【課題を解決するための手段】
【0008】
ある局面では、本発明は、地球物理学的構造における
放射性崩壊による熱産生(RHP)を計算する方法であって、地球物理学的構造の少なくとも1つの地球物理学的パラメータが提供され、地球物理学的構造のRHPを推定するために、少なくとも1つの地球物理学的パラメータをインバージョンすることを含む方法を提供する。
【0009】
本発明者らは、地球物理学的構造のRHPは、密度、地震波速度(好ましくは、地震p波速度)又は磁化率などの地球物理学的構造の少なくとも1つの地球物理学的パラメータをインバージョンすることによって求めることができることを発見した。この方法は、それが地球物理学的構造全体にわたってRHPを求めるために地球物理学的構造の詳細なサンプリングを必要としないので、有利である。より正確に言えば、表面測定及び観測により、地球物理学的構造全体にわたって、地球物理学的パラメータ値を取得することができるので、本発明の方法は、表面測定及び観測を用いて、RHPが計算されることを可能にする。
【0010】
ガンマ線記録の使用を必要とする上述の先行技術の方法(上述のOliveiraらなど)とは異なり、本発明は、RHPを計算するために、単に、地球物理学的パラメータ値(これらは既に/簡単に入手可能なものでもよく、またボアホール内ではなく地表から取得されてもよい)に頼ることができる。さらに、地震波速度をRHP推定に変換する際に多数の中間ステップを伴う上述のKronrodらの先行技術とは異なり、本方法は、インバージョンを用いて、1つ又は複数の地球物理学的パラメータから直接RHPを計算する。
【0011】
本方法によって計算されるRHPは、好ましくは、現在のRHPであることができる。これは、地球物理学的パラメータの現在の値が使用される場合に当てはまり得る。もちろん、必要に応じて、履歴値を使用して、履歴RHPを計算することもできる。地球物理学的構造は、好ましくは、地球の地殻又はリソスフェアであることができる。地球の地殻は、マントルと地表又は堆積物層との間の層である。地球のリソスフェアは、延性マントルと地表又は堆積物層との間の層である(すなわち、リソスフェアは、地殻及び(大部分は)脆性の上部マントルを包含する)。地殻又はリソスフェアのRHPを計算することは、下記にさらに説明されるように、このRHP値を用いて、地表熱流量を計算することができるので、特に有用である。地表熱流量の計算を用いて、堆積層又は地殻中に、炭化水素の生成にとって適切な条件が存在するか、又は存在したか否かを評価する際に重要な温度分布を計算することができる。
【0012】
インバージョンすること、又はインバージョンは、当該分野においてよく知られている用語である。これは、少なくとも1つの観測/測定パラメータから、パラメータの原因(又はパラメータの複数の原因の少なくとも1つ)を計算するプロセスを表現する。従って、このケースでは、物理的に言って、RHPは地球物理学的パラメータに影響を与える。しかしながら、測定されるのは、地球物理学的パラメータであって、RHPではない。従って、地球物理学的パラメータからRHPを計算することは、インバージョンすることであると表現することができる。インバージョンは、1つ又は複数の地球物理学的パラメータから直接RHP値を計算するために、1つ又は複数のモデル(下記に説明されるフォワードモデルなどの、1つ又は複数の地球物理学的パラメータをRHPに関連付ける1つ又は複数の岩石物理学モデルなど)を用いる計算であると見なすことができる。
【0013】
本明細書全体を通して、「計算すること」及び「推定すること」などの用語が使用される。これらは、限定することを意図したものではなく、これらは、単に、RHPなどの実際の物理値(又は少なくとも物理値の(近い)近似)の値を決定すること、又は取得することを意味することが意図されている。
【0014】
地球物理学的パラメータは、密度、磁化率、地震波速度(好ましくは、地震p波速度)、電気伝導率、抵抗率又は残留磁気などの地球物理学的構造の任意の特性であることができる。特に、地球物理学的パラメータは、そのような特性を表す1つ又は複数の値であることができる。特に、地球物理学的パラメータは、RHPによって影響を受ける任意のそのような特性であることができる。
【0015】
