(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、複数の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付して説明する。
(第1実施形態)
【0008】
以下、第1実施形態について、
図1から
図3を参照しながら説明する。
図1に示すように、洗濯機1は本体2、水槽3、洗濯脱水槽4、撹拌翼5、駆動部6、制御部7、操作パネル8等を備えている。本体2は、概ね四角柱状に形成されており、水槽3等を収容している。水槽3は、概ね有底円筒状に形成されており、洗い行程やすすぎ行程において水を貯留する。洗濯脱水槽4は、水槽3内に回転可能に設けられており、水槽3に対して相対的に回転する。脱水行程においては、洗濯脱水槽4が相対的に高速で回転することにより、遠心力により水を衣類等から放出する。なお、洗濯運転時には、水槽3の開口は、内蓋4aによって閉鎖される。
【0009】
撹拌翼5は、パルセータ等とも呼ばれており、洗濯脱水槽4と一体での回転、および、洗濯脱水槽4とは独立した単独での回転が可能となっている。これら洗濯脱水槽4および撹拌翼5は、図示しないクラッチ機構を有する駆動部6によって回転駆動される。以下、撹拌翼5が洗濯脱水槽4と一体で回転することを、便宜的に一体回転と称し、撹拌翼5が洗濯脱水槽4とは独立して単独で回転することを、便宜的に単独回転と称する。これら一体回転と単独回転とは、クラッチ機構によって切り替えられる。
【0010】
制御部7は、図示しないCPU、ROMおよびRAM等を有するマイクロコンピュータで構成されており、洗濯機1の全体を制御する。制御部7は、操作パネル8から入力された衣類の種類や運転コース等に応じて、洗濯機1を制御する。また、制御部7は、詳細は後述するが、目標水位、第1水位、および第2水位の設定を行う。
【0011】
操作パネル8は、図示しない電源スイッチ、運転コース、省エネモード等を選択するための選択スイッチ、投入する洗濯物20の重量の目安となる重量設定スイッチ、洗い行程時の水位を設定するための水位スイッチ、各種の情報を表示するための表示器等で構成されている。操作スイッチは、ユーザの操作が入力されるとともに、洗濯運転の所要時間や現在の運転モード等を表示する。本実施形態の場合、操作パネル8には、洗剤の種類つまりは液体洗剤であるか粉末洗剤であるかを選択するためのスイッチも設けられている。この操作パネル8は洗剤特定部に相当する。
【0012】
水槽3および洗濯脱水槽4の上方には、洗濯脱水槽4の上方から当該洗濯脱水槽4内に給水する給水経路9が設けられている。給水経路9は、給水弁ユニット10、洗剤ケース11、供給口12、UFB発生器13等で構成されている。給水弁ユニット10には、蛇口に接続されて水道水を導入する水道水導入口14と、風呂水等を導入する風呂水導入口15とが設けられている。なお、風呂水導入口15は必ずしも設けられていなくてもよく、水道水導入口14と兼用する構成であってもよい。本実施形態の場合、供給口12は、洗濯脱水槽4の回転中心よりも、径方向外側に位置するように設けられている。また、供給口12は、水平あるいは斜め下向きに開口するように設けられている。
【0013】
給水弁ユニット10内には、UFB発生器13を経由する第1経路への水の流れを切り替える給水弁16、および、UFB発生器13を経由しない第2経路への水の流れを切り替える給水弁17が設けられている。
【0014】
洗剤ケース11は、洗濯に用いる洗剤が投入される。この洗剤ケース11には、液体洗剤および粉末洗剤のいずれも投入可能となっている。なお、柔軟剤を投入する柔軟剤ケースをさらに備えていてもよい。この洗剤ケース11は、本実施形態では、給水経路9内に設けられている。そのため、洗濯脱水槽4には、洗剤が溶解した水が供給される。換言すると、洗剤ケース11に投入されている洗剤は、給水経路9を流れる水とともに、洗濯脱水槽4の上方から洗濯脱水槽4内に供給される。
【0015】
UFB発生器13は、粒径が1ミクロン程度未満の微細気泡13b(
