特許第6912919号(P6912919)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6912919
(24)【登録日】2021年7月13日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】触覚センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/16 20060101AFI20210727BHJP
   G01L 5/00 20060101ALI20210727BHJP
   H01L 41/113 20060101ALI20210727BHJP
   H01L 41/08 20060101ALI20210727BHJP
   H01L 41/087 20060101ALI20210727BHJP
   H01L 41/04 20060101ALI20210727BHJP
   H01L 41/09 20060101ALI20210727BHJP
   H01L 41/193 20060101ALI20210727BHJP
   H01L 41/25 20130101ALI20210727BHJP
   H01L 41/318 20130101ALI20210727BHJP
   H01L 41/333 20130101ALI20210727BHJP
   H01L 41/47 20130101ALI20210727BHJP
   H01L 41/29 20130101ALI20210727BHJP
【FI】
   G01L1/16 B
   G01L5/00 101Z
   H01L41/113
   H01L41/08 Z
   H01L41/087
   H01L41/04
   H01L41/08 U
   H01L41/18 102
   H01L41/193
   H01L41/25
   H01L41/318
   H01L41/333
   H01L41/47
   H01L41/29
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-70149(P2017-70149)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-173305(P2018-173305A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2020年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】517069066
【氏名又は名称】ロボセンサー技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】特許業務法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大村 昌良
【審査官】 公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第104233579(CN,A)
【文献】 特開平03−035025(JP,A)
【文献】 実開平03−122951(JP,U)
【文献】 特開2006−025593(JP,A)
【文献】 特開2008−170425(JP,A)
【文献】 特開平02−181621(JP,A)
【文献】 特開2007−000251(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/080959(WO,A1)
【文献】 特開2005−060922(JP,A)
【文献】 特開2009−261116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/16
G01L 5/00
H01L 41/00−41/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性を備えた細長い円筒状の圧電体と、前記圧電体の内部に形成された内部導体と、前記圧電体の外部に形成された外部導体とからなるセンサ電線を備えたケーブル状圧力センサが、布状に組み付けられて形成された触覚センサであって、
前記ケーブル状圧力センサを延長して構成される引出線が備わっており、前記引出線は加熱処理により、圧電性が低下されていることを特徴とする触覚センサ。
【請求項2】
前記ケーブル状圧力センサを、編み物状に組み付けて形成されている請求項1に記載の触覚センサ。
【請求項3】
螺旋状または波状に曲がった状態のケーブル状圧力センサが、布状に組み付けられている請求項1または2に記載の触覚センサ。
【請求項4】
太さの異なる複数種類のケーブル状圧力センサが用いられている請求項1ないし3のうちのいずれか一つに記載の触覚センサ。
【請求項5】
前記ケーブル状圧力センサが、複数の前記センサ電線を撚り合わせて撚糸状に形成されている請求項1ないし4のうちのいずれか一つに記載の触覚センサ。
【請求項6】
表裏両面に柔軟物質層が形成されている請求項1ないし5のうちのいずれか一つに記載の触覚センサ。
【請求項7】
前記表裏に形成された柔軟物質層の硬さまたは厚さが異なっている請求項6に記載の触覚センサ。
【請求項8】
表面の硬さを、評価数値が、デュロメータ・タイプCで0〜50にした請求項1ないし7のうちのいずれか一つに記載の触覚センサ。
【請求項9】
前記ケーブル状圧力センサの外径が8μm〜800μmに設定されている請求項1ないし8のうちのいずれか一つに記載の触覚センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電性を備えた布状の触覚センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば人の手に装着される手袋のような織物に触覚センサを取り付けて織物にかかる圧力を検出したり、触覚センサを変形させて織物を動かしたりすることが行われている(例えば、特許文献1参照)。この触覚センサは、対向する両面が平面になった紐状の圧電材料の両面にそれぞれ電極膜を形成し、両電極膜の外側をそれぞれ絶縁皮膜で覆って構成された圧電性ファイバを縦糸と横糸のように交互に織りあわせて織布状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−203996号公報
【発明の概要】
【0004】
