特許第6913038号(P6913038)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6913038
(24)【登録日】2021年7月13日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】金型清掃用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/72 20060101AFI20210727BHJP
   C08L 61/26 20060101ALI20210727BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20210727BHJP
【FI】
   B29C33/72
   C08L61/26
   C08K5/10
【請求項の数】5
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2018-9807(P2018-9807)
(22)【出願日】2018年1月24日
(65)【公開番号】特開2019-126966(P2019-126966A)
(43)【公開日】2019年8月1日
【審査請求日】2020年8月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】吉村 勝則
(72)【発明者】
【氏名】福西 陽一
(72)【発明者】
【氏名】野村 弘明
【審査官】 神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−21156(JP,A)
【文献】 国際公開第00/40641(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/72
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メラミン系樹脂と、ブロックカルボン酸と、を含み、
前記ブロックカルボン酸が、モノカルボン酸、ジカルボン酸、及びトリカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種のカルボン酸と、ビニルエーテルと、の付加反応物である金型清掃用樹脂組成物。
【請求項2】
前記モノカルボン酸が、o−トリイル酸及び安息香酸から選ばれる少なくとも1種であり、
前記ジカルボン酸が、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、及びアジピン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
前記トリカルボン酸が、トリメリット酸である請求項に記載の金型清掃用樹脂組成物。
【請求項3】
前記ブロックカルボン酸が、カルボン酸と、ノルマルプロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ノルマルブチルビニルエーテル、及びイソブチルビニルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種のビニルエーテルと、の付加反応物である請求項1又は請求項2に記載の金型清掃用樹脂組成物。
【請求項4】
前記ブロックカルボン酸の分解温度が、120℃以上150℃以下である請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の金型清掃用樹脂組成物。
【請求項5】
充填材を更に含み、前記ブロックカルボン酸の含有量が、前記メラミン系樹脂及び前記充填材の合計100質量部に対して、0.01質量部以上5質量部以下である請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の金型清掃用樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型清掃用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、集積回路、LED(Light Emitting Diode)素子等の封止製品の成形作業に用いられる金型を清掃するための樹脂組成物が広く知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、金型清掃性能が良好、かつ清掃後の成形金型からの除去工程での作業性を改善できる金型清掃用樹脂組成物として、メラミン系樹脂と、金属石鹸と、繊維状無機化合物と、針葉樹パルプとを含み、上記金属石鹸の含有量が、金型清掃用樹脂組成物100質量部に対して1.6質量部以上5.0質量部以下である金型清掃用樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−035881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、成形金型の清掃作業は、作業効率(例えば、作業時間の短縮)の観点から、封止製品の成形温度と同程度の温度で行うことが望ましい。一般に、封止製品の成形作業は、150℃〜200℃の温度条件で行われる。例えば、特許文献1では、金型の清掃作業を175℃にて行っている。しかし、封止に用いられる樹脂の組成によっては、低温条件(例えば、130℃)で行われる場合がある。そのため、低温条件(例えば、130℃)で成形金型を清掃できる金型清掃用樹脂組成物が求められている。
【0006】
成形金型の清掃作業を良好に行うためには、金型清掃用樹脂組成物が、成形金型の内部の隅々まで行き渡るために必要な流動性(以下、「適正な流動性」ともいう。)を示し、かつ、隅々まで行き渡った後は十分に硬化することが望ましい。
しかし、従来の金型清掃用樹脂組成物を低温条件(例えば、130℃)で使用すると、金型清掃用樹脂組成物が、適正な流動性を示し難く、また、十分に硬化し難い。そのため、清掃性能に劣る傾向がある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、低温条件(例えば、130℃)で使用した場合でも、適正な流動性を示し、かつ、十分に硬化し、清掃性能に優れる金型清掃用樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> メラミン系樹脂と、ブロックカルボン酸と、を含む金型清掃用樹脂組成物。
<2> 上記ブロックカルボン酸が、モノカルボン酸、ジカルボン酸、及びトリカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種のカルボン酸と、ビニルエーテルと、の付加反応物である<1>に記載の金型清掃用樹脂組成物。
<3> 上記モノカルボン酸が、o−トリイル酸及び安息香酸から選ばれる少なくとも1種であり、上記ジカルボン酸が、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、及びアジピン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、上記トリカルボン酸が、トリメリット酸である<2>に記載の金型清掃用樹脂組成物。
<4> 上記ブロックカルボン酸が、カルボン酸と、ノルマルプロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ノルマルブチルビニルエーテル、及びイソブチルビニルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種のビニルエーテルと、の付加反応物である<1>〜<3>のいずれか1つに記載の金型清掃用樹脂組成物。
<5> 上記ブロックカルボン酸の分解温度が、120℃以上150℃以下である<1>〜<4>のいずれか1つに記載の金型清掃用樹脂組成物。
