特許第6912877号(P6912877)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6912877
(24)【登録日】2021年7月13日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20210727BHJP
【FI】
   G03G15/20 510
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-198720(P2016-198720)
(22)【出願日】2016年10月7日
(65)【公開番号】特開2017-111425(P2017-111425A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2019年9月20日
(31)【優先権主張番号】特願2015-243886(P2015-243886)
(32)【優先日】2015年12月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浪崎 広介
(72)【発明者】
【氏名】中西 正行
(72)【発明者】
【氏名】大石 真嗣
【審査官】 渡邉 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−235245(JP,A)
【文献】 特開2011−070014(JP,A)
【文献】 特開2008−203758(JP,A)
【文献】 特開2007−272088(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0272756(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0076072(US,A1)
【文献】 特開平04−294373(JP,A)
【文献】 特開2013−152464(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0189004(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0329708(US,A1)
【文献】 特開2012−163820(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0201579(US,A1)
【文献】 特開2008−275873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着ローラと、
熱源を有する加熱ローラと、
前記定着ローラと前記加熱ローラとに架け渡された無端ベルトと、
前記無端ベルトの内周面に接触する接触面を有するパッドと、
前記接触面を前記内周面に圧接させる方向に前記パッドに付勢力を作用させる付勢部材とを備え、
前記パッドは、前記付勢力を受けて前記加熱ローラの回転軸を中心に揺動自在に構成され
さらに、前記パッドは、前記接触面と前記無端ベルトとの第1接触領域と前記加熱ローラと前記無端ベルトとの第2接触領域との間隔の方が、前記定着ローラと前記無端ベルトとの第3接触領域と前記第1接触領域との間隔よりも、小さくなるように配置された、定着装置。
【請求項2】
前記パッドは、前記接触面が前記加熱ローラに対して前記無端ベルトの搬送方向上流側で前記無端ベルトの内周面と接触するように配置された、請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記パッドは、接触状態にある前記無端ベルトの搬送方向に対応する長さが、接触状態にある前記無端ベルトの法線方向に対応する厚み方向の長さよりも大きい形状を有する、請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記パッドは、前記厚み方向に扁平形状を有し、前記接触面が前記無端ベルトの搬送方向において突条乃至は隆起状の曲面を有する、請求項1から3のいずれかに記載の定着装置。
【請求項5】
前記パッドは、前記無端ベルトの幅方向において、中央部よりも少なくとも一方の端部の方が熱伝導率が高いように構成される、請求項1からのいずれかに記載の定着装置。
【請求項6】