図4参照)を生成し、生成した微細気泡13bを、給水経路9を流れる水に含有させる。この粒径が1ミクロン程度未満の微細気泡13bは、UFB(Ultra Fine Bubble)とも称され、洗濯性能を向上させることが知られている。以下、微細気泡13bを含有する水を、便宜的にUFB水と称する。このUFB発生器13は、微細気泡含有部に相当する。
【0016】
また、洗濯脱水槽4には、洗濯物20の重量を検知する重量センサ18が設けられている。本実施形態では、制御部7は、この重量センサ18で検知した洗濯物20の重量に基づいて、洗い行程時の水位である目標水位を設定する。重量センサ18は、直接的に重量を検知してもよいが、制御部7において駆動部6のモータを制御する際の制御値に基づいて推定することで、間接的に重量を検知する構成であってもよい。なお、上記したように、操作パネル8からも重量を設定可能である。これら重量センサ18や制御部7は、洗濯物20の重量を特定する重量特定部に相当する。
【0017】
また、洗濯機1には、水槽3に接続されている図示しないエアチューブに、水位を直接的に検知する水位特定部としての水位センサ19が設けられている。この水位センサ19は、水位検知部に相当する。なお、水位センサ19の位置や構成は、これに限定されない。例えば、制御部7の内部タイマ等により水を供給した時間を計測し、計測した時間と水の流量とから、供給した水の総量を求め、水の総量に基づいて水位を間接的に検知する構成としてもよい。その場合、例えば制御部7が水位検知部に相当する。
【0018】
次に、上記した構成の作用について説明する。
【0019】
前述のように、UFB水に洗濯物20を浸すことにより、洗浄能力の向上を図ることができると考えられる。しかし、UFB発生器13を通過した際には、水圧が低下することから、流量が減少してしまう。その結果、洗濯脱水槽4内の給水状態が、
図2(A)に示すように、UFB水が直接的に振りかかる範囲(R1。以下、給水範囲と称する)が相対的に小さくなり、洗濯物20aにまんべんなくUFB水を降りかけることが困難になることがある。あるいは、乾燥している衣類や特に化繊系のシャツや下着類等の洗濯物20aは、水に浮きやすいことから、洗濯脱水槽4の下部からUFB水を貯留していっても、UFB水を浸透させることが困難になる。
【0020】
このとき、回転軸が水平あるいは若干上向きとなっており、衣類を持ち上げて落とす叩き洗い方式で洗うドラム式洗濯機であれば、UFB水を効率よく浸透させることができると考えられる。しかし、本実施形態の洗濯機1のように撹拌翼5を回転させた際の機械力と、それによって生じる水流とで洗浄する縦型洗濯機の場合には、浮いた衣類にUFB水を浸透させるには時間がかかってしまう。
【0021】
そこで、本実施形態の洗濯機1は、様々な衣類が投入される縦型洗濯機において、以下のようにして洗濯物20にUFB水を効率的に浸透させている。
【0022】
まず、洗濯機1における洗濯運転の基本的な流れについて説明する。洗濯機1は、給水弁16をONにし、給水を開始すると、洗濯脱水槽4と撹拌翼5とを連動させて一体に回転させながらUFB水を供給する。
図2(A)は、洗濯脱水槽4を回転させないで給水した場合の例を示している。この
図2(A)の場合、供給口12から供給されるUFB水は、給水範囲(R1)の1箇所にスポット的に供給される。このため、その状態でUFB水を溜めていくと、比較的軽い衣類等の洗濯物20aは、UFB水に浮いてしまうことになる。
【0023】
これに対して、洗濯機1は、洗濯脱水槽4にUFB水を供給する給水期間において、洗濯脱水槽4を回転させつつ給水を行う。また、供給口12は、洗濯脱水槽4の回転中心よりも、径方向外側に位置するように設けられている。このため、供給口12から供給されるUFB水がスポット的に給水範囲(R1)に供給されるとしても、洗濯脱水槽4が回転することから、
図2(B)に示すように給水範囲(R2)が洗濯脱水槽4に沿ったドーナッツ状となり、UFB水は、洗濯物20の全体的に降りかかるようになる。
【0024】
これにより、洗濯物20に全体的にUFB水が振りかかるようになり、濡れた洗濯物20が重りとなって、洗濯脱水槽4内にUFB水が溜まったときには、洗濯物20が自重でUFB水中に引き込まれ、また、上方に位置する既にUFB水が浸透した洗濯物20によって押される形でUFB水中に引き込まれる。その結果、洗濯物20にUFB水を浸透させることができる。
