(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
芯部と、この芯部の中心軸方向の両端からそれぞれ外径側に広がる2つのつば部と、これら2つのつば部の外径端同士を繋ぐ側壁部とを有するコア、およびこのコアの前記芯部にボビンを介して巻回された環状のコイルを備え、前記ボビンは、前記中心軸方向の両端に前記コアの前記つば部と前記コイルとを隔てるフランジ部をそれぞれ有するインダクタにおいて、
前記コアは、前記芯部を成す芯コアと、前記つば部および前記側壁部を成す外周コアとで構成され、
前記芯コアは、前記ボビンよりも前記中心軸方向に突出した部分から外径側に張り出す張出部を有し、この張出部における前記中心軸方向の内側を向く面が前記ボビンの前記フランジ部における前記中心軸方向の外側を向く面に接触することで、前記コアの前記つば部と前記ボビンの前記フランジ部とが所定のすきまを介して対向するように前記ボビンを前記外周コアに対して前記中心軸方向に位置決めすることを特徴とするインダクタ。
請求項1に記載のインダクタにおいて、前記外周コアは、前記側壁部の円周方向の一部が開口し、この開口部から内部へ前記ボビンを出し入れ可能なカップ状であるインダクタ。
【背景技術】
【0002】
ポットコアを用いたインダクタにおいて、
図22に示すように、絶縁材料からなるボビン3を介してコイル4をコア22に巻回する場合、コイル4とコア22との電気的絶縁性がボビン3(
図23参照)に求められる。電気的絶縁性は2つの導電性部分間の空間距離と沿面距離とで決まるが、全体のサイズに制限があり空間距離をあまり大きく取ることはできないインダクタ21の場合、沿面距離を確保することが重要となる。
図22の場合、沿面距離Lは、ボビン3のフランジ部3bの中心軸Oの方向の厚さaとなる。
【0003】
特許文献1に提案されているカップ状のコア(EEP形コアの改良形)を用いたインダクタについても、ポットコアを用いたインダクタと同様である。すなわち、カップ状のコア2を用いたインダクタ1の沿面距離は、
図28のように、ボビン3のフランジ部3bの中心軸Oの方向の厚さaとなる。
【0004】
ボビン3の沿面距離を確保するための第1の改良策として、
図24、
図25に示すように、ボビン3のフランジ部3bの中心軸方向厚さを厚くする方法がある。この場合、ボビン3の沿面距離Lは、フランジ部3bの中心軸方向厚さA(A>a)となる。
図24、
図25はポットコアを用いたインダクタ21を示すが、カップ状のコア2を用いたインダクタ1についても同様である。
【0005】
また、第2の改良策として、
図26、
図27に示すように、ボビン3のフランジ部3bの直径を大きくして、フランジ部3bの外径端をコイル4の外径端よりも外径側に突出させる方法がある。言い換えると、ボビン3のフランジ部3bの外径端から内径側にスペースを残してコイル4を巻回する方法である。この場合、ボビン3の沿面距離Lは、フランジ部3bの中心軸方向厚さaに、フランジ部3bの外径端とコイル4の外径端との径方向距離dを加算した値となる。
図26、
図27はポットコアを用いたインダクタ21を示すが、カップ状のコア2を用いたインダクタ1についても同様である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、第1の改良策(
図24)のようにボビン3のフランジ部3bの厚さを厚くすると、インダクタ21の体格が中心軸方向に大きくなる。また、第2の改良策(
図26)のようにボビン3のフランジ部3bの直径を大きくすると、インダクタ21の体格が径方向に大きくなる。
【0008】
この発明の目的は、ボビンを介してコイルが巻回されたものにおいて、コイルとコアの電気的絶縁性を確保しつつ、小型化を実現できるインダクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のインダクタは、芯部と、この芯部の中心軸方向の両端からそれぞれ外径側に広がる2つのつば部と、これら2つのつば部の外径端同士を繋ぐ側壁部とを有するコア、およびこのコアの前記芯部にボビンを介して巻回された環状のコイルを備え、前記ボビンは、前記中心軸方向の両端に前記コアの前記つば部と前記コイルとを隔てるフランジ部をそれぞれ有するインダクタにおいて、