インバージョンのステップは、少なくとも1つの地球物理学的パラメータと、地球物理学的構造のRHPとの間の関係を定義する、フォワードモデルを選択することを含むことができる。
【0016】
インバージョンの計算において、フォワードモデルは、既知/測定パラメータ(この場合、地球物理学的パラメータ)と、未知の数量(この場合、RHP)との間の関係である。
【0017】
フォワードモデルは、関連の地球物理学的パラメータをRHPに関連付ける期待される傾向に基づいて選択することができる。例えば、地球物理学的パラメータは、通常、RHPの増加に伴って、(地球物理学的パラメータに応じて)増加又は減少し得る。地球物理学的パラメータが密度又は地震波速度(好ましくは、地震p波速度)又は伝導率である場合、地球物理学的パラメータは、RHPの増加に伴って減少し得る。地球物理学的パラメータが磁化率である場合、地球物理学的パラメータは、RHPの増加に伴って増加し得る。使用される特定のフォワードモデルは、本発明に必須ではなく、幾つかのそのようなフォワードモデルが、当該分野で知られている。また、当業者は、どの1つ又は複数のモデルが使用され得るかに気付くであろう。実際、フォワードモデルが地球物理学的パラメータとRHPとの間の一般傾向をモデリングすることができる限り、種々のフォワードモデルを用いて類似の結果を達成することができる。
【0018】
地球物理学的パラメータがRHPの増加に伴って減少する場合、モデルは任意の崩壊関数であることができる。例えば、地球物理学的パラメータは、RHP(A)の逆数又はRHPの逆数の(自然)対数に比例してもよく、すなわち、
【数1】
又は
【数2】
である。ただし、aは定数である。地球物理学的パラメータがRHPの増加に伴って増加する場合、モデルは任意のシグモイド関数であることができる。
【0019】
地球物理学的パラメータとRHPとの間の関係の説明例として、Rybach(1978)は、RHPと地震p波速度との間の指数関係
【数3】
を提案している。ただし、AはRHPであり、v
pは地震p波速度であり、a及びbは定数である。もちろん、これは単なる説明例であり、RHPと地震波速度との間の他の関係を使用することもできる。
【0020】
従って、上記から理解できるように、正確なフォワードモデルは、岩石物理学関係の知識に基づいて、当業者によって選択されることが可能である。
【0021】
好ましくは、RHPと地球物理学的パラメータとの間のモデル関係は、その他の地球物理学的パラメータなどのその他の変数に依存しない。もちろん、他の定係数が存在してもよいが、好ましくは、1つの変数のみが存在する。例えば、RHPと地震p波速度との間の例示的なRybach(1978)の関係に再度注目すると、RHPが依存する唯一の変数は、地震p波速度である。Rybach(1978)の上記の式の他の係数(a及びb)は、単なる定数である。下記に説明されるように、定係数はデータの較正によって求められてもよい。
【0022】
1つ又は複数のモデルは、システムの完全な複雑さを示さない場合があること、すなわち、地球物理学的パラメータがRHPにのみ依存するようにモデルが意図的に単純化される場合があることを理解されたい。実際には、1つ又は複数の地球物理学的パラメータは、一般に多くの変数に依存する。しかしながら、本方法で使用される1つ又は複数のモデルでは、1つ又は複数の地球物理学的パラメータは、関心のある変数、この場合RHPにのみ依存することができる。
【0023】
地球物理学的構造のサンプルからの少なくとも1つの地球物理学的パラメータの少なくとも1つの測定と、地球物理学的構造のRHPとを含む、較正データが提供されてもよい。この方法は、較正データを取得することをさらに含むことができる。較正は、好ましくは、地球物理学的構造のサンプルからの少なくとも1つの地球物理学的パラメータの複数の測定と地球物理学的構造のRHPとを含むことができる。少なくとも1つの地球物理学的パラメータの少なくとも1つの測定と、RHPの測定とは、好ましくは、サンプルの実質的に同じ位置から獲得されたものであることができ、又はサンプル全体としての全体的/平均測定であることができる。
【0024】
本方法におけるインバージョンのステップは、較正データに基づいて、フォワードモデルを最適化することを含むことができる。この最適化は、較正データを使用して、フォワードモデルの定係数の最適値を求めることを含むことができる。一般的に、較正データの量が多いほど、最適化がより良くなる。
