(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
対向する第1面と第2面との間に、前記第1面の側から順に、化合物半導体から構成された基板と、前記基板上に結晶成長されると共に発光領域を含む半導体層とを有する積層構造体と、
前記積層構造体の前記発光領域を含む第1の端面と前記第2面とに隣接する第1の端部のうちの少なくとも一部に形成され、前記第1の端面から当該第1の端面に対向する第2の端面へ向かう方向に沿った長さを幅とする第1の凹部と、
前記積層構造体の厚み方向に沿って延在する第2の端部に形成され、前記第1の端面から前記第2の端面へ向かう方向の寸法が前記幅よりも大きい第2の凹部と
を備えた半導体発光素子。
対向する第1面と第2面との間に、前記第1面の側から順に、化合物半導体から構成された基板と、前記基板上に結晶成長されると共に発光領域を含む半導体層とを有する積層構造体を形成し、
前記積層構造体を形成する際、
前記積層構造体の前記発光領域を含む第1の端面と前記第2面とに隣接する第1の端部のうちの少なくとも一部に、前記第1の端面から当該第1の端面に対向する第2の端面へ向かう方向に沿った長さを幅とする第1の凹部を形成し、
前記積層構造体の厚み方向に沿って延在する第2の端部に、前記第1の端面から前記第2の端面へ向かう方向の寸法が前記幅よりも大きい第2の凹部を形成する
半導体発光素子の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明は本開示の一具体例であって、本開示は以下の態様に限定されるものではない。また、本開示は、各図に示す各構成要素の配置や寸法、寸法比などについても、それらに限定されるものではない。なお、説明は、以下の順序で行う。
1.実施の形態(積層構造体の第2面に隣接する端部に第1凹部を、厚み方向に延在する端部に第2凹部をそれぞれ有する半導体発光素子の例)
2.変形例1−1〜1−3(第1凹部の配置構成の他の例)
3.変形例2(第2凹部の配置構成の他の例)
4.変形例3−1,3−2(第2凹部の断面形状の他の例)
5.変形例4−1,4−2(第1凹部および第3凹部の断面形状の他の例)
6.変形例5−1,5−2(第3凹部の他の構成例)
【0016】
<実施の形態>
[構成]
図1は、本開示の一実施の形態に係る半導体発光素子1の構成例を表したものである。半導体発光素子1は、例えば、高密度光ディスク装置、レーザビームプリンタおよびフルカラーディスプレイ等の光源として好適に用いられるものである。この半導体発光素子1は、互いに対向する第1面S1と第2面S2とを有する積層構造体2を備える。積層構造体2は、例えば、基板10と、この基板10上に結晶成長により形成された半導体層20とを有している。積層構造体2の第2面S2上には、帯状の突条部31と上部電極30(例えばp側電極)とが設けられている。積層構造体2の基板10には、図示しない下部電極(例えばn側電極)が電気的に接続されている。下部電極は、例えば、第1面S1の裏面に形成されている。
【0017】
この半導体発光素子1は、例えば端面発光型の半導体レーザであり、突条部31の延在方向を共振器方向(Y方向)とする一対の端面S3,S4(第1の端面,第2の端面)を有している。但し、半導体発光素子1は、このような半導体レーザに限定されず、例えば端面発光型の発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)またはスーパールミネッセントダイオード(SLD:Superluminescent diode)等の半導体発光素子であってもよい。
【0018】
基板10は、化合物半導体、例えばGaNなどのIII−V族窒化物半導体を含んで構成されている。ここで、「III−V族窒化物半導体」とは、短周期型周期率表における3B族元素群のうちの少なくとも1種と、短周期型周期率表における5B族元素のうちの少なくともNとを含むものを指している。III−V族窒化物半導体としては、例えば、GaとNとを含んだ窒化ガリウム系化合物が挙げられる。窒化ガリウム系化合物には、例えば、GaN、AlGaN、AlGaInNなどが含まれる。III−V族窒化物半導体には、必要に応じてSi、Ge、O、SeなどのIV族またはVI族元素のn型不純物、または、Mg、Zn、CなどのII族またはIV族元素のp型不純物がドープされていてもよい。
