(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6912501
(24)【登録日】2021年7月12日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】自動車用差動装置およびその組み立て方法
(51)【国際特許分類】
F16H 48/08 20060101AFI20210727BHJP
【FI】
F16H48/08
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-568158(P2018-568158)
(86)(22)【出願日】2017年3月15日
(65)【公表番号】特表2019-509448(P2019-509448A)
(43)【公表日】2019年4月4日
(86)【国際出願番号】US2017022439
(87)【国際公開番号】WO2017160931
(87)【国際公開日】20170921
【審査請求日】2019年11月27日
(31)【優先権主張番号】62/308,696
(32)【優先日】2016年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517175611
【氏名又は名称】ジーケーエヌ オートモーティブ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ギャル,デイヴィッド・イー
(72)【発明者】
【氏名】カプラン,ケヴィン・ジェイ
【審査官】
前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−118658(JP,A)
【文献】
特開2014−185666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 48/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギアを自動車用差動装置のハウジング内に組み立てる方法であって、
第1のピニオンギアワッシャと第2のピニオンギアワッシャを提供することと、
第1のサイドギアワッシャと第2のサイドギアワッシャを提供することと、
1対のピニオンギアと、ピニオンシャフトを少なくとも部分的に前記ハウジング内部に配置し、1対のサイドギアを少なくとも部分的に前記内部に配置し、前記ピニオンギアとかみ合わせることと、
前記第1のピニオンギアワッシャを前記ハウジングと前記ピニオンギアの1つとの間に据え、前記第2のピニオンギアワッシャを前記ハウジングと前記ピニオンギアの他方との間に据えることと、
前記第1のサイドギアワッシャを前記ハウジングと前記サイドギアの1つとの間に据え、前記第2のサイドギアワッシャを前記ハウジングと前記サイドギアの他方との間に据えることと、
を含み、
実際のサイドギアの頂点位置を決定し、前記実際のサイドギアの頂点位置と目標とするサイドギアの頂点位置とを比較し、前記実際の位置と目標とする位置が第1の閾値を超えて異なる場合は、前記第1のサイドギアワッシャと前記第2のサイドギアワッシャの1つまたは両方の厚さを選択し、前記実際のサイドギアの頂点位置を前記目標とする位置から前記第1の閾値内の位置まで移動させることと、
実際のピニオンギアの頂点位置を決定し、前記実際のピニオンギアの頂点位置と目標とするピニオンギアの頂点位置とを比較し、前記実際の位置と目標とする位置が第2の閾値を超えて異なる場合は、前記第1のピニオンギアワッシャと前記第2のピニオンギアワッシャの1つまたは両方の厚さを選択し、前記実際のピニオンギアの頂点位置を前記目標とする位置から前記第2の閾値内の位置まで移動させることと、
のうちの少なくとも1つを実施することを含み、
前記目標とするピニオンギアの頂点位置および目標とするサイドギアの頂点位置を、前記ピニオンギア上の切歯とサイドギア上の切歯との間の前記かみ合いに応じて決定する、方法。
【請求項2】
ギアを自動車用差動装置のハウジング内に組み立てる方法であって、
第1のピニオンギアワッシャと第2のピニオンギアワッシャを提供することと、
第1のサイドギアワッシャと第2のサイドギアワッシャを提供することと、
1対のピニオンギアと、ピニオンシャフトを少なくとも部分的に前記ハウジング内部に配置し、1対のサイドギアを少なくとも部分的に前記内部に配置し、前記ピニオンギアとかみ合わせることと、