【0025】
Rybach(1978)に提示された地球物理学的パラメータとRHPとの間の例示的な関係に再度注目すると、較正データを用いて求めることができるのは、係数a及びbである。
【0026】
フォワードモデルを最適化するために、提供された地球物理学的パラメータに対して、フォワードモデル(これは所与のRHPから地球物理学的パラメータを計算する)が、ある特定の誤差分布を有する(すなわち、提供/観測された地球物理学的パラメータと、各フォワードモデルによって計算された地球物理学的パラメータとの間の差が、誤差分布を与える)と仮定されることができる。好ましくは、誤差分布は、好ましくは平均が0のガウス誤差分布であると仮定される。フォワードモデルは、例えば、可能な限り0に近くなる誤差分布の平均を有することによって、及び可能な限り誤差分布の小さな分散を有することによって、誤差分布が可能な限り小さくなるように誤差分布を減少させることによって、最適化される。最適化は、フォワードモデルを最適化するフォワードモデルの1つ又は複数の定係数(Rybach(1978)の関係におけるa及びbなど)の1つ又は複数の値を求めることによって達成されてもよい。
【0027】
最適化されたフォワードモデルは、その後、インバージョンにおいて使用されることにより、より正確なインバージョンを生じさせることができる。
【0028】
RHPのある特定の値を所与として、地球物理学的パラメータの確率分布(及び/又は平均及び/又は分散値(直接的に))を計算するために、フォワードモデルがインバージョンにおいて使用されてもよい(下記の式(13)を参照)。この確率分布関数は、地球物理学的パラメータの特定の複数の値を所与として、RHPの確率分布(及び/又は平均及び/又は分散値(直接的に))を計算するために使用されてもよい(下記の式(4)〜式(7)を参照)。
【0029】
地球物理学的構造における少なくとも2つの地球物理学的パラメータが提供されてもよい。この場合、本方法は、地球物理学的構造のRHPを推定するために、少なくとも2つの地球物理学的パラメータをインバージョンさせることを含むことができる。
【0030】
少なくとも2つの地球物理学的パラメータを使用することは、それを行うことにより、RHPへの地球物理学的パラメータのインバージョンをかなり制限することができるので好ましい。1つのみの地球物理学的パラメータを用いてRHPを推定することは、計算されたRHPに大きな誤差及び不確実性を残す場合がある。しかしながら、同じRHPを計算するために、同じインバージョンにおいて他の地球物理学的パラメータが使用されるとすぐに、不確実性が劇的に減少する。実際、より多くの地球物理学的パラメータが使用されるほど、計算されるRHPはより正確となり得る。従って、少なくとも3つ、4つ又は5つの地球物理学的パラメータが、インバージョンに使用されてもよい。使用される1つのみ、2つ、3つ、4つ又は5つの地球物理学的パラメータが存在してもよい。
【0031】
インバージョンのステップは、少なくとも2つ(又は3つ、4つ、5つなど)の地球物理学的パラメータ間に統計的(条件付き)独立性が存在し、且つ各地球物理学的パラメータと地球物理学的構造のRHPとの間に統計的依存性が存在する、モデルを使用することを含むことができる。
【0032】
本明細書における「モデル」とは、単に、1つ又は複数のフォワードモデルなどの、インバージョンに使用される数学的関係を意味するものであってよい。
【0033】
種々の地球物理学的パラメータに対するRHPの統計的依存性と、種々の地球物理学的パラメータの互いに対する統計的(条件付き)独立性とは、本発明者らが発見した重要な概念である。インバージョン問題をこのようにモデリングすることによって、複数の地球物理学的パラメータの使用が、RHPに関して求められる値を制限し、従ってRHPにおける誤差/不確実性を減少させるネットワークとして、地球物理学的パラメータ及びRHPが見なされることを可能にする。
【0034】
この仮定及びこのようなモデルを用いて、地球物理学的パラメータとRHPとの間の関係は、