このような触覚センサは、被検出物の表面に沿って接触する必要があるため全方向に対して変形できる柔軟性や圧力に対して歪み易い性質が要求される。しかしながら、前述した圧電性ファイバは、扁平に形成されているため、厚み方向には撓み易いが、幅方向には撓み難くなり、被検出物の表面が曲面の場合、接触面積が小さくなるという問題がある。また、前述した圧電性ファイバは、厚み方向や幅方向への圧縮による変形も生じ難いという問題もある。
【0005】
本発明は、前述した問題に対処するためになされたもので、その目的は、全方向に対して変形し易いとともに、外力により歪みが生じやすいケーブル状圧力センサからなる触覚センサを提供することである。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
【0006】
前述した目的を達成するため、本発明に係る触覚センサ(10,10a,10b,10c,10d)の構成上の特徴は、柔軟性を備えた細長い円筒状の圧電体(12,32,42,52)と、圧電体の内部に形成された内部導体(13,33,43,53)と、圧電体の外部に形成された外部導体(14,34,44,54)とからなるセンサ電線を備えたケーブル状圧力センサ(11,11a,11b,31,31a,41,51,61)が、布状に組み付けられて形成された触覚センサであって、ケーブル状圧力センサを延長して構成される引出線(16)が備わっており、引出線は加熱処理により、圧電性が低下されていることにある。本発明によると、引出線が触覚センサの感度に悪影響を及ぼすことが防止される。すなわち、触覚センサの使用中に、引出線に圧力がかかっても被検出物の検出には影響がでない。また、引出線として、別途部材を用いることなく、ケーブル状圧力センサの端部側をそのまま引出線として利用できるという利点も生じる。
【0007】
本発明に係る触覚センサでは、ケーブル状圧力センサを構成するセンサ電線の断面形状が円形に形成されている。このため、ケーブル状圧力センサは、軸方向に伸縮できる他、軸周りのどの方向に対しても均等に変形することができる。また、断面形状が円形に形成されているため軸方向に直交する方向から外力を受けたときに、ケーブル状圧力センサは歪み易くなる。圧電体は、変形量に応じた電圧を発生し、ケーブル状圧力センサに生じる変形量が大きいほど、ケーブル状圧力センサには大きな電圧が発生する。このため、ケーブル状圧力センサが歪み易くなるほど触覚センサは良好な検出感度を発揮できる。
【0008】
また、本発明においては、内部導体を金属線で構成してもよいし、圧電体の内面に沿って形成された薄い層で構成してもよい。内部導体を薄い層、例えばメッキ層で構成した場合には、触覚センサの柔軟性および伸縮性をより大きくすることができるとともに軽量化が図れる。また、内部導体の内部を空間にすることで、この部分の径を小さくすることができ、これによって、触覚センサを薄くすることもできる。さらに、内部導体の内部を空間にすると、ケーブル状圧力センサは径方向への変形がさらに生じ易くなり、これによってさらに感度の向上も図れる。また、内部を空間にすると大幅なコスト削減が可能になる。
【0009】
圧電体を構成する材料としては、ポリ乳酸、フッ化ビニリデン、シアン化ビニリデン、ポリアミド、シアン化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンおよびそれらの発泡体や各重合体、それらの共重合体およびそれらの積層体、さらには発泡体などを用いることができる。また、内部導体および外部導体を構成する材料としては、銅、銀、白金、アルミニウムなどの金属やそれらの合金など伝導性を有する種々の材料を用いることができ、さらに、導電性ポリマー、導電性塗料などを用いることもできる。なお、1本のセンサ電線を用いる場合には、そのセンサ電線だけで本発明に係るケーブル状圧力センサが構成される。
【0012】
本発明に係る触覚センサのさらに他の構成上の特徴は、ケーブル状圧力センサを、編み物状に組み付けて形成されていることにある。本発明によると、各ケーブル状圧力センサがループを形成するようにして互いに絡まるため、触覚センサの布としての伸縮性がさらに増すようになる。このため、被検出物の表面が凹凸面であっても、触覚センサは部分的に拡張してその凹凸面に良好な状態で沿えるようになり、精度のよい被検出物の検出が行える。また、各ケーブル状圧力センサ間に結び目のような屈曲した部分が生じるため、圧力がかかったときにより大きく変形するようになり、これによっても検出感度が向上する。
【0013】
本発明に係る触覚センサのさらに他の構成上の特徴は、螺旋状または波状に曲がった状態のケーブル状圧力センサ(11a,11b)が、布状に組み付けられていることにある。本発明によると、触覚センサを構成するケーブル状圧力センサが、予め螺旋状または波状に曲がった形状に形成されている。このため、ケーブル状圧力センサがばねのような弾性および柔軟性を備えたものとなり、このようなケーブル状圧力センサで構成される触覚センサも弾性および柔軟性に富んだものとなる。また、外力がかかったときに、ケーブル状圧力センサには大きく変形する部分が生じ、これによって大きな出力電圧が発生するため、ケーブル状圧力センサの感度がより向上する。
【0014】
本発明に係る触覚センサのさらに他の構成上の特徴は、太さの異なる複数種類のケーブル状圧力センサ(A1,A2,B1,B2)が用いられていることにある。本発明によると、触覚センサの使用目的に応じて各部分の感度を変えることができる。例えば、より高い感度が必要な部分には、太いケーブル状圧力センサを用い、さほど高い感度が要求されない部分には、細いケーブル状圧力センサを用いるなどして各ケーブル状圧力センサの配置を決めることができる。
【0015】
本発明に係る触覚センサのさらに他の構成上の特徴は、ケーブル状圧力センサ(61)が、複数のセンサ電線(61a)を撚り合わせて撚糸状に形成されていることにある。本発明によると、撚りが入ることによってケーブル状圧力センサは外力によってより曲がり易くなるとともに伸縮しやすくなるため、ケーブル状圧力センサに大きく曲がる部分が生じ、これによって大きな出力電圧が発生するため、ケーブル状圧力センサの感度が向上する。さらに、ケーブル状圧力センサを複数のセンサ電線で構成することで、1部のセンサ電線が切れても、他のセンサ電線で、ケーブル状圧力センサとしての機能を維持することができる。
【0017】