【0025】
また、比較的軽い洗濯物20aの場合には、回転に伴って洗濯物20aが給水範囲(R1)に入ったときに、上方からUFB水が降りかかる。これにより、比較的軽い洗濯物20aに対しても、UFB水を浸透させることができる。また、洗濯脱水槽4を回転させていることから、水に浮くような洗濯物20aは、遠心力によって給水範囲(R1、R2)内に移動することから、より一層、UFB水が降りかかるようになり、UFB水の浸透を促すことができる。
【0026】
図3は、UFB水と水道水とによる洗浄能力の比較結果の例である。
図3(A)に示すように、皮脂汚れに対して、UFB水の洗浄能力を示す洗浄度は、水道水の洗浄度に比べて、単純な数値比で言えば概ね15%程度向上している。また、コーヒー汚れに対しては、UFB水の洗浄度は、水道水の洗浄度に比べて概ね5割程度向上している。また、コーヒー汚れに対しては、単純な数値比で言えば概ね40%程度向上している。これにより、UFB水を供給した場合における洗浄能力の向上が確認された。
【0027】
以上説明した実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
【0028】
洗濯機1は、洗濯脱水槽4にUFB水を供給する給水期間において、当該洗濯脱水槽4を回転させている。これにより、洗濯物へのUFB水の浸透を促すことができる。
【0029】
また、洗濯脱水槽4を回転させていることから、水に浮くような洗濯物20aは、遠心力によって給水範囲(R1、R2)内に移動することから、より一層、UFB水が降りかかるようになり、UFB水の浸透を促すことができる。
【0030】
また、洗濯機1は、供給口12を、洗濯脱水槽4の回転中心よりも径方向外側に位置するように設けている。これにより、洗濯脱水槽4を回転させたとき、
図2(B)に示したように給水範囲(R2)が洗濯脱水槽4内にドーナッツ状に形成されて広い範囲の洗濯物20に直接的にUFB水を効率よく振りかけることができる。したがって、流量が比較的少ない場合であっても、UFB水を効果的に洗濯物20へ浸透させることができ、洗浄効果の向上へつなげることができる。
【0031】
また、洗濯機1は、給水経路9において、UFB発生器13の下流側に、UFB水ともに供給口12から洗濯脱水槽4内に供給される洗剤を収容する洗剤ケース11を備えている。これにより、洗剤は、UFB水に溶解されることから、微細気泡13bの作用によって界面が活性化された状態で供給される。したがって、洗浄性能の向上を図ることができる。
【0032】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について、
図4を参照しながら説明する。なお、洗濯機1の構成は第1実施形態と共通する。
【0033】
上記した第1実施形態で説明したように、給水期間中に洗濯脱水槽4を回転させることにより、効果的に洗濯物20にUFB水を浸透させることができる。ただし、連続して一定速度で回転し続けた(以下、便宜的に継続回転と称する)場合には、遠心力が作用することによって、洗濯物20に効果的にUFB水を浸透させられない場合も考えられる。
【0034】
具体的には、
図4(A)に示すように、遠心力(F1)が作用すると、洗濯物20の上部に振りかかったUFB水は、遠心力によって洗濯脱水槽4の外周側へ押し出される、あるいは、洗濯物20にかかった瞬間に洗濯脱水槽4の外周側に弾かれるような給水状態となる。その結果、洗濯脱水槽4の中央側に位置する洗濯物20が、上部から降り注ぐUFB水あるいは既に貯留されているUFB水に直接的に接触せず、UFB水が浸透しない可能性がある。そして、洗濯物20にUFB水が浸透しないと、重りとならないことから、洗濯脱水槽4にUFB水が貯水されても、衣類が浮いてしまってUFB水の浸透が阻害される可能性がある。
【0035】
そこで、本実施形態の洗濯機1は、給水期間中に、洗濯脱水槽4の回転を上記した一定速度よりも減速させる減速期間、または、洗濯脱水槽4の回転を停止させる停止期間を設定する。このとき、減速期間や停止期間を交互あるいは定期的に設定することで、洗濯脱水槽4を間欠的に作動させてもよい(以下、便宜的に間欠回転と称する)。
