特許第6912938号(P6912938)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6912938
(24)【登録日】2021年7月13日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】離間装置および離間方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20210727BHJP
【FI】
   H01L21/78 W
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-105561(P2017-105561)
(22)【出願日】2017年5月29日
(65)【公開番号】特開2018-200973(P2018-200973A)
(43)【公開日】2018年12月20日
【審査請求日】2020年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 直也
(72)【発明者】
【氏名】山田 忠知
(72)【発明者】
【氏名】田久 真也
【審査官】 宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−111188(JP,A)
【文献】 特開2014−143313(JP,A)
【文献】 特開平07−029855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着シート上の板状部材に4方向の張力を付与して当該板状部材から形成される複数の片状体の相互間隔を広げる離間装置であって、
前記接着シートをそれぞれ複数の保持部材で保持する複数の保持手段と、
前記保持部材を前記4方向のうち前記保持手段ごとに異なる1方向に移動させるとともに、当該保持部材を前記1方向に交差する交差方向に移動させて前記接着シートを伸長させる伸長手段と、
前記伸長手段による前記保持部材の移動を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記片状体のサイズと前記片状体の間隔の目標値とを下記式(1)に適用して前記接着シートの伸長量の目標値を算出し、前記伸長手段に前記接着シートの伸長量が当該伸長量の目標値となるように前記保持部材を移動させることを特徴とする離間装置。
[式1]
CD=(K1×CS+K2)×EA ・・・(1)
CD:片状体の間隔(μm)
CS:片状体のサイズ(mm)
EA:接着シートの伸長量(mm)
K1、K2:定数
【請求項2】
前記片状体の相互間隔を測定する測定手段を有し、
前記制御手段は、前記測定手段の測定結果を基に、前記伸長手段に前記保持部材を移動させることを特徴とする請求項1に記載の離間装置。
【請求項3】
接着シート上の板状部材に4方向の張力を付与して当該板状部材から形成される複数の片状体の相互間隔を広げる離間方法であって、
それぞれ複数の保持部材を備える複数の保持手段で前記接着シートを保持する保持工程と、
前記保持部材を前記4方向のうち前記保持手段ごとに異なる1方向に移動させるとともに、当該保持部材を前記1方向に交差する交差方向に移動させて前記接着シートを伸長させる伸長工程とを備え、
前記伸長工程では、前記片状体のサイズと前記片状体の間隔の目標値とを下記式(1)に適用して前記接着シートの伸長量の目標値を算出し、前記接着シートの伸長量が当該伸長量の目標値となるように前記保持部材を移動させることを特徴とする離間方法。
[式1]
CD=(K1×CS+K2)×EA ・・・(1)
CD:片状体の間隔(μm)
CS:片状体のサイズ(mm)
EA:接着シートの伸長量(mm)
K1、K2:定数
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離間装置および離間方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造工程において、半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」という場合がある)を所定の形状、所定のサイズに切断して複数の半導体チップ(以下、単に「チップ」という場合がある)に個片化し、個片化した各チップの相互間隔を広げてからリードフレームや基板等の被搭載物上に搭載することが行われている。各チップは、計算で導き出される位置(以下、「理論上の位置」という場合がある)を基準として搬送装置やピックアップ装置等の搬送手段によって搬送され、被搭載物上に搭載される。
