特許第6912690号(P6912690)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6912690
(24)【登録日】2021年7月12日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】射出成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/13 20060101AFI20210727BHJP
   B29C 45/17 20060101ALI20210727BHJP
【FI】
   B29C45/13
   B29C45/17
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2021-521059(P2021-521059)
(86)(22)【出願日】2021年2月1日
(86)【国際出願番号】JP2021003446
【審査請求日】2021年4月20日
(31)【優先権主張番号】特願2020-17623(P2020-17623)
(32)【優先日】2020年2月5日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】菅原 圭介
【審査官】 ▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−154305(JP,A)
【文献】 特開平03−281054(JP,A)
【文献】 特開2017−132226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00 − 45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定プラテン(20)に対して、前記固定プラテンに連結されたタイバー(28)に沿って可動プラテン(24)を移動させることで、金型(26)を開閉する射出成形機(10)であって、
前記タイバーが延びる延伸方向と交差する方向から前記金型に樹脂を射出する射出装置(18)と、
前記射出装置を支持し、前記固定プラテンに対して前記延伸方向に沿ってスライド可能なスライダ(46)と、
前記固定プラテンにおいて前記金型が設けられる側とは逆側に設けられ、前記固定プラテンに対して前記スライダが規定位置よりも前記金型の型開方向にスライドしないように前記スライダを規制し、かつ、前記規定位置を前記延伸方向に調整可能な調整具(50)と、
を備える射出成形機。
【請求項2】
請求項1に記載の射出成形機であって、
前記調整具は、
前記スライダから突出する突出部(52)と、
前記延伸方向に沿って前記突出部に形成されるねじ穴(52A)に螺合する棒状部材(54)と、
前記棒状部材よりも前記固定プラテン側に配置され、前記棒状部材が当接される当接部(56)と、
を有し、
前記当接部に前記棒状部材が当接されたときの前記スライダの位置が前記規定位置である、射出成形機。
【請求項3】
請求項2に記載の射出成形機であって、
前記突出部は、前記スライダにおける前記金型の型締方向の端部よりも前記固定プラテン側に設けられる、射出成形機。
【請求項4】
請求項2または3に記載の射出成形機であって、
前記棒状部材は、前記棒状部材の延伸方向に沿って延びる平坦部位(54X)を有し、前記平坦部位は、前記延伸方向に沿って配置される目盛(54Y)を有する、射出成形機。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の射出成形機であって、
前記スライダには、前記延伸方向に間隔をあけて、前記突出部を前記スライダに固定する締結具(58)に対応する複数のねじ穴(52H)が形成される、射出成形機。
【請求項6】
請求項1に記載の射出成形機であって、
前記調整具は、
前記スライダに対して着脱可能であり、前記スライダに装着されることで前記スライダから突出する突出部(62)と、
前記突出部よりも前記固定プラテン側に配置され、前記突出部が当接される当接部と、
を有し、
前記当接部に前記突出部が当接されたときの前記スライダの位置が前記規定位置である、射出成形機。
【請求項7】
請求項6に記載の射出成形機であって、
前記スライダは、前記延伸方向に沿って配置される目盛(46B)を有する、射出成形機。
【請求項8】
請求項2〜7のいずれか1項に記載の射出成形機であって、
