(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上下方向に向いた回転軸線の回りに開閉可能に設けられる扉が開いた時に、前記扉とそれが取り付けられる本体との間に形成される空間の上側を覆うように展開し、前記扉が閉じた時に折りたたまれるように前記扉及び前記本体に取り付けられる蛇腹式カバーであって、
前記蛇腹式カバーの展開方向に交差する延設方向に沿った部位に応じて山折り部及び谷折り部の枚数である蛇腹枚数が変化し、
前記蛇腹枚数が減少する部位の山折り部に連続した第1山折り部と、前記部位の谷折り部である減少部位谷折り部に繋がる第2山折り部とを有し、
前記第2山折り部の、前記減少部位谷折り部との接続部は、谷折り部からの高さが徐々に変化していく斜め形状に形成されたことを特徴とする蛇腹式カバー。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1に示す防雨装置1は、車両の前席ドア100が開いた時に、前席ドア100と車体の前席乗降口との間に形成される空間の上側を覆うように、前席ドア100及び車体に取り付けられる。なお、以下では、車両の前後方向、上下方向、左右方向にしたがって前方、後方等の方向を定めるものとする。
【0016】
前席ドア100は、側面視で略四角形のドア本体103と、その上部に窓部101と、その窓部101を囲む窓枠102とを備えている。窓部101は、ドア本体103の上端部103cから上方に露出した状態とドア本体103内に格納した状態との間で移動可能に設けられる。窓枠102は、後端部102bと上端部102cと前端部102dとを有する。後端部102bは、ドア本体103の上端部103cの後端と窓枠上端部102cの後端との間で略鉛直方向に直線状に延設されて、窓部101の後端を支持する。後端部102bはドア本体103の後端部103bの上端と接続している。
【0017】
窓枠上端部102cは、ドア本体上端部103cの上方にて上端部103cと略平行(つまり車両の前後方向)に直線状に延設されて、窓部101の上端を支持する。上端部102cは、前席ドア100の上端部を構成する。なお、上端部102cは水平方向(鉛直方向に直角な方向)に設けられたとしても良いし、水平方向から若干傾いた向きに設けられたとしても良い。また、上端部102cは、若干の曲線を描くように延設されたとしても良い。
【0018】
前端部102dは、ドア本体上端部103cの前端と窓枠上端部102cの前端との間で鉛直方向に対して傾いた方向に延設されて、窓部101の前端を支持する。詳しくは、前端部102dは、下方にいくにつれて次第に前方に進むように延設されている。前端部102dの下端がドア本体103の前端部103aの上端に接続している。以下では、窓枠上端部102cをドア上端部といい、窓枠前端部102dをドア傾斜部といい、ドア本体103の前端部103aをドア前端部という。
【0019】
前席ドア100は、車体に取り付けられ、具体的にはドア前端部103aが上下方向に向いた回転軸線L1の回りに回転可能に支持されることで、回転軸線L1回りに開閉可能に設けられる。回転軸線L1は、車体の前席乗降口の前端側において鉛直方向に又は鉛直方向から若干傾いた向きに延びるように設定される。また、回転軸線L1は、後述の巻き取り軸線L2に交差しない位置(ねじれの位置)に設定される。
【0020】
また、前席ドア100は、車体の前席乗降口(図示外)を開閉するように設けられる。すなわち、前席乗降口は、前席ドア100が閉じている時には車外からは見えないようになっており、前席ドア100が開いた時に露出する。前席乗降口は、前席ドア100の外形と同様の形状に形成されている。
【0021】
