(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6912935
(24)【登録日】2021年7月13日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】油入静止誘導機器
(51)【国際特許分類】
H01F 27/12 20060101AFI20210727BHJP
H01F 27/14 20060101ALI20210727BHJP
【FI】
H01F27/12 A
H01F27/14 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-97267(P2017-97267)
(22)【出願日】2017年5月16日
(65)【公開番号】特開2018-195667(P2018-195667A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2020年2月18日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩田 広
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和昭
(72)【発明者】
【氏名】山下 みどり
【審査官】
木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭60−169816(JP,U)
【文献】
特開平09−266117(JP,A)
【文献】
実開昭56−024120(JP,U)
【文献】
特開平06−061068(JP,A)
【文献】
実開昭60−095523(JP,U)
【文献】
実開昭58−175612(JP,U)
【文献】
実開昭58−085316(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/12−27/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導機器本体が絶縁油と共に収容されるタンクと、
前記タンク内の上部と導油管を介して連通され、前記絶縁油を冷却するための放熱器と、
前記タンクの上方部に設けられ前記絶縁油の劣化を防止するためのコンサベータとを備え、
前記放熱器は、上部ヘッダと下部ヘッダとの間に複数枚の放熱パネルを有したユニット状の放熱器を、前記タンクの両側部に前後方向に並んで複数個ずつ備えると共に、前記各上部ヘッダの高さ位置が前記タンクよりも高くなるように構成され、
前記導油管は、上方に延伸されて前記各放熱器の上部ヘッダにつながる複数の接続管からなり、
前記放熱器のうち最も手前側に位置される放熱器における前記接続管の上端部に、前記絶縁油の油面の高さを視認可能な確認窓が設けられている油入静止誘導機器。
【請求項2】
前記コンサベータは、前記確認窓よりも低い位置に設けられている請求項1記載の油入静止誘導機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、油入静止誘導機器に関する。
【背景技術】
【0002】
油入静止誘導機器、例えば高電圧受配電設備用の油入変圧器においては、変圧器本体を絶縁油と共にタンク内に収容すると共に、タンクの上部に、絶縁油の劣化を防止するためのコンサベータを設け、さらに、タンクの側方に絶縁油を冷却するための放熱器を設けて構成されるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記放熱器としては、タンクと連通する上下のヘッダ間に、複数枚のパネル状(薄板中空状)の放熱パネルを並べて配置して構成されるいわゆるパネル式の放熱器が知られている。このとき、設置面積を抑えつつ放熱効果を高めるために、放熱器を高さ方向に大型化することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭59−106109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、変圧器の組立て時において、タンク内及び放熱器を満たすように絶縁油の注油作業が行われる。上記のように放熱器の上端の高さが、タンクよりも高くなるような場合には、内部を真空引きした状態で、注油が行われる。この場合、放熱器の上端まで確実に絶縁油が注油されたことを確認するためには、放熱器の上部ヘッダの上端部に、気抜き口及びそれを塞ぐ栓を設けて、作業者が栓を外して気抜き口部分まで絶縁油が来ているかどうかを視認することが行われていた。
