(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6912822
(24)【登録日】2021年7月13日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】高度にアミノ化された自己集合官能化メソポーラスシリカナノ粒子及び合成方法
(51)【国際特許分類】
C01B 37/00 20060101AFI20210727BHJP
A61K 47/30 20060101ALI20210727BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20210727BHJP
【FI】
C01B37/00
A61K47/30
A61K9/14
【請求項の数】17
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-501351(P2018-501351)
(86)(22)【出願日】2016年7月20日
(65)【公表番号】特表2018-527278(P2018-527278A)
(43)【公表日】2018年9月20日
(86)【国際出願番号】EP2016067327
(87)【国際公開番号】WO2017013182
(87)【国際公開日】20170126
【審査請求日】2019年7月12日
(31)【優先権主張番号】LU92783
(32)【優先日】2015年7月22日
(33)【優先権主張国】LU
(73)【特許権者】
【識別番号】518008275
【氏名又は名称】ルクセンブルク インスティトゥート オブ サイエンス アンド テクノロジー(リスト)
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】コーン,ガエル
(72)【発明者】
【氏名】レノーブル,ダミアン
(72)【発明者】
【氏名】トマン,ジャン−セバスチャン
【審査官】
廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2013/0177934(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0079606(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0254890(US,A1)
【文献】
特開2010−133048(JP,A)
【文献】
特開平05−254827(JP,A)
【文献】
特開2010−202505(JP,A)
【文献】
特表2014−512409(JP,A)
【文献】
CAUDA Valentina ET al.,J.AM.CHEM.SOC.,米国,2009年,Vol.131,No.32,p.11361-11370
【文献】
ZHANG Xueao ET al.,J.Am.Ceram.Soc.,2007年,Vol.90,No.3,p.965-968
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20−39/54
C01B 33/00ー33/193
A61K 9/00−9/72
A61K 47/00−47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
官能化メソポーラスシリカナノ粒子の合成方法であって、前記方法は、下記の
a)シリカ前駆体、界面活性剤及び縮合剤を溶媒中で縮合させ、非凝集メソポーラスシリカナノ粒子を合成する工程;
b)オルガノトリエトキシシランを添加し、非凝集メソポーラスシリカナノ粒子を官能化する工程;
c)前記界面活性剤を除去する工程;
を含み、前記シリカ前駆体に対する前記オルガノトリエトキシシランの部分が5〜15%であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記部分は、8〜12%であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記部分は、10%であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記シリカ前駆体はテトラエチルオルトシリケートであり、前記界面活性剤はセチルトリメチルアンモニウムクロライドであり、前記縮合剤はトリエタノールアミンであり、及び/または前記オルガノトリエトキシシランは(3−アミノプロピル)トリエトキシシランであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記シリカ前駆体一当量に対する縮合剤の当量数は、1.7〜2.3であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記シリカ前駆体一当量に対する縮合剤の当量数は、2.0であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記シリカ前駆体一当量に対する界面活性剤の当量数は、0.23〜0.29であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記シリカ前駆体一当量に対する界面活性剤の当量数は、0.26であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記オルガノトリエトキシシランは、10〜30分の間で添加されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記界面活性剤を除去する前記工程は、透析プロセスと塩酸中での抽出の組み合わせであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記透析プロセスは五回繰り返されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記溶媒は水及びエタノールの混合物であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記シリカ前駆体の一当量に対する水の当量数は、100〜134または217〜251であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記シリカ前駆体の一当量に対する水の当量数は、117.35または234.7であることを特徴とする請求項12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記シリカ前駆体の一当量に対するエタノールの当量数は、2〜8または9〜14であることを特徴とする請求項12〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記シリカ前駆体の一当量に対するエタノールの当量数は、5.88または11.76であることを特徴とする請求項12〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記メソポーラスシリカナノ粒子は、支持脂質二重層内に組み込まれるように適合されていることを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプセル化及び材料の送達のためのナノベクターとして使用されるように適合されたメソポーラスシリカナノ材料の合成の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
メソポーラスシリカナノ材料は、薬物送達、治療イメージング、及び診断などの様々な生物医学的用途を可能にする。 この文脈において、メソポーラスシリカナノ材料(MNSP)は、薬物送達用途のためのベクターとして広く研究されている。
【0003】
メソポーラスシリカマイクロまたはナノ粒子は、一般的に、テンプレート支援ゾル− ゲル法を用いて合成される。
【0004】
これらのMSNPの周りに様々な構造、例えば支持脂質二重層(SLB)を結合させるために、MSNPの外表面上にある反応性部分でMSNPを官能化することができ、続いてさらなる官能化を可能にする。
【0005】
様々な方法の中で、非特許文献1は、MSNP、特に官能化されたMSNPの自己集合を報告している。 自己集合は、シリカ種の縮合速度を遅くすることになる、ポリアルコールを含有するアルカリ性水媒体中で、構造指向剤として使用される界面活性剤、シリカ前駆体、及びナノ粒子の外面上に機能性部分を提供するオルガノトリエトキシシランを混合することによって提供される。
【0006】
界面活性剤は、セチルトリメチルアンモニウムクロライド(CTACl)である。
【0007】
シリカ前駆体は、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)である。
【0008】
オルガノトリエトキシシランは、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)である。 それは、また、例えば、フェニルトリエトキシシラン(PTES)であることも可能である。
【0009】
ポリアルコールは、トリエタノールアミン(TEA)である。
【0010】
Beinの研究グループによって提供されるプロトコルは、官能化されたMSNPの自己集合を提供するために、前記の試薬の全ての同時縮合を必要とする。