【0019】
この基板10は、例えば半極性面を有しており、即ち例えばc面からm軸方向に所定の角度(例えば20度以上90度以下程度)傾斜した主面を有している。
【0020】
半導体層20は、例えば、III−V族窒化物半導体を含んで構成され、基板10の主面を結晶成長面として、例えばMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition :有機金属気相成長)法などのエピタキシャル結晶成長法により形成されたものである。この半導体層20は、発光領域21Aを形成する活性層21を含んで構成されている。具体的には、半導体層20は、例えば基板10の側から順に、下部クラッド層(例えばn型クラッド層)、活性層21、上部クラッド層(例えばp型クラッド層)およびコンタクト層(例えばp型コンタクト層)等を有している。下部クラッド層は、例えばAlGaNにより構成されている。活性層21は、例えば、組成比の互いに異なるGaInNによりそれぞれ形成された井戸層およびバリア層を交互に積層してなる多重量子井戸構造となっている。上部クラッド層は、例えばAlGaNにより構成されている。コンタクト層は、例えばGaNにより構成されている。なお、半導体層20には、上記の層以外の層(例えば、バッファ層やガイド層など)がさらに設けられていてもよい。この半導体層20の上に上部電極30が形成されている。
【0021】
上部電極30は、例えばチタン(Ti),白金(Pt)および金(Au)を含む積層膜により構成されている。一方、基板10の裏面(第1面S1)側に形成された下部電極は、例えば金(Au)とゲルマニウム(Ge)との合金、ニッケル(Ni)および金(Au)を含む積層膜により構成されている。
【0022】
突条部31は、例えば上記のコンタクト層および上部クラッド層を含んで構成されたリッジ部である。この突条部31は、コンタクト層と一部の上部クラッド層をエッチングにより除去した後、SiO
2等の絶縁膜により絶縁されている。
【0023】
積層構造体2の端面S3,S4は、へき開によって形成されたへき開面である。半導体層20がこれらの端面S3,S4の間に挟まれることで共振器構造が形成されている。端面S3は、発光領域21Aを含み、レーザ光を射出する面である。この端面S3の表面には多層反射膜(図示せず)が形成されている。この端面S3の表面に形成される多層反射膜は、低反射膜である。当該多層反射膜と端面S3との組み合わせにより調整される反射率は、例えば10%程度である。端面S4は、レーザ光を反射する面であり、端面S4の表面にも多層反射膜(図示せず)が形成されている。端面S4の表面に形成される多層反射膜は、高反射膜である。当該多層反射膜と端面S4との組み合わせにより調整される反射率は、例えば95%程度である。
【0024】
これらの端面S3,S4は、スクライブによって形成される溝あるいは切り欠き(第1凹部32,第2凹部33,第3凹部34)を利用したへき開によって形成することができる。
【0025】
本実施の形態では、積層構造体2の第2面S2に隣接する端部e1の少なくとも一部に、第1凹部32が形成されている。積層構造体2の厚み方向(Z方向)に沿って延在する端部e2には、第2凹部33が形成されている。積層構造体2の第1面S1に隣接する端部e3の少なくとも一部には、第3凹部34が形成されている。
【0026】
ここで、積層構造体2は、例えば直方体形状を有しており、例えば第1面S1,第2面S2および端面S3,S4を含む6つの面と、8つの辺と、8つの頂点とを含んで構成されている。端部e1は、第2面S2と端面S3とに隣接する辺、および第2面S2と端面S4とに隣接する辺に対応する部分である。この端部e1は、素子幅方向(X方向)に沿って延在する。端部e2は、厚み方向(Z方向)に沿って延在すると共に、端面S3,S4のそれぞれに隣接する2つの辺のうちの一方または両方に対応する部分である。端部e3は、第1面S1と端面S3とに隣接する辺、および第1面S1と端面S4とに隣接する辺に対応する部分である。この端部e3は、例えば端部e1と対向すると共に、素子幅方向(X方向)に沿って延在する。