前記第1のピニオンギアワッシャを前記ハウジングと前記ピニオンギアの1つとの間に据え、前記第2のピニオンギアワッシャを前記ハウジングと前記ピニオンギアの他方との間に据えることと、
前記第1のサイドギアワッシャを前記ハウジングと前記サイドギアの1つとの間に据え、前記第2のサイドギアワッシャを前記ハウジングと前記サイドギアの他方との間に据えることと、
を含み、
実際のサイドギアの頂点位置を決定し、前記実際のサイドギアの頂点位置と目標とするサイドギアの頂点位置とを比較し、前記実際の位置と目標とする位置が第1の閾値を超えて異なる場合は、前記第1のサイドギアワッシャと前記第2のサイドギアワッシャの1つまたは両方の厚さを選択し、前記実際のサイドギアの頂点位置を前記目標とする位置から前記第1の閾値内の位置まで移動させることと、
実際のピニオンギアの頂点位置を決定し、前記実際のピニオンギアの頂点位置と目標とするピニオンギアの頂点位置とを比較し、前記実際の位置と目標とする位置が第2の閾値を超えて異なる場合は、前記第1のピニオンギアワッシャと前記第2のピニオンギアワッシャの1つまたは両方の厚さを選択し、前記実際のピニオンギアの頂点位置を前記目標とする位置から前記第2の閾値内の位置まで移動させることと、
のうちの少なくとも1つを実施することを含み、
前記第1のサイドギアの前記目標とするサイドギアの頂点位置は、前記第1のサイドギアワッシャが受容される前記ハウジングの壁から、前記ピニオンシャフトの軸までの距離に応じて決定され、
前記第1のピニオンギアの前記目標とするピニオンギアの頂点位置は、前記第1のピニオンギアワッシャが受容される前記ハウジングの壁から、前記ピニオンシャフトの軸に垂直な前記ハウジングの軸までの距離に応じて決定される、方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、
1)前記第1のサイドギアワッシャと前記第2のサイドギアワッシャの1つまたは両方の厚さを前記実際のサイドギアの頂点位置に応じて選択することと、2)前記第1のピニオンギアワッシャと前記第2のピニオンギアワッシャの1つまたは両方の厚さを前記実際のピニオンギアの頂点位置に応じて選択することの両方を実施する、方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法であって、前記第1の閾値は0.01mmから0.03mmである、方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法であって、前記第2の閾値は0.01mmから0.03mmである、方法。
【請求項6】
自動車用差動装置であって、
内部を有するハウジングと、
前記内部に位置し、ピニオンシャフト上に取り付けられる1対のピニオンギアと、
前記内部に位置し、前記自動車用差動装置の使用中に前記ピニオンギアとかみ合う1対のサイドギアと、
前記ハウジングと、前記ピニオンギアの1つとの間に据えられる第1のピニオンギアワッシャと、前記ハウジングと前記ピニオンギアの他方との間に据えられる第2のピニオンギアワッシャと、
前記ハウジングと、前記サイドギアの1つとの間に据えられる第1のサイドギアワッシャと、前記ハウジングと前記サイドギアの他方との間に据えられる第2のサイドギアワッシャと、
を備え、
前記第1および第2のピニオンギアワッシャの厚さ寸法は、少なくとも、ピニオンギアの頂点軸に沿って、サイドギアの頂点軸に相対的に位置する、目標とするピニオンギアの頂点位置に基づいて選択され、前記第1および第2のサイドギアワッシャの厚さ寸法は、少なくとも、前記サイドギアの頂点軸に沿って、前記ピニオンギアの頂点軸に相対的に位置する、目標とするサイドギアの頂点位置に基づいて選択される、自動車用差動装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2016年3月15日出願の米国仮特許出願第62/3089,696号の利益を主張し、その全内容は本出願に参照により組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、一般に、自動車で用いられる差動装置、およびその組み立て方法に関する。
【背景技術】
【0003】
