(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6912561
(24)【登録日】2021年7月12日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】血液を伴う試料をイメージングするための方法および関連装置
(51)【国際特許分類】
A61B 8/06 20060101AFI20210727BHJP
【FI】
A61B8/06ZDM
【請求項の数】15
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-514807(P2019-514807)
(86)(22)【出願日】2017年9月15日
(65)【公表番号】特表2019-528895(P2019-528895A)
(43)【公表日】2019年10月17日
(86)【国際出願番号】EP2017073271
(87)【国際公開番号】WO2018050817
(87)【国際公開日】20180322
【審査請求日】2020年6月23日
(31)【優先権主張番号】16306185.6
(32)【優先日】2016年9月16日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(73)【特許権者】
【識別番号】595040744
【氏名又は名称】サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(73)【特許権者】
【識別番号】515232158
【氏名又は名称】エコール・スーペリウール・ドゥ・フィジック・エ・ドゥ・シミ・アンデュストリエル・ドゥ・ラ・ビル・ドゥ・パリ
(73)【特許権者】
【識別番号】508266546
【氏名又は名称】ユニベルシテ パリ ディドロ−パリ 7
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS DIDEROT−PARIS 7
(73)【特許権者】
【識別番号】518059934
【氏名又は名称】ソルボンヌ・ユニヴェルシテ
【氏名又は名称原語表記】SORBONNE UNIVERSITE
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】レンケイ,ジョルト
(72)【発明者】
【氏名】ペルノット,マテュー
(72)【発明者】
【氏名】タンテル,ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】デフュ,トマ
【審査官】
冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】
特表2004−506466(JP,A)
【文献】
国際公開第2002/015775(WO,A2)
【文献】
特開2016−015315(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第02963672(EP,A1)
【文献】
特開平03−231650(JP,A)
【文献】
特表平08−506656(JP,A)
【文献】
国際公開第1994/011756(WO,A1)
【文献】
特開2004−283474(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第01462819(EP,A2)
【文献】
特表2011−526181(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/158399(WO,A1)
【文献】
特開平03−215250(JP,A)
【文献】
特開平03−176036(JP,A)
【文献】
特表2004−500915(JP,A)
【文献】
国際公開第2001/080714(WO,A2)
【文献】
特開平10−314171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 − 8/15
G01N 29/00 − 29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料(10)をイメージングするための方法であって、試料(10)が拡散体を含む血液(14)および固形組織(16)を含み、方法が、:
−以下の作業:
−時間間隔内の非集束超音波の数の割合が毎秒100非集束超音波以上であって、対象の領域内の非集束超音波が時間間隔中に放射される放射作業と、
−所与の対象の領域の拡散体からの再帰反射波が収集される収集作業と、
−各観測値が信号を対象の領域の各場所と関連付ける異なるかつ部分的に空間的に無相関化された点拡がり関数によって特徴付けられ、信号が場所内の血管の拡散体に対応する第一の寄与、組織拡散体に対応する第二の寄与および場所の外側の血液拡散体と関連付けられる血液信号に対応する第三の寄与を含み、第二および第三の寄与が望ましくない、対象の領域の異なる観測値が収集された再帰反射波に基づいて生成される画像形成作業とを含み、
イメージング工程が対象の領域のM個の時間的実行の観測値セットを取得するためにM回反復され、Mが10以上であるイメージング工程と、
−観測値セットの各々の第二の寄与を低減するためのフィルタリング工程と、
−対象の領域の各場所ごとに血流信号が推定される推定工程とを含み、推定工程が以下の作業:
−第一の寄与および第三の寄与を区別するために各セットの観測値に統計解析を適用することと、
−第一の寄与に基づいて血流信号の成分の推定値を計算することと
を含む方法。
【請求項2】
放射および収集作業が超音波振動子の行−列アレイを使用することによって実行される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
時間間隔内の非集束超音波の数の比率が毎秒500非集束超音波以上である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
観測値の数が観測値の各セットに対して同じである、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
観測値のセットの数が2個に等しい、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
放射および収集作業が超音波振動子のアレイを使用することによって実行され、超音波振動子のアレイが1次元アレイ、2次元アレイおよびスパースアレイのうちの一つである、請求項1記載の方法。
