(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シルクフィブロイン発泡体が、組織に注射すると、少なくとも約2週間、少なくとも約6週間、少なくとも約3か月または少なくとも約6か月、軟部組織内でその当初の膨張時容量の少なくとも約50%を保持する、請求項1記載の注射可能な組成物。
前記シルクフィブロイン発泡体が、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%の多孔度を有する、請求項1記載の注射可能な組成物。
【発明を実施するための形態】
【0030】
発明の詳細な説明
本明細書には、対象の組織を修復または増強するための方法、組成物、送達デバイスおよびキットが記載されている。本明細書に記載される様々な局面の態様にしたがい、可逆的に変形可能および/または注射可能な形式のシルクフィブロインスキャホールド(例えば、シルクフィブロイン発泡体)が、(例えば、より小さな容量に)圧縮され、そして修復または増強したい組織に(例えば、注射によって)設置され得る。組織に設置(例えば、注射)されると、圧縮されたシルクフィブロインマトリックスは、容量を膨張させ(例えば、その圧縮時容量の少なくとも約10%の容量の増加)、そして一定期間(例えば、少なくとも約2週間またはそれ以上)、修復または増強したい組織内でその当初の膨張時容量の少なくとも一部分(例えば、その当初の膨張時容量の少なくとも約50%またはそれ以上)を保持する。そのような可逆的に変形可能および/または注射可能なシルクフィブロインマトリックスは、最小の侵襲性の手順で欠損部位に導入され得る。
【0031】
シルクフィブロインマトリックス
本明細書に記載されるシルクフィブロインマトリックスは、変形可能である。シルクフィブロインマトリックスは、修復または増強したい組織に設置(例えば、注射)する前および/またはその間に圧縮され得る。組織に設置(例えば、注射)されると、圧縮されたシルクフィブロインマトリックスは組織内で膨張し、そして一定期間、組織内でその当初の膨張時容量を保持し得る。
【0032】
本明細書で使用される場合、「変形可能」という用語は、概ね、ある物体が、外部からの圧/力に応じて、その物体の完全性を維持しつつ、サイズ(例えば、容量)および/または形状を変化させる能力を表す(すなわち、その物体は、変形中、破片に分解することなく全体としてインタクトなままであり、そしてその当初のサイズおよび形状の少なくとも一部分を回復させる能力を有する)。変形可能なシルクフィブロインマトリックスの場合、シルクフィブロインマトリックスは、適用された力によって圧縮される際、そのシルクフィブロインマトリックスが未圧縮のシルクフィブロインマトリックスのそれよりもずっと小さな寸法を有する注射用アプリケーター(例えば、針、カニューレもしくはカテーテル)にロードされる程度に十分に小さくなる(しかし、インタクトなままである)よう、および/またはそのシルクフィブロインマトリックスが注射用アプリケーターの断面形状に適合して圧縮されるよう、その容量を減少させおよび/またはその形状を変化させ得る。
【0033】
本明細書で使用される場合、「圧縮」という用語は、概ね、シルクフィブロインマトリックスの容量の減少を表す。いくつかの態様において、シルクフィブロインマトリックスの容量の減少はまた、シルクフィブロインマトリックスの1つまたは複数の物理的特性の変化、例えば、シルクフィブロインマトリックスの(圧縮前の)当初の密度の増加、シルクフィブロインマトリックスの(圧縮前の)当初の孔サイズおよび/または(圧縮前の)当初の多孔度の減少、をもたらし得る。シルクフィブロインマトリックスの既定容量への圧縮は、当技術分野の任意の公知の方法によって、例えば、シルクフィブロインマトリックスを送達用アプリケーター(例えば、針、カニューレもしくはカテーテル)の内部空間に物理的にロードすることによって、または真空によって、行うことができる。
【0034】
いくつかの態様において、シルクフィブロインマトリックスは、その当初の容量(すなわち、圧縮前のシルクフィブロインマトリックスの容量)の70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下またはそれ未満を含む、その当初の容量(すなわち、圧縮前のシルクフィブロインマトリックスの容量)の80%以下の容量に圧縮され得る。いくつかの態様において、シルクフィブロインマトリックスは、その当初の容量(すなわち、圧縮前のシルクフィブロインマトリックスの容量)の少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%またはそれ以上を含むが100%ではない、その当初の容量(すなわち、圧縮前のシルクフィブロインマトリックスの容量)の少なくとも約10%の容量に圧縮され得る。いくつかの態様において、約1%〜約6%の濃度のシルクフィブロイン溶液から製作されたシルクフィブロインマトリックス、例えばシルクフィブロイン発泡体は、それらの当初の容量のおよそ20%〜30%に圧縮され得る。シルクフィブロインマトリックスの破壊または恒久的変形なしに実現可能な圧縮量は、例えば、物質的特性、シルクフィブロイン濃度ならびに/または製作/処理の方法およびパラメータに依存する。いくつかの態様において、より高分子量のマトリックスまたはその他の改善された処理が、シルクフィブロインベースのマトリックスのより高レベルの圧縮、例えば、その当初の容量の20%未満に圧縮されたシルクフィブロインベースのマトリックス、をもたらし得る。
【0035】
いくつかの態様において、シルクフィブロインマトリックスは、シルクフィブロインマトリックスの当初の密度(例えば、未圧縮時容量に対する重量の比)を、例えば、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約1倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍またはそれ以上を含む、少なくとも約10%増加させる容量に圧縮され得る。
【0036】
圧縮されたシルクフィブロインマトリックスが送達用アプリケーター(例えば、注射用アプリケーター)から放出され組織に設置(例えば、注射)された後、シルクフィブロインマトリックスは、圧縮ストレスの除去、組織の空隙のサイズ、組織およびシルクフィブロインマトリックスの機械的特性ならびにそれらの任意の組み合わせに応じて膨張し得る。いくつかの態様において、圧縮されたシルクフィブロインマトリックスは、そのシルクフィブロインマトリックスの当初の容量(すなわち、圧縮前のシルクフィブロインマトリックスの容量)に膨張および回復し得る。いくつかの態様において、圧縮されたシルクフィブロインマトリックスは、修復または増強したい組織の空隙を満たすのに十分なサイズに膨張し得る。いくつかの態様において、シルクフィブロインマトリックスは、シルクフィブロインマトリックスとシルクフィブロインマトリックスを取り囲む組織が均等な力で相互に押し合うサイズに膨張し得る。特定の態様において、圧縮されたシルクフィブロインマトリックスは、修復または増強したい組織に設置(例えば、注射)されると、当初の容量(すなわち、圧縮前のシルクフィブロインマトリックスの容量)の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または最大100%の容量のサイズに膨張し得る。いくつかの態様において、圧縮されたシルクフィブロインマトリックスは、修復または増強したい組織に設置(例えば、注射)されると、その容量を、圧縮時容量(例えば、送達用アプリケーター、例えば注射用アプリケーター、例えば針、カニューレまたはカテーテル内で圧縮されたシルクフィブロインマトリックスの容量)と比較して、少なくとも約1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍またはそれ以上膨張させ得る。そのような態様において、学説による制約を望まないが、シルクフィブロインマトリックスは、一部、シルクフィブロインマトリックスが周囲組織から湿気または水分を吸収し自身を膨潤させることにより、その当初の容量を超えて膨張し得る。
【0037】
いくつかの態様において、別の見方をすると、圧縮されたシルクフィブロインマトリックスは、その容量を、圧縮されたシルクフィブロインマトリックスの容量に対して、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍またはそれ以上膨張させ得る。
【0038】
プラトー容量まで到達する組織内でのシルクフィブロインマトリックスの膨張は、自然発生的なもの(例えば、5秒以内もしくはそれ未満)または一定期間、例えば数秒間、数分間および数時間、にわたって起こるものであり得る。いくつかの態様において、シルクフィブロインマトリックスの容量の少なくとも約50%の増加は、組織へのシルクフィブロインマトリックスの注射から3時間以内、2時間以内、1時間以内、30分以内、20分以内、10分以内、5分以内またはそれより短い間に起こり得、シルクフィブロインマトリックスの容量の残りの増加はそれよりずっと長い時間規模で起こり得る。組織内でのシルクフィブロインマトリックスの膨張率は、水和状態、圧、空隙部の容量ならびにシルクの物質的特性、発泡体の構造的特性(多孔度を含む)および流体と構造の間の相互作用を含むがこれらに限定されないいくつかの要因に依存し得る。例えば、シルクフィブロインマトリックス(例えば、シルクフィブロイン発泡体)が、流体で満たされた空隙に注射される場合、その膨張は迅速であり得る。乾燥状態のシルクフィブロインマトリックス(例えば、乾燥状態のシルクフィブロイン発泡体)が注射される場合、それよりずっと遅い、例えば数分〜数時間の、水和および膨張が起こると考えられる。
【0039】
シルクフィブロインマトリックスが組織への注射により膨張した後、シルクフィブロインマトリックスは、少なくとも一定期間(例えば、少なくとも約2週間、少なくとも約4週間、少なくとも約6週間またはそれ以上)、組織内でその当初の膨張時容量の少なくとも一部分(例えば、少なくとも約50%またはそれ以上)を保持し得る。
【0040】
本明細書に記載されるシルクフィブロインマトリックスを参照して言う「当初の膨張時容量」は、概ね、修復または増強したい組織内への注射により膨張した後に測定されるシルクフィブロインマトリックスの容量、またはシルクフィブロインマトリックスが注射により膨張した後に測定される対応する組織容量の増加、を意味する。例えば、シルクフィブロインマトリックスの当初の膨張時容量は、例えば、組織へのシルクフィブロインマトリックスまたは注射可能な組成物の注射後、少なくとも約72時間、少なくとも約48時間、少なくとも約24時間、少なくとも約12時間、少なくとも約6時間、少なくとも約3時間またはそれ未満の間、シルクフィブロインマトリックスの容量に有意な増加が見られない場合に直ちに測定され得る。別の見方をすると、シルクフィブロインマトリックスの当初の膨張時容量は、組織へのシルクフィブロインマトリックスまたは注射可能な組成物の注射後、少なくとも約72時間、少なくとも約48時間、少なくとも約24時間、少なくとも約12時間、少なくとも約6時間、少なくとも約3時間またはそれ未満の間、組織容量に有意な増加が見られない場合に直ちに(シルクフィブロインマトリックスの膨張に起因する)対応する組織容量の増加を測定することによって決定され得る。いくつかの態様において、当初の膨張時容量は、シルクフィブロインマトリックスの当初の容量(すなわち、圧縮前のシルクフィブロインマトリックスの容量)を表し得る。
【0041】
本明細書で使用される場合、「保持」という用語は、一定期間にわたる、本明細書に記載されるシルクフィブロインマトリックスの容量(例えば、サイズおよび/または形状)の維持を表す。いくつかの態様において、シルクフィブロインマトリックスは、一定期間にわたり、例えばその当初の膨張時容量の少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%またはそれ以上を含む、その当初の膨張時容量の少なくとも約20%を保持し得る。いくつかの態様において、シルクフィブロインマトリックスは、一定期間にわたり、例えばその当初の膨張時容量の少なくとも約3%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%またはそれ以上を含む、その当初の膨張時容量の少なくとも約1%を保持し得る。いくつかの態様において、シルクフィブロインマトリックスは、一定期間、修復または増強したい組織内で、その当初の膨張時容量の100%を保持し得る、例えば容量に検出可能な変化が見られない。1つの態様において、シルクフィブロインマトリックスは、一定期間、修復または増強したい組織内で、その当初の膨張時容量の少なくとも約1%を保持し得る。1つの態様において、シルクフィブロインマトリックスは、一定期間、修復または増強したい組織内で、その当初の膨張時容量の少なくとも約50%を保持し得る。1つの態様において、シルクフィブロインマトリックスは、一定期間、修復または増強したい組織内で、その当初の膨張時容量の少なくとも約60%を保持し得る。1つの態様において、シルクフィブロインマトリックスは、一定期間、修復または増強したい組織内で、その当初の膨張時容量の少なくとも約70%を保持し得る。1つの態様において、シルクフィブロインマトリックスは、一定期間、修復または増強したい組織内で、その当初の膨張時容量の少なくとも約80%を保持し得る。組織に設置されたシルクフィブロインマトリックスの容量は、組織の特性、例えば組織の容量、組織の弾性および/または組織の硬度、の少なくとも1つの変化によって決定され得るまたは示され得る。いくつかの態様において、組織に設置されたシルクフィブロインマトリックスの容量は、外植片から決定され得る。
