特許第6912897号(P6912897)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6912897
(24)【登録日】2021年7月13日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】アルミニウム材印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 1/28 20060101AFI20210727BHJP
   C09D 11/326 20140101ALI20210727BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20210727BHJP
【FI】
   B41M1/28
   C09D11/326
   B41M5/00 100
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-25556(P2017-25556)
(22)【出願日】2017年2月15日
(65)【公開番号】特開2018-130875(P2018-130875A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2020年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219912
【氏名又は名称】東京インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 茂則
【審査官】 中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−227592(JP,A)
【文献】 特開2012−210715(JP,A)
【文献】 特開2005−015898(JP,A)
【文献】 特表2014−521842(JP,A)
【文献】 特表2015−502458(JP,A)
【文献】 特開平07−101140(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0302761(US,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2014−0094678(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 1/28
B41M 5/00
C09D 11/326
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム材印刷物の製造方法であって、
アルミニウム材表面に予め設定された領域をマスクしてマスクパターンを形成するマスク形成工程と、
前記マスクパターン以外の非マスク領域を着色材により着色する着色工程と、
前記マスクパターンを除去するマスク除去工程と、
を含み、
前記着色材が含水有機溶媒に溶解した油性染料であり
前記マスクパターンのマスク厚さが0.5μm以上7μm以下であることを特徴とする印刷物の製造方法。
【請求項2】
前記マスクパターンが紫外線硬化型インクを用いたインクジェット方式で形成されることを特徴とする請求項1記載のアルミニウム材印刷物の製造方法。
【請求項3】
記紫外線硬化型インクが有機顔料および染料から選ばれた少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項記載のアルミニウム材印刷物の製造方法。
【請求項4】
前記マスク除去工程のマスク除去が研磨による除去であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のアルミニウム材印刷物の製造方法。
【請求項5】
アルミニウム材の印刷方法であって、
アルミニウム材表面に予め設定された領域をマスクしてマスクパターンを形成するマスク形成工程と、
前記マスクパターン以外の非マスク領域を着色材により着色する着色工程と、
前記マスクパターンを除去するマスク除去工程と、
を含み、
前記着色材が含水有機溶媒に溶解した油性染料であり
前記マスクパターンのマスク厚さが0.5μm以上7μm以下であることを特徴とするアルミニウム材の印刷方法。
【請求項6】
前記マスクパターンが紫外線硬化型インクを用いたインクジェット方式で形成されることを特徴とする請求項5記載のアルミニウム材の印刷方法。
【請求項7】
