特許第6912773号(P6912773)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6912773成膜基板、基板、およびそれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6912773
(24)【登録日】2021年7月13日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】成膜基板、基板、およびそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/18 20060101AFI20210727BHJP
   C23C 18/36 20060101ALI20210727BHJP
   C23C 18/40 20060101ALI20210727BHJP
   C25D 5/54 20060101ALI20210727BHJP
【FI】
   C23C18/18
   C23C18/36
   C23C18/40
   C25D5/54
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-130671(P2017-130671)
(22)【出願日】2017年7月3日
(65)【公開番号】特開2019-14922(P2019-14922A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2020年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】大 野 元 紀
(72)【発明者】
【氏名】浅 野 雅 朗
(72)【発明者】
【氏名】三 浦 陽 一
(72)【発明者】
【氏名】本 間 敬 之
(72)【発明者】
【氏名】齋 藤 美紀子
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−219724(JP,A)
【文献】 特開2006−016684(JP,A)
【文献】 特開2007−321189(JP,A)
【文献】 特開2002−050627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/00−20/08
C25D 5/00− 7/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板と、
前記ガラス基板上に位置するシード層と、を備え、
前記シード層が、
前記ガラス基板上に位置する、自己組織化単分子膜と、
前記自己組織化単分子膜上に位置し、金を含む第1下地層と、
前記第1下地層上に位置し、ニッケルを含む第2下地層と、
前記第2下地層上に位置し、銅を含む第3下地層と、を有する、成膜基板であって、
前記自己組織化単分子膜が、SAM剤から形成されてなり、前記SAM剤が、3−(2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ)プロピルメトキシシランである、成膜基板
【請求項2】
請求項に記載の成膜基板と、
前記成膜基板のシード層上に位置し、銅を含む導電層と、を備える、基板。
【請求項3】
ガラス基板と、
前記ガラス基板上に位置し、自己組織化単分子膜、第1下地層、第2下地層、および第3下地層を順に有するシード層と、を備える成膜基板の製造方法であって、
ガラス基板上に、SAM剤として3−(2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ)プロピルメトキシシランを用いて自己組織化単分子膜を形成する工程と、
前記自己組織化単分子膜上に、金を含む第1下地層を形成する工程と、
前記第1下地層上に、無電解めっき法によってニッケルを含む第2下地層を形成する工程と、
前記第2下地層上に、無電解めっき法によって銅を含む第3下地層を形成する工程と、を含む、成膜基板の製造方法。
【請求項4】
第2下地層の形成後にアニール処理を施す工程を含む、請求項に記載の成膜基板の製造方法。
【請求項5】
請求項3または4に記載の成膜基板の製造方法により得られた成膜基板と、
前記成膜基板のシード層上に位置する導電層と、を備える、基板の製造方法であって、