【0036】
また、洗濯機1は、給水期間において洗濯脱水槽4を回転させる際の回転速度を、脱水行程において洗濯脱水槽4を回転させる際の回転速度よりも低くする。つまり、洗濯物20が洗濯脱水槽4の内周壁に張り付かない程度の速度で回転させる。
【0037】
これにより、減速期間においては、
図4(B)に示すように、発生する遠心力(F2)は、一定速度で回転させたときの遠心力(F1)よりも小さくなる。つまり、UFB水が洗濯脱水槽4の外周側に押し出される量が少なくなる。したがって、洗濯物20にUFB水を浸透させることができる。
【0038】
あるいは、停止期間においては、
図4(C)に示すように、遠心力が発生しないことから、UFB水は、洗濯脱水槽4内で均等になる。これにより、洗濯物20は、全体に水が行き渡るとともに、重りとなった洗濯物20によって下方に押し下げられることにより、UFB水中に引き込まれる。したがって、洗濯物20にUFB水を浸透させることができる。
【0039】
また、洗濯機1は、脱水行程において洗濯脱水槽4を回転させる際の回転速度よりも低く、洗濯物20が洗濯脱水槽4の内周壁に張り付かない程度の速度で洗濯脱水槽4を回転させる。これにより、UFB水に加わる遠心力を相対的に小さくすることができ、洗濯脱水槽4の内周壁側に位置する洗濯物20だけにUFB水が浸透することを防止できる。
【0040】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について、
図5から
図7を参照しながら説明する。なお、洗濯機1の構成は第1実施形態と共通する。また、本実施形態においても、給水期間には洗濯脱水槽4の継続回転、間欠回転あるいは停止を適宜制御している。
【0041】
UFB発生器13は、
図5に示すように、水の流路中に断面積が小さくなるよう突起状の絞り部13aを設けて水を減圧させ、水にかかる圧力を大気圧より負圧にすることにより、水に溶存している空気を析出させて微細気泡13bを水に含有させる。このとき、UFB発生器13を通過することによって、水の流量が少なくなる。具体的には、例えばW1の流量で水をUFB発生器13に供給した場合には、UFB発生器13を通過した後の水の流量は、W1よりも少ない例えばW2となる。
【0042】
このため、UFB発生器13を通過した水のみを洗濯脱水槽4に供給する場合には、
図6(A)に示すように、水平あるいは斜め下に開口している供給口12から吐出される水の勢いが相対的に小さくなるとともに、その広がり方つまりは給水範囲も相対的に小さくなる。また、供給する水の流量はW1よりも小さいW2となるため、目標水位までの到達時間が相対的に長くなる。ただし、洗濯脱水槽4に供給する水に含まれるUFB水の割合は最大(100%)となり、微細気泡13bの作用を最大限に活用することができる。
【0043】
一方、UFB発生器13を通過しない水のみを洗濯脱水槽4に供給する場合には、
図6(B)に示すように、供給口12から吐出される水の勢いが相対的に大きくなるとともに、その広がり方も相対的に大きくなる。つまり、水を供給できる給水範囲が大きくなる。また、供給する水の流量はW2よりも大きいW1となるため、目標水位までの到達時間は相対的に短くなる。ただし、この場合には、洗濯脱水槽4に供給する水に含まれるUFB水の割合は最小(0%)となり、微細気泡13bの作用は発生しない。
【0044】
つまり、UFB発生器13を経由したUFB水のみを供給する場合と、UFB発生器13を経由しない水のみを供給する場合とでは、それぞれメリットとデメリットが存在する。
【0045】
そこで、本実施形態の洗濯機1は、供給口12から供給する水の経路を、UFB発生器13を経由する第1経路側またはUFB発生器13を経由しない第2経路側のいずれか一方を通る経路、あるいは、第1経路側および第2経路側の双方を通る経路に切り替えつつ、あるいは、給水経路9を流れる水の経路を固定した状態で、洗濯脱水槽4へ水を供給する。なお、水の経路を固定した状態とは、経路の切り替えを行わないことを意味している。
【0046】
具体的には、第1経路側および第2経路側の双方を通る経路の場合、洗濯脱水槽4に供給される水の状態は、UFB水のみを供給する