前記当接部は、前記スライダをスライド可能に支持するスライダ支持部材(48)である、射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定プラテンに対して、当該固定プラテンに連結されたタイバーに沿って可動プラテンを移動させることで、金型を開閉する射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機では、特開2017−132226号公報のように、タイバーが延びる延伸方向(金型の開閉方向)と交差する方向から樹脂を射出する射出装置を備える場合がある。特開2017−132226号公報では、射出装置は、スライダ(ベース部材)に支持され、当該スライダは、固定プラテンに対して、タイバーが延びる延伸方向(金型の開閉方向)にスライド可能に取り付けられている。金型に対する射出装置の射出位置は、スライダをオペレータがスライドさせることで調整される。
【発明の概要】
【0003】
ところで、金型の点検や交換などの作業を実行する場合、オペレータは、射出装置が金型から離れるようにスライダをスライドさせる。このため、オペレータは、金型の点検や交換などの作業を実行し終わった後に、射出装置の射出位置が元の位置に戻るように、スライダを規定位置にスライドさせる必要がある。しかし、オペレータの技量に応じて、規定位置に対してスライダの位置がばらつき易いという問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、規定位置に対するスライダの位置のばらつきを低減し得る射出成形機を提供することを目的とする。
【0005】
本発明の態様は、固定プラテンに対して、前記固定プラテンに連結されたタイバーに沿って可動プラテンを移動させることで、金型を開閉する射出成形機であって、前記タイバーが延びる延伸方向と交差する方向から前記金型に樹脂を射出する射出装置と、前記射出装置を支持し、前記固定プラテンに対して前記延伸方向に沿ってスライド可能なスライダと、前記固定プラテンにおいて前記金型が設けられる側とは逆側に設けられ、前記固定プラテンに対して前記スライダが規定位置よりも前記金型の型開方向にスライドしないように前記スライダを規制し、かつ、前記規定位置を前記延伸方向に調整可能な調整具と、を備える。
【0006】
本発明の態様によれば、金型から離れるようにスライダがスライドされても、調整具によってスライダを規定位置に復帰させることができ、この結果、規定位置に対するスライダの位置のばらつきを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】射出成形機の構成を示す模式図である。
図2】射出成形機の側面側を示す模式図である。
図3】本実施形態の射出成形機の側面側の一部を示す模式図である。
図4】棒状部材がスケール付きねじである場合を示す図である。
図5】第2の射出装置が退避された様子を示す模式図である。
図6】変形例1の射出成形機の側面側の一部を示す模式図である。
図7】変形例2の射出成形機の側面側の一部を示す模式図である。
図8】スライダが目盛を有する場合を示す図である。
図9】変形例3の射出成形機を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施形態〕
[射出成形機の構成]
図1は、射出成形機10の構成を示す模式図である。射出成形機10は、機台12と、型締装置14と、第1の射出装置16と、第2の射出装置18とを備えている。
【0009】
型締装置14は、固定プラテン20、リアプラテン22、可動プラテン24および金型26を有する。
【0010】
固定プラテン20とリアプラテン22とは、互いに間隔をあけて射出成形機10の機台12の設置面12F上に設置される。可動プラテン24は、固定プラテン20とリアプラテン22との間に配置される。金型26は、固定金型26Aと可動金型26Bとで構成される。固定金型26Aは、固定プラテン20の可動プラテン24側に取り付けられ、可動金型26Bは、可動プラテン24の固定プラテン20側に取り付けられる。
【0011】
可動プラテン24には、複数のタイバー28の各々が貫通する。複数のタイバー28の各々は、固定プラテン20とリアプラテン22との各々に連結される棒状の部材である。なお、タイバー28が延びる延伸方向は、タイバー28の一端側から他端側に向かう第1方向と、タイバー28の他端側から一端側に向かう第2方向との双方向を有する。第1方向および第2方向の一方は金型26の型開方向であり、第1方向および第2方向の他方は金型26の型締方向である。つまり、タイバー28が延びる延伸方向は、型開方向および型締方向の双方向を有する。
【0012】