<6> 充填材を更に含み、上記ブロックカルボン酸の含有量が、上記メラミン系樹脂及び上記充填材の合計100質量部に対して、0.01質量部以上5質量部以下である<1>〜<5>のいずれか1つに記載の金型清掃用樹脂組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低温条件(例えば、130℃)で使用した場合でも、適正な流動性を示し、かつ、十分に硬化し、清掃性能に優れる金型清掃用樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0011】
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本明細書において、各成分の量は、各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、複数種の物質の合計量を意味する。
【0012】
本明細書において、「成形金型の内部表面」とは、成形金型により成形される被成形物と接する領域を意味する。
本明細書において、「ブロックカルボン酸」とは、カルボン酸とビニルエーテルとの付加反応物を意味する。
【0013】
[金型清掃用樹脂組成物]
本発明の金型清掃用樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ともいう。)は、メラミン系樹脂と、ブロックカルボン酸と、を含む。
本発明の樹脂組成物は、低温条件(例えば、130℃)で使用した場合でも、適正な流動性を示し、かつ、十分に硬化し、清掃性能に優れる。
本発明の樹脂組成物がこのような効果を奏し得る理由については、明らかではないが、本発明者らは、以下のように推測している。但し、以下の推測は、本発明の金型清掃用樹脂組成物の効果を限定的に解釈するものではなく、一例として説明するものである。
【0014】
メラミン系樹脂を含む樹脂組成物では、メラミン系樹脂の硬化触媒として、安息香酸、ステアリン酸等の有機酸が用いられることがある。例えば、特許文献1(特開2017−035881号公報)には、メラミン系樹脂の硬化触媒として、カルボン酸である安息香酸を含む樹脂組成物が記載されている。
メラミン系樹脂と硬化触媒とを含む樹脂組成物では、加熱によりメラミン系樹脂が溶融すると、溶融したメラミン系樹脂に硬化触媒が分散することで、メラミン系樹脂の硬化が急速に進むと考えられる。メラミン系樹脂の硬化速度が速いと、成形金型内に付与した樹脂組成物が成形金型の内部の隅々まで行き渡る前にメラミン系樹脂が流動性を失い、十分な清掃を行えない場合がある。
【0015】
これに対し、本発明の樹脂組成物は、メラミン系樹脂及びブロックカルボン酸を含む。
ブロックカルボン酸は、カルボン酸とビニルエーテルとの付加反応物であり、加熱により容易にカルボン酸を生成する。生成したカルボン酸は、メラミン系樹脂の硬化触媒として機能し得る。
本発明の樹脂組成物を用いた金型清掃では、成形金型内に付与した樹脂組成物中のメラミン系樹脂が加熱により溶融し、溶融したメラミン系樹脂中にブロックカルボン酸が分散する。ブロックカルボン酸は、溶融したメラミン系樹脂に分散しながら、又は、分散後に、加熱により分解され、カルボン酸を生成する。そして、生成したカルボン酸によりメラミン系樹脂の硬化が進むという段階的なプロセスを経る。このように、本発明の樹脂組成物におけるメラミン系樹脂の硬化は、硬化触媒(例えば、安息香酸)を含む従来の樹脂組成物と比較して緩やかに進む。
すなわち、本発明の樹脂組成物では、メラミン系樹脂の硬化が緩やかに進むため、成形金型の内部の隅々まで行き渡るために必要な流動性(即ち、適度な流動性)を示す。本発明の樹脂組成物に含まれるブロックカルボン酸は、低温条件(例えば、130℃)の成形金型内で分解し、メラミン系樹脂の硬化触媒として機能し得るカルボン酸を生成するため、成形金型の内部の隅々まで行き渡った樹脂組成物は十分に硬化する。これにより、本発明の樹脂組成物は、清掃性能に優れると考えられる。
【0016】
樹脂組成物の成形時に樹脂組成物が成形金型に張り付くと、清掃後、樹脂組成物の成形物を成形金型から取り除く際にチッピング(所謂、欠け)が発生し得る。チッピング(欠け)が発生すると、作業性が損なわれる。
本発明の樹脂組成物は、低温条件(例えば、130℃)で使用した場合でも、樹脂組成物の成形物のチッピング(欠け)が発生し難く、清掃後、樹脂組成物の成形物を成形金型から取り除く際の作業性にも優れる。
【0017】
<メラミン系樹脂>
本発明の樹脂組成物は、メラミン系樹脂を含む。
本発明の樹脂組成物において、メラミン系樹脂は、清掃性能に寄与する。
メラミン系樹脂は、極性の高いメチロール基を有している。メラミン系樹脂を含む樹脂組成物では、メラミン系樹脂が有する極性の高いメチロール基が、エポキシ樹脂に代表される熱硬化性樹脂を含む封止成形材料に由来する汚れ(以下、「汚染物質」ともいう。)に作用することで、清掃性能効果が奏されると考えられる。
【0018】
本明細書において「メラミン系樹脂」とは、メラミン樹脂、メラミン−フェノール共縮合物、及びメラミン−ユリア共縮合物を意味する。
【0019】
メラミン樹脂は、トリアジン化合物と、アルデヒド化合物との縮合物である。
トリアジン化合物としては、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン等が挙げられる。
アルデヒド化合物としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等が挙げられる。
メラミン樹脂は、トリアジン化合物由来の繰り返し単位と、アルデヒド化合物由来の繰り返し単位とのモル比(トリアジン化合物由来の繰り返し単位/アルデヒド化合物由来の繰り返し単位)が、1/1.2〜1/4であることが好ましい。
【0020】
メラミン−フェノール共縮合物は、トリアジン化合物と、フェノール化合物と、アルデヒド化合物との共縮合物である。
フェノール化合物としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、ブチルフェノール等が挙げられる。
メラミン−フェノール共縮合物は、トリアジン化合物由来の繰り返し単位と、フェノール化合物由来の繰り返し単位と、アルデヒド化合物由来の繰り返し単位とのモル比(トリアジン化合物由来の繰り返し単位/フェノール化合物由来の繰り返し単位/アルデヒド化合物由来の繰り返し単位)が、1/0.3/1〜1/1/3であることが好ましい。
【0021】
メラミン−ユリア共縮合物は、トリアジン化合物と、ユリア化合物と、アルデヒド化合物との共縮合物である。
ユリア化合物としては、尿素、チオ尿素、エチレン尿素等が挙げられる。
【0022】
メラミン系樹脂は、公知の方法により製造できる。
例えば、メラミン樹脂は、メラミン結晶と、ホルムアルデヒドとを、モル比(メラミン結晶/ホルムアルデヒド)1/1.2〜1/4、反応温度80℃〜90℃、pH7〜7.5の条件下で撹拌した後、60℃において、反応物の3質量%水溶液が白濁するまでの時間、反応させる。次いで、水酸化ナトリウムを入れ、冷却することにより、メラミン樹脂を製造できる。
【0023】
メラミン系樹脂としては、市販品を使用できる。
メラミン系樹脂の市販品の例としては、日本カーバイド工業(株)のニカレヂン(登録商標)S−166、ニカレヂン(登録商標)S−176、ニカレヂン(登録商標)S−260、ニカレヂン(登録商標)S−305等が挙げられる。
【0024】
本発明の樹脂組成物は、メラミン系樹脂を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0025】
本発明の樹脂組成物におけるメラミン系樹脂の含有量は、特に制限されない。
メラミン系樹脂の含有量は、例えば、樹脂組成物の全固形分100質量部に対して、10質量部以上90質量部以下が好ましく、15質量部以上75質量部以下がより好ましく、20質量部以上60質量部以下が更に好ましい。
【0026】
<ブロックカルボン酸>
本発明の樹脂組成物は、ブロックカルボン酸を含む。