前記シード層上に、電解めっき法によって銅を含む導電層を形成する工程を含む、基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜基板、および成膜基板を備える基板に関する。また、本発明は、成膜基板の製造方法、および基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化・多機能化に伴って、半導体部品の内部に形成される回路の高密度化や高速化が求められている。そのため、例えば半導体部品で使用されるシリコン基板では、複数層の配線基板を積層し、各層間をシリコン貫通電極で接続する。このシリコン貫通電極には、電気抵抗が低く信頼性の高い銅が利用される。従来、シリコン基板の表面に各種のめっき処理が施されてきたが、シリコン基板の表面からシード層や銅層が剥離する現象が確認されていた。このような課題に対して、特許文献1では、シリコン基板上に、無電解めっきによって形成した第1無電解めっき層の表面に無電解めっきによって銅合金からなる第2無電解めっき層を形成することが提案されていた。
【0003】
一方、ガラス基板を用いる場合、ガラス基板上にシード層を形成した後、電解めっきにて導電層(銅層)を形成することが検討されてきた。しかしながら、ガラス基板の表面が平坦であるため、ガラス基板とシード層の密着性が悪く、ガラス基板上からシード層が剥離するという技術的な課題が存在した。そこで、ガラス基板の表面の粗化を実施し、シード層との密着性を向上させることが検討されてきたが、ガラス基板の表面が荒れているので電気配線の高周波特性が悪くなり、ガラス基板の透過率も失われるという別の課題も存在した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−8353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ガラス基板の表面の粗化を行わずに、また、電気配線の高周波特性の悪化やガラス基板の透過率の低下を防ぎながら、ガラス基板とシード層との密着性を向上させた成膜基板を提供することにある。また、本発明の目的は、ガラス基板とシード層との密着性を向上させた基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、ガラス基板上に位置するシード層として特定の複数の層を配置することで、ガラス基板とシード層との密着性を向上できることを知見した。本発明はかかる知見によるものである。
【0007】
本発明の一実施形態は、ガラス基板と、前記ガラス基板上に位置するシード層と、を備え、前記シード層が、前記ガラス基板上に位置する、自己組織化単分子膜と、前記自己組織化単分子膜上に位置し、金を含む第1下地層と、前記第1下地層上に位置し、ニッケルを含む第2下地層と、前記第2下地層上に位置し、銅を含む第3下地層と、を有する、成膜基板である。
【0008】
本発明の一実施形態による成膜基板において、前記自己組織化単分子膜が、下記一般式(1)で表されるSAM剤から形成されていてもよい。
R′−Si(OR) ・・・(1)
(式中、R′はアミノ基、ビニル基、メタクリル基、エポキシ基、チオール基、ジスルフィド基、メルカプト基、スルフォン基、またはシアノ基であり、Rは、アルキル基である)
【0009】
本発明の一実施形態による成膜基板において、前記SAM剤は、一般式(1)中のR′がアミノ基であってもよい。
【0010】
本発明の一実施形態による成膜基板において、前記アミノ基を有するSAM剤が、3−(2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ)プロピルメトキシシランであってもよい。
【0011】
本発明の一実施形態は、上記成膜基板と、前記成膜基板のシード層上に位置し、銅を含む導電層と、を備える、基板である。
【0012】
本発明の一実施形態は、ガラス基板と、前記ガラス基板上に位置し、自己組織化単分子膜、第1下地層、第2下地層、および第3下地層を順に有するシード層と、を備える成膜基板の製造方法であって、ガラス基板上に、自己組織化単分子膜を形成する工程と、前記自己組織化単分子膜上に、金を含む第1下地層を形成する工程と、前記第1下地層上に、無電解めっき法によってニッケルを含む第2下地層を形成する工程と、前記第2下地層上に、無電解めっき法によって銅を含む第3下地層を形成する工程と、を含む、成膜基板の製造方法である。
【0013】
本発明の一実施形態による成膜基板の製造方法において、アミノ基を有するSAM剤を用いて自己組織化単分子膜を形成してもよい。