前記マスク除去工程のマスク除去が研磨による除去であることを特徴とする請求項5または6記載のアルミニウム材の印刷方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム材印刷物の製造方法およびアルミニウム材の印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム材料へ文字や絵柄を着色して印刷する方法として、表面に酸化皮膜を形成したアルミニウム材料(以下「アルミニウム材」という。)表面に感光液を塗布してマスクを形成し、写真焼付け用フィルム等を用いて着色しない部分のみに光を照射して光照射部分を硬化させ、未硬化部分を洗い流した後、着色インクをアルミニウム材表面の細孔に浸み込ませて着色し、マスクの硬化部分を研磨除去し、アルミニウム材表面の細孔を閉じて(封孔)、印刷する方法が知られている。
【0003】
前記方法で用いる感光液としては、ゼラチンを主成分としたものが広く用いられ、特に、コロタイプ印刷に用いる重クロム酸ゼラチン溶液が、解像度が高いため汎用されているが、安全性の問題が懸念される。
【0004】
また、特許文献1には、マスク形成工程と、着色工程と、マスク剥離工程とを備え、前記マスク形成工程において、インクジェット方式でマスクを形成することを特徴とするアルミニウム材着色物の製造方法が開示され、前記マスク形成用液体としてアクリル系の紫外線硬化型インクを用いることを特徴の一つとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−227592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1によると、着色工程後のマスク剥離工程ではIPA(イソプロピルアルコール)等の剥離液を用いるとしているが、このマスク剥離工程において、マスクをIPA等の剥離液で剥離しようとすると、特に油性染料ではアルミニウム材表面の細孔に入り込んだ染料が流し出されたり、溶かし出されるため、マスク剥離前に封孔する必要がある。 すなわち、一工程増えてしまうといった問題がある。 なお、特許文献1には着色工程後の封孔について何の記載もない。 さらに、マスクの膜厚が大きいと剥離が困難となるばかりでなく印刷の解像度が低下するといった問題もあった。
【0007】
そこで、本発明は、安全性が高く、効率的かつ鮮明にアルミニウム材へ着色印刷したアルミニウム材印刷物の製造方法およびその印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、アルミニウム材印刷物について鋭意検討した結果、非マスク領域を着色し印刷する際、油性染料を溶解する溶媒に水を含ませることにより、マスクが侵食されないためマスクの膜厚を薄くすることができること、マスクを薄くすることによって次工程のマスク剥離が容易となり印刷の解像度も向上することを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)アルミニウム材印刷物の製造方法であって、
アルミニウム材表面に予め設定された領域をマスクしてマスクパターンを形成するマスク形成工程と、
前記マスクパターン以外の非マスク領域を着色材により着色する着色工程と、
前記マスクパターンを除去するマスク除去工程と、
を含み、
前記着色材が含水有機溶媒に溶解した油性染料であり
前記マスクパターンのマスク厚さが0.5μm以上7μm以下であることを特徴とする印刷物の製造方法、
(2)前記マスクパターンが紫外線硬化型インクを用いたインクジェット方式で形成されることを特徴とする(1)記載のアルミニウム材印刷物の製造方法、
(3)前紫外線硬化型インクが有機顔料および染料から選ばれた少なくとも一つを含むことを特徴とする()記載のアルミニウム材印刷物の製造方法、
(4)前記マスク除去工程のマスク除去が研磨による除去であることを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載のアルミニウム材印刷物の製造方法、
(5)アルミニウム材の印刷方法であって、
アルミニウム材表面に予め設定された領域をマスクしてマスクパターンを形成するマスク形成工程と、
前記マスクパターン以外の非マスク領域を着色材により着色する着色工程と、
前記マスクパターンを除去するマスク除去工程と、
を含み、
前記着色材が含水有機溶媒に溶解した油性染料であり
前記マスクパターンのマスク厚さが0.5μm以上7μm以下であることを特徴とするアルミニウム材の印刷方法、
(6)前記マスクパターンが紫外線硬化型インクを用いたインクジェット方式で形成されることを特徴とする(5)記載のアルミニウム材の印刷方法、