【0003】
また、近年、電子機器の小型化、軽量化、及び高機能化が進んでおり、電子機器に搭載される半導体装置にも、小型化、薄型化、及び高密度化が求められている。このため、チップは、そのサイズに近いパッケージに実装されることがある。このようなパッケージは、チップスケールパッケージ(Chip Scale Package;CSP)と称されることもある。CSPを製造するプロセスの一つとして、ウエハレベルパッケージ(Wafer Level Package;WLP)が挙げられる。WLPにおいては、ダイシングによりパッケージを個片化する前に、チップ回路形成面に外部電極などを形成し、最終的にはチップを含むパッケージウエハをダイシングして、個片化する。WLPとしては、ファンイン(Fan−In)型とファンアウト(Fan−Out)型が挙げられる。ファンアウト型のWLP(以下、FO−WLPと略記する場合がある。)においては、チップを、チップサイズよりも大きな領域となるように封止部材で覆ってチップ封止体を形成し、再配線層や外部電極を、チップの回路面だけでなく封止部材の表面領域においても形成する。この場合、個片化した各チップを封止部材で囲う前に、エキスパンド用のウエハマウントテープに貼り替え、ウエハマウントテープを展延して複数のチップの間の距離を拡大させる。
【0004】
チップ(片状体)の相互間隔を広げる離間方法としては、ウエハ(板状部材)が貼付された保護テープやウエハマウントテープ等の接着シートを複数の保持手段で保持し、当該保持手段を互いに離間する方向に移動させることが知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなチップの相互間隔を広げる方法では、例えば+X軸方向、−X軸方向、+Y軸方向、−Y軸方向の4方向の張力を接着シートに付与する。これにより、接着シートに上記4方向に加え、例えば、それらの合成方向すなわち、+X軸方向と+Y軸方向との合成方向、+X軸方向と−Y軸方向との合成方向、−X軸方向と+Y軸方向との合成方向、−X軸方向と−Y軸方向との合成方向にも張力が付与されることを防止し、各片状体の位置が理論上の位置からずれてしまうことを極力防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−111188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
各片状体を理論上の位置に配置するために必要な接着シートの伸長量は、片状体のサイズや接着シートの種類によって異なるため、片状体のサイズや接着シートを変更する度に、実際に接着シートを伸長させながら各片状体の位置を確認して伸長量を設定する必要がある。この設定には時間が掛かり、設定に伴って単位時間あたりの処理能力が低下してしまうため、簡易な方法で接着シートの伸長量を設定でき、単位時間あたりの処理能力が低下することを防止することが望まれている。
【0007】
本発明の目的は、簡易な方法で接着シートの伸長量を設定でき、単位時間あたりの処理能力が低下することを防止できる離間装置および離間方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の離間装置は、接着シート上の板状部材に4方向の張力を付与して当該板状部材から形成される複数の片状体の相互間隔を広げる離間装置であって、前記接着シートをそれぞれ複数の保持部材で保持する複数の保持手段と、前記保持部材を前記4方向のうち前記保持手段ごとに異なる1方向に移動させるとともに、当該保持部材を前記1方向に交差する交差方向に移動させて前記接着シートを伸長させる伸長手段と、前記伸長手段による前記保持部材の移動を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記片状体のサイズと前記片状体の間隔の目標値とに応じて前記接着シートの伸長量の目標値を算出し、前記伸長手段に前記接着シートの伸長量が当該伸長量の目標値となるように前記保持部材を移動させることを特徴とする。
【0009】
本発明の離間装置において、前記制御手段は、前記片状体のサイズと前記片状体の間隔の目標値とを下記式(1)に適用して前記接着シートの伸長量の目標値を算出することが好ましい。
[式1]
CD=(K1×CS+K2)×EA ・・・(1)