前記コアは、前記芯部を成す芯コアと、前記つば部および前記側壁部を成す外周コアとで構成され、
前記芯コアは、前記ボビンよりも前記中心軸方向に突出した部分から外径側に張り出す張出部を有し、この張出部における前記中心軸方向の内側を向く面が前記ボビンの前記フランジ部における前記中心軸方向の外側を向く面に接触することで、前記コアの前記つば部と前記ボビンの前記フランジ部とが所定のすきまを介して対向するように前記ボビンを前記外周コアに対して前記中心軸方向に位置決めすることを特徴とする。
【0010】
この構成によると、芯コアの張出部をボビンのフランジ部に接触させて、ボビンを中心軸方向に位置決めすることにより、外周コアに対してボビンが中心軸方向に位置決めされる。コアのつば部とボビンのフランジ部とは、所定のすきまを介して対向する。このようにボビンが位置決めされることで、コアとコイルとの距離が一体に保たれ、コアとコイルの電気的絶縁性が確保されるとともに、インダクタンス値等の磁気特性が安定する。
【0011】
コイルとコア間のボビンの沿面距離は、ボビンのフランジ部の中心軸方向厚さ、フランジ部の外径端から芯コアの張出部までの径方向距離、およびすきまの中心軸方向寸法を加算した値となる。従って、コアのつば部とボビンのフランジ部とが接触した基本の構成(
図22、
図28参照)のフランジ部の中心軸方向厚さと、発明の構成のフランジ部の中心軸方向厚さとが互いに同じである場合、この発明の構成は、基本の構成に対して、(フランジ部の外径端から芯コアの張出部までの径方向距離)+(すきまの中心軸方向寸法)だけ沿面距離が長くなる。芯コアの張出部の外径を適正に定めることによって、インダクタの体格を変えずに十分な沿面距離を確保することができる。
【0012】
このように、芯コアが張出部を有する形状とすることによって十分な沿面距離を確保することが可能であるため、フランジ部の厚さを厚くした構成(
図24参照)のように中心軸方向の体格を大きくしたり、フランジ部の直径を大きくした構成(
図26参照)のように径方向の体格を大きくしたりしなくて済む。これにより、コイルとコアの電気的絶縁性を確保しつつ、小型化を実現できる
【0013】
この発明は、前記外周コアが、前記側壁部の円周方向の一部が開口し、この開口部から内部へ前記ボビンを出し入れ可能なカップ状であるインダクタに適用できる。この場合、コアの部品点数を削減でき、かつ組立性が良好となる。
また、この発明は、前記外周コアが、前記中心軸方向に並ぶ2つのポット形の外周コア分割体からなるインダクタにも適用できる。
【発明の効果】
【0014】
この発明のインダクタは、芯部と、この芯部の中心軸方向の両端からそれぞれ外径側に広がる2つのつば部と、これら2つのつば部の外径端同士を繋ぐ側壁部とを有するコア、およびこのコアの前記芯部にボビンを介して巻回された環状のコイルを備え、前記ボビンは、前記中心軸方向の両端に前記コアの前記つば部と前記コイルとを隔てるフランジ部をそれぞれ有し、前記コアは、前記芯部を成す芯コアと、前記つば部および前記側壁部を成す外周コアとで構成され、前記芯コアは、前記ボビンよりも前記中心軸方向に突出した部分から外径側に張り出す張出部を有し、この張出部における前記中心軸方向の内側を向く面が前記ボビンの前記フランジ部における前記中心軸方向の外側を向く面に接触することで、前記コアの前記つば部と前記ボビンの前記フランジ部とが所定のすきまを介して対向するように前記ボビンを前記外周コアに対して前記中心軸方向に位置決めするため、コイルとコアとの電気的絶縁性を確保しつつ、小型化を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明の実施形態を図面と共に説明する。