【0006】
しかし、特に大型の変圧器の場合、放熱器の上部の高さ位置が、設置面(床)から4m程度の高さにまでなることもあり、作業者が高い位置で確認作業を行わなければならず、給油の作業自体が、困難になることがあった。
【0007】
そこで、注油時における必要量の注油が行われたことの確認を容易且つ確実に行うことができる油入静止誘導機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る油入静止誘導機器は、誘導機器本体が絶縁油と共に収容されるタンクと、前記タンク内の上部と導油管を介して連通され、前記絶縁油を冷却するための放熱器と
、前記タンクの上方部に設けられ前記絶縁油の劣化を防止するためのコンサベータとを備え、前記放熱器は、上部ヘッダと下部ヘッダとの間に複数枚の放熱パネルを有したユニット状の放熱器を
、前記タンクの両側部に前後方向に並んで複数個
ずつ備えると共に、前記各上部ヘッダの高さ位置が前記タンクよりも高くなるように構成され、前記導油管は、上方に延伸されて前記各放熱器の上部ヘッダにつながる複数の接続管からなり、
前記放熱器のうち最も手前側に位置される放熱器における前記接続管の
上端部に、前記絶縁油の油面の高さを視認可能な確認窓が設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態を示すもので、変圧器の全体構成を概略的に示す正面図
【
図2】タンクの上部の導油管部分を概略的に示す斜視図
【
図4】第2の実施形態を示すもので、変圧器の全体構成を概略的に示す正面図
【
図6】第3の実施形態を示すもので、変圧器の全体構成を概略的に示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、高電圧受配電設備用の油入絶縁変圧器に適用したいくつかの実施形態について、図面を参照しながら説明する。尚、複数の実施形態において共通する部分については、符号を共通して使用し、詳しい説明や新たな図示を省略することとする。
【0011】
(1)第1の実施形態
図1〜
図3を参照して、第1の実施形態について述べる。
図1は、本実施形態に係る油入静止誘導機器としての油入絶縁変圧器1(以下単に「変圧器1」という)の全体構成を概略的に示している。この変圧器1は、誘導機器本体としての変圧器本体2を収容するタンク3と、このタンク3の図で左右の側部に接続される複数個のユニット状の放熱器4と、タンク3の上部に設けられたコンサベータ5とを備えている。尚、本実施形態では、方向をいう場合には、タンク3のうち上面から見て長手方向を前後方向とする。
【0012】
詳しく図示はしないが、前記変圧器本体2は、鉄心及びその鉄心に装着されたコイル等からなる周知構成を備える。前記タンク3は、図で前後方向に長い矩形箱状をなし、前記変圧器本体2を収容すると共に、図示はしないが。その変圧器本体2全体が浸されるように、絶縁媒体としての絶縁油(例えば鉱油)が充填されている。また、タンク3の前後の外面部には、変圧器本体2(コイル)と外部との接続用の複数個のブッシング7が設けられている。
【0013】
詳しく図示はしないが、前記コンサベータ5は、周知のように、容器内に、ゴム膜(ゴム袋)で区画された絶縁油の貯留部を有し、その貯留部が配管により前記タンク3内と連通している。これにより、コンサベータ5は、絶縁油の温度変化に伴う膨張、収縮を吸収すると共に、外気との接触による劣化を防止するようになっている。
【0014】
図1に示すように、タンク3の前面の下端部分には、注油口6が設けられており、この注油口6から絶縁油の注油が行われる。絶縁油は、タンク3内に加えて、各放熱器4内及びコンサベータ5の貯留部を満たすように注油される。この場合、
図2にも示すように、タンク3の上面部には、左右両端部に位置して、タンク3内の絶縁油が流れる導油管8、8が前後方向に延びて設けられており、これら導油管8を介して各放熱器4に絶縁油が流れ込むようになっている。
【0015】