本発明に係る触覚センサのさらに他の構成上の特徴は、表裏両面に柔軟物質層(15,15a,15b)が形成されていることにある。本発明によると、被検出物に対する接触面を柔らかくすることができるため、被検出物を傷つけることがなくなる。また、ケーブル状圧力センサの保護や、汚れ防止なども可能になる。さらに、柔軟物質層に用いる材料を適宜選択することで感度の調整も可能になる。柔軟物質層は、布状、フィルム状、塗布層などで構成することができる。また、柔軟物質層は、各ケーブル状圧力センサの外周面にそれぞれ設けることで触覚センサの表裏両面に形成されていてもよい。
【0018】
本発明に係る触覚センサのさらに他の構成上の特徴は、表裏に形成された柔軟物質層(15a,15b)の硬さまたは厚さが異なっていることにある。本発明によると、使用目的に応じた触覚センサを得ることができる。例えば、被検出物に接触する表面の柔軟物質層を硬い層にして、裏面の柔軟物質層を表面の柔軟物質層よりも柔らかい層にすると、触覚感度は高くなるが、耐久性は低下する。また、表面の柔軟物質層を柔らかい層にして、裏面の柔軟物質層を表面の柔軟物質層よりも硬い層にすると、触覚感度は低下するが、耐久性は向上する。また、被検出物に接触する表面の柔軟物質層を薄い層にして、裏面の柔軟物質層を表面の柔軟物質層よりも厚い層にすると、触覚感度は高くなるが、耐久性は低下する。また、表面の柔軟物質層を厚い層にして、裏面の柔軟物質層を表面の柔軟物質層よりも薄い層にすると、触覚感度は低下するが、耐久性は向上する。
【0019】
本発明に係る触覚センサのさらに他の構成上の特徴は、表面の硬さを、評価数値が、デュロメータ・タイプCで0〜50にしたことにある。本発明によると、被検出物の表面に沿って撓むことのできる柔軟性に富んだ触覚センサを得ることができる。なお、デュロメータ・タイプC(加硫ゴムの硬さを計測するアスカーC型)で0〜50は、人の皮膚の硬さ程度であり、ケーブル状圧力センサの表面の硬さを人の皮膚の硬さ以下にすることで、触覚センサを人の体に接触するもの、例えば、手袋として用いる場合には、使い心地が良くなる。この場合、触覚センサの表面に保護カバーを設ける場合には、保護カバーの硬さをアスカーC型で50以下にし、保護カバーを設けない場合は、外部導体の硬さをアスカーC型で30以下、好ましくは20以下にする。この場合に外部導体を構成する材料としては、発泡ポリウレタン、シリコンゲル、ウレタンゲルなどを用いることができる。なお、前述した表面の硬さは、アスカーC型で5〜30とすることが好ましく、より好ましいのは5〜20とすることである。
【0020】
本発明に係る触覚センサのさらに他の構成上の特徴は、ケーブル状圧力センサの外径が8μm〜800μmに設定されていることにある。本発明によると、極細のケーブル状圧力センサからなり、柔軟性および伸縮性に優れた軽量の触覚センサを得ることができる。また、これには、10μm以下の表皮を付けてもよく、その場合、材料としては、ポリアミド、ポリイミド、アラミド系のものが利用できる。なお、ケーブル状圧力センサの外径としては、20μm〜500μmとすることが好ましく、より好ましいのは200μm〜400μmとすることである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態に係る触覚センサの一部を示した斜視図である。
図2】触覚センサを構成するケーブル状圧力センサを示した断面図である。
図3】ロボットに備わっている検出部を示した構成図である。
図4】縦糸と横糸にかかった圧力の位置と圧力の大きさを示した説明図である。
図5】第1実施形態の変形例1に係る触覚センサの一部を示した概略図である。
図6】第1実施形態の変形例2に係る触覚センサの概略を示した断面図である。
図7】第1実施形態の変形例3に係る触覚センサの一部を示した斜視図である。
図8】第1実施形態の変形例4に係る触覚センサを構成するケーブル状圧力センサを示した側面図である。
図9】第1実施形態の変形例5に係る触覚センサを構成するケーブル状圧力センサを示した側面図である。
図10】本発明の第2実施形態に係る触覚センサの概略を示した平面図である。
図11】第3実施形態に係る触覚センサを構成するケーブル状圧力センサを示した断面図である。
図12】第3実施形態に係る触覚センサに圧力がかかるときの状態を示しており、(a)は圧力がかかる前の断面図、(b)は圧力がかかったときの断面図である。
図13】第3実施形態の変形例1で用いられる圧電フィルムと内部帯状層を示した平面図である。
図14】第3実施形態の変形例2に係る触覚センサを構成するケーブル状圧力センサを示しており、(a)は側面図、(b)は断面図である。
図15】第3実施形態の変形例2に係る触覚センサに備わったセンサ中心部を示した側面図である。
図16】第3実施形態の変形例3で係る触覚センサを構成するケーブル状圧力センサを示しており、(a)は側面図、(b)は断面図である。
図17】第3実施形態の変形例3で用いられる圧電フィルム、内部帯状層および外部帯状層を示した断面図である。
図18】第3実施形態の変形例4に係る触覚センサを構成するケーブル状圧力センサを示しており、(a)は側面図、(b)は断面図である。
図19】第3実施形態の変形例5に係る触覚センサを構成するケーブル状圧力センサを示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態を図面を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る触覚センサ10の一部を示している。この触覚センサ10は、例えば、農作物を収穫するためのロボット(図示せず)の手の形をした把持部に取り付けられて、ロボットの把持部が農作物を把持する際の圧力を検出して、把持部が農作物を把持する際の把持力を制御するために用いられるもので、把持部を覆う手袋の形に形成されている。
【0023】
触覚センサ10は、ケーブル状圧力センサ11(図2参照)が縦糸Aと横糸Bになるように織り込まれて織布状に形成された本体を備えており、その織布状の本体の表裏両面を後述する保護カバー15で被覆したものを手袋の形状に縫製することで製造されている。それぞれの縦糸Aおよび横糸Bを構成するケーブル状圧力センサ11は、図2に示したように、円筒状の圧電体12の内側に内部導体13を配置するとともに、圧電体12の外周面に外部導体層14を配置して構成されている。
【0024】
圧電体12は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなり柔軟性および伸縮性を有する極細の円筒体で構成されており、その内径は、0.3mmで、外径は0.4mmに設定されている。内部導体13は、複数の極細のスズメッキ軟銅線を撚り合わせて形成されており、その直径は0.3mmに設定されている。外部導体層14は、内部導体13と同様、スズメッキ軟銅線で構成されており、その厚みは0.05mmに設定されている。
