(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6912761
(24)【登録日】2021年7月13日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20210727BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20210727BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A41D13/11 M
A62B18/02 C
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2020-167651(P2020-167651)
(22)【出願日】2020年10月2日
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3227258号
【原出願日】2020年5月16日
【審査請求日】2020年10月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515106583
【氏名又は名称】株式会社コゼット
(74)【代理人】
【識別番号】100149799
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】孔 令璽
【審査官】
塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭55−027580(JP,U)
【文献】
特開2008−093285(JP,A)
【文献】
特開2015−123197(JP,A)
【文献】
特開2005−304635(JP,A)
【文献】
特開2011−072479(JP,A)
【文献】
特開平11−267234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/11
A62B 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の顔面に鼻孔及び口部を覆うように装着され、少なくとも咳やくしゃみなどによる飛沫感染を防止するマスクであって、
表面にフッ素樹脂加工が施されている表生地と、レーヨンを含む裏生地とからなるマスク本体と、前記マスク本体の両側に設けられた耳掛部とを備えてなり、
前記表生地が多数の通気孔が設けられており、
前記通気孔のそれぞれは、縦方向には1〜5mmの間隔、横方向には1〜5mmの間隔離して設けられており、
前記裏生地は、前記通気孔を有さない、マスク。
【請求項2】
前記表生地に設けられる多数の通気孔の大きさが、縦、横の長さがそれぞれ0.1〜1.0mmの孔であることを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記表生地が伸縮性を備えている、請求項1又は2に記載のマスク。
【請求項4】
前記裏生地が、防菌、防臭加工が施されてなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔面に鼻孔及び口部を覆うように装着するマスクに関し、特に夏でも快適に使用できるマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に使われているマスクは、せきやくしゃみなどによって飛沫が飛散することを防止する効果がある。このような効果を最も発揮させるために、顔とマスクとの間に隙間がないように装着する必要がある。
また、隙間なくマスクを装着することによって、マスク内の湿度が保たれ、その空気を吸い込むことで、鼻や喉、気管の粘膜が乾燥するのを防止するという効果もあり、風邪やインフルエンザの予防にも効果があるとされている。
ところで、インフルエンザや風邪は、例年11月下旬から流行りはじめ、3月上旬頃には収束することから、主に寒い時期にマスクを装着することになる。したがって、マスク内の湿度が上がって40〜60%に保たれるのは、口元の保温効果もあり、暖かく快適である。
【0003】
しかし、近年、花粉やハウスダストなどのアレルギー症状の対策や、新型ウィルスの感染拡大防止対策などにより、一年を通してマスクを装着する必要が生じている。
そのため、口元で高い湿度が保たれるマスクは、外気の暑い夏では、マスク内に熱がこもり蒸し暑くなり、不快極まりない。また、汗ばむとマスクが口元に張り付き、しゃべりにくかったり、息苦しかったりするという問題も生じる。
さらに、マスク内の温度が高くなることで体温も上がり、こまめな水分補給等をしないと熱中症になる危険がある。
【0004】
上記のような問題を解決するために、冬場の寒さだけでなく夏場の暑さをしのぐための機能を兼ね備えたマスクが開示されている。
特開2017−115284号公報(特許文献1)には、「外側から、外側ガーゼまたは不織布層、アルミ遮熱シート層、内側ガーゼまたは不織布ポケット層の3層で形成され、前記アルミ遮熱シートが、片面がアルミ材のような熱反射効率の良い素材で形成され、その反対面がポリエチレンまたはポリエステル材のような断熱効果の高い柔軟性を有する素材で形成され、寒暖に応じ、前記アルミ遮熱シートの表裏をひっくり返して開口部に挿入して使用するアルミ遮熱シート入り寒暖調節マスク」が開示されている。
