特許第6912483号(P6912483)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6912483熱積層多層ジルコン系高温同時焼成セラミック(HTCC)テープ及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6912483
(24)【登録日】2021年7月12日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】熱積層多層ジルコン系高温同時焼成セラミック(HTCC)テープ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/488 20060101AFI20210727BHJP
   H01L 23/13 20060101ALI20210727BHJP
   C04B 35/16 20060101ALI20210727BHJP
【FI】
   C04B35/488
   H01L23/12 C
   C04B35/16
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-537797(P2018-537797)
(86)(22)【出願日】2017年1月10日
(65)【公表番号】特表2019-509243(P2019-509243A)
(43)【公表日】2019年4月4日
(86)【国際出願番号】IN2017050014
(87)【国際公開番号】WO2017125947
(87)【国際公開日】20170727
【審査請求日】2019年11月11日
(31)【優先権主張番号】201611001838
(32)【優先日】2016年1月19日
(33)【優先権主張国】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】508176500
【氏名又は名称】カウンシル オブ サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クージーチャリル・ピータムバラン・シュレンドラン
(72)【発明者】
【氏名】マイラディル・トーマス・セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ジョビン・バーギーズ
【審査官】 有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−106579(JP,A)
【文献】 米国特許第05407734(US,A)
【文献】 国際公開第2013/029789(WO,A1)
【文献】 特開平03−247548(JP,A)
【文献】 特開2007−109473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00−35/84
H01L 23/13
B32B 18/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5および15GHzにおけるマイクロ波誘電特性を有し、比誘電率(k)ε=3.1−10.1(5GHz)、誘電損失(tanδ)=4×10−4から5×10−4(5GHz)、比誘電率(k)ε=2.9−9.9(15GHz)、誘電損失(tanδ)=6×10−4から9×10−4(15GHz)であり、熱特性を有し、熱伝導率:10−16W/mK、熱膨張係数:±2ppm/℃であり、機械的特性を有し、引張強さ:14−20MPa、曲げ強さ:130−150MPaであり、低い熱収縮率およびマイクロ波誘電特性のエージングを有し、X収縮率が5−10%、Y収縮率が5−10%、Z収縮率が3−8%であり、良好な表面形状を有し、平均表面粗さ(Sa)=100nm、二乗平均平方根粗さ(Sq)=140nmである、熱ラミネートされた多層ジルコン系高温同時焼成セラミック(HTCC)テープ。
【請求項2】
マイクロエレクトロニクス用途で開発された低コストの熱的に安定な熱ラミネートされた多層ジルコン系高温同時焼成セラミック(HTCC)テープを製造する方法であって、
(a)ジルコンを主成分とし、痕跡量(2体積%未満)のルチル、モナザイト、石英、シリマナイトを有する鉱物砂を得る段階と、
(b)ボールミルにより鉱物砂粒径を減少させ、安定なコロイド状スラリーを生成することによりジルコン鉱物のテープ成形を実施する段階と、
(c)テープ成形ジルコン(グリーンテープ)を用いてHTCC基板を製造する段階と、を含む方法。
【請求項3】
成形されたグリーンテープが、良好な引張強さ0.7−1.0MPaを示す、請求項に記載の方法。
【請求項4】
HTCC基板が、温度範囲1400−1700℃において焼結される場合、良好な高密度化80−95%を示す、請求項に記載の方法。
【請求項5】
典型的な擬塑性挙動を有するZrSiOのテープ成形スラリーが調製され、0.07−0.1mmの範囲の厚さの薄いテープに成形される、請求項に記載の方法。
【請求項6】