前記パッドは、耐熱性を有する樹脂で製作されている、請求項1からのいずれかに記載の定着装置。
【請求項7】
トナー像を形成し、前記トナー像をシートに転写する画像形成部と、請求項1からのいずれかに記載の定着装置とを備える、画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、加熱ローラ、定着ローラ、及び加熱ローラと定着ローラとに架け渡された無端ベルトを備え、加熱ローラから発せられた熱を、無端ベルトを介して定着ローラへ伝達するように構成された定着装置及びこれを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、トナー像を担持したシートを加熱及び加圧することでトナー像をシートに固着させる定着装置を備える。定着装置の中には、加熱ローラ、定着ローラ、及び加熱ローラと定着ローラとに架け渡された無端ベルトを備え、加熱ローラから発せられた熱を、無端ベルトを介して定着ローラへ伝達することで定着ローラを加熱するように構成されたものがある。
【0003】
このような定着装置では、例えば、無端ベルトの張力の調整のために、無端ベルトの張力が増強する方向へ加熱ローラが複数の付勢部材によって付勢されている。しかし、定着装置では、加熱ローラと無端ベルトとの接触面積が大きいので、加熱ローラや定着ローラの軸方向、すなわち無端ベルトの幅方向における付勢部材の付勢力のバラツキによって、無端ベルトが幅方向の一方へ偏ったり他方へ偏ったりする蛇行が発生しやすかった。
【0004】
そこで、加熱ローラを付勢することに代えて、無端ベルトの内周面に圧接するテンションローラをさらに備える定着装置が提案された。この定着装置では、加熱ローラの周面に接する無端ベルトに比較して平坦な状態の、加熱ローラと定着ローラとの間の無端ベルトにテンションローラが圧接するので、テンションローラと無端ベルトとの接触面積が比較的小さくなり、無端ベルトの蛇行が比較的小さくなる。
【0005】
ところで、近年、定着装置では、ウォームアップ時間の短縮化のために、各種ローラ及び無端ベルトが薄肉化され、熱容量の低下が進んでいる。このため、無端ベルトの幅方向において、無端ベルトに温度ムラが生じやすい。無端ベルトに温度ムラが生じると、トナー像のシートへの定着度合いにムラが生じ、画質が低下する虞がある。
【0006】
そこで、無端ベルトの内周面に対して離接自在なローラを備え、無端ベルトのシート非通過領域が所定温度以上になると、ローラを無端ベルトの内周面に接触させることで、無端ベルトの熱をローラへ放出させ、無端ベルトの非通過領域の過剰な昇温の抑制、及び無端ベルトの幅方向における温度ムラの低減を図る定着装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−275873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載の定着装置では、無端ベルトの内周面に接触する部材はローラであるので、無端ベルトとの接触面積が小さく、伝熱効率が低い。このため、無端ベルトの幅方向における温度ムラの低減効果が小さい。一方、無端ベルトの内周面に接触する部材の無端ベルトとの接触面積を大きくした場合は、伝熱効率が高くなって温度ムラの低減効果は高くなるが、従来の定着装置の構成では、無端ベルトの搬送性の安定化について考慮されていないため、無端ベルトの蛇行が大きくなる虞がある。また、無端ベルトがバタつくことによって、加熱ローラと無端ベルトとの接触面積が変化し、無端ベルトが加熱ローラから受ける熱量が変動して、無端ベルトの温度が安定化しない虞もある。
【0009】
この発明の目的は、無端ベルトの幅方向における温度ムラの低減及び無端ベルトの蛇行抑制をすることができる定着装置及びこれを備える画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の定着装置は、定着ローラ、加熱ローラ、無端ベルト、パッド、及び付勢部材を備える。加熱ローラは、熱源を有する。無端ベルトは、定着ローラと加熱ローラとに架け渡される。無端ベルトを挟んで定着ローラと圧接される加圧体等との間にシートが搬送されるニップ部が形成される。パッドは、無端ベルトの内周面に接触する接触面を有する。付勢部材は、接触面を内周面に圧接させる方向にパッドを付勢する。パッドは、付勢力を受けて加熱ローラの回転軸を中心に揺動自在に構成される。
