャリアの実際の質量または第1かつ唯一のフィルターを介した全量を決定した収量と比較することによって、決定した。懸濁液mLあたりの乾燥ナノキャリアの全質量を重量法によって決定した。
【0098】
試料2、4、6および8について、溶液を以下のように調製した:
溶液1:ポリマーおよびラパマイシンの混合物を、PLA−PEG−OmeをmLあたり50mgにて、およびラパマイシンをmLあたり32mgにて、ジクロロメタンに溶解させることによって調製した。溶液2:100 DL 4Aを、mLあたり150mgにて、ジクロロメタンに溶解した。溶液3:5050 DLG 2.5Aを、mLあたり150mgにて、ジクロロメタンに溶解した。溶液4:7525 DLG 4Aを、mLあたり150mgにて、ジクロロメタンに溶解した。溶液5:PCLを、mLあたり150mgにて、ジクロロメタンに溶解した。溶液6:ポリビニルアルコールを、mLあたり75mgにて、100mMのリン酸緩衝液(pH8)において調製した。
【0099】
O/Wエマルションを、溶液1(0.5mL)を、厚肉ガラス圧力管へ移すことによって調製した。これへ、溶液2(0.5mL)を加えロット2とし、溶液3(0.5mL)を加えロット4とし、4(0.5mL)を加えロット6とし、溶液5(0.5mL)を加えロット8とした。次いで2つの溶液を、ピペッティングを繰り返すことによって混合した。PVA溶液の添加、洗浄、濾過および保管は、上と同じである。
ナノキャリアサイズを、上と同じように評価した。
結果は、合成ナノキャリアにSPAN 40を含ませることにより、ポリエステルポリマーを含む合成ナノキャリアの濾過可能性が、有意に増大したことを示す。
【0100】
【表6】
【0101】
例7−低HLB界面活性剤および有意なRAPA負荷をもつ合成ナノキャリアは、持続的な抗原特異的寛容をもたらす
材料および方法
0.41dL/gの固有粘度をもつPLAを、Lakeshore Biomaterials(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード 100 DL 4A)。およそ5,000Daのメチルエーテル末端PEGブロックおよび全体的に見て0.50DL/gの固有粘度をもつPLA−PEG−OMeブロックコポリマーを、Lakeshore Biomaterials(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード 100 DL mPEG 5000 5CE)。ラパマイシンを、Concord Biotech Limited(1482-1486 Trasad Road, Dholka 382225, Ahmedabad India)から購入した(製品コード SIROLIMUS)。ソルビタンモノパルミタートを、Sigma-Aldrich(3050 Spruce St., St. Louis, MO 63103)から購入した(製品コード 388920)。EMPROVE(登録商標)Polyvinyl Alcohol (PVA) 4-88、USP(85〜89%加水分解、3.4〜4.6mPa・sの粘度)を、EMD Chemicals Inc.(480 South Democrat Road Gibbstown, NJ 08027)から購入した(製品コード 1.41350)。Dulbecco’s リン酸緩衝生理食塩水 1×(DPBS)を、Lonza(Muenchensteinerstrasse 38, CH-4002 Basel, Switzerland)から購入した(製品コード 17-512Q)。
【0102】
溶液を以下のように調製した:
溶液1:ポリマー、ラパマイシンおよびソルビタンモノパルミタートの混合物を、PLAを37.5mg/mLにて、PLA−PEG−Omeを12.5mg/mLにて、ラパマイシンを8mg/mLにて、および、ソルビタンモノパルミタートを2.5にて、ジクロロメタンに溶解することによって、調製した。溶液2:ポリビニルアルコールを、50mg/mLにて、100mMのリン酸緩衝液(pH8)において調製した。