[第1の実施形態(カップ状の外周コアを用いたインダクタ)]
図1は第1の実施形態に係るインダクタの斜視図、
図2は同インダクタを縦平面で破断して表した断面図、
図3は同インダクタの断面図である。このインダクタ1は、コア2と、このコア2にボビン3を介して巻回された環状のコイル4とを備える。
【0017】
図2、
図3に示すように、コア2は、芯部2aと、この芯部2aの中心軸Oの方向(以下、「中心軸方向」とする)の両端からそれぞれ外径側に広がる2つのつば部2b,2bと、これら2つのつば部2b,2bの外径端同士を繋ぐ側壁部2cとからなる。コア2の芯部2aの外周に、コイル4が巻回されたボビン3が嵌合している。
【0018】
このインダクタ1に用いられているコア2は、前記芯部2aを成す芯コア11と、前記2つのつば部2b,2bおよび側壁部2cを成す外周コア12とで構成される。芯コア11および外周コア12は、共に磁性材料から形成された磁性体であるが、互いに同一の磁性材料から形成されてもよいし、互いに異なる磁性材料から形成されていてもよい。インダクタ1の求められる特性に応じて、芯コア11および外周コア12の磁性材料をそれぞれ任意に選択することができる。前記磁性材料としては、例えば、焼結性純鉄等が適用される。但し、焼結性純鉄に限定されるものではない。
【0019】
芯コア11は、例えばボビン3の嵌合する部分が円柱状であり、ボビン3よりも中心軸方向に突出した両端部分に、それぞれ外径側に張り出す張出部11aが形成されている。張出部11aの外周面は、ボビン3の嵌合する部分と同心の円筒状である。この実施形態では、芯コア11の両端が外周コア12のつば部2bの中心軸方向内側の面に当接しているが、後で示すように、芯コア11の両端または一方端が外周コア12のつば部2bを中心軸方向に貫通していてもよい。この実施形態の芯コア11は、組立上の理由から、中心軸方向の中央部で各芯コア分割体11A,11Bに2分割されている。
【0020】
外周コア12は、2つのつば部2b,2bと側壁部2cとからなり、側壁部2cの一部が開口したカップ状である。詳しくは、
図1に示すように、つば部2bは、半円状部分2baと、この半円状部分2baの弦の幅で延びる長方形部分2bbとが繋がった平面形状である。側壁部2cは、つば部2bの前記半円状部分2baの外径端に沿って延びる円弧状側壁部2caと、この円弧状側壁部2caの両側にそれぞれ続き、前記長方形部分2bbの一対の対向辺に沿って延びる一対の平板状部分2cb,2cbとでなる。そして、前記一対の平板状部分2cb,2cbの先端間に開口部13が形成されている。
【0021】
図2、
図3に示すように、各つば部2bの中心軸方向内側の面に、中心溝部14aおよび芯コア導入溝部14bからなる溝部14が形成されている。溝部14以外の部分、すなわち側壁部2cに隣接する外周部15は、溝部14よりも中心軸方向内側に張り出している。外周コア12に芯コア11を組み込んだ状態で、芯コア11の両端が2つのつば部2b,2bの中心溝部14a,14aに接する。
【0022】
図4はボビンの斜視図である。同図に示すように、ボビン3は、コア2の芯部2a(
図2)の外周に嵌合する円筒部3aと、この円筒部3aの中心軸方向の両端に位置する円環状のフランジ部3b,3bとを有する。ボビン3は、絶縁性の材料からなる。絶縁性の材料として、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂材料が適用される。
【0023】
コイル4は、
図1〜
図3のように、ボビン3の2つのフランジ部3b,3b間に亘って、円筒部3aの外周に導線(図示せず)を巻回したものである。導線は、フランジ部3bの外径端まで巻回されている。導線の両端は、コア2の外に取り出されている。
【0024】
