【文献】
Path. Res. Pract.,1989年,Vol.184,pp.402-409
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
脂漏性角化症(seborrheic keratosis; SK)は、老人性疣贅ともいい、加齢とともに生ずる褐色から黒褐色の扁平隆起性の小腫瘤である。早ければ20歳代、主に40歳代以降に、顔面、頭部及び体幹などに発生し、80歳代以上ではほぼ全員にみられる。脂漏性角化症は、加齢とともに増える皮膚の良性腫瘍であり、皮膚の老化現象のひとつでもあるため、必ずしも治療を必要とする疾患ではない。しかし、炎症を起こした場合、頭部でくしに引っかかるなど日常生活上不便を来す場合、美容上の問題がある場合などには治療の対象となる。現在では特に、美容上の問題から治療を希望する人が増えている。
【0003】
従来、脂漏性角化症の治療法としては、液体窒素や炭酸ガスレーザーなどを用いた外科的治療法が用いられている。
【0004】
また、脂漏性角化症では基底細胞や有棘細胞の表皮内増殖が認められることから、ケラチノサイト(又は線維芽細胞)の増殖抑制作用を示す物質を、脂漏性角化症の治療に用いることが提唱されている(特許文献1−7)。しかしながら、これらの薬剤には、既に形成された疣を解消する作用はないため、その効果は疣の発生・進展を阻害するといった限定的なものであると考えられる。
【0005】
本発明者らはこれまでに、フコキサンチンをはじめとするカロテノイドが、フィグラリンの発現を増強し皮膚バリア機能の改善効果を示すこと、フコキサンチンがマスト細胞の分化・脱顆粒反応を抑制してかゆみ抑制効果を示すこと等を報告している。しかしながら、カロテノイドの脂漏性角化症に対する効果については何ら知られていない。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、カロテノイドを含有してなる、脂漏性角化症の予防又は改善剤(以下、「本発明のSK改善剤」と略記する場合がある。)を提供する。
【0013】
本発明のSK改善剤の有効成分であるカロテノイドとしては、特に制限はないが、例えば、フコキサンチン(FX)、ルテイン、アスタキサンチン(AX)、アンテラキサンチン、ゼアキサンチン、カンタキサンチン、クリプトキサンチン、ビオラキサンチン、カプサンチン、リコピン、α-カロテン、β-カロテン、γ-カロテン、δ-カロテン及びそれらの誘導体などが挙げられる。
【0014】
誘導体としては、例えば、グリシン、アラニン等のアミノ酸とのエステル類、酢酸、クエン酸等のカルボン酸とのエステル類、リン酸、硫酸等の無機酸とのエステル類、またはエイコサペンタエン酸やドコサヘキサエン酸等の高度不飽和脂肪酸、オレイン酸やリノール酸等の不飽和脂肪酸や、パルミチン酸やステアリン酸等の飽和脂肪酸等との脂肪酸エステル類等から選択されるモノエステル体、及び同種もしくは異種のジエステル体、グルコシド等の配糖体類等が挙げられる。
【0015】
カロテノイドは塩の形態であってもよい。例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、またはパラトルエンスルホン酸塩等の有機酸塩;ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩等の無機塩基塩、トリエチルアンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩、ピリジニウム塩、ジイソプロピルアンモニウム塩等の有機塩基塩;アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸などのアミノ酸塩が挙げられる。
【0016】
カロテノイドは、化学合成品であっても、また、植物、動物、微生物などの天然物から抽出されたものであってもよく、その原料の種類や産地、製法は特に限定されず、一種又は二種以上を配合することができる。
【0017】