【0042】
シルクフィブロインマトリックスは、任意の期間、例えば数週間、数ヶ月間または数年間、その当初の膨張時容量の少なくとも一部分を保持し得る。いくつかの態様において、シルクフィブロインマトリックスは、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約5週間、少なくとも約6週間、少なくとも約7週間、少なくとも約8週間、少なくとも約3ヶ月間、少なくとも約4ヶ月間、少なくとも約5ヶ月間、少なくとも約6ヶ月間、少なくとも約7ヶ月間、少なくとも約8ヶ月間、少なくとも約9ヶ月間、少なくとも約10ヶ月間、少なくとも約11ヶ月間、少なくとも約1年間、少なくとも約2年間、少なくとも約3年間、少なくとも約4年間、少なくとも5年間またはそれ以上、例えばその当初の膨張時容量の少なくとも約1%(例えば、それらの当初の容量の少なくとも約3%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%またはそれ以上を含む)を保持し得る。特定の態様において、シルクフィブロインマトリックスは、少なくとも約3ヶ月間またはそれ以上、例えばその当初の膨張時容量の少なくとも約70%またはそれ以上を保持し得る。他の態様においては、少なくとも約3ヶ月間またはそれ以上、修復または増強したい組織に設置された後、シルクフィブロインマトリックスの容量の有意な変化または対応する組織容量の増加が生じ得ない。いくつかの態様において、シルクフィブロインマトリックスは、少なくとも約6ヶ月間またはそれ以上(例えば、少なくとも約9ヶ月間、少なくとも約12ヶ月間、少なくとも約18ヶ月間またはそれ以上を含む)、例えばその当初の膨張時容量の少なくとも約70%またはそれ以上を保持し得る。他の態様においては、少なくとも約6ヶ月間またはそれ以上、修復または増強したい組織に設置された後、シルクフィブロインマトリックスの容量の有意な変化または対応する組織容量の増加が生じ得ない。特定の態様において、シルクフィブロインマトリックスは、少なくとも約1年間またはそれ以上(例えば、少なくとも約2年間、少なくとも約3年間、少なくとも約4年間、少なくとも約5年間またはそれ以上を含む)、その当初の膨張時容量の少なくとも約20%またはそれ以上を保持し得る。いくつかの態様において、シルクフィブロインマトリックスは、少なくとも約1年間またはそれ以上(例えば、少なくとも約2年間、少なくとも約3年間、少なくとも約4年間、少なくとも約5年間またはそれ以上を含む)、その当初の膨張時容量の少なくとも約50%またはそれ以上を保持し得る。いくつかの態様において、シルクフィブロインマトリックスは、少なくとも約1年間またはそれ以上(例えば、少なくとも約2年間、少なくとも約3年間、少なくとも約4年間、少なくとも約5年間またはそれ以上を含む)、その当初の膨張時容量の少なくとも約1%またはそれ以上を保持し得る。
【0043】
シルクフィブロインマトリックスの容量保持はまた、例えば、シルクフィブロインマトリックスの分解によっても特徴づけることができる。概ね、シルクフィブロインマトリックスの分解が遅いほど、シルクフィブロインマトリックスは組織においてより長くその当初の膨張時容量を保持し得る。したがって、本明細書に提供されるいくつかの態様は、圧縮されたシルクフィブロインマトリックスを含む、対象の組織の修復または増強に使用するための注射可能な組成物であって、圧縮されたシルクフィブロインマトリックスが組織に注射されると膨張し、かつシルクフィブロインマトリックスが一定期間をかけて修復または増強したい組織内で分解するよう適合されている、組成物、に向けられる。
【0044】
本明細書に記載されるシルクフィブロインマトリックスを参照して使用される場合、「分解する」または「分解」という用語は、シルクフィブロインマトリックスの容量またはサイズの減少を表す。シルクフィブロインマトリックスの分解は、シルクフィブロインマトリックスのより小さなフラグメントへの切断および/またはシルクフィブロインマトリックスもしくはそのフラグメントの溶解を通じて起こり得る。いくつかの態様において、シルクフィブロインマトリックスは、例えば、その当初の膨張時容量の70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下またはそれ未満を含む、その当初の膨張時容量の80%以下を分解するよう適合され得る。いくつかの態様において、シルクフィブロインマトリックスは、修復または増強したい組織内で有意な分解を示し得ない(例えば、検出可能な容量の変化が見られない)。1つの態様において、シルクフィブロインマトリックスは、一定期間の間に、修復または増強したい組織内でその当初の膨張時容量の50%以下を分解するよう適合され得る。1つの態様において、シルクフィブロインマトリックスは、一定期間の間に、修復または増強したい組織内でその当初の膨張時容量の40%以下を分解するよう適合され得る。1つの態様において、シルクフィブロインマトリックスは、一定期間の間に、修復または増強したい組織内でその当初の膨張時容量の30%以下を分解するよう適合され得る。1つの態様において、シルクフィブロインマトリックスは、一定期間の間に、修復または増強したい組織内でその当初の膨張時容量の20%以下を分解するよう適合され得る。1つの態様において、シルクフィブロインマトリックスは、一定期間の間に、修復または増強したい組織内でその当初の膨張時容量の10%以下を分解するよう適合され得る。
【0045】
いくつかの態様において、シルクフィブロインマトリックスは、シルクフィブロインマトリックスを設置した組織が再生し始めるのに伴いシルクフィブロインマトリックスの当初の膨張時容量が(十分な支持を提供しつつ)徐々に減少するよう、既定の率で分解するよう適合され得る。そのような態様において、シルクフィブロインマトリックスは、既定の期間をかけて(例えば、少なくとも約6週間、少なくとも約3ヶ月間、少なくとも約6ヶ月間またはそれ以上を含む少なくとも約2週間)、例えばその当初の膨張時容量の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%またはそれ以上を含む、その当初の膨張時容量の少なくとも約5%を分解するよう適合され得る。
【0046】
シルクフィブロインマトリックスは、任意の率で分解するよう適合され得る。いくつかの態様において、シルクフィブロインマトリックスは、任意の期間、例えば、数週間、数ヶ月間または数年間をかけて、その当初の膨張時容量の少なくとも一部分を分解するよう適合され得る。いくつかの態様において、シルクフィブロインマトリックスは、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約5週間、少なくとも約6週間、少なくとも約7週間、少なくとも約8週間、少なくとも約3ヶ月間、少なくとも約4ヶ月間、少なくとも約5ヶ月間、少なくとも約6ヶ月間、少なくとも約7ヶ月間、少なくとも約8ヶ月間、少なくとも約9ヶ月間、少なくとも約10ヶ月間、少なくとも約11ヶ月間、少なくとも約1年間、少なくとも約2年間、少なくとも約3年間、少なくとも約4年間、少なくとも約5年間またはそれ以上の間に、その当初の膨張時容量の少なくとも一部分、例えば、その当初の膨張時容量の50%以下(例えば、その当初の膨張時容量の40%以下、30%以下、20%以下またはそれ未満を含む)を分解するよう適合され得る。特定の態様において、シルクフィブロインマトリックスは、少なくとも約3ヶ月間またはそれ以上の間に、例えばその当初の膨張時容量の30%以下またはそれ未満を分解するよう適合され得る。他の態様において、修復または増強したい組織に少なくとも約3ヶ月間またはそれ以上設置した後に、有意な分解が生じ得ない(すなわち、シルクフィブロインマトリックスの容量に検出可能な変化が見られない)。いくつかの態様において、シルクフィブロインマトリックスは、少なくとも約6ヶ月間またはそれ以上(例えば、少なくとも約9ヶ月間、少なくとも約12ヶ月間、少なくとも約18ヶ月間またはそれ以上を含む)の間に、例えば、その当初の膨張時容量の30%以下またはそれ未満を分解するよう適合され得る。他の態様において、修復または増強したい組織に少なくとも約6ヶ月間またはそれ以上設置した後に、有意な分解が生じ得ない(すなわち、シルクフィブロインマトリックスの容量に検出可能な変化が見られない)。特定の態様において、シルクフィブロインマトリックスは、少なくとも約1年間またはそれ以上(例えば、少なくとも約2年間、少なくとも約3年間、少なくとも約4年間、少なくとも約5年間またはそれ以上を含む)の間に、その当初の膨張時容量の80%以下またはそれ未満を分解するよう適合され得る。いくつかの態様において、シルクフィブロインマトリックスは、少なくとも約1年間またはそれ以上の間に、その当初の膨張時容量の50%以下またはそれ未満を分解するよう適合され得る。
【0047】
シルクフィブロインマトリックスまたは注射可能な組成物の同一または類似の製剤は、対象において異なる応答を示し得る。例にすぎないが、組織内でのシルクフィブロインマトリックスの容量保持または分解率は、例えば、組織のミクロ環境、例えばその組織内に存在する様々なタンパク質または酵素(例えば、タンパク質分解酵素)の種類および/またはレベル、の違いにより、対象ごとに異なり得る。
【0048】
いくつかの態様において、シルクフィブロインマトリックスは、一定期間にわたって、一定の容量保持率および/または分解率を維持するよう適合され得る。いくつかの態様において、シルクフィブロインマトリックスは、時間と共に変化する容量保持率または分解率を有するよう適合され得る。例えば、シルクフィブロインマトリックスは、ポリマー材料またはバイオ材料、例えば、異なる濃度のシルクフィブロインならびに/または異なる生分解性および生体適合性ポリマー、でコーティングされ得る。そのようなコーティングは、シルクフィブロインマトリックスコアのそれとは異なる機能および/または異なる分解率を有し得る。例にすぎないが、シルクフィブロインマトリックスのコーティングは、少なくとも1つの活性剤を含み得、シルクフィブロインマトリックスコアのそれとは異なる率(例えば、より速い率)で分解するよう適合され得る。したがって、組織へのシルクフィブロインマトリックスの設置の際、シルクフィブロインマトリックスのコーティングは、例えば、痛みを和らげるおよび/または創傷治癒を促進するために活性剤を放出するようより速く分解し、一方シルクフィブロインマトリックスコアはより長い期間それらの容量を保持し得るよう適合され得る。
【0049】
シルクフィブロインは、その汎用性の高い処理、例えば完全水相系の処理(Sofia et al., 54 J. Biomed. Mater. Res. 139 (2001); Perry et al., 20 Adv. Mater. 3070-72 (2008))、比較的容易な機能化(Murphy et al., 29 Biomat. 2829-38 (2008))および生体適合性(Santin et al., 46 J. Biomed. Mater. Res. 382-9 (1999))ゆえに、本明細書に記載される態様において使用するためのバイオポリマー候補として特に魅力的である。例えば、シルクは、ヒトインプラントにおける組織工学スキャホールドとしてU.S. Food and Drug Administrationに承認されている。Altman et al., 24 Biomaterials: 401 (2003)を参照のこと。
【0050】
本明細書で使用される場合、「シルクフィブロイン」という用語は、カイコフィブロインおよび昆虫またはクモシルクタンパク質を含む。例えば、Lucas et al., 13 Adv. Protein Chem. 107 (1958)を参照のこと。任意のタイプのシルクフィブロインが、本明細書に記載される様々な態様において使用され得る。カイコ、例えばボンビックス・モリ(Bombyx mori)によって産生されるシルクフィブロインが最も一般的であり、地球に優しい、再生産可能な供給源と言える。例えば、シルクフィルムに使用されるシルクフィブロインは、B.モリの繭からセリシンを抽出することによって取得され得る。有機栽培したカイコ繭も市販されている。しかし、クモシルク(例えば、ネフィラ・クラビペス(Nephila clavipes)から得られるもの)、トランスジェニックシルク、遺伝子工学シルク、例えば細菌、酵母、哺乳動物細胞、トランスジェニック動物またはトランスジェニック植物由来のシルク(例えば、WO 97/08315;米国特許第5,245,012号を参照のこと)およびそれらの変種を含む多くの異なるシルクを使用することができる。いくつかの態様において、シルクフィブロインは、他の供給源、例えばクモ、他のカイコ、ハチおよびそれらのバイオ工学変種由来であり得る。
【0051】
様々な態様において、シルクフィブロインは、様々な用途および/または所望の機械的もしくは化学的特性のために(例えば、シルクフィブロインマトリックス内での活性剤の勾配の形成を促進するために)修飾され得る。当業者は、例えばシルクフィブロインの側鎖基、シルクフィブロインの所望の反応性および/またはシルクフィブロインの所望の電荷密度に依存して、シルクフィブロインを修飾するための適当な方法を選択することができる。1つの態様において、シルクフィブロインの修飾は、アミノ酸側鎖化学、例えば共有結合を通じた化学修飾または電荷・電荷相互作用を通じた修飾、を使用するものであり得る。例示的な化学修飾法は、カルボジイミドカップリング反応(例えば、米国特許出願第US 2007/0212730号を参照のこと)、ジアゾニウムカップリング反応(例えば、米国特許出願第US 2009/0232963号を参照のこと)、アビジン・ビオチン相互作用(例えば、国際出願第WO 2011/011347号を参照のこと)およびPEGポリマーの化学的に活性なまたは活性化された誘導体によるペグ化(例えば、国際出願第WO 2010/057142号を参照のこと)を含むがこれらに限定されない。シルクフィブロインはまた、シルクタンパク質の機能性を変更する遺伝子修飾を通じて修飾され得る(例えば、国際出願第WO 2011/006133号を参照のこと)。例えば、シルクフィブロインは、シルクのさらなる修飾、例えば有機・無機複合体を形成するために使用することができる繊維性タンパク質ドメインおよび鉱化ドメインを含む融合ポリペプチドの組み込み、を提供できるよう遺伝子修飾することができる。WO 2006/076711を参照のこと。加えて、シルクフィブロインマトリックスは、例えばマトリックスの柔軟性に影響する化合物、例えばグリセロールと組み合わせることができる。例えば、WO 2010/042798, Modified Silk films Containing Glycerolを参照のこと。