1400−1700℃/2hで焼結された熱ラミネートされた多層テープ(4層)が、良好なマイクロ波誘電特性を示す、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温環境下で使用される高集積モノリシックミリメートル波集積回路(MMIC)用の低誘電損失の超低熱膨張性高温同時焼成セラミック(HTCC)基板の開発に関する。本発明の基板は、製造コスト、誘電特性、熱特性および機械的特性の点で、市販のHTCC基板よりも有利である。
【背景技術】
【0002】
マイクロエレクトロニクス産業における急速な発展により、その信頼性、集積性および優れた誘電特性に起因して、低損失マイクロ波セラミックの需要が高まっている。電気通信産業は、現在、装置の電気的性能を低下させることなく、高い容積効率を必要としている。低誘電パッケージング用途の電子基板の場合、比誘電率は10未満でなければならず、これはMMICにとって理想的である。誘電体内部のマイクロ波信号の速度は、その比誘電率の平方根に反比例する。誘電率を低下させると、特に大面積の高速チップでは、クロストーク、伝搬遅延時間、ノイズ、電力散逸が減少し、これはまたその後信号速度を増加させる。パッケージング用途に関して誘電体基板に要求される重要な性質は、(i)低比誘電率(信号速度を増加させるため)、(ii)低誘電損失(選択性のため)、(iii)高い熱伝導率(熱を放散するため)、(iv)それに取り付けられた材料に対して低いかまたは整合する熱膨張係数(CTE)、および(iv)「Dielectric Materials for Wireless Communications」(Oxford Elsevier Publishers、2008)においてSebastianにより概説されているような比誘電率の低温係数、である。
【0003】
HTCC系部品は、これまで広範囲の用途分野において取り扱われてきた。例としては、電子部品(多層キャパシタ、多層アクチュエータおよびRCフィルタ)、3次元マルチチップモジュール(エンジニアリングマネジメントシステム、自動車用途でのギアボックス制御、航空宇宙産業の高周波アプリケーション、医療エンジニアリング)、インテリジェント3次元パッケージ(SiチップおよびMEMSパッケージング)ならびにラボ・オン・チップ・システムがある。従来、HTCCアルミナ基板およびパッケージが、数十年にわたりマイクロエレクトロニクスパッケージで一般的に使用されてきた。これは、その優れた特性、コストおよび容易な製造プロセスのためである。それらは高温用途に適した複雑なマイクロ部品の製造にも使用できる。マイクロ波周波数でのHTCCの用途が増加しているにもかかわらず、HTCCの広範囲での使用は、おそらく材料システムの電気特性能力が十分調べられていないことに起因して、制限されていた。
【0004】
高温および低温技術(HTCCおよびLTCC)の両方のための典型的な同時焼成プロセスにおいて、セラミック粒子および有機バインダーからコロイド状スラリーが形成される。それは、その未焼成状態のためにしばしばグリーンテープと呼ばれる固体シートに成形される。グリーンテープに関連する適度な生産量の典型的なコストは、HTCCとLTCCについてそれぞれ1平方インチ当たり0.06ドルおよび0.11ドルであることが、「Multi Chip Module Technologies and Alternatives:The Basics,Springer 1993」において、Doaneらにより報告されている。HTCCのコスト見積もりによれば、100%のうち、材料コストは約41%であり、他のすべての分類、例えば労働力14%、資本設備31%、間接経費8%、その他6%などである。HTCC基板のコスト見積もりは、総コストの41%が基板製造のみに使用される材料に起因することを示している。
【0005】
アルミナ(Al)は、その電気的、機械的および経済的利点に起因して、最も一般的に使用されるHTCCセラミック基板である。アルミナ製造のための一般的な原料であるボーキサイトは、主に1つ以上の水酸化アルミニウム化合物と、主要不純物として、シリカ、鉄および二酸化チタンとを含む。ボーキサイトは、バイヤー化学プロセスを通じて酸化アルミニウムを製造するために使用される。Metallstatistics 2009にEAA、AA、JAA、ABAL、Alcanにより記載されているように、全世界平均で、2トンのアルミナを生産するために4トンから5トンのボーキサイトが必要である。
【0006】
上に概説したように、高純度アルミナの処理は、天然に産出される物質と比較して時間がかかりかつ費用がかかる。一方、提案されている材料であるジルコンは、チタン、イルメナイトおよびスズ鉱物のために主に抽出される重鉱物ビーチ砂の処理の共生成物/副生成物である。ジルコンの主な最終用途は、耐火用途、鋳物砂、およびセラミック不透明化である。Indian Rare Earths Ltd.(IRE)は、ケララ州のChavara鉱山からの世界で8番目に大きなジルコン生産者であった。Mineral Sands Report 2001cによって明らかにされたように、IREは2000年に22,000トンのジルコンを生産した。鉱物の主な利点は、DuPont 1991によって報告されたように、金属の浸透およびバーンインに抵抗し、寸法精度、機械加工性、高い熱伝導性、低い熱膨張性、耐エロージョン性、長寿命、高い熱的および機械的安定性などを保証することである。上記の報告から明らかなように、ジルコン鉱物は、市場に出回る現在のHTCC材料と比較して、コスト生産および入手可能性の面でより多くの魅力を有する。寸法、熱的および機械的安定性に関する予備的な報告は、ジルコン鉱物がMCM−C製造用のHTCC基板のためのより良好な代替材料として開発され得ることを示唆している。