CD:片状体の間隔(μm)
CS:片状体のサイズ(mm)
EA:接着シートの伸長量(mm)
K1、K2:定数
【0010】
本発明の離間装置は、前記片状体の相互間隔を測定する測定手段を有し、前記制御手段は、前記測定手段の測定結果を基に、前記伸長手段に前記保持部材を移動させることが好ましい。
【0011】
本発明の離間方法は、接着シート上の板状部材に4方向の張力を付与して当該板状部材から形成される複数の片状体の相互間隔を広げる離間方法であって、それぞれ複数の保持部材を備える複数の保持手段で前記接着シートを保持する保持工程と、前記保持部材を前記4方向のうち前記保持手段ごとに異なる1方向に移動させるとともに、当該保持部材を前記1方向に交差する交差方向に移動させて前記接着シートを伸長させる伸長工程とを備え、前記伸長工程では、前記片状体のサイズと前記片状体の間隔の目標値とに応じて前記接着シートの伸長量の目標値を算出し、前記接着シートの伸長量が当該伸長量の目標値となるように前記保持部材を移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上のような本発明によれば、片状体のサイズと片状体の間隔の目標値とに応じて接着シートの伸長量の目標値を算出し、接着シートの伸長量が当該伸長量の目標値となるように保持部材を移動させるため、簡易な方法で接着シートの伸長量を設定でき、単位時間あたりの処理能力が低下することを防止することができる。
【0013】
また、片状体のサイズと片状体の間隔の目標値とを式(1)に適用して接着シートの伸長量の目標値を算出するようにすれば、さらに簡易な方法で接着シートの伸長量を設定でき、単位時間あたりの処理能力が低下することをより効果的に防止することができる。
また、片状体の相互間隔の測定結果を基に、保持部材を目標伸長量に合わせて移動させれば、接着シートに板状部材が仮着された一体物毎に各片状体の位置が理論上の位置からずれてしまうことを極力防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係る離間装置の側面図。
図2図1の離間装置の平面図。
図3図1の離間装置の動作説明図。
図4】接着シートの伸長量とチップ間距離との関係を示すグラフ。
図5】チップサイズとチップ間距離との関係を示すグラフ。
図6】複数のチップサイズとチップ間距離との関係との関係を示すグラフ。
図7図5を接着シートの伸長量とチップ間距離との関係で示したグラフ。
図8】チップサイズと図7の線形回帰勾配との関係を示すグラフ。
図9】本発明の第2実施形態に係る離間装置の平面図。
図10図9の離間装置の動作説明図。
図11図9の離間装置の動作説明図。
図12】本発明の第3実施形態に係る離間装置の動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、各実施形態において、X軸、Y軸、Z軸は、それぞれが直交する関係にあり、X軸およびY軸は、所定平面内の軸とし、Z軸は、前記所定平面に直交する軸とする。さらに、本実施形態では、Y軸と平行な図1中手前方向から観た場合を基準とし、方向を示した場合、「上」がZ軸の矢印方向で「下」がその逆方向、「左」がX軸の矢印方向で「右」がその逆方向、「前」がY軸の矢印方向であって図1中紙面に直交する手前方向で「後」がその逆方向とする。
また、第2実施形態以降において、第1実施形態で説明する構成部材と同じ構成部材および同様な機能を有する構成部材には、第1実施形態の構成部材と同じ符号を付し、それらの説明を省略または簡略化する。
【0016】
[第1実施形態]
図1図2において、離間装置10は、接着シートAS上の板状部材としての四角形のウエハWFに+X軸方向、+Y軸方向、−X軸方向、−Y軸方向の4方向に張力を付与して当該ウエハWFから形成される複数の片状体としてのチップCPの相互間隔を広げる装置であって、接着シートASをそれぞれ5体の保持部材21で保持する4体の保持手段20と、保持部材21を前記4方向のうち保持手段20ごとに異なる1方向に移動させるとともに、当該保持部材21を前記1方向に交差する交差方向に移動させて接着シートASを伸長させる駆動機器である伸長手段としてのリニアモータ30A、30Bと、リニアモータ30A、30Bによる保持部材21の移動を制御する制御手段40と、チップCPの相互間隔を測定する光学センサやカメラ等の測定手段50とを備えている。なお、ウエハWFは、平面視で正方形状とされ、切断刃、加圧水、ドライエッチング等のウエハ切断手段によりチップCPに個片化されているか、レーザ光や薬液等のウエハ脆弱化手段によりチップCPに個片化可能とされ、接着シートASに仮着されて一体物WKとされている。また、接着シートASは、平面視で正方形状に形成されている。