【0052】
本明細書で言い換え可能に使用される、「シルクフィブロインマトリックス」または「シルクフィブロインベースのマトリックス」というフレーズは、概ね、シルクフィブロインを含むマトリックスを表す。いくつかの態様において、「シルクフィブロインマトリックス」および「シルクフィブロインベースのマトリックス」というフレーズは、シルクフィブロインが、全組成の少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%またはそれ以上を含む、全組成の少なくとも約30%を構成するマトリックスを表す。特定の態様において、シルクフィブロインマトリックスまたはシルクフィブロインベースのマトリックスは、実質的にシルクフィブロインから形成され得る。様々な態様において、シルクフィブロインマトリックスまたはシルクフィブロインベースのマトリックスは、実質的に、少なくとも1つの活性剤を含むシルクフィブロインから形成され得る。いくつかの態様において、シルクフィブロインマトリックスまたはシルクフィブロインベースのマトリックスは、シルクフィブロイン発泡体またはシルクフィブロインベースの発泡体を表し得る。
【0053】
本明細書に記載されるシルクフィブロインマトリックスは、任意の形状、例えば、球形、多角形、楕円形、円筒形、管形または任意の当技術分野で知られている形状、となるよう適合され得る。シルクフィブロインマトリックスのサイズは、修復もしくは増強したい組織のサイズおよび/またはシルクフィブロインマトリックスの所望の特性、例えば、容量保持もしくは分解プロファイルを含むがこれらに限定されない、多くの要因により変化し得る。いくつかの態様において、(圧縮前の)シルクフィブロインマトリックスは、約1mm〜約5mmのサイズの直径を有し得る。いくつかの態様において、(圧縮前の)シルクフィブロインマトリックスは、5mmより大きなサイズの直径を有し得る。シルクフィブロインマトリックスは圧縮可能または変形可能なので、シルクフィブロインマトリックスのサイズは、圧縮されたシルクフィブロインマトリックスのサイズが組織への注射に適したものである限り、より大きなサイズの欠損を満たすのに適した大きなものとされ得る。
【0054】
シルクフィブロインマトリックスは、水ベースまたは有機溶媒ベースのシルクフィブロイン溶液から製造され得る。いくつかの態様において、有機溶媒ベースのシルクフィブロイン溶液から製造されるシルクフィブロインマトリックスは、水ベースのシルクフィブロインマトリックスよりも長い期間それらの当初の容量を保持し得る。本明細書に記載されるシルクフィブロインマトリックスを作製するために使用される水または有機溶媒ベースのシルクフィブロイン溶液は、当技術分野で公知の任意の技術を用いて調製され得る。軟部組織の修復または増強のために使用される溶液中のシルクフィブロインの濃度は、例えば、修復または増強したい組織に注射された際にシルクフィブロインマトリックスのより長い容量保持が望まれる場合により高濃度のシルクフィブロイン溶液を使用できるときは、個々の容量保持要件に適合され得る。いくつかの態様において、本明細書に記載されるシルクフィブロインマトリックスを作製するためのシルクフィブロイン溶液は、上下限値を含めて、約0.1%(w/v)から約30%(w/v)まで様々であり得る。いくつかの態様において、シルクフィブロイン溶液は、約0.5%(w/v)から約10%(w/v)まで様々であり得る。いくつかの態様において、シルクフィブロイン溶液は、約1%(w/v)から約6%(w/v)まで様々であり得る。シルクフィブロイン溶液を調製する適当なプロセスは、例えば、米国特許第US 7635755号;ならびに国際出願第WO/2005/012606号および同第WO/2008/127401号に開示されている。精密ろ過工程をその中で使用することができる。例えば、調製されたシルクフィブロイン溶液を、本明細書に記載されるシルクフィブロインマトリックスになるようさらに処理する前に、例えば、遠心分離および/またはシリンジベースの精密ろ過によってさらに処理することができる。
【0055】
いくつかの態様において、シルクフィブロインはまた、シルクフィブロインを含む混合ポリマーマトリックスを形成するよう、他の生体適合性および/または生分解性ポリマーと混合され得る。1つまたは複数の生体適合性および/または生分解性ポリマー(例えば、2つまたはそれ以上の生体適合性ポリマー)が、シルクフィブロイン溶液に添加され得る。ここで使用することができる生体適合性ポリマーは、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、コラーゲン、フィブロネクチン、ケラチン、ポリアスパラギン酸、ポリリジン、アルギネート、キトサン、キチン、ヒアルロン酸、ペクチン、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシアルカノエート、デキストラン、ポリ無水物、ポリマー、PLA-PGA、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリカプロラクトン、ポリフマレート、コラーゲン、キトサン、アルギネート、ヒアルロン酸ならびにその他の生体適合性および/または生分解性ポリマーを含むがこれらに限定されない。例えば、国際出願第WO 04/062697号;同第WO 05/012606号を参照のこと。
【0056】
いくつかの態様において、本明細書に記載される少なくとも1つの活性剤は、本明細書に記載されるシルクフィブロインマトリックスとなるようさらに処理する前に、シルクフィブロイン溶液に添加され得る。いくつかの態様において、活性剤は、例えば、米国特許出願第US 2007/0212730号に記載されるカルボジイミド媒介修飾法を用いて、シルクフィブロイン内に均質にまたは不均質に分散され得、勾配をつけて分散され得る。
【0057】
いくつかの態様においては、シルクフィブロインマトリックスを最初に形成し、次に、マトリックスの開放表面が少なくとも1つの活性剤でコーティングされ得るよう、少なくとも1つの活性剤に接触(例えば浸漬)させることができる。
【0058】
いくつかの態様において、本明細書に記載されるシルクフィブロインマトリックスは、例えば、ネイティブ組織の構造形態を模倣するため、シルクフィブロインマトリックスの分解率/容量保持率を調整するためおよび/または、存在する場合はその中に埋め込まれた活性剤の放出プロファイルを調整するために、多孔質構造を含み得る。本明細書で使用される場合、「多孔質」および「多孔度」という用語は、概ね、その容量全体に孔または空隙部(例えば、開口、中間空間またはその他のチャンネルであり得る)の連結ネットワークを有する構造を表すために使用される。「多孔度」という用語は、ある材料における空隙部の尺度であり、0〜100%の百分率(または0〜1)で表される全容量に対する空隙容量の分数である。
【0059】
いくつかの態様において、多孔質シルクフィブロインマトリックスは、望まれる特性に依存して、任意の多孔度を有するよう構成され得る。例えば、いくつかの態様において、多孔質シルクフィブロインマトリックスは、少なくとも約1%、少なくとも約3%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%またはそれ以上の多孔度を有し得る。いくつかの態様において、多孔度は、約70%〜約99%または約80%〜約98%の範囲であり得る。孔サイズおよび全体多孔度の値は、当業者に公知の従来的な方法およびモデルを用いて定量され得る。例えば、孔サイズおよび多孔度は、標準化された技術、例えば水銀ポロシメトリーおよび窒素吸収を用いて測定され得る。当業者は、様々な目的に最適なシルクフィブロインマトリックスの多孔度を決定することができる。例えば、シルクフィブロインマトリックスの多孔度および/または孔サイズは、シルクフィブロインマトリックスの所望の分解率もしくは容量保持率、シルクフィブロインマトリックスからの活性剤の放出プロファイルおよび/または修復もしくは増強したい組織の構造形態に基づき最適化され得る。
【0060】
孔は、任意の形状、例えば円形、楕円形または多角形、を有するよう適合され得る。多孔質シルクフィブロインマトリックスは、約1μm〜約1500μm、約10μm〜約1000μm、約25μm〜約800μm、約50μm〜約650μmまたは約100μm〜約600μmの孔サイズを有するよう適合され得る。いくつかの態様において、孔は、約100μm〜約600μmのサイズを有し得る。いくつかの態様において、シルクフィブロインマトリックスは、1μm未満の孔サイズを有し得る。他の態様において、シルクフィブロインマトリックスは、多孔質である必要がない。そのような態様において、シルクフィブロインマトリックスの孔サイズは、10nm未満または検出不可能であり得る。本明細書で使用される「孔サイズ」という用語は、孔の寸法を表す。いくつかの態様において、孔サイズは、孔の最長寸法、例えば、円形の断面を有する孔の直径または非円形の断面を有する孔を横断して形成され得る最長の断面上の弦の長さを表し得る。他の態様において、孔サイズは、孔の最短寸法を表し得る。
【0061】
シルクフィブロインマトリックス内で多孔質構造を生成する方法、例えば凍結乾燥、ポロゲン(porogen)浸出法(例えば、塩浸出法)および気泡法は、当技術分野で周知であり、例えば米国特許第US 7842780号;ならびに米国出願第US 2010/0279112号;および同第US 2010/0279112号に記載されており、これらの内容の全体を参照により本明細書に組み入れる。
【0062】
いくつかの態様において、多孔質シルクフィブロインマトリックスは、例えばUS 7842780;およびUS 2010/0279112に記載されるようなポロゲン浸出法(例えば、塩浸出法)によって製造されない。
【0063】
いくつかの態様において、多孔質シルクフィブロインマトリックスは、凍結乾燥法によって製造され得る。例えば、US 7842780およびUS 2010/0279112を参照のこと。そのような態様においては、防付着性の容器内に入れられたシルクフィブロイン溶液が、零度以下の温度、例えば約-80℃〜約-20℃で、少なくとも約12時間、少なくとも約24時間またはそれ以上凍結され、その後に凍結乾燥され得る。1つの態様において、シルクフィブロイン溶液は、一方向から凍結され得る。いくつかの態様において、シルクフィブロイン溶液は、塩を含まないものであり得る。いくつかの態様において、アルコール、例えば15%〜25%のメタノールまたはプロパノールが、シルクフィブロイン溶液に添加され得る。
【0064】
特定の態様において、多孔質シルクフィブロインマトリックスは、シルクフィブロイン溶液を約-1℃〜約-20℃の間または約-5℃〜-10℃の間の範囲の温度で少なくとも約2日間、少なくとも約3日間またはそれ以上凍結させ、その後に少なくとも約2日間、少なくとも約3日間またはそれ以上凍結乾燥させることによって製造され得る。例えば、US 61/477,486を参照のこと。凍結の温度および/もしくは期間ならびに/または凍結乾燥の期間は、異なる多孔質構造および/または機械的特性のシルクフィブロインマトリックスが生成されるよう調節され得る。
【0065】
いくつかの態様において、シルクフィブロイン溶液は、例えばシルクフィブロイン溶液に電圧を印加することによって、電場に晒され得る。電場に晒された後にゲルに変化しなかったシルクフィブロイン溶液は、その後、長期間、例えば少なくとも約1日間、少なくとも約2日間、少なくとも約3日間、少なくとも約5日間、少なくとも約6日間またはそれ以上の間、冷凍庫に入れられ得る。凍結したシルクフィブロインマトリックスは、その後、冷凍庫から取り出され、ほぼ室温下で保管され、それによって様々な多孔質構造および/または特性のシルクフィブロインマトリックスが生成される。
【0066】
いくつかの態様において、本明細書に記載されるシルクフィブロインマトリックスは、少なくとも1つのシルクフィブロインの特性に影響し得る後処理に供され得る。例えば、シルクフィブロインマトリックスの後処理は、β-シート含有量、溶解度、活性剤ロード能、分解時間、薬物透過性またはそれらの任意の組み合わせを含むシルクフィブロインの特性に影響し得る。シルクの後処理の選択肢は、制御された遅乾(Lu et al., 10 Biomacromolecules 1032 (2009))、水中アニーリング(Jin et al., Water-Stable Silk Films with Reduced β-Sheet Content, 15 Adv. Funct. Mats. 1241 (2005))、ストレッチング(Demura & Asakura, Immobilization of glucose oxidase with Bombyx mori silk fibroin by only stretching treatment and its application to glucose sensor, 33 Biotech & Bioengin. 598 (1989))、圧縮、ならびにメタノール(Hofmann et al., 2006)、エタノール(Miyairi et al., 1978)、グルタルアルデヒド(Acharya et al., 2008)および1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)(Bayraktar et al., 2005)を含む溶媒浸漬を含む。