コイル4の導線として、例えば銅エナメル線が用いられる。詳しくは、ウレタン線(UEW)、ホルマール線(PVF)、ポリエステル線(PEW)、ポリエステルイミド線(EIW)、ポリアミドイミド線(AIW)、ポリイミド線(PIW)、これらを組み合わせた二重被覆線、または自己融着線、リッツ線等を使用できる。銅エナメル線の断面形状としては、丸線または角線を使用可能である。
【0025】
図5はこのインダクタ1の組立順序を示す説明図である。
図5(A)のように、ボビン3の円筒部3aにコイル4を巻回しておき、そのコイル4が巻回されたボビン3の円筒部3aの内周に芯コア分割体11A,11Bをそれぞれ上下から挿入して、コイルユニット5(
図5(B)参照)を組み立てる。2つの芯コア分割体11A,11Bは、それぞれの対向面11b,11bを互いに接触させてもよく、両対向面11b,11b間にギャップを設けてもよい。また、ボビン3の円筒部3aの内周に芯コア分割体11A,11Bを挿入してから、ボビン3の円筒部3aにコイル4を巻回してもよい。
【0026】
次に、
図5(B)のように、前記コイルユニット5を外周コア12の中に組み込む。その際、芯コア分割体11A,11Bからなる芯コア11の両端が芯コア導入部14bを通るように、コイルユニット5を外周コア12の開口部13から挿入する。そして、芯コア11の両端が中心溝部14aに位置するまでコイルユニット5を押し込むことにより、
図5(C)のようにインダクタ1が組み立てられる。なお、
図5(C)の組立状態から、外周コア12の開口部13を蓋(図示せず)で塞いでもよい。
この実施形態のように、外周コア12が側壁部2cの開口部13からコイルユニット5を出し入れ可能なカップ状であると、コア2の部品点数を削減でき、かつ組立性が良好である。
【0027】
組み立てられたインダクタ1は、
図2、
図3に示すように、芯コア11の両端が外周コア12の2つのつば部2b,2bに接触することで、外周コア12に対して芯コア11が中心軸方向に位置決めされる。また、芯コア11の張出部11aがボビン3のフランジ部3bに接触しているため、芯コア11に対してボビン3が中心軸方向に位置決めされている。これにより、外周コア12に対してボビン3が中心軸方向に位置決めされる。コア2のつば部2bとボビン3のフランジ部3bとは、所定のすきま16(中心軸方向寸法c)を介して対向する。このようにボビン3が位置決されることで、コア2とコイル4との距離が一体に保たれ、コア2とコイル4の電気的絶縁性が確保されるとともに、インダクタンス値等の磁気特性が安定する。
【0028】
図3に示すように、コイル4とコア2間のボビン3の沿面距離Lは、ボビン3のフランジ部3bの中心軸方向厚さa、フランジ部3bの外径端から芯コア11の張出部11aまでの径方向距離b、およびすきま16の中心軸方向寸法cを加算した値となる。これに対し、コア2のつば部2bとボビン3のフランジ部3bとが接触した基本の構成(
図28参照)の場合、ボビン3の沿面距離Lは、フランジ部3bの中心軸方向厚さaと一致する。この実施形態のフランジ部3bの中心軸方向厚さaと、基本の構成のフランジ部3bの中心軸方向厚さaとが同じであるとすると、実施形態の構成は、基本の構成に対して、(フランジ部3bの外径端から芯コア11の張出部11aまでの径方向距離b+すきま16の中心軸方向寸法c)の分だけ沿面距離Lが長くなる。芯コア11の張出部11aの外径を適正に定めることによって、インダクタ1の体格を変えずに十分な沿面距離Lを確保することができる。
【0029】
このように、芯コア11の張出部11aによってボビン3を中心軸方向に位置決めして、コア2のつば部2bとボビン3のフランジ部3bとの間にすきま16を設けることによって、ボビン3の沿面距離Lを十分に確保することが可能である。このため、フランジ部3bの中心軸方向厚さを厚くしたため中心軸方向の体格が大きくなったり、フランジ部3bの直径を大きくしたため径方向の体格が大きくなったりすることを避けることができる。つまり、コイル4とコア2の電気的絶縁性を確保しつつ、小型化を実現できる。
【0030】
[第2の実施形態(カップ状の外周コアを用いたインダクタ)]