【0011】
この構成では、無端ベルトの内周面にパッドを圧接させることで、無端ベルトの張力が調整される。無端ベルトの内周面にパッドを圧接させることで、ローラを圧接させる場合と比較して、パッドの体積を小さく抑えつつ無端ベルトとの接触面積を大きくすることができる。パッドと無端ベルトとの接触面積が大きいことで伝熱効率が高くなり、無端ベルトの幅方向における温度ムラが低減される。
【0012】
また、パッドが加熱ローラの回転軸を中心に揺動するので、常に、パッドの接触面の延長線上に、加熱ローラと無端ベルトとの接触領域の一方の端部があるように、パッドの接触面が方向付けられる。このため、パッドと無端ベルトとの接触領域と、加熱ローラと無端ベルトとの接触領域との間隔は、パッドの揺動にかかわらず、一定になる。よって、パッドと無端ベルトとの接触領域と、加熱ローラと無端ベルトとの接触領域との間隔が、なるべく小さくなるように構成することで、パッドが揺動しても上記間隔が大きくなることを防止することができる。このため、無端ベルトのバタツキを抑制できる。
【0013】
無端ベルトのバタツキが抑制されることで、加熱ローラと無端ベルトとの接触面積の変化も抑制され、無端ベルトが加熱ローラから受ける熱量が安定し、無端ベルトの温度も安定する。
【0014】
上述の構成において、前記パッドは、前記接触面が前記加熱ローラに対して前記無端ベルトの搬送方向上流側で前記無端ベルトの内周面と接触するように配置されることが好ましい。この構成では、加熱ローラと無端ベルトとの接触開始位置近傍における無端ベルトのバタツキが抑制されるので、加熱ローラと無端ベルトとの接触開始位置の変動が抑制され、加熱ローラから無端ベルトへ安定的に伝熱される。
【0015】
また、パッドは、接触状態にある前記無端ベルトの搬送方向に対応する長さが、接触状態にある前記無端ベルトの法線方向に対応する厚み方向の長さよりも大きい形状を有することが好ましい。この構成では、パッドの大型化を抑えつつ、パッドと無端ベルトとの接触面積を大きくすることができる。
【0016】
また、パッドは、前記厚み方向に扁平形状を有し、その接触面が無端ベルトの搬送方向において突条乃至は隆起状の曲面を有することが好ましい。この構成では、パッドの大型化が抑えられつつ、無端ベルトとの接触面積を大きくすることが可能となる。
【0017】
さらに、パッドは、接触面と無端ベルトとの第1接触領域と加熱ローラと無端ベルトとの第2接触領域との間隔の方が、定着ローラと無端ベルトとの第3接触領域と第1接触領域との間隔よりも、小さくなる位置に配置されることが好ましい。この構成では、第1接触領域と第2接触領域との間における無端ベルトのバタツキが抑制され、無端ベルトの搬送が安定化する。
【0018】
また、パッドは、前記無端ベルトの幅方向において、中央部よりも少なくとも一方の端部の方が熱伝導率が高いように構成されることが好ましい。この構成では、無端ベルトの幅方向の端部が非通紙領域となった場合は、シートに熱を奪われないので、中央部よりも温度上昇しやすい。このため、無端ベルトの幅方向におけるパッドの熱伝導率を中央部よりも高くすることで、無端ベルトの幅方向の端部の熱が、パッドを介して中央部へ伝熱されやすくなる。これによって、無端ベルトの幅方向において無端ベルトの温度が均一化されやすくなる。
【0019】
また、パッドは、耐熱性を有する樹脂で製作されているので、無端ベルトから熱を受けても安定動作し、また長寿命化が図れる。
【0020】
この発明の画像形成装置は、トナー像を形成し、トナー像をシートに転写する画像形成部と、上述のいずれかの構成の定着装置とを備える。この構成では、無端ベルトの内周面にパッドを圧接させることで、無端ベルトの張力が調整される。無端ベルトの内周面にパッドを圧接させることで、ローラを圧接させる場合と比較して、パッドの体積を小さく抑えつつ無端ベルトとの接触面積を大きくすることができる。パッドと無端ベルトとの接触面積が大きいことで伝熱効率が高くなり、無端ベルトの幅方向における温度ムラが低減される。
【0021】