【0027】
第1凹部32は、例えば端部e1のうちの発光領域21Aに対応する領域を除いた部分に形成されている。具体的には、第1凹部32は、半導体層20の発光領域21Aを挟む2つの領域のうちの一方または両方の領域に設けられている。この例では、第1凹部32は、発光領域21Aを挟む2つの領域のそれぞれに設けられている。第1凹部32の深さt(Z方向に沿った長さ)は、例えば5μm以上30μm以下である。第1凹部32の幅b(Y方向に沿った長さ)は、狭いほど良く、例えば3μm以下であることが望ましい。この第1凹部32(後述の第4凹部32A)が設けられることで、へき開の際に、第1凹部32(第4凹部32A)に応力を集中させることができ、垂直性の高い端面S3,S4を形成できる。
【0028】
第2凹部33は、例えば端部e2に、第1面S1から第2面S2に至るまで連続して形成されている。この例では、第2凹部33は、Z方向に延在する4つの辺に対応する4つの端部e2の全てに設けられている。この第2凹部33(後述の孔33A)が設けられることで、へき開の際に、素子間の亀裂進展速度を一定にし、端面の垂直性や平坦性におけるばらつきを抑制することができる。
【0029】
第3凹部34は、例えば端部e3に、X方向に沿って連続的に延在して設けられている。この第3凹部34の深さ(Z方向に沿った長さ)は、例えば5μm以上30μm以下であり、第1凹部32の深さと同じであってもよいし、異なっていてもよい。この第3凹部34はが設けられることにより、へき開時の端面の垂直性をより向上させることができる。
【0030】
これらの第1凹部32、第2凹部33および第3凹部34の各断面形状(XZ断面形状)は、例えば四角形状(矩形状または正方形状)を有している。この四角形状の角部は丸みを帯びていてもよい。これらの第1凹部32、第2凹部33および第3凹部34のうち、第1凹部32と第2凹部33とは、例えば互いに隣接して(繋がって)設けられ、第3凹部34と第2凹部33とは、例えば互いに隣接して設けられている。ここで、第1凹部32と第2凹部33とが離れて設けられる場合には、第2凹部33に応力が集中し易くなるため、第1凹部32と第2凹部33とは隣接して設けられることが望ましい。第1凹部32の幅(端部e1の延在方向(X方向)に沿った長さ)は、第2凹部33の幅(端部e1の延在方向(X方向)に沿った長さ)よりも大きいことが望ましい。へき開の際に、第2凹部33(後述の孔33A)よりも第1凹部32(後述の第4凹部32A)に対して応力を集中させることができ、より垂直性の高い端面S3,S4を形成できるためである。
【0031】
図2は、半導体発光素子1(積層構造体2)の概略構成を表したものである。
図3は、半導体発光素子1のへき開前の平面構成(第2面S2側からみたXY平面構成)を模式的に表したものである。
図4は、
図3の断面構成(XZ断面構成)を表したものである。このように、半導体発光素子1は、へき開前の状態では、2次元配置された複数の素子領域1Aのうちの1つ(素子基板1Bのうちの一部)を構成する。
【0032】
素子基板1Bには、上述した第1凹部32に対応する第4凹部32Aと、第2凹部33に対応する孔33Aとが形成されている。このように、へき開前の素子基板1Bにおいて、各半導体発光素子1(素子領域1A)同士の間の領域に、第4凹部32Aと孔33Aとが設けられる。具体的には、各素子領域1Aの四隅に対応する領域に、第4凹部32Aと孔33Aとがそれぞれ形成されている。素子基板1Bでは、複数の第4凹部32Aは、例えば、突条部31(即ち、発光領域21A)を除く部分に離散して形成され、例えばX方向に延在する破線状を成している。孔33Aは、例えば、各第4凹部32Aの中央部に、第1面S1から第2面S2までを貫通して設けられている。一方、第1面S1の側には、第3凹部34に対応する第5凹部34Aが形成されている。第5凹部34Aは、X方向に沿って連続的に延在して形成されている。
【0033】