【請求項7】
放射および収集作業が超音波振動子の二つの直交アレイを使用することによって実行される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
適用する作業の際、統計解析が主成分分析、特異値分解および独立成分分析の中から選択される、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
統計解析を適用する作業が対の観測値間の共役積を推定することを含む、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
統計解析を適用する作業が観測値の共分散の推定値を計算することを含む、請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
整数Mが20以上である、請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
血液散乱体が音響造影剤である、請求項1〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
生体試料(10)をイメージングするためのイメージング装置(12)であって、試料(10)が拡散体を含む血液(14)および固形組織(16)を含み、イメージング装置(12)が以下の作業:
−時間間隔内の非集束超音波の数の割合が毎秒100非集束超音波以上であって、対象の領域内の非集束超音波が時間間隔中に放射される放射作業と、
−所与の対象の領域の拡散体からの再帰反射波が収集される収集作業と、
−各観測値が信号を対象の領域の各場所と関連付ける異なるかつ部分的に空間的に無相関化された点拡がり関数によって特徴付けられ、信号が場所内の血管の拡散体に対応する第一の寄与、組織拡散体に対応する第二の寄与および場所の外側の血液拡散体と関連付けられる血液信号に対応する第三の寄与を含み、第二および第三の寄与が望ましくない、対象の領域の異なる観測値が収集された再帰反射波に基づいて生成される画像形成作業とを含むイメージング工程を実行するために適合された超音波イメージャ(22)を含み、
イメージング工程が対象の領域のM個の時間的実行の観測値セットを取得するためにM回反復され、Mが10以上であり、
イメージング装置(12)が:
−観測値セットの各々の第二の寄与を低減するためのフィルタリング工程と、
−対象の領域の各場所ごとに血流信号が推定される推定工程とを実行するために適合された計算機(23)をさらに含み、推定工程が以下の作業:
−第一の寄与および第三の寄与を区別するために各観測値セットに統計解析を適用することと、
−第一の寄与に基づいて血流信号の成分の推定値を計算することと
を含むイメージング装置。
【請求項14】
コンピュータプログラム製品が好適なコンピュータ装置上で実行されるとき、請求項1〜12のいずれか1項記載の方法、少なくとも推定工程を実行するための命令を含むコンピュータプログラム製品。
【請求項15】
その上に請求項14記載のコンピュータプログラム製品が符号化されたコンピュータ読み取り可能な媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、生体試料をイメージングするための方法に関係し、試料が拡散体を含む血液および固形組織を含む。本発明は、関連イメージング装置、関連コンピュータ製品プログラムおよび関連コンピュータ読み取り可能な媒体にも関する。
【0002】
発明の背景
本発明は、ドップラーイメージングの分野に関する。
【0003】
ドップラーイメージングは、2013年3月に刊行されたIEEE Transactions on Ultrasonics, Ferroelectrics, and Frequency Control、第60巻、第3号に発表された「Functional Ultrasound Imaging of the Brain: Theory and Basic Principles」と題されたEmilie Maceらによる記事に説明されるように、特に脳をイメージングするために使用される。
【0004】
この記事では、超音波パルスが血管を通っているとき、エネルギーの微小部分が赤血球によって後方散乱され、プローブがこれらのエコーを記録できることが特に説明される。ドップラー超音波イメージングの原理は、そのようなパルス化放射を繰り返し、連続的な後方散乱された信号の時間的変化を検討することによって赤血球の運動を検出することである。
【0005】
信号は、画像の各ピクセルごとに記録される。獲得後、クラッタフィルタ(ハイパスフィルタ)は、組織信号を受け入れないために記録された信号に適用される。フィルタリングされた信号(血液信号と雑音とからなる)が取得される。二つのパラメータ:カラードップラー画像を与える各ピクセルにおける軸血流速度またはパワードップラー画像を与える各ピクセルにおけるドップラー信号の平均強度がフィルタリングされた信号から共通して抽出され、表示される。
【0006】
歴史的には、パワードップラーモードは、微小血管をよりよく検出しようとして、カラードップラーモードの後で開発された。実際、血流速度の抽出は、多くの異なる推定量が試されてきたにもかかわらず、雑音に対して非常に敏感である。その上、カラードップラーもエイリアシングに対して敏感であり、それは、エイリアス信号が流れ方向の間違った推定を生むため、医療機関では大きな課題である。比較すると、信号強度の推定が雑音に対してより堅牢であり、エイリアシングに対して比較的敏感でないことが示された。
【0007】
したがって、パワードップラーは、一定の用途、とりわけ、微小血管を特定することにより適している。パワードップラーは、血流速度に関する情報を与えないが、それは、もう一つの関連する血行力学的パラメータ:ピクセル内の血液量と関連付けられる。一定したヘマトクリット濃度凝集状況およびせん断率の状況では、パワードップラーは、第一近似において、ボクセル内の部分的な血液量に比例する。
【0008】
しかし、流れが十分に遅く、血液信号が壁フィルタによって減衰される場合、血流を雑音と識別することがより難しいことがある。その目的のために、異なる戦略が提案されてきた:
【0009】
