(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6912902
(24)【登録日】2021年7月13日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】簡易歯間清掃具
(51)【国際特許分類】
A61C 15/04 20060101AFI20210727BHJP
【FI】
A61C15/04 502
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-43847(P2017-43847)
(22)【出願日】2017年3月8日
(65)【公開番号】特開2018-143644(P2018-143644A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2020年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】504202922
【氏名又は名称】上江洲 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100076082
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 康文
(72)【発明者】
【氏名】上江洲 剛
【審査官】
土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−143189(JP,A)
【文献】
実開昭57−145413(JP,U)
【文献】
米国特許第4105120(US,A)
【文献】
米国特許第3918466(US,A)
【文献】
米国特許第5014725(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロスを張る穴の開いた2枚の厚紙の間にフロス用の糸を挟んだ状態で接着してあり、前記フロスを中心に二つ折りし重ねて使用する構造であることを特徴とする簡易歯間清掃具。
【請求項2】
フロスを張る穴の開いた2枚の厚紙の間にフロス用の糸を挟んだ状態で接着してある簡易歯間清掃具を、前記フロスを中心に二つ折りして弓状に形成した際に、前記二つ折り部において、前記2枚の厚紙間又は各紙の空隙部が圧縮されて縮小して前記フロスを抜け難くし、テンションが緩まないことを特徴とする簡易歯間清掃具の使用方法。
【請求項3】
フロスを張る穴の開いた2枚の厚紙の間に、前記穴の直径方向にフロス用の糸を挟んだ状態で接着して、3者を一体化すると共に、前記フロスを中心に二つ折りし重ねた構造にできることを特徴とする簡易歯間清掃具の製造方法。
【請求項4】
フロスの上を折り目枠が下降して押し潰すことで、二つ折りを容易にしたことを特徴とする請求項3に記載の簡易歯間清掃具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロスを張った円穴の開いた厚紙を二重に折り畳んで弓状に形成して口腔の中に挿入し、弓の弦に対応するフロスに張力を付けて、歯間又歯間面を清掃する歯間清掃具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のように合成樹脂によってアーチ状あるいはU字状、半円状などの弓幹部を形成し、その両端間にデンタルフロス(以下「フロス」と略す)を張ると共に、弓幹部の一端に取っ手を一体形成した歯間清掃具は一般に知られている。しかしながら、これらの歯間清掃具は合成樹脂製のため、新品の間は弾性に富み、特に隙間が殆ど無い歯間を通過する場合に限界まで達した張力が一気に解放されて、弾力で歯茎を傷つけることがあった。逆に、歯間清掃後にフロス部分を抜き取る場合も、同様に瞬時に抜けるため、対向する歯に指や硬い本体部分が当たって痛い思いをすることがあった。そういう致命的欠陥から、特に口腔ケアが必要な子供達には危険であり、あまり普及しなかった。
また、使用している間に弓幹部が永久変形したり、隣接する歯間の隙間が殆ど無く蜜接していてフロスが歯間を通過するのに時間を要する場合に、前記弓幹部が永久変形してフロスのテンションが損なわれ、歯の摺動を円滑に行なえない。あるいは、フロスが弛んだり、フロスと弓幹部との固定が緩んだりして、フロスによる摺動が損なわれるという欠点も有る。
これに対し、本発明品は、紙製で弾性は無く、力加減が調整しやすいので、歯茎を傷つけることが少なく、初めて使う人やお子様でも安心して使用できる。
さらに、歯間清掃具を常時携帯して、食後に常に歯の清掃をしないと気の済まない人も多いが、従来の歯間清掃具では、サイズが大きすぎて嵩張るため、携帯には適しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−271481号