【0014】
本発明の一実施形態による成膜基板の製造方法において、前記アミノ基を有するSAM剤が、3−(2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ)プロピルメトキシシランであってもよい。
【0015】
本発明の一実施形態による成膜基板の製造方法において、第2下地層の形成後にアニール処理を施す工程を含んでいてもよい。
【0016】
本発明の一実施形態は、上記の成膜基板の製造方法により得られた成膜基板と、前記成膜基板のシード層上に位置する導電層と、を備える、基板の製造方法であって、前記シード層上に、電解めっき法によって銅を含む導電層を形成する工程を含む、基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ガラス基板の表面の粗化を行わなくとも、ガラス基板上に位置するシード層として特定の複数の層を配置することで、ガラス基板とシード層との密着性を向上させた成膜基板を提供することができる。また、本発明によれば、このような成膜基板のシード層上に形成した導電層を備える基板を提供することができる。このような基板であれば、電気配線の高周波特性の悪化やガラス基板の透過率の低下を防ぐこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る成膜基板を示す概略断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る基板を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<成膜基板およびその製造方法>
本発明に係る成膜基板は、ガラス基板と、ガラス基板上に位置し、自己組織化単分子膜、第1下地層、第2下地層、および第3下地層を順に有するシード層と、を備えるものである。
また、本発明に係る成膜基板の製造方法は、ガラス基板上に、自己組織化単分子膜を形成する工程と、自己組織化単分子膜上に第1下地層を形成する工程と、第1下地層上に無電解めっき法によって第2下地層を形成する工程と、第2下地層上に無電解めっき法によって第3下地層を形成する工程と、を含むものである。
【0020】
本発明に係る成膜基板は、ガラス基板の表面の粗化を行わなくとも、ガラス基板とシード層との密着性を向上させることができるため、電気配線の高周波特性の悪化やガラス基板の透過率の低下を防ぐこともできる。
【0021】
本発明の一実施形態に係る成膜基板の概略断面図を図1に示す。図1に示した成膜基板1は、ガラス基板10上に、自己組織化単分子膜21、第1下地層22、第2下地層23、および第3下地層24を順に有するシード層20が形成されたものである。以下、各層について詳述する。
【0022】
(ガラス基板)
成膜基板にガラス基板を用いることにより、透明性を保ちながら、基板の絶縁性を高めることができる。成膜基板に用いるガラス基板は、特に限定されるものではないが、例えば、無アルカリガラス等を挙げることができる。無アルカリガラスとは、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ成分を含まないガラスである。無アルカリガラスは、例えば、アルカリ成分の代わりにホウ酸を含む。また、無アルカリガラスは、例えば、酸化カルシウムや酸化バリウムなどのアルカリ土類金属酸化物を含む。無アルカリガラスの例としては、旭硝子製のEN−A1や、コーニング製の#7059などを挙げることができる。
【0023】
ガラス基板の厚さは、特に限定されず適宜調節することができるが、例えば、好ましくは0.1mm以上1.0mm以下であり、より好ましくは0.25mm以上0.45mm以下である。
【0024】
ガラス基板の表面は、自己組織化単分子膜を形成する前に、洗浄処理を行うことが好ましい。洗浄処理の方法は、特に限定されず従来公知の方法を用いることができ、例えば、酸素ガスを用いたプラズマアッシャーで行うことができる。
【0025】
(自己組織化単分子膜)
ガラス基板上に位置する自己組織化単分子膜(Self−Assembled Monolayer:SAM)は、ガラス基板とシード層との密着性を向上するために形成される。自己組織化単分子膜とは、所定の基板に対し、所定の化学結合を形成する官能基を末端基として有する有機分子を用いることにより、その基板の表面に対して、化学結合を形成させ、アンカリングされた有機分子が基板表面からの規制および有機分子間の相互作用によって、秩序的に配列した状態となり、単分子膜となったものを言う。