図6〜
図8はこの発明の第2の実施形態を示す。この第2の実施形態は、芯コア11の両端が外周コア12のつば部2b´を貫通する形状とされている。詳しくは、芯コア11は第1の実施形態のものよりも中心軸方向に長く、かつ外周コア12の2つのつば部2b´に中心軸方向に貫通する貫通孔17がそれぞれ設けられ、両貫通孔17に芯コア11の両端部がそれぞれ嵌合している。貫通孔17に嵌合する芯コア11の端部の全体に張出部11aが形成されている。第1の実施形態と異なり、外周コア12に芯コア導入用の溝部14(
図1〜
図3参照)が設けられていない。これ以外は第1の実施形態と同じである。形態が同じ箇所については、同一符号を付して表し、説明を省略する。
【0031】
このインダクタ1の組立に際しては、第1の実施形態のようにボビン3、コイル4、および芯コア11の組み合わせ体であるコイルユニット5を外周コア12に組み込むのではなく、コイル4が巻回されたボビン3を外周コア12の中に配置した後、ボビン3に芯コア11を組み付ける。すなわち、芯コア分割体11A,11Bを外周コア12の両貫通孔17からそれぞれ挿入して、これら芯コア分割体11A,11Bの円柱状部分をボビン3の円筒部3aに差し込む。張出部11aがボビン3のフランジ部3bに当接するまで芯コア分割体11A,11Bを差し込むことにより、外周コア12に対してボビン3が中心軸方向に位置決めされる。コア2のつば部2bとボビン3のフランジ部3bとは、所定のすきま16(中心軸方向寸法c)を介して対向する。
【0032】
ボビン3に組み付けられた芯コア分割体11A,11Bの端面は、つば部2b´の中心軸方向外側の面とほぼ同一面となる。芯コア11の端部は貫通孔17に圧入され、芯コア11と外周コア12とが一体化される。コア2にギャップを設ける場合は、2つの芯コア分割体11A,11Bの対向面11b,11b間に設ける。
【0033】
このようにボビン3を位置決めすることで、コア2とコイル4との距離が一体に保たれ、コア2とコイル4の電気的絶縁性が確保されるとともに、インダクタンス値等の磁気特性が安定する。
このインダクタ1におけるボビン3の沿面距離Lは、第1の実施形態と同様に、ボビン3のフランジ部3bの中心軸方向厚さa、フランジ部3bの外径端から芯コア11の張出部11aまでの径方向距離b、およびすきま16の中心軸方向寸法cを加算した値となる。芯コア11の張出部11aの外径を適正に定めることによって、インダクタ1の体格を変えずに十分な沿面距離Lを確保することができる。
【0034】
[第3の実施形態(カップ状の外周コアを用いたインダクタ)]
図9〜
図11はこの発明の第3の実施形態を示す。この第3の実施形態は、芯コア11の一端(
図9〜
図11では下端)が外周コア12の一方のつば部2b´を貫通し、芯コア11の他端(上端)は、他方のつば部2bに接触、またはギャップを介して対向している。芯コア11の一端には張出部11aが形成されているが、他端には張出部11aが形成されていない。この芯コア11は一体物であって、第1、第2の実施形態のように複数の芯コア分割体に分割されていない。
【0035】
芯コア11の他端に張出部11aが形成されていないため、芯コア11によってボビン3の他端側の位置決めをすることができない。そこで、
図12に示すように、ボビン3のフランジ部3bにおけるつば部2bと対向する面(
図12の上面)に、つば部2bの側に突出する位置決め部3cが設けられている。位置決め部3cは、例えば組み立てた状態でボビン3と同心となるリング状である。フランジ部3bの外径端から位置決め部3cまでの径方向距離e、および位置決め部3cの突出高さfは、後で説明するボビン3の沿面距離を考慮して適正に定められる。
【0036】
また、
図13に示すように、位置決め部3cは、3つ以上(例えば6つ)の凸部3caが円周方向に分散して配置されたものであってよい。図の例では、各凸部3caが同心円上に位置しているが、同心円上に位置していなくてもよい。