車体は、ルーフ部(屋根部、上面部と言ってもよい)と、ルーフ部の前端から前方にいくにしたがって次第に下方に向かう傾斜部と、ルーフ部及び傾斜部の左右端に繋がる側面部とを有した形状に形成されている。傾斜部は、車両のフロントガラスと、そのフロントガラスの左右端に繋がる傾斜骨格部とを有する。なお、傾斜骨格部は、車体の側面部のうちの傾斜状の上端部を構成する。車体の側面部に、前席ドア100の形状に合った前席乗降口が形成されている。そして、前席乗降口を形成する骨格の上端部201(車体側面部の上端部、ルーフ部の左右端部でもある)と、ドア上端部102cとが車両左右方向(ドア100の開閉方向)において対向する位置関係にある。なお、厳密には、車体上端部201の外面は、ドア上端部102cより若干上方に位置する。また、前席乗降口を形成する骨格の傾斜部202(上記傾斜骨格部)と、ドア傾斜部102dとが車両左右方向(ドア100の開閉方向)において対向する位置関係にある。なお、厳密には、車体傾斜部202の外面はドア傾斜部102dより若干上方に位置する。
【0022】
なお、前席ドア100が本発明の扉に相当する。車体が本発明の本体に相当する。
【0023】
防雨装置1は、ドア上端部102cと車体上端部201の間に設けられる巻き取り式カーテン部2と、ドア傾斜部102dと車体傾斜部202の間に設けられる蛇腹式カバー30とを備えている。
【0024】
先ず、巻き取り式カーテン部2について説明する。巻き取り式カーテン部2は、カーテン3と巻き取り機構4とドア側取付部12とを備えている。カーテン3は、ドア100が開いた時にドア100と前席乗降口との間に形成される空間の上側を覆うように設けられる。カーテン3は、水を通さず、耐水性を有し、巻き取り機構4に巻き取りができるように柔軟性を有した材質(ポリアミド繊維、ポリ塩化ビニルなど)にてシート状に形成されている。
【0025】
図2に示すように、カーテン3は、台形又は扇形に類似の形状に形成されている。具体的には、カーテン3は、巻き取り機構4に取り付けられる内側端部3a(ハッチング部)と、ドア側取付部12に取り付けられる外側端部3b(ハッチング部)と、内側端部3aの前端と外側端部3bの前端とを接続する前端部3cと、内側端部3aの後端と外側端部3bの後端とを接続する後端部3dとで囲まれた形状に形成されている。内側端部3a及び外側端部3bは、直線状且つ前端側にいくにつれて次第に内側端部3aと外側端部3bとの間隔が狭くなるように延設されている。
【0026】
前端部3cは後端部3dに比べてドア回転軸線L1に近い位置に設けられるとともに、後端部3dよりも短い長さに形成されている。また、前端部3cは、後端部3d側に凹んだ円弧状に形成されている。前端部3cの曲率半径は、回転軸線L1と前端部3cとの距離に基づいて定められている。
【0027】
後端部3dは直線状に形成されている。つまり、カーテン3は、後端部も円弧状の扇形カーテンに対して
図2の斜線ハッチング部300で示す円弧部が切断された形状に形成されている。
【0028】
カーテン3は、前席ドア100が閉じている時には巻き取り機構4に巻き取られ、前席ドア100が開いた時には巻き取り機構4から引き出されるように設けられる。巻き取り機構4は、車外に露出した状態で設けられ、具体的には、前席乗降口の上側位置の車体上端部201において巻き取り軸線L2が車両の前後方向に向くように設けられる。巻き取り機構4の車体上端部201への取り付けは、両面テープ、爪部による引っ掛け等どのような方法でも良い。巻き取り軸線L2は、水平線(地面に平行な線)に対して前方にいくほど次第に下方となる傾きを持って設けられる。水平線に対する巻き取り軸線の傾き(角度)は例えば1°〜5°程度することができるが、それ以外の角度であっても良い。なお、巻き取り軸線L2は、水平線に対して上記のように傾きを持っていれば、巻き取り機構4の設置面(車体上端部201)に対しては平行に設けられたとしても良いし、傾きを持って設けられたとしても良い。また、巻き取り機構4は、ドア側取付部12よりも上方に位置する(
図1参照)。
【0029】
巻き取り機構4は、
図3、
図4、
図5に示すように、巻き取り軸5と支持部6、7とスプリング8と伝達部9と支持棒10とを備えている。また、巻き取り機構4は、
図3、
図4、