【0026】
自己組織化単分子膜を形成する材料としては、ガラス基板の表面と化学結合を形成する結合サイトを有する有機分子からなるものを用いることができ、例えば、一般式(1):R′−Si(OR)で表される有機分子からなる物質(いわゆるSAM剤)を挙げることができる。ここで、一般式(1)中、R′基は、反応性官能基であり、OR基は、加水分解性基である。R′基は、例えば、アミノ基、ビニル基、メタクリル基、エポキシ基、チオール基、ジスルフィド基、メルカプト基、スルフォン基、シアノ基等が挙げられ、好ましくはアミノ基である。また、R基は、アルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。SAM剤のOR基が、ガラス基板の表面と化学結合を形成する結合サイトとして機能する。このようなSAM剤としては、例えば3−(2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ)プロピルメトキシシラン(TAS)、(3−アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTMS)、および(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)等を挙げることができ、3−(2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ)プロピルメトキシシラン(TAS)が好ましい。
【0027】
SAM剤を用いた自己組織化単分子膜の形成においては、ガラス基板の表面で、シランカップリングと呼ばれる下記反応式(A)および(B)の反応を生じさせる。下記反応は、一段階目の(A)の反応でSAM剤が加水分解し、二段階目の(B)の反応でガラス基板と縮重合するという2段階の反応である。
R′−Si(OR)+HO⇒R′−Si(OH)+ROH ・・・(A)
R′−Si(OH)+SiOH(表面)⇒R′−Si(OH)−O−Si(表面)+HO ・・・(B)
【0028】
上記反応により、ガラス基板の表面に自己組織化単分子膜が形成され、ガラス基板と反対側にSAM剤の反応性官能基(R′基)が配列し、この反応性官能基上に下記の第1下地層の金属イオンが吸着することになる。
【0029】
(第1下地層)
自己組織化単分子膜上に位置する第1下地層は金を含む金属イオン層である。
【0030】
理論に束縛されるものではないが、金はパラジウムに比べて融点が低く、SAM膜等に拡散し易いため、SAM剤やガラス基板との密着性向上に寄与すると考えられる。
【0031】
第1下地層は、自己組織化単分子膜付きガラス基板を金イオン含有水溶液に浸漬させることで、自己組織化単分子膜の反応性官能基上に金属イオンが吸着して形成することができる。浸漬には、例えば、塩化金酸水溶液を用いることができる。浸漬条件は、金イオン含有水溶液の種類や第1下地層の厚さ等に応じて適宜調節することができるが、例えば、50〜70℃で10分〜30分間行うことができる。
【0032】
金属イオン層は、第2下地層を形成する前に還元剤により還元してもよい。還元剤としては、特に限定されず従来公知の物を用いることができるが、例えば、ジメチルアミノボランが挙げられる。
【0033】
(第2下地層)
第1下地層上に位置する第2下地層は、ニッケルを含む金属層であり、第2下地層の金属組成全体に対して、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上100質量%以下のニッケルを含むものである。第2下地層は、ニッケル以外に、パラジウム等の他の金属元素を含んでもよい。
【0034】
第2下地層は、無電解めっき法によって、第1下地層付きガラス基板をニッケルイオン含有水溶液に浸漬させることで、第1下地層上にニッケルを含む金属層を堆積させて形成することができる。無電解ニッケルめっき浴としては、例えば、硫酸ニッケル、酢酸ニッケル、塩化ニッケル等のニッケル塩と、次亜リン酸塩等の還元剤とを含む水溶液を用いることができ、錯化剤やpH調整剤等がさらに含まれていてもよい。浸漬条件は、ニッケルイオン含有水溶液の種類や第2下地層の厚さ等に応じて適宜調節することができるが、例えば、50〜80℃で1〜30分間、好ましくは50〜70℃で2分〜5分間行うことができる。