(7)前記マスク除去工程のマスク除去が研磨による除去であることを特徴とする(5)または(6)記載のアルミニウム材の印刷方法、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、前記着色工程において含水有機溶媒に溶解した油性染料を用いることにより、重クロム酸ゼラチンの光硬化マスク、アクリル系の紫外線硬化マスク等、マスクの種類を選ばずこれらを侵すことがないため、マスクの厚さを薄くすることができる。 その結果、マスク剥離が容易となり印刷の解像度も向上する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。 なお、本実施形態は、本発明を実施するための一形態に過ぎず、本発明は本実施形態によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更実施の形態が可能である。
【0012】
本発明のアルミニウム材印刷物の製造方法は、
アルミニウム材印刷物の製造方法であって、
アルミニウム材表面に予め設定された領域をマスクしてマスクパターンを形成するマスク形成工程と、
前記マスクパターン以外の非マスク領域を着色材により着色する着色工程と、
前記マスクパターンを除去するマスク除去工程と、
を含み、
前記着色材が含水有機溶媒に溶解した油性染料、
であることを特徴とする。
【0013】
本発明で用いるアルミニウム材は、着色工程で少なくとも着色を行う領域に陽極酸化被膜が形成されたアルミニウムの部材である。 このアルミニウム材は、アノダイジング処理(アルマイト処理)がされたアルミニウムであってよい。 この処理において、アルミニウム材は、例えば硫酸等の酸性液を用いて酸化処理がされていることが好ましい。 このように処理されたアルミニウム材表面には酸化アルミニウムからなる細孔が形成されている。 アルミニウム材の印刷では、この細孔に着色材が浸透し着色される。
【0014】
本発明のマスク形成工程では、アルミニウム材に、重クロム酸ゼラチン溶液を塗布した後、マスク部分を光硬化させ、硬化部分以外を洗い流す、マスク部分に紫外線硬化型インクを印刷し、紫外線で硬化させる、などの方法によりマスクパターンが形成されるが、環境面を考慮すると、重クロム酸ゼラチンを用いる方法よりも紫外線硬化型インクを用いた印刷による方法が好ましい。 また、印刷によるマスク形成方法においても、インクジェット方式による印刷は版が不要で、インクの使用量も少ないなど環境負荷がさらに小さくなるのでより好ましい。
【0015】
このようにして作成されたマスクの膜厚は、0.5μm以上7μm以下である。 0.5μm未満ではどのマスク形成方法を用いてもマスクに欠陥が生じることがあり、7μmを超えると剥離困難となるばかりでなくマスクパターンの精度が低下するため好ましくない。 なお、本発明においてマスクの膜厚は、インクおよびその固形分の比重を1として、インクの塗布量と固形分量から計算して得られる値である。
【0016】
紫外線硬化型インクを用いたインクジェット方式によるマスク形成の場合、その紫外線硬化型インクの表面張力は、プレート法、25℃で15mN/m以上22mN/m以下が好ましい。 表面張力を15mN/m未満にしようとするとフッ素系溶剤を多用しなければならず、その結果他のインク成分との相溶性が低下し、22mN/mを超えるとマスクの平滑性が不十分となり、ピンホールが発生するため好ましくない。
【0017】
前記紫外線硬化型インクの粘度は、コーンプレート型粘度計を用いて25℃、4mPa・sec以上12.5mPa・sec以下であることが好ましい。 4mPa・sec未満では粘度が低すぎるため、インクジェット方式での印刷に適さない。 12.5mPa・secを超えると吐出安定性に欠け、加温して粘度を下げても溶剤が含まれている場合には溶剤蒸発によって吐出不能となることがある。
【0018】
前記紫外線硬化型インクの表面張力と粘度とを上記の範囲とすることによってマスクパターンとして好ましい膜厚に容易に調整可能となる。 また、アルミニウム材表面への濡れ性にも優れるためアルミニウム材表面へ密着して、その後の着色工程においてはマスクとして十分な機能を果たし、マスク除去工程では、適度な密着性であるため、膜厚が薄いこととも相まって、研磨等により簡単にマスクを除去できるものと考えられる。
【0019】