【0103】
O/Wエマルションを、溶液1(1.0mL)および溶液2(3mL)を小ガラス圧力管中で組み合わせ、10秒間ボルテックス混合することによって、調製した。次いで配合物を、30%の振幅にて1分間の超音波処理によって均質化した。次いでエマルションを、DPBS(30mL)を含有する開口ビーカーへ加えた。第二O/Wエマルションを、上と同じ材料および方法を使用して調製し、次いで、第一エマルションおよびDPBSを含有する同じビーカーへ加えた。次いで、組み合わせたエマルションを室温にて2時間撹拌することで、ジクロロメタンを蒸発させ、ナノキャリアを形成した。ナノキャリア懸濁液を遠心管へ移し、75,600×gおよび4℃にて50分間遠心分離し、上清を除去し、0.25%(w/v)PVAを含有するDPBSにペレットを再懸濁させることによって、ナノキャリアの一部を洗浄した。洗浄手順を繰り返し、次いでペレットを、0.25%(w/v)のPVAを含有するDPBSに再懸濁することで、ポリマーベースで10mg/mLの設定濃度を有するナノキャリア懸濁液が得られた。次いでナノキャリア懸濁液を、0.22μmのPESメンブレンシリンジフィルター(Millipore 品番 SLGP033RB)を使用して濾過した。次いで、濾過されたナノキャリ懸濁液を−20℃にて保管した。
ナノキャリアサイズを動的光散乱法によって決定した。ナノキャリアにおけるラパマイシンの量をHPLC分析によって決定した。懸濁液mLあたりの乾燥ナノキャリアの全質量を重量法によって決定した。
【0104】
【表7】
【0105】
合成ナノキャリアの、遊離ラパマイシンに対する、モデル抗原KLHに対する持続的な免疫寛容の誘導能を評価した。実験未使用の(naive)C57BL/6マウスの群(n=群あたり10匹)に、PBS(群1)を、50μg(〜2mg/kg)の遊離ラパマイシン単独またはこれとKLHとを混和したもの(夫々、群2および3)を、あるいは、合成ナノキャリア中に封入された50μgのラパマイシン単独(群6)またはこれとKLHとを混和したもの(群7および8)を、第0、7および14日に静脈内投薬した(図3)。長期ラパマイシン投与の効果を決定するため、群4に、遊離ラパマイシン単独を、第0日から第20日まで週あたり5回(50μg/日)、または週あたり1回投与されるKLHと組み合わせて(群5)、受けさせた。続いて、すべての群に対し、第21、28および35日に、200μgのKLHでチャレンジした。血清を採取し、抗KLH抗体応答を第35および42日に測定した(夫々、2回および3回の注射後)。有効性を、ELISAによって決定されるとおりの抗KLH抗体力価をEC50として評価した。図4はプロトコールを例証する。
【0106】
対照のPBS処置マウスは、2回および3回のKLHのチャレンジ注射後夫々、第35および42日に、高レベルの抗KLH抗体が発生していた。KLHの不在下、遊離ラパマイシンで(毎週または毎日のいずれかに)処置されたマウスは、PBSで処置された群と類似したレベルの抗KLH抗体が発生していた。合成ナノキャリア単独で、または毎日の遊離ラパマイシンおよびKLHで処置されたマウスは、PBS対照群と比較して、遅延した応答を示したが、力価は、KLHによる各チャレンジによりブーストされていた。これらの結果は、合成ナノキャリア単独での処置が長期の免疫抑制を誘導しないこと、ならびに、毎日の遊離ラパマイシンとともに投与されたKLHが、合成ナノキャリアにおいて投与されたとおりのラパマイシンの毎週の全用量である5回目でさえ、持続的な免疫寛容を誘導しないこと、を示す。
【0107】
対照的に、有意な量のラパマイシンが含まれる合成ナノキャリア+KLHで処置されたマウス(群7および8)は、処置後毎週のKLHチャレンジを3回受けた後であっても(合計6回のKLH注射)、検出可能な抗KLH抗体がほとんどまたはまったく発生しなかった。これは、持続的な免疫寛容を示す。合成ナノキャリアの両ロットも類似して、有効であった。合成ナノキャリア+KLHで処置された群以外のすべての群は、第42日までに、アナフィラキシー応答を発生した。これらの結果は、有意な量のラパマイシンおよびKLHを含む合成ナノキャリアによる処置によって誘導されたKLHに対する寛容化が、過敏性応答の発生を予防したことを示す。