一般に、自動車用動力伝達装置は、トルクをエンジンから一式の車輪に伝達する。自動車用動力伝達装置は、通常、前車軸のサイドシャフト間、後車軸のサイドシャフト間、または両車軸のサイドシャフト間に差動装置を備える。各車軸は、一般に、左サイドシャフトと、右サイドシャフトとを含む。特に、オープンデフでは、1つのサイドシャフト上の車輪は別のサイドシャフト上の車輪よりも速く、または遅く回転することができる。これは、たとえば、自動車がコーナーを回っているときに発生する。差動装置はまた、駆動されたトルクをサイドシャフト間に割り当てる。四輪駆動(AWD)車用動力伝達装置は、前車軸と後車軸の間にも差動装置を備え、その間で同様の機能を実施することができる。
【0004】
さらに、一部の自動車用動力伝達装置は、切断機能を備える。切断機能では、切断された構成部品は、構成部品間でトルクを伝達するためにもはや駆動されない。この機能によって、特定の時間にトルク伝達を必要としない自動車用動力伝達装置の領域から、駆動トルクを排除することができる。たとえば、オンデマンドのAWD動力伝達装置は、すべてのシャフト間で常にトルクを伝達するわけではない。トルクを伝達しないシャフトは切断され、必ずしもシャフトが接続されているときと同様に回転するわけではない。切断機能によって燃費が向上し、排気が低減し、さらに別の性能強化が提供されることが分かっている。
【発明の概要】
【0005】
少なくとも1つの実装では、ギアを自動車用差動装置のハウジングに組み立てる方法は、
第1のピニオンギアワッシャと第2のピニオンギアワッシャの厚さ寸法を選択することと、
第1のサイドギアワッシャと第2のサイドギアワッシャの厚さ寸法を選択することと、
1対のピニオンギアと、ピニオンシャフトを少なくとも部分的にハウジング内部に配置し、1対のサイドギアを少なくとも部分的に内部に配置し、ピニオンギアとかみ合わせることと、
第1のピニオンギアワッシャをハウジングとピニオンギアの1つとの間に据え、第2のピニオンギアワッシャをハウジングとピニオンギアの他方との間に据えることと、
第1のサイドギアワッシャをハウジングとサイドギアの1つとの間に据え、第2のサイドギアワッシャをハウジングとサイドギアの他方との間に据えることとを含む。第1および第2のサイドギアワッシャの厚さ寸法の選択は、少なくとも部分的に、サイドギアの頂点軸に沿って、ピニオンギアの頂点軸に相対的に位置する、目標とするサイドギアの頂点位置に基づいていてもよい。第1および第2のピニオンギアワッシャの厚さ寸法の選択は、少なくとも部分的に、ピニオンギアの頂点軸に沿って、サイドギアの頂点軸に相対的に位置する、目標とするピニオンギアの頂点位置に基づいてもよい。
【0006】
少なくとも一部の実装では、本方法は、実際のサイドギアの頂点位置を決定し、実際のサイドギアの頂点位置と目標とするサイドギアの頂点位置とを比較するステップと、実際の位置と目標とする位置が第1の閾値を超えて異なる場合は、第1のサイドギアワッシャおよび第2のサイドギアワッシャの1つまたは両方を異なる厚さを有するワッシャに変更し、実際のサイドギアの頂点位置を移動するステップとを含んでいてもよい。また、本方法は、サイドギアの頂点位置に対する前述の比較と組み合わせて、またはそれとは別に、実際のピニオンギアの頂点位置を決定し、実際のピニオンギアの頂点位置と目標とするピニオンギアの頂点位置とを比較するステップと、実際の位置と目標とする位置が第2の閾値を超えて異なる場合は、第1のピニオンギアワッシャおよび第2のピニオンギアワッシャの1つまたは両方を異なる厚さを有するワッシャに変更し、実際のピニオンギアの頂点位置を移動するステップとを含んでいてもよい。第1および第2の閾値の1つまたは両方は、0.01mmから0.03mmの間であってもよい。目標とするピニオンギアの頂点位置および目標とするサイドギアの頂点位置は、ピニオンギア上の切歯とサイドギア上の切歯とのかみ合いに応じて決定されてもよい。
【0007】
少なくとも一部の実装では、第1のサイドギアの目標とするサイドギアの頂点位置は、第1のサイドギアワッシャが受容されるハウジングの壁から、ピニオンシャフトの軸までの距離に応じて決定される。同様に、第1のピニオンギアの目標とするピニオンギアの頂点位置は、第1のピニオンギアワッシャが受容されるハウジングの壁から、ピニオンシャフトの軸に垂直なハウジングの軸までの距離に応じて決定されてもよい。