ここで、前記放熱器4について、主として
図3を参照して述べる。前記放熱器4は、前記タンク3内の絶縁油を冷却するためのもので、
図1に示すように、前記タンク3の図で左右の側部に、ユニット状の放熱器4が、前後方向に並んで複数個ずつ設けられる。本実施形態では、放熱器4として、いわゆるパネル式の放熱器が採用されている。具体的には、
図3に示すように、各放熱器4は、熱伝導性の良い金属から構成され、上部ヘッダ9、下部ヘッダ10、それらの間を接続する複数枚の放熱パネル11を備え、全体として、縦長の矩形ブロック状に構成されている。
【0016】
そのうち上部ヘッダ9は、図で左右方向に延びる円筒パイプ状をなし、先端側が閉塞されていると共に、
図2にも示すように、基端側が前記導油管8に連通するように接続されている。詳しく図示はしないが、上部ヘッダ9の外周面のうち下半部には、各放熱パネル11の上端部が差込まれる切込み部が、左右方向に所定間隔で並んで設けられている。前記下部ヘッダ10は、やはり図で左右方向に延びる円筒パイプ状をなし、先端側が閉塞され、基端側がタンク3内に連通するように該タンク3の側壁部の下端部に接続されている。詳しく図示はしないが、下部ヘッダ10の外周面のうち上半部には、各放熱パネル11の下端部が差込まれる切込み部が、左右方向に所定間隔で並んで設けられている。
【0017】
前記放熱パネル11は、図で上下方向に長く、前後方向に幅狭で、左右方向に薄型の薄板状をなすと共に、その内部には、長手方向つまり図で上下方向に延びて、上下両端面で開口する絶縁油流通穴(図示せず)が設けられている。複数の放熱パネル11は、板面(扁平な面)が左右方向を向くようにして、図で左右方向に、一定の間隔を置いて平行に配置される。このとき、各放熱パネル11の上端部は、上部ヘッダ9の切込み部に差込まれた状態で、溶接等により、絶縁油が漏れないような密閉状に接続される。これと共に、各放熱パネル11の下端部は、下部ヘッダ10の切込み部に差込まれた状態で、溶接等により、絶縁油が漏れないような密閉状に接続される。
【0018】
これにて、
図3に矢印aで示すように、タンク内3で、変圧器本体2の熱により暖められた絶縁油は、対流により、導油管8から上部ヘッダ9を通して、放熱器4内に流入する。そして、放熱器4内で、上部ヘッダ9から各放熱パネル11内に流入し、放熱パネル11内を下降しながら外部との間で熱交換されて冷却される。この後、放熱パネル11から下部ヘッダ10に流入し、下部ヘッダ10を通ってタンク3内に戻されるといった循環が行われる。このように絶縁油が循環することによって、タンク3内の絶縁油を冷却するようになっている。
【0019】
さて、本実施形態の油入変圧器1にあっては、
図1、
図2に示すように、前記導油管8又は放熱器4の最上部に、絶縁油の油面の高さを視認可能な確認窓12が設けられている。具体的には、確認窓12は、左右の導油管8の前端面部に位置して設けられている。この確認窓12は、例えば、導油管8の前端面に矩形の開口を形成すると共に、その開口を透明ガラスにより塞いで構成される。
【0020】
ここで、上記構成の油入変圧器1にあっては、組立て時(設置時)において、注油口6から、タンク3内及び各放熱器4並びにコンサベータ5の貯留部を満たすように絶縁油の注油作業が行われる。この場合、例えば、タンク3や各放熱器4の内部を真空引きした状態で、注油が行われる。注油時において、必要な量の注油が行われたかどうか、つまり放熱器4の最上部である上部ヘッダ9部分まで絶縁油が注油されかどうかを確認する必要がある。
【0021】
本実施形態では、作業者は、注油作業時に、上部ヘッダ9と同等の高さである導油管8に設けられた確認窓12を通して油面の高さを視認することができる。これにより、必要な量の絶縁油の注油が完了したかどうか、つまり放熱器4の最上部まで絶縁油が行き渡ったどうかを、視認により容易に確認することができる。このとき、注油時における導油管8内の実際の油面の高さ位置の確認を行うことができる。
【0022】
また、従来のような、作業者が気抜き口の栓を外して確認するものと異なり、大型の油入変圧器1にあっても、作業者による高い位置での直接的な作業は不要となる。この結果、本実施形態の油入変圧器1によれば、導油管8の最上部に、絶縁油の油面の高さを視認可能な確認窓12を設けたので、注油時における必要量の注油が行われたことの確認を容易且つ確実に行うことができるという優れた効果を得ることができる。