【0108】
KLHに対する寛容の抗原特異性を評価するために、すべての動物に対し、後肢に(s.c.)、OVA+CpG(35μg+20μg)を、第49および56日にチャレンジした。図5は、全動物が、OVAに対して類似したレベルの力価ができていたことを示す。これは、合成ナノキャリアと抗原の同時投与が、免疫学的寛容を生み出させ得ること、および、合成ナノキャリア処置が、長期の免疫抑制を誘導しないことを実証する。これらの結果は、遊離よりむしろ、ナノキャリアに封入されたラパマイシンが(有意な量にて存在するとき)、標的抗原とともに同時投与されたとき、持続的かつ抗原特異的な免疫寛容を誘導したことを実証する。
【0109】
例8−SPAN 40は、ラパログ、ラパマイシンおよびエベロリムスの濾過可能性を増大させる
材料および方法
0.41dL/gの固有粘度をもつPLAを、Evonik Industries AG(Rellinghauser Strasse 1-11, Essen Germany)から購入した(製品コード 100 DL 4A)。およそ5,000Daのメチルエーテル末端PEGブロックおよび全体的に見て0.50DL/gの固有粘度をもつPLA−PEG−OMeブロックコポリマーを、Evonik Industries AG(Rellinghauser Strasse 1-11, Essen Germany)から購入した(製品コード 100 DL mPEG 5000 5CE)。ラパマイシンを、Concord Biotech Limited(1482-1486 Trasad Road, Dholka 382225, Ahmedabad India)から購入した(製品コード SIROLIMUS)。エベロリムスは、LC Laboratories(165 New Boston St # T, Woburn, MA 01801)から購入された(製品コードE-4040)。テムシロリムスは、LC Laboratories(165 New Boston Street Woburn, MA 01801)から購入された(品番T-8040)。デフォロリムスは、MedChem Express(11 Deer Park Drive, Suite 102D Monmouth Junction, NJ 08852)から購入された(製品コードHY-50908)。EMPROVE(登録商標)Polyvinyl Alcohol 4-88、USP(85〜89%加水分解、3.4〜4.6mPa・sの粘度)を、EMD Chemicals Inc.(480 South Democrat Road Gibbstown, NJ 08027)から購入した(製品コード 1.41350)。Dulbecco’s リン酸緩衝生理食塩水 1×(DPBS)を、Lonza(Muenchensteinerstrasse 38, CH-4002 Basel, Switzerland)から購入した(製品コード 17-512Q)。ソルビタンモノパルミタートを、Croda International(300-A Columbus Circle, Edison, NJ 08837)から購入した(製品コード SPAN 40)。
【0110】
溶液を以下のように調製した。溶液1:ポリマーおよびラパマイシンの混合物を、PLAを150mg/mLにて、およびPLA−PEG−Omeを50mg/mLにて、溶解することによって調製した。溶液2:ラパマイシン溶液を、ジクロロメタンにおいて、100mg/mLにて調製した。溶液3:エベロリムス溶液は、ジクロロメタンにおいて100mg/mLで調製された。溶液4:テムシロリムス溶液は、ジクロロメタンにおいて100mg/mLで調製された。溶液5:デフォロリムス溶液は、ジクロロメタンにおいて100mg/mLで調製された。溶液6:ソルビタンモノパルミタート溶液を、SPAN 40を50mg/mLにてジクロロメタンに溶解することによって調製した。溶液7:ポリビニルアルコールを、100mMのリン酸緩衝液(pH8)において75mg/mLにて調製した。