前記紫外線硬化型インクは、マスクされた領域を容易に視認できるようにするため、有機顔料および染料から選ばれた少なくとも一つを含むことを特徴の一つとする。 これらの有機顔料および染料はインクへの分散性がよく、インクジェットの吐出に問題ないものであれば選ぶものではない。 その含有量も視認できる程度の濃度(例えば、1質量%以下)でよい。
【0020】
本発明で用いる紫外線硬化型インクの有機溶剤等の揮発性成分は30質量%以上が好ましい。 揮発成分が30質量%未満では設定したマスクパターンの膜厚に印刷しようするとレベリングが不足し、マスク領域にピンホール等が生じるため好ましくない。
【0021】
なお、前記紫外線硬化型インクには、より容易に目的とする表面張力および粘度へ調整するためフッ素系化合物を用いることができる。 前記フッ素系化合物としては、DIC 製 メガファック、AGCセイケミカル製サーフロン、ネオス製フタージェント等のうち、溶剤溶解性を有するものが例示できる。 また、前記フッ素系化合物として3Mジャパン 製NOVEC シリーズ、旭硝子製アサヒクリンシリーズ等のフッ素系溶剤を用いることができる。
【0022】
前記紫外線硬化型インクに用いる重合性化合物としては、紫外線照射によりラジカル重合可能なものであれば選ぶものではないが、アクリル系のモノマーやオリゴマーが好適に使用できる。
【0023】
前記紫外線硬化型インクに用いる光重合開始剤は、紫外線線照射によりラジカル重合を開始させる物質を発生させることが可能な化合物であれば選ぶものではないが、2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドなどのアシルフォスフィンオキサイド系開始剤が好ましく用いられる。 これらの光重合開始剤の添加量は、前記紫外線硬化型インク中において、1〜15質量%である。
【0024】
前記紫外線硬化型インクは、光増感剤を含んでいてもよく、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系増感剤が好ましく用いられる。 これらの光増感剤の添加量は、前記紫外線硬化型インク中において、0.01〜10質量%である。
【0025】
前記紫外線硬化型インクは、他に必要に応じて、非反応性化合物、無機充填剤、有機充填剤、カップリング剤、粘着付与剤、消泡剤、レベリング剤、可塑剤、酸化防止剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、難燃剤などを含んでいても良い。 公知慣用のものであればいかなるものも、その特性を損なわない範囲で、制限なく使用することができる。
【0026】
マスク形成工程に次いで、マスクパターン以外の非マスク領域を着色材によって着色する。 着色材としては、含水有機溶媒に溶解した油性染料を用いるのが好ましい。 油性染料の溶媒に水を含ませることで、油性染料または含有溶媒によるマスクの侵食を抑制できるため、マスクの膜厚を薄くすることができ、その結果、マスク剥離が容易となり、印刷の解像度も向上する。
【0027】
なお、アルミニウム材の印刷ではその表面に形成された直径10〜30nm程度の細孔に染料分子が入り込むことによって着色されるため、印刷部分の面積あたりの孔数によって印刷濃度が変化する。 従って、孔数が一定の場合、印刷濃度を上げるには、一個の穴に入り込む染料分子の数を多くする必要があるが、水性染料は、油性染料と比べアルミニウム材表面の細孔との親和性が低いためこの細孔に入り込むことができず、印刷濃度が上がらないものと考えられる。 また、着色材として顔料を用いる場合は細孔を大きくしなければならないため、アルミニウム表面の処理条件を変える必要があるばかりでなく、解像度も低下する。
【0028】
前記の含水有機溶媒に溶解した油性染料を用いて、浸漬、塗布、スクリーン印刷、インクジェット方式による印刷等の方法により着色するが、着色材の使用量を少なくすることを考えると塗布が好ましい。 また、アルミニウム材表面に形成された細孔に着色材を浸透定着させるため、塗布時または塗布後にその表面を布等で擦りつけるのが好ましい。
【0029】
前記含水有機溶媒とは、有機溶媒に水を、溶媒全体の5質量%以上30質量%以下を溶解させたものをいい、前記有機溶媒としては、水を5質量%以上の濃度で溶解可能なもの、ケトン類およびアルコール類等が挙げられる。 前記ケトン類としてはアセトン、エチルメチルケトン等、前記アルコール類としては、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール等の脂肪族モノアルコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテルが例示できる。 これらのケトン類およびアルコール類は、これらを混合して用いてもよい。 なお、油性染料の種類によって前記含水有機溶媒への溶解性は当然、変化するので、それぞれの場合で適宜、配合組成を決める必要がある。