【0067】
いくつかの態様において、シルクフィブロインマトリックスの後処理、例えば水中アニーリングまたは溶媒浸漬は、シルクフィブロインマトリックスからの活性剤の放出の制御を実現し得る。いくつかの態様において、シルクフィブロインマトリックスの後処理、例えば水中アニーリングまたは溶媒浸漬は、本明細書に記載される方法において使用されるシルクフィブロインマトリックスの分解または溶解特性の調整を可能にし得る。いくつかの態様において、シルクフィブロインマトリックスの後処理、例えば水中アニーリングまたは溶媒浸漬は、本明細書に記載される方法において使用されるシルクフィブロインマトリックスの容量保持特性の調整を可能にし得る。
【0068】
いくつかの態様において、本明細書に記載されるシルクフィブロインマトリックスは、例えば処置したい組織に注射した際のシルクフィブロインマトリックスの分解および/もしくは容量保持特性を調整するためならびに/またはシルクフィブロインマトリックスから放出される活性剤の率を調整するために、本明細書に記載される生体適合性および/または生分解性ポリマーの少なくとも1つの層でコーティングされ得る。そのような態様において、生体適合性および/または生分解性ポリマーは、少なくとも1つの活性剤を含み得る。
【0069】
いくつかの態様において、本明細書に記載されるシルクフィブロインマトリックスは、細胞接着分子、例えば、非限定的に、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、コラーゲン、任意の当技術分野で知られている細胞外マトリックス分子およびそれらの任意の組み合わせ、でコーティングされ得る。
【0070】
いくつかの態様において、本明細書に記載されるシルクフィブロインマトリックスは、滅菌され得る。生物医学デバイスの滅菌法は当技術分野で周知であり、ガンマ線または紫外線照射、オートクレーブ(例えば、熱/蒸気);アルコール滅菌(例えば、エタノールおよびメタノール);ならびにガス滅菌(例えば、エチレンオキシド滅菌)を含むがこれらに限定されない。
【0071】
さらに、本明細書に記載されるシルクフィブロインマトリックスは、シルクフィブロインを機能化するために開発された多くの技術(例えば、活性剤、例えば色素およびセンサー)の利点を活用することができる。例えば、米国特許第6,287,340号, Bioengineered anterior cruciate ligament; WO 2004/000915, Silk Biomaterials & Methods of Use Thereof; WO 2004/001103, Silk Biomaterials & Methods of Use Thereof; WO 2004/062697, Silk Fibroin Materials & Use Thereof; WO 2005/000483, Method for Forming inorganic Coatings; WO 2005/012606, Concentrated Aqueous Silk Fibroin Solution & Use Thereof; WO 2011/005381, Vortex-Induced Silk fibroin Gelation for Encapsulation & Delivery; WO 2005/123114, Silk-Based Drug Delivery System; WO 2006/076711, Fibrous Protein Fusions & Uses Thereof in the Formation of Advanced Organic/Inorganic Composite Materials; 米国特許出願公開第2007/0212730号, Covalently immobilized protein gradients in three-dimensional porous scaffolds; WO 2006/042287, Method for Producing Biomaterial Scaffolds; WO 2007/016524, Method for Stepwise Deposition of Silk Fibroin Coatings; WO 2008/085904, Biodegradable Electronic Devices; WO 2008/118133, Silk Microspheres for Encapsulation & Controlled Release; WO 2008/108838, Microfluidic Devices & Methods for Fabricating Same, WO 2008/127404, Nanopatterned Biopolymer Device & Method of Manufacturing Same; WO 2008/118211, Biopolymer Photonic Crystals & Method of Manufacturing Same; WO 2008/127402, Biopolymer Sensor & Method of Manufacturing Same; WO 2008/127403, Biopolymer Optofluidic Device & Method of Manufacturing the Same; WO 2008/127401, Biopolymer Optical Wave Guide & Method of Manufacturing Same; WO 2008/140562, Biopolymer Sensor & Method of Manufacturing Same; WO 2008/127405, Microfluidic Device with Cylindrical Microchannel & Method for Fabricating Same; WO 2008/106485, Tissue-Engineered Silk Organs; WO 2008/140562, Electroactive Biopolymer Optical & Electro-Optical Devices & Method of Manufacturing Same; WO 2008/150861, Method for Silk Fibroin Gelation Using Sonication; WO 2007/103442, Biocompatible Scaffolds & Adipose-Derived Stem Cells; WO 2009/155397, Edible Holographic Silk Products; WO 2009/100280, 3-Dimensional Silk Hydroxyapatite Compositions; WO 2009/061823, Fabrication of Silk Fibroin Photonic Structures by Nanocontact Imprinting; WO 2009/126689, System & Method for Making Biomaterial Structuresを参照のこと。
【0072】
代替の態様において、シルクフィブロインマトリックスは、光熱要素を形成するプラズモンナノ粒子を含み得る。このアプローチは、シルクフィブロインの優れたドーピング性能の利点を活用するものである。温熱療法は、様々な薬剤の送達を助けることが知られている。Park et al., Effect of Heat on Skin Permeability 359 Intl. J. Pharm. 94 (2008)を参照のこと。1つの態様において、非常に限られた領域での短い放熱が、周辺組織に対する有害な影響を最小化しつつ透過性を最大化するために使用され得る。したがって、プラズモン粒子をドーピングしたシルクフィブロインマトリックスは、シルクフィブロインマトリックスを経由してのみ光を集中させ局所的に熱を発生させることによって、温熱療法に特異性を与えることができる。いくつかの態様において、シルクフィブロインマトリックスは、光熱剤、例えば金ナノ粒子を含み得る。
【0073】
いくつかの態様において、本明細書に記載される方法において使用されるシルクフィブロインマトリックスは、両親媒性ペプチドを含み得る。他の態様において、本明細書に記載される方法において使用されるシルクフィブロインマトリックスは、両親媒性ペプチドを含まないものであり得る。「両親媒性ペプチド」は、親水性および疎水性の両方の特性を有している。両親媒性分子は、通常、その親水性部分を水性環境にさらしつつその疎水性部分を脂質の膜に挿入することによって、生体膜と相互作用し得る。いくつかの態様において、両親媒性ペプチドは、RGDモチーフを含み得る。両親媒性ペプチドの例は、アミノ酸配列:
を有する23RGDペプチドである。両親媒性ペプチドの他の例は、米国特許出願第US 2011/0008406号に開示されるものを含む。
【0074】
シルクフィブロインマトリックスを含む注射可能な組成物
別の局面において、本明細書には、圧縮されたシルクフィブロインマトリックスを含む、対象の組織の修復または増強に使用される注射可能な組成物であって、ここで、圧縮されたシルクフィブロインマトリックスは組織に注射されると膨張し、そして一定期間(例えば、少なくとも約2週間、少なくとも約4週間、少なくとも約6週間またはそれ以上)、修復または増強したい組織内で、その当初の膨張時容量(例えば、少なくとも約50%またはそれ以上)を保持する、組成物、が提供される。
【0075】
本明細書で使用される場合、「注射可能な組成物」という用語は、概ね、最小の侵襲性の手順で組織に送達または投与することができる組成物を表す。「最小の侵襲性の手順」という用語は、可能な限り最小限の損傷(例えば、小さな切開、注射)しか与えずに、皮膚を通じてまたは体腔もしくは解剖学的な開口部を通じて対象の体内に進入することによって実行される手順を表す。いくつかの態様において、注射可能な組成物は、注射によって組織に投与または送達され得る。いくつかの態様において、注射可能な組成物は、皮膚上に小さな切開を形成しそこに針、カニューレおよび/または管状物、例えばカテーテルを挿入することを通じて組織に送達され得る。限定されることを望まないが、注射可能な組成物は、外科手術、例えば移植によって組織に投与または設置され得る。
【0076】
いくつかの態様において、注射可能な組成物は、本明細書に記載される少なくとも1つの活性剤を含み得る。
【0077】
いくつかの態様において、注射可能な組成物は、少なくとも1つの細胞を含み得る。本明細書で使用される「細胞」という用語は、植物、酵母、蠕虫、昆虫および哺乳動物を含む原核生物または真核生物の任意の細胞を表す。いくつかの態様において、細胞は哺乳動物細胞であり得る。哺乳動物細胞は、非限定的に、霊長類、ヒト、および、非限定的に、マウス(mouse)、ラット、ハムスター、ウサギ、イヌ(dog)、ネコ(cat)、家畜動物、例えばウマ、ウシ、マウス(murine)、ヒツジ、イヌ(canine)、ネコ(feline)等を含む関心対象の任意の動物由来の細胞を含む。細胞は、幅広い組織タイプ、例えば、非限定的に、造血細胞、神経細胞、間葉細胞、皮膚細胞、粘膜細胞、間質細胞、筋細胞、脾細胞、細網内皮細胞、表皮細胞、内皮細胞、肝細胞、腎細胞、胃腸細胞、肺細胞、T細胞等であり得る。非限定的に、造血幹細胞、神経幹細胞、間質幹細胞、筋幹細胞、心血管幹細胞、肝幹細胞、肺幹細胞および胃腸幹細胞ならびに脂肪由来幹細胞を含む、幹細胞、胚性幹(ES)細胞、ES由来細胞および幹細胞前駆体も含まれる。1つの態様において、細胞は、脂肪由来幹細胞である。いくつかの態様において、細胞は、エクスビボまたは培養細胞、例えばインビトロ、であり得る。例えば、エクスビボ細胞の場合、細胞は、健常なおよび/または疾患に罹患した対象から取得され得る。細胞は、非限定的な例として、生検または当業者に公知のその他の外科的手段によって取得され得る。いくつかの態様において、脂肪細胞は、従来的な脂肪吸込または吸引技術によって対象から収集され得る。そのような態様において、細胞は、吸引脂肪由来であり得る。他の態様において、細胞は、吸引骨髄由来であり得る。修復または増強したい組織のタイプに依存して、細胞は、任意の生物学的流体または濃縮物、例えば吸引脂肪または骨髄吸引脂肪(bone-marrow lipoaspirate)由来であり得る。いくつかの態様において、注射可能な組成物またはシルクフィブロインマトリックスは、直接的に、生物学的流体または濃縮物、例えば吸引脂肪または吸引骨髄と共に送達され得る。
【0078】