本発明の樹脂組成物において、ブロックカルボン酸は、低温条件(例えば、130℃)で使用した場合における硬化性及び清掃性能の向上に寄与し得る。また、ブロックカルボン酸によれば、低温条件(例えば、130℃)で使用した場合であっても適正な流動性を示す樹脂組成物を実現し得る。さらに、本発明の樹脂組成物がブロックカルボン酸を含むと、清掃後、成形金型から樹脂組成物の成形物を取り除く際にチッピング(欠け)が発生し難く、作業性に優れる傾向がある。
【0027】
ブロックカルボン酸は、特に制限されないが、例えば、25℃で液体であることが好ましい。ブロックカルボン酸が25℃で液体であると、樹脂組成物を調製する際に、樹脂組成物中にブロックカルボン酸を良好に分散させることができる。
「25℃で液体」とは、常圧での融点又は軟化点が25℃未満であることを意味する。
【0028】
ブロックカルボン酸としては、例えば、調製しやすいとの観点から、モノカルボン酸、ジカルボン酸、及びトリカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種のカルボン酸と、ビニルエーテルと、の付加反応物であることが好ましく、例えば、物として安定であるとの観点から、モノカルボン酸から選ばれる少なくとも1種のカルボン酸と、ビニルエーテルと、の付加反応物であることがより好ましい。
ところで、カルボン酸とビニルエーテルとの付加反応では、目的物であるブロックカルボン酸以外に不純物が生成し得る。生成した不純物の中に、金型温度よりも高い温度の沸点を有する不純物(以下、「高沸点反応不純物」という。)が含まれていると、金型の清掃性が損なわれる可能性がある。高沸点反応不純物は、カルボン酸としてトリカルボン酸を使用した場合に最も多く生成し、ジカルボン酸及びモノカルボン酸の順で少なくなる傾向がある。高沸点反応不純物が多く生成すると、高沸点反応不純物を除去するための精製作業が煩雑となる。このような観点からは、ブロックカルボン酸としては、モノカルボン酸及びジカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種のカルボン酸と、ビニルエーテルと、の付加反応物であることがより好ましい。
【0029】
モノカルボン酸は、特に制限されない。
モノカルボン酸の具体例としては、o−トリイル酸、安息香酸、酢酸、ベヘン酸、パルミチン酸、サリチル酸等が挙げられる。
これらの中でも、モノカルボン酸としては、例えば、o−トリイル酸及び安息香酸から選ばれる少なくとも1種が好ましく、o−トリイル酸がより好ましい。
o−トリイル酸と、ビニルエーテルと、の付加反応物であるブロックカルボン酸は、物としての安定性により優れる。
【0030】
ジカルボン酸は、特に制限されない。
ジカルボン酸の具体例としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、シュウ酸、2−フェニルコハク酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、セバシン酸等が挙げられる。
これらの中でも、ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、及びアジピン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、入手しやすいとの観点から、フタル酸及びイソフタル酸から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0031】
トリカルボン酸は、特に制限されない。
トリカルボン酸の具体例としては、トリメリット酸、トリメシン酸等が挙げられる。
これらの中でも、トリカルボン酸としては、入手の容易さの観点から、トリメリット酸が好ましい。
【0032】
ビニルエーテルは、特に制限されない。
ビニルエーテルの具体例としては、ノルマルプロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ノルマルブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2−エチルへキシルビニルエーテル等が挙げられる。
これらの中でも、ビニルエーテルとしては、例えば、ノルマルプロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ノルマルブチルビニルエーテル、及びイソブチルビニルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
カルボン酸と、ノルマルプロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ノルマルブチルビニルエーテル、及びイソブチルビニルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種のビニルエーテルと、の付加反応物であるブロックカルボン酸は、調製しやすいとの利点を有する。
【0033】
ブロックカルボン酸の具体例としては、安息香酸とイソプロピルビニルエーテルとの付加反応物であるBZA−IPOE(Benzoic acid isopropoxyethylester)、o−トルイル酸とノルマルブチルビニルエーテルとの付加反応物であるOTLA−NBOE(ortho-Toluic acid butoxyethylester)、o−トルイル酸とイソブチルビニルエーテルとの付加反応物であるOTLA−IBOE(ortho-Toluic acid isobutoxyethylester)、o−トルイル酸とシクロヘキシルビニルエーテルとの付加反応物であるOTLA−CHOE(ortho-Toluic acid Cyclohexylethylester)、アジピン酸とイソブチルビニルエーテルとの付加反応物であるAPA−IBOE(Adipic acid bis(isobutoxyethyl)ester)、フタル酸とノルマルプロピルビニルエーテルとの付加反応物であるPTA−NPOE(Phthalic acid bis(propoxyethyl)ester)、イソフタル酸とイソブチルビニルエーテルとの付加反応物であるIPHA−IBOE(Isophthalic acid bis(isobutoxyethyl)ester)、イソフタル酸と2−エチルへキシルビニルエーテルとの付加反応物であるIPHA−EHOE(Isophthalic acid bis(2-ethylhexanoxyethyl)ester)、テレフタル酸とノルマルプロピルビニルエーテルとの付加反応物であるTPHA−NPOE(Terephthalic acid bis(propoxyethyl)ester)、コハク酸とイソブチルビニルエーテルとの付加反応物であるSCA−IBOE(Succinic acid bis(isobutoxyethyl)ester)、トリメリット酸とイソブチルビニルエーテルとの付加反応物であるTMTA−IBOE(Trimellitic acid tris(isobutoxyethyl)ester)等が挙げられる。
【0034】
ブロックカルボン酸の分解温度は、120℃以上150℃以下が好ましく、120℃以上145℃以下がより好ましく、120℃以上140℃以下が更に好ましい。
金型の清掃作業は、作業効率(例えば、作業時間の短縮)の観点から、封止製品の成形温度と同程度の温度にて行うことが望ましい。一方、本発明の樹脂組成物では、清掃の際の金型温度でブロックカルボン酸の分解し、生成したカルボン酸がメラミン系樹脂の硬化触媒として機能することで、樹脂組成物の硬化が促進される。
ブロックカルボン酸の分解温度が、上記範囲内であると、封止製品の成形を低温条件(例えば、130℃)で行った場合であっても、封止製品の成形後に、金型の温度を大きく変化させることなく、金型の清掃作業が可能となるため、作業効率に優れる。
ブロックカルボン酸の分解温度は、TG−DTA(示差熱−熱重量分析)により確認できる。
【0035】
本発明の樹脂組成物は、ブロックカルボン酸を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0036】