図1などの有向非巡回グラフ(DAG)に示すことができるベイジアンネットワークの観点から表現されることが可能である。従って、本インバージョンは、インバージョン問題のベイジアン公式化であることができる。インバージョンは、ベイジアン統計設定において行われることができる。
【0035】
違う言い方をすれば、インバージョンに使用される数学的関係は、RHPの確率が、個別に各地球物理学的パラメータを条件とし、且つ地球物理学的パラメータ間に条件付き確率が存在しないという仮定に基づいて、選択されることができる。
【0036】
地球物理学的適用において、インバージョン問題にベイジアンアプローチを用いることが知られている。例えば、Afonso(2013a、2013b)は、ベイジアンアプローチを用いることを教示する。しかしながら、RHPを計算するためにベイジアンアプローチを用いるという教示はない。例えば、Afonso(2013a、2013b)は、実際に、マントルの温度及び組成を推定するためのインバージョン計算への入力としてRHPを使用する。Afonso(2013a、2013b)におけるRHPの入力値は、単に、地球物理学的構造の組成を推定し、推定された組成をその組成に関するRHPの期待公表値に関連付けることによって、求められる。従来の方法では、上記のような統計的ネットワークにおいて複数の地球物理学的パラメータを使用してRHPを計算することはもちろん、地球物理学的パラメータからRHPを計算するという教示又は提案は存在しない。
【0037】
少なくとも2つの地球物理学的パラメータは、少なくとも1つの電磁地球物理学的パラメータ(磁化率、電気伝導率又は抵抗率又は残留磁気など)と、少なくとも1つの力学的な地球物理学的パラメータ(密度又は地震波速度(好ましくは地震p波速度)など)とを、含むことができる。好ましくは、重力及び磁気地球物理学的データ(それらから磁化率及び密度が計算されてもよい)が、通常、地球の広いエリアにわたって、3次元カバレージで入手可能であり/取得が簡単であるので、少なくとも磁化率及び密度が使用される。もちろん、磁化率、電気伝導率、抵抗率、残留磁気、密度又は好ましくは地震p波速度である地震波速度(又はRHPが依存するその他の地球物理学的パラメータ)の任意の組み合わせが使用されることができる。
【0038】
1つのみの地球物理学的パラメータがインバージョンに使用されてもよいケースと同様に、少なくとも2つの地球物理学的パラメータが使用される場合、インバージョンのステップは、各地球物理学的パラメータに対して、フォワードモデルを選択することを含んでもよい。フォワードモデルの各々は、それぞれの地球物理学的パラメータと地球物理学的構造のRHPとの間の関係を定義する。
【0039】
複数のフォワードモデルは、関連の地球物理学的パラメータをRHPに関連付ける期待される傾向に基づいて選択することができる。例えば、複数の地球物理学的パラメータは、通常、RHPの増加に伴って、(地球物理学的パラメータに応じて)増加又は減少し得る。複数の地球物理学的パラメータの1つが密度又は地震波速度(好ましくは、地震p波速度)である場合、その地球物理学的パラメータは、RHPの増加に伴って減少し得る。複数の地球物理学的パラメータの1つが磁化率である場合、その地球物理学的パラメータは、RHPの増加に伴って増加し得る。全く同じフォワードモデルは本発明に必須ではなく、当業者は、1つ又は複数の地球物理学的パラメータとRHPとの間の関係をモデリングするために使用することができる可能なモデルに気付くであろう。実際、種々の複数のフォワードモデルを、それらのフォワードモデルが複数の地球物理学的パラメータとRHPとの間の一般傾向をモデリングすることができる限り、類似の結果を達成するために使用することができる。地球物理学的パラメータとRHPとの間の関係の説明例として、Rybach(1978)は、RHPと地震p波速度との間の指数関係
【数4】
を提案している。ただし、AはRHPであり、v
pは地震p波速度であり、a及びbは定数である。もちろん、これは単なる説明例であり、RHPと地震波速度との間の他の関係を使用することもできる。従って、上記から理解できるように、正確なフォワードモデルは、岩石物理学関係の知識に基づいて、当業者によって選択されることが可能である。
【0040】