【0008】
自動車用差動装置は、少なくとも一部の実装では、内部を有するハウジングと、内部に位置し、ピニオンシャフト上に取り付けられる1対のピニオンギアと、内部に位置し、自動車用差動装置の使用中にピニオンギアとかみ合う1対のサイドギアと、ハウジングとピニオンギアの1つとの間に据えられる第1のピニオンギアワッシャと、ハウジングとピニオンギアの他方との間に据えられる第2のピニオンギアワッシャと、ハウジングとサイドギアの1つとの間に据えられる第1のサイドギアワッシャと、ハウジングとサイドギアの他方との間に据えられる第2のサイドギアワッシャとを含んでいてもよい。第1および第2のピニオンギアワッシャの厚さ寸法は、少なくとも、ピニオンギアの頂点軸に沿って、かつサイドギアの頂点軸に相対的に位置する、目標とするピニオンギアの頂点位置に基づいて選択される。第1および第2のサイドギアワッシャの厚さ寸法は、少なくとも、サイドギアの頂点軸に沿って、かつピニオンギアの頂点軸に相対的に位置する、目標とするサイドギアの頂点位置に基づいて選択される。第1のサイドギアワッシャは、第2のサイドギアワッシャと同じ厚さを有していてもよく、異なる厚さを有していてもよい。第1のピニオンギアワッシャは、第2のサイドピニオンワッシャと同じ厚さを有していてもよく、異なる厚さを有していてもよい。
【0009】
好ましい実装および最良の態様の以下の詳細な説明を添付図に関連して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】自動車用差動装置の実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図を詳細に参照すると、自動車用差動装置10は、差動装置機能を前車軸のサイドシャフト間、後車軸のサイドシャフト間、または前車軸と後車軸の両方のサイドシャフト間で実行するために、四輪駆動(AWD)自動車用動力伝達装置に備えられてもよい。ピニオンギアの頂点軸とサイドギアの頂点軸の両方に沿って間隔の調整を行うことによって、それぞれのギアの頂点を、目標とするギアの頂点位置に向かって移動させ、自動車用差動装置10のピニオンの切歯およびサイドギアの切歯それぞれのかみ合い点を最適化する効果が得られる。このように製造公差およびその他の欠陥が調整され、自動車用差動装置10の高速回転切断モードにおいて起こり得る騒音、振動、およびハーシュネス(NVH)問題は完全に解決されないにしても、最小化される。
【0012】
一般に、自動車用差動装置10は、影響し得る要因の中でも、大型のAWD自動車用動力伝達装置の構造、動力伝達装置の上流および下流構成部品、梱包要件、およびトルク出力要求に応じて、様々な設計および構成を有することができる。たとえば、自動車用差動装置は、2以上のピニオンギアを有していてもよく、3または4以上のピニオンギアを有していてもよい。図に示す実施形態では、自動車用差動装置10はオープンデフであり、ハウジング12と、第1のピニオンギア14と、第2のピニオンギア16と、第1のサイドギア18と、第2のサイドギア20とを含む。さらに、上記より多く、少なく、および/または異なる構成部品が別の実施形態に含まれていてもよい。ハウジング12は、リングギアなどの入力ギアを外側に含んでいてもよい。入力ギアは、AWD自動車用動力伝達装置のプロペラシャフトの上流出力ギアなどと係合する。駆動されると、ハウジング12は軸Aの回りを回転する。ハウジング12は、壁に窓を有していてもよい。窓からギア14、16、18、20の部分を見ることができ、ギアをハウジング12の内部22で組み立てて設置するための入口を提供する。内部22では、ハウジング12はピニオンギア14、16を受容するために適した空洞、およびサイドギア18、20を内部に受容するために適した空洞を画定する。
【0013】