可動プラテン24には、可動プラテン24を駆動する不図示のプラテン駆動機構が設けられる。プラテン駆動機構は、モータの正回転(または逆回転)に応じて型締方向に可動プラテン24を駆動し、モータの逆回転(または正回転)に応じて型開方向に可動プラテン24を駆動する。
【0013】
プラテン駆動機構が型締方向に可動プラテン24を駆動した場合、可動プラテン24は、複数のタイバー28に沿って型締方向に移動する。この可動プラテン24の移動に応じて、固定金型26Aに対して可動金型26Bが当接することで、金型26が閉じる。金型26が閉じると、金型26にはキャビティが形成される。キャビティには、第1の射出装置16および第2の射出装置18から射出される溶融樹脂が充填される。なお、溶融樹脂は、溶融状態にある樹脂である。
【0014】
一方、プラテン駆動機構が型開方向に可動プラテン24を駆動した場合、可動プラテン24は、複数のタイバー28に沿って型開方向に移動する。この可動プラテン24の移動に応じて固定金型26Aに対して可動金型26Bが離れることで、金型26が開く。固定金型26Aに対して所定の間隔をあけた位置まで可動金型26Bが離れると、金型26のキャビティから成形品の取り出しが可能となる。なお、成形品は、溶融樹脂が固化されることで得られる。
【0015】
図2は、射出成形機10の側面側を示す模式図である。第1の射出装置16は、タイバー28が延びる延伸方向に沿って金型26に樹脂を射出する射出装置である。第1の射出装置16は、固定プラテン20において固定金型26Aが設けられる端面とは逆の端面側(金型26の後方)に設けられ、固定プラテン20側の端面から金型26の型開方向に沿って延びる射出ノズル30を有する。固定プラテン20には、射出ノズル30の先端が挿入される貫通穴20Hが、タイバー28の延伸方向に沿って形成される。貫通穴20Hは、金型26のキャビティに連通する。
【0016】
第1の射出装置16は、機台12の設置面12F上に設けられたガイドレール32を移動可能に設けられる。第1の射出装置16は、オペレータにより移動される。なお、第1の射出装置16は、モータの回転に応じて型開方向または型締方向に第1の射出装置16を駆動する駆動機構により移動されてもよい。第1の射出装置16は、固定プラテン20の貫通穴20Hに射出ノズル30の先端が挿入する位置で固定される。
【0017】
第2の射出装置18は、タイバー28が延びる延伸方向と交差する方向から金型26に樹脂を射出する射出装置である。第2の射出装置18は、金型26において機台12の設置面12Fとは逆側(金型26の上方)に設けられ、金型26側の端面から設置面12Fに向かって延びる射出ノズル40を有する。金型26には、射出ノズル40の先端が挿入される挿入口26H(図1)が形成される。挿入口26Hは、金型26のキャビティに連通する。
【0018】
なお、挿入口26Hは、固定金型26Aに形成されていてもよく、可動金型26Bに形成されていてもよく、固定金型26Aと可動金型26Bとの双方に形成されていてもよい。図1では、挿入口26Hが固定金型26Aに形成されている場合が例示されている。
【0019】
第2の射出装置18は、第2の射出装置18を支持する支持部材42に取り付けられる。支持部材42の型開方向側の端面には、ガイドレール44が設けられる。ガイドレール44の一端側から他端側に向かう方向は、金型26に近づく接近方向であり、ガイドレール44の他端側から一端側に向かう方向は、金型26から離れる離隔方向である。第2の射出装置18は、ガイドレール44を移動可能に設けられる。第2の射出装置18は、オペレータにより移動される。なお、第2の射出装置18は、モータの回転に応じて接近方向または離隔方向に第2の射出装置18を駆動する駆動機構により移動されてもよい。第2の射出装置18は、金型26の挿入口26Hに射出ノズル40の先端が挿入する位置で固定される。
【0020】
支持部材42は、スライダ46に設置される。スライダ46は、第2の射出装置18を支持するベースであり、第2の射出装置18の射出ノズル40が通る開口46H(図1)を有する。スライダ46の設置面とは逆側の面には、タイバー28の延伸方向に沿って延びるガイドレール46Rが設けられる。ガイドレール46Rにはスライダ支持部材48が嵌合する。スライダ支持部材48は、ガイドレール46Rに沿って、スライダ46をスライド可能に支持する。したがって、スライダ46は、固定プラテン20に対して第2の射出装置18をタイバー28の延伸方向に沿ってスライド可能である。スライダ46は、オペレータによりスライドされる。なお、スライダ46は、モータの回転に応じてタイバー28の延伸方向に沿った方向に駆動する駆動機構により移動されてもよい。