また、上記で説明したように、RHPと各地球物理学的パラメータとの間の関係は、好ましくは、1つ又は複数のその他の地球物理学的パラメータなどのその他の変数に依存しない。もちろん、他の定係数が存在してもよいが、好ましくは、1つの変数のみが存在する。例えば、RHPと地震p波速度との間の例示的なRybach(1978)の関係に再度注目すると、RHPが依存する唯一の変数は、地震p波速度である。Rybach(1978)の上記の式の他の係数(a及びb)は、単なる定数である。従って、例示的なRybach(1978)の関係は、密度又は磁化率などの他の地球物理学的パラメータから統計的に(条件付きで)独立する。従って、それは、上記で説明したベイジアンネットワークでの使用に適している。別の言い方をすれば、そのような各フォワードモデルにおける唯一の変数は、地球物理学的構造のRHPである。
【0041】
複数のモデルがシステムの完全な複雑さを示さない場合があること、すなわち、地球物理学的パラメータがRHPのみに依存するようにモデルが意図的に単純化される場合があることを理解されたい。実際には、複数の地球物理学的パラメータは、一般に、多くの変数に依存する。しかしながら、本方法で使用される複数のモデルでは、複数の地球物理学的パラメータは、関心のある変数、この場合RHPにのみ依存することができる。
【0042】
地球物理学的構造のサンプルからの少なくとも2つの地球物理学的パラメータの各々の少なくとも1つの測定と地球物理学的構造のRHPとを含む較正データが提供されてもよい。本方法は、較正データを取得することを含むことができる。較正は、好ましくは、地球物理学的構造のサンプルからの地球物理学的パラメータの各々の複数の測定と地球物理学的構造のRHPとを含有することができる。
【0043】
インバージョンのステップは、較正データに基づいて、1つ又は複数の各フォワードモデルを最適化することを含むことができる。この最適化は、較正データを使用して、フォワードモデルの定係数の最適値を求めることを含むことができる。一般的に、較正データの量が多いほど、最適化がより良くなる。
【0044】
Rybach(1978)に提示された地球物理学的パラメータとRHPとの間の例示的な関係に再度注目すると、較正データを用いて求めることができるのは、係数a及びbである。
【0045】
複数のフォワードモデルを最適化するために、各提供された地球物理学的パラメータに対して、複数のフォワードモデル(これらは、所与のRHPからそれぞれの地球物理学的パラメータを計算する)の各々が、ある特定の誤差分布を有する(すなわち、各提供された地球物理学的パラメータと、各フォワードモデルによって計算された各地球物理学的パラメータとの間の差が、誤差分布を与える)と仮定することができる。好ましくは、各フォワードモデルの誤差分布は、好ましくは平均が0のガウス誤差分布であると仮定される。これら複数のフォワードモデルは、例えば、可能な限り0に近くなる誤差分布の平均を有することによって、及び可能な限り誤差分布の小さな分散を有することによって、誤差分布が可能な限り小さくなるように誤差分布を減少させることによって、最適化されることができる。最適化は、複数のフォワードモデルを最適化するフォワードモデルの1つ又は複数の定係数(Rybach(1978)の関係におけるa及びbなど)の1つ又は複数の値を求めることによって達成することができる。
【0046】
1つ又は複数の最適化されたフォワードモデルは、その後、インバージョンにおいて使用されることにより、より正確なインバージョンを生じさせることができる。
【0047】
各地球物理学的パラメータに対して、種々の複数のフォワードモデルが使用されてもよい。
【0048】
RHPのある特定の値を所与として、複数の地球物理学的パラメータの各々の確率分布(及び/又は平均及び/又は分散値(直接的に))を計算するために、複数のフォワードモデルがインバージョンにおいて使用されることができる(下記の式(13)を参照)。これらの確率分布関数は、複数の地球物理学的パラメータの特定の値を所与として、RHPの確率分布(及び/又は平均及び/又は分散値(直接的に))を計算するために、組み合わせることができる(下記の式(4)〜式(7)を参照)。
【0049】