【0017】
保持手段20は、リニアモータ30Bの複数のスライダ31Bの各々に支持された保持部材21を備えている。
保持部材21は、スライダ31Bに支持された下支持部材22と、下支持部材22に支持された駆動機器としての回動モータ23と、回動モータ23の出力軸23A(貫通軸)に支持された上支持部材24とを備えている。
【0018】
保持手段20およびリニアモータ30Aは、中心点CTを中心としてそれぞれ前後左右に4体設けられている。
リニアモータ30Bは、リニアモータ30Aのスライダ31Aに支持されている。
以上のような構成により、リニアモータ30Aが保持手段20ごとに異なる方向に保持手段20を移動させるとともに、リニアモータ30Bが保持手段20の移動方向に交差する交差方向に保持部材21を移動させることで、接着シートASに張力を付与可能に設けられている。
【0019】
制御手段40は、パーソナルコンピュータやシーケンサ等で構成され、リニアモータ30A、30Bによる保持部材21の移動を制御するのみならず、離間装置10全体の動作を制御可能に構成されている。
【0020】
以上の離間装置10において、ウエハWFから形成される複数のチップCPの相互間隔を広げる手順を説明する。
先ず、各部材が初期位置で待機する図1中実線で示す離間装置10に対し、当該離間装置10の使用者(以下、単に「使用者」という)が操作パネルやパーソナルコンピュータ等の図示しない操作手段を介して、片状体のサイズとしてのチップサイズ、片状体の間隔としてのチップ間距離の目標値、および接着シートASによって決まる後述する定数K1、K2の値を入力するとともに、自動運転開始の信号を入力する。なお、チップサイズは、チップCPの一辺の長さである。また、チップ間距離は、個片化されて広がったウエハWF(相互間隔が広げられたチップCP群)における対向する2辺の所定の位置(以下、対向する2辺の所定の位置を「基準位置」という場合がある)の間隔である。
【0021】
そして、使用者または、搬送ロボット、多関節ロボット、ベルトコンベア等の図示しない搬送手段が一体物WKを搬送し、当該一体物WKが各下支持部材22上に配置されるように載置する。このとき、測定手段50と、一体物WKを移動可能な図示しない位置決め手段とが共動し、ウエハWFと各保持部材21との位置決めを行う。その後、各保持手段20が回動モータ23を駆動し、図2に示すように、接着シートASを下支持部材22と上支持部材24とで挟み込む。
【0022】
次に、制御手段40がリニアモータ30A、30Bを駆動し、図3に示すように、保持手段20を+X軸方向、+Y軸方向、−X軸方向、−Y軸方向の4方向に移動させながら、保持手段20を移動させる方向に交差する交差方向に保持部材21を等間隔で移動させる。この際、制御手段40は、チップサイズCSとチップ間距離CDの目標値とを下記の式(1)に適用して接着シートASの伸長量EAの目標値を算出する。そして、制御手段40は、接着シートASの伸長量EAが式(1)で得られる目標値となり、かつ各保持手段20の保持部材21の間隔が等間隔となるように、リニアモータ30A、30Bを駆動する。これにより、接着シートASに+X軸方向、+Y軸方向、−X軸方向、−Y軸方向の4方向に張力が付与され、チップCPの相互間隔がチップ間距離CDの目標値に広がる。
【0023】
[式1]
CD=(K1×CS+K2)×EA ・・・(1)
CD:チップ間距離(μm)
CS:チップサイズ(mm)
EA:接着シートASの伸長量(mm)
K1、K2:定数
【0024】
チップ間距離CDには、操作手段を介して入力された目標値が使用され、チップサイズCSには、操作手段を介して入力されたサイズ値が使用される。定数K1、K2は、接着シートASによって定まる値であり、操作手段を介して入力される。なお、式(1)の根拠については、後述する。
【0025】
その後、搬送装置やピックアップ装置等の図示しない搬送手段が各チップCPを保持して搬送し、トレイ、リードフレームや基板等の被搭載物上に搭載する。そして、全てのチップCPの搬送が終了すると、制御手段40が各駆動機器を駆動し、各構成部材を初期位置に復帰させた後、チップCPが取り外された一体物WKを搬送手段が回収し、以降上記同様の動作が繰り返される。