【0035】
第2下地層の厚さは、特に限定されず適宜調節することができるが、例えば、好ましくは50nm以上200nm以下であり、より好ましくは60nm以上120nm以下である。
【0036】
第2下地層付きガラス基板は、第3下地層を形成する前にアニール処理を行ってもよい。アニール処理の条件は、特に限定されるものではないが、例えば、不活性気体(例えば、窒素やアルゴン)雰囲気下で、150℃〜250℃程度、好ましくは120℃〜220℃程度で、10分間〜12時間、好ましくは30分〜90分間行うことができる。
【0037】
(第3下地層)
第2下地層上に位置する第3下地層は、銅を含む金属層であり、第3下地層の金属組成全体に対して、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上100質量%以下の銅を含むものである。第2下地層は、銅以外の他の金属元素を含んでもよい。
【0038】
第3下地層は、無電解めっき法によって、第2下地層付きガラス基板を銅イオン含有水溶液に浸漬させることで、第2下地層上に銅を含む金属層を堆積させて形成することができる。無電解銅めっき浴としては、例えば、硫酸銅、硝酸銅、酢酸銅、塩化銅等の銅塩と、還元剤とを含む水溶液を用いることができ、錯化剤やpH調整剤等がさらに含まれていてもよい。を用いることができる。浸漬条件は、銅イオン含有水溶液の種類や第3下地層の厚さ等に応じて適宜調節することができるが、例えば、50〜80℃で1〜30分間、好ましくは60℃で1分〜5分間行うことができる。
【0039】
第3下地層の厚さは、特に限定されず適宜調節することができるが、例えば、好ましくは3nm以上8nm以下である。
【0040】
<基板およびその製造方法>
本発明に係る基板は、上記の成膜基板と、上記の成膜基板のシード層上に位置する導電層と、を備えるものである。
本発明に係る基板の製造方法は、上記の成膜基板のシード層上に電解めっき法によって導電層を形成する工程を含むものである。
【0041】
本発明の一実施形態に係る基板の概略断面図を図2に示す。図2に示した基板2は、ガラス基板10上に、自己組織化単分子膜21、第1下地層22、第2下地層23、および第3下地層24を順に有するシード層20が形成され、シード層20上に導電層30が形成されたものである。なお、ガラス基板およびシード層については、上述の通りである。
【0042】
(導電層)
シード層上に形成する銅を含む導電層は、従来公知の電解めっき法により形成することができる。電解めっき浴としては、硫酸銅溶液、シアン化銅溶液、ピロリン酸銅溶液等が挙げられる。電解めっきの条件は、使用する電解めっき液によって異なるが、例えば、15〜30℃でカソード電流密度0.1〜8.0A/dmの条件でめっきを行うことが好ましい。
【0043】
<用途>
本発明に係る基板は、様々な製品において利用することができる。例えば、ノート型パーソナルコンピュータ、タブレット端末、携帯電話、スマートフォン、デジタルビデオカメラ、デジタルカメラ、デジタル時計、サーバ、スーパーコンピュータ等に搭載される。
【実施例】
【0044】
以下、実施例と比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定解釈されるものではない。
【0045】
<成膜基板の製造>
[実施例1]
下記の工程(1)〜(8)により、ガラス基板上にシード層を形成し、成膜基板を製造した。
(1)ガラス基板(厚さ0.4mm)を用意し、印加電圧300Wで酸素ガスを用いたプラズマアッシャーでガラス基板の表面を2〜10分洗浄した。
(2)洗浄したガラス基板を下記の自己組織化単分子膜用溶液1中に55〜70℃で10〜30分間浸漬し、ガラス基板上に自己組織化単分子膜を形成した。
(自己組織化単分子膜用溶液1の組成)
・3−(2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ)プロピルメトキシシラン(TAS)(SAM剤)
(シグマアルドリッチジャパン合同会社製) 5質量部
・トルエン
(関東化学株式会社製) 95質量部
(3)自己組織化単分子膜付きガラス基板をメタノール(関東化学株式会社製、特級)中で5〜10分間、出力4.2kHzで超音波洗浄処理した。