このアルミ遮熱シート入り寒暖調節マスクによれば、「夏においては、強い日射しをアルミ材が反射し遮り、前記アルミ遮熱シートの裏面が暑い外気を断熱する特徴に富むため、マスク内部に熱がこもらず涼感を保つ」とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017−115284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に開示されたアルミ遮熱シート入り寒暖調節マスクは、ガーゼや不織布の間にアルミ遮熱シートを挿入する3層構造であり、そもそもそれだけで夏場にはマスク内が暑くなり、さらに間に挿入されるアルミ遮熱シートは通気性が悪く、外気は遮断できたとしても、マスク内は息苦しくなる。
また、マスク内の湿気はより高くなり、体温の上昇を招き熱中症のリスクを回避できるものではない。
【0007】
本発明は、上記のような問題点に鑑み、高い通気性を備え、外気の暑い夏に装着しても快適で、かつ、せきやくしゃみなどによる飛沫が周囲に飛び散るのを防止することができるマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題を下記の手段により解決した。
〔1〕装着者の顔面に鼻孔及び口部を覆うように装着され、少なくとも咳やくしゃみなどによる飛沫感染を防止するマスクであって、
表生地と、裏生地とからなるマスク本体と、前記マスク本体の両側に設けられた耳掛部とを備えてなり、
前記表生地が多数の通気孔が設けられてなることを特徴とするマスク。
〔2〕前記表生地に設けられる多数の通気孔の大きさが、縦、横の長さがそれぞれ0.1〜1.0mmの孔であることを特徴とする前記〔1〕に記載のマスク。
〔3〕前記表生地に設けられる多数の通気孔が、縦方向には1〜5mmの間隔、横方向には1〜5mmの間隔離して設けられてなることを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載のマスク。
〔4〕前記表生地が、伸縮性を備えた生地からなり、その表面にフッ素樹脂加工が施されてなることを特徴とする前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のマスク。
〔5〕前記裏生地が、セルロース系繊維を含み、防菌、防臭加工が施されてなることを特徴とする前記〔1〕に記載のマスク。
【発明の効果】
【0009】
本発明のマスクによって、下記の効果が発揮される。
〔1〕装着者の顔面に鼻孔及び口部を覆うように装着され、少なくとも咳やくしゃみなどによる飛沫感染を防止するマスクであって、表生地と、裏生地とからなるマスク本体と、前記マスク本体の両側に設けられた耳掛部とを備えてなり、前記表生地が多数の通気孔が設けられてなるので、通気性に優れ、外気温度の高い夏でも快適に装着できる。
〔2〕前記マスクの表生地に設けられる多数の通気孔の大きさが、縦、横の長さがそれぞれ0.1〜1.0mmの孔で、縦方向には1〜5mmの間隔、横方向には1〜5mmの間隔が設けられているので、優れた通気性を備えつつ、防水性を備え、かつ咳やくしゃみなどの飛沫が飛び散るのを防止することができる。
〔3〕前記マスクの表生地が、伸縮性を備えた生地からなり、その表面にフッ素樹脂加工が施されているので、顔の形状に合わせしっかりと装着でき、かつ高い撥水効果と防汚効果を備える。
〔4〕前記マスクの裏生地が、セルロース系繊維を含み、防菌、防臭加工が施されてなるので、滑らかで柔らかい肌触りと、優れた接触冷感性を備え、かつウィルスの繁殖を抑え、汗や唾などの分泌物から生じる悪臭を消臭し、長時間でも爽やかで衛生的に装着できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】本発明にかかるマスクの表生地の説明用拡大写真
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明にかかるマスクの一実施例を、図に基づいて説明する。
図1は本発明にかかるマスクの一実施例の斜視図、
図2は本発明にかかるマスクの一実施例の正面図、
図3は本発明にかかるマスクの一部断面図、
図4は本発明にかかるマスクの表生地の説明用拡大写真である。
図中、1はマスク、2はマスク本体、21は表生地、21aは通気孔、22は裏生地、3は耳掛部である。
【0012】
本発明にかかるマスク1は、
図1の本発明にかかるマスクの一実施例の斜視図及び
図2の本発明にかかるマスクの一実施例の正面図に示すように、装着者の顔面に鼻孔及び口部を覆うように装着されるマスクである。
本実施例において、本発明にかかるマスクは、左右対称の2つのシート状部材を接合し、開いた状態で鼻及び口に当たる部分が外方へ膨らんだ形状となるように立体的に形成され、装着者の顔面にフィットする構造となっている。このような立体型であれば、顔とマスクとの隙間が限りなく少なくなり、咳やくしゃみなどによる飛沫感染の防止に高い効果を備える。
なお、本実施例では立体型マスクを例として説明するが、本発明の構成は、立体型マスクに限定するものではなく、矩形のマスクや、マスク本体に複数の襞をプリーツ状に折り込んだプリーツ型マスク等にも適用できる。
また、耳掛部3は、マスク本体の両側に設けられる一般的なものであり、本実施例では、マスク本体2の両側に耳掛け用の紐を取り付けているが、マスク本体2と同種の生地で耳掛部を形成したものであってもよく、マスクとして耳に掛けられる構造であれば、特に限定されるものではない。
また、より顔面にフィットさせるため、中央上端にワイヤーを挿入したものであってもよい。
【0013】
上記のように、本発明にかかるマスク1は、表生地21と、裏生地22とからなるマスク本体2と、マスク本体2の両側に設けられた耳掛部3とを備えるものであり、表生地21に多数の通気孔21aが設けたところに特徴を有する。