これ以外は第1、第2の実施形態と同じである。形態が同じ箇所については、同一符号を付して表し、説明を省略する。
【0037】
このインダクタ1も、第2の実施形態と同様に、コイル4が巻回されたボビン3を外周コア12の中に配置した後、ボビン3に芯コア11を組み付ける。具体的には、芯コア11を外周コア12の一端側からつば部2b´の貫通孔17に挿入して、その円柱状部分をボビン3の円筒部3aに差し込む。すると、芯コア11の張出部11aによってボビン3が他端側へ押される。ボビン3の位置決め部3cが他端側のつば部2bに当接するまで芯コア11を差し込むことにより、外周コア12に対してボビン3が中心軸方向に位置決めされる。コア2のつば部2b´とボビン3のフランジ部3bとは、所定のすきま18を介して対向する。すきま18の中心軸方向寸法は、位置決め部3cの突出高さfに一致する。
【0038】
このようにボビン3を位置決めすることで、コア2とコイル4との距離が一体に保たれ、コア2とコイル4の電気的絶縁性が確保されるとともに、インダクタンス値等の磁気特性が安定する。なお、コア2にギャップを設ける場合は、外周コア12のつば部2bと芯コア11の端面との間に設ける。
【0039】
このインダクタ1におけるボビン3の沿面距離は、一端側と他端側とで異なる。一端側の沿面距離L1は、第1の実施形態と同様に、ボビン3のフランジ部3bの中心軸方向厚さa、フランジ部3bの外径端から芯コア11の張出部11aまでの径方向距離b、およびすきま16の中心軸方向寸法cを加算した値となる。他端側の沿面距離L2は、フランジ部3bの中心軸方向厚さa、フランジ部3bの外径端から位置決め部3cまでの径方向距離e、および位置決め部3cの突出長さ(すきま18の中心軸方向寸法)fを加算した距離となる。芯コア11の張出部11aの外径、およびフランジ部3bの外径端から位置決め部3cまでの径方向距離eを適正に定めることによって、インダクタ1の体格を変えずに十分な沿面距離L1,L2を確保することが可能である。
【0040】
[第4の実施形態(ポットコアを用いたインダクタ)]
図14はこの発明の第4の実施形態にかかるインダクタを縦平面で破断して表した斜視図、
図15はその断面図である。このインダクタ21は、ポットコアからなるコア22と、このコア22にボビン3を介して巻回された環状のコイル4とを備える。
【0041】
コア22は、芯部22aと、この芯部22aの中心軸方向の両端からそれぞれ外径側に広がる2つのつば部22b,22bと、これら2つのつば部22b,22bの外径端同士を繋ぐ側壁部22cとからなる。コア22の内部に、前記芯部22a、つば部22b,22b、および側壁部22cで囲まれた円環状の中空部25が形成されている。この中空部25に、ボビン3およびコイル4が内蔵される。この例では、芯部22aは略円柱状であり、側壁部22cは円筒状である。
【0042】
ポットコアからなるコア22は、前記芯部22aを成す芯コア31と、前記2つのつば部22b,22bおよび側壁部22cを成す外周コア32とで構成されている。
【0043】
芯コア31は、ボビン3が嵌合する部分が円柱状であり、ボビン3よりも中心軸方向に突出した部分に外径側に張り出す張出部31aが形成されている。張出部31aの外周面は、ボビン3の嵌合する部分と同心の円筒状である。芯コア31は、中心軸方向の中央部で2つの芯コア分割体31A,31Bに分割されている。両芯コア分割体31A,31Bは、同一の磁性材料から形成された磁性体である。
【0044】
外周コア32は、つば部22bの中心軸方向内側を向く面に、芯コア31の両端部が嵌まり込む凹部33が形成されている。外周コア32は、中心軸方向の中央部で2つの外周コア分割体32A,32Bに分割されている。両外周コア分割体32A,32Bは、同一の磁性材料から形成された磁性体である。芯コア分割体31A,31Bの磁性材料と外周コア分割体32A,32Bの磁性材料は、互いに同じであってもよいし、異なってもよい。
【0045】
ボビン3としては、