文献国際公開公報第2009/158399 A1号では、「Functional ultrasound imaging of the brain」(Nature methods、第8巻、8号、662〜664ページ、2011年)と題されたE. Maceらによる記事に明らかにされたように、多数の獲得される画像によりパワードップラー画像の信号対雑音比を劇的に増加させるために、複合平面波による超高速イメージングの使用が提案される。類似の開示は、「Ultrafast Compound Doppler Imaging : Providing Full Blood Flow Characterization」と題されたJeremy BERCOFFらによる記事、「4D microvascular imaging based on ultrafast Doppler tomography」と題されたCharlie DEMENEらによる記事、「High sensitivity brain angiography using Ultrafast Doppler」および「Functional Ultrasound Imaging of the Brain : Theory and Basic Principles」とそれぞれ題されたE. Maceらによる記事ならびに「Spatiotemporal Clutter Filtering of Ultrafast Ultrasound Data Highly Increases Doppler and Ultrasound Sensitivity」と題されたCharlie DEMENEらによるもう一つの記事から公知である。「Coherent flow power doppler (CFPD): flow detection using spatial coherence beamforming」(IEEE Transactions on Ultrasonics, Ferroelectrics, and Frequency Control、第62巻、第6号、1022〜1035ページ、2015年6月)と題されたY. L. LiおよびJ. J. Dahlによる記事に記載されたように、パワードップラー画像の熱雑音をさらに低減するための隣接受信チャネルの共分散に基づく処理が文献国際公開公報第2014/193945 A1号から公知である。
【0010】
文献国際公開公報第2016046506 A1号では、「Multiplane wave imaging increases signal-to-noise ratio in ultrafast ultrasound imaging」(Physics in Medicine and Biology、第60巻、21号、8549〜8566ページ、2015年)と題されたE. Tiranらによる記事に明らかにされたように、標準的な超高速イメージングシーケンスと比較してパワードップラー画像の信号対雑音比も大幅に改善する新たな超高速シーケンスが提案されている。
【0011】
雑音に加えて、壁フィルタを通ることができるゆっくり移動する組織または残響クラッタは、パワードップラー画像の質を落とす、なぜならばゆっくり移動する血液と類似して見えるからである。その点について、C. Demeneらによる記事「Spatiotemporal clutter filtering of ultrafast ultrasound data highly increases Doppler and Ultrasound sensitivity」(IEEE Transactions on Medical Imaging、第1巻、1号、2015年)では、ゆっくりした血流と組織信号との間の分離を劇的に改善し、より高い品質のドップラー画像をもたらす新たな時空間クラッタフィルタが提案された。
【0012】
パワードップラー画像の信号対雑音比を増加させるもう一つの方法は、血流に注入される超音波造影剤の使用に依存する(「Dynamic microbubble contrast-enhanced US to measure tumor response to targeted therapy: a proposed clinical protocol with results from renal cell carcinoma patients receiving antiangiogenic therapy」(Radiology、2011年)という題のR. Williamsらによる記事)。ドップラー画像の分解能を改善するために、文献国際公開公報第2012/080614 A1号は、個別に空間および時間で正確に追跡され、血管の存在を非常に正確な場所で検出することができる造影剤を使用することを提案している。
【0013】
発明の概要
本発明は、血液を含む生体試料のドップラーイメージングを改善することを目的とする。
【0014】
より正確には、本発明は、必ずしも造影剤に依存することなく、ドップラー画像の分解能およびコントラストを改善することを目的とする。本発明は、対象の場所の外側由来の、不完全なイメージング点拡がり関数、例えば、サイドローブによって拡げられる、望ましくない血流成分である血液信号クラッタの存在を低減することを提案する。
【0015】
方法は、異なる観測値のセット内で共通して観察され、それらの部分的に無相関化された点拡がり関数の重なったボリューム由来の信号に相当する具体的な対象の場所からの血液信号のゆっくりした時間プロファイルを抽出することをできるようにする。この抽出は、可能である、なぜならばC. Demeneらによって示されたように、特異的な場所由来の血液信号が不規則に流れる拡散体のせいでゆっくりした時間の中で高度に無相関化されて見えるからである(
図2)。それ故に、部分的に無相関化された点拡がり関数の重なっていないボリュームは、重なっているボリューム由来の成分とは逆に、特異的な無相関のゆっくりした時間プロファイルを有する。方法は、このように、振動子形状寸法、例えば、スパースアレイ、バーニアアレイまたは行−列アレイが自然に観測値の間に高度に無相関化された点拡がり関数を課すとき、特に興味深い。
【0016】
この目的に向けて、本発明は、生体試料をイメージングするための方法に関係し、試料が血液拡散体および固形組織拡散体を含み、方法が以下の作業:時間間隔内の非集束超音波の数の割合が毎秒100非集束超音波以上であって、対象の領域内の非集束超音波が時間間隔中に放射される放射作業と、所与の対象の領域の拡散体からの