細胞は、ドナー(同種)またはレシピエント(自家)から取得され得る。細胞はまた、樹立された細胞培養株、または遺伝子操作が行われた細胞でさえあり得る。加えて、細胞は、ヒト自家移植組織、トランスジェニック哺乳動物または細菌培養物(プロバイオティクス処置に使用されることが考えられる)を含むがこれらに限定されない多数の宿主から回収され得る。特定の態様において、注射可能な組成物および/またはシルクフィブロインマトリックスは、ヒト幹細胞、例えば、間葉系幹細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、滑膜由来幹細胞、胚性幹細胞、成体幹細胞、臍帯血細胞、臍帯ワルトンゼリー細胞、骨細胞、繊維芽細胞、神経細胞、脂質細胞(lipocyte)、脂肪細胞(adipocyte)、骨髄細胞、仕分けされた免疫細胞、脂肪組織由来の前駆(precursor)細胞、骨髄由来前駆(progenitor)細胞、末梢血前駆細胞、成体組織から単離された幹細胞および遺伝子的に形質転換された細胞もしくは上記細胞の組み合わせ;または分化した細胞、例えば、筋細胞、脂肪細胞、を含み得る。
【0079】
幹細胞は、骨髄、脂肪組織または体内のその他の供給源から最小の侵襲性の手順で得ることができ、培養下で高い拡張性があり、そして十分に確立された脂肪生成を誘導する補助物質への曝露の後に脂肪組織形成細胞に分化するよう容易に誘導することができる。細胞は、本明細書に記載される注射可能な組成物および/もしくはシルクフィブロインマトリックスに添加されそして身体の一領域への投与の前に一定期間インビトロで培養され得、または本明細書に記載される注射可能な組成物および/もしくはシルクフィブロインマトリックスに添加されそして身体の一領域に投与され得る。細胞は、投与直前に短時間(1日未満)シルクフィブロインマトリックス上に播種され得、または投与前に播種されたマトリックス内で細胞を増殖させ細胞外マトリックスを合成させるためにより長い(1日超の)期間培養され得る。
【0080】
幹細胞の供給源として利用される場合、脂肪組織は、当業者に公知の任意の方法によって取得され得る。例えば、脂肪組織は、吸込支援脂肪形成外科術(suction-assisted lipoplasty)、超音波支援脂肪形成外科術および脂肪組織切除(excisional lipectomy)によって個体から取り出され得る。加えて、これらの手順は、そのような手順の組み合わせを含み得る。吸込支援脂肪形成外科術は、最小の侵襲性の組織回収方法を提供し、他の技術、例えば超音波支援脂肪形成外科術に付随し得る幹細胞の損傷の可能性が小さいために、個体から脂肪組織を取り出す上で望ましいものであり得る。脂肪組織は、細胞成分の生存性を確保し、かつ組織への潜在的感染生物、例えば細菌および/またはウイルスの混入の可能性を最小化する様式で回収されるべきである。
【0081】
いくつかの態様において、細胞集団の調製は、脂肪組織の成熟脂肪を含有する脂肪細胞成分を枯渇させることを必要とし得る。これは典型的に、最初に組織をリンスして遊離脂肪(破裂した脂肪細胞から放出される)および末梢血要素(組織収集時に切断された血管から放出される)の存在を減らし、次いでこれを解体してインタクトな脂肪細胞およびその他の細胞集団を結合組織のマトリックスから分離する、一連の洗浄・解体工程によって達成される。解体は、機械力(ミンチまたは剪断力)、単一のもしくは組み合わされたタンパク質分解酵素、例えばコラゲナーゼ、トリプシン、リパーゼ、リベラーゼHIおよびペプシンによる酵素消化または機械的および酵素的方法の組み合わせを含む、任意の従来技術または方法を用いて達成され得る。例えば、インタクトな組織フラグメントの細胞成分は、当業者に公知のように、脂肪組織中の微小血管内皮細胞を回収する方法と同様、脂肪組織のコラゲナーゼ媒介解離を用いる方法によって解体され得る。使用することができるコラゲナーゼを用いるさらなる方法も、当業者に公知である。さらに、方法は、酵素の組み合わせ、例えば、コラゲナーゼとトリプシンの組み合わせ、または酵素、例えばトリプシンと機械的解離の組み合わせを使用し得る。
【0082】
細胞集団(処理された吸引脂肪)は、その後に、成熟脂肪細胞の存在を減らすことによって、解体された組織フラグメントから取得され得る。細胞の分離は、浮遊密度沈降(buoyant density sedimentation)、遠心分離、水簸(elutriation)、固相部分への示差的な接着および固相部分からの示差的な溶出、抗体を介した選択、電荷の違い;免疫磁気ビーズ、蛍光活性化細胞選別(FACS)またはその他の手段によって達成され得る。
【0083】
解体後、活性な細胞集団は、解体プロセスの添加物および/または副産物(例えば、コラゲナーゼおよび新たに放出された遊離脂肪)を除去するために洗浄/リンスされ得る。活性な細胞集団は、次いで、遠心分離によって濃縮され得る。1つの態様において、細胞集団を連続流回転膜システム等、例えば参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,034,135号;および同第5,234,608号に開示されるシステム、に通すことによって、細胞が濃縮され、コラゲナーゼが除去される。
【0084】
上記に加えて、細胞集団をさらに精製するために適用され得る洗浄後方法が多く存在する。これらは、正の選択(標的細胞の選択)または負の選択(望まない細胞の選択的除去)の両方またはそれらの組み合わせを含む。別の態様において、細胞ペレットは、再懸濁され得、連続または不連続密度勾配を形成する流体材料の上に(または下に)重層され得、そして細胞密度に基づく細胞集団の分離のために遠心分離され得る。同様の態様において、連続流アプローチ、例えば、アフェレーシスおよび水簸(向流を用いるものまたは用いないもの)が使用され得る。プラスチックへの接着とその後の短期間の細胞拡張も、骨髄由来成体幹細胞集団に適用される。このアプローチは、1つの集団を優先的に拡張しつつ、他の集団を維持する(それによって成長する選択された細胞による希釈により減少させる)または必要な成長条件の非存在により消失させる培養条件を使用する。濃縮、培養および/または拡張された細胞が、本明細書に記載されるシルクフィブロインマトリックスおよび/または注射可能な組成物に組み込まれ得る。
【0085】
1つの態様においては、幹細胞が収集され、その収集された細胞を、脂肪細胞への分化を誘導するのに十分な時間、脂肪生成培地と接触させ、そしてその脂肪細胞が、移植される生体適合性マトリックスにロードされる。さらなる態様において、幹細胞の少なくとも一部が脂肪細胞に分化され得、それによって最初は両方の細胞型の混合物が存在するが、これが時間と共に実質的に脂肪細胞のみに変化し、幹細胞が検出不可能な少ない量になるようにされる。脂肪組織は、幹細胞によってインビボで製作されるかまたは幹細胞によってエクスビボで調製される。
【0086】
修復または増強したい組織のタイプに依存して、多くの異なる細胞型またはそれらの組み合わせが注射可能な組成物で使用され得る。これらの細胞型は、平滑筋細胞、骨格筋細胞、心筋細胞、表皮細胞、内皮細胞、尿路表皮細胞、繊維芽細胞、筋芽細胞、軟骨細胞、軟骨芽細胞、骨芽細胞、破骨細胞、ケラチン細胞、肝細胞、胆管細胞、膵島細胞、甲状腺、副甲状腺、副腎、視床下部、下垂体、卵巣、精巣、唾液腺細胞、脂肪細胞および前駆体細胞を含むがこれらに限定されない。例にすぎないが、平滑筋細胞および内皮細胞は、注射可能な組成物が筋肉および/または血管組織、例えば血管、食道、腸管、直腸または尿管組織を修復または増強するために使用される場合に使用され得;軟骨細胞は、軟骨組織のための注射可能な組成物に含められ得;繊維芽細胞は、細胞外マトリックス、例えばコラーゲンを含む任意の幅広い様々な組織型(例えば、皮膚)を置換および/または強化することが意図されている注射可能な組成物に含められ得;脂肪細胞は、任意の幅広い様々な脂肪組織を修復または増強することが意図されている注射可能な組成物に含められ得る。概ね、天然組織において見出される任意の細胞が、対応する組織に対して使用される注射可能な組成物に含められ得る。加えて、前駆体細胞、例えば筋芽細胞または幹細胞が、それらの対応する分化した細胞型を生成するために含められ得る。
【0087】
いくつかの態様において、注射可能な組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含み得る。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、シルクフィブロインマトリックスおよび場合により活性剤の投与のための、薬学的に許容される材料、組成物またはビヒクルを表す。薬学的に許容される担体は、シルクフィブロインマトリックスおよび、存在する場合、活性剤の活性に対して適合性であり、かつ対象にとって生理学的に許容される、任意かつすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌および抗真菌剤、ならびに等張および吸収遅延剤を含む。注射に適した薬学的製剤は、滅菌水溶液または分散液を含む。担体は、例えば、水、細胞培養培地、緩衝剤(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等)、それらの適当な混合物を含む溶媒または分散媒であり得る。いくつかの態様において、薬学的担体は、緩衝溶液(例えば、PBS)であり得る。
【0088】
加えて、抗菌保存剤、抗酸化物質、キレート剤および緩衝剤を含む、注射可能な組成物の安定性、滅菌性および等張性を強化する様々な添加剤が、添加され得る。微生物の活動の抑制は、様々な抗細菌および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等によってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウム等を含めることが所望され得る。注射可能な組成物はまた、望まれる調製物に依存して、補助物質、例えば、湿潤または乳化剤、pH緩衝剤、ゲル化または粘度強化添加剤、保存剤、染料等を含み得る。基本書、例えば、参照により本明細書に組み入れられる「REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCE」、第17版、1985年は、過度の実験を行わずに適当な調製物を調製する上で参考になり得る。
【0089】
注射可能な組成物の粘度は、薬学的に許容される増粘剤を用いて選択されたレベルで維持され得る。1つの態様において、容易かつ安価に入手でき取り扱いが容易であるという理由で、メチルセルロースが使用される。他の適当な増粘剤は、例えば、キサンタンゴム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキプロピルセルロース、カルボマー等を含む。増粘剤の好ましい濃度は、選択される薬剤および望まれる注射粘度に依存し得る。重要なことは、選択された粘度を達成し得る量の使用、例えば、注射可能な組成物のいくつかの態様へのそのような増粘剤の添加、である。
【0090】
典型的に、(本明細書に記載されるシルクフィブロインマトリックスおよび/または追加の活性剤に加えて)任意の添加剤が、乾燥重量でまたは緩衝溶液中に、0.001〜50 wt%の量で存在し得る。いくつかの態様において、活性剤は、マイクログラム〜ミリグラム〜グラムのオーダー、例えば、約0.0001〜約5 wt%、約0.0001〜約1 wt%、約0.0001〜約0.05 wt%または約0.0001〜約20 wt%、約0.01〜約10 wt%、および約0.05〜約5 wt%、で存在し得る。任意の薬学的組成物をそれを必要とする対象に投与する際、毒性を、例えば適当な動物モデル、例えばげっ歯類、例えばマウスまたはラットにおいて致死用量(LD)およびLD50を決定することによって;ならびに適当な応答を誘起する組成物の用量、その成分の濃度および組成物を投与するタイミングを、決定することが好ましい。そのような決定は、当業者の知識があれば過度の実験を要するものではない。
【0091】
活性剤
いくつかの態様において、本明細書に記載される注射可能な組成物および/またはシルクフィブロインマトリックスは、少なくとも1つの活性剤をさらに含み得る。活性剤は、注射可能な組成物中に混合され、分散されもしくは懸濁され得、および/またはそれはシルクフィブロインマトリックス中に分配されもしくは埋め込まれ得る。いくつかの態様において、活性剤は、シルクフィブロインマトリックス中に分配され、埋め込まれまたはカプセル化され得る。いくつかの態様において、活性剤は、シルクフィブロインマトリックスの表面上にコーティングされ得る。いくつかの態様において、活性剤は、注射可能な組成物を形成するよう、シルクフィブロインマトリックスと混合され得る。「活性剤」という用語はまた、以下に記載されるような2つまたはそれ以上の活性剤の組み合わせまたは混合物を含み得る。活性剤の例は、生物学的活性剤(例えば、治療剤)、美容活性剤(例えば、アンチエイジング剤)、細胞接着剤(例えば、インテグリン結合分子)およびそれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない。
【0092】
本明細書で使用される「生物学的活性剤」という用語は、インビボで少なくとも1つの生物学的効果を発揮する任意の分子を表す。例えば、生物学的活性剤は、対象の疾患状態または状況を処置または予防するための治療剤であり得る。生物学的活性剤の例は、非限定的に、ペプチド、ペプチド模倣体、アプタマー、抗体またはその一部分、抗体様分子、核酸(DNA、RNA、siRNA、shRNA)、多糖類、酵素、受容体アンタゴニストまたはアゴニスト、ホルモン、成長因子、自家骨髄、抗生物質、抗菌剤、低分子および治療剤を含む。生物学的活性剤はまた、非限定的に、抗炎症剤、麻酔剤、組織形成ならびに/または天然組織の治癒および再成長を刺激する活性剤、ならびにそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0093】
抗炎症剤は、ナプロキセン、スリンダク、トルメチン、ケトロラク、セレコキシブ、イブプロフェン、ジクロフェナク、アセチルサリチル酸、ナブメトン、エトドラク、インドメタシン、ピロキシカム、cox-2阻害剤、ケトプロフェン、抗血小板薬、サルサレート、バルデコキシブ、オキサプロジン、ジフルニサル、フルルビプロフェン、コルチコステロイド、MMP阻害剤およびロイコトリエン修飾剤またはそれらの組み合わせを含み得るがこれらに限定されない。