本発明の樹脂組成物におけるブロックカルボン酸の含有量は、特に制限されない。
ブロックカルボン酸の含有量は、例えば、メラミン系樹脂〔後述の充填材を含む場合は、メラミン系樹脂及び充填材(即ち、有機充填材及び無機充填材)の合計〕100質量部に対して、0.01質量部以上5質量部以下が好ましく、0.01質量部以上3質量部以下がより好ましく、0.01質量部以上1質量部以下が更に好ましい。
ブロックカルボン酸の含有量が、メラミン系樹脂〔充填材を含む場合は、メラミン系樹脂及び充填材(即ち、有機充填材及び無機充填材)の合計〕100質量部に対して0.01質量部以上であると、樹脂組成物の硬化性がより向上し得る。
ブロックカルボン酸の含有量が多いと、ブロックカルボン酸の分解により生成するカルボン酸の量が多くなるため、樹脂組成物の硬化速度が速くなる。樹脂組成物の硬化速度が速すぎると、樹脂組成物が成形金型の内部の隅々まで行き渡る前にメラミン系樹脂が流動性を失い、十分な清掃を行えない虞がある。
ブロックカルボン酸の含有量が、メラミン系樹脂〔充填材を含む場合は、メラミン系樹脂及び充填材(即ち、有機充填材及び無機充填材)の合計〕100質量部に対して5質量部以下であると、樹脂組成物の硬化速度が過度に速くなることが抑制されるため、樹脂組成物を成形金型の内部の隅々まで良好に行き渡らせることができる。そのため、樹脂組成物が優れた清掃性能をより確実に発揮し得る。
【0037】
(ブロックカルボン酸の調製方法)
ブロックカルボン酸の調製方法は、特に制限されない。
ブロックカルボン酸は、カルボン酸とビニルエーテルとを付加反応させることにより調製できる。
付加反応の反応条件は、特に制限されない。
例えば、ブロックカルボン酸は、カルボン酸とビニルエーテルとを、25℃〜100℃の温度で、1時間〜24時間反応させることにより調製できる。
【0038】
カルボン酸とビニルエーテルとを付加反応させる際の仕込み量比は、カルボン酸がモノカルボン酸である場合には、カルボン酸1当量に対して、1当量〜3当量が好ましく、カルボン酸がジカルボン酸である場合には、カルボン酸1当量に対して、2当量〜6当量が好ましく、カルボン酸がトリカルボン酸である場合には、カルボン酸1当量に対して、3当量〜9当量が好ましい。
【0039】
カルボン酸とビニルエーテルとの付加反応により、ブロックカルボン酸が得られたことは、例えば、NMR法(核磁気共鳴分光法)、HPLC(高速液体クロマトグラフ)等の方法により確認できる。
【0040】
<充填材>
本発明の樹脂組成物は、充填材を含むことが好ましい。
本発明の樹脂組成物が充填材を含むと、樹脂組成物の成形物の強度が適切に保たれるため、清掃後、成形金型から樹脂組成物の成形物を取り除く際の作業性が向上し得る。
充填材は、有機充填材及び無機充填材のいずれであってもよい。
【0041】
(有機充填材)
有機充填材としては、パルプ、木粉、合成繊維等が挙げられる。
これらの中でも、有機充填材としては、パルプが特に好ましい。
パルプとしては、木材パルプ(針葉樹パルプ、広葉樹パルプ等)、非木材パルプ(藁、竹、バガス、綿等)などが挙げられる。これらのパルプは、化学パルプ及び機械パルプのいずれであってもよい。
【0042】
本発明の樹脂組成物が有機充填材としてパルプを含む場合、パルプは、メラミン系樹脂で含浸処理したパルプとして用いられることが好ましい。
メラミン系樹脂で含浸処理したパルプでは、メラミン系樹脂の少なくとも一部がパルプの繊維の間隙に入り込んだ状態となっているか、或いは、メラミン系樹脂の少なくとも一部がパルプの繊維の表面の一部又は全部を被覆した状態となっている。
メラミン系樹脂で含浸処理したパルプは、メラミン系樹脂を含む水溶液にパルプを含浸した後、乾燥させることにより得られる。
【0043】
パルプの大きさは、特に制限されない。
パルプの大きさは、例えば、繊維長で5μm以上1000μm以下が好ましく、10μm以上200μm以下がより好ましい。
パルプの大きさが上記範囲内であると、樹脂組成物の成形物の強度がより適切に保たれるため、清掃後、成形金型から樹脂組成物の成形物を取り除く際の作業性がより向上し得る。また、パルプの大きさが上記範囲内であると、樹脂組成物の流動性がより適正なものとなる傾向がある。
パルプの繊維長は、ISO16065−2に対応するJIS P8226−2の規定に準拠した方法により測定される値である。
【0044】
パルプとしては、市販品を使用できる。
パルプの市販品の例としては、日本製紙(株)の「NSPP1」(商品名、針葉樹パルプ)、「LDPT」(商品名、広葉樹パルプ)等が挙げられる。
【0045】
本発明の樹脂組成物が有機充填材を含む場合、有機充填材を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0046】
本発明の樹脂組成物が有機充填材を含む場合、有機充填材の含有量は、特に制限されないが、例えば、樹脂組成物の全固形分100質量部に対して、2質量部以上50質量部以下が好ましく、2質量部以上15質量部以下がより好ましい。
有機充填材の含有量が上記範囲内であると、樹脂組成物の成形物の強度がより適切に保たれるため、清掃後、成形金型から樹脂組成物の成形物を取り除く際の作業性がより向上し得る。また、有機充填材の含有量が上記範囲内であると、樹脂組成物の流動性がより適正なものとなる傾向がある。
【0047】
(無機充填材)
無機充填材は、樹脂組成物の成形物の適切な強度の保持による作業性の向上のみならず、成形金型の内部表面への物理的な研磨作用による清掃性能の向上にも寄与し得る。
無機充填材としては、炭化ケイ素、酸化ケイ素(シリカ)、炭化チタン、酸化チタン、炭化ホウ素、酸化ホウ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。
これらの中でも、無機充填材としては、樹脂組成物を調製する際にメラミン系樹脂と良好に混合できるとの観点から、炭化ケイ素、酸化ケイ素(シリカ)、炭化チタン、酸化チタン、炭化ホウ素、酸化ホウ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、及び酸化カルシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、酸化ケイ素(シリカ)及び酸化チタンがより好ましい。
成形金型の材質及び状態にもよるため一概には言えないが、酸化ケイ素(シリカ)及び酸化チタンは、硬度が適当であり、成形金型の内部表面及びゲート部分の磨耗、並びに傷つきの発生を抑制できる点でより好ましい。
【0048】
なお、上記にて例示した無機充填材の硬度(所謂、新モース硬度)は、炭化ケイ素が13、酸化ケイ素(シリカ)が8、炭化チタンが9、酸化チタンが8、炭化ホウ素が14、酸化ホウ素が3、酸化アルミニウムが12、酸化マグネシウムが4、及び酸化カルシウムが3である。
【0049】
無機充填材としては、市販品を使用できる。
無機充填材の市販品の例としては、新日鉄住金マテリアルズ(株)マイクロンカンパニーの「S440−4」、「HS−202」、「HS−204」、「UF−320」(いずれも商品名、非晶質シリカ)、瀬戸窯業原料(株)の純硅石粉(商品名、結晶質シリカ)等が挙げられる。
【0050】
本発明の樹脂組成物が無機充填材を含む場合、無機充填材を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0051】
本発明の樹脂組成物が無機充填材を含む場合、無機充填材の含有量は、特に制限されないが、例えば、樹脂組成物の全固形分100質量部に対して、10質量部以上30質量部以下が好ましく、15質量部以上25質量部以下がより好ましい。
無機充填材の含有量が上記範囲内であると、樹脂組成物の成形物の強度がより適切に保たれるため、清掃後、成形金型から樹脂組成物の成形物を取り除く際の作業性がより向上し得る。また、無機充填材の含有量が上記範囲内であると、樹脂組成物の流動性がより適正なものとなる傾向がある。
【0052】