【0111】
O/Wエマルションは、溶液1(0.5mL)を厚肉圧力管へ加えることによって調製された。ロット1、3、5、および7について、これは、溶液6(0.1mL)、およびジクロロメタン(0.28mL)と組み合わされた。ロット1は次いで溶液2(0.12mL)と、ロット3は溶液3(0.12mL)と、ロット5は溶液4(0.12mL)と、ロット7は溶液4(0.12mL)と組み合わされた。同様なやり方において、ロット2、4、6、および8は、ジクロロメタン(0.38mL)と組み合わされ、次いでロット2は溶液2(0.12mL)と組み合わされ、ロット4は溶液3(0.12mL)と、ロット6は溶液4(0.12mL)と、ロット8は溶液5(0.12mL)と組み合わされた。個々の各ロットにおいて、有機相の総体積はしたがって、1mLであった。組み合わせた有機相溶液を、ピペッティングを繰り返すことによって混合した。次に、溶液7(3.0mL)を加え、圧力管を10秒間ボルテックス混合し、次いで圧力管を氷水浴に浸しながら、Branson Digital Sonifier 250を使用し、30%の振幅にて1分間超音波処理した。次いでエマルションを、DPBS(30mL)を含有する50mLビーカーへ加えた。次いでこれを室温にて2時間撹拌することで、ジクロロメタンを急速に蒸発させ、ナノキャリアを形成した。ナノキャリア懸濁液を遠心管へ移し、75,600×gおよび4℃にて50分間遠心分離し、上清を除去し、0.25%(w/v)のPVAを含有するDPBSにペレットを再懸濁させることによって、ナノキャリアの一部を洗浄した。洗浄手順を繰り返し、次いでペレットを、0.25%(w/v)のPVAを含有するDPBSに再懸濁することで、ポリマーベースで10mg/mLの設定濃度を有するナノキャリア懸濁液が得られた。次いでナノキャリア懸濁液を、0.22μmのPESメンブレンシリンジフィルター(Millipore 品番 SLGP033RB)を使用して濾過した。次いで、濾過されたナノキャリア懸濁液を、−20℃にて保管した。
結果は、合成ナノキャリアにおけるSPAN 40の組み込みが、ラパログ、ラパマイシンおよびエベロリムスの濾過可能性を増大させたことを示す。
【0112】
【表8】
【0113】
例9−ラパマイシン負荷および合成ナノキャリアの濾過可能性に対する、構成要素の量の効果を示す
材料および方法
およそ5,000Daのメチルエーテル末端PEGブロックおよび全体的に見て0.50DL/gの固有粘度をもつPLA−PEG−OMeブロックコポリマーを、Evonik Industries(Rellinghauser Strasse 1-11 45128 Essen, Germany)から購入した(製品コード 100 DL mPEG 5000 5CE)。0.41dL/gの固有粘度をもつPLAを、Evonik Industries(Rellinghauser Strasse 1-11 45128 Essen Germany)から購入した(製品コード 100 DL 4A)。ラパマイシンを、Concord Biotech Limited(1482-1486 Trasad Road, Dholka 382225, Ahmedabad India)から購入した(製品コード SIROLIMUS)。ソルビタンモノパルミタートを、Croda(315 Cherry Lane New Castle Delaware 19720)から購入した(製品コード SPAN 40)。ジクロロメタンを、Spectrum(14422 S San Pedro Gardena CA, 90248-2027)から購入した(品番 M1266)。EMPROVE(登録商標)Polyvinyl Alcohol 4-88, (PVA)、USP(85〜89%加水分解、3.4〜4.6mPa・sの粘度)を、EMD Chemicals Inc.(480 South Democrat Road Gibbstown, NJ 08027)から購入した(製品コード 1.41350)。Dulbecco’s リン酸緩衝生理食塩水(DPBS)、1×、0.0095M(PO4)、カルシウムおよびマグネシウムなしを、BioWhittaker(8316 West Route 24 Mapleton, IL 61547)から購入した(品番 #12001、製品コード Lonza DPBS)。乳化を、1/8”先細チップチタンプローブをもつBranson Digital Sonifier 250を使用して実行した。