また、パッドが加熱ローラの回転軸を中心に揺動するので、常に、パッドの接触面の延長線上に、加熱ローラと無端ベルトとの接触領域の一方の端部があるように、パッドの接触面が方向付けられる。このため、パッドと無端ベルトとの接触領域と、加熱ローラと無端ベルトとの接触領域との間隔は、パッドの揺動にかかわらず、一定になる。よって、パッドと無端ベルトとの接触領域と、加熱ローラと無端ベルトとの接触領域との間隔が、なるべく小さくなるように構成することで、パッドが揺動しても上記間隔が大きくなることを防止することができる。このため、無端ベルトのバタツキを抑制できる。
【0022】
無端ベルトのバタツキが抑制されることで、加熱ローラと無端ベルトとの接触面積の変化も抑制され、無端ベルトが加熱ローラから受ける熱量が安定し、無端ベルトの温度も安定する。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、無端ベルトの幅方向における温度ムラを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】画像形成装置の概略構成を示す側面図である。
図2】第1実施形態に係る定着部の側面断面図である。
図3図2の部分拡大図である。
図4】パッドの一例を示す斜視図で、(a)は外観図、(b)は接触面部を省略した外観図である。
図5】パッドの構成図で、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図である。
図6】パッドの構成図で、(a)は左側面図、(b)は右側面図、(c)は図4(b)のVI−VI線矢視図である。
図7】パッドと支持フレームの構成図で、(a)は正面図、(b)は(a)中の円で囲った部分の部分拡大図である。
図8】パッドと支持フレームの構成図で、(a)はパッドの軸方向外方から観た斜視図、(b)は(a)中の円で囲った部分の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に示すように、画像形成装置100は、画像形成部10、中間転写部20、二次転写部30、定着部40、給紙部50、用紙搬送路60及び読取部70を備えると共に、装置本体の上部に自動原稿搬送装置80が搭載されている。画像形成装置100は、読取部70を介して読み取ったカラー又はモノクロ画像データあるいは図外の外部装置から入力されたカラー又はモノクロ画像データを用紙にカラー又は単色で印刷を行う。
【0026】
画像形成部10は、光ビーム走査ユニット1及びそれぞれ同様な構造を有する各色の画像形成部10A〜10Dを備えている。光ビーム走査ユニット1は、半導体レーザを備え、読取部70で読み取られた、カラー原稿に対応するR、G、B色の各画素の画像データをブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の濃度データに変換し、変換後の各濃度データに対応したデューティ比で変調されたレーザ光で画像形成部10A〜10Dの感光体ドラム2A〜2Dの表面を軸方向(主走査方向)に沿って露光走査して、それぞれの静電潜像を形成する。代表して説明する画像形成部10Aは、像担持体としての感光体ドラム2Aを備え、その周囲に回転方向(副走査方向)に沿って帯電器3A、現像器4A及びクリーナ部5Aを備えている。
【0027】
中間転写部20は、中間転写ベルト21、駆動ローラ22、従動ローラ23、一次転写ローラ24A〜24Dを備えて、感光体ドラム2A〜2Dの周面に形成されたトナー像(現像剤像)を、像担持体としての中間転写ベルト21の表面に一次転写する。二次転写部30は、中間転写ベルト21の表面のトナー像を用紙に二次転写する。
【0028】
定着部40は、用紙に転写されたトナー像を加熱溶融して定着し、排紙トレイに排出する。定着部40のより詳細な構成は、図2で説明する。給紙部50は、給紙カセット51や手差しトレイ52を備えており、サイズの異なる用紙を備え、そのうちから選択された用紙を、対応する給紙カセット等から用紙搬送路60に給紙する。
【0029】
定着部40は、図2図3に示すように、定着ローラ41、ランプヒータ等の熱源421を内蔵する加熱ローラ42、及び両ローラ41,42間に架け渡された無端状の定着ベルト43を有する。加圧ローラ45は、定着ベルト43を挟んで定着ローラ41と対向配置されている。なお、加圧ローラ45は、バネ等の付勢部材によって定着ベルト43を介して定着ローラ41に圧接されて、定着ベルト43との間に用紙が搬送されるニップ部を形成する。ローラ41,42の一方は、図略の定着モータによって回転駆動される。これによって、定着ベルト43が周回駆動され、次いで加圧ローラ45が従動回転される。