<金属石鹸>
本発明の樹脂組成物は、金属石鹸を含むことが好ましい。
本発明の樹脂組成物が金属石鹸を含むと、成形金型を清掃する際に樹脂組成物の流動性が向上し、メラミン系樹脂が成形金型の内部表面に存在し得る汚れに作用しやすくなるため、樹脂組成物がより優れた清掃性能を発揮し得る。また、本発明の樹脂組成物が金属石鹸を含むと、樹脂組成物と、成形金型の内部表面に存在し得る汚れとの親和性が高まるため、樹脂組成物がより優れた清掃性能を発揮し得る。
【0053】
金属石鹸は、特に制限されず、例えば、脂肪酸と金属とから構成される脂肪酸金属塩が挙げられる。
脂肪酸金属塩を構成する脂肪酸は、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸のいずれであってもよいが、好ましくは飽和脂肪酸である。
脂肪酸金属塩を構成する脂肪酸の炭素数は、特に制限されないが、例えば、12〜20が好ましく、14〜18がより好ましい。
炭素数12〜20の脂肪酸としては、具体的には、炭素数12のラウリン酸(IUPAC名:ドデカン酸)、炭素数14のミリスチン酸(IUPAC名:テトラデカン酸)、炭素数16のパルミチン酸(IUPAC名:ヘキサデカン酸)、炭素数18のステアリン酸(IUPAC名:オクタデカン酸)、炭素数18のオレイン酸(IUPAC名:cis-9-オクタデカン酸)、炭素数20のアラキジン酸(IUPAC名:エイコサン酸)等が挙げられる。
脂肪酸金属塩を構成する金属は、特に制限されないが、例えば、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、及びカルシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属が好ましく、亜鉛がより好ましい。
【0054】
脂肪酸金属塩の具体例としては、ステアリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、オレイン酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、モンタン酸カリウム、ラウリン酸リチウム等が挙げられる。
【0055】
本発明の樹脂組成物が金属石鹸を含む場合、金属石鹸を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0056】
本発明の樹脂組成物が金属石鹸を含む場合、金属石鹸の含有量は、特に制限されないが、例えば、メラミン系樹脂〔充填材を含む場合は、メラミン系樹脂及び充填材(即ち、有機充填材及び無機充填材)の合計〕100質量部に対して、0.1質量部以上5.0質量部以下が好ましく、0.1質量部以上3.5質量部以下がより好ましい。
金属石鹸の含有量が、メラミン系樹脂〔充填材を含む場合は、メラミン系樹脂及び充填材(即ち、有機充填材及び無機充填材)の合計〕100質量部に対して0.1質量部以上であると、成形金型を清掃する際に樹脂組成物の流動性がより向上し、メラミン系樹脂が成形金型の内部表面に存在し得る汚れにより作用しやすくなるため、樹脂組成物がより優れた清掃性能を発揮し得る。また、金属石鹸の含有量が、メラミン系樹脂〔充填材を含む場合は、メラミン系樹脂及び充填材(即ち、有機充填材及び無機充填材)の合計〕100質量部に対して0.1質量部以上であると、樹脂組成物と、成形金型の内部表面に存在し得る汚れとの親和性がより高まるため、樹脂組成物がより優れた清掃性能を発揮し得る。
【0057】
メラミン系樹脂を含む樹脂組成物が金属石鹸を過剰に含むと、余剰の金属石鹸が成形金型に残って成形金型を汚染することがある。
金属石鹸の含有量が、メラミン系樹脂〔充填材を含む場合は、メラミン系樹脂及び充填材(即ち、有機充填材及び無機充填材)の合計〕100質量部に対して5.0質量部以下であると、余剰の金属石鹸に起因する成形金型の汚染を抑制し得る。
【0058】
<滑剤>
本発明の樹脂組成物は、滑剤(但し、既述の金属石鹸に該当するものを除く。)を含むことが好ましい。
本発明の樹脂組成物において、滑剤は、樹脂組成物を調製する際における各成分の分散性の向上及び成形金型を清掃する際における樹脂組成物の流動性の向上に寄与し得る。
【0059】
滑剤としては、脂肪酸アミド系滑剤、具体的には、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等の飽和又は不飽和モノアミド型滑剤、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド等の飽和又は不飽和ビスアミド型滑剤などが挙げられる。
【0060】
本発明の樹脂組成物が滑剤を含む場合、滑剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0061】
本発明の樹脂組成物が滑剤を含む場合、滑剤の含有量は、特に制限されないが、例えば、メラミン系樹脂〔充填材を含む場合は、メラミン系樹脂及び充填材(即ち、有機充填材及び無機充填材)の合計〕100質量部に対して、0.1質量部以上0.6質量部以下が好ましく、0.2質量部以上0.5質量部以下がより好ましい。
【0062】
<他の成分>
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、既述した成分以外の成分(所謂、他の成分)を含んでいてもよい。
他の成分としては、着色剤(例えば、染料及び顔料)、抗酸化剤等の各種添加剤が挙げられる。
【0063】
〔樹脂組成物の調製方法〕
本発明の樹脂組成物の調製方法は、特に制限されない。
本発明の樹脂組成物は、例えば、メラミン系樹脂と、ブロックカルボン酸と、必要に応じて、充填材、金属石鹸、滑剤等の任意成分と、を混合することにより調製できる。
混合方法としては、特に制限されず、ニーダー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、ボールミル、ロール練り機、らいかい機、タンブラー等の公知の混合機を用いる混合方法が挙げられる。
【0064】
〔用途〕
本発明の樹脂組成物は、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、及びフェノール樹脂に代表される熱硬化性樹脂を含む封止成形材料に由来する汚れを、成形金型の内部表面から取り除くために好適に用いられる。
本発明の樹脂組成物は、トランスファー成形されることにより成形金型の内部表面を清掃する、所謂、トランスファータイプの金型清掃用樹脂組成物として、特に好適である。
【0065】
〔金型清掃方法〕
本発明の樹脂組成物は、通常、タブレット状に加工して、成形金型の内部表面の清掃作業に用いられる。
具体的には、成形金型の上にリードフレームを配置した後、タブレット状の樹脂組成物をポット部に挿入し、型締めした後、プランジャーで押し流す。この際、ポット部の樹脂組成物は、ランナー部を経由し、ゲート部を通り、キャビティ内部に流れ込む。所定の成形時間が経過した後、金型を開き、リードフレームと一体となった成形物、即ち、汚れを含む樹脂組成物の成形物を取り除くことにより、成形金型の内部表面を清掃する。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0067】
[メラミン系樹脂の調製]
〔製造例A:パルプ含有メラミン−フェノール共縮合樹脂〕
メラミン346質量部と、フェノール131質量部と、ホルムアルデヒド(37質量%水溶液)522質量部と、を70℃〜100℃にて1時間加熱反応させ、メラミン−フェノール共縮合樹脂を含む水溶液を得た。得られたメラミン−フェノール共縮合樹脂を含む水溶液に、有機充填材として、広葉樹パルプ(商品名:LDPT、日本製紙(株))248質量部を加えて混練した後、減圧乾燥し、粉末化して、パルプ含有メラミン−フェノール共縮合樹脂(パルプ含有率:28質量%)を得た。
【0068】
〔製造例B:パルプ含有メラミン−ホルムアルデヒド樹脂〕