【0011】
従って、水中のTEOS、CTACl、TEAの第一の混合物が調製され、TEOS及びオルガノトリエトキシシランの混合物と共縮合される。TEOS及びオルガノトリエトキシシランを含む第二の混合物は、常にシラン185μmol、すなわちMSNPの調製に関与するシランの総量の2%を含有していた。
【0012】
第二の混合物は、ナノ粒子の成長に応じて、異なる時間に第一の混合物に添加することが可能である。
【0013】
この上記の共縮合原理及びそのような比を使用することにより、非凝集官能化MSNPが得られた。しかしながら、官能化された収率、すなわちナノ粒子の外面に組み込まれたオルガノトリエトキシシランの収率は、オルガノトリエトキシシランの出発濃度に依存し、常にMSNPの製造に関与するシランの総量2%未満である。
【0014】
アミノ基を有するナノ粒子の官能化の収率(続いて、オルガノトリエトキシシランとしてAPTESを使用する)は、ζ電位測定を使用して報告された。
【0015】
pH6で10または30分の粒子成長後に実施されたζ電位実験は、0〜5mVのζ電位を示す。より酸性のpH値では、ζ電位は論理的に増加する(粒子成長の30分後に、pH4で10mVまで、及びpH2で25mV以上まで)。
【0016】
共縮合経路が実施されない時、すなわちオルガノトリエトキシシラン(MSNPの調製に関与するシランの総量の2%に等しい濃度で)を直接(TEOSとの縮合なしで)添加した時、得られた最終ナノ粒子 は(APTESが使用された場合には)凝集されたか、または(PTESが使用された場合には)非官能化されたかのいずれかである。
【0017】
これらの結果は、オルガノトリエトキシシランをこの濃度で使用すると、形成中のナノ粒子の細孔及びチャネルが閉塞されることを示唆している。 しかしながら、予め共縮合を行うと、オルガノトリエトキシシランが加水分解されてオリゴシリケートアニオンが形成され、その後ナノ粒子成長中に構築されたシリカ壁と反応することが可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Bein及び共同研究者、Chem.Mater.、2008、20、7207−7214
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、技術的問題として、官能基の取り込み収率が増強された非凝集官能化MSNPの合成を提供する必要がある。 主要な目的は、それらの官能化MSNPが凝集していないという事実を維持することによって、より大きな安定性でSLBを固定することを可能にするために、MSNPの外面により多くの官能基を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、メソポーラスシリカナノ粒子を自己集合する方法に関する。前記方法は、シリカ前駆体、界面活性剤及び縮合剤を溶媒中で縮合させる工程を含む。次いで、オルガノトリエトキシシランの添加を行う。最後に、前記界面活性剤を除去する工程がある。前記方法は、前記シリカ前駆体に対する前記オルガノトリエトキシシランの部分が5〜15%である点で注目に値する。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、前記シリカ前駆体に対する前記オルガノトリエトキシシランの部分は、6〜14%、好ましくは7〜13%、より好ましくは8〜12%、さらに好ましくは9〜11%である。
【0022】
一実施形態では、前記シリカ前駆体に対する前記オルガノトリエトキシシランの部分は、10%である。
【0023】
一実施形態では、前記シリカ前駆体はテトラエチルオルトシリケートであり、前記界面活性剤はセチルトリメチルアンモニウムクロライドであり、前記縮合剤はトリエタノールアミンであり、及び/または前記オルガノトリエトキシシランは(3−アミノプロピル)トリエトキシシランである。
【0024】
一実施形態では、前記シリカ前駆体一当量に対する縮合剤の当量数は、1.6〜2.4、好ましくは1.7〜2.3、より好ましくは1.8〜2.2、さらに好ましくは1.9〜2.1である。
【0025】
一実施形態では、前記シリカ前駆体一当量に対する縮合剤の当量数は、2.0である。
【0026】
一実施形態では、前記シリカ前駆体一当量に対する界面活性剤の当量数は、0.22〜0.30、好ましくは0.23〜0.29、より好ましくは0.24〜0.28、さらに好ましくは0.25〜0.27である。
【0027】
一実施形態では、前記シリカ前駆体一当量に対する界面活性剤の当量数は、0.26である。
【0028】