第4凹部32Aの幅d1(X方向に沿った長さ)は、孔33Aの幅(径)d2(X方向に沿った長さ)よりも大きいことが望ましい。上述したように、へき開の際に、第4凹部32Aに対して応力を集中させることができ、より垂直性の高い端面S3,S4を形成できるためである。第4凹部32A、孔33Aおよび第5凹部34Aはいずれも、例えばレーザ照射(レーザスクライブ)により形成することができる。尚、これらの第4凹部32A、孔33Aおよび第5凹部34Aの形成手法としては、レーザスクライブが望ましいが、この他の手法、例えば切削、エッチング等が用いられてもよい。
【0034】
[製造方法]
次に、半導体発光素子1の製造方法について説明する。
図5は、半導体発光素子1の製造工程の流れを表したものである。
【0035】
まず、ウェハとして、例えばGaNからなる基板10を用意する(ステップS11)。この基板10上に、窒化物半導体を含む半導体層20を、例えばMOCVD法などのエピタキシャル結晶成長法により一括に形成する(ステップS12)。この際、化合物半導体の原料としては、例えば、トリメチルアルミニウム(TMAl)、トリメチルガリウム(TMGa)、トリメチルインジウム(TMIn)、アンモニア(NH
3)などを用い、ドナー不純物の原料としては、例えばモノシラン(SiH
4)を用い、アクセプタ不純物の原料としては、例えばビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp
2Mg)を用いることができる。この後、突条部31を形成する。具体的には、半導体層20のうちの上部クラッド層の一部をドライエッチングにより除去することにより突条部31を形成する。この突条部31上に、SiO
2等の絶縁膜を成膜した後、突条部31の上面の絶縁膜を、フォトリソグラフィ法およびエッチングにより除去する。
【0036】
続いて、基板10の研磨(薄膜化)を行うと共に、電極(上部電極30および下部電極)を形成する(ステップS13)。これにより、基板10は、例えば400μm以上500μm以下程度の厚みから、例えば100μm程度以下にまで薄膜化される。尚、基板10の研磨後に、電極形成を行ってもよいし、あるいは、上部電極30を形成した後、基板10の研磨を行い、その後、基板10の裏面に下部電極を形成してもよい。上部電極30は、第2面S2の上に突条部31を覆うように形成される。
【0037】
次に、例えばレーザスクライブ(レーザ照射)により、第1凹部32(第4凹部32A)、第2凹部33(孔33A)および第3凹部34(第5凹部34A)を形成する(ステップS14)。具体的には、素子基板1Bの第2面S2上においてX方向に沿ってレーザを走査しつつレーザ光を照射することで、
図3および
図4に示したように、第4凹部32Aを形成する。また、素子基板1Bの第1面S1上においてX方向に沿ってレーザを走査しつつレーザ光を照射することで、
図3および
図4に示したように、第5凹部34Aを形成する。これらの第4凹部32Aと第5凹部34Aとは、どちらが先に形成されてもよいが、互いに対向する位置に形成されることが望ましい。この際、積層構造体2が透明性を有する場合には、先に形成された第4凹部32A(または第5凹部34A)を第1面S1(または第2面S2)の側から透かして視認することができるため、第4凹部32Aおよび第5凹部34Aの位置合わせを行うことができる。あるいは、素子基板1Bに形成された上部電極30および下部電極の形成パターンを基準にして、第4凹部32Aおよび第5凹部34Aを互いに対向する位置に形成することが可能である。
【0038】
一方、第2凹部33(孔33A)は、例えば第4凹部32Aおよび第5凹部34Aの形成後に、形成される。但し、これらの形成順序は特に限定されない。第4凹部32Aおよび第5凹部34Aを形成する前に、孔33Aを形成してもよいし、第4凹部32A(または第5凹部34A)を形成後に、孔33Aを形成し、最後に第5凹部34A(または第4凹部32A)を形成してもよい。具体的には、
図3および
図4に示したように、素子基板1Bの第1面S1または第2面S2の側からレーザ光を照射することで、積層構造体2を貫通する孔33Aを形成することができる。
【0039】