【0026】
以上のように、離間装置10は、接着シートASの伸長量EAを式(1)から得られる値にすることで、チップ間距離CDをその目標値にすることができる。ここで、式(1)は、以下の根拠に基づいて定められている。
先ず、チップCPが正方形の場合の接着シートASの伸長量EAとチップ間距離CDとの関係について調べるために、各保持手段20それぞれを+X軸方向、+Y軸方向、−X軸方向、−Y軸方向の4方向に移動させながら、各保持手段20の保持部材21を等間隔に移動させたところ、図4に示す結果が得られた。なお、接着シートASには、表1に示すものを使用した。また、チップ間距離CDは、ウエハWFをX軸方向およびY軸方向に沿って5列ずつ分割して得られる25個のチップCPのうち、X軸方向およびY軸方向の各々の中央列に位置する9個のチップCPについて、互いに対向する辺の間隔を測定し、その平均値を使用した。
【0027】
【表1】
【0028】
図4に示すように、接着シートASによって伸長量EAに対するチップ間距離CDの値が異なるものの、全ての接着シートASに対して、伸長量EAとチップ間距離CDとの間に線形の関係が成り立った。なお、チップCPは、3×3mmの正方形のサイズとした。
さらに、チップサイズCSを変えて調べたところ、図5に示すように、接着シートASの伸長量EAが何れの条件下でも、チップサイズCSとチップ間距離CDとの間に線形の関係が成り立った。なお、接着シートASには、表1のAのものを使用した。
【0029】
次に、チップCPが長方形の場合のチップサイズCSとチップ間距離CDとの関係について調べるために、X軸方向およびY軸方向のサイズが6×2mm、6×4mm、6×6mmの各々のチップCPについて、接着シートASをX軸方向およびY軸方向に同じ量伸長させたところ、図6に示す結果が得られた。なお、接着シートASには、表1のAのものを使用した。また、接着シートASの伸長量EAは、X軸方向およびY軸方向とも60mmとした。
【0030】
図6に示すように、6×6mmの正方形のチップCPでは、チップ間距離CDがX軸方向およびY軸方向で概ね同じ値になった。一方、6×2mmおよび6×4mmの長方形のチップCPでは、X軸方向のチップ間距離CDがチップサイズCSに対して線形的に減少し、Y軸方向のチップ間距離CDがチップサイズCSに対して線形的に増加した。このため、接着シートASをX軸方向とY軸方向とでチップサイズCSに応じて独立して伸長させるべく、図5のグラフをチップサイズCSごとに、接着シートASの伸長量EAとチップ間距離CDとの関係で示したものが図7である。
【0031】
図7に示すように、チップサイズCSが異なる場合でも、接着シートASの伸長量EAに対してチップ間距離CDが線形的に増加する。このため、接着シートASの伸長量EAとチップ間距離CDとの間には、下記の式(2)の関係が成り立つ。
【0032】
[式2]
CD=K×EA ・・・(2)
K:線形回帰勾配
【0033】
そこで、図7の各グラフの勾配を線形回帰により求めたところ、各チップサイズCSに対する式(2)の関係式は、下記の表2のようになった。表2に示すように、各チップサイズCSとも相関係数が0.99であり、良好な線形性を示している。
【0034】
【表2】
【0035】
図8は、表2のチップサイズCSと線形回帰勾配Kとの関係をグラフ化したものである。図8に示すように、線形回帰勾配Kは、チップサイズCSに対して線形的に増加する。この場合、チップサイズCSと線形回帰勾配Kとの間には、下記の式(3)の関係が成り立つ。
【0036】
[式3]
K=1.23×CS+3.81・・・(3)
【0037】
そして、式(3)を式(2)に代入すると、下記の式(4)が得られる。
【0038】
[式4]
CD=(1.23×CS+3.81)×EA・・・(4)
【0039】
式(4)は、表1のAの接着シートASに対するチップサイズCS、チップ間距離CD、および接着シートASの伸長量EAの関係式である。したがって、表1のAの接着シートASを使用する場合、チップサイズCSとチップ間距離CDの目標値とを式(4)に適用すれば、接着シートASの伸長量EAが求まる。チップCPが正方形の場合、チップサイズCSの値が1つであるため、式(4)を用いた算出式が1つになる。チップCPが長方形の場合、チップサイズCSがX軸方向とY軸方向とで異なり、チップサイズCSごとに式(4)の算出式を適用するので、式(4)を用いた算出式が2つになる。