一実施形態では、前記オルガノトリエトキシシランは、10〜30分の間、好ましくは15〜25分の間、より好ましくは20分で添加される。
【0029】
一実施形態では、前記界面活性剤を除去する前記工程は、透析プロセスと塩酸中での抽出の組み合わせである。
【0030】
一実施形態では、前記透析プロセスは五回繰り返される。
【0031】
一実施形態では、前記溶媒はミリQ水とエタノールとの混合物である。
【0032】
一実施形態では、前記シリカ前駆体の一当量に対するミリQ水の当量数は、100〜134または217〜251、好ましくは105〜129または222〜246、より好ましくは110〜124または227〜241、さらにより好ましくは116〜118または233〜235である。
【0033】
一実施形態では、前記シリカ前駆体の一当量に対するミリQ水の当量数は、117.35または234.7である。
【0034】
一実施形態では、前記シリカ前駆体の一当量に対するエタノールの当量数は、2〜8または9〜14、好ましくは3〜7または10〜13、より好ましくは4〜6または11〜12である。
【0035】
一実施形態では、前記シリカ前駆体の一当量に対するエタノールの当量数は、5.88または11.76である。
【0036】
一実施形態では、前記メソポーラスシリカナノ粒子は、支持脂質二重層内に組み込まれるように適合されている。
【0037】
本発明はさらに自己集合メソポーラスシリカナノ粒子に関する。前記自己集合メソポーラスシリカナノ粒子は、少なくとも一つのシリカ前駆体及び少なくとも一つのオルガノトリエトキシシランを含む。 前記メソポーラスシリカナノ粒子は、前記シリカ前駆体に対する前記オルガノトリエトキシシランの部分が5〜15%である点で注目される。
【0038】
一実施形態では、前記シリカ前駆体に対するオルガノトリエトキシシランの部分は、6〜14%、好ましくは7〜13%、より好ましくは8〜12%、さらに好ましくは9〜11%である。
【0039】
一実施形態では、前記シリカ前駆体に対するオルガノトリエトキシシランの部分は、10%である。
【0040】
一実施形態では、前記シリカ前駆体はテトラエチルオルトシリケートであり、及び/または前記オルガノトリエトキシシランは(3−アミノプロピル)トリエトキシシランである。
【0041】
一実施形態では、前記メソポーラスシリカナノ粒子は、支持脂質二重層内に組み込まれる。
【0042】
本発明は、非凝集性であり、かつ前記ナノ粒子の外面上に高レベルの官能化を有する官能化メソポーラスシリカナノ粒子の合成を可能にする点で特に興味深い。これらのタイプの高度に安定したナノ粒子は、負に帯電した支持脂質二重層内に組み込まれるのに適しており、したがって、対象(例えば、薬物、活性部分など)のカプセル化にさらに適している。 薬物送達、治療的イメージング及び診断などの生物医学的用途を想定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】
図1はMSNPのSEM(走査電子顕微鏡)画像であり、そのサイズは53±6nm(50カウント、スケールバー=50nm)である。
【
図2】
図2はMSNPのTEM(透過型電子顕微鏡)画像であり、そのサイズは53±6nm(スケールバー=50nm)である。第二の実施態様による熱装置の概略図である。
【
図3】
図3はMSNPのSEM画像であり、そのサイズは35±6nm(50カウント、スケールバー=35nm)である。
【
図4】
図4はMSNPのTEM画像であり、そのサイズは35±6nm(スケールバー=35nm)である。
【
図5】
図5はMSNPのNTA(ナノトラッキング分析)であり、そのサイズは35±6nm(スケールバー=35nm)である。
【
図6】
図6はMSNP
+のSEM画像であり、そのサイズは50.9±3.6nm(50カウント、スケールバー=50nm)である。
【
図7】
図7はMSNP
+のTEM画像であり、そのサイズは50.9±3.6nm(スケールバー=50nm)である。
【
図8】
図8はMSNP
+のSEM画像であり、そのサイズは36.5±5nm(50カウント、スケールバー=100nm)である。
【
図9】
図9はMSNP
+のNTA分析であり、そのサイズは36.5±5nmである。
【
図10】
図10はCTAClテンプレートの存在及びナノ粒子間の凝集を示すMSNPの硝酸アンモニウム抽出での精製のSEM画像(スケールバー=200nm)である。
【
図11】
図11は酸透析プロセス後のMSNPのSEM画像(スケールバー=200nm)である。
【
図12】
図12は全抽出後の水中に分散したMSNPのSEM画像(スケールバー=200nm)である。
【
図13】