第1および第2のピニオンギア14、16および第1および第2のサイドギア18、20は互いに相互作用し、自動車用差動装置の機能を実行する。各ギア14、16、18、20は、外側の周囲に形成される一式の切歯を有する。本実施形態では、自動車用差動装置10の組み立ておよび使用において、第1のピニオンギア14の切歯は、第1および第2のサイドギア18、20の切歯とかみ合う。同様に、第2のピニオンギア16の切歯は、第1および第2のサイドギア18、20の切歯とかみ合う。第1および第2のピニオンギア14、16はピニオンシャフト24上に取り付けられる。ピニオンシャフト24は、中心軸21を有し、差動装置ハウジングの対向する開口23に取り付けられる。第1のサイドギア18は、第1のサイドシャフトと接続するための一式の内部スプライン25を有し、その端部はハウジング12の開口27内に受容される。第2のサイドギア20は、第2のサイドシャフトと接続するための一式の内部スプライン29を有し、その端部は概ね対向するハウジングの開口31内に受容される。
【0014】
第1および第2のピニオンギア14、16および第1および第2のサイドギア18、20のそれぞれの切歯は、切歯から頂点まで先細になる想像上の円錐形を画定するギアの幾何学形となるように設計および構成される。一般に、正確なギアの幾何学形は、可能性のある要因の中でも、具体的なギアセットに必要な耐久性およびトルク伝達要求によって決定することができる。ここで
図2を参照すると、本実施例では、第1のピニオンギア14によって画定される想像上の円錐形は、想像上の切歯のピッチ線Bによって表示される。線Bは、互いに向かって収束し、第1のピニオンギアの頂点Cで交差する。さらに、
図2の実施例では、第1のサイドギア18によって画定される想像上の円錐形は、想像上の切歯ピッチ線Dによって表示される。線Dは互いに向かって収束し、第1のサイドギアの頂点Eで交差する。
図2には示さないが、第2のピニオンギア16も同様に想像上の円錐形および第2のピニオンギアの頂点を画定し、第2のサイドギア20も同様に想像上の円錐形および第2のサイドギアの頂点を画定しえる。
【0015】
組み立ておよび設置のために、第1のピニオンギア14は、第1および第2のサイドギア18、20に向かって、または第1および第2のサイドギア18、20から離れて移動可能であり、および/または第1のサイドギア18は第1および第2のピニオンギア14、16に向かって、または第1および第2のピニオンギア14、16から離れて移動可能である。同様に、第2のピニオンギア16は、第1および第2のサイドギア18、20に向かって、または第1および第2のサイドギア18、20から離れて移動可能であり、および/または第2のサイドギア20は、第1および第2のピニオンギア14、16に向かって、または第1および第2のピニオンギア14、16から離れて移動可能である。これらの移動によって、ギア切歯のかみ合い深さが達成される。たとえば、
図2で第1のピニオンギア14が第1のサイドギア18にわずかに近づくにつれて、第1のピニオンギアの頂点Cの位置は、ピニオンギアの頂点軸Fに沿って垂直に下方に移動し、第1のピニオンギア14の切歯は、第1のサイドギア18の切歯とより深くかみあう(つまり、互いのかみ合いはより深くなる)。これは、第1のピニオンギア14と第2のサイドギア20の切歯でも同様である。第1のピニオンギア14が第1のサイドギア18からわずかに離れるにつれて、第1のピニオンギアの頂点Cの位置はピニオンギアの頂点軸Fに沿って、垂直に上方に移動し、第1のピニオンギア14の切歯は、第1のサイドギア18の切歯とより浅くかみ合う(つまり、互いのかみ合いは浅くなる)。これは、第1のピニオンギア14と第2のサイドギア20の切歯でも同様である。さらに、
図2で第1のサイドギア18が第1のピニオンギア14にわずかに近づくにつれて、第1のサイドギアの頂点Eの位置は、水平に左側にサイドギアの頂点軸Gに沿って移動し、第1のサイドギア18の切歯は、第1のピニオンギア14の切歯とより深くかみ合う。これは第1のサイドギア18と第2のピニオンギア16の切歯でも同様である。第1のサイドギア18が第1のピニオンギア14からわずかに離れるにつれて、第1のサイドギアの頂点Eの位置は、水平に右側にサイドギアの頂点軸Gに沿って移動し、第1のサイドギア18の切歯は、第1のピニオンギア14の切歯とより浅くかみ合う。これは、第1のサイドギア18および第2のピニオンギア16の切歯でも同様である。
【0016】