【0030】
パッド44は、定着部40の支持フレーム40A(図7(a)、(b)及び図8(a)、(b)参照)等によって両端側で支持され、定着ベルト43の内周面側の適所に配置されている。パッド44は、後述する接触面部441が、図3中、矢印で示す、定着ベルト43の周回方向(搬送方向)において定着ローラ41と加熱ローラ42との間、すなわち加熱ローラ42の上流側で定着ベルト43の内周面と接触するように配置される。
【0031】
さらに図4図6に示すように、パッド44は、定着ベルト43の幅寸法に対応する長尺方向の寸法を有する接触面部441と、接触面部441の両端の支持部442と、支持部442の更に外側の当接部443とを備えている。パッド44は、安定動作や長寿命化の点から、好ましくは耐熱性を有する樹脂、例えば、耐熱PPS(Poly PhenyleneSulfide)や耐熱PEEK (Poly Ether Ether Ketone)で製作されている。また、パッド44は、接触面部441が定着ベルト43に圧接される方向に圧縮スプリング等の付勢部材44aによって付勢される。パッド44は、定着ベルト43と圧接接触して、接触位置で、定着ベルト43の周回路を外方に膨らませて、定着ベルト43に所定の張力を維持させるようにしている。当接部443は、後で詳述するように、パッド44の長尺方向外方に延設された板状体で、付勢部材44aが当接して、付勢力が作用する部位となる。
【0032】
接触面部441は、特に図6(c)に示すように、厚み方向に扁平形状を有し、上面の形状は、定着ベルト43の搬送方向において突条乃至は隆起状の曲面を有している。また、接触面部441は、定着ベルト43との接触部位における定着ベルト43の搬送方向に対応する長さ(図3に示す、定着ベルト43との接触開始点P1から離反点P2までの長さ寸法)が接触部位における定着ベルト43の法線方向に対応する長さ(厚み)よりも大きい寸法形状を有して形成されている。これにより、ローラを採用した場合と比べると、接触面部441の大型化を抑えつつ、定着ベルト43との接触面積を大きくすることができる。接触面部441と定着ベルト43との接触面積が大きいことで伝熱効率が高くなり、定着ベルト43の幅方向における温度ムラが低減される。なお、図4(b)、図5(c)に示すように、接触面部441の裏面側には、複数のリブ441aが並設された構造が採用されて強度が維持されている。
【0033】
また、パッド44は、接触面部441と定着ベルト43とが接触する第1接触領域(P1〜P2間、図3参照)と、加熱ローラ42と定着ベルト43とが接触する第2接触領域との間隔の方を、定着ローラ41と定着ベルト43とが接触する第3接触領域と第1接触領域との間隔よりも小さくなる位置に配置している。これにより、第1接触領域と第2接触領域との間における定着ベルト43のバタツキが抑制され、定着ベルト43の搬送が安定化する。
【0034】
また、接触面部441の搬送方向の下流側は、加熱ローラ42の搬送方向の上流側で定着ベルト43と接する部位(接触開始位置P3、図3参照)に向けられている。
【0035】
支持部442は、接触面部441の長尺方向と直交する方向に円環部442aが形成されている。支持部442は、円環部442aが加熱ローラ42の回転軸に外嵌されることで加熱ローラ42周りに回動可能とされる。これによって、パッド44は、加熱ローラ42の回転軸を中心に揺動自在に軸支される。
【0036】