【0007】
米国特許第2553265号明細書および米国特許第3347687号明細書に記載されているように、先行技術は、溶融ガラスとの接触に使用するのに適した耐火材料としてのジルコンの多くの用途を開示している。別の報告は、米国特許第3791834号明細書に記載されているように、ジルコンの機械的破断係数が、鉄クロメート鉱石を添加することにより改善されることを明らかにする。米国特許第5407873号明細書も参照することができ、ジルコン煉瓦は等方的にプレスされ、緻密に焼結され、特にホウ素含有ガラスのためのガラス溶融設備に使用される。先行技術において、ZrSiOセラミックの誘電特性および熱特性に関していくつかの単独の研究がなされているが、HTCC基板としての好ましい用途は意図されていない。Vargheseらによって明らかにされたZrSiOセラミックの誘電特性および熱膨張特性を参照することができる(Materials Letters、vol.65、1092、2011)。それは、1MHzでεが10.5、tanδが0.002であり、5.15GHzでεが7.4であり、tanδが0.0006である。ZrSiOセラミックの比誘電率は、−20から70℃の動作温度範囲内で一定の値を示した。セラミックはまた、30から600℃の温度範囲で−2.5ppm/℃の負の熱膨張係数を示し、したがって、正のCTEを有する材料の熱膨張を調整するのに適したさらなる利点を有する。
【0008】
上記文献から明らかなように、ZrSiOセラミックは、優れた誘電特性および熱特性とともに、コスト効率の点で、マイクロエレクトロニクス基板のための最良の候補の1つである。しかしながら、高温環境で使用されるマルチチップモジュール用のHTCC基板としてのこの材料の製造に関する先行技術は存在しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第2553265号明細書
【特許文献2】米国特許第3347687号明細書
【特許文献3】米国特許第3791834号明細書
【特許文献4】米国特許第5407873号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Dielectric Materials for Wireless Communications(Oxford Elsevier Publishers、2008)
【非特許文献2】Multi Chip Module Technologies and Alternatives:The Basics,Springer 1993
【非特許文献3】Metallstatistics 2009
【非特許文献4】Mineral Sands Report 2001c
【非特許文献5】DuPont 1991
【非特許文献6】Materials Letters、vol.65、1092、2011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
(1)本発明の主な目的は、マイクロ波デバイス用途の超低CTE HTCC基板を開発することである。
(2)他の目的は、鉱物ZrSiO砂をテープ成形に適した微粉末に加工することである。
(3)他の目的は、ZrSiOグリーンテープの調製のための最適なスラリー組成の処方である。
(4)他の目的は、開発されたZrSiOグリーンテープのバインダー焼失段階を最適化することである。
(5)本発明の他の目的は、マイクロ波誘電特性を最良にするため焼結条件を最適化することである。
(6)本発明の他の目的は、開発されたHTCC ZrSiOテープの焼成後収縮および保管寿命を最適化することである。
(7)本発明の他の目的は、未焼成のおよび焼結されたHTCC ZrSiO基板の機械的特性を調べることである。
(8)本発明の他の目的は、焼結されたZrSiO基板の表面特性を検討することである。
【0012】
以下の説明、特許請求の範囲および添付の図面を参照してよりよく理解される本発明のこれらおよび他の特徴、態様および利点は、以下に示される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】処理された鉱物ZrSiO砂の粒径分布とその微細構造を示す。
図2】テープ成形用ZrSiO鉱物の最適組成のレオロジー的挙動を示す。
図3】焼結されたHTCC ZrSiOセラミック基板の微細構造を示す。
図4】開発されたHTCC ZrSiOセラミック基板の表面粗さを示す。