メラミン480質量部と、ホルムアルデヒド(37質量%水溶液)522質量部と、を70℃〜100℃にて1時間加熱反応させ、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂を含む水溶液を得た。得られたメラミン−ホルムアルデヒド樹脂を含む水溶液に、有機充填材として、針葉樹パルプ(商品名:NSPP1、日本製紙(株))248質量部を加えて混練した後、減圧乾燥し、粉末化して、パルプ含有メラミン−ホルムアルデヒド樹脂(パルプ含有率:28質量%)を得た。
【0069】
[ブロックカルボン酸の調製]
〔製造例1:BZA−IPOE〕
反応器内に、安息香酸(和光純薬工業(株)、モノカルボン酸)1当量と、イソプロピルビニルエーテル(日本カーバイド工業(株))1当量と、を加えて、55℃〜100℃にて4時間反応させた。次いで、分液抽出及び減圧留去により、溶媒及び未反応の化合物を除き、ブロックカルボン酸であるBZA−IPOE(Benzoic acid isopropoxyethylester)〔安息香酸とイソプロピルビニルエーテルとの付加反応物〕を得た。
BZA−IPOEが得られたことは、NMR法(核磁気共鳴分光法)及びHPLC(高速液体クロマトグラフ)により確認した。また、得られたBZA−IPOEの分解温度をTG−DTA(示差熱−熱重量分析)により確認したところ、120℃〜150℃の範囲であった。
【0070】
〔製造例2:OTLA−NBOE〕
反応器内に、o−トルイル酸(和光純薬工業(株)、モノカルボン酸)1当量と、ノルマルブチルビニルエーテル(日本カーバイド工業(株))1当量と、を加えて、55℃〜100℃にて4時間反応させた。次いで、分液抽出及び減圧留去により、溶媒及び未反応の化合物を除き、ブロックカルボン酸であるOTLA−NBOE(ortho-Toluic acid butoxyethylester)〔o−トルイル酸とノルマルブチルビニルエーテルとの付加反応物〕を得た。
OTLA−NBOEが得られたことは、NMR法(核磁気共鳴分光法)及びHPLC(高速液体クロマトグラフ)により確認した。また、得られたOTLA−NBOEの分解温度をTG−DTA(示差熱−熱重量分析)により確認したところ、120℃〜150℃の範囲であった。
【0071】
〔製造例3:OTLA−IBOE〕
反応器内に、o−トルイル酸(和光純薬工業(株)、モノカルボン酸)1当量と、イソブチルビニルエーテル(日本カーバイド工業(株))1当量と、を加えて、55℃〜100℃にて4時間反応させた。次いで、分液抽出及び減圧留去により、溶媒及び未反応の化合物を除き、ブロックカルボン酸であるOTLA−IBOE(ortho-Toluic acid isobutoxyethylester)〔o−トルイル酸とイソブチルビニルエーテルとの付加反応物〕を得た。
OTLA−IBOEが得られたことは、NMR法(核磁気共鳴分光法)及びHPLC(高速液体クロマトグラフ)により確認した。また、得られたOTLA−IBOEの分解温度をTG−DTA(示差熱−熱重量分析)により確認したところ、120℃〜150℃の範囲であった。
【0072】
〔製造例4:OTLA−CHOE〕
反応器内に、o−トルイル酸(和光純薬工業(株)、モノカルボン酸)1当量と、シクロヘキシルビニルエーテル(日本カーバイド工業(株))1当量と、を加えて、55℃〜100℃にて4時間反応させた。次いで、分液抽出及び減圧留去により、溶媒及び未反応の化合物を除き、ブロックカルボン酸であるOTLA−CHOE(ortho-Toluic acid Cyclohexylethylester)〔o−トルイル酸とシクロヘキシルビニルエーテルとの付加反応物〕を得た。
OTLA−CHOEが得られたことは、NMR法(核磁気共鳴分光法)及びHPLC(高速液体クロマトグラフ)により確認した。また、得られたOTLA−CHOEの分解温度をTG−DTA(示差熱−熱重量分析)により確認したところ、120℃〜150℃の範囲であった。
【0073】
〔製造例5:APA−IBOE〕
反応器内に、アジピン酸(和光純薬工業(株)、ジカルボン酸)1当量と、イソブチルビニルエーテル(日本カーバイド工業(株))2当量と、を加えて、55℃〜100℃にて4時間反応させた。次いで、分液抽出及び減圧留去により、溶媒及び未反応の化合物を除き、ブロックカルボン酸であるAPA−IBOE(Adipic acid bis(isobutoxyethyl)ester)〔アジピン酸とイソブチルビニルエーテルとの付加反応物〕を得た。
APA−IBOEが得られたことは、NMR法(核磁気共鳴分光法)及びHPLC(高速液体クロマトグラフ)により確認した。また、得られたAPA−IBOEの分解温度をTG−DTA(示差熱−熱重量分析)により確認したところ、120℃〜150℃の範囲であった。
【0074】
〔製造例6:PTA−NPOE〕
反応器内に、フタル酸(和光純薬工業(株)、ジカルボン酸)1当量と、ノルマルプロピルビニルエーテル(日本カーバイド工業(株))2当量と、を加えて、55℃〜100℃にて4時間反応させた。次いで、分液抽出及び減圧留去により、溶媒及び未反応の化合物を除き、ブロックカルボン酸であるPTA−NPOE(Phthalic acid bis(propoxyethyl)ester)〔フタル酸とノルマルプロピルビニルエーテルとの付加反応物〕を得た。
PTA−NPOEが得られたことは、NMR法(核磁気共鳴分光法)及びHPLC(高速液体クロマトグラフ)により確認した。また、得られたPTA−NPOEの分解温度をTG−DTA(示差熱−熱重量分析)により確認したところ、120℃〜150℃の範囲であった。
【0075】
〔製造例7:IPHA−IBOE〕
反応器内に、イソフタル酸(和光純薬工業(株)、ジカルボン酸)1当量と、イソブチルビニルエーテル(日本カーバイド工業(株))2当量と、を加えて、55℃〜100℃にて4時間反応させた。次いで、分液抽出及び減圧留去により、溶媒及び未反応の化合物を除き、ブロックカルボン酸であるIPHA−IBOE(Isophthalic acid bis(isobutoxyethyl)ester)〔イソフタル酸とイソブチルビニルエーテルとの付加反応物〕を得た。
IPHA−IBOEが得られたことは、NMR法(核磁気共鳴分光法)及びHPLC(高速液体クロマトグラフ)により確認した。また、得られたIPHA−IBOEの分解温度をTG−DTA(示差熱−熱重量分析)により確認したところ、120℃〜150℃の範囲であった。
【0076】
〔製造例8:IPHA−EHOE〕
反応器内に、イソフタル酸(和光純薬工業(株)、ジカルボン酸)1当量と、2−エチルへキシルビニルエーテル(日本カーバイド工業(株))2当量と、を加えて、55℃〜100℃にて4時間反応させた。次いで、分液抽出及び減圧留去により、溶媒及び未反応の化合物を除き、ブロックカルボン酸であるIPHA−EHOE(Isophthalic acid bis(2-ethylhexanoxyethyl)ester)〔イソフタル酸と2−エチルへキシルビニルエーテルとの付加反応物〕を得た。
IPHA−EHOEが得られたことは、NMR法(核磁気共鳴分光法)及びHPLC(高速液体クロマトグラフ)により確認した。また、得られたIPHA−EHOEの分解温度をTG−DTA(示差熱−熱重量分析)により確認したところ、120℃〜150℃の範囲であった。
【0077】
〔製造例9:TPHA−NPOE〕
反応器内に、テレフタル酸(和光純薬工業(株)、ジカルボン酸)1当量と、ノルマルプロピルビニルエーテル(日本カーバイド工業(株))2当量と、を加えて、55℃〜100℃にて4時間反応させた。次いで、分液抽出及び減圧留去により、溶媒及び未反応の化合物を除き、ブロックカルボン酸であるTPHA−NPOE(Terephthalic acid bis(propoxyethyl)ester)〔テレフタル酸とノルマルプロピルビニルエーテルとの付加反応物〕を得た。
TPHA−NPOEが得られたことは、NMR法(核磁気共鳴分光法)及びHPLC(高速液体クロマトグラフ)により確認した。また、得られたTPHA−NPOEの分解温度をTG−DTA(示差熱−熱重量分析)により確認したところ、120℃〜150℃の範囲であった。