図6(A)の状態(以下、便宜的にUFB水単独給水と称する)と、
図6(B)の状態(以下、便宜的に水道水単独給水と称する)との間の状態(以下、便宜的に混合給水と称する)となる。そのため、流量つまりは目標水位まで到達するまでに要する給水時間は、以下の関係となる。
UFB水単独給水 < 混合給水 < 水道水単独給水
【0047】
一方、UFB水の割合つまりは微細気泡13bによる洗浄能力の向上作用は、以下の関係となる。
UFB水単独給水 > 混合給水 > 水道水単独給水
【0048】
さて、UFB水と水道水との混合割合は、洗濯運転の種類によって切り替えることができる。例えば、洗濯物20の投入量が多いと、その分、給水すべき目標水量も増えることになる。このとき、UFB水単独給水の場合には流量が少なくなることから、UFB水だけで洗濯物を洗うようにすると、目標水位に到達するまでの所要時間が長くなり、洗濯運転に要する時間が長くなる。また、UFB水の混合割合が高ければ洗浄能力は向上するため、その分洗い行程の時間を短縮することができると考えられるものの、上記した
図3に示すように、洗浄能力の向上には限界もある。また、洗濯運転に要する時間が長くなることにより、ユーザにとっての使い勝手が悪化することも懸念される。
【0049】
そのため、UFB水を使って洗浄性能を高める制御を行いつつも、使い勝手の悪化を招かないようにすることが望まれる。そのためには、洗浄能力と給水時間とのトレードオフにより、UFB水と水道水との混合割合を切り替えることが望ましい。このとき、洗濯物20の量によっても混合割合を切り替えることが望ましい。
【0050】
そこで、本実施形態の洗濯機1は、給水期間には、給水経路9を流れる水の経路を切り替えつつ、あるいは、給水経路9を流れる水の経路を固定した状態で、洗濯脱水槽4へ水を供給する。
【0051】
図7に示す給水例Iは、洗濯物20の量が多い場合の給水例であり、この場合、目標水位は、例えば約60リットルである。洗濯機1は、給水期間の前半、より厳密には、本実施形態では給水期間の初期にUFB水のみの給水を行い、その後に水道水のみの給水を行う。なお、
図7では、斜め向きのハッチングを付した範囲がUFB水のみの給水を示し、横向きのハッチングを付した範囲が水道水のみ、あるいは、水道水とUFBとを混合させた給水を示している。
【0052】
より具体的に言えば、UFB発生器13の下流側に洗剤ケース11が存在する構成において、洗剤ケース11に洗剤が残っていると推定される給水期間の開始から所定時間(予め定められた期間に相当する。ここでは30秒)までは第1経路から水を供給し(UFB水単独給水)、所定時間が経過した後は、第2経路のみで給水を行う(水道水単独給水)。なお、UFB水単独給水ではなく、混合給水としてもよい。
【0053】
洗剤ケース11に入れられた洗剤は、概ね2〜3リットルの水があれば、洗濯脱水槽4内に全量を供給することができると考えられる。このとき、UFB水のみの場合の流量が6リットル毎分であったとすると、約20秒あればUFB水と洗剤とが混合した液体(以下、便宜的に洗浄液と称する)を供給することができる。つまり、給水期間の当初には、第1経路に固定した状態でUFB水のみを供給することによって、洗剤ケース11に収納されている洗剤をUFB水に溶解させることができる。なお、水道水単独給水の場合、流量は概ね15リットル毎分となる。
【0054】
このとき、微細気泡13bによって洗剤の分散性が向上することにより、洗濯物20への洗浄液の浸透を水道水のみの場合に比べて効果的に行うことができ、洗浄能力の向上を図ることができる。また、洗濯機1は、給水期間の後半、より厳密には、所定時間が経過した後には、第2経路に固定した状態で、水道水単独給水を行う。これにより、目標水位に到達するまでに要する時間を、UFB水単独給水のみの場合に比べて大きく削減でき、使い勝手が悪化することを抑制できる。
【0055】
また、
図7に示す給水例IIは、洗濯物20の量が通常、例えば実使用時に頻繁に使われるおよそ3kg〜6kgの場合の給水例であり、この場合、目標水位は、例えば約40リットルである。この場合も、洗濯機1は、洗剤ケース11に洗剤が残っている給水期間の初期においては、UFB水単独給水を行う一方、その後は、所定時間毎に水道水単独給水とUFB水単独給水を切り替えつつ、給水する。つまり、洗濯機1は、給水経路9を流れる水の経路を第1経路と第2経路と2切り替えつつ、給水する。これにより、過度に給水時間が長くなることを防止しつつ、洗浄能力を向上させることができる。