地球物理学的構造の少なくとも1種類の地球物理学的データが提供されてもよく、この方法は、少なくとも1つの地球物理学的パラメータを計算するために、少なくとも1種類の地球物理学的データをインバージョンさせることを含む。同様に、地球物理学的構造の少なくとも2種類の地球物理学的データが提供されてもよく、この方法は、少なくとも2つ、3つ、4つ又は5つの地球物理学的パラメータを計算するために、少なくとも2、3、4又は5種類の地球物理学的データをインバージョンさせることを含む。
【0050】
地球物理学的パラメータが、密度、地震波速度(好ましくは、地震p波速度)、磁化率、電気伝導率、電気抵抗率又は残留磁気である場合、地球物理学的データの種類は、それぞれ、重力データ、地震データ、磁気データ又はマグネトテルリックデータであることができる。データは、地震データ収集などの知られている手法を用いて収集することができる。本方法は、地球物理学的データを収集/取得することを含むことができる。
【0051】
少なくとも1つの地球物理学的パラメータを計算するために地球物理学的データをインバージョンさせることは、単一ドメインインバージョン又は結合インバージョン(これは、2次元又は3次元インバージョンでもよい)などの知られている手法を用いて行うことができる。例えば、重力及び磁気データが密度及び磁化率へとインバージョンされる場合、標準Gravmagインバージョン手法(Geosoftソフトウェアによって提供されるものなど)を使用することができる。当業者は、地球物理学的データを地球物理学的パラメータにインバージョンさせる多数のインバージョン方法を知っており、これらは本出願で説明される必要はない。
【0052】
上記で説明したように、少なくとも1つの地球物理学的パラメータは、RHPに依存するが、好ましくは、密度、地震波速度(好ましくは、地震p波速度)、磁化率、電気伝導率、電気抵抗率若しくは残留磁気などの他の地球物理学的パラメータから独立した、又は他の地球物理学的パラメータから条件付きで独立するとしてモデリングされることが可能な任意の地球物理学的パラメータであることができる。パラメータとして表現されることが可能であり、且つRHPに依存した(及び好ましくは、その他の地球物理学的パラメータ/変数から独立しながらRHPに依存すると表現されることが可能な)地球物理学的構造のその他の特性を使用することができる。幾つものそのようなパラメータの任意の組み合わせを使用することができる。
【0053】
上記の方法は、地球物理学的構造のある特定の点/位置/体積/空間に関してRHPを計算することができ、これらの点/位置/体積/空間は、インバージョンのステップで使用される地球物理学的パラメータの点/位置/体積/空間に対応する(これらの方法で使用される1つ又は複数の地球物理学的パラメータは、地球物理学的構造中のある点/位置/体積/空間におけるそのパラメータの値でもよい)ことを認識されたい。従って、空間依存のRHP関数A(x,y,z)を取得するために、上記のインバージョン方法は、地球物理学的構造中の各点/位置/体積/空間に関して点ごとに行うことができる。認識されるように、1つ又は複数の地球物理学的パラメータは、地球物理学的構造の空間上で変化する場合があり、これは空間的に変化するRHPに対応する場合がある。
【0054】
従って、本方法は、空間依存のRHP関数A(x,y,z)を構築することを含むことができる。この関数は、地球物理学的構造中の各点/位置/体積/空間に関してRHPを計算することによって、構築することができる。RHPは、地球物理学的構造の実質的に全体にわたって、又はある特定のエリア(xy)及び深さ(z)にわたって、計算することができる。(当該分野で標準であるように、x及びy軸は互いに直交する水平方向であり、z軸は垂直方向である。)
【0055】
別の局面では、本発明は、地球物理学的構造における基礎熱流量を計算する方法であって、マントルからの熱流量寄与が提供され、地球物理学的構造の空間にわたって、上記で説明した方法のいずれかを用いて地球物理学的構造のRHPを計算することと、地球物理学的構造の空間の少なくとも一部のRHPを合計することと、RHPの合計値をマントルからの熱流量寄与に加算することと、を含む方法を提供する。
【0056】
地球物理学的構造の空間にわたるRHPは、上記で説明した空間関数A(x,y,z)であることができる。
【0057】