かみ合い点の最適化は、一般に、耐久性要件およびトルク伝達要求が満たされ、不要なNVH問題が最小化されるギア切歯のかみ合い深さに関わる。この条件はさらに、製造公差および差動装置構成部品の欠陥によって複雑になる。過去には、かみあい点の最適化は、切断機能および切断された構成部品を持たない比較的通常の操作モードにおいて、ピニオンおよびサイドギアが低回転速度で回転している間に発生するNVH問題のみの原因となっていた。これは、個々の切歯間の所望の反発度または間隔の最適化を意味することが多く、サイドギアをわずかにピニオンギアに近づけ、またはピニオンギアから離すためにサイドギアワッシャの厚さ寸法を選択することによって実現され得る。このわずかな移動は、不可避であることが多い製造公差および差動装置構成部品の欠陥にも関わらず、ギア切歯の所望する最適なかみ合い点を実現することを目的とする。サイドギアワッシャの厚さおよび付随するサイドギアの移動によって、サイドギアは単一のサイドギア軸に沿って間隔が調整される。
【0017】
通常の操作モードの低回転速度で生じるNVHが満足いくものである一方、単一のサイドギア軸に沿ってサイドギアの高さをそろえることは、いかなる場合であっても切断された構成部品を用いて切断モードであるときに、ピニオンおよびサイドギアがより速い回転速度で回転する時に発生するNVH問題の原因となるものではない。一例として、切断機能は、サイドギアの1つに接続するサイドシャフトの1つに装備されてもよい。切断モードでは、切断機能のないサイドシャフトは、自動車が走行するのに伴って地上を走行する付随車輪のために、いずれにしても回転し、それによって、接続するサイドギアもまた回転する。切断されたサイドシャフトを有する対向するサイドギアは、次に、反対の回転方向に回転する。このように、サイドギアおよびピニオンギアは、切断モード中に回転しているサイドシャフトおよび走行する車輪によって生じる回転速度で回転し、対向するサイドギアは反対の回転方向に回転する。この回転速度は、非切断モードの回転速度より速いことが多い。その結果として、より速い回転速度および反対の回転方向で発生するNVHは、低回転速度で発生するNVHより激しいこともあり、より正確なかみ合い点の最適化が必要であることが分かっている。
【0018】
NVH問題を解決し、より正確なかみ合い点の最適化を実現するために、サイドギアワッシャとピニオンギアワッシャ両方の厚さ寸法は、所定の目標とするギアの頂点位置に基づいて選択可能である。つまり、後述するように、ギアの頂点軸に沿った所定の目標とするギアの頂点位置にしたがって、第1のサイドギアワッシャ26、第2のサイドギアワッシャ28、第1のピニオンギアワッシャ30、および第2のピニオンギアワッシャ32を用いて、サイドギア18、20をサイドギア軸(または
図2のサイドギアの頂点軸G)に沿って間隔を調整し、ピニオンギア14、16をピニオンギア軸(または
図2のピニオンギアの頂点軸F)に沿って間隔を調整する。ワッシャの厚さおよび付随するギアの移動によって、ギアは両面およびピニオンギア軸に沿って間隔が調整される。
【0019】
図1に例示するように、第1のピニオンギアワッシャ30は、ハウジング12の第1の内部壁33と第1のピニオンギア14との間に位置する。第2のピニオンギアワッシャ32は、ハウジング12の第2の内部壁35と第2のピニオンギア16との間に位置する。第1および第2のピニオンギアワッシャ30、32は、球形の円板型、または別の種類のワッシャであってもよい。一方、第1のサイドギアワッシャ26は、ハウジング12の第3の内部壁37と第1のサイドギア18との間に位置する。第2のサイドギアワッシャ28は、ハウジング12の第4の内部壁39と第2のサイドギア20との間に位置する。第1および第2のサイドギアワッシャ26、28は、スラストワッシャ型、または別の種類のワッシャであってもよい。
【0020】
記載したように、サイドギアワッシャ26、28およびピニオンギアワッシャ30、32の厚さ寸法は、目標とするギアの頂点位置に基づいて選択される。また、その他の要因によって、ワッシャの正確な厚さ寸法が決定されることもある。目標とするギアの頂点位置は、一般に、ギアの頂点軸に沿った位置であり、その位置においてかみ合い点の最適化条件がそれぞれのギア切歯間で確立される。たとえば、再度
図2を参照すると、第1のピニオンギアの頂点Cが目標とする第1のピニオンギアの頂点位置になり、第1のサイドギアの頂点Eが目標とする第1のサイドギアの頂点位置になると、第1のピニオンギア14の切歯と第1のサイドギア18の切歯とのかみ合いは、耐久性要件およびトルク伝達要求を満たすものとなり、切断された構成部品を用いる切断モード中に、より速い回転速度で回転していても、不要なNVH問題は完全に解決されないにしても、最小化される。