再帰反射波が収集される収集作業と、各観測値が信号を対象の領域の各場所と関連付ける異なる点拡がり関数によって特徴付けられ、信号が場所内の血管の拡散体に対応する第一の寄与、組織拡散体に対応する第二の寄与および場所の外側の血液拡散体と関連付けられる血液信号に対応する第三の寄与を含み、第二および第三の寄与が望ましくない、対象の領域の異なる観測値が収集された
再帰反射波に基づいて生成される画像形成作業とを含むイメージング工程を含む。イメージング工程は、対象の領域のM個の時間的実行の観測値セットを取得するためにM回反復され、Mが10以上である。方法は、観測値セットの各々の第二の寄与を低減するためのフィルタリング工程と、対象の領域の各場所ごとに血流信号が推定される推定工程とをさらに含み、推定工程が以下の作業:第一の寄与および第三の寄与を区別するために各観測値セットに統計解析を適用することと、第一の寄与に基づいて血流信号の成分の推定値を計算することとを含む。
【0017】
そのような方法は、観測値セット内の第三の寄与の低い共同ばらつきを暗示する、血液信号の空間無相関化に依存する。
【0018】
方法は、ピクセル内の血液の拡散体に対応する寄与である第一の寄与をクラッタ寄与と区別することを可能にする。より正確には、方法は、固形組織に由来する第二の寄与も対象の場所の外側の血液に由来する第三の寄与もなく、第一の寄与を取得することを可能にする。
【0019】
第一の寄与と第三の寄与との間の区別は、観測値セットの共同ばらつきに基づく統計解析作業を通じた特異的な場所由来の血液信号の空間無相関化の使用によって可能になる。統計解析は、例として、共役積、相互共分散を算出することによって、または主成分分析(PCA)もしくは特異値分解(SVD)もしくは独立成分分析(ICA)もしくは共同ばらつき分析に基づく任意の他の数学的ツールを実施することによって実施され得る。
【0020】
公開された方法が、このように、特有のドップラー統計値、例えば、先行技術で提案されたような平均ドップラー周波数を計算することとは非常に異なる、なぜならば平均ドップラー周波数を計算することは第一の寄与と第三の寄与との間のいかなる区別をも可能にしないからであることに留意されたい。そのような場合、平均ドップラー周波数は、第三の寄与がどの程度まで測定された信号に寄与するかを知ることなく、両方の(第一のおよび第三の)寄与に相当する値をよりよく取得することのみを可能にする。
【0021】
「第一の寄与および第三の寄与を区別するために各セットの観測値に統計解析を適用する」工程は、「第一の寄与および第三の寄与を区別するために観測値セットの共同ばらつきに基づく統計解析を適用する」工程として理解されることにも留意されたい。
【0022】
換言すると、本発明は、生体試料をイメージングするための方法に関係し、試料が血液拡散体および固形組織拡散体を含み、方法が以下の作業:時間間隔内の非集束超音波の数の割合が毎秒100非集束超音波以上であって、対象の領域内の非集束超音波が時間間隔中に放射される放射作業と、所与の対象の領域の拡散体からの
再帰反射波が収集される収集作業と、各観測値が信号を対象の領域の各場所と関連付ける異なるかつ部分的に空間的に無相関化された点拡がり関数によって特徴付けられ、信号が場所内の血管の拡散体に対応する第一の寄与、組織拡散体に対応する第二の寄与および場所の外側の血液拡散体と関連付けられる血液信号に対応する第三の寄与を含み、第二および第三の寄与が望ましくない、対象の領域の異なる観測値が収集された
再帰反射波に基づいて生成される画像形成作業とを含むイメージング工程を含む。イメージング工程は、対象の領域のM個の時間的実行の観測値セットを取得するためにM回反復され、Mが10以上である。方法は、観測値セットの各々の第二の寄与を低減するためのフィルタリング工程と、対象の領域の各場所ごとに血流信号が推定される推定工程とをさらに含み、推定工程が以下の作業:第一の寄与および第三の寄与を区別するために観測値セットの共同ばらつきに基づく統計解析を適用することと、第一の寄与に基づいて血流信号の成分の推定値を計算することとを含む。
【0023】
結果として、本発明により、血液を伴う生体試料の場合、本発明の方法は、改善された分解能を持つ画像を取得することを可能にする、なぜならば重なっている点拡がり関数に相当する信号のみが回復されるからである。
【0024】
有利であるが必須ではない本発明のさらなる態様によると、装置は、以下の一つまたは数個の任意の技術的に許容される組み合わせに取り入れられるフィーチャを組み入れることができる:
−放射および収集作業が超音波振動子の行−列アレイを使用することによって実行される。
−観測値が部分的に空間的に無相関化された点拡がり関数によって特徴付けられるようにイメージング工程が実行される。
−時間間隔内の非集束超音波の数の割合が毎秒500非集束超音波以上である。
−観測値の数が観測値の各セットに対して同じである。
−観測値の数が2個以上である。
−観測値の数が2個に等しい。
−放射および収集作業が超音波振動子のアレイを使用することによって実行され、超音波振動子のアレイが1次元アレイ、2次元アレイおよびスパースアレイのうちの一つである。
−放射および収集作業が超音波振動子の二つの直交アレイを使用することによって実行される。
−適用する作業の際、統計解析が主成分分析、特異値分解および独立成分分析の中から選択される。
−統計解析を適用する作業が対の観測値間の共役積を推定することを含む。
−統計解析を適用する作業が観測値の共分散の推定値を計算することを含む。
−整数Mが20以上である。
−整数Mが50以上である。
−放射および収集作業が二つの優先的方向に沿って受信することに電子的に集束するために適合された超音波振動子のアレイを使用することによって実行される。
−血液散乱体が音響造影剤である。
【0025】
本明細書は、生体試料をイメージングするためのイメージング装置にも関し、試料が拡散体を含む血液および固形組織を含み、イメージング装置が以下の作業:時間間隔内の非集束超音波の数の割合が毎秒100非集束超音波以上であって、対象の領域内の非集束超音波が時間間隔中に放射される放射作業と、所与の対象の領域の拡散体からの
再帰反射波が収集される収集作業と、各観測値が信号を対象の領域の各場所と関連付ける異なる点拡がり関数によって特徴付けられ、信号が場所内の血管の拡散体に対応する第一の寄与、組織拡散体に対応する第二の寄与および場所の外側の血液拡散体と関連付けられる血液信号に対応する第三の寄与を含み、第二および第三の寄与が望ましくない、対象の領域の異なる観測値が収集された