(4)洗浄した自己組織化単分子膜付きガラス基板を、下記の第1下地層用溶液1中に10〜30分間浸漬して、自己組織化単分子膜上に金を含む第1下地層を形成した。
(第1下地層用溶液1の組成)
・塩化金酸(四水和物)水溶液(HAuCl・4HO)
(田中貴金属工業株式会社製) 0.004mol/L
・塩酸(HCl)
(関東化学株式会社製) 25ml/L
(5)第1下地層付きガラス基板を0.05mol/Lのジメチルアミノボラン水溶液(関東化学株式会社製、特級)に20〜30秒浸漬して、還元剤としての金イオンを還元処理した。
(6)無電解めっき法によって、還元処理を施した第1下地層付きガラス基板を下記の第2下地層用溶液中に55〜70℃で2分間浸漬して、第1下地層上にニッケルを含む第2下地層(厚さ100nm)を形成した。
(第2下地層用溶液の組成)
・酢酸アンモニウム水溶液(CHCOONH
(関東化学株式会社製、特級) 0.4mol/L
・硫酸ニッケル水溶液(NiSO・6HO)
(関東化学株式会社製、特級) 0.1mol/L
・次亜リン酸ナトリウム水溶液(NaHPO・HO)
(pH5.5〜6.1、関東化学株式会社製) 0.2mol/L
(7)第2下地層付きガラス基板を、窒素雰囲気中、200℃で1時間アニール処理した。
(8)無電解めっき法によって、アニール処理を施した第2下地層付きガラス基板を下記の第3下地層用溶液中に55〜70℃で2分間浸漬して、第2下地層上に銅を含む第3下地層(厚さ3nm)を形成し、成膜基板を得た。
(第3下地層用溶液の組成)
・ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸溶液(EDTA−OH)
(関東化学株式会社製) 0.025mol/L
・硫酸銅(II)・五水和物水溶液(CuSO4・5H2O)
(関東化学株式会社製) 0.01mol/L
・ホルムアルデヒド(HCHO)
(pH9〜10にKOHで調整、関東化学株式会社製) 3ml/L
【0046】
[比較例1]
上記工程(2)において自己組織化単分子膜を形成しない以外は実施例1と同様にしてガラス基板上に第1下地層〜第3下地層を形成しようと試みたが、第1下地層〜第3下地層は形成できなかった。
【0047】
[比較例2]
上記工程(4)において、下記の第1下地層用溶液2を用いた以外は実施例1と同様にして、自己組織化単分子膜上にパラジウムを含む第1下地層を形成し、成膜基板を得た。
(第1下地層用溶液2の組成)
・塩化パラジウム水溶液
(関東化学株式会社製) 0.2g/L
・塩酸(HCl)
(関東化学株式会社製) 25ml/L
【0048】
[比較例3]
上記工程(4)において、上記の第1下地層用溶液2を用いた以外は実施例2と同様にして、自己組織化単分子膜上にパラジウムを含む第1下地層を形成し、成膜基板を得た。
【0049】
[比較例4]
上記工程(4)において、上記の第1下地層用溶液2を用いた以外は実施例3と同様にして、自己組織化単分子膜上にパラジウムを含む第1下地層を形成し、成膜基板を得た。
【0050】
[比較例5]
上記工程(2)において自己組織化単分子膜を形成しない以外は比較例2と同様にしてガラス基板上に第1下地層〜第3下地層を形成しようと試みたが、第1下地層〜第3下地層は形成できなかった。
【0051】
<基板の製造>
電解めっき法によって、上記で得られた実施例1および比較例1〜5の成膜基板を下記の導電層用溶液中に浸漬し、電流を流して、成膜基板の第3下地層上に銅を含む導電層を形成し、基板を得た。
(導電層用溶液の組成)
・硫酸銅(II)・五水和物水溶液(CuSO・5HO) 0.2mol/L
・80w%硫酸HSO4 86.8ml/L
・塩素イオン(Cl) 1.2ml/L
・光沢剤 2ml/L
【0052】
<基板の評価>
上記で得られた実施例1および比較例1〜5の基板について、試験用テープとして3M製のメンディングテープを用いて、基板の導電層面に試験用テープを1cm貼り付けて、めっき面に45°の角度で試験用テープを引っ張って剥がすことによって、シード層および導電層の密着性を下記の基準で評価した。評価結果を表1に示した。
(評価基準)
・○:ガラス基板からシード層および導電層が剥離しなかった。
・×:ガラス基板からシード層および導電層が剥離した。
【0053】
【表1】
【符号の説明】
【0054】
1 成膜基板
2 基板
10 ガラス基板
20 シード層
21 自己組織化単分子膜
22 第1下地層
23 第2下地層
24 第3下地層
30 導電層
図1
図2