【0021】
図2では、目標とする第1のピニオンギアの頂点位置を、ピニオンギアの頂点軸Fに沿って第1のピニオンギアの頂点Cに位置する点として示すが、必ずしも単一の点として構成されなくてもよい。その代わりに、第1および第2の境界線の間に広がり、第1および第2の境界線によって限定される点の範囲(つまり区域)であってもよい(たとえば、
図2に示すように、ピニオンギアの頂点軸Fの垂直に上方および下方の位置境界線であり、点L
1およびL
2で表す)。同様に、
図2では、目標とする第1のサイドギアの頂点位置を、サイドギアの頂点軸Gに沿って第1のサイドギアの頂点Eに位置する点として示すが、必ずしも単一の点として構成されなくてもよい。その代わりに、第1および第2の境界線の間に広がり、第1および第2の境界線によって限定される点の範囲(つまり区域)であってもよい(たとえば、
図2に示すように、サイドギアの頂点軸Gの水平方向右側および左側の位置境界線であり、点L
3およびL
4で表す)。
【0022】
さらに
図2を参照すると、かみ合い点の最適化条件がピニオンギア14、16とサイドギア18、20間で確立されない場合、サイドギアワッシャ26、28の厚さおよびピニオンギアワッシャ30、32の厚さは、かみ合い点の最適化条件を満たすように変動してもよい。ここで、サイドギアワッシャ26、28の厚さは、互いに同じ厚さ寸法を有するように、共に修正することができる。または互いに異なる厚さ寸法を有するように個別に修正することもできる。同様に、ピニオンギアワッシャ30、32の厚さも、互いに同じ厚さ寸法を有するように、共に修正することができる。または互いに異なる厚さ寸法を有するように個別に修正することもできる。かみ合い点の最適化条件がギアセットで満たされているかを判断する1つの方法は、NVH試験を行うことである。
【0023】
実証のために実施例を簡略化し、第1のピニオンギア14および第1のサイドギア18のみを参照する。第1のピニオンギアの頂点Cが目標とする第1のピニオンギアの頂点位置の境界線外側にあると判断される場合、第1のピニオンギアワッシャ30の厚さを増加して、必要に応じて、第1のピニオンギアの頂点Cの位置を垂直方向下方にピニオンギアの頂点軸Fに沿って(たとえば
図2の点C
1まで)移動して、第1のピニオンギアの頂点Cが、目標とする第1のピニオンギアの頂点位置の境界線内部に来るようにしてもよい。反対に、第1のピニオンギアワッシャ30の厚さを薄くして、必要に応じて、第1のピニオンギアの頂点Cを垂直方向上方にピニオンギアの頂点軸Fに沿って(たとえば点C
2まで)移動して、第1のピニオンギアの頂点Cを目標とする第1のピニオンギアの頂点位置の境界線の内部に来るようにしてもよい。同様に、第1のサイドギアの頂点Eが目標とする第1のサイドギアの頂点位置の境界線外側にあると判断される場合、第1のサイドギアワッシャ26の厚さを増加して、必要に応じて、第1のサイドギアの頂点Eの位置を水平方向左側にサイドギアの頂点軸Gに沿って(たとえば点E
1まで)移動して、第1のサイドギアの頂点Eを目標とする第1のサイドギアの頂点位置の境界線の内部に来るようにしてもよい。反対に、第1のサイドギアワッシャ26の厚さを薄くして、第1のサイドギアの頂点Eの位置を水平方向右側にサイドギアの頂点軸Gに沿って(たとえば点E
2まで)移動してもよい。
【0024】
目標とするサイドギアの頂点位置を、サイドギアの寸法と、ピニオンギアの寸法と、ギアが受容されるハウジング内部22の形状とに応じて決定してもよい。サイドギアの寸法はサイドギア切歯の形状および構成を含み、ピニオンギアの寸法はピニオンギア切歯の形状および構成を含む。たとえば、第1のサイドギアワッシャ26の厚さは、少なくとも部分的に、第3の内部壁37からピニオンシャフト24の軸21までの距離に応じて選択されてもよい。同様に、非限定的な例として、第2のサイドギアワッシャ28の厚さは、少なくとも部分的に、第4の内部壁39からピニオンシャフト24の軸21までの距離に応じて選択されてもよい。所望の場合は、第3と第4の内部壁37、39間(ワッシャ26、28が重なる区域)の総距離を用いてもよい。同様に、非限定的な例として、第1のピニオンギアワッシャ30の厚さは、少なくとも部分的に、第1の内部壁33から軸Aまでの距離に応じて選択されてもよい。同様に、非限定的な例として、第2のピニオンギアワッシャ32の厚さは、少なくとも部分的に、第2の内部壁35から軸Aまでの距離に応じて選択されてもよい。所望の場合は、第1と第2の内部壁33、35間(ワッシャ30、32が重なる区域)の総距離を用いてもよい