再帰反射波に基づいて生成される画像形成作業とを含むイメージング工程を実行するために適合された超音波イメージャを含み、イメージング工程が対象の領域のM個の時間的実行の観測値セットを取得するためにM回反復され、Mが10以上である。イメージング装置は、観測値セットの各々の第二の寄与を低減するためのフィルタリング工程と、対象の領域の各場所ごとに血流信号が推定される推定工程とを実行するために適合された計算機をさらに含み、推定工程が以下の作業:第一の寄与および第三の寄与を区別するために各観測値セットに統計解析を適用することと、第一の寄与に基づいて血流信号の成分の推定値を計算することとを含む。
【0026】
本明細書は、前記コンピュータプログラム製品が好適なコンピュータ装置上で実行されるとき、上記に記載された方法、少なくとも推定工程を実行するための命令を含むコンピュータプログラム製品にも関係する。
【0027】
本明細書は、その上でコンピュータプログラム製品を暗号化させるコンピュータ読み取り可能な媒体にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明は、添付図に従って例示的な例として、本発明の目的を制限することなく与えられた以下の説明をベースに、よりよく理解される。添付図では:
【
図1】イメージングされる試料およびそのような試料をイメージングするためのイメージング装置を概略的に示す;
【
図2】イメージング装置によって照射される試料の対象の領域を例示する;
【
図3】
図1のイメージング装置によって実行されるイメージングするための方法の一例の工程を例示するフローチャートを示す;
【
図4】パワードップラーイメージングを使用することによって取得された試料のマップを例示する;
【
図5】
図3のイメージングするための方法を使用することによって取得された試料のマップを例示する、
【
図6】
図3のイメージングするための方法を使用することによって取得された実験結果を示す。
【
図7】
図3のイメージングするための方法を使用することによって取得された実験結果を示す。
【
図8】
図3のイメージングするための方法を使用することによって取得された実験結果を示す。
【
図9】
図3のイメージングするための方法を使用することによって取得された実験結果を示す。
【
図10】
図3のイメージングするための方法を使用することによって取得された実験結果を示す。
【
図11】
図3のイメージングするための方法を使用することによって取得された実験結果を示す。
【
図12】
図3のイメージングするための方法を使用することによって取得された実験結果を示す。
【
図13】
図3のイメージングするための方法を使用することによって取得された実験結果を示す。
【0029】
発明を実施するための形態
イメージングされる試料10およびイメージング装置12が
図1に例示される。
【0030】
試料10は、生体試料である。
【0031】
「生体試料」とは、試料10が生物体由来であることを意味する。
【0032】
例を挙げると、生物体は、哺乳類または人類である。
【0033】
試料10は、液体組織14および固形組織16を含む。
【0034】
そのような文脈においては、液体組織14は血液であり、そのような液体組織14は、二つの血管14として表される。
【0035】
各血管14は、拡散体を含む。
【0036】
「拡散体」とは、超音波を拡散するために適合された粒体を意味する。
【0037】
音響造影剤は、拡散体の具体的な例である。例を挙げると、気体の泡を考慮することができる。
【0038】
イメージング装置12は、試料10をイメージングするために適合される。
【0039】
より正確には、イメージング装置は、超音波18によって収集された情報を試料10のマップ20に変換するために適合される。
【0040】
イメージング装置12は、超音波イメージャ22および計算機23を含む。
【0041】
超音波イメージャ22は、
図2に概略的に例示されるように、試料10の対象の領域をイメージングするために適合される。
【0042】
図1の例によると、超音波イメージャ22は、第一の列の振動子24および第二の列の振動子26を含む。
【0043】
各列の振動子は、複数の振動子28を含む。
【0044】
第一の列24は、本明細書の後半でXと名付けられた第一の方向に沿って伸長する。
【0045】
第二の列26は、本明細書の後半でYと名付けられた第二の方向に沿って伸長する。
【0046】
第一の方向Xと第二の方向Yとは、垂直である。
【0047】
超音波イメージャ22のそのような機器構成は、通例、超音波振動子の行−列アレイと呼ばれ、RCAという略語でも名付けられる。
【0048】
計算機23は、イメージングするための方法の工程を実行するために適合される。
【0049】
図1のイメージング装置12の作業は、ここで、試料10をイメージングするための方法を実行する一例を例示する
図3のフローチャートを参照しながら説明される。
【0050】
方法は、矢印S52によって例示されるように数回反復されるイメージング工程S50と、フィルタリング工程S54と、推定工程S56とを含む。
【0051】
イメージング工程S50中、試料10のN個の異なる観測値のセットが獲得される。
【0052】
各イメージング工程S50は、数作業:放射する作業と、収集する作業と、画像形成の作業とを含む。
【0053】
放射する作業中、非集束超音波は、試料10の所与の対象の領域に放射される。
【0054】
非集束超音波は、開口が画定されるための波である。
【0055】
開口は、Dと標示された具体的なサイズを有する。
【0056】
超音波は、深さFにおける超音波と関連付けられる超音波ビームの最狭幅W
minが超音波の波長λと深さFとの積に対する開口の具体的なサイズDの比よりも大きい場合、非集束と見なされる。そのような状況は、以下のとおり数学的に表記され得る:
【数1】
【0057】
非集束波は、平面波または発散波を包含する。
【0058】
対象の場所は、各観測値の点拡がり関数の交点によって近似される。
【0059】
図2の具体的な場合には、第一の列24に相当する第一の点拡がり関数PSF24および第二の列26に相当する第二の点拡がり関数PSF26が表される。
【0060】