【0056】
また、
図7に示す給水例IIIは、洗濯物20の量が少ない場合の給水例であり、この場合、目標水位は、例えば約20リットルである。この場合、UFB水単独給水のみを行っても、概ね3分程度で目標水位まで到達することができる。換言すると、洗浄能力を最大限に向上させる経路で給水しても、使い勝手がそれほど悪化するわけではないと考えられる。このため、洗濯機1は、目標水位に到達するまで、UFB水単独給水、つまりは、給水経路9を第1経路に固定して給水を行う。
【0057】
このように、本実施形態の洗濯機1は、洗剤ケース11内に洗剤が残っている給水期間の前半、あるいは給水期間の初期を含む前半の一部にはUFB水を供給して洗剤効果を高める一方、目標水位に応じてUFB水と水道水との混合割合を変化させることにより、洗浄能力の向上と使い勝手の悪化の防止との双方を実現している。
【0058】
そして、このような制御方法を用いることにより、洗剤ケース11に洗剤が残留している給水期間の初期においては必ずUFB水による給水を行うことで洗浄能力の向上を図りつつ、給水期間の後半には第2経路による水道水単独給水により給水時間を短縮することができる。
【0059】
また、本実施形態では、洗濯機1は、洗濯に必要となる水量が多いほど、UFB発生器13を経由しない第2経路による給水を多くしている。これにより、過度に給水時間が長くなることを防止できる。また、洗濯物20の量が少ない場合には、UFB水による給水のみであっても使い勝手を大きく損なうことはないとともに、洗浄能力を大きく向上させることができる。
【0060】
ところで、洗剤を効果的に洗濯物20に浸透させる場合には、本実施形態のようにUFB水を洗剤ケース11に供給した後に、洗浄液として洗濯脱水槽4に供給することが考えられる一方で、先にUFB発生器13を経由しない流路による給水を行っておき、洗濯物20の嵩を減らした状態、つまりは、洗濯物20をまとめた状態でUFB水を供給することも考えられる。これは、嵩が減った洗濯物20は、衣類同士がまとまっている状態であるため、UFB水を素早く浸透させることができると考えられるためである。
【0061】
そのため、例えば
図7に示す給水例IVのように、給水期間の初期には水道水単独給水を行って洗濯物20の嵩を減らした後、UFB水単独給水を行ってもよい。
【0062】
また、UFB水と水道水との混合割合を変えることにより、洗濯脱水槽4内における給水範囲(R1。
図2参照)の大きさや位置を変更することができる。つまり、供給口12から吐出される水の形状を変化させることができる。
【0063】
UFB水単独給水の場合、
図6(A)に示したように、給水範囲(R1)は、供給口12に比較的近い位置となる。一方、水道水単独給水の場合、
図6(B)に示したように、給水範囲(R1)は、供給口12から相対的に離間した位置となる。また、混合給水の場合には、
図6(C)に示したように、UFB水単独給水と水道水単独給水との間の位置となるものの、混合割合を変えることにより、給水範囲の位置や大きさを、UFB水単独給水の位置から水道水単独給水の位置まで変化させることができる。つまり、給水弁16、17は、供給口12から供給する水の勢いに変化を付けることによって、供給口12から供給する水が降りかかる給水範囲(R1参照)の位置を洗濯脱水槽4の平面視において径方向の外側から中心側まで段階的に調整可能な調整部として機能する。
【0064】
したがって、UFB水と水道水との混合割合を変化させつつ、つまりは、第1経路からの給水量と第2経路からの給水量とを調整して供給口12から供給する水の流量を変化させつつ洗濯脱水槽4を回転させることによって、より効果的に洗濯物20の全体に水を浸透させることができる。
【0065】