これらの第4凹部32Aと孔33Aとに対応する領域(端部e1の延在方向に沿った領域)が、素子基板1Bのへき開ラインとなる。
【0040】
このレーザスクライブの際には、例えば基板10の構成材料に吸収可能な波長を出力するレーザが使用される。例えば、GaN基板を用いた場合には、350nm付近の波長を出力するレーザが用いられる。また、レーザの照射条件(パワー、照射時間およびスポット径等)を調整することで、第4凹部32A、第5凹部34Aおよび孔33Aのそれぞれの幅(径)や深さ等を制御することができる。
【0041】
次に、へき開を行うことにより、積層構造体2の端面S3,S4を形成すると共に、半導体発光素子1(素子領域1A)を分離する(ステップS15)。この際、素子基板1Bに形成された第4凹部32Aおよび第5凹部34Aの各延在方向(X方向)を、へき開ラインLとして、素子基板1Bを押圧する。
図6Aおよび
図6Bに、へき開方式の一例を模式的に示す。
【0042】
図6Aおよび
図6Bに示したように、素子基板1Bを粘着シート121の一面に固定すると共に、素子基板1Bを保護するためにPETフィルム122で覆う。この粘着シート121およびPETフィルム122に挟まれた素子基板1Bを、一対の受け刃123上に載置した後、ブレード120を用いて押圧する。これにより、素子基板1Bは、へき開ラインLに沿ってへき開される。このへき開を、
図3に示した素子領域1A同士の間のX方向に沿った各ラインに対して、繰り返し行う。
【0043】
これにより、端面S3,S4が形成されると共に、バー状の(X方向に沿って連なった)複数の半導体発光素子1が得られる。このバー状の半導体発光素子1の端面S3,S4に、多層反射膜を形成した後、Y方向に沿った素子間の領域にもスクライブを行い、上記と同様にしてへき開を行う。このようにして、素子基板1Bを複数の素子領域1A(半導体発光素子1)に分割する。これにより、
図1に示した半導体発光素子1を完成する。
【0044】
[作用・効果]
本実施の形態の半導体発光素子1では、上部電極30と下部電極との間に所定の電圧が印加されると、半導体層20の活性層21に電流が注入され、これにより電子と正孔の再結合による発光が生じる。この活性層21において発生した光は、例えば一対の共振器ミラーを構成する端面S3,S4において繰り返し反射された後、端面S3の発光領域21Aから所定の発振波長λで出射する(レーザ発振する)。
【0045】
この半導体発光素子1では、共振器ミラーとしての端面S3,S4が、へき開によって形成される。
【0046】
ところが、このへき開によって形成される端面が垂直に形成されないことがある。端面の垂直性が悪いと、素子毎に閾値電流にばらつきが生じたり、実質的な反射率が低下することがある。あるいは、導波ロスを生じて閾値電流およびスロープ効率等の特性が劣化する。特に、半極性面上に半導体層を結晶成長させた場合に、例えば[0001]面上に結晶成長させた場合と同様にへき開を行うと、端面付近の基板結晶面である[0001]面の影響を受け易い。このため、端面が垂直に形成されず、閾値電流のばらつきが生じる。このように、端面の垂直性が悪いと、実質的な反射率が低下するもしくは導波ロスを生じ閾値電流およびスロープ効率などの特性が劣化し易い。
【0047】
尚、例えば、上記特許文献1には、基板の半極性面上に半導体層を結晶成長させたウェハに対し、このウェハを貫通するようなスクライブ孔を形成した後に、へき開を行う手法が提案されている。しかしながら、このスクライブ孔は、P面側からみたスクライブ幅(共振器長方向に沿った長さ)が大きくなる。このようなスクライブ孔を用いて分断された素子断面では、共振器方向に沿った長さにばらつきが生じる。即ち、へき開によって形成される端面の垂直性が悪化する。
【0048】
これに対し、本実施の形態では、積層構造体2の第2面S2に隣接する端部e1のうちの少なくとも一部に第1凹部32が形成されると共に、積層構造体2の厚み方向に沿って延在する端部e2には、第2凹部33が形成されている。これらの第1凹部32および第2凹部33が設けられていることにより、端面S3,S4の垂直性を確保し易い。詳細には、へき開時の応力を、第1凹部32(第4凹部32A)に集中させつつ、第2凹部33(孔33A)により素子間の亀裂進展速度を一定に保つことができるため、端面S3,S4が垂直に形成され易い。また、端面S3,S4の凹凸を抑制して平坦性を高めることができる。これにより、半導体発光素子1の閾値電流およびスロープ効率等の劣化を抑制することができる。