【0025】
このように、ギアを自動車用差動装置のハウジング内に組み立てる方法は、第1のピニオンギアワッシャおよび第2のピニオンギアワッシャの厚さ寸法を選択することと、第1のサイドギアワッシャおよび第2のサイドギアワッシャの厚さ寸法を選択することを含んでいてもよい。1対のピニオンギアおよびピニオンシャフトは、少なくとも部分的にハウジングの内部に配置されてもよく、1対のサイドギアもまた、少なくとも部分的に内部に配置され、ピニオンギアとかみ合ってもよい。第1のピニオンギアワッシャは、ハウジングとピニオンギアのうちの1つとの間に受容されてもよく、第2のピニオンギアワッシャは、ハウジングと他方のピニオンギアとの間に受容されてもよい。第1のサイドギアワッシャは、ハウジングとサイドギアのうちの1つとの間に受容されてもよく、第2のサイドギアワッシャは、ハウジングと他方のサイドギアとの間に受容されてもよい。
【0026】
少なくとも一部の実装では、第1および第2のサイドギアワッシャの厚さは、少なくとも、サイドギアの頂点軸に沿って、ピニオンギアの頂点軸に相対的に位置する、目標とするサイドギアの頂点位置に基づいて選択されてもよい。実際のサイドギアの頂点位置は、ハウジングに設置された際の実際のギアおよびワッシャの相対的な位置によって決定された位置である。この実際のサイドギアの頂点位置は決定または推測され、目標とするサイドギアの頂点位置と比較されてもよい。実際のサイドギアの頂点位置と目標とする位置が第1の閾値を超えて異なる場合は、第1のサイドギアワッシャと第2のサイドギアワッシャの1つまたは両方を異なる厚さを有するワッシャに変更し、実際のサイドギアの頂点位置を、目標とする位置に近づけて、または目標とする位置になるようにしてもよい。第1の閾値は、部品の生産工程を通した部品間のばらつき/公差の一定の程度を許容するように選択されてもよい。少なくとも一部の実装では、第1の閾値は0.01から0.03mmであってもよい。
【0027】
少なくとも一部の実装では、第1および第2のピニオンギアワッシャの厚さは、少なくとも、ピニオンギアの頂点軸に沿って、サイドギアの頂点軸に相対的に位置する、目標とするピニオンギアの頂点位置に基づいて選択されてもよい。実際のピニオンギアの頂点位置は、ハウジングに設置された際の実際のギアおよびワッシャの相対的な位置によって決定された位置である。この実際のピニオンギアの頂点位置は決定または推測され、目標とするピニオンギアの頂点位置と比較されてもよい。実際のピニオンギアの頂点位置と目標とする位置が第2の閾値を超えて異なる場合は、第1のピニオンギアワッシャと第2のピニオンギアワッシャの1つまたは両方を異なる厚さを有するワッシャに変更し、実際のピニオンギアの頂点位置を、目標とする位置に近づけて、または目標とする位置になるようにしてもよい。第2の閾値は、部品の生産工程を通した部品間のばらつき/公差の一定の程度を許容するように選択されてもよい。少なくとも一部の実装では、第2の閾値は0.01mmから0.03mmであってもよい。
【0028】
上記の説明は例示を目的とし、限定することを目的とするわけではないことを理解されたい。提示した例示以外の多くの実施形態および適用は、上記の説明により当業者には明らかであろう。本発明の範囲は上記を参照するのではなく、添付請求項および請求項に権利が与えられる同等物の全範囲とを参照して、決定されるべきである。本明細書で論じる技術に将来発展が生じると予測および意図され、開示するアセンブリおよび方法はそのような将来の実施形態に組み込まれる。全体として、本発明は、以下の請求項によってのみ限定される修正および変形が可能であることに留意されたい。
【0029】
請求項で用いるすべての用語は、本明細書で反対の指示がない限り、当業者が理解する最大に広範な合理的構造および通常の意味を提供するように意図される。特に、請求項によって反対の限定を明示しない限り、単数を意味する「1つの」、「その」、「前記」などは、指示された要素の1または複数を記載するものと読まれるべきである。