図13は酸透析プロセス前後、及び酸性溶液中での超音波によるテンプレートの全抽出後のMSNP
+の拡散反射IRフーリエ変換(DRIFT)スペクトルを示している。
【
図14】
図14はBarret−Joyner−Halendaモデル決定に使用されるMSNPの窒素吸収を示している。
【
図15】
図15はMSNPの容積中の細孔径分布を示している。
【
図16】
図16は全抽出後のMSNP及びMSNP+のXRDパターンを示している。
【
図17】
図17は水中のMalvern Instruments(pH5.5)で測定されたMSNP及びMSNP
+のζ電位表である。
【
図18】
図18はミリQ水中でのMNSPのNTA分析を示している。
【
図19】
図19はミリQ水中でのMNSP
+のNTA分析を示している。
【発明を実施するための形態】
【0044】
メソポーラス構造の自己集合は、シリカ前駆体としてテトラエチルオルトシリケート(TEOS)、細孔テンプレートとして界面活性剤セチルトリメチルアンモニウムクロライド溶液(CTACI)、及び縮合剤としてトリエタノールアミン(TEA)を用いた放射状成長によって実現された。
【0045】
この合成によって、TEM及びSEM写真(
図1及び2)によって示されるように、約54nmの乾燥サイズを有する非凝集MSNPが形成された。
【0046】
より小さいMSNPは、血液脳関門などの生物学的障壁を横断するための視点で潜在的な関心を有する。この目的のために、2つの試薬を希釈して、約35nmのサイズの粒子を得ることによってMSNPのサイズを減少させた。 反応物質の濃度が減少すると、シリカ核の縮合が遅くなり、それが、これらのMSNPのサイズの減少を説明することができる(
図3及び
図4)。
【0047】
流体力学的サイズの研究中に、Nano Tracking Analysis(NTA)(
図5)を使用することによって、35nmのMSNPの少なくはあるが依然として有意な粒子内凝集が観察された。35nmのMSNPは、それらのサイズが小さいため、55nmのものよりも水中で凝集する傾向がある。
【0048】
アミノ部分を有するMSNPの官能化は、正に荷電したナノ粒子を提供する。 これらの正に荷電したナノ粒子(MSNP
+)は、負に荷電した支持脂質二重層などの負に荷電した構造に取り込まれるために使用される。
【0049】
高濃度のアミノ部分は、負に荷電した支持脂質二重層及びMSNP
+間の静電相互作用を強化することが期待される。 このようなアミノコーティングを達成するために、MSNP55及び35nm合成の開始の20分後に(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)を添加した。 孔を覆うテンプレートCTAClの存在により、このプロセスは、内側面の前に外側ナノ粒子表面を官能化することを可能にする。しかしながら、APTESのナノ粒子内部への拡散のために内面の官能化を排除することは不可能である。
【0050】
MSNP
+(55nm)のサイズは、SEM及びTEM分析によって可視化されている(
図6及び
図7)。
【0051】
官能化されていないMSNPと比較して、サイズのわずかな増加が観察される。 35nmのMSNPについても同様のアミノコーティングプロセスが開発された。 MSNP
+(35nm)のSEM特性を
図8に示す。これらの粒子の乾燥サイズは、35nmの非官能化MSNPと比較して有意に変化しない。 それにもかかわらず、水中では、MSNP
+(35nm))は、
図9に示すNTA分析に示されるように、MSNP(35nm)よりも凝集する傾向がある。
【0052】
MSNP
+及びMSNP内のテンプレートを除去するために、いくつかの抽出方法を試験した。酸性条件及びイオン性競合に基づくテンプレート抽出は、テンプレート焼成と比較して粒子凝集を減少させることが記載されている。 エタノール/ HCl抽出、酸透析または硝酸アンモニウム抽出のいずれかに基づくいくつかの方法は既に公開されている。
【0053】
しかしながら、我々のNPにこれらの方法を適用すると、SEM分析によって示すように(
図10及び11)、テンプレートを完全に除去することができない。
【0054】
酸透析及びエタノール/ HCl中の抽出の成功した組み合わせは、全抽出後に水中に分散したMSNPのSEM写真を示す
図12に表示するように非常に効率的であった。
【0055】
MSNP
+(55nm)試料について実施したフーリエ変換赤外分光法(FTIR)は、これらの観察を確認した(
図13)。 2830〜2970cm
−1のC−H伸縮振動及びCTACIテンプレートのC−H屈曲振動1470cm
−1は、全MSNP