【0040】
また、これまでの説明から、接着シートASやチップサイズCSが変わっても、チップサイズCS、チップ間距離CD、および接着シートASの伸長量EAの間に線形の関係が成り立つことになる。そこで、式(4)の定数部分を一般化したものが、上記式(1)である。したがって、接着シートASごとに式(1)の定数K1、K2の値が定まっていれば、接着シートASが変わっても、接着シートASに合わせて定数K1、K2の値を変えることで、接着シートASの伸長量EAを容易に求めることができる。
【0041】
以上のような実施形態によれば、チップサイズCSとチップ間距離CDの目標値とに応じて接着シートASの伸長量EAの目標値を算出し、接着シートASの伸長量EAが当該伸長量EAの目標値となるように保持部材21を移動させるため、簡易な方法で接着シートASの伸長量EAを設定でき、単位時間あたりの処理能力が低下することを防止することができる。
【0042】
[第2実施形態]
図9において、離間装置10は、制御手段40が測定手段50の測定結果を基に保持部材21の移動を制御するように構成されている。なお、接着シートASおよびウエハWFは、それぞれ平面視で円形状に形成されている。
【0043】
制御手段40は、上記と同様に、接着シートASの伸長量EAが式(1)で得られる値となり、かつ各保持手段20の保持部材21の間隔が等間隔となるように、リニアモータ30A、30Bを駆動する。これにより、チップ間距離CDを目標値に近付けることができるが、図10に示すように、それでもなおチップCPの相互間隔に微妙に違いが生じ、各チップCPを理論上の位置に配置することができないことがある。
【0044】
そこで、制御手段40が測定手段50の測定結果を基にリニアモータ30Bを駆動し、図11に示すように、保持部材21を前後方向または左右方向にさらに移動させて各保持部材21同士の間隔を調整することにより、チップCPの相互間隔を調整することができる。これにより、各チップCPを理論上の位置に配置させる(各チップCPの相互間隔を極力等間隔にする)。
なお、リニアモータ30Bの駆動によりチップCPの相互間隔を調整する際、各保持部材21の少なくとも1つが移動してもよいし、これらの移動距離や移動方向は同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0045】
[第3実施形態]
図12において、離間装置10は、駆動機器である伸長手段としてのリニアモータ30A、30B、30Cを備え、リニアモータ30Cのスライダで保持部材21を支持する。
リニアモータ30Cは、リニアモータ30Aと平行に延設され、リニアモータ30Bのスライダ31Bに支持されている。
【0046】
以上の離間装置10において、制御手段40は、上記と同様に、リニアモータ30A、30Bを駆動し、チップ間距離CDを目標値に近付ける。それでもなおチップCPの相互間隔に微妙に違いが生じ、各チップCPを理論上の位置に配置することができない場合、制御手段40は、リニアモータ30Cを駆動し、図12に示すように、保持手段20を移動させる方向と平行な方向に保持部材21を移動させて各チップCPを理論上の位置に配置させる。
【0047】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。また、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれる。
【0048】
保持手段20は、メカチャックやチャックシリンダ等のチャック手段や、減圧ポンプや真空エジェクタ等の図示しない減圧手段や、接着剤、磁力等で一体物WKを支持する構成でもよい。
保持手段20が有する保持部材21は、2体から4体であってもよいし、6体以上であってもよいし、各保持手段20での個数が同じでもよいし、異なっていてもよい。
各保持部材21が移動する交差方向は、リニアモータ30Aによって保持手段20が移動する方向に直交する方向でもよいし、斜めに交差する方向であってもよい。この場合、リニアモータ30Cを設けてもよい。
【0049】
伸長手段は、各保持手段20の少なくとも1体を固定しておき他の保持手段20を移動させてもよく、この場合、固定しておく保持手段20を移動させるリニアモータ30Aを設けなくてもよい。