点拡がり関数(PSF)は、点光源または点対象物に対するイメージングシステムの応答を説明する。PSFに対するより一般的な用語は、システムのインパルス応答であり、PSFが集束光学システムのインパルス応答である。多くの文脈におけるPSFは、非分解対象物を表す画像の拡大したぼやけとして考えら得る。
【0061】
図2の場合、PSF24とPSF26の両方の点拡がり関数の交点は、対象の領域A30である。
【0062】
例示の便宜上、各点拡がり関数が対象の場所A30の外側の血液領域と、対象の場所A30内の血液領域とを含むことが想定される。
【0063】
より正確には、第一の点拡がり関数PSF24は、第一の血液領域A32を網羅し、第二の点拡がり関数PSF26は、第二の血液領域A34を網羅し、対象の場所A30は、第三の血液領域A36を網羅する。第三の血液領域A36は、PSF24とPSF26の両方の点拡がり関数に対して共通している。
【0064】
放射する作業は、高いフレームレートで実行される。
【0065】
高いフレームレートは、100Hz以上のペースによる放射に相当する。
【0066】
換言すると、非集束超音波は、時間間隔中に放射され、時間間隔内の非集束超音波の数の割合は、毎秒100非集束超音波以上である。
【0067】
もう一つの実施態様によると、フレームレートは、500Hz以上のペースによる放射に相当する。
【0068】
換言すると、非集束超音波は、時間間隔中に放射され、時間間隔内の非集束超音波の数の割合は、毎秒500非集束超音波以上である。
【0069】
収集する作業中、所与の対象の場所に属する拡散体は、放射された非集束超音波と相互作用する。特に、拡散体は、
再帰反射波を放射する。
【0070】
再帰反射波は、アレイ上に収集される。
【0071】
画像形成作業中、所与の対象の場所のN個の観測値のセットは、収集された
再帰反射波に基づく放射および受信データのサブセットを使用して、異なる点拡がり関数によって形成される。
【0072】
第一のイメージング工程の終わりに、N個の異なる観測値のセットは、このように、取得される。各観測値は、対象の場所に前記観測値の点拡がり関数による特異的な信号を関連付ける。
【0073】
信号は、対象の場所内の血液の拡散体に対応する第一の寄与と、クラッタ寄与とを含む。
【0074】
クラッタ寄与は、第二の寄与および第三の寄与を包含する。
【0075】
第二の寄与は、固形組織に由来する。
【0076】
第三の寄与は、対象の場所の外側の血液に由来する。
【0077】
第二の寄与および第三の寄与は、望ましくない寄与である。
【0078】
イメージング工程は、M個の時間的実行のN個の観測値セットを取得するためにM回反復される。
【0079】
整数Mは、50以上である。
【0080】
イメージング工程の終わりに、各時間的実行は、N個の異なる観測値のセットを含む。
【0081】
フィルタリング工程中、M個の時間的実行の各観測値は、フィルタでフィルタリングされる。
【0082】
フィルタは、観測において所与の対象の場所の固形組織に由来する寄与を低減するフィルタである。
【0083】
換言すると、フィルタは、組織信号を除去するフィルタである。
【0084】
第一の例によると、フィルタは、ハイパス時間フィルタである。
【0085】
第二の例によると、フィルタは、復調フィルタである。
【0086】
第三の例によると、フィルタは、Pが画像空間を表す[M,P]空間に対する特異値分解である。
【0087】
フィルタリング工程の終わりに、第二の寄与は、大きく低減され、望ましくないクラッタ信号が第三の寄与のみを包含すると考慮され得る。
【0088】
推定工程中、血流成分は、対象の領域の各場所ごとに推定される。
【0089】
推定工程は、統計解析を適用する作業と、計算する作業と、累積する作業とを含む。
【0090】
各セットごとに、適用する作業は、第一の寄与と第三の寄与を区別するためにセットの各観測値に統計解析を適用することからなる。
【0091】
第一の寄与は、実際、セットのすべての観測値点拡がり関数の重なりによってアプローチされ得る対象の場所由来の血液信号に相当する。
【0092】
換言すると、適用する作業は、各セットのN個の観測値への共通信号を強調するためにすべての観測値に統計解析を適用することからなる。
【0093】
適用する作業において、統計解析は、第一の寄与を抽出するために各セットの観測値に適用される。
【0094】
一例によると、統計解析は、主成分分析である。
【0095】
主成分分析(PCA)は、相関の可能性がある変数の観測値のセットを、主成分と呼ばれる線形に無相関の変数の値のセットに変換するために直交変換を使用する統計手順である。主成分の数は、元の変数の数以下である。この変換は、第一の主成分が可能な限り最大の分散(換言すれば、データのばらつきの可能な限り多くを占める)を有し、各続く成分が前の成分に直交するという拘束条件の下で可能な限り最高の分散を有するように定義される。結果として生じるベクトルは、無相関の直交基底セットである。PCAは、元の変数の相対的なスケーリングに対して敏感である。
【0096】
例を挙げると、最も重要な主成分は、第一の寄与に相当し、一方で、より重要でない主成分は、第三の寄与に相当する。
【0097】
もう一つの例によると、統計解析は、特異値分解である。
【0098】
線型代数学では、特異値分解(SVD)は、実行列または複素行列の分解である。それは、極分解の伸長を介した任意のm×n行列に対する半正定値正規行列(例として、正の固有値を持つ対称行列)の固有値分解の一般化である。
【0099】
もう一つの例によると、統計解析は、独立成分分析である。
【0100】
信号処理では、独立成分分析(ICA)は、多変量の信号を加法的な部分成分に分離するための計算の方法である。これは、部分成分が非ガウス信号であり、それらが互いに統計的に独立していると仮定することによってなされる。ICAは、ブラインド信号源分離の特殊なケースである。典型的な用途の例は、騒がしい部屋で一人の人の話を聞く際の「カクテルパーティー問題」である。
【0101】
変形態様では、他の統計解析も考慮される。例を挙げると、カルフネン・ロエヴェ変換または対応分析を考慮することができる。
【0102】
各例では、統計解析は、N個の観測値で共通している血流信号を回復するために、[M,N]空間に対して実行される。
【0103】
あるいは、または組み合わせて、統計解析は、対の観測値間の共役積を推定することを含む。これは、対の観測値間の第一の寄与の位相を再調整し、M個の時間的実行にわたって累積することを可能にする。