【0023】
(2)第2、第3の実施形態、その他の実施形態
次に、
図4及び
図5を参照して、第2の実施形態について述べる。第2の実施形態に係る油入静止誘導機器たる油入変圧器21が、上記第1の実施形態の油入変圧器1と異なる点は、放熱器22の構成にある。即ち、油入変圧器21は、変圧器本体2を収容するタンク3と、タンク3の図で左右の側部に接続される複数個のユニット状の放熱器22と、タンク3の上部に設けられたコンサベータ28とを備えている。
【0024】
さて、前記放熱器22は、やはり、上部ヘッダ23、下部ヘッダ24、それらの間を接続する複数枚の放熱パネル25を備え、全体として、縦長の矩形ブロック状に構成されているのであるが、上記第1の実施形態の放熱器4と比べて、高さ方向(上方)に大型に構成されている。つまり、上部ヘッダ23の高さ位置が、タンク3の高さよりも高くなるように構成されている。
【0025】
このとき、上部ヘッダ23は、図で左右方向に延びる円筒パイプ状をなしているのであるが、前記タンク3との間の接続は、タンク3の側面上端部から上方に延伸され、各上部ヘッダ23の基端部(
図5で左端側)に夫々つながる導油管としての複数本の接続管26によりなされるようになっている。前記下部ヘッダ24は、基端側がタンク3内に連通するように該タンク3の側壁部の下端部に接続されている。
【0026】
そして、本実施形態では、タンク3の右側部の最も手前側に配置された放熱器22における、1つの接続管26の上端部即ちL字状に折曲がる部分の正面部に、絶縁油の油面の高さを視認可能な確認窓27が設けられている。この確認窓27は、やはり、接続管26の上端部の前面側に矩形の開口を形成すると共に、その開口を透明ガラスにより塞いで構成される。
【0027】
上記構成の油入変圧器21にあっては、確認窓27を接続管26のうち少なくともいずれか1つに設けたので、確認窓27を見ることにより、注油時における油面の確認を容易に行うことが可能となる。従って、この第2の実施形態によっても、接続管26(放熱器22)の最上部に、絶縁油の油面の高さを視認可能な確認窓27を設けたので、注油時における必要量の注油が行われたことの確認を容易且つ確実に行うことができるという優れた効果を得ることができる。特に本実施形態では、確認窓27を1つの接続管26に設ける構成としたので、全体の構成を簡単に済ませることができる。
【0028】
図6は、第3の実施形態に係る油入静止誘導機器たる油入変圧器31を示すものである。上記第2の実施形態においては、コンサベータ28が確認窓27よりも高い位置にあったが、本実施形態では、コンサベータ5を、接続管26の確認窓27よりも低い位置に配置している。このような第3の実施形態によっても、接続管26(放熱器22)の最上部に、絶縁油の油面の高さを視認可能な確認窓27を設けたので、注油時における必要量の注油が行われたことの確認を容易且つ確実に行うことができる。また、コンサベータ5を比較的低い位置、例えば、放熱器22の上端の確認窓27よりも低い位置に持ってきたので、油入変圧器31全体としての高さ寸法を低く抑えることができる。
【0029】
尚、上記した各実施形態では、絶縁油として、鉱油を例にあげたが、鉱油以外の絶縁油全般や液体シリコーンなどであっても良い。上記各実施形態では、コンサベータ5、28を設けるようにしたが、コンサベータを設けない構成としても良い。変圧器の全体的な構成としても、絶縁油を強制循環させるための循環用ポンプや、強制冷却用のファン装置等を有するものであっても良い。放熱器の構成としても、様々な変更が可能である。
【0030】
その他、静止誘導機器としては、変圧器に限らず、例えばリアクトルに適用することもできる。以上説明したいくつかの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0031】
図面中、1、21、31は油入変圧器(油入静止誘導機器)、2は変圧器本体(誘導機器本体)、3はタンク、4、22は放熱器、5、28はコンサベータ、6は注油口、8は導油管、9、23は上部ヘッダ、10、24は下部ヘッダ、11、25は放熱パネル、12、27は確認窓、26は接続管を示す。