RHPを合計することは、ある特定の深さ範囲にわたってRHPを合計することを含むことができる。深さ範囲は、地殻の底部(すなわち、マントルの最上部の深さ)、又はリソスフェアの底部(すなわち、液状マントルの最上部の深さ)から、地殻又はリソスフェアの底部より上のある深さまでの深さであることができる。この地殻又はリソスフェアの底部より上の深さは、好ましくは、地殻又はリソスフェアの最上部であることができる。従って、RHPの合計は、地殻又はリソスフェア全体にわたるRHPの合計であることができる。この積算は、2つの深さ間のz上で、A(x,y,z)を積分することによって達成することができる。
【0058】
RHPのこのような積算は、積算の上側深さ(例えば、地殻又はリソスフェアの最上部)における2次元熱流量分布を提供する。2次元熱流量分布は、x及びyに依存してもよい。
【0059】
本方法は、基礎熱流量に対するマントル寄与を取得することを含むことができる。マントル寄与は、マントルからの対流に起因する場合がある。マントル寄与は、知られている手法及び/又は知られているソフトウェアパッケージを用いて、計算することが可能である。
【0060】
基礎熱流量は、現在の基礎熱流量であってもよい。
【0061】
別の局面では、本発明は、地表上の地表熱流量を計算する方法であって、地表熱流量に対する堆積物寄与が提供され、上記の方法の何れかを用いて基礎熱流量を計算することであって、地球物理学的構造が地殻又はリソスフェアであり、基礎熱流量が地殻又はリソスフェアの最上部で計算されることと、堆積物寄与を基礎熱流量に加算することと、を含む方法を提供する。
【0062】
堆積物は、地表上、すなわち地殻/リソスフェアの最上部上に存在する場合又は存在しない場合がある層である。堆積物層が存在しない場合、基礎熱流量の計算方法は、堆積物寄与を考慮する必要なしに(あるいは、この場合、堆積物寄与が0であると見なすことができる)、地表熱流量を計算することができる。
【0063】
堆積物層は、堆積物中の放射性元素によって、熱を産生することができる。堆積物寄与は、一般的に、約1μWm
−3であると考えられる。本方法は、堆積物寄与を計算することを含むことができる。ある地表位置における地表熱流量に対する寄与は、その地表位置における堆積層の深さを1μWm
−3で乗算することによって求めることができる。
【0064】
地表熱流量は、好ましくは、(現在のデータが計算で使用される場合には)現在の地表熱流量でもよいが、(履歴データが使用される場合には)履歴熱流量でもよい。
【0065】
好ましくは定常状態近似において、地球物理学的構造の現在の温度分布及び最大古温度の推定を取得するために、地表熱流量を使用することができる。当業者は、この計算を行うための手法に気付くであろう。
【0066】
定常状態近似とは、熱状態(熱流量及び温度分布)が時間と共に変化しないという仮定である。定常状態近似では、温度は、フーリエの法則(1次元の場合では、q=kdT/dz)によって与えられる。この場合、熱伝導率(k)及び熱流量(q)を所与として、深さの関数としての温度は、フーリエの法則の積分によって算出することができる。
【0067】
系が時間に依存する(すなわち、定常状態ではない)場合、一般には熱平衡から外れ、温度分布は、時間依存の拡散方程式(これは、フーリエの法則をエネルギー保存則と組み合わせて導出することができる)を解くことによって、算出することができる。
【0068】
本方法は、地球物理学的構造の熱履歴をモデリングすることを含むこともできる。熱履歴モデリングの場合、現在の熱流量は、運動学的復元及び熱流量履歴モデリングの照準点として使用することができる。
【0069】
別の局面では、本発明は、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法を含む、地球物理学的構造の熱及び/又は温度モデルを生成する方法を提供する。
【0070】
認識されるように、上記の方法は、炭化水素の探査を行う際に、例えば、(見込みのある)掘削作業を計画して実行する際に使用される。本方法は、炭化水素の探査を行うために、計算されたRHP、地表熱流量、温度、又は熱/温度モデルを用いることをさらに含むことができる。
【0071】
別の局面では、本発明は、コンピュータ上で実行された際に、プロセッサに上記の方法のいずれかを行わせるように構成されたコンピュータ可読命令を含むコンピュータプログラムプロダクトを提供する。