【0104】
作業の終わりに、第一の寄与と第三の寄与との間を区別することが可能である。
【0105】
計算する作業において、各セットごとに、血流信号の成分の推定値は、抽出された寄与に基づいて計算される。
【0106】
例を挙げると、計算する作業は、M個の時間的実行にわたって回復された血流信号の二乗を加算することによりエネルギーを評価することによって実行される。
【0107】
方法の効果は、理論計算によって説明され得る。
【0108】
iがピクセルを指し、s1(i)が第一の血液領域A32で測定された血流に相当すると仮定すると、s2(i)は、第二の血液領域A34で測定された血流に相当し、s3(i)は、第三の血液領域A36で測定された血流に相当し、本方法でなされた作業は、相関の作業に相当する。これは、数学的に以下に相当する:
【数2】
【0109】
血液の場合、s1(i)とs2(i)とs3(i)との間には、相関はない、なぜならばそれらが無相関の信号だからである。これは、以下を生む:
【数3】
【0110】
それに反して、従来のパワードップラーによると、同じ推論は、以下を生むであろう:
【数4】
【0111】
【数5】
および
【数6】
の寄与は、本方法には存在しない。
【0112】
これは、重なっている点拡がり関数によって近似される対象の場所の外側の血管からの信号が本方法で低減され得ることを示す。
【0113】
換言すると、方法は、第二の寄与と第三の寄与の両方を除外するまたは少なくとも低減することを可能にする。
【0114】
これは、方法によって取得される分解能およびコントラストの観点から、画像のよりよい品質をもたらす。
【0115】
方法の効果は、実験的に示され得る。
【0116】
方法は、ここから、
図4〜13を参照しながら例示されるように、画像をよりよく取得することを可能にする。
【0117】
第一の実験に関して、
図4は、先行技術によるパワードップラーイメージングを使用することによって取得された試料のマップを例示し、一方で、
図5は、イメージング装置12を使用することによって取得された試料のマップを例示する。
【0118】
図4と5のマップを比較するとき、
図5ではより多くの血管が見えるように見える。これは、方法がより微小な血管へのアクセスを与えることを可能にするという事実を例示する。これは、イメージング装置12の空間分解能を意味する。
【0119】
加えて、
図4のマップ上で既に見えるより大きい血管に対してさえも、分解能は改善され、これらの血管の輪郭が
図5ではより正確に画定される。
【0120】
第二の実験に関して、
図6および7は、伸長の方向に沿って伸長する線に実質的に相当する同じ対象物(血液を含む)をイメージングすることによって取得された結果を例示する。
【0121】
図6は、三つの方法、
図6の上から下に第一の方法、第二の方法および第三の方法によって取得された画像を例示する。第一の方法は、従来のパワードップラーイメージングである。第二の方法は、相関(統計解析用)を使用することによる本発明の方法であり、第三の方法は、特異値分解(統計解析用)を使用することによる本発明の方法である。各方法では、超音波プローブは、1024振動子を含む振動子の2次元アレイである。
【0122】
図6の画像は目視ベースで比較することが難しいため、伸長の方向に垂直な方向に沿った強度の進展を評価することが提案される。この進展は、
図7では対数目盛で表される。
【0123】
曲線C1は、第一の方法に相当し、曲線C2は、第二の方法に相当し、曲線C3は、第三の方法に相当する。曲線C1と比較して、曲線C2およびC3については信号対雑音比が大きく増加するように見える。
【0124】
第三の実験に関して、
図8および9は、伸長の方向に沿って伸長する線に実質的に相当するもう一つの同じ対象物(血液を含む)をイメージングすることによって取得された結果を例示する。
【0125】
図8は、三つの方法、
図8の上から下に第一の方法、第二の方法および第三の方法によって取得された画像を例示する。
【0126】
図8の画像は、対象物が第二および第三の方法でよりよい分解能を有することを明確に示す。
【0127】
伸長の方向に垂直な方向に沿った強度の進展が確認される。そのような進展は、
図9では対数目盛で表される。
【0128】
曲線C4は、第一の方法に相当し、曲線C5は、第二の方法に相当し、曲線C6は、第三の方法に相当する。曲線C4と比較して、曲線C5およびC6については信号対雑音比が大きく増加するように見える。
【0129】
提案された方法の改善を強調するために、ハンディキャップ付きのさらなる実験が実行された。
【0130】
第四の実験に関して、
図10および11は、伸長の方向に沿って伸長する線に実質的に相当する同じ対象物をイメージングすることによって取得された結果を例示する。対象物は、第二の実験のためのものと同じである。
【0131】
図10は、三つの方法、
図10の上から下に第一の方法、第四の方法および第五の方法によって取得された画像を例示する。念のため、第一の方法は、1024振動子を含む振動子の2次元アレイによる従来のパワードップラーイメージングである。第四の方法は、64振動子のみを含む超音波振動子の行−列アレイが使用される、相関(統計解析用)を使用することによる本発明の方法である。第五の方法は、64振動子のみを含む超音波振動子の行−列アレイが使用される、従来のパワードップラーイメージングである。
【0132】
予想どおり、第五の方法で取得された画像は、第一の方法との比較によると質が落ちる。目視観測も第一の方法および第四の方法がわずかに同等なようであることを示す。
【0133】
伸長の方向に垂直な方向に沿った強度の進展が確認される。そのような進展は、
図11では対数目盛で表される。
【0134】
曲線C7は、第一の方法に相当し、曲線C8は、第四の方法に相当し、曲線C9は、第五の方法に相当する。曲線C8と比較して、曲線C7およびC9については信号対雑音比が大きく増加するように見える。
【0135】
これは、本発明が1024ピクセルによる従来のパワードップラーイメージングと比較して64振動子のみで同じ分解能を取得し得ることを示す。
【0136】
これは、現在32振動子の二つのアレイのみを備えている科学者が32振動子のそれらの二つのアレイに指令する計算機に変更を加えることによって、従来のパワードップラーイメージングによって提供される32*32=1024振動子の分解能から利益を得ることができることを示す。