【0025】
圧電体12は、例えば、同軸ケーブルの製造方法と同様の方法で、内部導体13の外周に形成することができる。この場合、ポリフッ化ビニリデンからなる成形材料を、成形装置のシリンダー内で、溶解、混練しながらスクリューで押出し、クロスヘッド内を通過する内部導体13の表面に被覆層として形成する。そして、圧電体12の表面に、外部導体層14を形成する。外部導体層14は、スズメッキ軟銅線を圧電体12の表面に一方向に整列させて巻き付ける横巻きシールド方法によって形成される。
【0026】
また、ポリフッ化ビニリデンは、高い電圧が付与されて分極すると圧電効果が発生する軽量の高分子材料であり、これに外力を加えると電圧が発生し、電圧を加えると歪が発生する特性を備えている。圧電体12には分極処理が施されており、圧電体12に外部から力が加わったときに内部導体13と外部導体層14の間に電圧が誘起される。また、内部導体13と外部導体層14の間に電圧をかけると、圧電体12に変形(歪み)が生じる。
【0027】
なお、手袋形に形成された触覚センサ10の表裏両面は、絶縁性の軟質樹脂フィルムからなる保護カバー15で覆われている。この保護カバー15は厚みが20μm〜1.2mm、望ましいのは20μm〜800μm、より望ましいのは50μm〜500μmで、硬さが、デュロメータ・タイプCで0〜50、すなわち、人の皮膚の硬さまたはそれよしも少し柔らかくなっている。また、触覚センサ10には、ケーブル状圧力センサ11を延長して構成された引出線16が備わっている。この引出線16には、70℃〜150℃で5秒〜150秒、望ましくは80℃〜120℃で5秒〜60秒、より望ましくは、85℃〜98℃で5秒〜30秒の処理を行うことで圧電性をなくす、もしくは問題ないレベル(5%以下)まで減少させる。これによって、引出線16の圧電体17には非晶質層が生じて圧電性が低下している。
【0028】
図3は、触覚センサ10が取り付けられるロボットに備わった検出部20を示している。この検出部20には、触覚センサ10の他、検出回路21、A/D変換回路22およびCPU23が備わっている。検出回路21は、インピーダンス変換回路、増幅回路およびローパスフィルタを備えている。そして、検出回路21は、ロボットの把持部が農作物を把持したときに、触覚センサ10から引出線16を介して送られる検出信号のレベルを所定のレベルに整合したのちに増幅するとともに、システム応答の限界である遮断周波数よりも高い周波数の成分を減衰させて遮断して遮断周波数よりも低い周波数の成分をA/D変換回路22に送る。
【0029】
A/D変換回路22は、検出回路21から送られた信号をデジタル信号に変換してCPU23に送る。CPU23は、検出部20が行う各種の処理を実行する。また、検出部20には、CPU23が実行するプログラムを記憶するROM、CPU23の処理に使用されるデータなどを一時的に記憶するRAM等が備わっている他、ロボットを操作するための操作ボタンやスイッチを備えた操作部および駆動部などが備わっている。ここで、CPU23は、触覚センサ10に圧力が加わったときに、触覚センサ10を構成する縦糸Aと横糸Bに発生する圧電気から電圧を生じた縦糸Aと横糸Bのそれぞれの位置と電圧の大きさを算出することで触覚センサ10のどの部分にどの程度の圧力が加わったかを求める。
【0030】
この場合、図4に示したように、複数の縦糸Aと横糸Bはそれぞれ直交しているため、縦糸Aが並んでいる方向を横軸とし、横糸Bが並んでいる方向を縦軸として、触覚センサ10の所定の部分a(図4で丸で囲った部分)に圧力がかかったときに、それぞれの縦糸Aと横糸Bからどのような信号が発生しているかを走査することで圧力の分布を知ることができる。この場合、縦糸Aと横糸Bの交点を検出点とすることができる。また、縦糸Aと横糸Bを一定の時間で走査したときに検出した信号を時間で積分することで、被検出物の形状や圧力のピークの位置を判断することができる。
【0031】
また、ケーブル状圧力センサ11は、圧力がかかって変形が生じたときに信号を発生するが、圧力がかかった同じ状態が続くと信号を発生しなくなる。このようなケーブル状圧力センサ11においては、他の検出方法として、圧力がかからず信号が発生されていない外側に位置するケーブル状圧力センサ11から測定して、圧力がかかった部分との臨界点を求めていくことで検出処理を簡単にすることが好ましい。
【0032】
この場合、まず、信号が発生されていない外側のケーブル状圧力センサ11から走査して圧力がかかった部分aの輪郭を求め、つぎに、走査する際には、その部分aに圧力がかかっているものとして、前述した輪郭の近傍に位置するケーブル状圧力センサ11を走査して圧力がかかった部分の輪郭を求めていく。これによって、圧力がかかった部分aの範囲に変化が生じても、圧力がかかった部分を順次求めることができる。この場合、臨界点として求めた値を時間微分することで、前述した所定の部分aの形状を求めることができる。これによると、すべてのケーブル状圧力センサ11を走査する必要が無くなるため、検出時間の短縮が図れる。また、前述した駆動部は、触覚センサ10が検出した圧力値に基づいて、CPU23の制御によりロボットの把持部を駆動する。
【0033】
このように、本実施形態に係る触覚センサ10は、ケーブル状圧力センサ11を、縦糸Aと横糸Bとして織布状に織って形成されている。そして、各ケーブル状圧力センサ11は、断面形状が円形に形成されている。このため、ケーブル状圧力センサ11は、軸方向の伸縮だけでなく、軸周りのどの方向にでも容易に変形できるとともに、断面形状が変化するように径方向にも変形できる。そして、触覚センサ10は、変形自在な薄い織布状になり、被検出物である農作物の表面が凹凸に形成されていても、その形状に沿って広い面積で接触することができ、ロボットの把持部が農作物を把持した際に、農作物から受ける力およびその分布を感度よく検出できるようになる。また、触覚センサ10の表面の硬さが人間の皮膚程度になっているため、被検出物を傷めることがない。
【0034】
(第1実施形態の変形例1)
図5は、第1実施形態の変形例1に係る触覚センサ10aの一部を示している。この触覚センサ10aは、前述した触覚センサ10におけるケーブル状圧力センサ11からなる縦糸Aと横糸Bに加えて、縦糸Aと横糸Bに対して斜めに延びる斜め糸Cが備わっている。この斜め糸Cもケーブル状圧力センサ11で構成されている。この触覚センサ10aのそれ以外の部分の構成は、触覚センサ10と同じである。
【0035】