図4に示す形状のものが用いられる。すなわち、ボビン3は、コア22の芯部22aの外周に嵌合する円筒部3aと、この円筒部3aの中心軸方向の両端に位置する円環状のフランジ部3b,3bとを有する。
【0046】
このインダクタ21の組立方法を説明する。
組立方法の1例として、コイル4が巻回されたボビン3に芯コア31を組み付け、その後で芯コア31に外周コア32を取り付ける方法がある。この場合、コイル4が巻回されたボビン3の円筒部3aの内周に芯コア分割体31A,31Bをそれぞれ上下から挿入して、ボビン3、コイル4、および芯コア31の組み合わせ体であるコイルユニットを組み立てる。2つの芯コア分割体31A,31Bは、それぞれの対向面31b,31bを互いに接触させてもよく、両対向面31b,31b間にギャップを設けてもよい。そして、芯コア31の両端部が各外周コア分割体32A,32Bの凹部33にそれぞれ嵌まり込むように、芯コア31に外周コア分割体32A,32Bを取り付ける。
【0047】
両外周コア分割体32A,32Bの分割面は、接着材で接着する。分割面の接着には、例えば、無溶剤型のエポキシ系接着材またはシリコーン系接着材等が、要求される耐熱性等に応じて用いられる。以下の例についても同様である。
【0048】
組立方法の他の例として、予め、芯コア分割体31Aと外周コア分割体32Aとを組み付けると共に、芯コア分割体31Bと外周コア分割体32Bとを組み付けておき、これら組み付け体を、コイル4が巻回されたボビン3に取り付ける方法がある。この組立方法の場合、必ずしも芯コア分割体31Aと外周コア分割体32A、および芯コア分割体31Bと外周コア分割体32Bは分割されている必要はないので、これらが一体に成形されていてもよい。
【0049】
いずれの方法で組み立てた場合でも、芯コア31の端部が外周コア32の凹部33にそれぞれ嵌まり込み、芯コア31の張出部31aがボビン3のフランジ部31bに当接することにより、外周コア32に対してボビン3が中心軸方向に位置決めされる。これにより、コア22とコイル4との距離が一体に保たれ、コア22とコイル4の電気的絶縁性が確保されるとともに、インダクタンス値等の磁気特性が安定する。
【0050】
このインダクタ21におけるボビン3の沿面距離Lは、第1の実施形態と同様に、ボビン3のフランジ部3bの中心軸方向厚さa、フランジ部3bの外径端から芯コア31の張出部31aまでの径方向距離b、およびすきま16の中心軸方向寸法cを加算した値となる。芯コア31の張出部31aの外径を適正に定めることによって、インダクタ21の体格を変えずに十分な沿面距離Lを確保することができる。
【0051】
[第5の実施形態(ポットコアを用いたインダクタ)]
図16はこの発明の第5の実施形態にかかるインダクタを縦平面で破断して表した斜視図、
図17はその断面図である。この第5の実施形態は、第4の実施形態と比べて、芯コア31の両端が外周コア32のつば部22b´を貫通する形状とされている点が異なる。詳しくは、芯コア31は第4の実施形態のものよりも中心軸方向に長く、かつ外周コア32の2つのつば部22b´に、前記凹部33(
図14)に代えて中心軸方向に貫通する貫通孔37がそれぞれ設けられ、これら貫通孔37に芯コア31の両端部がそれぞれ嵌合している。貫通孔37に嵌合する芯コア31の両端部の全体に張出部31aが形成されている。これ以外は第4の実施形態と同じである。形態が同じ箇所については、同一符号を付して表し、説明を省略する。
【0052】
このインダクタ21の組立方法は、基本的には第4の実施形態と同じである。組立状態において、芯コア31の両端面が外周コア32のつば部22b´の中心軸方向外側の面とほぼ同一面となり、かつ芯コア分割体31A,31Bの各張出部31aがボビン3の各フランジ部3bに当接することで、外周コア32に対してボビン3が中心軸方向に位置決めされる。これにより、コア22とコイル4との距離が一体に保たれ、コア22とコイル4の電気的絶縁性が確保されるとともに、インダクタンス値等の磁気特性が安定する。ボビン3の沿面距離Lは、第4の実施形態と同様である。