図5】開発されたHTCC ZrSiOセラミック基板のエージング試験を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、高温環境下でマルチチップモジュールに使用される超低CTE HTCC ZrSiOセラミック基板の開発に関する。新規のHTCC基板は、マイクロエレクトロニクス用途で固有に開発されている。HTCC ZrSiOセラミック基板の開発には、テープ成形スラリー組成物、テープ成形、ラミネーション、バインダー焼失および焼結の処方が含まれる。焼結されたHTCC ZrSiOセラミックテープのマイクロ波誘電特性は、5および15GHz周波数の両方で測定される。本開示はまた、開発された基板の機械的特性および熱的特性に関する。開発された基板の収縮、表面粗さおよびエージングもまた調べられかつ最適化される。
【0015】
本発明のとりわけ主要な実施形態には、ジルコン系鉱物、特に、97.4%の純度を有する化学式ZrSiOの鉱物がある。
【0016】
本発明のさらに他の実施形態では、適切な有機ビヒクルを有する、処理されたZrSiO鉱物に基づくテープ成形スラリーの処方を説明する。
【0017】
一実施形態では、本開示は、10から30重量%の有機溶媒に良好に分散された、平均粒径540nmのフィラー鉱物粉末を50から70重量%、有機バインダーを1から10重量%、および2種類の可塑剤を0.5から5重量%含むジルコン含有スラリーを含むマイクロエレクトロニクス用途の熱ラミネートされた多層ジルコン系高温同時焼成セラミック(HTCC)テープに関する。
【0018】
本願の他の実施形態では、無水キシレン、エタノール、トルエン、メチルエチルケトンおよびこれらの混合物からなる群から選択される溶媒を好ましくは含む有機溶媒を10.0から30.0重量%と、処理されたZrSiOフィラーを50から70重量%と、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンイミン、ポリメチルメタクリレート、塩化ビニル−アセテートおよびこれらの混合物からなる群から選択される有機バインダーを1.0から10.0重量%と、各々が、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジエチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸モノメチル、アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、マレイン酸ジブチル、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリオクチル、クエン酸アセチルトリオクチル、クエン酸トリヘキシル、クエン酸トリメチル、アルキルスルホン酸フェニルエステル、ポリエチレングリコールおよびそれらの混合物からなる群から選択される2種の可塑剤を0.5から5.0重量%と、を含む。
【0019】
本開示の他の実施形態において、有機溶媒は、無水キシレン、エタノール、トルエン、メチルエチルケトンおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0020】
本開示の他の実施形態において、有機バインダーは、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンイミン、ポリメチルメタクリレート、塩化ビニル−アセテートおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0021】
本開示の他の実施形態では、2種の可塑剤が、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジエチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸モノメチル、アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、マレイン酸ジブチル、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリオクチル、クエン酸アセチルトリオクチル、クエン酸トリヘキシル、クエン酸トリメチル、アルキルスルホン酸フェニルエステル、ポリエチレングリコールおよびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0022】
一実施形態では、本開示は、ジルコン含有スラリーを含むマイクロエレクトロニクス用途の熱ラミネートされた多層ジルコン系高温同時焼成セラミック(HTCC)テープに関し、該ジルコン含有スラリーは、無水キシレン、エタノール、トルエン、メチルエチルケトンおよびそれらの混合物からなる群から選択される有機溶媒10から30重量%中に良好に分散された平均粒径540nmのZrSiOフィラー鉱物粉末を50から70重量%と、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンイミン、ポリメチルメタクリレート、塩化ビニル−アセテートおよびそれらの混合物からなる群から選択される有機バインダーを1から10重量%と、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジエチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸モノメチル、アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、マレイン酸ジブチル、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリオクチル、クエン酸アセチルトリオクチル、クエン酸トリヘキシル、クエン酸トリメチル、アルキルスルホン酸フェニルエステル、ポリエチレングリコールおよびそれらの混合物からなる群からそれぞれ選択される2種の可塑剤を0.5から5重量%とを含む。