図5に示す構成の他に、その構成を覆う不透明なカバー11(
図1参照)を備えている。カバー11により、巻き取り機構4の内部が外部から視認されないようになっている。カバー11は、巻き取り軸線L2の方向に長い形状に形成されるとともに、ドア100側の側面にカーテン3の引き出し口11aが形成されている。カバー11が車体上端部201に取り付けられている。
【0030】
巻き取り軸5は、中心軸線として巻き取り軸線L2を有し、その巻き取り軸線L2に直交する平面で切ったときの断面が円形のリング状であり、且つ、軸線L2に沿って一端側から他端側にいくにしたがって次第に縮径するテーパ形状に形成されている。巻き取り軸5の小径側の端部5a(
図5参照)が前方(ドア100の回転軸線L1の側)に位置し、大径側の端部5b(
図5参照)が後方に位置する。また、巻き取り軸5は内部に空間を有した筒状に形成されている。このように、巻き取り軸5をテーパ形状に形成することで、
図2のように後端部3dの方にいくにしたがって次第に幅が広くなるカーテン3に対して弛みを抑えた形で巻き取り軸5に巻き取ることができる。
【0031】
巻き取り軸5の両端5a、5bは支持部6、7にて軸線L2の回りに回転可能に支持されている。
【0032】
巻き取り軸5にはカーテン3の内側端部3a(
図2参照)が取り付けられている。巻き取り軸5は、ドア100の開閉に伴いドア側取付部12によりドア上端部102cに取り付けられたカーテン3の外側端部3bが移動することにより回転する。これにより、巻き取り軸5は、ドア100が閉じるにしたがってカーテン3を内側端部3aの側から巻き取る一方で、ドア100が開くにしたがってカーテン3を外側端部3b(
図2参照)の側から引き出す。なお、巻き取り軸5でのカーテン3の巻き取り方向は、
図3に示すように、巻き取り軸5の下側からカーテン3が引き出されるように定められる。これによれば、カーテン3の引き出し位置と、ドア側取付部12との高さの違いを小さくできる。これにより、カバー11の引き出し口11aの上端をドア側取付部12に近づけることができ、カーテン3の収納時に、引き出し口11aからのカーテン3の露出部分を少なくできるとともに、巻き取り機構4の内部が引き出し口11aから見えてしまうのを抑制できる。
【0033】
支持部6、7はそれぞれカバー11の底面部(図示外)に取り付けられて、その底面部から起立するように設けられる。一方の支持部6は、巻き取り軸5の小径端部5aを軸線L2回りに回転可能に支持するとともに、支持棒10の一端も支持する。他方の支持部7は、巻き取り軸5の大径端部5bを軸線L2の回りに回転可能に支持するとともに、支持棒10の他端及びスプリング8の一端も支持する。
【0034】
スプリング8は、線状の金属部材がらせん状に加工形成されたコイルばねである。スプリング8は、巻き取り軸5の内部において支持棒10に挿通された状態で設けられる。スプリング8の一端は支持部7に固定され、他端は伝達部9に固定されている。スプリング8は、ねじりコイルばねとして構成されており、すなわちねじり荷重を受けることで弾性エネルギーを蓄積し、この弾性エネルギーによりスプリング8の軸線回りに回転させようとするバネ力を発生させるスプリングである。スプリング8は、巻き取り軸5にカーテン3を巻き取る方向にバネ力が作用するように設けられる。
【0035】
伝達部9は、巻き取り軸5とスプリング8との間で力を伝達するための部品である。伝達部9は、巻き取り軸5の内部において支持棒10に挿通された状態で設けられる。伝達部9は、スプリング8の、支持部7に固定された側と反対側の端部が固定され、且つ、巻き取り軸5の内壁部との間で軸線L2回りに相対移動が不能に設けられている。
【0036】
支持棒10は、スプリング8及び伝達部9を支持するための部品である。支持棒10は、巻き取り軸5の内部において、支持棒10の軸線が巻き取り軸線L2と一致するように設けられる。支持棒10の両端は支持部6、7に支持されている。
【0037】