このように構成したことにより、触覚センサ10aが検出できる方向が増えるため、触覚センサ10aに圧力を加える非検出物の形状をより正確に捉えることができる。この触覚センサ10aのそれ以外の作用効果は、触覚センサ10と同じである。なお、図5では、斜め糸Cが、触覚センサ10aの表面側に配置されているが、この斜め糸Cは、触覚センサ10aの裏面側に配置されていてもよいし、触覚センサ10aの表裏にジグザグに位置するように縦糸Aと横糸Bに絡まっていてもよい。また、斜め糸Cの数も適宜設定される。
【0036】
(第1実施形態の変形例2)
図6は、第1実施形態の変形例2に係る触覚センサ10bの断面図を示している。この触覚センサ10bは、前述した触覚センサ10における保護カバー15に代えて、表面側(図6では上面)に薄い保護カバー15aを貼り付け、裏面側(図6では下面)に、保護カバー15aよりも厚い保護カバー15bを貼り付けて構成されている。保護カバー15a,15bは保護カバー15と同じ材質、同じ硬さのもので構成されており、保護カバー15aの厚みは、20μm〜1.2mm、望ましくは20μm〜800μm、より望ましくは50μm〜500μmで、保護カバー15bの厚みは、20μm〜1.5mm、望ましくは50μm〜1.2mm、より望ましくは100μm〜800μmに設定されている。この触覚センサ10bのそれ以外の部分の構成は、触覚センサ10と同じである。
【0037】
このように保護カバー15aを薄くしたことにより、触覚センサ10bの触覚感度を高くすることができる。また、触覚センサ10bの変形例として、保護カバー15aが貼り付けられた面を裏面とし、保護カバー15bが貼り付けられた面を表面とすることができる。これによると、触覚センサ10bの耐久性が向上する。さらに、触覚センサ10bの変形例として、両保護カバーの厚さは同じにして、硬さが異なるようにすることもできる。この場合、表面側の保護カバーを硬くすると、耐久性が向上し、表面側の保護カバーを柔らかくすると、触覚感度を高くすることができる。
【0038】
(第1実施形態の変形例3)
図7は、本発明の第1実施形態の変形例3に係る触覚センサ10cの一部を示している。この触覚センサ10cは、前述した第1実施形態に係る触覚センサ10と同様、ケーブル状圧力センサ11と同じ構造の縦糸Aと横糸Bを織り込んで形成されているが、縦糸Aに、外径の異なる縦糸A1,A2が含まれ、横糸Bに外径の異なる横糸B1,B2が含まれている。縦糸A1と横糸B1は、同じケーブル状圧力センサで構成され、外径が0.4mm〜1.2mm、望ましくは0.4mm〜0.8mm、より望ましくは0.45mm〜0.55mmである。また、縦糸A2と横糸B2は、同じケーブル状圧力センサで構成され、外径が0.2mm〜0.8mm、望ましくは0.25mm〜0.6mm、より望ましくは0.25mm〜0.4mmである。この触覚センサ10cのそれ以外の部分の構成は、触覚センサ10と同じである。
【0039】
このように構成したことにより、触覚センサ10cの各部分の感度を変えることができる。この場合、高い感度が必要な部分には、縦糸A1や横糸1が位置するようにし、さほど高い感度が要求されない部分には、縦糸A2や横糸B2が位置するようにする。また、強度が必要な部分には、縦糸A1や横糸1が位置するようにし、さほど強度が要求されない部分には、縦糸A2や横糸B2が位置するようにすることもできる。この触覚センサ10cのそれ以外の作用効果は、触覚センサ10と同じである。
【0040】
(第1実施形態の変形例4)
図8は、本発明の第1実施形態の変形例4に係る触覚センサを構成するケーブル状圧力センサ11aを示している。ケーブル状圧力センサ11aは、前述したケーブル状圧力センサ11を曲げることでコイルばねのような螺旋状に形成されている。そして、ケーブル状圧力センサ11aは、縦糸と横糸として織り込まれることで織布状に形成されて、触覚センサの本体部分を構成している。このケーブル状圧力センサ11aは、ケーブル状圧力センサ11を他の繊維と撚糸状にしたのちに、他の繊維を溶解したり、ケーブル状圧力センサ11を溶解可能な芯に巻き付けたのちに、芯を溶解したりすることで螺旋状に形成できる。このケーブル状圧力センサ11aを用いた触覚センサのそれ以外の部分の構成は、触覚センサ10と同じである。
【0041】
このように構成したことにより、触覚センサが弾性および柔軟性に富んだものとなる。また、外力がかかったときに、ケーブル状圧力センサ11aには大きく変形する部分が生じ、これによって大きな出力電圧が発生するため、触覚センサの感度が向上する。このケーブル状圧力センサ11aを用いた触覚センサのそれ以外の作用効果は、触覚センサ10と同じである。また、ケーブル状圧力センサ11aの変形例として、前述した他の繊維を溶解せずにそのまま残して撚糸の状態にしてもよい。これによると、触覚センサの表面が柔軟になる。
【0042】
(第1実施形態の変形例5)
図9は、第1実施形態の変形例5に係る触覚センサを構成するケーブル状圧力センサ11bを示している。ケーブル状圧力センサ11bは、前述したケーブル状圧力センサ11を曲げることで波状に形成されている。そして、ケーブル状圧力センサ11bは、縦糸と横糸として織ることで織布状に形成され、触覚センサの本体部分を構成している。このケーブル状圧力センサ11bは、縦糸または横糸に複数の太い化繊を用いてその化繊の上下を順に通過するようにして波形にしたのちに、化繊を溶解することで波形に形成できる。このケーブル状圧力センサ11bを用いた触覚センサのそれ以外の部分の構成は、触覚センサ10と同じである。このように構成したことにより、前述したケーブル状圧力センサ11aを備えた触覚センサと同様の作用効果を得ることができる。
【0043】
(第2実施形態)
図10は本発明の第2実施形態に係る触覚センサ10dの一部の概略を示している。この触覚センサ10dは、前述したケーブル状圧力センサ11をそれぞれループを形成するようにして絡め合わせることで編み物状に形成されている。この触覚センサ10dのそれ以外の構成については、前述した触覚センサ10と同一である。
【0044】
これによると、各ケーブル状圧力センサ11がループを描くように曲がっているため、前後方向または左右方向に対して伸縮できる長さが大幅に増えるようになる。このため、触覚センサ10dは、半球状や球状の被検出物の表面に対しても沿えるようになり、検出できる被検出物の範囲が広がる。また、各ケーブル状圧力センサ11は結び目を形成するように、曲がりくねっているため、変形し易くなり、これによって検出感度が向上する。この触覚センサ10dのそれ以外の作用効果は、前述した触覚センサ10と同じである。また、触覚センサ10dの変形例として、ケーブル状圧力センサ11に代えて、ケーブル状圧力センサ11aまたは11bを用いてもよい。さらに、触覚センサ10dに斜め糸Cを加えてもよい。