【0023】
本開示の他の実施形態では、HTCCテープは、5および15GHzにおけるマイクロ波誘電特性を有し、比誘電率(k)ε=3.1−10.1(5GHz)、誘電損失(tanδ)=4×10−4から5×10−4(5GHz)、比誘電率(k)ε=2.9−9.9(15GHz)、誘電損失(tanδ)=6×10−4から9×10−4(15GHz)であり、熱特性を有し、熱伝導率:10−16W/mK、熱膨張係数:±2ppm/℃であり、機械的特性を有し、引張強さ:14−20MPa、曲げ強さ:130−150MPaであり、低い熱収縮率およびマイクロ波誘電特性のエージングを有し、X収縮率が5−10%、Y収縮率が5−10%、Z収縮率が3−8%未満であり、良好な表面形状を有し、平均表面粗さ(Sa)=100nm、二乗平均平方根粗さ(Sq)=140nm、表面歪度(Ssk)=−0.6876、尖度係数(Sku)=3.5164である。
【0024】
本開示は、マイクロエレクトロニクス用途で開発された低コストの熱的に安定な熱ラミネートされた多層ジルコン系高温同時焼成セラミック(HTCC)テープを製造する方法にも関し、該方法は、(a)ジルコンを主成分とし、痕跡量のルチル、モナザイト、石英、シリマナイトを有する鉱物砂を得る段階と、(b)ボールミルにより鉱物砂粒径を減少させ、安定なコロイド状スラリーを生成することによりジルコン鉱物のテープ成形を実施する段階と、(c)テープ成形ジルコン(グリーンテープ)を用いてHTCC基板を製造する段階と、を含む。
【0025】
本発明のさらに他の実施形態では、最終スラリー組成物の典型的なチキソトロープ挙動が明らかになる。
【0026】
本発明のさらに他の実施形態では、細かく粉砕し、篩い分けしたZrSiO鉱物を用いて、亀裂のないグリーンテープを成形する。
【0027】
本発明のさらに他の実施形態では、1400から1700℃で焼結されたHTCC基板は、88から95%の高密度化を示す。
【0028】
本発明のさらに他の実施形態では、焼結されたHTCC基板は、最適な焼結温度で、5から10%の範囲のXおよびY収縮率および3から8%の範囲のZ収縮率を有し、10%未満の全熱収縮率を示す。
【0029】
本発明のさらに他の実施形態では、焼結された試料のマイクロ波誘電特性は、それぞれ5GHzおよび15GHzの周波数で7から10の比誘電率および2×10−4から6×10−4の誘電損失を示す。
【0030】
本発明のさらに他の実施形態では、焼結されたZrSiO基板の熱特性は、±2ppm/℃の低い熱膨張係数(CTE)および10から16W/mKの範囲の熱伝導率を示す。
【0031】
本発明のさらに他の実施形態では、グリーンテープの成形方向の機械的特性は、0.1から0.4MPaの引張強さを示し、焼結されたZrSiO HTCC基板の引張強さは、14から20MPaの範囲でかなり高い強度を示す。焼結されたZrSiO基板の曲げ強度は、130から150MPaの範囲内である。
【0032】
本発明のさらに他の実施形態では、焼結された未研磨HTCC ZrSiO基板の平均表面粗さは約100nmである。
【0033】
本発明のより良い理解を容易にするために、本発明の好ましい実施形態の詳細な説明を添付の図面を参照して以下に説明する。開示された実施形態は、本発明の単なる例示であり、様々な形態で実施することができることを理解する必要がある。したがって、本明細書で開示された詳細は、限定として解釈されるのではなく、単に請求の根拠として、また、本発明の実施または使用方法を当業者に教示するための基礎として解釈されるべきである。
【0034】
低損失HTCCセラミック基板を製造するための本発明による1つの例示的な方法では、ジルコンは、ケイ酸ジルコニウム(ZrSiO、ジルコン鉱物、インド、IRE Ltd)に基づいている。IREから入手されるジルコン鉱物砂は、300マイクロメートルより大きい寸法を有し、純度は96から98%である。IREの鉱物学的分析によれば、ジルコン鉱物砂中に存在する痕跡量不純物は、ルチル0.20−0.80%、モナザイト0.20−0.70%、痕跡量の石英0.00−0.20%、シリマナイト1.50−2.50%およびその他0.00−0.40%であった。1つの例示的なジルコン砂の元素分析では、おおよその化学組成が、ZrO(それに加えて痕跡量のHfO)(64.50%)、SiO(32.10%)、TiO(0.70%)、Fe(0.30%)およびP(0.10%)であることが明らかにされた。ジルコン鉱物砂の粒径を小さくするために、材料を、粉砕媒体として蒸留水を用いて、イットリア安定化ジルコニアボールで48時間ボールミル粉砕した。ボールミルの後、分散したスラリーを25マイクロメートルのメッシュサイズのナイロン篩を用いてふるいにかけ、60℃の熱風オーブン中で一晩乾燥させた。粒子径分析は、Malvern粒度分析器(Zetasizer Nanoseries:ZEN 3600、Malvern Worcestershire、UK)を用いて行った。