ドア側取付部12は、カーテン3の外側端部3bを、ドア上端部102cに取り付けるための部分である。すなわち、ドア側取付部12には外側端部3bが取り付けられている。そして、外側端部3bが取り付けられたドア側取付部12は、ドア上端部102cに取り付けられている。このとき、外側端部3bがドア上端部102cの外側の面に対向する位置にて該面の長手方向(つまり前後方向)に沿って配置される。また、カーテン3が展開した時の外側端部3bの延設方向が前方にいくほど次第に下方に位置するように水平線に対して若干の傾きを持って、外側端部3bがドア上端部102cに取り付けられたとするのが好ましい。これによれば、カーテン3に入射した雨が後方に流れ落ちてしまうのを抑制できる。ドア側取付部12への外側端部3bの取り付け及びドア上端部102cへのドア側取付部12の取り付けは、接着剤による接合、ピン等の締結用部品を用いた取り付け、爪等による引っ掛け等どのような方法でも良い。
【0038】
巻き取り式カーテン部2の作用を説明する。カーテン3の引き出し時(ドア100が開く時)には、カーテン3の引き出しに伴い巻き取り軸5が回転し、この回転力が伝達部9を介してスプリング8に伝達し、スプリング8には、カーテン3を巻き取ろうとする弾性エネルギーが蓄積される。この弾性エネルギーによるバネ力が伝達部9を介して巻き取り軸5及びカーテン3に作用し、カーテン3は、巻き取り機構4の方向に引っ張られる。これにより、カーテン3は、ドア上端部102cと車体上端部201の間において、ドア100がどの開度状態にあったとしても、巻き取り方向に張力がかかった状態で展開される(
図1参照)。一方、ドア100を閉じる際には、スプリング8のバネ力が伝達部9を介して巻き取り軸5に作用することで、巻き取り軸5が回転し、この回転によりカーテン3が巻き取り軸5に巻き取られる。
【0039】
次に、蛇腹式カバー30について説明する。蛇腹式カバー30は、水を通さず、耐水性を有した材質(ポリ塩化ビニルなど)にて形成されている。蛇腹式カバー30は、
図6に示すように、蛇腹状に形成された蛇腹部31と、その蛇腹部31の前端に取り付けられた水受け部32とを備えている。
【0040】
蛇腹部31は、所定方向に延設されるとともに、その延設方向に交差する方向に山折り部33a、34a及び谷折り部33b、34bが交互に繰り返される形状に形成される。なお、山折り部33a、34aは、蛇腹式カバー30が車体及び扉100に取り付けられた時に、谷折り部33b、34bより上方に位置して、谷折り部33b、34bを基準として逆V字を形成する部分である。谷折り部33b、34bは、蛇腹式カバー30が車体及び扉100に取り付けられた時に、山折り部33a、34aより下方に位置して、山折り部33a、34aを基準としてV字を形成する部分である。
【0041】
蛇腹部31の延設方向は、蛇腹部31が取り付けられる箇所(具体的にはドア上端部102cの前端側の一部及びドア傾斜部102d、車体上端部201の前端側の一部及び車体傾斜部202)の形状に合わせて曲線状となっている。
【0042】
なお、蛇腹部31は、単一の材質で形成されたとしても良いし、山折り部33a、34a及び谷折り部33b、34bの頂点位置に硬い材質の骨部を設けて、骨部間を別の材質の部材で繋ぐように形成されたとしても良い。
【0043】
蛇腹部31は、前端からの一部34(以下、蛇腹前方部という)が、それ以外の部分33(以下、蛇腹後方部という)に比べて蛇腹枚数(山折り部、谷折り部の繰り返し数)が少ない形状に形成されている。すなわち、蛇腹前方部34の山折り部34aの数は蛇腹後方部33の山折り部33aの数よりも少ない。蛇腹前方部34の谷折り部34bの数は蛇腹後方部33の谷折り部33bの数よりも少ない。
【0044】
さらに詳しく説明すると、蛇腹後方部33の山折り部33aは、蛇腹前方部34の山折り部34aに連続した第1山折り部33cと、蛇腹前方部34の谷折り部34bに繋がる第2山折り部33dとを有する。本実施形態では、第1山折り部33cと第2山折り部33dが交互に(1つおきに)配置されている。言い換えると、第1山折り部33c間に1つの第2山折り部33dが配置され、第2山折り部33d間に1つの第1山折り部33cが配置されている。