【0021】
本実施形態の射出成形機10は、固定プラテン20において金型26が設けられる側とは逆側に、調整具50をさらに備える。図3は、本実施形態の射出成形機10の側面側の一部を示す模式図である。
【0022】
調整具50は、固定プラテン20に対してスライダ46が規定位置よりも金型26の型開方向にスライドしないようにスライダ46を規制し、かつ、規定位置を延伸方向に調整可能なものである。調整具50は、突出部52、棒状部材54および当接部56を有する。
【0023】
突出部52は、スライダ46から突出するものである。突出部52は、スライダ46の型締方向の端部に設けられ、機台12の設置面12F側に向かって突出している。なお、突出部52は、タイバー28の延伸方向に対して面内で直交する側など、機台12の設置面12F側以外に向かって突出していてもよい。また、突出部52は、スライダ46と一体であってもよく、スライダ46とは別体であってもよい。突出部52には、タイバー28の延伸方向に沿ってねじ穴52Aが形成される。
【0024】
棒状部材54は、突出部52のねじ穴52Aに螺合するものである。棒状部材54は、図4に示すように、スケール付きねじであってもよい。なお、スケール付きねじ(棒状部材54)は、ねじの外周の一部に、ねじの延伸方向に沿って延びる平坦部位54Xを有し、当該平坦部位54Xは、当該延伸方向に沿って目盛54Yを有する。
【0025】
棒状部材54の外周面には、ねじ穴52Aに螺合するねじ溝が形成され、棒状部材54の型締方向の端部には、ドライバーや棒レンチなどの工具が嵌合する工具溝が形成される。なお、図3に示すように、棒状部材54の型締方向の端部には、棒状部材54の外径よりも大きい頭部が設けられ、当該頭部に工具溝が形成されてもよい。また、図3に示すように、棒状部材54には、ねじ穴52Aに螺合する棒状部材54の緩みを抑制するためのナット54Aが設けられてもよい。ナット54Aが設けられる場合、突出部52の型締方向側の端部をナット54Aで締め付けることで、棒状部材54の緩みが抑制される。
【0026】
当接部56は、棒状部材54が当接されるものである。当接部56は、棒状部材54よりも固定プラテン20側に配置される。当接部56は、スライダ支持部材48の型締方向側の端面から突出するようにスライダ支持部材48に形成された凸部である。なお、凸部は省かれてもよい。凸部が省かれる場合、当接部56は、スライダ支持部材48の型締方向側の端面である。当接部56は、固定プラテン20の型締方向側の端面であってもよい。当接部56が固定プラテン20の型締方向側の端面である場合、当接部56がスライダ支持部材48である場合に比べて突出部52の突出量が大きくなる。
【0027】
ここで、調整具50の使用方法について説明する。オペレータは、金型26の挿入口26Hに第2の射出装置18の射出ノズル40の先端が挿入されている状態において、棒状部材54を正方向または逆方向に回転させて、当該棒状部材54の型開方向側の端部を当接部56に当接させる。当接部56に棒状部材54が当接されたときのスライダ46の位置が規定位置である。スライダ46の位置が規定位置にある状態では、射出ノズル40と金型26の挿入口26Hとにおけるタイバー28の延伸方向の位置にずれがない状態である。この状態において、オペレータは、棒状部材54の回転を停止する。これにより、棒状部材54の回転を停止した位置が固定される。棒状部材54にナット54Aが設けられる場合には、当該ナット54Aを締め付ける。これにより、棒状部材54の緩みが抑制される。
【0028】
図5は、第2の射出装置18が退避された様子を示す模式図である。オペレータは、金型26の点検や交換などの作業を実行する場合、第2の射出装置18が金型26から離れるように、スライダ46を金型26の後方にスライドさせる。具体的には、オペレータは、第2の射出装置18を離隔方向に移動させた後、スライダ46を型締方向に移動させる。なお、棒状部材54の回転を停止した位置は固定されているため、金型26の後方にスライダ46がスライドされても、突出部52から型開方向側に延びる棒状部材54の長さは変化しない。
【0029】
金型26の点検や交換などの作業が実行し終わった場合、オペレータは、第2の射出装置18を元の位置に戻す。具体的には、オペレータは、スライダ46を型締方向に移動させる。このスライダ46の移動に応じて、棒状部材54の型開方向側の端部が当接部56に当接することにより、当接部56(スライダ支持部材48)は、金型26の型開方向にスライドしないようにスライダ46を規制する(図3参照)。
【0030】