【0035】
本開示におけるZrSiO系HTCCテープの開発には、ドクターブレードテープ成形機(Casting Machine、Keko Equipment、スロベニア)を使用した。高純度処理ZrSiO鉱物砂をセラミックフィラーとして使用し、実施形態の1つで詳述した適切な溶媒、分散剤、バインダーおよび可塑剤を用い、ビヒクルを含む。テープが成形されたら、テープ成形スラリーに使用される溶媒に応じて、自然乾燥または熱風循環を使用して乾燥させることができる。乾燥されたテープは、さらなる特性評価に使用される。
【0036】
グリーンテープおよび焼結されたテープの画像をデジタルカメラ(Sony、10倍光学ズーム、16メガピクセル)で記録した。懸濁されたZrSiO粒子を炭素被覆した銅グリッド上に乗せ、セラミック薄体を調製し、グリッドを赤外線ランプ下で濾紙上で乾燥させた後、HR−TEM(FEI Tecnai G2 30S−TWIN、FEI Company、Hillsboro、OR)を300kVで操作して調べた。作製された全ての試料の微細構造を、様々な倍率で走査型電子顕微鏡(CARL ZEISS、EVO18 ESEM)を用いて調べた。作製された試料の表面粗さは、タッピングモードで動作する原子間力顕微鏡(AFM)(NTEGRA、NT−MDT、ロシア)を用いて測定した。AFMでは、共振周波数300kHz、曲率半径10nm、力定数3.08から37.6Nm−1の微細加工SiNカンチレバーチップを用いた。10×10μmの画像走査サイズと1Hzの走査速度とを固定して測定した。ZrSiO系の未焼結および焼結されたHTCC基板のマイクロ波誘電特性を、ベクトルネットワークアナライザー(E5071C、カリフォルニア州サンタクララ、Agilent Technologies)を用いて5.15および15.15GHzで動作するスプリットポスト誘電体共振器(SPDR)で測定した。この方法では、比誘電率の全不確かさは0.5%を超えず、誘電損失正接を約5×10−5に解消することが可能である。
【0037】
熱膨張係数は、ドイツのNETZSCH製の、精度が1%未満のプッシュロッド膨張計(Model DIL 402 PC)を用いて測定した。膨張計はアルミナチューブとプッシュロッドを使用した。熱膨張試験は、ASTM E228試験法の仕様に従って実施した。直径8mmおよび高さ10mmの焼結試料を使用して、30−600℃の温度範囲における熱膨張係数(CTE)を測定した。
【0038】
熱伝導率は、ペンシルベニア州ピッツバーグのAnter Corporationによって製造されたFlashline 2000熱拡散システムを用いて測定された熱拡散率(mm/s)、比熱(J/gK)および密度(g/cm)から計算された。フラッシュ法では、試験片の温度を時間の関数としてΔTだけ増加させるために、試験片の上面に向けられた高速キセノン放電パルス源を用いた。熱拡散率試験に使用した試験片は、直径12.6mm、厚さ2mmのディスクの形態であった。試験片調製は、400グリットのSiC研磨紙を用いて表面の平滑性および平坦性を確保し、続いてキセノン放電光線の反射を避けるために熱コンタクトのために試料の両面に炭素をコーティングする段階を含む。熱特性測定の誤差限界は±1%である。
【0039】
本開示では、ユニバーサルテストマシン(Hounsfield、H5K−S UTM、Redhill、英国)を用いて、未焼結および焼結されたHTCC基板の曲げおよび引張特性を測定した。
【0040】
本発明の目的および利点は、説明のために与えられる以下の実施例を慎重に検討することによって、より明確になり、したがって、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0041】
実施例1
この例では、テープ成形のためのジルコン砂の前処理を示す本発明の実施形態が示されている。ジルコン鉱物砂の粒子径を減少させるために、材料をイットリア安定化ジルコニアボールおよび粉砕媒体としての蒸留水で48時間ボールミル粉砕した。ボールミルの後、分散したスラリーを25マイクロメートルのメッシュサイズのナイロン布を用いてふるいにかけ、熱風オーブン中で乾燥させた。粒径分析の結果は、図1(a)に示すように粉砕した粉末が540nmの平均粒径を有し、図1(b)の生の相関データが測定結果の精度を裏付けることを示している。ジルコン鉱物砂の写真を図1(c)に示す。処理されたジルコン鉱物の透過電子微細構造を図1(d)に示す。処理された鉱物ジルコンの平均粒径がTEM微細構造のそれと良好に一致することは明らかである。処理されたジルコンが、ジルコン砂から粉末への粒径の減少の間に大きな機械的応力を受けたことは明らかである。ミリングプロセスは、粒成長の欠陥をもたらす可能性のある粒子格子配向に影響を及ぼし得る。処理されたジルコン粉末が、ミリングに起因する応力の結果と考えられる、特定の形態をもたない不規則な粒組織を示すことは明らかである。