【0049】
また、本実施の形態では、第1凹部32および第2凹部33が設けられることにより、へき開ラインの直線性を確保し易くなり、より端面S3,S4の垂直性を確保し易くなる。
【0050】
更に、本実施の形態では、第1凹部32および第2凹部33が設けられることにより、第1凹部32のみ、あるいは第2凹部33のみが設けられる場合に比べ、微細な断層の発生を抑制することができる。
【0051】
加えて、本実施の形態では、端面S3,S4の平坦性が高まることで、ESD(ElectroStatic Discharge:静電気放電)耐性およびCOD(Catastrophic Optical Damage:光学損傷)耐性を向上させることができる。
【0052】
以上説明したように本実施の形態では、積層構造体2の第2面S2に隣接する端部e1のうちの少なくとも一部に第1凹部32が形成されると共に、積層構造体2の厚み方向に沿って延在する端部e2には、第2凹部33が形成される。これにより、端面S3,S4の垂直性を確保して、半導体発光素子1の閾値電流およびスロープ効率等の劣化を抑制することができる。また、半導体発光素子1毎の特性ばらつきを抑制することができる。よって、特性劣化を抑制することが可能となる。
【0053】
次に、上記実施の形態の変形例について説明する。尚、上記実施の形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、適宜その説明を省略する。
【0054】
<変形例1−1〜1−3>
図7は、変形例1−1に係る半導体発光素子の構成例を表す断面図である。
図8は、変形例1−2に係る半導体発光素子の構成例を表す断面図である。
図9は、変形例1−3に係る半導体発光素子(素子領域1A)の構成例を表す断面図である。尚、
図7〜9では、素子基板1Bの状態(へき開前の状態)を示している。
【0055】
上記実施の形態では、第1凹部32が、第2凹部33と隣接する構成について例示したが、これらの第1凹部32と第2凹部33とは隣接しなくともよい。本変形例1−1〜1−3のように、第1凹部32と第2凹部33とが離隔して(重ならないように)設けられていてもよい。また、変形例1−1,1−2のように、第1凹部32が、発光領域21A(
図7および
図8には図示せず)の片側(発光領域21Aを挟む2つの領域のうちの一方)に対応する部分にのみ設けられていてもよい。
【0056】
このように、第1凹部32の形成箇所や数は、特に限定されるものではなく、第1凹部32は、積層構造体2の第2面S2に隣接する端部e1の少なくとも一部に設けられていればよい。
【0057】
<変形例2>
図10は、変形例2に係る半導体発光素子の構成例を表す平面図である。
図11は、
図10に示した半導体発光素子の断面構成を表す図である。尚、
図10および
図11では、素子基板1Bの状態(へき開前の状態)を示している。
【0058】
上記実施の形態では、第2凹部33が、半導体発光素子1の4つの端部e2に(素子領域1Aの四隅に)形成された構成を例示したが、第2凹部33は、4つの端部e2のうちの一部に設けられていてもよい。換言すると、素子基板1Bにおいて、第2凹部33(孔33A)が、上記実施の形態よりも間引かれて設けられていてもよい。
【0059】
<変形例3−1,3−2>
図12は、変形例3−1に係る半導体発光素子の構成例を表す断面図である。
図13は、変形例3−2に係る半導体発光素子の構成例を表す断面図である。尚、
図12および
図13では、素子基板1Bの状態(へき開前の状態)を示している。
【0060】
上記実施の形態では、第2凹部33の断面形状が、矩形状または正方形状である場合を例示したが、第2凹部33の断面形状はこれに限定されず、変形例3−1,3−2のように、例えば台形状または三角形状であってもよい。この場合、素子基板1Bでは、
図12および