上記のように、金型26の後方にスライダ46がスライドされても、突出部52から型開方向側に延びる棒状部材54の長さは変化しない。このため、当接部56に棒状部材54が当接されたときのスライダ46の位置(規定位置)では、射出ノズル40と金型26の挿入口26Hとにおけるタイバー28の延伸方向の位置にずれがない状態である。つまり、棒状部材54が当接部56に当接されるまでスライダ46をスライドさせる簡易なオペレータの操作で、スライダ46を規定位置に復帰させることができる。
【0031】
このように、調整具50は、当接部56に棒状部材54が当接したときの突出部52から型開方向側に延びる棒状部材54の長さを維持することで、金型26に対する第2の射出装置18の射出位置を保持(記憶)することができる。
【0032】
ところで、金型26を交換するなどの事情によって、第2の射出装置18の射出位置が変わる場合がある。この場合、オペレータは、棒状部材54を正方向または逆方向に回転することで、当接部56に棒状部材54が当接されたときのスライダ46の位置(規定位置)をタイバー28の延伸方向に調整することができる。なお、棒状部材54がスケール付きねじである場合(図4)、オペレータは、過去に交換された複数の金型26の各々に対する第2の射出装置18の射出位置を、スケール付きねじの目盛54Yで記録しておくことができる。したがって、元の金型26に戻すときなどに簡単にスライダ46を規定位置に復帰させることができる。
【0033】
〔変形例〕
(変形例1)
図6は、変形例1の射出成形機10の側面側の一部を示す模式図である。図6では、実施形態において説明した構成と同等の構成に対して同一の符号が付されている。なお、本変形例では、実施形態と重複する説明は省略する。
【0034】
変形例1のスライダ46には、タイバー28の延伸方向に間隔をあけて、突出部52をスライダ46に固定するボルトなどの締結具58に対応する複数のねじ穴52Hが形成される。したがって、本変形例では、突出部52の設置位置を変更することができ、例えば、固定プラテン20の厚さが変更された場合には、その厚さに応じて、適切な突出部52の設置位置を選択することができる。
【0035】
また、本変形例では、スライダ46における金型26の型締方向の端部よりも固定プラテン20側に突出部52を設けることができる。スライダ46における金型26の型締方向の端部よりも固定プラテン20側に突出部52が設けられた場合、当該端部に突出部52が設けられる場合に比べて、棒状部材54の長さを小さくすることができる。したがって、調整具50の省スペース化を図ることができる。なお、実施形態の突出部52が、スライダ46における金型26の型締方向の端部よりも固定プラテン20側に設けられてもよい。
【0036】
(変形例2)
図7は、変形例2の射出成形機10の側面側の一部を示す模式図である。図7では、実施形態において説明した構成と同等の構成に対して同一の符号が付されている。なお、本変形例では、実施形態と重複する説明は省略する。
【0037】
変形例2では、棒状部材54がなく、突出部52に代えて、スライダ46に対して着脱可能な突出部62が設けられる。棒状部材54がないため、突出部62には、突出部52のねじ穴52Aに相当するものがなく、当接部56は、突出部62が当接される。突出部62は、磁石を有し、磁石の磁力によりスライダ46に装着される。突出部62は、スライダ46に装着されることでスライダ46から突出する。なお、突出部62には、タイバー28の延伸方向に沿ったねじ穴が形成されていなくてもよい。また、突出部62には、突出部62を把持する取手が設けられてもよい。
【0038】
また、図8に示すように、スライダ46には、スケール46Aが設けられてもよい。スケール46Aは、スライダ46に対し、ねじ止めで設けられてもよく、粘着テープで貼り付けることで設けられてもよく、磁石の磁力で吸着することで設けられてもよく、スライダ46を加工することで直に設けられてもよい。なお、スライダ46にスケール46Aを設ける場合、スライダ46が有する目盛46Bはタイバー28の延伸方向に沿って配置される。
【0039】
ここで、変形例2の場合における調整具50の使用方法について説明する。オペレータは、金型26の挿入口26Hに第2の射出装置18の射出ノズル40の先端が挿入されている状態において、当接部56に突出部62が当接した状態で、当該突出部62をスライダ46に装着する。このときのスライダ46の位置が規定位置である。
【0040】