【0137】
一層よりよいことに、一部の場合、例えば、第三の実験の対象物の場合、これらの科学者は、従来のパワードップラーイメージングによって提供される32*32=1024振動子の分解能よりよい分解能から利益を得ることさえできる。
【0138】
これは、その結果が
図12および13に示される第五の実験によって例示される。
【0139】
図12は、三つの方法、
図12の上から下に第一の方法、第四の方法および第五の方法によって取得された画像を例示する。
【0140】
予想どおり、第五の方法で取得された画像は、第一の方法との比較によると質が落ちる。目視観測も、予想外に、第四の方法が第一の方法およびなおもさらに第五の方法よりもよりよい画像品質を提供するようであることを示す。
【0141】
伸長の方向に垂直な方向に沿った強度の進展が確認される。そのような進展は、
図13では対数目盛で表される。
【0142】
曲線C10は、第一の方法に相当し、曲線C11は、第四の方法に相当し、曲線C12は、第五の方法に相当する。曲線C10およびC11と比較するとき、曲線C12については信号対雑音比が大きく増加するように見える。
【0143】
これは、提案された方法により、64振動子を含むRCAアレイが1024振動子を含む振動子の2次元アレイよりもよりよい画像を提供することを意味する。
【0144】
上記の結果は、血液を伴う生体試料の場合、本発明の方法が改善された分解能を持つ画像を取得することを可能にすることを例示する。
【0145】
これは、部分的に空間的に無相関化された点拡がり関数の作成による、血液の特性の賢い利用に起因する。
【0146】
換言すると、本発明は、血流が場所ごとに異なるという事実に依存する。観測値に共通している寄与のみが時間的に相関がある。
【0147】
本方法の他の実施態様が考慮され得る。
【0148】
例を挙げると、超音波振動子のアレイは、二つの優先的特異的方向に沿って受信することに電子的に集束するために適合された超音波振動子の任意のアレイである。
【0149】
そのような超音波振動子は、少なくとも二つの線型または曲線型サブアレイを物理的にまたは仮想的に画定する要素の群を含み、各サブアレイが優先的方向に沿って受信することに電子的に集束するために適合される。
【0150】
ミルズクロスアレイ、行−列アレイ、交差電極アレイもしくは下部電極直交トップ(TOBE)アレイまたはアニュラアレイは、そのような種類の超音波振動子を構成することができる具体的な例である。
【0151】
もう一つの例によると、超音波振動子のアレイは、その要素間隔が一意の優先的方向または曲線に沿った放射中心周波数で4波長を下回る、少なくとも二つの線型または曲線型サブアレイを物理的にまたは仮想的に画定する要素の群である。
【0152】
例を挙げると、放射される非集束超音波の数は、観測値ごとに異なることができる。
【0153】
さらに、放射される非集束超音波の数が同じ場合でさえ、放射される非集束超音波は、観測値が同じ空間スパン時間に実行されるならば、異なる放射瞬間において放射されることができる。
【0154】
加えて、観測値の数は、時間的実行ごとに異なることができる。
【0155】
本発明は、本発明の実施態様による方法のブロック図および/またはフローチャート例示、機器(システム)および/またはコンピュータプログラム製品を参照しながら上記に説明された。ブロック図および/またはフローチャート例示の各ブロックならびにブロック図および/またはフローチャート例示のブロックの組み合わせは、コンピュータプログラム命令によって具現化されることが理解される。これらのコンピュータプログラム命令は、コンピュータおよび/または他のプログラマブルデータ処理機器のプロセッサを介して実行する命令がブロック図および/またはフローチャートブロックもしくは複数のフローチャートブロックに明記された機能/作業を具現化するための手段を作成するように、汎用コンピュータ、特殊目的用コンピュータおよび/またはマシンを産生させるための他のプログラマブルデータ処理機器のプロセッサに提供され得る。
【0156】
これらのコンピュータプログラム命令は、ブロック図および/またはフローチャートブロックもしくは複数のフローチャートブロックに明記された機能/作業を具現化する命令を包含するコンピュータ読み取り可能なメモリに記憶された命令が製造品を産生させるように、コンピュータまたは他のプログラマブルデータ処理機器に特有のやり方で機能するように指示することができる、コンピュータ読み取り可能なメモリに記憶されることもできる。
【0157】
コンピュータプログラム命令は、一連の作業工程をコンピュータまたは他のプログラマブル機器上で実施させ、コンピュータまたは他のプログラマブル機器上で実行する命令がブロック図および/またはフローチャートブロックもしくは複数のフローチャートブロックに明記された機能/作業を具現化するための工程を提供するようにコンピュータによって具現化されるプロセスを産生させるために、コンピュータまたは他のプログラマブルデータ処理機器に取り込まれることもできる。それゆえに、本発明は、ハードウェアおよび/またはソフトウェア(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを包含する)に具体化され得る。さらに、本発明の実施態様は、命令実行システムによる使用のためにまたはそれと接続して媒体に具体化されたコンピュータ使用可能なまたはコンピュータ読み取り可能なプログラムコードを有する、コンピュータ使用可能なまたはコンピュータ読み取り可能な非一時的記憶媒体上のコンピュータプログラム製品の形態を取ることができる。
【0158】
コンピュータ使用可能なまたはコンピュータ読み取り可能な媒体は、例として、電子、光学、電磁、赤外線もしくは半導体システム、機器または装置であることができるが、限定されるわけではない。コンピュータ読み取り可能な媒体のより具体的な例(非網羅的リスト)は、以下を包含するであろう:一つ以上の電線を有する電気接続、ポータブルコンピュータディスケット、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、光ファイバーおよびポータブルコンパクトディスク読み出し専用メモリ(CD−ROM)。
【0159】
先に本明細書で考慮された実施態様および代替実施態様は、本発明のさらなる実施態様を生成するために組み合わされ得る。