【0045】
第2山折り部33dは、具体的には、蛇腹前方部34側の一部35が前方にいくほど徐々に谷折り部34bに近づいていき最終的に谷折り部34bに繋がる斜め部35を有する(
図7も参照)。この斜め部35は、第2山折り部33dの、斜め部35以外の部分に対して斜めの方向に延びているとともに、谷折り部33b、34bに対しても斜めの方向に延びている。このように、斜め部35は、谷折り部33b、34bからの高さが徐々に変化していく斜め形状に形成されている。第2山折り部33dの、斜め部35以外の部分は、谷折り部33b、34bに平行に延びている。なお、斜め部35の範囲は、第2山折り部33dの、斜め部35以外の部分の範囲に比べて小さい。なお、
図7において、斜線ハッチング部40は、斜め部35により山折り部がカットされた部分(蛇腹前方部34に対応)を示している。
【0046】
このように、蛇腹後方部33の山折り部33aは1つおきに蛇腹前方部34の谷折り部34bに繋がる。これに伴い、蛇腹後方部33の、第2山折り部33dを挟んで隣り合う2つの谷折り部33bは、蛇腹前方部34の1つの谷折り部34bに合流する。つまり、蛇腹前方部34の各谷折り部34bは、蛇腹後方部33の2つの谷折り部33b及びこれらに挟まれた1つの山折り部33dに繋がっている。なお、斜め部35が本発明の接続部に相当する。また、蛇腹前方部34の谷折り部34bが本発明の減少部位谷折り部に相当する。
【0047】
図1、
図7に示すように、蛇腹部31は、ドア傾斜部102d及び車体傾斜部202の位置に設けられる部分36(以下、蛇腹傾斜部という)と、ドア上端部102c及び車体上端部201の位置に設けられる部分37(以下、蛇腹上方部という)とを有する。蛇腹傾斜部36は、ドア回転軸線L1付近の位置からドア傾斜部102dの全体に亘って設けられている。蛇腹上方部37は、蛇腹傾斜部36の後端に連続するよう設けられるとともに、ドア上端部102c及び車体上端部201の前端からの一部(言い換えると、巻き取り式カーテン部2が設けられていない箇所)をカバーするように設けられる。蛇腹部31の後端部38(
図1参照)は、少なくとも巻き取り式カーテン部2のカーテン3の前端部3cの位置まで達している。なお、後端部38は、カーテン3の前端部3cよりも若干後方位置まで達していたとしても良い。つまり、カーテン3と蛇腹部31は前後方向に多少の重なりをもって設けられたとしても良い。この場合、例えばカーテン3が蛇腹部31よりも上方に位置する。
【0048】
上記蛇腹前方部34は蛇腹傾斜部36の前端からの一部を構成する。上記蛇腹後方部33は、蛇腹傾斜部36の後端からの一部及び蛇腹上方部37の全部を構成する。
【0049】
さらに、
図7に示すように、蛇腹上方部37の谷折り部37aは、前方にいくほど次第に下方位置となるよう水平線400に対して勾配が与えられている。この谷折り部37aの、水平線400に対する傾斜角度は例えば5°程度とすることができるが、それ以外の角度であっても良い。
【0050】
図6に示す水受け部32は、蛇腹部31の各谷折り部34bから流れ落ちる水を受けて1つの水流として下方に流れ落とすための部材である。水受け部32は蛇腹枚数が少ない蛇腹前方部34に接続されている。水受け部32は、蛇腹前方部34に接続する部分32aと、蛇腹前方部34の各谷折り部34bから流れ落ちる水を受ける受け面32bとを有する。受け面32bは、各谷折り部34bよりも下方に位置して、各谷折り部34bの出口付近に幅広部32cと、その幅広部32cより前方に位置して幅広部32cよりも幅が狭い幅狭部32dとを有する。また、受け面32b(幅広部32c、幅狭部32d)は1つの谷折り部を有した形状に形成されている。幅広部32cの谷折り部と、幅狭部32dの谷折り部とは連続している。
【0051】