この場合、UFB発生器13を経由した水を供給するUFB水単独供給時あるいは比較的UFB水の混合割合が高い混合給水時と、UFB発生器13を経由しない水を供給する水道水単独供給時あるいは比較的UFB水の混合割合が低い混合給水時とで、回転数を変更するようにしてもよい。また、UFB水単独供給時あるいは比較的UFB水の混合割合が高い混合給水時には、洗濯脱水槽4を停止させてもよい。これは、水道水単独供給時あるいは比較的UFB水の混合割合が低い混合給水時であれば、流量が多くなる分、回転数を高くしても水が弾かれにくくなるためである。
【0066】
(第4実施形態)
以下、第4実施形態について、
図8を参照しながら説明する。なお、洗濯機1の構成は第1実施形態と共通する。
【0067】
給水期間において洗濯脱水槽4を回転させる場合、その回転数を適切に制御することにより、より効果的に洗濯物20に水を浸透させることができる。上記したように、UFB発生器13を経由した場合には、流量が少なくなる。このとき、洗濯脱水槽4を脱水行程時の回転数のような400rpm〜1000rpm程度の高速で回転させると、流量が少ない水は、洗濯物20に触れた際に弾かれて、その多くが洗濯脱水槽4の外周側に寄ったり、あるいは洗濯脱水槽4に設けられている孔部から水槽3内に出て行ったりしてしまい、洗濯物20に浸透しないおそれがある。また、貯水されたUFB水を洗濯物20へ浸透させることが困難となる。
【0068】
そこで、洗濯機1は、脱水行程の回転数ほど高い回転数では回転させずに、例えば20rpmほどの低速で回転させることにより、流量が少ないUFB水であっても、上記した
図4に示すように、洗濯物20にUFB水を効果的に浸透させることができ、洗浄能力の向上を図ることができる。
【0069】
このとき、UFB水を供給する際には、水道水を供給する場合よりも洗濯脱水槽4の回転数を下げるとよい。例えば、UFB水単独供給の場合には上記したように20rpm、混合供給の場合には30rpm、水道水単独供給の場合には40rpmのように、給水弁16、給水弁17の状態に応じて、つまりは、供給する水の種類に応じて、洗濯脱水槽4の回転数を変更してもよい。これは、供給口12から供給される水の勢いが増せば回転数を上げても弾かれる等のおそれが低くなり、洗濯物20に水を浸透させることができるようになるためである。また、水道水単独供給の場合には相対的に水が早く溜まるため、UFB水単独供給の場合よりも高回転にして洗濯物20を素早く移動させることで、洗濯物20により一層水が浸透し易くなることも期待できる。
【0070】
また、洗濯機1は、給水期間において一定速度で洗濯脱水槽4を回転させる際、脱水行程よりも低い回転数であるものの、洗濯物20に加わる遠心力が
重力方向に加わる力以上となる回転速度、例えば100rpm〜200rpm程度で回転させてもよい。これは、洗濯物20に加わる遠心力が
重力方向に加わる力未満の場合には、
図8(A)に示すように洗濯物20は洗濯脱水槽4内で広がっており、給水範囲(R2)外に位置していることが考えられるものの、洗濯物20に加わる遠心力が
重力方向に加わる力以上の場合には、
図8(B)に示すように洗濯物20が洗濯脱水槽4の内周壁側に寄ることで、洗濯物20が全体的に給水範囲(R2)内に位置するようになり、給水された水に直接的に触れることができるためである。
【0071】
このような回転数によっても、UFB水を洗濯物20に効率よく浸透させることができる。この場合、上記したように、UFB水単独供給時あるいは比較的UFB水の混合割合が高い混合給水時と、UFB発生器13を経由しない水を供給する水道水単独供給時あるいは比較的UFB水の混合割合が低い混合給水時とで、つまりは、給水位置の違い応じて回転数を変更するようにしてもよい。
【0072】
(その他の実施形態)
実施形態では乾燥機能を有しない洗濯機1を例示したが、乾燥機能を備えた洗濯乾燥機であっても本発明を適用することができる。
【0073】
実施形態では、供給口12から供給される水の勢いを変更することにより給水範囲(R1)の位置を変更可能な例を示したが、例えば
図9(A)に示すように、供給口12を、洗濯脱水槽4の平面視において径方向に延びるように形成して、径方向に延びる給水範囲(R3)となるようにしてもよい。この場合、例えば
図9(B)に示すように供給口12に複数の開口を設けることにより、径方向に延びる給水範囲(R3)を形成することができる。あるいは、供給口12を、洗濯脱水槽4の平面視において径方向に移動可能あるいは伸縮可能にすることにより、径方向に延びる給水範囲(R3)を形成してもよい。