【0045】
(第3実施形態)
図11は、本発明の第3実施形態に係る触覚センサを構成するケーブル状圧力センサ31を示している。このケーブル状圧力センサ31は、円筒状の圧電体32の内周面に薄い内部導体層33を形成するとともに、圧電体32の外周面に薄い外部導体層34を形成して構成されている。圧電体12は、ポリフッ化ビニリデンからなり柔軟性および伸縮性を有する極細の円筒体で構成されており、その内径は、0.15mm〜0.60mm、好ましくは0.3mmで、外径は0.25mm〜0.65mm、好ましくは0.32mmに設定されている。内部導体層33は、銀からなる薄い膜で構成されており、蒸着により圧電体32の内周面に形成されている。内部導体層33の厚みは、0.5μm〜2.0μm、好ましくは0.5μm程度になっている。外部導体層34は、内部導体層33と同様、銀の蒸着によって、圧電体32の外周面に形成されている。外部導体層34の厚みは内部導体層33の厚みと略同じである。
【0046】
圧電体32は、例えば、公知の引き抜き法によって成形される。この場合、ポリフッ化ビニリデンからなる成形材料を、開口を備えた外径ダイスの開口と、その開口の内部に配置された内径プラグとの間の隙間を通過させながら掴み機具で引っ張ることで設定された直径および肉厚の円筒形に成形している。そして、真空チャンバを用いた公知のアーク蒸着法によって、圧電体32の内面および外面に設定された厚みの内部導体層33と外部導体層34を形成している。このように構成されたケーブル状圧力センサ31を縦糸Dと横糸E(図12(a),(b)参照)として織り、その表裏両面に保護カバーを貼り付けて、本実施形態に係る触覚センサは構成されており、その外観は触覚センサ10と略同じになる。
【0047】
このように、本実施形態に係る触覚センサは、ケーブル状圧力センサ31を、縦糸Dと横糸Eとして織布状に織って形成されている。そして、各ケーブル状圧力センサ31は、円筒状の圧電体32の内周面に薄い内部導体層33を形成するとともに、圧電体32の外周面に薄い外部導体層34を形成して構成されており、圧電体32は柔軟性および伸縮性を備えたポリフッ化ビニリデンからなる極細の円筒状に形成されている。このため、ケーブル状圧力センサ31は、軸周りのどの方向にでも容易に変形でき、軸方向にも伸縮できるとともに、断面形状が変化するように径方向にも容易に変形できる。そして、触覚センサは、変形自在な薄い織布状になり、被検出物である農作物の表面が凹凸に形成されていても、その形状に沿って撓むことができ、ロボットの把持部が農作物を把持した際に、農作物から受ける力およびその分布を感度よく検出できるようになる。
【0048】
また、圧電体32をポリフッ化ビニリデンで構成したため、ケーブル状圧力センサ31は、良好な圧電性を得ることができる。図12(a),(b)は、触覚センサに圧力がかかるときの重なり合った縦糸Dと横糸Eを構成する2つのケーブル状圧力センサ31の状態を示しており、図12(a)は圧力がかかる前の状態を示し、図12(b)は、圧力がかかったときの状態を示している。圧力がかかる前は、各ケーブル状圧力センサ31の断面形状は、殆ど変形のない真円に近い状態になっているが、圧力がかかると、各ケーブル状圧力センサ31は、圧力の大きさに応じて押し潰されその断面形状は、楕円形に変化していく。
【0049】
このとき、楕円形に変形したケーブル状圧力センサ31の圧電体32における長軸側の両側部分(図12(b)の断面の左右両側)は、内面側に圧縮応力が生じ、外面側に引っ張り応力が生じるように歪む。このため、図12(b)に断面で示したケーブル状圧力センサ31の左右両側には、ケーブル状圧力センサ31を軸方向に伸縮させた場合や、圧電体32を厚み方向に圧縮させた場合に比べてより大きな変形が生じるようになる。
【0050】
なお、圧電体32は、変形量に応じた電圧を発生する。このため、圧力がかかり大きく変形したケーブル状圧力センサ11にはより大きな電圧が発生するようになり、触覚センサは良好な検出感度を発揮できる。さらに、内部導体層33および外部導体層34を銀の蒸着層で構成したため、極薄の層に形成することができる。これにともなって、ケーブル状圧力センサ31の細径化、軽量化およびコストの低減化が図れる。また、他の例として、ケーブル状圧力センサ31を、図10に示した編み物状に組み付けて触覚センサを構成してもよい。
【0051】
(第3実施形態の変形例1)
前述した第3実施形態の変形例1として、図13に示した圧電フィルム32aを用いて圧電体32を形成することができる。圧電フィルム32aは、ポリフッ化ビニリデンからなる細長い矩形のシートで構成されており、その一方の面の幅方向の中央部分に、内部導体層33を形成するための内部帯状層33aが形成されている。圧電体32は、圧電フィルム32aの幅方向の両縁部32bを重ねるように巻き付けて円筒状に形成され、内部帯状層33aは、圧電フィルム32aの重ね合される両縁部32bを除いた部分に形成される。そして、圧電体32の外周面には、前述したケーブル状圧力センサ31と同様、外部導体層34が形成される。
【0052】
圧電フィルム32aを円筒状に巻き付ける場合には、例えば、溶解または蒸発させやすい材料からなる芯線の周囲に、内部帯状層33aが形成された圧電フィルム32aを巻き付けて円筒状に形成したのちに、芯線を溶解または蒸発させて除去する方法を用いることができる。この芯線の直径は、0.15mm〜0.55mm、好ましくは0.30mmとすることが好ましい。外部導体層34は、前述した第3実施形態と同様、銀の蒸着によって形成することができるが、他の金属のメッキ層を用いたり、導電体樹脂を塗布することで形成したりしてもよい。導電体樹脂は毛細管現象を利用して含浸させてもよい。また、この変形例1では、圧電フィルム32aの幅を3.5mm、長さを200mとして、圧電体32、内部導体層33および外部導体層34からなる円筒体を少し太めに形成しておき、円筒状に形成したのちに引っ張ることで設定された直径および肉厚にしている。
【0053】