リニアモータ30Aに代えてまたは併用して、リニアモータ30Cを設けてもよい。この場合、リニアモータ30Cを保持部材21毎に設けてもよいし、保持部材21毎に設けなくてもよい。
リニアモータ30Bは、各保持部材21の少なくとも1体を固定しておき他の保持部材21をリニアモータ30Aによって保持手段20が移動する方向に対する直交方向に移動させてもよい。
【0050】
制御手段40は、接着シートASとその定数K1、K2の値とを関連付けて記憶しておき、操作手段を介して接着シートASを選択することで、式(1)に定数K1、K2を自動的に適用してもよい。
制御手段40は、チップサイズCS、チップ間距離CD、および接着シートASの伸長量EAの間に、式(1)以外の一定の関係が成り立つ場合、当該一定の関係にチップサイズCSとチップ間距離CDの目標値とを適用して、接着シートASの伸長量EAの目標値を算出してもよい。
【0051】
測定手段50は、制御手段40が測定手段50の測定結果を基に保持部材21の移動を制御しない場合なくてもよい。この場合、チップCPの相互間隔が同じでないことを認識した使用者が保持手段20、リニアモータ30Bを操作して、チップCPの相互間隔を調整してもよい。
【0052】
接着シートASの形状は、円形であってもよいし五角形以上の多角形であってもよいし、その他の形状であってもよい。
ウエハWFは、長方形とされてもよい。
チップCPは、円形、正方形、長方形、三角形や五角形以上の多角形等、その他の形状であってもよい。
一体物WKは、円形状のウエハWFが正方形状の接着シートASに仮着されたものでもよいし、正方形状または長方形状のウエハWFが円形状の接着シートASに仮着されたものでもよい。
【0053】
また、本発明における接着シートASの材質、種別、形状等は、特に限定されることはない。例えば、接着シートASは、円形、楕円形、三角形や五角形以上の多角形、その他の形状であってもよい。また、接着シートASは、例えば、接着剤層だけの単層のもの、基材と接着剤層との間に中間層を有するもの、基材の上面にカバー層を有する等3層以上のもの、さらには、基材を接着剤層から剥離することのできる所謂両面接着シートのようなものであってもよく、両面接着シートは、単層または複層の中間層を有するものや、中間層のない単層または複層のものであってよい。また、基材や接着剤層の材質、種別、厚さ等は、特に限定されず、例えば、ウレタン材質の基材であってもよい。
【0054】
板状部材や片状体の形状は、例えば円形、楕円形、三角形や五角形以上の多角形等、その他の形状であってもよい。さらに、板状部材としては、例えば、シリコン半導体ウエハや化合物半導体ウエハ等の半導体ウエハ、回路基板、光ディスク等の情報記録基板、ガラス板、鋼板、陶器、木板または樹脂板等、任意の形態の部材や物品等も対象とすることができ、片状体は、それらが個片化されたものであればよい。なお、接着シートASは、機能的、用途的な読み方に換え、例えば、保護シート、ダイシングテープ、ダイアタッチフィルム、ダイボンディングテープ等の任意のシート、フィルム、テープ等でもよい。
【0055】
本発明における手段および工程は、それら手段および工程について説明した動作、機能または工程を果たすことができる限りなんら限定されることはなく、まして、前記実施形態で示した単なる一実施形態の構成物や工程に全く限定されることはない。例えば、保持手段は、接着シートを複数の保持部材で保持可能なものであれば、出願当初の技術常識に照らし合わせ、その技術範囲内のものであればなんら限定されることはない(他の手段および工程についての説明は省略する)。
また、前記実施形態における駆動機器は、回動モータ、直動モータ、リニアモータ、単軸ロボット、多関節ロボット等の電動機器、エアシリンダ、油圧シリンダ、ロッドレスシリンダおよびロータリシリンダ等のアクチュエータ等を採用することができる上、それらを直接的又は間接的に組み合せたものを採用することもできる(実施形態で例示したものと重複するものもある)。
【符号の説明】
【0056】
10…離間装置
20…保持手段
21…保持部材
30A、30B、30C…リニアモータ(伸長手段)
40…制御手段
50…測定手段
AS…接着シート
CD:チップ間距離(片状体の間隔)
CP…チップ(片状体)
CS:チップサイズ(片状体のサイズ)
EA:接着シートの伸長量
WF…ウエハ(板状部材)
図1
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