【0094】
注射部位において新しい組織の形成を亢進するおよび/またはネイティブ組織の治癒もしくは再成長を刺激する薬剤は、繊維芽細胞成長因子(FGF)、形質転換成長因子ベータ(TGF-β)、血小板由来成長因子(PDGF)、表皮成長因子(EGF)、結合組織活性化ペプチド(CTAP)、骨形態形成タンパク質を含む骨形成因子、ヘパリン、アンジオテンシンII(A-II)およびそれらのフラグメント、インスリン様成長因子、腫瘍壊死因子、インターロイキン、コロニー刺激因子、エリスロポエチン、神経成長因子、インターフェロン、そのような成長因子の生物学的に活性なアナログ、フラグメントおよび誘導体、ならびにそれらの任意の組み合わせを含み得るがこれらに限定されない。
【0095】
麻酔剤は、尾骨、硬膜外、吸入、注射、球後および脊椎適用において使用されるもの、例えば、ブピバカイン、リドカイン、ベンゾカイン、セタカイン、ロピバカインおよびテトラカイン、またはそれらの組み合わせを含み得るがこれらに限定されない。
【0096】
いくつかの態様において、活性剤は、美容活性剤であり得る。「美容活性剤」という用語は、皮膚、毛髪または爪に対する美容または治療効果を有する化合物、例えば、アンチエイジング剤、抗フリーラジカル剤、明色化(lightening)剤、美白剤、脱色剤、暗色化(darkening)剤、例えば、セルフタンニング剤、着色剤、抗ニキビ剤、光沢調整(shine control)剤、抗菌剤、抗炎症剤、抗カビ剤、抗寄生虫剤、外用鎮痛剤、日焼け止め剤、光防護剤、抗酸化物質、角質溶解剤、界面/表面活性剤、保湿剤、栄養剤、ビタミン、エネルギー補給剤、抗発汗剤、収斂剤、脱臭剤、脱毛剤、安定剤、抗硬化(anti-callous)剤、筋弛緩剤、毛髪、爪および/または皮膚のコンディショニング剤、ならびにそれらの任意の組み合わせ、を意味する。
【0097】
1つの態様において、美容活性剤は、ヒドロキシ酸、過酸化ベンゾイル、硫黄レゾルシノール、アスコルビン酸、D-パンテノール、ヒドロキノン、メトキシ経皮酸オクチル、二酸化チタン、サリチル酸オクチル、ホモサラート、アボベンゾン、ポリフェノール、カロテノイド、フリーラジカルスカベンジャー、セラミド、多価不飽和脂肪酸、必須脂肪酸、酵素、酵素阻害剤、鉱物、ホルモン、例えばエストロゲン、ステロイド、例えばヒドロコルチゾン、2-ジメチルアミノエタノール、銅塩、例えば塩化銅、コエンザイムQ10、リポ酸、アミノ酸、例えばプロリンおよびチロシン、ビタミン、ラクトビオン酸、アセチルコエンザイムA、ナイアシン、リボフラビン、チアミン、リボース、電子伝達体、例えばNADHおよびFADH2、ならびにその他の植物抽出物、例えばアロエベラ、ナツシロギクおよびダイズ、ならびにそれらの誘導体および混合物からなる群より選択され得るがこれらに限定されない。ビタミンの例は、ビタミンA、ビタミンB(例えば、ビタミンB3、ビタミンB5およびビタミンB12)、ビタミンC、ビタミンKおよびビタミンE、ならびにそれらの誘導体を含むがこれらに限定されない。
【0098】
1つの態様において、美容活性剤は、抗酸化物質であり得る。抗酸化物質の例は、水溶性抗酸化物質、例えばスルフヒドリル化合物およびそれらの誘導体(例えば、メタ重亜硫酸ナトリウムおよびN-アセチル-システイン)、リポ酸およびジヒドロリポ酸、レスベラトロール、ラクトフェリン、アスコルビン酸およびアスコルビン酸誘導体(例えば、パルミチン酸アスコルビルおよびアスコルビルポリペプチド)を含むがこれらに限定されない。本明細書に記載される組成物において使用するのに適した油溶性抗酸化物質は、ブチル化ヒドロキシトルエン、トコフェロール(例えば、トコフェリル酢酸)、トコトリエノールおよびユビキノンを含み得るがこれらに限定されない。本明細書に記載される注射可能な組成物において使用するのに適した抗酸化物質を含む天然抽出物は、フラボノイドおよびイソフラボノイドならびにそれらの誘導体(例えば、ゲニステインおよびダイゼイン(diadzein))を含む抽出物、ならびにレスベラトロールを含む抽出物を含み得るがこれらに限定されない。そのような天然抽出物の例は、ブドウ種子、緑茶、松樹皮およびプロポリスを含む。抗酸化物質の他の例は、ICI Handbookの1612〜13ページにおいて見出すことができる。
【0099】
いくつかの態様において、活性剤は、細胞接着剤であり得る。細胞接着剤の例は、ヒアルロン酸、コラーゲン、架橋ヒアルロン酸/コラーゲン、インテグリン結合分子、キトサン、エラスチン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、プロテオグリカン、それらの任意の誘導体、任意のペプチドまたはそれらのオリゴ糖変種、およびそれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない。本明細書で使用される場合、「オリゴ糖」という用語は、グルコース、フルクトース、ガラクトース、キシロースおよびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される少なくとも2つまたはそれ以上の糖を含む化合物を意味する。1つの態様において、オリゴ糖は、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、ラクトスクロース、イソマルツロース、グリコシルスクロース、イソマルトオリゴ糖、ゲンチオリゴ糖、キシロオリゴ糖およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択され得る。本明細書で使用される場合、「オリゴ糖」という用語は、2糖を含む。
【0100】
いくつかの態様において、注射可能な組成物および/またはシルクフィブロインマトリックスは、軟部組織の増強のための少なくとも1つの追加材料、例えば、ポリ(メチルメタクリレート)マイクロスフィア、ヒドロキシルアパタイト、ポリ(L-乳酸)、コラーゲン、ゼラチン、エラスチンおよびグリコサミノグリカン、ヒアルロン酸、市販の真皮充填材製品、例えばBOTOX(登録商標)(Allergan製)、DYSPORT(登録商標)、COSMODERM(登録商標)、EVOLENCE(登録商標)、RADIESSE(登録商標)、RESTYLANE(登録商標)、JUVEDERM(登録商標)(Allergan製)、SCULPTRA(登録商標)、PERLANE(登録商標)およびCAPTIQUE(登録商標)、ならびにそれらの任意の組み合わせ、を含むがこれらに限定されない真皮充填材料をさらに含み得る。
【0101】
いくつかの態様において、注射可能な組成物および/またはシルクフィブロインマトリックスは、例えば生物医学的画像化のために、金属ナノ粒子(例えば、非限定的に、金ナノ粒子)、光学分子(例えば、非限定的に、蛍光分子および/または量子ドット)ならびに任意のその他の当技術分野で知られている造影剤を含み得る。
【0102】
様々な態様において、注射可能な組成物は、乾燥状態または水和状態で保管または輸送され得る。
【0103】
活性剤がシルクフィブロインマトリックス中に埋め込まれる場合、その活性剤の生物活性(例えば、その活性剤の生物活性の少なくとも約30%)は、特定の条件下で、一定期間(例えば、数日間、数週間または数ヶ月間)安定化され得る。そのような条件は、状態を変化させるサイクル(例えば、凍結・解凍サイクル)、温度(例えば、0℃超)、気圧、湿度および露光を含み得るがこれらに限定されない。米国特許出願第61/477,737号を参照のこと。注射可能な組成物のいくつかの態様は、約0℃〜約60℃、約10℃〜約60℃または約15℃〜約60℃の間で保管または輸送され得る。これらの態様において、注射可能な組成物は、室温で保管または輸送され得、その間、活性剤の生物活性(例えば、活性剤の生物活性の少なくとも約30%)は、一定期間、例えば少なくとも約3週間またはそれ以上、安定化され得る。
【0104】
本明細書に記載される注射可能な組成物およびシルクフィブロインマトリックスの適用
本明細書に記載される注射可能な組成物は、非限定的に、組織空間の充填材、組織再建または再生のテンプレート、組織工学適用における細胞のスキャホールドまたは薬物送達のビヒクル/担体を含む、様々な医学的用途で使用され得る。修復または増強したい組織に注射された本明細書に記載されるシルクフィブロインマトリックスは、体内の細胞外マトリックス(ECM)を模倣するおよび/または組織再生を促進するためのスキャホールドとしての役割を果たし得る。スキャホールドは、細胞をその中で増殖させるための物理的な支持体および/または接着性のテンプレートの両方として機能し得る。いくつかの態様において、シルクフィブロインマトリックスは、細胞を含まないものであり得る。さらに、シルクフィブロインマトリックスは、細胞接着剤、例えばコラーゲン、および/または宿主の細胞をシルクフィブロインマトリックスに誘引し細胞増殖を支援し得る化学誘引物質、例えば成長因子、でコーティングされ得る。いくつかの態様において、シルクフィブロインマトリックスは、修復または増強したい標的組織に投与する前に、細胞を播種され得る。
【0105】
いくつかの態様において、本明細書には、それを必要とする組織を充填、容量増加および/または再生するために使用され得る注射可能な組成物が提供される。注射可能な組成物は、概ね、対象における組織の充填または容量増加、軟部組織の増強、置換、美容強化および/または組織の修復のために使用され得る。加えて、注射可能な組成物は、自然に形成された(例えば、加齢)か、または組織(例えば、皮膚嚢胞または固形腫瘍)の除去のための外科的手順、コルチコステロイド処置、脂肪萎縮症を引き起こす免疫学的反応、激突による損傷もしくは治療的処置(例えば、放射線療法もしくは化学療法)に起因する組織損傷によって形成されたかのいずれかの任意の組織の空隙またはへこみを満たすために使用され得る。注射可能な組成物はまた、陥凹瘢痕を盛り上げるために使用され得る。
【0106】
特定の態様において、注射可能な組成物は、軟部組織の増強のために使用され得る。本明細書で使用される場合、「増強する」または「増強」という用語は、組織の増大、充填、回復、強化または置換を意味する。いくつかの態様において、組織は、その弾性、硬度、形状および/または容量を喪失し得る。いくつかの態様において、組織は部分的にまたは完全に喪失(例えば、組織の除去)または損傷し得る。これらの態様において、「増強する」または「増強」という用語はまた、本明細書に記載される少なくとも1つの注射可能な組成物を組織に注射することによる、組織における少なくとも1つの症状または欠損(例えば、非限定的に、組織における弾性、硬度、形状および/または容量の喪失;組織における空隙またはへこみの存在;組織における機能の喪失)の軽減、減少または緩和も表し得る。そのような態様において、組織における少なくとも1つの症状または欠損は、処置しない場合と比較して、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%またはそれ以上、軽減、減少または緩和され得る。いくつかの態様において、組織における少なくとも1つの症状または欠損は、処置しない場合と比較して、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%またはそれ以上、軽減、減少または緩和され得る。いくつかの態様において、組織における少なくとも1つの症状または欠損は、処置しない場合と比較して、100%軽減、減少または緩和され得る(欠損がなくなるまたは欠損が当業者に検出不可能になる)。他の態様において、組織は、組織における欠損の症候、例えば組織の弾性、硬度、形状および/もしくは容量の喪失またはしわ(wrinkle)の兆候、の発生を防ぐまたは遅らせるために使用され得る。本明細書で使用される場合、「軟部組織の増強」というフレーズは、概ね、例えば軟部組織の美容的または審美的な外観を改善するための、組織の増大、充填、回復、強化または置換を含むがこれらに限定されない軟部組織の構造の変更を指すのに使用される。例えば、乳房の増強(豊胸術(breast enlargement)、乳房拡大術(mammoplasty enlargement)、乳房増大術(augmentation mammoplasty)としても公知)は、女性の美容的または審美的な外観を改善するために女性の乳房のサイズおよび形状を変更する。軟部組織の増強の例は、真皮組織の増強、特に顔および首の、線(line)、ひだ(fold)、しわ、小さな顔のくぼみおよび口唇裂の充填;手および足、指ならびにつま先のものを含む、加齢または疾患に起因する小さな変形箇所の矯正;発声のリハビリのための声帯または声門の増強;睡眠線(sleep line)および表情線(expression line)の真皮充填;加齢による真皮および皮下組織の喪失の置換;唇の増強;ウシの足および目の周りの眼窩の溝の充填;乳房の増強;顎の増強;頬および/または鼻の増強;尿道周囲の支持、例えば過度の脂肪吸込またはその他の外傷に起因する軟部組織、真皮または皮下のへこみを満たすためのバルク剤;にきびまたは外傷性瘢痕の充填;ほうれい線、鼻眉間の線(nasoglabellar line)および口腔内の線の充填を含むがこれらに限定されない。いくつかの態様において、本明細書に記載される注射可能な組成物および/またはシルクフィブロインマトリックスは、顔の脂肪萎縮症を処置するために使用され得る。いくつかの態様において、注射可能な組成物は、乳房の増強および/または再建のために使用され得る。
【0107】