好ましい一実施態様において、本発明のSK改善剤は、有効成分として、フコキサンチン(CAS登録番号3351‐86‐8)又はその誘導体(それらの塩を含む)を含有する。フコキサンチンの誘導体としては、例えば、加水分解産物であるフコキサンチノール、フコキサンチノールが脱水化及び異性化を受けたアマロウシアキサンチンA等の他、カロテノイド一般について上記したようなモノ-又はジ-エステル体、グルコシド等の配糖体類等が挙げられる。フコキサンチン又はその誘導体の塩も、カロテノイド一般について上記したのと同様の塩が挙げられる。
【0018】
本発明のSK改善剤に配合される有効成分として、好ましくはフコキサンチン又はフコキサンチノール、より好ましくはフコキサンチンが挙げられる。
フコキサンチンは公知の化合物であり、自体公知の方法で入手することができる。フコキサンチンは、例えば、ワカメ等の褐藻やその他の不等毛藻から自体公知の方法により抽出し、分離精製することができる。例えば、フコキサンチンの調製方法としては、特開2008‐162号公報に記載の方法、後述の実施例に記載の方法等が挙げられるが、それらに限定されない。フコキサンチンは単体であってもよく、あるいは、天然物から抽出する際に用いられた油分の形態で提供されてもよい。また、フコキサンチンは市販されている(例えば、株式会社ファイトロックス製(商品名「インフィニティー50」)、オリザ油化株式会社製)。
フコキサンチノールも公知の化合物であり、例えば、フコキサンチンを、リパーゼやコレステロールエステラーゼなどの脂質分解酵素により加水分解してできるほか、特開2009‐33970に記載の方法により作製することができるが、これらに限定されない。
【0019】
別の好ましい実施態様において、本発明のSK改善剤は、有効成分として、ルテイン(CAS登録番号127‐40‐2)又はその誘導体(それらの塩を含む)を含有する。ルテインの誘導体としては、例えば、3’-デヒドロルテイン、ルテインエポキシド、3’-エピルテイン、アンヒドロルテイン I、アンヒドロルテイン II、アンヒドロルテイン III等の他、ロテノイド一般について上記したようなモノ-又はジ-エステル体、グルコシド等の配糖体類等が挙げられる。ルテイン又はその誘導体の塩も、カロテノイド一般について上記したのと同様の塩が挙げられる。
【0020】
ルテインは公知の化合物であり、自体公知の方法で入手することができる。ルテインは、例えば、マリーゴールドの花弁や、タデの葉、ホウレンソウ等の緑黄色野菜などから自体公知の方法により抽出し、分離精製することができる。例えば、ルテインの調製方法としては、特表2014−529607号公報や特表2014−503665号公報に記載の方法等が挙げられるが、それらに限定されない。ルテインは単体であってもよく、あるいは、天然物から抽出する際に用いられた油分の形態で提供されてもよい。また、ルテインやその誘導体は市販されている(例えば、和光純薬工業株式会社製、オリザ油化株式会社製)。
【0021】
カロテノイドは、(1) ケラチノサイト及び線維芽細胞の増殖抑制作用に加え、(2) 脂肪細胞の形成阻害・蓄積された脂肪の再吸収作用を示すので、脂漏性角化症の発症予防・進展抑制だけでなく、既に形成された疣の解消にも有効である。
【0022】
本発明のSK改善剤は、例えば化粧料、医薬品、医薬部外品等としてヒト又は他の哺乳動物に局所的に適用(例、外用(塗布、スプレー、浸漬等)、点眼、点鼻、吸入、吸引、局所注射など)することができる。例えば、化粧料、外用医薬品または医薬部外品等として利用する場合には、特に限定されるものではないが、例えば軟膏、ローション、スプレー、エアゾールスプレー、クリーム、ゲル、清拭剤、上がり湯用組成物、入浴剤、注射剤などの形態に調製することができる。好ましくは、本発明のSK改善剤は、皮膚外用剤として製剤化される。
【0023】
フコキサンチンをはじめとするカロテノイドはきわめて不安定であるので、安定化剤として、例えば、ヒアルロン酸又はその塩を配合することができる。さらに、プロポリスエキスやラッカセイ種皮エキス等の抗酸化剤を配合することが好ましい。また、別の実施態様においては、フコイダンを配合することもできる。
【0024】