なお、圧電フィルム32aの各部分の寸法としては、長さが10mm〜1000mm、好ましくは100mm〜500mmで、幅が1mm〜10mm、好ましくは1.5mm〜5mmで、厚みが8μm〜120μm、好ましくは15μm〜40μm、最も好ましいは20μmに設定することである。また、前述のように圧電フィルム32aの幅を3.5mmとしたときに、内部帯状層33aの幅は1.3mm〜1.7mmに設定し、内部帯状層33aの両側の縁部32bの幅は0.9mm〜1.1mmに設定することが好ましい。この場合、内部導体層33には、長手方向に延びる隙間が生じる。また、図13では、圧電フィルム32aの長手方向の両端部には、内部帯状層33aが形成されていないが、内部帯状層33aは、圧電フィルム32aの長手方向の両端部まで延びていてもよい。
【0054】
(第3実施形態の変形例2)
図14(a),(b)は、第3実施形態の変形例2に係る触覚センサ(図示せず)を構成するケーブル状圧力センサ41を示している。ケーブル状圧力センサ41は、前述したケーブル状圧力センサ31と同様、円筒状の圧電体42の内周面に薄い内部導体層43を形成するとともに、圧電体42の外周面に薄い外部導体層44を形成して構成されているが、圧電体42と、内部導体層43はそれぞれ細長い材料を螺旋状に巻き付けることで円筒状に形成されている。
【0055】
このケーブル状圧力センサ41の製造には、図13に示した内部帯状層33aが形成された圧電フィルム32aと同様の内部帯状層が形成された圧電フィルムが用いられる。そして、この圧電フィルムを、内部帯状層が内側になるようにして螺旋状に丸めて円筒状にし、重なり合う圧電フィルムの縁部どうしを接合する。これによって、図15に示した圧電体42と内部導体層43(図14(b)参照)からなるセンサ中心部41aが得られる。なお、内部導体層43の幅方向の縁部間には螺旋状に延びる隙間43aが形成されている。この場合の圧電フィルムの巻き付けも、前述した溶解または蒸発させやすい材料からなる芯線を用いて行うことができる。つぎに、圧電体42の外周面に外部導体層44を形成してケーブル状圧力センサ41が得られる。外部導体層44も銀の蒸着、他の金属のメッキや導電体樹脂の塗布などで形成することができる。
【0056】
また、圧電体42の内径および外径は前述した圧電体32と略同じで、内部導体層43および外部導体層44の厚みは、前述した内部導体層33および外部導体層34の厚みと略同じである。このように構成された複数のケーブル状圧力センサ41を二組に分け、一方が縦糸で他方が横糸になるように織って織布状に形成するとともに、その表裏両面に保護カバーを貼り付けることで、ケーブル状圧力センサ31を用いた触覚センサと同様の触覚センサが得られる。また、ケーブル状圧力センサ41を、図10に示した編み物状に組み付けて触覚センサを構成してもよい。
【0057】
本実施形態に触覚センサによると、予め圧電フィルムに形成された内部帯状層で内部導体層43を形成するため、ケーブル状圧力センサ41の形成が容易になる。また、圧電フィルムの巻き付けに用いる芯線の直径や圧電フィルムの巻き方を変更することで、ケーブル状圧力センサ41を構成する各部分の形状や内径、外径、厚みなどの寸法を任意に設定できるため、触覚センサの構造を任意に設定することができる。このケーブル状圧力センサ41を用いた触覚センサのそれ以外の作用効果は、前述したケーブル状圧力センサ31を用いた触覚センサと同じである。
【0058】
(第3実施形態の変形例3)
図16(a),(b)は、第3実施形態の変形例3に係る触覚センサ(図示せず)を構成するケーブル状圧力センサ51を示している。ケーブル状圧力センサ51は、円筒状の圧電体52の内周面に薄い内部導体層53を形成するとともに、圧電体52の外周面に薄い外部導体層54を形成して構成されている。このケーブル状圧力センサ51では、圧電体52、内部導体層53および外部導体層54のすべてが細長い材料を螺旋状に巻き付けることで円筒状または略円筒状に形成されている。圧電体52は円筒状に形成されているが、内部導体層53と外部導体層54はそれぞれコイルばねのように隙間53b,54bのある螺旋状に形成されている。
【0059】
このケーブル状圧力センサ51を製造する際には、まず、図17に示したように、圧電フィルム52aの一方の面(図17では上面)の幅方向の中央に、銀の薄層からなる内部帯状層53aを形成するとともに、圧電フィルム52aの他方の面(図17では下面)の幅方向の中央に、銀の薄層からなる外部帯状層54aを形成してセンサ材料51aとする。ついで、このセンサ材料51aを、内部帯状層53aが内側、外部帯状層54aが外側になるようにして螺旋状に丸めて円筒状にし、重なり合う圧電フィルム52aの縁部52bどうしを接合する。これによって、圧電体52、内部導体層53および外部導体層54からなるケーブル状圧力センサ51が得られる。この場合の圧電フィルム52aの縁部52bどうしの接合は、接着や、圧着によって行うことが好ましい。また、センサ材料51aの巻き付けは、前述した溶解または蒸発させやすい材料からなる芯線を用いて行うことができる。
【0060】
また、圧電体52の内径および外径は前述した圧電体32と略同じで、内部導体層53および外部導体層54の厚みは、前述した内部導体層33および外部導体層34の厚みと略同じである。このように構成された複数のケーブル状圧力センサ51を二組に分け、一方が縦糸で他方が横糸になるように組み付けて織布状に形成するとともに、その表裏両面に保護カバーを貼り付けることで触覚センサが得られる。また、ケーブル状圧力センサ51を、図10に示した編み物状に組み付けて触覚センサを構成してもよい。
【0061】
この変形例3に係る触覚センサによると、ケーブル状圧力センサ51を構成する内部導体層53と外部導体層54が、予め圧電フィルム52aに形成された内部帯状層53aと外部帯状層54aで形成されるため内部導体層53と外部導体層54の形成が容易になる。また、この場合も、センサ材料51aの巻き付けに用いられる芯線の直径やセンサ材料51aの巻き方を変更することで、ケーブル状圧力センサ51を構成する各部分の形状や内径、外径、厚みなどの寸法を任意に設定できるため、触覚センサの構造を任意に設定することができる。このケーブル状圧力センサ51を用いた触覚センサのそれ以外の作用効果は、前述したケーブル状圧力センサ31を用いた触覚センサと同様である。また、他の変形例として、センサ材料51aを螺旋状に巻き付けるのではなく、縁部52bどうしを真っ直ぐにしたまま接合して円筒状に形成することもできる。
【0062】
(第3実施形態の変形例4)
図18(a),(b)は、第3実施形態の変形例4に係る触覚センサ(図示せず)を構成するケーブル状圧力センサ61を示している。ケーブル状圧力センサ61は、複数のセンサ電線61aを撚り合わせて撚糸状にして形成されており、各センサ電線61aは、前述した第3実施形態のケーブル状圧力センサ31と同じもので構成されているが、極細にする必要がある。そして、このように構成された複数のケーブル状圧力センサ61を二組に分け、一方が縦糸で他方が横糸になるように組み付けて織布状に形成するとともに、その表裏両面に保護カバーを貼り付けることで触覚センサが得られる。また、ケーブル状圧力センサ61を、図10に示した編み物状に組み付けて触覚センサを構成してもよい。