【0078】
〔製造例10:SCA−IBOE〕
反応器内に、コハク酸(和光純薬工業(株)、ジカルボン酸)1当量と、イソブチルビニルエーテル(日本カーバイド工業(株))2当量と、を加えて、55℃〜100℃にて4時間反応させた。次いで、分液抽出及び減圧留去により、溶媒及び未反応の化合物を除き、ブロックカルボン酸であるSCA−IBOE(Succinic acid bis(isobutoxyethyl)ester)〔コハク酸とイソブチルビニルエーテルとの付加反応物〕を得た。
SCA−IBOEが得られたことは、NMR法(核磁気共鳴分光法)及びHPLC(高速液体クロマトグラフ)により確認した。また、得られたSCA−IBOEの分解温度をTG−DTA(示差熱−熱重量分析)により確認したところ、120℃〜150℃の範囲であった。
【0079】
〔製造例11:TMTA−IBOE〕
反応器内に、トリメリット酸(和光純薬工業(株)、トリカルボン酸)1当量と、イソブチルビニルエーテル(日本カーバイド工業(株))3当量と、を加えて、55℃〜100℃にて4時間反応させた。次いで、分液抽出及び減圧留去により、溶媒及び未反応の化合物を除き、ブロックカルボン酸であるTMTA−IBOE(Trimellitic acid tris(isobutoxyethyl)ester)〔トリメリット酸とイソブチルビニルエーテルとの付加反応物〕を得た。
TMTA−IBOEが得られたことは、NMR法(核磁気共鳴分光法)及びHPLC(高速液体クロマトグラフ)により確認した。また、得られたTMTA−IBOEの分解温度をTG−DTA(示差熱−熱重量分析)により確認したところ、120℃〜150℃の範囲であった。
【0080】
[樹脂組成物の調製]
〔実施例1〕
メラミン系樹脂として、製造例Aのパルプ含有メラミン−フェノール共縮合樹脂30質量部(メラミン−フェノール共縮合樹脂として21.6質量部)及びメラミン−ホルムアルデヒド樹脂(商品名:ニカレヂン(登録商標)S−166、日本カーバイド工業(株))50質量部と、無機充填材として、酸化ケイ素(商品名:純硅石粉、結晶質シリカ、瀬戸窯業原料(株))20質量部と、金属石鹸として、ステアリン酸亜鉛(商品名:ジンクステアレート GF200、日油(株))0.5質量と、OTLA−NBOE(ortho-Toluic acid butoxyethylester)〔o−トルイル酸とノルマルブチルビニルエーテルとの付加反応物、製造例2〕0.17質量部と、をボールミルに仕込み、粉砕した。次いで、滑剤として、エチレンビスステアリン酸アミド(商品名:アルフロー(登録商標) H50T、日油(株))0.4質量部をナウターミキサーにて加え、撹拌することにより、実施例1の樹脂組成物を得た。
【0081】
〔実施例2〜実施例5〕
実施例1において、樹脂組成物の組成を表1に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例2〜実施例5の樹脂組成物を得た。
【0082】
〔実施例6〜実施例10〕
実施例1において、樹脂組成物の組成を表2に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例6〜実施例10の樹脂組成物を得た。
【0083】
〔実施例11〜実施例16〕
実施例1において、樹脂組成物の組成を表3に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例11〜実施例16の樹脂組成物を得た。
【0084】
〔実施例17〜実施例22〕
実施例1において、樹脂組成物の組成を表4に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例17〜実施例22の樹脂組成物を得た。
【0085】
〔実施例23〜実施例29〕
実施例1において、樹脂組成物の組成を表5に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例23〜実施例29の樹脂組成物を得た。
【0086】
〔比較例1〜比較例8〕
実施例1において、樹脂組成物の組成を表6に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較例1〜比較例8の樹脂組成物を得た。
【0087】
以上のようにして得られた樹脂組成物をタブレット成形して、評価に用いた。
【0088】
[評価]
1.流動性
流動性は、樹脂組成物の流れ性を示す一つの指標であり、スパイラルフロー長(流動長)の値により判断できる。本評価では、ASTM D−3123に準拠した方法により、樹脂組成物のスパイラルフロー長を測定した。具体的には、トランスファー成形機を用いて、ASTM D−3123に規定されたスパイラルフロー測定用金型の流路に、成形金型温度130℃、クランプ圧17.5Mpa、及びトランスファー圧1.96Mpaの条件で、樹脂組成物が注入された際のスパイラルフロー長を測定した。そして、測定したスパイラルフロー長の値に基づき、下記の評価基準に従って、樹脂組成物の低温(130℃)における流動性を評価した。
【0089】
スパイラルフロー長の値が大きいほど、樹脂組成物の流動性が高いことを示す。樹脂組成物の流動性が過度に高いか、又は、過度に低いと、樹脂組成物をプランジャーで押し流す際に、及び/又は、成形金型内の樹脂組成物を加圧する際に、不具合が生じ、成形金型の内部の隅々まで樹脂組成物を行き渡らせることができず、結果として、成形金型の内部の隅々まで十分に清掃できない。
下記の評価基準において、樹脂組成物の流動性が最も適正であるものは、「A」である。評価結果が、「A」、「B」、「C」、又は「D」であれば、実用上問題がない。
結果を表1〜表6に示す。
【0090】
−評価基準−
A:スパイラルフロー長が25インチ(635mm)以上35インチ(889mm)未満である。
B:スパイラルフロー長が20インチ(508mm)以上25インチ(635mm)未満である。
C:スパイラルフロー長が15インチ(381mm)以上20インチ(508mm)未満である。
D:スパイラルフロー長が10インチ(254mm)以上15インチ(381mm)未満である。
E:スパイラルフロー長が10インチ(254mm)未満であるか、又は、35インチ(889mm)以上である。
【0091】
2.硬化性
上記「1.流動性」の評価試験の際に、プランジャー内に残った樹脂組成物の硬化物(所謂、カル)を取り出し、取り出し後15秒以内に、硬化物のデュロメータD硬さをJIS K 7215−1986に準拠した方法により測定した。そして、測定したデュロメータD硬さの値に基づき、下記の評価基準に従って、樹脂組成物の低温(130℃)における硬化性を評価した。
デュロメータD硬さの値が大きいほど、樹脂組成物がより良好に硬化することを示し、下記の評価基準において、樹脂組成物の硬化性が最も優れるものは、「A」である。評価結果が、「A」、「B」、「C」、又は「D」であれば、実用上問題がない。
結果を表1〜表6に示す。
【0092】
−評価基準−
A:デュロメータD硬さが80以上である。
B:デュロメータD硬さが73以上80未満である。
C:デュロメータD硬さが66以上73未満である。
D:デュロメータD硬さが60以上66未満である。
E:デュロメータD硬さが60未満である。
【0093】
3.清掃性能
光学用の封止樹脂である市販のエポキシ樹脂成形材料(商品名:T−330HQ−10000、日東電工(株))を用い、トランスファー型自動成形機(金型温度:150℃、トランスファー圧:8MPa、トランスファー時間:60秒、硬化時間:240秒)にて、QFP(Quad Flat Package)を300ショット成形し、成形金型の内部表面に汚れを付着させた。