また、図6(a)、(b)、図7(a)、(b)及び図8(a)、(b)に示すように、当接部443は、加熱ローラ42の回転軸に対して周方向の成分を有する向きの当接面を有して形成されており、かつ当接部443の当接面には、定着部40の支持フレーム40Aから切り起こされるなどして形成された突片401が対向して設けられている。そして、当接部443と突片401との間に介設された付勢部材44aによって、当接部443は、上方への付勢力が作用された状態とされ、この上方への付勢力を受けて、パッド44は加熱ローラ42の回転軸を中心に揺動して定着ベルト43と圧接する。なお、当接部443及び突片401には、それぞれ対向する面側に抜け防止用突起部を立設するなどして、スプリング状バネなどの付勢部材44aが脱落しないようにすることが好ましい。また、付勢部材44aとしては、スプリング状バネの他、当接部443に付勢力を作用させるものであれば、種々の部材が採用可能である。また、当接部443と突片401との向きは、上下方向の他、加熱ローラ42の回転軸に対して周方向の成分を有する向きであればよく、例えば周方向の接線と一致させたものとしてもよい。さらに、当接部443として、突片401と対向する側に開口を有する有底の筒体であって、底面を当接面とする態様を採用してもよい。
【0037】
また、パッド44が加熱ローラ42の回転軸を中心に揺動自在となることで、常に、接触面部441の接触面の延長線上に、加熱ローラ42と定着ベルト43との接触領域の一方の端部が位置するように、接触面部441が方向付けられている。このため、接触面部441と定着ベルト43との接触領域と、加熱ローラ42と定着ベルト43との接触領域との間隔は、接触面部441の揺動に関わらず一定になる。接触面部441と定着ベルト43との接触領域と、加熱ローラ42と定着ベルト43との接触領域との間隔(P2〜P3間、図3参照)を小さくなるように構成することで、付勢部材44aに抗してパッド44が揺動しても上記間隔が大きくなることを防止することができ、このため、紙厚に応じた、用紙の通過時におけるニップ開始時点とその終了時点で生じる振動に起因する定着ベルト43のバタツキを抑制できる。そして、定着ベルト43のバタツキが抑制されることで、加熱ローラ42と定着ベルト43との接触面積の変化も抑制され、定着ベルト43が加熱ローラ42から受ける熱量が安定し、定着ベルト43の温度も安定することになる。
【0038】
(第2実施形態)
また、接触面部441は、図4(a)に示すように、定着ベルト43の搬送方向及び法線方向のいずれにも直交する定着ベルト43の幅方向(長尺方向)において、中央部よりも少なくとも一方乃至は両方の端側に熱伝導率が高い材料が採用されている。端側をより高い熱伝導率の材料で構成することで、定着ベルト43の幅方向の端部が非通紙領域となった場合に、用紙に熱を奪われないため中央部よりも温度上昇しやすい。このため、定着ベルト43の幅方向における接触面部441の熱伝導率を中央部よりも高くすることで、定着ベルト43の幅方向の端部の熱が、接触面部441を介して中央部へ伝熱されやすくなる。これによって、定着ベルト43の幅方向において定着ベルト43の温度を均一化し易くしている。なお、一方乃至は両側の高熱伝導率の範囲は、汎用サイズの用紙の通紙領域の外側としてもよい。また、他の態様として、(1)接触面部441の厚みを、両側を中央よりも薄くする。(2)接触面部441の両側の範囲に、放熱効果が期待できる金属材料(例えばAl:アルムニウム)を設ける。アルミニウムは接触面部441のリブ側に取り付ければよい。このようにすることで、(1)では、薄くすることで熱伝動性を良くし、(2)では、アルミニウムで放熱させることができる。
【0039】
(第3実施形態)
また、接触面部441は、定着ベルト43の内周面と接触する突条乃至は隆起状部が長尺方向において一律に等しい形状に構成してもよいが、両端から中央に向かって、前記法線方向における高さが漸次高くする、いわゆるクラウン形状(太鼓状)としてもよい。これによれば、定着ベルト43の蛇行防止が抑制できるため、定着ベルト43のバタツキが抑制されることに加えて、加熱ローラ42と定着ベルト43との接触面積の変動がさらに抑制され、定着ベルト43が加熱ローラ42から受ける熱量が安定し、定着ベルト43の温度もより安定する。
【0040】
上述の実施形態のそれぞれの技術的特徴を互いに組み合わせることで、新たな実施形態を構成することが考えられる。
【0041】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0042】
100 画像形成装置
40 定着部(定着装置)
41 定着ローラ
42 加熱ローラ
43 定着ベルト(無端ベルト)
44 パッド
441 接触面部
442 支持部
44a 付勢部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8