本発明のSK改善剤は、さらに他の抗酸化剤を含有してもよい。好ましい一実施態様においては、特許第5743941号公報に記載されるアスコルビン酸もしくはその誘導体又はその塩やフェノール系酸化防止剤が用いられ得る。例えば、アスコルビン酸もしくはその誘導体又はその塩を本発明のSK改善剤中に配合する場合、製剤の皮膚刺激性を低減するために、単独ではカロテノイドの安定化を十分に達成できない程度の量(例えば、カロテノイドがフコキサンチンもしくはその誘導体又はその塩(以下、「フコキサンチン類」ともいう)の場合、フコキサンチン類に対するモル比として30倍モル未満)を配合させることが望ましい。
【0025】
本発明のSK改善剤には、通常化粧料や医薬品、医薬部外品に用いられるその他の成分を配合することができる。このような任意成分としては、ビタミン類、色素類、無機塩類、油性基剤、界面活性剤、防腐剤、香料等が挙げられる。ビタミン類としては、レチノール、チアミン、リボフラビン、ピリドキシン、シアノコバラミン、アスコルビン酸、コレカルシフェロール、カルニチン、オロット酸などがある。色素類としては、赤色106号、青色1号、だいだい色205号、黄色202号の(1)、黄色203号、緑色3号などがある。無機塩類としては、硫酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、塩化カリウム、ミョウバンなどがある。油性基剤としては、液状ラノリン、ホホバ油、米胚芽油、オリーブ油、マカデミアンナッツ油、スクワラン、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、ミリスチン酸イソプロピル、ワセリン、流動パラフィンなどがある。界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ラウリン酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレングリコールモノステアレートなどが挙げられる。さらに、水(精製水、温泉水、深層水等)、金属セッケン、ゲル化剤、粉体、アルコール類、水溶性高分子、皮膜形成剤、樹脂、紫外線防御剤、包接化合物、消臭剤、pH調整剤、清涼剤、動物・微生物由来抽出物、植物抽出物、血行促進剤、収斂剤、抗脂漏剤、美白剤、抗炎症剤、活性酸素消去剤、細胞賦活剤、保湿剤、キレート剤、角質溶解剤、酵素、ホルモン類、ビタミン類等を加えることもできる。
【0026】
局所的な適用に適した医薬組成物は、公知の製剤方法を利用することによって製造できる。
【0027】
例えば、軟膏剤を調製する場合、所望の効果を損なわない限り、軟膏剤は油脂性軟膏剤であってもよく、水溶性軟膏剤であってもよい。軟膏剤を調製する場合は、カロテノイドにさらに軟膏基剤を含み得る。該軟膏基剤としては、特に限定されるものではないが、一般に炭化水素類、脂肪酸エステル、ロウ類、高級脂肪酸、高級アルコール、水、多価アルコール、低級アルコール等を用いることができる。具体的には、黄色ワセリン、白色ワセリン、流動パラフィン、ミリスチン酸イソプロピル、パラフィン、プラスチベース、シリコーン、ミツロウ、ラノリン、グリセリン、プロピレングリコール、1, 3-ブチレングリコール及びこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
クリーム剤を調製する場合、所望の効果を損なわない限り、クリーム剤は油中水型(W/O型)クリーム剤であってもよく、水中油型(O/W型)クリーム剤であってもよい。クリーム剤を調製する場合は、カロテノイドにさらに乳剤性基剤を含み得る。該基剤としては、特に限定されるものではないが、一般に炭化水素類、脂肪酸エステル、ロウ類、高級脂肪酸、高級アルコール、水、多価アルコール、低級アルコール等を用いることができる。具体的には、黄色ワセリン、白色ワセリン、流動パラフィン、ミリスチン酸イソプロピル、パラフィン、プラスチベース、シリコーン、ミツロウ、ラノリン、グリセリン、プロピレングリコール、1, 3-ブチレングリコール及びこれらの混合物等が挙げられるが、これら
に限定されない。クリーム剤は、さらに、保存剤、抗酸化剤、pH調整剤、界面活性剤などを含んでも良い。
【0029】