【特許文献2】特開2002−143189号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本願発明の発明者は特許文献2のように、合成樹脂製でなく厚紙で製造することで嵩張らず携帯に適し、かつ安価に製造でき、特に弓幹部がフロスに引っ張られて変形することがなく、常に歯に押し当てる際の十分なテンションでフロスが歯面を効果的に摺動清掃できる紙製を提案した。
しかしながら、特許文献2の構造では、フロスのテンションを制御する操作が困難で、使用中にテンションが緩んだりして、円滑に歯面を磨けない。
本発明の技術的課題は、このような問題に着目し、厚紙製の本体を二つ折りして重ねて弓状に形成する際に、フロスの締まりが良くなり、緩んだりすること無く確実に使用可能となる構造とその使用方法並びに製法を提案する。
本発明の技術的課題は、このような問題に着目し、厚紙製とすることで薄く嵩張らず小型で携帯に適し、しかも安価に製造でき、特にフロスを中心に厚紙を折り重ねて弓状に形成する際にフロスの締まりが向上し、弓状が変形しない簡易歯間清掃具を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の技術的課題は次のような手段によって解決される。請求項1は、フロスを張る穴の開いた2枚の厚紙の間にフロス用の糸を挟んだ状態で接着してあり、前記フロスを中心に二つ折りし重ねて使用する
構造であることを特徴とする簡易歯間清掃具である。
【0006】
請求項2は、
フロスを張る穴の開いた2枚の厚紙の間にフロス用の糸を挟んだ状態で接着してある簡易歯間清掃具を、前記フロスを中心に二つ折りして弓状に形成した際に、前記二つ折り部において、前記2枚の厚紙間又は各紙の空隙部が圧縮されて縮小して前記フロスを抜け難くし、テンションが緩まないことを特徴とする簡易歯間清掃具の使用方法である。
【0007】
請求項3は、フロスを張る穴の開いた2枚の厚紙の間に、
前記穴の直径方向にフロス用の糸を挟んだ状態で接着して、3者を一体化すると共に、前記フロスを中心に二つ折りし重ねた
構造にできることを特徴とする簡易歯間清掃具の
製造方法である。
【0008】
請求項4は、
フロスの上を折り目枠が下降して押し潰すことで、二つ折りを容易にしたことを特徴とする
請求項3に記載の簡易歯間清掃具の
製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1のように、フロスを張る穴の開いた2枚の厚紙の間にフロス用の糸を挟んだ状態で接着してあり、前記フロスを中心に二つ折りし重ねて使用する
構造であるので、フロスを中心に二つ折りし重ねた構造にした際に、芯になるフロスを締め付けて、
フロスが滑り難くしています。この作用、効果が大きな特徴です。
【0010】
請求項2のように、
フロスを張る穴の開いた2枚の厚紙の間にフロス用の糸を挟んだ状態で接着してある簡易歯間清掃具を、前記フロスを中心に二つ折りした際に、前記二つ折り部において、前記2枚の厚紙間又は各紙の空隙部が圧縮されて縮小して前記フロスを抜け難くします。また、テンションが緩み難くなります。
【0011】
次に、請求項3のように、フロスを張る穴の開いた2枚の厚紙の間に、
前記穴の直径方向にフロス用の糸を挟んだ状態で接着して、3者を一体化すると共に、前記フロスを中心に二つ折りし重ねた構造にするので、
前記フロスを中心に二つ折りした際に、前記二つ折り部において、前記2枚の厚紙間又は各紙の空隙部が圧縮されて縮小し、前記フロスが緩み難く、抜け難くなります。
【0012】
最後に、請求項4のように、
フロスの上を折り目枠が下降して押し潰すことで、二つ折りを容易にしたので、二つ折りする操作が容易になり、正確な位置で二つ折り曲げ可能となります。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明による簡易歯間清掃具の基本構成をユニット単位に示す斜視図である。
【
図2】本発明による簡易歯間清掃具のユニットの使用方法を示す斜視図である。
【
図3】
図3以下は、本発明の簡易歯間清掃具の製造方法を順次説明する図で、
図3は下型の平面図である。
【
図7】フロス糸上にホルダー上紙を重ねて接着した平面図である。
【
図8】ミシン目ユニットを載せたミシン目カ
ッター位置の水平断面図である。
【
図10】フロスfの先端を焼き切る前の平面図である。
【
図11】4個の簡易歯間清掃具のユニット
から成る
1組みの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明による簡易歯間清掃具が実際上どのように具体化されるか実施形態を説明する。
図1は本発明による簡易歯間清掃具の基本構成を示す斜視図であり、製造後の状態である。すなわち、
図1のように、フロスfを挟んでほぼ半円形の穴h1・h2の開いた2枚のホルダー厚紙P1・P2の間にフロス用の糸fを挟んだ状態で接着してあり、