【0063】
この変形例4に係る触覚センサでは、ケーブル状圧力センサ61が、複数のセンサ電線61aで構成されているため、強度が大きくなるとともに、感度がよくなる。また、撚りが入ることによって各ケーブル状圧力センサ61は外力によってより曲がり易くなるとともに軸方向に伸縮し易くなるため、ケーブル状圧力センサ61によって構成される触覚センサは被検出物に沿ってより撓み易くなる。さらに、ケーブル状圧力センサ61を複数のセンサ電線61aで構成することで、一部のセンサ電線61aが切れても、他のセンサ電線61aで、ケーブル状圧力センサ61としての機能を維持することができる。
【0064】
また、ケーブル状圧力センサ61を用いた触覚センサのそれ以外の作用効果は、前述したケーブル状圧力センサ31を用いた触覚センサの作用効果と同様である。さらに、ケーブル状圧力センサ61の変形例として、各センサ電線61aとして用いるセンサ電線を、ケーブル状圧力センサ31に代えて、ケーブル状圧力センサ11、41または51で構成してもよい。
【0065】
(第3実施形態の変形例5)
図19は、第3実施形態の変形例5に係る触覚センサ(図示せず)を構成するケーブル状圧力センサ31aの断面を示している。ケーブル状圧力センサ31aは、前述したケーブル状圧力センサ31の外周面に絶縁性シース35を形成して構成されている。絶縁性シース35は、極薄のポリエステルテープを外部導体層34の外周面に巻き付けて形成されており、厚みは3μm〜80μm、望ましくは5μm〜50μm、より望ましくは10μm〜25μmに設定されている。そして、このように構成された複数のケーブル状圧力センサ31aを縦糸と横糸になるように編み付けて織布状に形成するとともに、その表裏両面に保護カバーを貼り付けることで触覚センサが得られる。
【0066】
この変形例5に係る触覚センサでは、各ケーブル状圧力センサ31aの強度が増すため、破損が防止され長寿命化が図れる。ケーブル状圧力センサ31aを用いた触覚センサのそれ以外の作用効果は、前述したケーブル状圧力センサ31を用いた触覚センサの作用効果と同様である。また、ケーブル状圧力センサ31aの変形例として、中心部分を、ケーブル状圧力センサ31に代えて、ケーブル状圧力センサ11,41,51,61のいずれかで構成してもよい。なお、ケーブル状圧力センサ31aを、図10に示した編み物状に組み付けて触覚センサを構成してもよい。
【0067】
前述した各実施形態および変形例では、触覚センサ10等をロボットの把持部に取り付ける手袋形のものとしたが、本発明に係る触覚センサは、他の用途としても利用が可能である。以下、各用途について説明する。まず、触覚センサを配管などの溶接部の欠陥の有無を検査する非破壊検査で用いることができる。この場合、触覚センサを平面布状に形成して、配管の被検査部分に巻き付ける。その状態で、触覚センサに電圧を付加して、振動を発生させる。このとき、配管内を通過したのち内面から反射される振動の状態によって、欠陥、例えば空洞、ひびなどの有無を判断することができる。また、触覚センサを配管に巻き付けて、その配管の内部に気体を導入し、配管の外面に漏洩して触覚センサに圧力を加える空気の有無によって、配管に内面から外面に貫通する漏れが生じているか否かを判断することもできる。
【0068】
また、表面を触覚センサで覆った状態の風船を、配管内に入れて膨らませ、その状態で、触覚センサに電圧を付加して、振動を発生させ、配管内を通過したのち内面から反射される振動の状態によって、欠陥、例えば空洞、ひびなどの有無を判断することもできる。さらに、本発明に係る触覚センサは、自動車の座席の座面や背もたれに取り付けて圧力検出装置として用いたり、座席に乗っているのが人であるか、物であるかを判断したりするために用いることもできる。また、自動車のシートベルト、ハンドルカバーなどに取り付けて、心拍や呼吸を計測することで、運転者の状態を判断するために用いることもできる。
【0069】
本発明に係る触覚センサは、医療用具としても利用することができ、ベッドシートや枕カバーに取り付けて非侵襲性の心拍、呼吸センサとすることもできる。さらに、血圧計として利用することもでき、この場合、例えば、触覚センサに柔らかい部分と硬い部分を設け、各部分の振動状態に応じて血圧を判断することができる。その他、義足や義手に取り付けて、負荷を検出するために用いたり、リハビリテーション用のマッサージ器具として用いたりすることもできる。これらの場合、触覚センサの形状は目的に応じたものにする。要は、外部からの圧力を測定したり、圧電体を変形させることで目的を達成したりする機械器具であれば触覚センサの利用が可能である。
【0070】
また、本発明に係る触覚センサは、前述した各実施形態および変形例に限定するものでなく、本発明の技術範囲内で、適宜変更して実施することができる。例えば、前述した各実施形態および変形例では、触覚センサ10,10a等の表面にそれぞれ本発明に係る柔軟物質層としての保護カバー15,15a,15bが形成されているが、これに代えて、各ケーブル状圧力センサ11,11a等の外周面自体を柔軟物質層に形成してもよい。これによると、保護カバー15,15a,15bを省略することができる。
【0071】
また、前述したケーブル状圧力センサ11,31等を構成する各部分の材質や寸法についても適宜変更が可能である。例えば、ケーブル状圧力センサ11,11a,11bの直径は、8μm〜800μmの範囲で任意の値に設定することが好ましく、ケーブル状圧力センサ31,41等の直径は、8μm〜100μmの範囲で任意の値に設定することが好ましい。また、絶縁性シースの厚みは5μm〜80μmの範囲で任意の値に設定することが好ましい。
【符号の説明】
【0072】
10,10a,10b,10c,10d…触覚センサ、11,11a,11b,31,41,51,61,71…ケーブル状圧力センサ、12,32,42,52…圧電体、13…内部導体、14,34,44,54…外部導体層、15,15a,15b…保護カバー、16…引出線、33,43,53…内部導体層、61a…センサ電線、A,A1,A2,D…縦糸、B,B1,B2,E…横糸、C…斜め糸。
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