一般に使用されている布マスクに使われるガーゼはメッシュ状で、本来通気性が高いが、一枚では飛沫がメッシュをすり抜け、飛散を防止できずマスクとしての機能を果たさないため、ガーゼを何重にも折り重ねて多層にして使われる。そのため、通気性は格段に悪い。
一方、本発明にかかるマスク1は、マスク本体2が表生地21と裏生地22の二層で構成され、装着時に外側となる表生地21に通気性能を高めるための多数の通気孔21aが形成されているので、飛沫が飛び散るのを防止しつつ、高い通気性を備える。
図3は、マスク1の一部断面図であり、表生地21には多数の通気孔21aが設けられ、その裏面に裏生地22が積層され、マスク本体2を構成している。この表生地21に設けられた多数の通気孔21aによって、マスク内の通気性を高め、マスク内の熱を逃がし、口元を快適にする。
【0014】
ところで、通気性を高めるため、単にマスク本体2に多数の通気孔21aを設けたのでは、マスクとして求められる機能である咳やくしゃみなどによる飛沫が飛散するのを防止するという効果が達成できない。
そこで、本発明では、通気孔21aの大きさを、縦、横の長さをそれぞれ0.1〜1.0mm程度の孔で構成している。
【0015】
図4は、本発明にかかるマスクの表生地の説明用拡大写真であり、(a)は表生地21、(b)は通気孔21aの拡大部分を示す。
図4(a)に示すように、通気孔21aは、表生地21全体に多数設けられていて、縦、横の長さはそれぞれ0.1〜1.0mm程度の大きさで構成される。
(b)に示す通気孔21aは、縦の長さは概ね0.5mm、横の長さは概ね0.3mmである。
この通気孔21aの大きさは、0.1mmより小さいと通気性が悪くなり、快適性を損なう。また、1.0mmより大きいと撥水加工をしていても水が浸透し防水性を損なう。
したがって、高い通気性と、防水性を保持するためには、縦、横の長さはそれぞれが0.1〜1.0mm程度がよく、特に縦、横の長さをそれぞれ0.3〜0.6mm程度の大きさの通気孔21aとすると、通気性が非常によく、水漏れ等のおそれもなく好適である。
【0016】
また、前記通気孔21aの表生地21における配置は、縦方向(Y)には1〜5mmの間隔、横方向(X)には1〜5mmの間隔を空けておくと、より優れた通気性と防水性を備えたものとなる。
これは、通気孔21aの配置が近すぎると、数が多くなり通気性は向上するものの、防水性能を低下させ、通気孔21aの配置が遠すぎると、防水性能は向上するものの、通気性が低下するためである。
【0017】
また、本発明にかかるマスク1の表生地21は、伸縮性を備えていることが好ましい。
マスクの形状によって異なるが、
図1に示すような立体型マスクの場合には、少なくとも表生地21が伸縮性を有する生地であれば、装着者の顔にフィットしやすく、ずれにくい。
例えば、ポリエステルとポリウレタンからなるニット地であれば、伸縮性に優れ、通気性もあり肌触りがよく好適である。ニット地を構成する糸に抗菌剤、防臭剤を含浸することで、抗菌作用を備えることもできる。
また、表生地21に形成される通気孔21aによる通気性とマスクに必要とされる撥水性を両立するため、その表面にフッ素樹脂加工が施してもよい。表生地21の表面をフッ素樹脂で覆うことで薄い皮膜を作り、通気性を維持しつつ、高い撥水性・防汚性を備えたマスクとなる。
【0018】
マスク本体2の裏側、すなわち、装着者の鼻や口が接する側の裏生地22は、肌触りの良さを備え、衛生面を考慮した防菌、防臭加工が施されてなる。
そのため、裏生地22は、肌触りの良さから、セルロース系繊維が好適に用いられる。
セルロース系繊維として、例えば、綿、麻、レーヨン、キュプラレーヨン、リヨセル、テンセルが挙げられる。
特にレーヨンは、熱伝導率が、0.58W/m・Kであり、熱量拡散が速いことから、直接肌に接触する裏生地22に用いるとひんやりとした接触冷感性を備え、より快適なマスクとなる。
本実施例においては、裏生地22は、レーヨンのモダール(レンツィンク アクチェンゲゼルシャフト社製)とテンセル及び綿から構成した。モダールは、絹のような特徴を有し、手触りが滑らかであり、光沢感があって吸湿性に優れ、かつ放湿性にも優れているので、装着した際に柔軟で爽やかで、冷感を備えた裏生地22となる。
そして、防臭、防菌加工として、例えば裏生地22を構成する繊維に消臭糸を使う。本実施例では、アンモニア消臭機能、雑菌の増殖を押さえる抗菌機能を備えた「デオセル」(モリリン株式会社製の高機能消臭糸)が使われているが、これに限らず同様に防臭、防菌効果を備えた糸であれば適宜採用できる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明にかかるマスクは、高い通気性に加えて、撥水性、防菌性、防臭性を備え、夏でも涼しく快適に装着でき、布マスクや不織布マスクに替わり広く使用できる。また、洗濯することで複数回使用可能で、綿の布マスクのように縮むことがなく、継続して快適に使用できる。
【符号の説明】
【0020】
1 マスク
2 マスク本体
21 表生地
21a 通気孔
22 裏生地
3 耳掛部
【要約】
【課題】
本発明は、高い通気性を備え、外気の暑い夏に装着しても快適で、かつ、せきやくしゃみなどによる飛沫が周囲に飛び散るのを防止することができるマスクを提供する。
【解決手段】
装着者の顔面に鼻孔及び口部を覆うように装着され、少なくとも咳やくしゃみなどによる飛沫感染を防止するマスクであって、表生地と、裏生地とからなるマスク本体と、前記マスク本体の両側に設けられた耳掛部とを備え、前記表生地には多数の通気孔が設けられてなり、前記通気孔の大きさが、縦、横の長さがそれぞれ0.1〜1.6mmの孔に形成されてなるマスク。
【選択図】
図1