+抽出後に消失していた。 テンプレートが除去されると、1630cm
−1での水の曲げピークが、MSNP
+の表面上の親水性シラノール官能基の存在のために増加した。残留界面活性剤を除去する可能性は、APTES官能化によってMSNP
+の細孔が覆われていないことを実証している。さらに、MSNP
+のSEM及びTEM写真は、これらの構造の明確な多孔性を示した(
図6及び7)。
【0056】
MSNPの比表面積及び細孔径は、Brunauer、Emmett、及びTeller(BET)測定によって測定された。Barrett−Joyner−Halendaモデルは、935.5m
2/gの高い表面積(
図14)、及び約2.8nmの孔径分布(
図15)を計算した。
【0057】
NP構造の結晶学的知見を得るために、X線回折(XRD)分析を実施した。
図16に示す広いピークは1.9°に中心があり、蠕虫様構造に起因する可能性がある。 Bragg方程式を用いて計算された細孔径は約2.9nmであり、これはBET理論から計算された値と同様である。
【0058】
MSNP及びMSNP
+のζ-電位を、異なる培地:ミリQ水及びHEPES緩衝液で調べた(
図17)。 これらの測定は、分析前に濾過またはサイズ排除を実施せずに行った。サイズはNTAを使用して測定され、ζ電位はMalvern Nano Zetasizer(登録商標)を使用して測定された。 ミリQ水では、pH値5.8で、MSNP
+は+26.47mVの電荷を有する。Beinの研究グループによって得られた結果と比較して、同様のpH値について、本発明のMSNP
+のζ電位は、有意に高い。 実際、pH値6.0で、Beinのナノ粒子のζ電位は0mV〜5mVである。これは、本発明によるプロトコルに従うとき、オルガノトリエトキシシラン、すなわち(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)によるMSNPの官能化が、そのMSNP
+、すなわち、その外面に反応性有機基を有するナノ粒子をもたらすことが、より有効な方法で進行することを明確に示している。
【0059】
さらなる結果(図示せず)は、pH値4.0で、ζ電位測定値がMSNP
+に+37mVの電荷を示すことを表示している。水中のMSNP
+のサイズは約99nmであり(
図19)、 水中のMSNPのサイズは約68nmである(
図18)。
【0060】
実験セクション
ナノ粒子の合成
化学物質
セチルトリメチルアンモニウムクロライド(CTACl)、TEA:トリエタノールアミン、テトラオルトシリケート(TEOS)、(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)はSigma−Aldrich Co.から購入した。酢酸アンモニウム及びメタノールはBiosolveから購入した。
【0061】
55nmメソポーラスシリカナノ粒子(MSNP55nm)の合成。
Radieys Tech(登録商標)カルーセル中で、アルゴン雰囲気下で10分間攪拌することにより、13.75mL(762.8mmol)のミリQ水、2.23mL(38.2mmol)の無水エタノール及び2.23mL(1.69mmol)の25%CTAClを混合することによって、原液を調製した 。次に、TEA(1.78mL; 13.37mmol)を添加し、完全に溶解するまで原液と混合した。原液を60℃で加熱し、次にTEOS(1.454mL; 6.5mmol)を2〜3分間かけて滴下した。 反応物をアルゴン雰囲気下で2時間撹拌した。 この反応のモル比は、TEOS/CTACl/TEA/H
2O/EtOH 1/0.26/ 2/1 17.35/5.88である。
形成されたメソポーラスシリカナノ粒子は、ワームホール型マトリックスを呈する。
【0062】
35nmメソポーラスシリカナノ粒子(MSNP55nm)の合成。
この反応の間、試薬混合物を二倍に希釈した。Radieys Tech(登録商標)カルーセル中で、アルゴン雰囲気下で10分間、27.5mL(1.52mol)のミリQ水、4.46mL(76.4mmol)の無水エタノール及び2.23mL(1.69mmol)の25%CTAClを混合することによって、原液を調製した 。次に、TEA(1.78mL; 13.37mmol)を添加し、完全に溶解するまで原液と混合した。原液を60℃で加熱し、次に、モル比、TEOS/CTACl/TEA/H
2O/EtOH 1/0.26/ 2/234.7/11.76で、MNSP55nmと同一の合成プロセスを適用した。
形成されたメソポーラスシリカナノ粒子は、ワームホール型マトリックスを呈する。
【0063】
正に荷電したメソポーラスシリカナノ粒子の合成(MSNP
+)。