【0053】
[第6の実施形態(ポットコアを用いたインダクタ)]
図18はこの発明の第6の実施形態にかかるインダクタを縦平面で破断して表した斜視図、
図19はその断面図である。この第6の実施形態は、第4の実施形態と第5の実施形態との中間的な形態であり、芯コア31の一端(下端)は外周コア32の一方のつば部22b´を貫通し、芯コア31の他端(上端)は外周コア32のつば部22に接触、またはギャップを介して対向している。
【0054】
芯コア31は一体物であって、つば部22b´を貫通する一端部には外径側に張り出す張出部31aが形成されているが、他端部はボビン3が嵌合する部分と同じ円柱状である。外周コア32は、中心軸方向に並ぶ2つの外周コア分割体32A,32Bに分割されている。外周コア分割体32Aのつば部22bには、芯コア31の他端部が嵌まり込む凹部33が設けられている。外周コア分割体32Bのつば部22b´には、芯コア31の一端部が貫通する貫通孔37が設けられている。
【0055】
ボビン3としては、
図12または
図13に示す形状のものが用いられる。すなわち、ボビン3は、コア22の芯部22aの外周に嵌合する円筒部3aと、この円筒部3aの中心軸方向の両端に位置する円環状のフランジ部3b,3bとを有し、片方のフランジ部3bにおける中心軸方向の外側の面に、外側に突出する位置決め部3cが設けられている。
これ以外は第4の実施形態および第5の実施形態と同じである。形態が同じ箇所については、同一符号を付して表し、説明を省略する。
【0056】
このインダクタ21の組立方法は、基本的には第4の実施形態および第5の実施形態と同じである。組立状態において、芯コア31の張出部31aがボビン3の一端側のフランジ部3bに当接し、かつボビン3の位置決め部3cが外周コア32のつば部22bに当接することで、外周コア32に対してボビン3が中心軸方向に位置決めされる。これにより、コア22とコイル4との距離が一体に保たれ、コア22とコイル4の電気的絶縁性が確保されるとともに、インダクタンス値等の磁気特性が安定する。
【0057】
このインダクタ21におけるボビン3の沿面距離は、一端側と他端側とで異なる。一端側の沿面距離L1は、ボビン3のフランジ部3bの中心軸方向厚さa、フランジ部3bの外径端から芯コア31の張出部31aまでの径方向距離b、およびすきま16の中心軸方向寸法cを加算した値となる。他端側の沿面距離L2は、フランジ部3bの中心軸方向厚さa、フランジ部3bの外径端から位置決め部3cまでの径方向距離e、および位置決め部3cの突出長さ(すきま18の中心軸方向寸法)fを加算した距離となる。芯コア31の張出部31aの外径、およびフランジ部3bの外径端から位置決め部3cまでの径方向距離eを適正に定めることによって、十分な沿面距離L1,L2を確保することができる。
【0058】
[参考例(ポットコアを用いたインダクタ)]
図20はこの発明には含まれない参考例としてのインダクタを縦平面で破断して表した斜視図、
図21はその断面図である。この参考例は、ボビン3の両方のフランジ部3bに中心軸方向の外側に突出する位置決め部3cが設けられており、これら位置決め部3cを外周コア32の両つば部22b´に当接させることで、外周コア32に対してボビン3が中心軸方向に位置決めされる。芯コア31は、両端が外周コア32の両つば部22b´を貫通している。ボビン3の沿面距離Lは、フランジ部3bの中心軸方向厚さa、フランジ部3bの外径端から位置決め部3cまでの径方向距離e、および位置決め部3cの突出長さfを加算した距離となる。
この場合も、コア22とコイル4との距離を一体に保つことができると共に、十分な沿面距離Lを確保することができる。
【0059】
以上、実施形態に基づいてこの発明を実施するための形態を説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。