図13に示したように、第2凹部33(孔33A)が、第1面S1から第2面S2に向かって徐々に径(幅)が大きくなるように形成される。このような形状は、レーザスクライブの際に、1つの孔33Aを形成する際に、レーザ出力を徐々に上げながら(または、下げながら)、レーザ光を照射することで形成することができる。
【0061】
<変形例4−1,4−2>
図14は、変形例4−1に係る半導体発光素子の構成例を表す断面図である。
図15は、変形例4−2に係る半導体発光素子の構成例を表す断面図である。尚、
図14および
図15では、素子基板1Bの状態(へき開前の状態)を示している。
【0062】
上記実施の形態では、第1凹部32および第3凹部34の断面形状が、矩形状または正方形状である場合を例示したが、第1凹部32および第3凹部34の断面形状はこれに限定されず、変形例4−1,4−2のように、例えば台形状または三角形状であってもよい。換言すると、第1凹部32および第3凹部34は、テーパー形状(傾斜面)を有していても構わない。また、特に図示はしないが、これらの第1凹部32および第3凹部34の各断面形状は、同じであってもよいし、異なっていても構わない。
【0063】
<変形例5−1,5−2>
図16は、変形例5−1に係る半導体発光素子の構成例を表す断面図である。
図17は、変形例5−2に係る半導体発光素子の構成例を表す断面図である。尚、
図16および
図17では、素子基板1Bの状態(へき開前の状態)を示している。
【0064】
上記実施の形態では、第3凹部34が、第1面S1側の端部e3の延在方向に沿って連続的に設けられた構成を例示したが、第3凹部34は、変形例5−1のように、端部e3の選択的な領域にのみ設けられていてもよい。この場合、素子基板1Bでは、
図16に示したように、複数の第3凹部34が、端部e3の延在方向に沿って離散的に形成される。また、
図16の例では、第3凹部34は、第2凹部33と離隔して設けられているが、第2凹部33と隣接して設けられてもよい。
【0065】
また、変形例5−2のように、第3凹部34は設けられていなくともよい。第1凹部32と第2凹部33とが設けられてさえいれば、端面S3,S4の垂直性を確保することができる。
【0066】
以上、実施の形態および変形例を挙げて説明したが、本開示は上記実施の形態等に限定されるものではなく、種々変形が可能である。なお、本明細書中に記載された効果は、あくまで例示である。本開示の効果は、本明細書中に記載された効果に限定されるものではない。本開示が、本明細書中に記載された効果以外の効果を持っていてもよい。
【0067】
また、例えば、本開示は以下のような構成を取ることができる。
(1)
対向する第1面と第2面との間に、前記第1面の側から順に、化合物半導体から構成された基板と、前記基板上に結晶成長されると共に発光領域を含む半導体層とを有する積層構造体と、
前記積層構造体の前記第2面に隣接する第1の端部のうちの少なくとも一部に形成された第1の凹部と、
前記積層構造体の厚み方向に沿って延在する第2の端部に形成された第2の凹部と
を備えた
半導体発光素子。
(2)
前記第1の凹部は、前記第1の端部のうちの前記発光領域に対応する領域を除いた部分に形成されている
上記(1)に記載の半導体発光素子。
(3)
前記第2の凹部は、前記積層構造体の前記第1面から前記第2面に至るまで連続して形成されている
上記(1)または(2)に記載の半導体発光素子。
(4)
前記積層構造体の前記第1面に隣接すると共に前記第1の端部と対向する第3の端部のうちの少なくとも一部に、第3の凹部を更に備えた
上記(1)ないし(3)のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
(5)
前記第1の凹部の前記第1の端部の延在方向に沿った長さは、前記第2の凹部の前記第1の端部の延在方向に沿った長さよりも大きい
上記(1)ないし(4)のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
(6)
前記第1の凹部は、前記半導体層の前記発光領域を挟む2つの領域のうちの一方または両方の領域に設けられている