ローション剤を調製する場合は、カロテノイドにさらに軟膏基剤を含み得る。該基剤としては、特に限定されるものではないが、一般に炭化水素類、脂肪酸エステル、ロウ類、高級脂肪酸、高級アルコール、水、多価アルコール、低級アルコール等を用いることができる。具体的には、黄色ワセリン、白色ワセリン、流動パラフィン、ミリスチン酸イソプロピル、パラフィン、プラスチベース、シリコーン、ミツロウ、ラノリン、グリセリン、プロピレングリコール、1, 3-ブチレングリコール及びこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されない。ローション剤は、さらに、保存剤、抗酸化剤、pH調整剤、界面活性剤などを含んでも良い。
【0030】
注射剤を調製する場合は、カロテノイドに、pH調整剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤等を添加し、常法を利用して、皮下、筋肉及び静脈内注射剤を製造することができる。pH調整剤及び緩衝剤としては、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等が挙げられる。安定化剤としては、ピロ亜硫酸ナトリウム、EDTA(エデト酸ナトリウム)、チオグリコール酸、チオ乳酸等が挙げられる。局所麻酔剤としては、塩酸プロカイン、塩酸リドカイン等が挙げられる。等張化剤としては、塩化ナトリウム、ブドウ糖等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
本発明のSK改善剤のpHは、例えば、6.5以上9.0以下の範囲であり、6.5以上8.0以下が好ましく、7.0以上8.0以下がより好ましい。
【0032】
上述の製剤形態から明らかなように、好ましい実施態様において、本発明のSK改善剤は乳化物の形態で提供される。従って、本発明のSK改善剤はまた、乳化剤を含有することが好ましい。
【0033】
乳化剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤及び
非イオン性界面活性剤のいずれであってもよい。
乳化剤の中でも、低刺激性であること、環境への影響が少ないこと等から、非イオン性界面活性剤が好ましい。非イオン性界面活性剤の例としては、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0034】
本発明のSK改善剤は、例えば、自体公知の製法(例えば、自然乳化法、界面化学的乳化法、電気乳化法、毛管乳化法、機械的乳化法、超音波乳化法等)を用いて、水中油型乳化物として製剤化することができる。
【0035】
本発明のSK改善剤中に配合されるカロテノイドの割合に特に制限はなく、1回用量が、投与対象においてケラチノサイト及び/又は線維芽細胞の増殖抑制効果、脂肪細胞形成阻害・脂肪再吸収効果が奏されるに十分なカロテノイド量を含有するような割合である限り、いかなる配合割合であってもよい。例えば、0.0001〜100重量%、好ましくは0.001〜10重量%配合することができる。例えば、軟膏剤の場合、指先から第1関節までの量(1FTU)が約0.5gであり、これを両方の手のひら及び指(即ち、手形2枚分(約150cm
2×2)に延ばして塗布するのが適量とされているので、製剤全体0.5g中に、下記用量のカロテノイドが含有される割合で配合することができる。
【0036】
本発明のSK改善剤の投与量は年齢、体重、症状、投与形態及び投与回数等によって異なるが、例えば、軟膏剤の場合、成人に対してカロテノイド量として1日あたり通常0.01〜1000mg/(150cm
2×2)、好ましくは0.1〜100mg/(150cm
2×2)、より好ましくは0.1〜10mg/(150cm
2×2)を、1回又は数回に分けて患部に塗布することができる。
【0037】
本発明のSK改善剤は、カロテノイドとの配合により好ましくない相互作用を生じない限り、他の活性成分、例えば、上記特許文献1−7に記載されるケラチノサイト又は線維芽細胞の増殖抑制作用を有する成分等などをさらに含有していてもよい。また、他の活性成分は、本発明のSK改善剤とは別個に製剤化し、同一対象に対して、同時又は時間差をおいて、また、同一経路又は別経路で投与してもよい。