その後、金型26の点検や交換などの作業を実行する場合、オペレータは、第2の射出装置18が金型26から離れるように、スライダ46を金型26の後方にスライドさせる。なお、突出部62はスライダ46に対して装着されているため、金型26の後方にスライダ46がスライドされても、スライダ46に対する突出部62の装着位置は変化しない。
【0041】
金型26の点検や交換などの作業が実行し終わった場合、オペレータは、スライダ46を型開方向に移動させる。このスライダ46の移動に応じて、突出部62が当接部56に当接することにより、当接部56(スライダ支持部材48)は、金型26の型開方向にスライドしないようにスライダ46を規制する。
【0042】
上記のように、金型26の後方にスライダ46がスライドされても、スライダ46に対する突出部62の装着位置は変化しない。このため、当接部56に突出部62が当接されたときのスライダ46の位置(規定位置)では、射出ノズル40と金型26の挿入口26Hとにおけるタイバー28の延伸方向の位置にずれがない状態である。つまり、突出部62が当接部56に当接されるまでスライダ46をスライドさせる簡易なオペレータの操作で、スライダ46を規定位置に復帰させることができる。
【0043】
このように、調整具50は、スライダ46に対する突出部62の装着位置を維持することで、金型26に対する第2の射出装置18の射出位置を保持(記憶)することができる。また、本変形例では、実施形態の棒状部材54をなくすことができるため、部品点数を削減することができることに加え、調整具50の省スペース化を図ることができる。
【0044】
ところで、金型26を交換するなどの事情によって、第2の射出装置18の射出位置が変わる場合がある。この場合、オペレータは、スライダ46に対して突出部62の装着位置を変更することで、当接部56に突出部62が当接されたときのスライダ46の位置(規定位置)をタイバー28の延伸方向に調整することができる。なお、スライダ46にスケール46Aが設けられる場合(図8)、オペレータは、過去に交換された複数の金型26の各々に対する第2の射出装置18の射出位置を、スケール46Aの目盛46Bで記録しておくことができる。したがって、元の金型26に戻すときなどに簡単にスライダ46を規定位置に復帰させることができる。
【0045】
(変形例3)
図9は、変形例3の射出成形機10を示す模式図である。図9では、実施形態において説明した構成と同等の構成に対して同一の符号が付されている。なお、本変形例では、実施形態と重複する説明は省略する。
【0046】
変形例3では、第2の射出装置18が固定プラテン20の側面に設けられる。固定プラテン20の側面は、固定プラテン20における型締方向側の面、型開方向側の面、機台12の設置面12F側の面、および機台12の設置面12F側の面とは逆側の面以外の面である。付言すると、固定プラテン20においてタイバー28の延伸方向に平行な面であって、かつ、機台12の設置面12F側の面および機台12の設置面12F側の面とは逆側の面以外の面である。固定プラテン20の側面にスライダ46が設けられ、当該スライダ46に設置される支持部材42に第2の射出装置18が支持される。
【0047】
なお、第2の射出装置18が固定プラテン20の側面に設けられる場合、当該側面と同じ側となる金型26の側面に、第2の射出装置18の射出ノズル40の先端が挿入される挿入口26Hが設けられる。
【0048】
このように、第2の射出装置18が固定プラテン20の側面に設けられても、上記の実施形態の場合と同様に、調整具50によってスライダ46を規定位置に復帰させることができる。
【0049】
(変形例4)
射出成形機10は機台12に設置されたが、垂直方向に延びる壁に設置されてもよい。つまり、射出成形機10は、水平方向の設置面12F上に設置されたが、水平方向とは交差する設置面上に設置されてもよく、垂直方向の設置面上に設置されてもよい。
【0050】
(変形例5)
第1の射出装置16は省かれてもよい。第1の射出装置16が省かれる場合、第2の射出装置18からのみ樹脂が射出される。
【0051】
(変形例6)
上記の実施形態および変形例は、矛盾の生じない範囲で任意に組み合わされてもよい。
【0052】
〔発明〕
上記の実施形態および変形例から把握しうる発明について、以下に記載する。
【0053】
本発明は、固定プラテン(20)に対して、固定プラテン(20)に連結されたタイバー(28)に沿って可動プラテン(24)を移動させることで、金型(26)を開閉する射出成形機(10)である。射出成形機(10)は、タイバー(28)が延びる延伸方向と交差する方向から金型(26)に樹脂を射出する射出装置(18)と、射出装置(18)を支持し、固定プラテン(20)に対して延伸方向に沿ってスライド可能なスライダ(46)と、固定プラテン(20)において金型(26)が設けられる側とは逆側に設けられ、固定プラテン(20)に対してスライダ(46)が規定位置よりも金型(26)の型開方向にスライドしないようにスライダ(46)を規制し、かつ、規定位置を延伸方向に調整可能な調整具(50)と、を備える。