【0074】
洗濯機1は、給水期間において、水位センサ19等の水位検知部で検知した水位が予め設定されている第1水位に到達した場合、洗濯脱水槽4の回転を停止する一方、撹拌翼5を単独で回転させてもよい。この第1水位は、例えば目標水位に対する割合や、洗濯脱水槽4の容量に対する割合等に基づいて設定すればよい。なお、第1水位<目標水位となることは勿論である。
【0075】
上記したように、シルク素材や化繊100%の素材等の洗濯物20は、水分を吸収しづらく、水をはじくため、洗濯脱水槽4を回転させながらの給水(槽回転給水)を行ったとしても、場合によってはUFB水を浸透させることが難しい場合がある。その一方で、洗濯脱水槽4内にある程度、例えば洗濯脱水槽4の1/4程度の水が貯留されれば、撹拌よく5を回転させることによって、その回転により生じた水流と、撹拌翼5そのものの機械力により、洗濯脱水槽4内にある洗濯物20を水中に引き込んだり、洗濯物20の上下位置を変化させたりすることが可能となる。
【0076】
そのため、予め定められた第1水位を設定し、第1水位に到達したら撹拌翼5を回転させる制御を行うことにより、洗濯脱水槽4内の洗濯物20にUFB水を効果的に浸透させることができる。
【0077】
また、実施形態では第1経路と第2経路がともに洗剤ケース11を経由する構成を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、UFB水は洗剤ケース11を経由するが第2経路は洗剤ケース11を経由しない構成や、UFB水は洗剤ケース11を経由せずに第2経路は洗剤ケース11を経由する構成、あるいは、洗剤ケース11内を通るものの洗剤とは接触しない構成等であってもよい。また、このような構成の場合、UFB水を供給する期間が上記した給水期間の前半である必要は無く、
図7の給水例4のようにUFB発生器13を経由しない給水を給水期間の初期に行い、洗濯物20の嵩を減らした状態でUFB水の給水を開始してもよい。勿論、このような構成であっても、供給口12は1つとすることにより、混合供給を可能にすることで、水の勢いを可変して給水範囲の調整をすることは可能である。
【0078】
UFB水と水道水との混合割合を連続的に、あるいは、段階的に切り替えていってもよい。例えば、給水期間の初期にはUFB水単独給水を行い、所定時間が経過した後に徐々に水道水の割合を増やしていってもよい。
【0079】
UFB水と水道水との混合割合は、ユーザが選択した運転コースに応じて切り替えてもよい。例えば、標準的な洗濯運転を行う標準コースや、汚れをしっかり落とすためのしっかりコース、素早く洗濯を行うスピーディーコース等が設定可能となっている場合、しっかりコースでは、汚れをしっかりと落とすために、給水時間が長くなるとしてもUFB水を多く供給することが望ましい。つまり、洗濯時間の長さよりも汚れを落とすことを主眼とすることがユーザの要望であると考えられるため、そのような場合にはUFB水を多く供給するとよい。
【0080】
給水期間の初期にUFB水単独給水を行い、例えば目標水位の90%に到達するまでは水道水単独給水を行った後、目標水位に到達するまでの期間に再度UFB水単独給水を行ってもよい。これにより、水がある程度溜まった状態で、つまりは、洗濯物20が移動しやすい状態でUFB水を供給でき、微細気泡13bと洗濯物20との接触を促すことができる。
【0081】
実施形態では洗濯運転を開始する際の給水期間について説明したが、洗い行程後のすすぎ行程において給水する際に、UFB単独給水、混合給水、水道水単独給水のいずれか、あるいかそれらの任意の組み合わせにて給水を行ってもよい。これにより、洗濯物20に残留した洗剤の溶解を促進することが可能となり、洗濯運転が終了した際の仕上がり品質の向上が期待できる。また、例えば給水経路9内等、UFB水が流れる経路に、柔軟剤を収容する柔軟剤ケースを設けてもよい。これにより、UFB水によって柔軟剤の溶解性が高まり、仕上がり品質の向上が期待できる。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。