【0030】
前記着色工程の前に、主に意匠性付与を目的として、水酸化ナトリウム水溶液または塩化鉄エッチング溶液でエッチングする工程を追加してもよい。
【0031】
前記着色工程に続いてマスク除去工程によりマスクを除去する。 マスクを除去するにはイソプロピルアルコール)等の剥離液を用いたり、研磨(物理的に除去)することによるが、剥離液を用いると着色部分も溶解してしまうといった問題があるため、炭酸カルシウム、シリカ、ゼオライト等の研磨剤の水縣濁液をバフに含浸させ、そのバフを用いて研磨除去するのが好ましい。
なお、剥離液を用いてマスク除去を行う場合は、剥離液による着色部分の溶解を防ぐため、その前に封孔処理を行ってアルミニウム材表面の細孔を閉じる必要があるが、その場合は、多色刷りができないという問題が生ずる。
【0032】
マスク除去工程の後、必要に応じてアルミニウム材表面の細孔を閉じるため封孔処理を行う。 封孔処理は水蒸気、沸騰水、酢酸ニッケル、ケイ酸ナトリウム等でアルミニウム材を処理することにより行われるが、この封孔処理によりアルミニウム材表面の細孔に入った染料が細孔内に閉じ込められ、耐久性のある印刷物となる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。 なお、例中、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を表す。
【0034】
表1に本発明に用いたマスク用の紫外線硬化型インクの組成を記載した。
【0035】
【表1】
【0036】
本発明に用いたマスク用の紫外線硬化型インクについて、以下の評価試験を実施した。
【0037】
[相溶性]
調製したインクに濁りや分離が生じている場合は×、濁りがなく分離していない場合は○として評価し、○であった。
【0038】
[粘度]
コーンプレート型粘度計TV−22(東機産業製)を用いて25℃、50rpmにて測定し、5.4mPa・secであった。
【0039】
[表面張力]
表面張力計CBVP−Z(協和界面科学製)を用いプレート法により、25℃での表面張力を測定し、21.5mN/mであった。
【0040】
[吐出安定性]
表面を脱脂研磨したアルミニウム板を定法により陽極酸化して作製したアルミニウム材に、ピエゾ型インクジェットヘッド(KM512MH、コニカミノルタ製)を搭載したインクジェットプリンタを用いて解像度360x720dpi、印字割合100%で、紫外線硬化型インクを200x200mmでベタ印刷したときに、印刷終了までに不吐出や非画線部の汚れが生じない場合を○、不吐出や非画線部の汚れが生じる場合を×として評価し、○であった。 また、その膜厚は0.92μmであった。
【0041】
[レベリング性]
前記吐出安定性の試験で得られた試験片に120W/cmの高圧水銀灯を用いて1000mi/cmの紫外線を照射してマスク層を硬化させた。 その得られた試験片の表面を観察し、ピンホールが多く確認できる場合×、 ピンホールが若干あるが実用上問題ないレベル△、 ピンホールが確認できないレベル○、として評価し、○であった。
【0042】
[物理現像性]
前記レベリング性の試験でマスク層を硬化させた試験片を、電気ドリルに水とクレンザーの混合スラリーを含浸させたコットン製のバフを装着して1分間擦り、電気ドリルの回転数250rpmで剥離すれば○、500rpmで剥離すれば△、剥離しなければ×、として評価し、○であった。
【0043】
本発明で用いた実施例1および比較例1、2の着色材の組成を表2に記載した。 また、以下の評価試験を実施し、その結果を表3にまとめた。
【0044】
[耐着色工程性]
前記レベリング性の試験でマスク層を硬化させた試験片の非マスク領域に、実施例1、比較例1または2の着色材を布に浸み込ませ、擦り付けることによって着色後、マスク層が侵されず、非画線部に汚れがないものを○、マスク層が侵され、汚れのあるものを×として評価した。
【0045】
[染色濃度]
前記着色工程性の試験後、マスクを剥離し、その着色濃度が、目視で東京インキ COLOR GUIDE 包装用グラビアインキ第7版 表刷り用910墨 版深18μm部より濃度の高いものを○、低いものを×として評価した。
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】