蛇腹式カバー30は、蛇腹部31の山折り部33a、34a及び谷折り部33b、34bが、ドア上端部102c及びドア傾斜部102dに沿って延設されるように、ドア100及び車体に取り付けられる。また、蛇腹式カバー30は、ドア100が閉じている状態では、車外からは視認できないように、ドア100と、そのドア100が嵌まる前席乗降口の外周面(ドア100が閉じた状態では車外からは非露出となる面)との間に挟み込まれるように設けられる。
【0052】
すなわち、車体上端部201及び車体傾斜部202は、ドア100の開閉にかかわらず常に車外に露出した露出面と、ドア100が開いた状態では露出するがドア100が閉じた状態では車外からは視認できない非露出面(露出面に対して車室内側に凹んだ面)とを有する。蛇腹部31の蛇腹上方部37は、ドア上端部102cの内側面(車体側に向いた面)と、車体上端部201の非露出面との間に挟み込まれるように設けられる。蛇腹部31の蛇腹傾斜部36及び水受け部32は、ドア傾斜部102dの内側面と、車体傾斜部202の非露出面との間に挟み込まれるように設けられる。このとき、蛇腹部31の展開方向における一方の端部が、ドア上端部102c及びドア傾斜部102dの内側面に直接に又は取付用部材を介して間接的に取り付けられ、他方の端部が、車体上端部201及び車体傾斜部202の非露出面に直接に又は取付用部材を介して間接的に取り付けられる。蛇腹部31と、ドア100及び車体との取り付けは、爪部による引っ掛け等どのような方法でも良い。
【0053】
以上が防雨装置1の構成である。次に、防雨装置1の作用効果を説明する。ドア100が開くと、ドア100の前端側は、山折り部33a、34aと谷折り部33b、34bとの間隔が広がることで蛇腹式カバー30が展開し、ドア100の後端側は巻き取り式カーテン部2のカーテン3が展開する(
図1参照)。これによって、ドア100と前席乗降口との間に形成される空間に雨が入射してしまうのを抑制でき、車両の乗降の際に乗員が雨に濡れてしまうのを抑制できる。また、ドア100が閉じると、山折り部33a、34aと谷折り部33b、34bとの間隔が縮まることで蛇腹式カバー30が折りたたまれ、カーテン3が巻き取り軸5に巻き取られる。
【0054】
また、カーテン3の後端部3dは直線状に形成されているので、カーテン3の展開時に後端部3dが垂れ下がってしまうのを抑制できる。これによって、カーテン3に入射した雨が後方に流れ落ちて乗員にかかってしまうのを抑制できる。
【0055】
また、巻き取り式カーテン部2の巻き取り軸5は、水平線に対して前傾状態で設けられるので、展開時のカーテン3に、前方にいくほど低位置となる勾配を与えることができる。これによって、カーテン3に入射した雨が後方に流れ落ちて乗員にかかってしまうのを抑制できる。
【0056】
また、巻き取り式カーテン部2を設けるには困難である傾斜部102d、202には蛇腹式カバー30が設けられるので、この傾斜部102d、202から雨が入ってしまうのを抑制できる。
【0057】
また、蛇腹式カバー30は、ドア100の前方のみに設けられるので、ドア100の全体に設ける場合に比べて、蛇腹式カバー30の後端側における展開方向長さを短くできる。これにより、蛇腹式カバー30の後端側が自重により垂れ下がってしまうのを抑制できる。また、蛇腹式カバー30は、ドア100の全体に設ける場合に比べて、後端側における展開方向長さを短くできる分、蛇腹枚数を減らすことができる。これによって、蛇腹式カバー30によりドア100が閉じにくくなるのを抑制できる。
【0058】
また、ドア回転軸線L1辺りは、蛇腹式カバー30を挟み込むスペースに余裕が無い場合があるが、蛇腹式カバー30の、ドア回転軸線L1辺りに設けられる前方部34は後方部33に比べて蛇腹枚数が少ないので、ドア100が閉じにくくなってしまうのを抑制できる。蛇腹前方部34が設けられる位置におけるドア100が開いた時のドア100と車体との間隔は、蛇腹後方部33が設けられる位置におけるドア100が開いた時のドア100と車体との間隔に比べて狭いので、蛇腹前方部34の蛇腹枚数を減らしたとしても蛇腹前方部34が展開しにくくなるなどといった支障をきたさない。