この汚れが付着した成形金型を用い、金型温度を130℃に下げるとともに、硬化時間を300秒としたこと以外は、上記のエポキシ樹脂成形材料の成形条件と同様にして、実施例及び比較例の各樹脂組成物を繰り返し成形し、金型の清掃を行った。そして、成形金型の内部表面に付着した汚れを完全に除去できるまでに要した成形回数(以下、「ショット数」ともいう。)を測定し、このショット数を、樹脂組成物の清掃性能を評価するための指標とした。汚れを完全に除去できたか否かは、目視にて確認し、判断した。
評価に際しては、特に、成形金型のキャビティのゲート部及びコーナー部に付着した汚れを除去できているかに注目した。今回の評価に用いた成形金型のキャビティのゲート部は、幅が800μmであり、高さが300μmである。なお、成形回数は、最大11回とした。
成形金型の内部表面に付着した汚れを完全に除去できるまでに要した繰り返し成形回数(ショット数)は、小さいほど清掃性能が優れていることを示し、下記の評価基準では、「A」が、樹脂組成物の清掃性能に最も優れる。評価結果が、「A」、「B」、「C」、又は「D」であれば、実用上問題がない。
結果を表1〜表6に示す。
【0094】
−評価基準−
A:成形金型の内部表面に付着した汚れを完全に除去できるまでに要した成形回数が5回以下であった。
B:成形金型の内部表面に付着した汚れを完全に除去できるまでに要した成形回数が6回又は7回であった。
C:成形金型の内部表面に付着した汚れを完全に除去できるまでに要した成形回数が8回又は9回であった。
D:成形金型の内部表面に付着した汚れを完全に除去できるまでに要した成形回数が10回又は11回であった。
E:成形を11回繰り返しても、成形金型の内部表面に付着した汚れを完全に除去できなかった。
【0095】
4.作業性
上記「3.清掃性能」の評価試験において、樹脂組成物を用いた金型清掃のショットごとに、成形金型の内部表面を目視にて観察し、樹脂組成物の成形物のチッピング(欠け)の有無及び数を確認し、1ショット当たりの平均チッピング個数を求めた。
例えば、成形金型の内部表面に付着した汚れを完全に除去できるまでに要した成形回数(即ち、ショット数)が5回であって、かつ、この5回のショット数で確認されたチッピング(欠け)の合計個数が5個であった場合には、1ショット当たりの平均チッピング個数は、1個となる。
下記の評価基準では、「A」が、樹脂組成物の作業性に最も優れる。評価結果が、「A」、「B」、「C」、又は「D」であれば、実用上問題がない。
結果を表1〜表6に示す。
【0096】
−評価基準−
A:1ショット当たりの平均チッピング個数が0個である。
B:1ショット当たりの平均チッピング個数が0個を超えて1個以下である。
C:1ショット当たりの平均チッピング個数が1個を超えて2個以下である。
D:1ショット当たりの平均チッピング個数が2個を超えて3個以下である。
E:1ショット当たりの平均チッピング個数が3個を超える。
【0097】
【表1】

【0098】
【表2】

【0099】
【表3】

【0100】
【表4】

【0101】
【表5】

【0102】
【表6】

【0103】
表1〜表6中、組成の欄に記載の「−」は、該当する成分を含まないことを意味する。
表1〜表6中、金属石鹸、滑剤、ブロックカルボン酸、カルボン酸、及びビニルエーテルの組成の欄の数値は、メラミン系樹脂及び充填材(無機充填材+有機充填材)の合計100質量部に対する量(質量部)を示す。
表2に記載の実施例2は、対比のために記載したものであり、表1に記載の実施例2と同じものである。
【0104】
表1〜表6に記載の成分の詳細は、以下に示す通りである。
<メラミン系樹脂+有機充填材>
・パルプ含有メラミン−フェノール共縮合樹脂(製造例A)
・パルプ含有メラミン−ホルムアルデヒド樹脂(製造例B)
<メラミン系樹脂>
・メラミン−ホルムアルデヒド樹脂(商品名:ニカレヂン(登録商標) S−166、日本カーバイド工業(株))
<無機充填材>
・酸化ケイ素(商品名:純硅石粉、結晶質シリカ、瀬戸窯業原料(株))
<金属石鹸>
・ステアリン酸亜鉛(商品名:ジンクステアレート GF200、日油(株))
・ミリスチン酸亜鉛(商品名:パウダーベースM、日油(株))
<滑剤>
・エチレンビスステアリン酸アミド(商品名:アルフロー(登録商標) H50T、日油(株))
・エルカ酸アミド(商品名:アルフロー(登録商標) P10、日油(株))
【0105】
<カルボン酸>
・安息香酸(BZA)〔和光純薬工業(株)、モノカルボン酸〕
・o−トルイル酸(OTLA)〔和光純薬工業(株)、モノカルボン酸〕
・ベヘン酸〔和光純薬工業(株)、モノカルボン酸〕
・フタル酸(PTA)〔和光純薬工業(株)、ジカルボン酸〕
・イソフタル酸(IPHA)〔和光純薬工業(株)、ジカルボン酸〕
・トリメリット酸(TMTA)〔和光純薬工業(株)、トリカルボン酸〕
<ビニルエーテル>
・ノルマルプロピルビニルエーテル(NPVE)〔日本カーバイド工業(株)〕
・ノルマルブチルビニルエーテル(NBVE)〔日本カーバイド工業(株)〕
・イソブチルビニルエーテル(IBVE)〔日本カーバイド工業(株)〕
【0106】
表1〜表5に示すように、実施例1〜実施例29の樹脂組成物は、低温条件(130℃)で使用した場合でも、適正な流動性を示し、かつ、良好に硬化し、清掃性能に優れていた。また、実施例1〜実施例29の樹脂組成物は、低温条件(130℃)で使用した場合でも、チッピングが生じ難く、作業性に優れていた。
【0107】
一方、カルボン酸であるo−トルイル酸(OTLA)及びビニルエーテルであるイソブチルビニルエーテル(IBVE)を含む比較例1の樹脂組成物は、o−トルイル酸(OTLA)とイソブチルビニルエーテル(IBVE)との付加反応物であるブロックカルボン酸(即ち、OTLA−IBOE)を含む実施例6の樹脂組成物と比較して、硬化性に劣っていた。また、比較例1の樹脂組成物は、適正な流動性を示さなかった。また、比較例1の樹脂組成物は、実施例6の樹脂組成物と比較して、清掃性能に劣っていた。また、比較例1の樹脂組成物は、チッピングが生じやすく、実施例6の樹脂組成物と比較して、作業性に劣っていた。
カルボン酸であるフタル酸(PTA)及びビニルエーテルであるノルマルプロピルビニルエーテル(NPVE)を含む比較例2の樹脂組成物は、フタル酸(PTA)とノルマルプロピルビニルエーテル(NPVE)との付加反応物であるブロックカルボン酸(即ち、PTA−NPOE)を含む実施例17及び実施例18の樹脂組成物と比較して、硬化性に劣っていた。また、比較例2の樹脂組成物は、実施例17及び実施例18の樹脂組成物と比較して、清掃性能に劣っていた。また、比較例2の樹脂組成物は、適正な流動性を示さなかった。また、比較例2の樹脂組成物は、チッピングが生じやすく、実施例17及び実施例18の樹脂組成物と比較して、作業性にも劣っていた。
カルボン酸であるイソフタル酸(IPHA)及びビニルエーテルであるノルマルブチルビニルエーテル(NBVE)を含む比較例3の樹脂組成物は、適正な流動性を示さなかった。また、比較例3の樹脂組成物は、清掃性能が悪かった。
カルボン酸であるトリメリット酸(TMTA)及びビニルエーテルであるイソブチルビニルエーテル(IBVE)を含む比較例4の樹脂組成物は、適正な流動性を示さなかった。また、比較例4の樹脂組成物は、トリメリット酸(TMTA)とイソブチルビニルエーテル(IBVE)との付加反応物であるブロックカルボン酸(即ち、TMTA−IBOE)を含む実施例26の樹脂組成物と比較して、硬化性に劣る傾向を示した。また、比較例4の樹脂組成物は、実施例26の樹脂組成物と比較して、チッピングが生じやすく、作業性に劣る傾向を示した。
【0108】
ブロックカルボン酸の代わりに、ビニルエーテルを含む比較例5及び比較例6の樹脂組成物は、適正な流動性を示さなかった。また、比較例5及び比較例6の樹脂組成物は、硬化性が悪かった。また、比較例5及び比較例6の樹脂組成物は、清掃性能が悪かった。また、比較例5及び比較例6の樹脂組成物は、チッピングが生じやすく、作業性が悪かった。
ブロックカルボン酸の代わりに、カルボン酸を含む比較例7及び比較例8の樹脂組成物は、清掃性能が悪かった。また、比較例7及び比較例8の樹脂組成物は、清掃性能が悪かった。