【0042】
実施例2
この例では、処理されたジルコン砂の相純度を示す本発明の実施形態が示されている。ジルコンは、I41/amd空間群に属する正方晶構造を有する。ICDDファイルによれば、ZrSiOは単位格子パラメータa=6.573Å、c=5.963Åを有し、4.65g/cmのX線密度を有する。
【0043】
実施例3
この実施例では、最適化されたジルコンスラリー組成、そのレオロジー、成形されたジルコンテープの写真およびその機械的特性を示す本発明の実施形態を示す。効果的なテープ成形のためには、よく分散して安定なセラミックスラリーが不可欠であることに留意することが重要である。図2は、最適化ジルコンスラリー組成物の擬塑性挙動を説明する。明らかに、十分に分散したスラリーの粘度は、粒子への移動度を高める粒子間流体層の存在に起因して低くなる。明らかに、スラリーは典型的な擬塑性挙動を示す。理想的なテープ成形スラリーでは、剪断力に起因してブレードギャップを通過する間に粘度が低下し、粘度がブレードを越えてすぐに増加し、それにより成形後の望ましくない流れを防止できるように、擬塑性挙動が必須である。表1は、処理前のグリーンテープの機械的特性を表す。0.07−0.1mmの範囲の厚さを有する単層グリーンテープは、0.1−0.4MPaの範囲の引張強さを示すが、0.3−0.4mmの範囲の厚さを有する積層テープの引張強さは改善を示し、0.7−1.0MPaである。グリーンテープのこの機械的強度は、HTCC基板テープに適する基準機械的強度をはるかに上回っている。
【0044】
実施例4
この実施例では、開発されたジルコンテープの焼結プロファイルを示す本発明の実施形態が与えられる。グリーン多層テープはいくつかの有機添加剤を含み、有機添加剤およびポリマーマトリックスを除去するために、制御された加熱が必要である。バインダーの燃焼プロセスを制御するために、同時焼成プロセスの間に、マクロ多孔質高温レンガ(多孔質セッター)の厚いスラブが使用される。炉の冷却速度もまた、亀裂のない焼結ジルコンテープを得るために重要である。本発明では、室温に到達するために約0.4℃/分という非常に低い冷却時間が与えられる。
【0045】
実施例5
この実施例では、開発されたジルコンHTCC基板の焼結積層体の微細構造を示す本発明の実施形態が与えられる。図3(aおよびb)は、様々な倍率での焼結されたHTCCジルコン基板の表面微細構造を示す。図3(cおよびd)は、焼結されたHTCCジルコン基板の断面を低倍率および高倍率で示す。焼結プロセス中に実質的な粒成長が起こり得、したがって焼結テープの表面形態(図3(aおよびb))が、断片的な多孔性を有する良好に充填された粒子を示すことに留意すべきである。熱ラミネートされた積層体(図3(cおよびd))の断面の周りに記録されたSEM画像では、SEMの分解能精度限界内で多層積層体の相間境界が見えない。これは、熱ラミネーションの条件下では、マトリックス中のポリマーが軟化し、続いて層が互いに拡散して積層体を均質にすることを意味する。焼結積層体の断面の微細構造を詳しく調べた結果、積層体が緻密化して密着体を形成すると結論付けることができる。
【0046】
実施例6
この実施例では、開発されたHTCCジルコン基板の高密度化、マイクロ波誘電特性および収縮挙動を説明する本発明の実施形態が与えられる。高密度化は、焼結温度の上昇とともに高まることが見出され、最適化された焼結温度は、表2に示すように1600−1700℃の範囲にあることが見出された。高密度化は、温度に応じて80%から95%に増大し、最大高密度化は1600℃超で実現される。焼結温度は、高密度化およびマイクロ波誘電特性に基づいて最適化される。温度の関数としてのHTCCジルコン基板のマイクロ波誘電特性の変化も、高密度化と同様の傾向を示した。HTCC基板のマイクロ波誘電特性は非常に有望である(5および15GHzでそれぞれ、比誘電率(ε)は3.1−10.1、2.9−9.9の範囲であり、誘電損失正接(tanδ)は4×10−4から5×10−4、6×10−4から9×10−4の範囲である)。HTCCジルコン基板の焼結中の熱収縮を表3に示す。最適に開発されたジルコン基板は、X方向およびY方向の平均収縮率が約5−10%、Z方向の収縮率が3−8%未満、標準偏差が2%である。
【0047】
実施例7
この実施例では、開発されたHTCCジルコン基板の平均表面粗さ、二乗平均平方根(RMS)粗さ、表面歪度および表面尖度パラメータを説明する本発明の実施形態が与えられる。ジルコン基板のAFM画像を図4に示し、図4には、挿入図に示すように平均表面粗さ(Sa)が100であることが示されている。2次元および3次元表面形状におけるジルコン基板の表面の顕著に明白な特徴を図4に示す。表面のRMS偏差、Sqはほぼ140nmであり、トポグラフィー高さ分布の尖度(Sku)は、ほぼ3.5であるが、良好に分散された分布の尖度は3より大きくなければならないので、これはジルコン基板の表面がさらに平坦化される必要があることを示している。山と谷を有するHTCCジルコンテープの表面の不均一な性質は、図4において明白である。トポグラフィー高さ分布の歪度(Ssk)は、基準面に対する表面偏差の非対称性の尺度として定義される。ジルコン基板のSskは−0.687であり、歪度の負の値は一般に、表面分布が基準面の下側に長いテールを有することを示している。