いくつかの態様において、注射可能な組成物は、軟部組織の修復のために使用され得る。組織に関して本明細書で使用される「修復」または「修復する」という用語は、組織の容量、形状および/または機能を回復する組織の任意の矯正、補強、修繕、治療、再生、充填を表す。いくつかの態様において、「修復」は、完全な修復および部分的な修復を含む。例えば、修復したい組織の容量、形状および/または機能は、処置しない場合と比較して、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%またはそれ以上回復し得る。いくつかの態様において、修復したい組織の容量、形状および/または機能は、処置しない場合と比較して、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%またはそれ以上回復し得る。いくつかの態様において、修復したい組織の容量、形状および/または機能は、処置しない場合と比較して、100%回復し得る(欠損がなくなるまたは欠損が当業者に検出不可能になる)。様々な態様において、注射可能な組成物は、上記の任意の軟部組織、例えば乳房、皮膚および軟部組織の増強に適した任意の軟部組織を修復するために使用され得る。いくつかの態様において、「修復」または「修復する」という用語は、本明細書において、組織の処置を指して使用される「再生」または「再生する」という用語と言い換え可能に使用される。
【0108】
いくつかの態様において、注射可能な組成物は、軟部組織の再建のために使用され得る。本明細書で使用される場合、「軟部組織の再建」というフレーズは、例えば大きな事故または外科的除去によって重度に損傷したまたは喪失した軟部組織の構造を再構築することを表す。例えば、乳房の再建は、通常女性における、乳房の再構築である。自然な見た目の乳房を構築する従来法は、一般に、自家組織または補綴物を使用するものである。いくつかの態様において、そのような乳房の再建は、自然な見た目の乳輪および乳頭の再形成を含み得、そのような手順はインプラントまたは患者自身の組織の移設フラップを使用するものであり得る。いくつかの態様において、再建したい軟部組織領域への注射可能な組成物および/またはシルクフィブロインマトリックスの投与は、一定期間、例えば少なくとも6週間、少なくとも約2ヶ月間、少なくとも約3ヶ月間またはそれ以上、再建された軟部組織の構造の形状および/またはサイズを維持し得る。
【0109】
制約されることを望まないが、注射可能な組成物のいくつかの態様は、硬組織(例えば、筋骨格)の増強または修復、例えば骨、軟骨および靭帯の増強または修復に使用され得る。
【0110】
本明細書に記載される注射可能な組成物およびシルクフィブロインマトリックスはまた、補綴用インプラント、例えば、非限定的に、従来的な乳房インプラントまたは膝置換インプラント、に位置するまたはその付近の組織を満たすために使用され得る。いくつかの態様において、注射可能な組成物およびシルクフィブロインマトリックスは、補綴用インプラントと組織の間をつなぎ合わせるために、例えば、補綴用インプラントと組織の間の空隙を満たすためおよび/または組織が補綴用インプラントと直接接触するのを防止するために、使用され得る。例にすぎないが、本明細書に記載される注射可能な組成物は、対象に補綴用インプラント(例えば、乳房インプラント)を設置した後、インプラントと組織(例えば、乳房組織)の間の任意の空隙を満たすためおよび/またはその組織をより自然な見た目となるよう「造形する」ために、インプラントまたはその付近に導入され得る。
【0111】
本明細書に記載されるいずれかの使用において、シルクフィブロインマトリックスは、修復を生物学的に強化する目的で細胞と組み合わされ得る。細胞は、ヒト自家移植組織またはトランスジェニック動物を含むがこれらに限定されない多くの宿主から回収され得る。より詳細に、使用されるヒト細胞は、幹細胞(例えば、脂肪細胞由来幹細胞)、骨細胞、繊維芽細胞、脂質細胞、仕分けされた免疫細胞、吸引脂肪由来の細胞またはそれらの任意の組み合わせから選択される細胞を含み得る。いくつかの態様において、細胞は、シルクフィブロインマトリックス自体をリンスした後に添加され得る。それらは、注射の前に、シルクフィブロインマトリックス、担体溶液またはシルクフィブロインマトリックスと担体溶液の混合物にブレンドされ得る。
【0112】
いくつかの態様において、本明細書に記載されるシルクフィブロインマトリックスまたは注射可能な組成物と共に細胞(例えば、幹細胞または吸引脂肪)を投与することにより、経時的な宿主への統合および/または組織の形成が強化または加速され得る。細胞は、本明細書に記載されるシルクフィブロインマトリックスもしくは注射可能な組成物と混合され得、またはそれらは、シルクフィブロインマトリックスもしくは注射可能な組成物が標的部位に導入される前、それと同時もしくはそれ以降に投与され得る。学説による制約を望まないが、細胞は、標的部位において血管新生促進因子および/または成長因子を分泌し得る。組織が再生またはリモデルされて空隙が満たされまたは欠損が修復されるにつれ、シルクフィブマトリックスはそれにしがたって分解し得る。いくつかの態様において、シルクフィブロインマトリックスは、再生された宿主組織に統合され得る。
【0113】
加えて、結果を改善する目的でシルクフィブロインマトリックスに添加される活性剤、例えば治療剤、医薬または特定の成長因子は、シルクフィブロインマトリックスの製造プロセスの様々な時点のいずれかまたはその組み合わせにおいて導入され得る。いくつかの態様において、これらの要素は、乾燥および固化の前にシルクフィブロイン溶液または反応促進剤(accelerant)相に添加され得、それらは反応促進剤をリンスするプロセスの間にシルクフィブロインマトリックスに浸漬され得、またはそれらはリンス後にバルクシルクフィブロイン上にコーティングされ得る。いくつかの態様において、大きなシルクフィブロインマトリックスから組織の修復または増強に使用する小さなシルクフィブロインマトリックスが切り出され、その後にその小さなシルクフィブロインマトリックスに活性剤が導入され得る。例えば、活性剤は、シルクフィブロインマトリックスに浸漬され得、シルクフィブロインマトリックス上にコーティングされ得、またはシルクフィブロインマトリックスとのブレンドの前もしくは後に担体液に導入され得る。
【0114】
いくつかの局面において、本明細書に記載される注射可能な組成物およびシルクフィブロインマトリックスは、組織の空白部分の充填材として使用され得る。1つの態様において、組織の空白部分の充填材は、真皮充填材である。真皮充填材は、皮膚を再水和させるため、皮膚に高い弾性を提供するため、皮膚の荒れを減らすため、皮膚をより張りのある状態にするため、ストレッチ線またはストレッチマークを減らすまたはなくすため、皮膚により良い色調、光沢、明るさおよび/または輝きを与えるため、皮膚のしわを減らすまたはなくすため、皮膚に防しわ性を提供するためおよび軟部組織の喪失を置換するためを含むがこれらに限定されない、皮膚の外観または状況を改善するために使用され得る。
【0115】
シルクフィブロインマトリックスを含む真皮充填材は、シルクフィブロイン濃度および形成方法の変更を通じて、その硬度および不透明度について調整され得る。1つの態様において、真皮充填材は、シルクフィブロインマトリックス(または発泡体)を、それらを圧縮し針またはカニューレを通じて組織に注射できるよう、例えば約1%(w/v)〜約6%(w/v)のシルクフィブロイン溶液から形成することによって製造され得る。針またはカニューレは、4mm以下、3mm以下、2mm以下、1mm以下、0.8mm以下、0.6mm以下、0.4mm以下、0.2mm以下または0.1mm以下の外径を有し得る。いくつかの態様において、針またはカニューレのゲージは、10〜34、11〜34、12〜32または13〜30の範囲であり得る。いくつかの態様において、針またはカニューレのサイズは、少なくとも40Nの適当な押出力を実現すよう決定され得る。注射されるシルクフィブロインマトリックスのサイズに依存して、いくつかの態様において、針またはカニューレのサイズは、40N(ヒトの手による名目上の送達可能な注射力)未満の適当な押出力を実現するよう決定され得る。
【0116】
したがって、本明細書に提供される別の局面は、それを必要とする対象の皮膚の状況および/または外観を改善する方法に関する。皮膚の状況および/または外観の非限定的な例は、脱水症、皮膚の弾性の欠如、荒れ、皮膚の張りの欠如、皮膚のストレッチ線および/またはストレッチマーク、皮膚の蒼白および皮膚のしわを含む。この方法は、本明細書に記載される注射可能な組成物を対象の真皮領域に注射する工程を含み、注射は皮膚の状況および/または外観を改善する。例えば、皮膚の外観を改善することは、皮膚を再水和させること、皮膚に高い弾性を提供すること、皮膚の荒れを減らすこと、皮膚をより張りのある状態にすること、ストレッチ線またはストレッチマークを減らすまたはなくすこと、皮膚の蒼白を減らすために皮膚により良い色調、光沢、明るさおよび/または輝きを与えること、皮膚のしわを減らすまたはなくすこと、および皮膚に防しわ性を提供することを含むがこれらに限定されない。
【0117】
本明細書で使用される場合、「真皮領域」という用語は、真皮表層部(乳頭領域)および真皮深部(網状領域)を含む表皮真皮境界部および真皮を含む皮膚の領域を表す。皮膚は、3つの主要な層:防水性を提供し、感染に対する障壁として機能する表皮;皮膚付随物のための場所として機能する真皮;および皮下組織(皮下脂肪層)、から構成される。表皮は血管を含まず、真皮からの拡散により栄養を得ている。表皮を形成する主要な細胞型は、ケラチン細胞、メラニン細胞、ランゲルハンス細胞およびメルケル細胞を含むがこれらに限定されない。
【0118】
真皮は、結合組織からなる表皮下の皮膚層であり、応力およびひずみに対する身体のクッションとなる。真皮は、基底膜によって表皮に緊密に結合されている。これはまた、触感および熱の感覚を提供する多くの機械受容器/神経終末を保有している。これは毛包、汗腺、皮脂腺、アポクリン腺、リンパ管および血管を含んでいる。真皮の血管は、それ自身の細胞および表皮の基底層に対する栄養補給および老廃物除去を提供する。真皮は構造的に2つの領域:乳頭領域と呼ばれる表皮に隣接する表層領域および網状領域として公知のより深部の厚い領域に分けられる。
【0119】
乳頭領域は、ゆるい疎性結合組織から構成される。その名は、表皮に向かって延びる乳頭と呼ばれるその指のような突起物に由来する。乳頭は、表皮と互いに入り組んだ「でこぼこの」表面を真皮に提供し、この2つの皮膚層の間の結合を強固にしている。網状領域は、乳頭領域の深部に位置し、通常ずっと厚みがある。これは、高密度の不規則な結合組織から構成され、それを編み上げている高濃度のコラーゲン性、弾性および網状の繊維からその名前がきている。これらのタンパク質繊維は、真皮にその強度、伸展性および弾性の特性を付与している。この網状領域には毛根、皮脂腺、汗腺、受容器、爪および血管も位置している。妊娠に起因するストレッチマークも真皮に位置する。
【0120】
皮下組織は、皮膚の一部ではなく、真皮の下に存在している。その目的は皮膚をその下層にある骨および筋肉に接着させることならびにそれに血管および神経を供給することである。これは、疎性結合組織およびエラスチンからなっている。主要な細胞型は繊維芽細胞、マクロファージおよび脂肪細胞(皮下組織は、体脂肪の50%を含んでいる)である。脂肪は、身体のパッドおよび遮蔽物として機能する。
【0121】
1つの態様において、本明細書には、皮膚の脱水症を処置する方法であって、皮膚の脱水症を患った真皮領域に本明細書に記載される注射可能な組成物を注射する工程を含み、例えば、該組成物は、シルクフィブロインマトリックスならびに場合により担体および/または活性剤を含み、該組成物の注射が皮膚を再水和させ、それによって皮膚の脱水症を処置する、方法、が提供される。
【0122】
別の態様において、皮膚の弾性の欠如を処置する方法は、皮膚の弾性の欠如を患った真皮領域に本明細書に記載される注射可能な組成物を注射する工程を含み、例えば、該組成物は、複数のシルクフィブロインマトリックスならびに場合により担体および/または活性剤を含み、該組成物の注射が皮膚の弾性を増大させ、それによって皮膚の弾性の欠如を処置する。
【0123】
さらに別の態様において、皮膚の荒れを処置する方法は、皮膚の荒れを患った真皮領域に本明細書に記載される注射可能な組成物を注射する工程を含み、例えば、該組成物は、シルクフィブロインマトリックスならびに場合により担体および/または活性剤を含み、該組成物の注射が皮膚の荒れを減らし、それによって皮膚の荒れを処置する。
【0124】
さらに別の態様において、皮膚の張りの欠如を処置する方法は、皮膚の張りの欠如を患った真皮領域に本明細書に記載される注射可能な組成物を注射する工程を含み、例えば、該組成物は、本明細書に記載されるシルクフィブロインマトリックスならびに場合により担体および/または活性剤を含み、該組成物の注射が皮膚をより張りのある状態にし、それによって皮膚の張りの欠如を処置する。
【0125】
さらなる態様において、皮膚のストレッチ線またはストレッチマークを処置する方法は、皮膚のストレッチ線またはストレッチマークを患った真皮領域に本明細書に記載される注射可能な組成物を注射する工程を含み、例えば、該組成物は、本明細書に記載されるシルクフィブロインマトリックスならびに場合により担体および/または活性剤を含み、該組成物の注射が皮膚のストレッチ線またはストレッチマークを減らしまたはなくし、それによって皮膚のストレッチ線またはストレッチマークを処置する。
【0126】
別の態様において、皮膚のしわを処置する方法は、皮膚のしわを患った真皮領域に本明細書に記載される注射可能な組成物を注射する工程を含み、例えば、該組成物は、シルクフィブロインマトリックスならびに場合により担体および/または活性剤を含み、該組成物の注射が皮膚のしわを減らしまたはなくし、それによって皮膚のしわを処置する。
【0127】