上記(1)ないし(5)のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
(7)
前記第1の凹部は、前記第2の凹部と隣接して設けられている
上記(1)ないし(6)のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
(8)
前記第1の凹部は、前記第2の凹部と離隔して設けられている
上記(1)ないし(7)のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
(9)
前記第1および第2の凹部の断面形状はそれぞれ、四角形状、三角形状または台形状である
上記(1)ないし(8)のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
(10)
前記積層構造体は、直方体形状を有すると共に、前記発光領域を含む第1の端面と前記第1の端面と対向する第2の端面とを有し、
前記第1の端部は、前記第2面と前記第1の端面とに隣接する辺、および前記第2面と前記第2の端面とに隣接する辺のそれぞれに対応する部分である
上記(1)ないし(9)のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
(11)
前記積層構造体は、直方体形状を有すると共に、前記発光領域を含む第1の端面と前記第1の端面と対向する第2の端面とを有し、
前記第2の端部は、前記厚み方向に沿って延在すると共に、前記第1および第2の端面のそれぞれに隣接する2つの辺のうちの一方または両方の辺に対応する部分である
上記(1)ないし(10)のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
(12)
前記積層構造体は、直方体形状を有すると共に、前記発光領域を含む第1の端面と前記第1の端面と対向する第2の端面とを有し、
前記第3の端部は、前記第1面と前記第1の端面とに隣接する辺、および前記第1面と前記第2の端面とに隣接する辺のそれぞれに対応する部分である
上記(4)に記載の半導体発光素子。
(13)
前記基板は半極性面を有する
上記(1)ないし(12)のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
(14)
前記積層構造体は、III族窒化物半導体を含む
上記(1)ないし(13)のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
(15)
対向する第1面と第2面との間に、前記第1面の側から順に、化合物半導体から構成された基板と、前記基板上に結晶成長されると共に発光領域を含む半導体層とを有する積層構造体を形成し、
前記積層構造体を形成する際、
前記積層構造体の前記第2面に隣接する第1の端部のうちの少なくとも一部に第1の凹部を形成し、
前記積層構造体の厚み方向に沿って延在する第2の端部に第2の凹部を形成する
半導体発光素子の製造方法。
(16)
前記基板上に、それぞれが前記積層構造体に対応する複数の素子領域を形成した後、へき開により前記積層構造体の端面を形成し、
前記へき開の際に、
前記第2面の各素子領域同士の間の少なくとも一部の領域に一方向に沿って延在する第4の凹部を形成し、
各素子領域同士の間の少なくとも一部の領域に、前記積層構造体を貫通する孔を形成し、
前記第4の凹部および前記孔に対応する領域をへき開ラインとして前記端面を形成する
上記(15)に記載の半導体発光素子の製造方法。
(17)
前記第4の凹部と前記孔とはそれぞれ、レーザ照射により形成される
上記(16)に記載の半導体発光素子の製造方法。
【0068】
本出願は、日本国特許庁において2016年7月26日に出願された日本特許出願番号第2016−146558号を基礎として優先権を主張するものであり、この出願の全ての内容を参照によって本出願に援用する。
【0069】
当業者であれば、設計上の要件や他の要因に応じて、種々の修正、コンビネーション、サブコンビネーション、および変更を想到し得るが、それらは添付の請求の範囲やその均等物の範囲に含まれるものであることが理解される。