【0114】
溶液を以下のように調製した:
ポリマー溶液:ポリマー混合物を、PLA−PEG−OMe(100 DL mPEG 5000 5CE)およびPLA(100 DL 4A)を、示されるmLあたりのmgにて、PLA−PEG:PLAの比率1:3にて、ジクロロメタンに溶解することによって調製した。ラパマイシン溶液:ラパマイシンを、示される1mLあたりのmgにて、ジクロロメタンに溶解した。SPAN 40溶液:ソルビタンモノパルミタート(SPAN 40)を、示されるmLあたりのmgにて、ジクロロメタンに溶解した。CHCl溶液:ジクロロメタン(CHCl)を、0.2μmのPTFEメンブレンシリンジフィルター(VWR 品番 28145-491)を使用して滅菌濾過した。PVA溶液:ポリビニルアルコール溶液を、ポリビニルアルコール(EMPROVE(登録商標)Polyvinyl 4-88)を、示される1mLあたりのmgにて、100mMのリン酸緩衝液(pH8)に溶解することによって調製した。DPBS PVA溶液:ポリビニルアルコールおよびDulbecco’s リン酸緩衝生理食塩水、1×、0.0095M(PO4)の混合物を、ポリビニルアルコール(EMPROVE(登録商標)Polyvinyl Alcohol 4-88)を、1mLあたり2.5mgにて、Dulbecco’s リン酸緩衝生理食塩水、1×、0.0095M(PO4)(Lonza DPBS)に溶解することによって調製した。
【0115】
O/Wエマルションを、ポリマー溶液、ラパマイシン溶液、SPAN 40溶液および/またはCHCl溶液(総体積1〜2mL)を、厚肉ガラス圧力管中で組み合わせることによって調製した。溶液を、ピペッティングを繰り返すことによって混合した。次に、PVA溶液(3〜6mL)を加えた(1mLの有機相と3mLの水性PVA溶液とをもつ単一のエマルション、または、順々に調製された2つの単一のエマルションのいずれかとして)。配合物を、10秒間ボルテックス混合し、次いで圧力管を氷浴に浸しながら、30%の振幅にて1分間超音波処理した。次いでエマルションを、Lonza DPBS(30mL)を含有する開口50mLビーカーへ加えた。次いでこれを室温にて2時間撹拌することで、ジクロロメタンを蒸発させ、ナノキャリアを形成した。ナノキャリア懸濁液を遠心管へ移し、75,600×gおよび4℃にて50分間遠心分離し、上清を除去し、DPBS PVA溶液にペレットを再懸濁することによって、ナノキャリアの一部を洗浄した。洗浄手順を繰り返し、次いでペレットをDPBS PVA溶液に再懸濁することで、ポリマーベースでmLあたり10mgの設定濃度を有するナノキャリア懸濁液が得られた。ナノキャリア配合物を、0.22μmのPESメンブレンシリンジフィルター(Millex 品番 SLGP033RS)を使用して濾過した。ナノキャリア溶液の濾過処理量の質量を測定した。次いで、濾過されたナノキャリア溶液を−20℃で保管した。
【0116】
濾過可能性は、1つの33mm PESメンブレン 0.22μm シリンジフィルター(Milliporeから、品番 SLGP033RB)を通過する測定ナノキャリアの、フィルターメンブレン表面積のg/mとして与えられる。
結果は、in vivoで有効であると予測される量のラパマイシンをもつ最初に滅菌濾過可能な合成ナノキャリアをもたらし得る多数の合成ナノキャリアにおける様々な構成要素の量を示す。
【0117】
【表9】
図1
図2
図3
図4
図5