MSNP55nm反応の20分後、APTES150μl(0.64mmol)を溶液の内部に添加した。 反応物をアルゴン雰囲気下で2時間撹拌した。この反応物のモル比は、TEOS/CTACl/TEA/H
2O/EtOH/APTES 1/0.26/ 2/117.35/5.88/0.1である。
【0064】
テンプレート抽出
テンプレート抽出は、透析法と塩酸洗浄とを組み合わせて実施した。 透析法では、50mLのメソポーラスシリカナノ粒子を、セルロース(Molecular Weigh Cut Off=15000Da、Spectrum Labs)からなる透析膜に移した。ナノ粒子を、3M酢酸及びエタノール(1:1)を含む混合物1Lに対して24時間、洗浄して、ナノ粒子細孔の中からCTAClを除去した。このプロセスを5回繰り返した。 残留界面活性剤を除去するために、NPをHCl/エタノール(100mLのEtOH中の25mLの濃縮HCl)溶液中で洗浄し、続いて、Beckman TM Allegra(登録商標)64Rによって45000gでの20分間の遠心分離を実施した。NPを超音波処理下で2時間、抽出溶液中で5回洗浄した。 そして最後に水洗いを一回行った。
【0065】
ナノ粒子の特性評価
XRD分析
MSNP及びMSNP
+試料を凍結乾燥によって乾燥させ、100mgの粉末を得た。シリカナノ材料は、Bruker D8 Discover(登録商標)HR XRDのX線回折(XRD)によって特徴付けられた。細孔径はBraggの法則nλ=2d sin θ(1)により計算した。但し、nは回折次数(n= 1)、λは回折波長(すなわち銅X線源、λCopper =1.54)、dは原子格子面間の格子間隔、θは入射ビーム及び散乱面間の角度である。
【0066】
BET実験
MSNP及びMSNP
+試料を凍結乾燥によって蒸発させて100mgの粉末を得た。 BET(Brunauer−Emmett−Teller)比表面積(SBET)、比細孔容積(Vp)及び細孔径(Dp)を含むテクスチャ特性を、ASAP 2010マイクロメトリクス装置を用いて収集した低温N
2吸着−脱着測定から決定した。 分析前に、静圧が6.6×10
−4Pa未満になるまで150℃で、真空下で試料を脱ガスした。比表面積は、BET方程式を使用し、物理的に吸着されたN
2分子(0.1620nm
2)の断面積を考慮に入れて、N
2収着等温線から計算した。細孔直径及び細孔径分布は、Barret−Joyner−Halenda(BJH)法を用いて等温線の脱着分岐線から計算した。
【0067】
DLS分析
Malvern Nano Zetasizer(登録商標)は、動的光散乱サイズ(DLS)を使用してNPのサイズとζ電位を測定する。 分析は各試料について0.1mg / mLで行った。
【0068】
NTA分析
ナノ粒子追跡分析(NTA)は、ブラウン運動の速度を粒子サイズに関連付ける光散乱法を用いた。この方法は、液体中のNPの直接的及びリアルタイムの可視化及び分析を可能にする。NTA測定中、NPは集束レーザビームによって照射され、電荷結合素子(CCD)カメラのイメージセンサ上で顕微鏡内の個々の粒子によって散乱された光によって分析される。カメラは、溶液中の粒子のフレームを可視化し、記録する。 NTAソフトウェアは、ブラウン運動下で移動する粒子を識別し、個々に追跡する。この測定は、Stokes−Einstein方程式を用いて粒子サイズを計算するために、液体の温度及び粘度を使用する。Nanosight(登録商標)は、30〜1μmのサイズ範囲の粒子を分析する。分析のために試料を0.01mg / mLに希釈した。
【0069】
FT-IR分光法
各試料を1.5:100の重量比でKBrと混合した。試料を2分間粉砕し、次いで450kg.cm
-3下でプレスしてペレットにした。 スペクトルは、減衰全反射(ATR)を介してMCT検出器を備えたFTIR Bruker VERTEX 70で行い、KBrバックグラウンドを差し引く。
【0070】
ナノ粒子の走査電子顕微鏡(SEM)分析
各シリカ試料(MSNP
+及びMSNP)の一滴を銅支持体上に堆積させ、3時間乾燥させた。2kVで動作するFEI HELIOS NanoLab 650(登録商標)走査型電子顕微鏡で画像を取得した。
【0071】
ナノ粒子の透過電子顕微鏡(TEM)分析
MSNPの関連する分散を保証するために、15nmの窒化物単分子層を有するNanoPlusGridを分析支持体として使用した。各シリカ試料の1滴をグリッド上に堆積させ、測定前に完全に乾燥させた。ナノ粒子の形状、多孔度及びサイズは、200kVで動作するFEI Tecnal(登録商標)透過電子顕微鏡(TEM)によって特徴付けた。