【0048】
実施例8
この実施例では、表4および図5に示される、開発されたHTCCジルコン基板の機械的、熱的およびエージングの検討について説明する本発明の実施形態が与えられる。引張強さ、曲げ強度、熱伝導率および熱膨張係数は、マイクロエレクトロニクスにおける様々なデバイス開発プロセスの段階において同様に重要である。一般に、耐火材料は、適度に高い熱的特性および機械的特性を有する。開発された基板は、14−20MPaの範囲の引張強度およびおおよそ130−150MPaの範囲の曲げ強度を示す。曲げ強度の値が低いことはケイ酸塩に典型的である。ジルコン基板はまた、最良の高密度化温度で焼結された後に、良好な熱的および機械的特性を有する。開発されたHTCCジルコン基板は、±2ppm/℃の範囲の極めて低い熱膨張値を示し、10−16W/mKの範囲の熱伝導率を有する。新たに開発されたジルコンHTCC基板は、市販のアルミナ系HTCC基板と比較して、優れた機械的特性および熱的特性を示す。図5は、開発されたHTCCジルコン基板の最大60日間(2ヶ月)のエージング試験を示す。開発されたHTCCジルコン基板の、5および15GHzでの、室温のマイクロ波誘電特性に対するエージングの影響は、検討期間中の比誘電率にわずかな変動しかないことを示している。誘電損失の場合、SPDRを用いた誘電損失測定に関連して十分に誤差限界内である時間の関数として、ほとんど変化は観察されない。
【0049】
発明の概要
したがって、本発明は、高温環境下で使用される、高集積モノリシックミリメートル波集積回路(MMIC)用、超低CTE、低誘電損失の高温同時焼成セラミック(HTCC)基板の低コストの製造を提供する、ジルコンを含有する基板を含む物品である。他の局面において、本発明は、好ましくは、ジルコン含有スラリーを含む物品を形成する方法に関し、フィラー鉱物粉末は、540nmの平均粒径を有し、ある範囲の溶媒から選択される溶媒10から30重量%、本発明の記載において具現される有機バインダーの群から選択される有機バインダー1から10重量%および有機可塑剤の群から選択される2種の可塑剤0.5から5重量%の中に良好に分散される。典型的な擬塑性挙動を有するZrSiOのテープ成形スラリーが調製され、0.07−0.1mmの範囲の厚さの薄いテープに成形された。1400−1700℃/2hで焼結された熱ラミネート多層テープ(4層)は、周波数5および15GHzの各々において、3.1から10.1および2.9から9.9の範囲の良好なマイクロ波誘電特性εを示し、tanδが、4×10−4から5×10−4および6×10−4から9×10−4の範囲である。ZrSiOは、±2ppm/℃の超低熱膨張率および10−16W/mKの範囲の熱伝導率を有する。平均粗さ(Sa=100nm)、二乗平均平方根(RMS)粗さ(Sq=140nm)、表面歪度(Ssk=−0.6876)および表面尖度(Sku=3.5164)といったパラメータを用いて、開発されたHTCCジルコン基板の表面モルフォロジーを分析した。新たに開発した基板は、5−10%の範囲のXY収縮率および3−8%の範囲のZ収縮率を示す。また、基板は、14−20MPaの引張強度を示し、一方で結果に示されるように、130−150MPaの範囲の曲げ強度を示す。このHTCCジルコン基板は、製造コスト、誘電特性および熱特性の点で、現在入手可能なHTCC基板に対して優れている。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
【表4】
【0054】
本発明の主な利点は以下のとおりである。
1)ジルコン系HTCC基板をマイクロエレクトロニクス用途向けに製造した。
2)原材料ジルコンはそのまま海浜砂で利用でき、精製および化学処理は不要である。
3)開発されたHTCCジルコン基板は、費用対効果、誘電特性および熱特性の観点から、市販のHTCC基板よりも有利である。
4)超低CTEは、新しく開発されたジルコンHTCC基板の主要な特徴であり、一方でHTCCアルミナのCTEは、7ppm/℃を超える。
5)安定したジルコンスラリーは、亀裂のないHTCCジルコン基板の開発に有利である特徴的な擬塑性を示す。
6)グリーンジルコンテープは、さらなる加工に有利な十分な機械的安定性を示す。
7)HTCCジルコン基板は、高温環境で動作する基板に有利である、XY方向およびZ方向の低い熱収縮挙動(10%未満)を示す。
8)開発されたHTCC基板は、HTCCアルミナを超える、または少なくとも匹敵するマイクロ波誘電特性を示す。
9)開発されたHTCC基板は良好な表面特性を示す。
10)開発されたHTCC基板は、良好な機械的安定性および既存のHTCC基板に匹敵する熱伝導率を示す。
11)開発されたHTCCジルコン基板は、2ヶ月の検討期間にわたって安定したマイクロ波誘電特性を示す。
図1
図2
図3
図4
図5