【0059】
逆に言うと、蛇腹後方部33は、蛇腹前方部34に比べて蛇腹枚数が多いので、蛇腹後方部33が開くにくくなってしまうのを抑制できる。また、蛇腹枚数が少なすぎると、開いた時に山折り部、谷折り部の角度が大きくなり、角度が大きすぎると、後端側が自重で垂れさがってしまう。この点、蛇腹後方部33は、蛇腹前方部34に比べて蛇腹枚数が多いので、後端側が自重で垂れさがってしまうのを抑制できる。
【0060】
また、蛇腹式カバー30は、斜め部35(
図6参照)により徐々に蛇腹枚数を減らしているので、急激に蛇腹枚数を減らした場合に比べて、展開時における見た目を良くできるとともに、蛇腹式カバー30の前方と後方との間で急激に剛性が変わってしまうのを抑制できる。これによって、展開時にねじれが生じたり、垂れ下がりが生じたりするのを抑制できる。
【0061】
また、
図6に示すように、斜め部35を有した山折り部33dと、斜め部35を有しない山折り部33cとは交互に設けられるので、蛇腹前方部34における蛇腹枚数を、蛇腹後方部33における蛇腹枚数の半分にすることができる。これにより、ドア回転軸線L1に近い狭いスペースに、蛇腹前方部34を設置しやすくできる。加えて、展開時における見た目を良くできるとともに、蛇腹後方部33と前方部34との境界位置において剛性の偏りを抑制できる。これによって、展開時にねじれが生じたり、垂れ下がりが生じたりするのを抑制できる。
【0062】
また、蛇腹式カバー30の後端側の谷折り部37a(
図7参照)は、水平線に対して前傾となる勾配が与えられているので、蛇腹式カバー30に入射した雨が後方に流れ落ちて乗員にかかってしまうのを抑制できる。
【0063】
また、蛇腹式カバー30は先端に水受け部32を有しているので、蛇腹部31に入射した雨が広い範囲に分散しながら下に落ちてしまうのを抑制できる。
【0064】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載を逸脱しない限度で種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、巻き取り式カーテン部において、車体側に巻き取り機構が取り付けられた例を説明したが、ドア側に巻き取り機構が設けられたとしても良い。
【0065】
また、上記実施形態では、蛇腹式カバーの前方部の蛇腹枚数を、後方部の蛇腹枚数の半数とした例を説明したが、それ以外の数で減少させたとしても良い。言い換えると、上記実施形態では、蛇腹部の山折り部は1つおきに前方の谷折り部に繋がる構成としたが、何個おきに前方の谷折り部に繋がる構成としても良い。
【0066】
また、上記実施形態では、ドア前端側のみに蛇腹式カバーを設けた例を説明したが、巻き取り式カーテン部を設けないで、ドア全体をカバーするように蛇腹式カバーを設けても良い。これによっても、蛇腹式カバーの前方部の蛇腹枚数を減少させることで、ドアが閉じにくくなってしまうのを抑制できる。
【0067】
また、上記実施形態では、防雨装置を車両の前席ドアに取り付けた例を示したが、前席ドアと同様の形状(つまり、上端部の前端から傾斜部を有した形状)の扉を備えた他の物体(車両以外の移動体(遊園地の乗り物、船など)や、移動体以外の物体)に取り付けられたとしても良い。
【0068】
また、上記実施形態では、ドアの傾斜部に蛇腹式カバーを設けた例を説明したが、傾斜部を有しないドア(例えば車両の後席ドアや、自動販売機の扉など)に本発明の蛇腹式カバーを設けても良い。
【0069】
また、上記実施形態では、蛇腹枚数が異なる部位として蛇腹前方部と蛇腹後方部の2つの部位を有した蛇腹式カバーを例示したが、蛇腹式カバーの延設方向に沿った3つ以上の部位で互いに異なる蛇腹枚数に構成しても良い。この場合、蛇腹式カバーの前端に近い部位ほど蛇腹枚数を少なくするのが好ましい。