【0038】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、それらは単なる例示であって、本発明を何ら限定するものではない。
【実施例】
【0039】
実施例1:フコキサンチンの調製
フコキサンチンを以下に示す方法で精製した。フコキサンチンの粉末(インフィニティー50、株式会社ファイトロックス)約5gをシリカゲルに乗せ、展開溶媒(ヘキサン:アセトン=9:1)を約2L流し、緑色の層を約1cm分離した。続いて、析出したフコキサンチンが溶解するまで展開溶媒(ヘキサン:アセトン=3:1)を流した。フコキサンチンの溶解後、アセトンを流し、フコキサンチンが含まれる赤色の流出液を回収した。回収した流出液をエバポレーターで濃縮し、精製したフコキサンチンを得た。純度は98%以上であった。
【0040】
試験例1:皮膚線維芽細胞増殖活性の測定
実施例1で調製したフコキサンチンを用いて、以下に示す方法で皮膚線維芽細胞増殖活性に及ぼす効果を試験した。
NIH3T3細胞を10%牛胎仔血清(FCS)存在下Dulbecco’s modified Eagle’s medium(DMEM)の培地で培養、96 ウェルプレートに1×10
5cells/wellの濃度で播種した。フコキサンチン(0、0.1、1、10 μM)を添加し、24時間後の細胞数を、Cell Count Reagent SF(ナカライテスク、Kyoto, Japan)を用いて、450 nmにおける吸光度として表されるホルマザン産物の量を測定することで比較した。
その結果、フコキサンチンは濃度依存的に皮膚線維芽細胞の増殖を阻害した(
図1)。
【0041】
試験例2:脂肪細胞の形成阻害能
実施例1で調製したフコキサンチンを用いて、以下に示す方法で脂肪細胞の形成阻害能を調べた。
3T3-L1脂肪細胞前駆細胞を、10% FCS,1 mM IBMX (イソブチルメチルキサンチン)、1 μM デキサメタゾン,100 nM インスリンを含む分化誘導培地で分化誘導を行った。このとき、フコキサンチン(0、0.1、1、10 μM)を添加し、2,3日に一度培地交換を行い、観察を行った。
その結果、フコキサンチンは濃度依存的に脂肪細胞の形成阻害効果が位相差顕微鏡像にて認められ、1 μg/ml BODIPY FL (ThermofisherScientific, Tokyo, Japan) を添加、ライブイメージングを行った結果、明確にフコキサンチンにより脂肪滴形成が抑制されていることが分かった(
図2)。
【0042】
実施例2:フコキサンチンを含有する皮膚外用剤の調製及びその安定性試験
組成(質量%):
1. 精製水 80.24
2. ウィルサーフEX 2.0
3. カフレクトPE−1 0.1
4. フコキサンチン 0.1
5. アプレシエ 0.5
6. グリセリン 7.0
7. ヒアルロン酸HA−LQH1P 10.0
8. クエン酸 0.03
9. クエン酸Na 0.03
全量 100.00
ウイルサーフEX:日本油脂製 ポリソルベート20、カプリル酸グリセリル
カフレクトPE−1:交洋ファインケミカル製 フェノキシエタノール
フコキサンチン:ファイトロックス社製 実施例1で調製したもの
アプレシエ:昭和電工製 パルミチン酸アスコルビルリン酸3Na
グリセリン:ミヨシ油脂 濃グリセリン
ヒアルロン酸HA−LQH1P:キューピー製 ヒアルロン酸ナトリウム1%
クエン酸:小松屋 クエン酸
クエン酸Na:小松屋 クエン酸ナトリウム
製造方法:成分1〜9を混合溶解して粘稠な美容液を調製した。
安定性試験:上記美容液を40℃、相対湿度70%にて3ヶ月間保存した。その結果、フコキサンチンは3ヶ月間安定であった。
【0043】
試験例3:脂漏性角化症の改善効果
実施例2で調製した皮膚外用剤を用いて、以下に示す方法でモニタ試験を行い、脂漏性角化症の改善効果を調べた。0.1%フコキサンチン(純品換算)を処方した製剤を小豆大の量を取り、1日2回各患部に塗布し、2週間継続して塗布を行った。
その結果、モニター10名中8名に疣の退縮・消失が認められ、顕著な改善効果を示した。一例を
図3に示したが、イボ中心部の黒い突起が1か月後消失しており老人性イボに対する効果が確認された。