図2のように、前記フロスfを中心にして二つ折りして重ねる。二つ折りして重ねて指で把持して使用するが、二つ折りして重ねて親指と人指し指・中指との間に挟んで把持される2枚の突出部F1・F2を取っ手とする。従って、取っ手F1・F2を指間に挟んで把持し、フロスfを隣接する歯と歯の間に差し込んで往復摺動させ、歯間又歯間面を清掃する。
【0015】
この場合、フロスfには強い張力か発生し作用するが、2枚の厚紙P1・P2の間にフロスfを挟んだ状態で接着するので、フロスfを中心にして厚紙の部分を二つ折りして重ねる際に、前記二つ折り部において、前記2枚の厚紙間又は各厚紙の空隙部が圧縮されて縮小されるので、締まりが自然と良くなり、前記フロスfが抜け難く、緩まない。従って、安心して使用でき、延びたり、緩んだりする恐れは無い。
フロスfを他の簡易歯間清掃具のフロスfと切り離す際に、加熱してフロスfを焼き切る際に端部に球状Bが形成されるので、この球状部Bがストッパーとして作用し、前記の緩み防止はより確実となる。フロスfを中心に取っ手F1・F2を折り重ねる前の拡げた状態では、広い面積となるので、印刷が可能となり、広告宣伝の印刷に適している。
【0016】
また、小型で薄いので、嵩張ることはなく、携帯が容易であり、厚紙製のため、安価に製造できる。
特に、フロスfの周囲は、フロスfを挟んでほぼ半円形の穴h1・h2の開いた2枚のホルダー厚紙P1・P2の間にフロス用の糸Fを挟んだ状態で加圧接着してあるので、フロスfで歯間や歯の面を磨いて清掃する際の邪魔になる恐れはない。この穴h1・h2は、半円状である必要はなく、他の形状でもよい。
【0017】
図3以下は、本願発明の簡易歯間清掃具の
製造方法を順次説明する図で、図3は下型の平面図であり、4個を一体に製造した後、使用時に1個単位にミシン目で切り離す。すなわち、図示例では、一体型の簡易歯間清掃具を4組同時に打ち抜き成型して製造する。先ず、
図3のように、4個の半円形の穴h1・h2の開いた下型1、2の上に、ホルダー厚紙を載せた状態で、
図4の上型3・4を載せる。
図4(1)は上型3・4の平面図であり、その下面を見ると、
図4(2)のように、上型3・4の下面にカッターC1…、C2…の刃先が露出している。カッターC1…、C2…の周囲は、僅かの隙間をおいて黒ゴムGで挟んである。従って、上型3・4を下降させると、カッターC1…、C2が厚紙をカットして、2組のホルダー厚紙が残る。このホルダー厚紙は、2枚重ねで接着するので、2倍の枚数をカットしておく必要がある。
【0018】
次に
図5のように、2組の下紙を位置決めしておいて、その紙の上に
図6のようにフロスf用の糸Fを張った状態で、
図7のように上ホルダー紙を載せてから、上下の紙の間にフロス糸Fを挟んだ状態で接着する。
使用に際して、1個ずつ切り離すので、そのためのミシン目を予め設ける。
図8のように、ミシン目ユニット5を載せて、押し下げると、十字状のミシン目カッター6、7が下降して、ミシン目を入れる。この時、ミシン目ユニット5と一体に、折り目枠8、9を備えているので、フロスfの上をこの折り目枠8、9が下降して、押し潰すことで、二つ折りが容易になる。また、フロスfと直交する方向のミシン目カッター6の刃先が丁度フロス糸Fを切断する位置Cに配設してあるので、フロス糸Fは各ユニット毎に切離される。
【0019】
図9はミシン目ユニット5の全体で、(1)は平面図、(2)は下面を見た図であり、ミシン目状のカッター6、7を挟むように両側に隙間をおいて黒色のゴムGを設けてあるので、その弾力に抗してカッター6、7が下降してミシン目を入れ、容易に分離可能にしてある。
最後に、
図10のように、フロスfを形成すべく、フロス糸Fの先端を焼き切って、
図11のように、球Bを形成し、抜け止めとする。7、8は、各ユニット単位に切り離すためのミシン目である。
【産業上の利用可能性】
【0020】
以上のように、ほぼ円形の穴の開いた2枚のホルダー厚紙の間にフロス用の糸を挟んだ状態で加圧接着してあり、前記フロスを中心にして二つ折りして使用する構造となっているので、薄板状で嵩張らず、小型で携帯に適している。また、紙製で構造が簡単なため、安価に製造できる。前記フロス外端は焼き切って球状に形成してあるので、抜け止めとなり容易に抜けることはない。特に、前記フロスを中心にして二つ折りした際に、二つ折り部において、2枚の紙間又は各紙の空隙部が圧縮されて締まりが自然と良くなり、フロスが抜け難くなる。従って、合成樹脂製のようにテンションで変形し、テンションが低下して歯面の摺動を損なうことはない。
【0021】
f フロス
F1・F2 取っ手
P1・P2 2枚の紙
h1・h2 半円形の穴
1・2 下型
3・4 上型
C1…、C2… カッター
G 黒ゴム
F フロス用の糸
5 ミシン目ユニット
6・7 十字状のミシン目カッター
8、9 折り目枠
B 球