【0054】
これにより、金型(26)から離れるようにスライダ(46)がスライドされても、調整具(50)によってスライダ(46)を規定位置に復帰させることができ、この結果、規定位置に対するスライダ(46)の位置のばらつきを低減することができる。
【0055】
調整具(50)は、スライダ(46)から突出する突出部(52)と、延伸方向に沿って突出部(52)に形成されるねじ穴(52A)に螺合する棒状部材(54)と、棒状部材(54)よりも固定プラテン(20)側に配置され、棒状部材(54)が当接される当接部(56)と、を有し、当接部(56)に棒状部材(54)が当接されたときのスライダ(46)の位置が規定位置であってもよい。これにより、棒状部材(54)が当接部(56)に当接されるまでスライダ(46)をスライドさせる簡易なオペレータの操作で、スライダ(46)を規定位置に復帰させることができる。
【0056】
突出部(52)は、スライダ(46)における金型(26)の型締方向の端部よりも固定プラテン(20)側に設けられてもよい。これにより、スライダ(46)における金型(26)の型締方向の端部に突出部(52)が設けられる場合に比べて棒状部材(54)の長さを小さくすることができ、この結果、調整具(50)の省スペース化を図ることができる。
【0057】
棒状部材(54)は、棒状部材(54)の延伸方向に沿って延びる平坦部位(54X)を有し、平坦部位(54X)は、延伸方向に沿って配置される目盛(54Y)を有してもよい。これにより、過去に交換された複数の金型(26)の各々に対する第2の射出装置(18)の射出位置を目盛(54Y)で記録しておくことができる。したがって、元の金型(26)に戻すときなどに簡単にスライダ(46)を規定位置に復帰させることができる。
【0058】
スライダ(46)には、延伸方向に間隔をあけて、突出部(52)をスライダ(46)に固定する締結具(58)に対応する複数のねじ穴(52H)が形成されてもよい。これにより、突出部(52)の設置位置を変更することができ、例えば、固定プラテン(20)の厚さが変更された場合には、その厚さに応じて、適切な突出部(52)の設置位置を選択することができる。
【0059】
調整具(50)は、スライダ(46)に対して着脱可能であり、スライダ(46)に装着されることでスライダ(46)から突出する突出部(62)と、突出部(62)よりも固定プラテン(20)側に配置され、突出部(62)が当接される当接部(56)と、を有し、当接部(56)に突出部(62)が当接されたときのスライダ(46)の位置が規定位置であってもよい。これにより、突出部(62)が当接部(56)に当接されるまでスライダ(46)をスライドさせる簡易なオペレータの操作で、スライダ(46)を規定位置に復帰させることができる。
【0060】
スライダ(46)は、延伸方向に沿って配置される目盛(46B)を有してもよい。これにより、過去に交換された複数の金型(26)の各々に対する第2の射出装置(18)の射出位置を目盛(46B)で記録しておくことができる。したがって、元の金型(26)に戻すときなどに簡単にスライダ(46)を規定位置に復帰させることができる。
【0061】
当接部(56)は、スライダ(46)をスライド可能に支持するスライダ支持部材(48)であってもよい。当接部(56)とスライダ支持部材(48)とが別部材である場合に比べて部品点数を削減することができる。
【要約】
規定位置に対するスライダの位置のばらつきを低減し得る射出成形機を提供する。一実施形態の射出成形機(10)は、タイバー(28)が延びる延伸方向と交差する方向から金型(26)に樹脂を射出する射出装置としての第2の射出装置(18)と、第2の射出装置(18)を支持し、固定プラテン(20)に対して延伸方向に沿ってスライドさせるスライダ(46)と、固定プラテン(20)において金型(26)が設けられる側とは逆側に設けられ、固定プラテン(20)に対してスライダ(46)が規定位置よりも金型(26)の型開方向にスライドしないようにスライダ(46)を規制し、かつ、規定位置を延伸方向に調整可能な調整具(50)と、を備える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9