さらに別の態様において、皮膚のしわの形成を処置する、予防するまたは遅らせる方法は、しわができやすいまたはしわの兆候を示す真皮領域に本明細書に記載される注射可能な組成物を注射する工程を含み、例えば、該組成物は、シルクフィブロインマトリックスならびに場合により担体および/または活性剤を含み、該組成物の注射が皮膚に皮膚のしわに対する耐性を与え、それによって皮膚のしわの形成を処置する、予防するまたは遅らせる。
【0128】
真皮領域に注射されるシルクフィブロインマトリックスの有効量/サイズおよび投与スケジュールは、非限定的に、皮膚状況のタイプ、皮膚状況の位置、皮膚状況の原因、皮膚状況の重篤度、望まれる救済の程度、望まれる救済の期間、使用される個々のシルクフィブロインマトリックス製剤、使用される個々のシルクフィブロインマトリックス製剤の分解または容量保持率、使用される個々のシルクフィブロインマトリックス製剤の薬力学、使用される個々のシルクフィブロインマトリックス製剤に含まれる他の化合物の性質、個人の個々の特徴、病歴および危険因子、例えば年齢、体重、全般健康およびそれらの任意の組み合わせを含む様々な要因を考慮して当業者によって決定され得る。いくつかの態様において、シルクフィブロインマトリックスは、3ヶ月毎、6ヶ月毎、9ヶ月毎、毎年、2年毎またはそれ以上の間隔で真皮領域に注射され得る。
【0129】
別の局面において、注射可能な組成物は、軟部組織である身体の一部分、例えば唇、乳房、乳房の一部分、例えば乳頭、筋肉または脂肪および/または結合組織が形状、遮蔽またはその他の生物学的機能を提供するために使用される任意のその他の柔らかい身体の一部分を再建または増強するための真皮の増量のための真皮充填材として使用され得る。これらの適用で使用される充填材における、シルクフィブロインの濃度および/またはシルクフィブロインマトリックス混合物に添加される担体(例えば、生理食塩水)の量は、その生物学的環境の関連する制約を考慮して調節され得る。例えば、乳房の増強のためのシルクフィブロインマトリックスは、シルクフィブロイン濃度および処理方法の変更を通じてマトリックスの硬度および容量保持性に関して適合され得る。例えば、場合により活性剤、例えば脂肪細胞、例えば脂肪由来幹細胞または吸引脂肪由来の細胞を含む、約1%(w/v)〜約10%(w/v)のシルクフィブロイン濃度が、シルクフィブロインマトリックスを製造するために使用され得る。担体含有量は、生理食塩水の場合、0%〜25%(v/v)のオーダーであり得る。他の要因、例えば欠損のタイプ、欠損のサイズおよび個別の充填材の注射深度に対する要求、も考慮されるべきである。
【0130】
制約されることを望まないが、注射が最小の侵襲性であるものの、他の投与方法、例えば、必要とされる場合、例えば大きな欠損領域を修復または増強するために、移植、も使用され得る。例えば、真皮への注射または唇の増強のために、26g〜30gのサイズのシリンジ針が使用され得る。多量の充填材を用いる適用、例えば乳房の再建または増強においては、より大きなマトリックスサイズおよびより大きな口径の針またはより小さな針ゲージ、例えば23g〜27gが、充填材を投与するために使用され得る。いくつかの態様において、外科手術、例えば移植、もまた、多量の充填材を投与するためおよび/または特定の組織深度に到達するために使用され得る。
【0131】
したがって、さらなる局面において、本明細書の提供は、軟部組織の再建、修復または増強の方法であって、本明細書に記載される注射可能な組成物をそれを必要とする個体の軟部組織領域に投与する工程を含み;該組成物は、本明細書に記載されるシルクフィブロインマトリックスならびに場合により活性剤および/または担体を含む、方法、に関する。本明細書に記載される注射可能な組成物の投与方法は、当業者によって決定され得る。いくつかの態様において、投与方法は、注射であり得る。いくつかの態様において、投与方法は、外科手術、例えば移植、であり得る。
【0132】
本明細書に記載される注射可能な組成物および/またはシルクフィブロインマトリックスは標的領域に直接適用され得るが(例えば、注射または外科手術)、いくつかの態様において、本明細書に開示される注射可能な組成物および/またはシルクフィブロインマトリックスはまた、欠損領域に設置される膨張可能で移植可能な医療デバイス、例えば、膨張可能な乳房インプラントシェルを満たすために使用され得る。そのような態様において、本明細書には、軟部組織の再建、修復または増強の方法であって、移植可能な医療デバイスを個体の軟部組織の領域の所望の位置に設置する工程;ならびにデバイスを本明細書に記載されるシルクフィブロインマトリックスおよび/または注射可能な組成物で満たすことによってデバイスを膨張させる工程、を含み、本明細書に記載されるシルクフィブロインマトリックスおよび/または注射可能な組成物を満たすことによる医療デバイスの膨張は、軟部組織を再建または増強し得る、方法、が提供される。
【0133】
本明細書に開示されるシルクフィブロインマトリックスまたは注射可能な組成物はまた、子宮筋腫の経皮処置のための子宮動脈塞栓を含む、異常な血管(動脈)(例えば、出血を止める目的で)または臓器(過剰な機能を停止させるために、例えば、脾機能亢進の場合の脾臓の塞栓)を遮断するためのインターベンショナルラジオロジー塞栓手順と組み合わせて使用され得る。シルクフィブロインマトリックスの硬度および容量保持率の調整は、上記のようにシルクフィブロイン濃度および処理方法の変更を通じて行われ得る。
【0134】
本明細書に開示されるシルクフィブロインマトリックスまたは注射可能な組成物は、隣接する椎体間の正常な距離を維持するのを補助するために、例えば脊椎円板の髄核除去手術によって形成された、脊椎の空隙部を修復するために使用され得る。いくつかの態様において、複数のシルクフィブロインマトリックスを含む椎間板充填材が、脊椎の、例えば椎体間、および/または破壊された脊椎円板に存在する空隙部を修復するために使用され得る。そのような態様において、本明細書に記載されるシルクフィブロインマトリックスを製作するために、約1%(w/v)〜約10%(w/v)のシルクフィブロイン濃度が使用され得る。反応促進剤および/または活性剤もまた、関心対象の部位への注射前、注射時または注射後に、シルクフィブロインマトリックスおよび/または注射可能な組成物に混合され得る。
【0135】
本明細書に開示されるシルクフィブロインマトリックスまたは注射可能な組成物は、眼球の構造を支持し、網膜の位置を維持するために、硝子体腔を満たすのに使用され得る。本明細書に記載される注射可能な組成物の粘度は、当業者により、眼内の硝子体液の粘度に調節され得る。
【0136】
いくつかの態様において、シルクフィブロインマトリックスおよび/または注射可能な組成物は、組織の再建もしくは増強、例えば軟部組織の再建もしくは増強(例えば、乳房の増強)のための、さらには小骨または軟骨の欠損、例えば骨折のためのテンプレートとして使用され得る。本明細書に記載されるシルクフィブロインマトリックスまたは注射可能な組成物の投与は、軟骨/骨の修復を改善するため、軟骨/骨細胞の内方成長および増殖を促進しコラーゲンマトリックスの蓄積を支持するために使用され得る。別の局面において、細胞集団を拡張し軟骨組織の発達を促進するため、投与の前に、ドナーの軟骨細胞が、本明細書に記載されるシルクフィブロインマトリックスおよび/または注射可能な組成物に播種または混合される。いくつかの態様において、軟骨または骨の組織形成を支持する特定の成長因子、例えば、それぞれ、TGF-βまたは骨形態形成タンパク質(BMP)が、シルクフィブロインマトリックスに添加され得る。
【0137】
別の態様において、本明細書に記載されるシルクフィブロインマトリックスおよび/または注射可能な組成物は、顔の整形手術、例えば鼻の再建、のために使用され得る。軟骨/骨の欠損を修復するための上記の再建戦略もまた、顔の整形手術に適用可能であり得る。
【0138】
いくつかの態様において、本明細書に記載されるシルクフィブロインマトリックスおよび/または注射可能な組成物は、組織工学において細胞成長を支持するためのスキャホールドとして使用され得る。例えば、本明細書に記載されるシルクフィブロインマトリックスおよび/または注射可能な組成物は、創傷の治癒または創傷の顕示を促進するために、切開または創傷部位に投与され得る。この方法は、通常、本明細書に記載される注射可能な組成物またはシルクフィブロインマトリックスを創傷または切開部位に投与する工程、およびシルクフィブロインマトリックスが体内で浸食または吸収されそれが個体自身の生組織と置き換わる間に創傷または切開を治癒させる工程を含む。この方法はさらに、投与前または投与時に、その個体由来またはドナー由来のいずれかの生細胞材料をシルクフィブロインマトリックスに播種するまたは注射可能な組成物と混合する工程を含み得る。
【0139】
別の局面において、シルクフィブロインマトリックスを含む注射可能な組成物は、対象の組織を修復、増強または再建する、例えばヒトの乳房を増強または再建する方法において、直接的または間接的に使用され得る。いくつかの態様において、注射可能な組成物またはシルクフィブロインマトリックスは、例えば注射によって、修復または増強したい組織(例えば、乳房組織)に直接的に設置され得る。注射可能な組成物またはシルクフィブロインマトリックスは、6ヶ月毎、毎年、2年毎、3年毎またはそれより長い間隔で、組織(例えば、乳房組織)に注射され得る。他の態様において、注射可能な組成物またはシルクフィブロインマトリックスは、例えば乳房インプラントの下側支柱位置の支持を強化することによって、従来的な組織インプラントの支持を強化するために、使用され得る。代替の態様において、この方法は、通常、組織インプラント、例えば従来的な乳房インプラントの付近または近位に注射可能な組成物および/またはシルクフィブロインマトリックスを投与する工程、ならびに投与前または投与時に注射可能な組成物および/またはシルクフィブロインマトリックスに生細胞材料を播種する工程、を含み得る。さらに別の態様において、注射可能な組成物および/またはシルクフィブロインマトリックスは、宿主の細胞との優れた境界面を提供するためにおよび位置異常または被膜拘縮の可能性を減らすために組織インプラント(例えば、乳房インプラント)を部分的または完全に覆うために使用され得る。
【0140】
いくつかの態様において、本明細書に記載されるシルクフィブロインマトリックスおよび/または注射可能な組成物は、例えば顔の脂肪異栄養症を処置するために、脂質生成を促進または支持するための充填材として使用され得る。そのような態様において、注射可能な組成物および/またはシルクフィブロインマトリックスは、対象の顔の脂肪異栄養症を患った標的領域への注射の前または注射と同時に、脂肪関連細胞、例えば脂肪由来幹細胞、または吸引脂肪を播種され得るまたはこれらと混合され得る。いくつかの態様において、シルクフィブロインマトリックスは、処置を維持するために、3ヶ月毎、6ヶ月毎、9ヶ月毎、毎年もしくは2年毎またはそれより長い間隔で注射され得る。
【0141】
さらに別の態様において、本明細書に記載されるシルクフィブロインマトリックスおよび/または注射可能な組成物は、末梢神経の修復に有用な細胞のスキャホールドとして使用され得る。シルクフィブロインマトリックスは、神経終末との接続を補助する追加のデバイスを用いてまたは用いずに、神経の欠損位置に(例えば、注射を通じて)送達され得る。そのような目的で、神経の再生を支持する特定の成長因子、例えば、神経成長因子(NGF)が、投与前または投与時に、注射可能な組成物に添加および/またはシルクフィブロインマトリックスに混合され得る。そのような態様において、例えば約0.5(w/v)〜約3%(w/v)のシルクフィブロイン濃度を用いる柔らかいシルクフィブロインマトリックスが使用され得る。脳のミクロ環境に依存して、より硬いシルクフィブロインマトリックスも使用され得る。シルクフィブロインマトリックスおよび/または注射可能な組成物は、上記の方法にしたがい、適当な治療因子と共に注入または適当な治療因子を添加され得る。
【0142】
本明細書に記載される任意の細胞が、本明細書に記載されるシルクフィブロインマトリックスの表面に播種され得る。例えば、シルクフィブロインマトリックスは、関心対象の細胞に適した成長培地に浸漬され、次いで細胞に直接曝露され得る。細胞は、シルクフィブロインマトリックスの表面および隙間で増殖する。シルクフィブロインマトリックスは、その後、成長培地から取り出され、必要な場合洗浄され、そして投与される。あるいは、細胞が適当な緩衝液または液体成長培地中に入れられ、そして減圧濾過を用いることによってシルクフィブロインマトリックスを通して吸い取られ得る。細胞はまた、シルクフィブロインマトリックスを形成する前に、シルクフィブロイン溶液と混合され得、その細胞の少なくともいくつかがシルクフィブロインマトリックス内に捕捉される得る。別の態様において、関心対象の細胞が適当な溶液(例えば、成長培地または緩衝液)に分散され、次いでシルクフィブロインマトリックスに噴霧され得る。例えば、電気スプレーは、適当な粘度および濃度を有する細胞含有溶液を、細胞を含有する溶液の小さな荷電した液滴の噴霧物を得るのに十分な電場に供するものである。
【0143】
いくつかの態様において、少なくとも1つの活性剤を含むシルクフィブロインマトリックスまたは注射可能な組成物は、薬物送達のプラットフォームとして使用され得る。例えば、シルクフィブロインマトリックスは、薬剤がマトリックス中に取り込まれているかまたはマトリックスに結合されているかのいずれかの状態で形成され、次いで体内に投与(例えば、注射、移植、または経口投与でもある)され得る。いくつかの態様において、活性剤がシルクフィブロインマトリックスおよび/または注射可能な組成物と混合され、次いで体内に投与(例えば、注射、移植、または経口投与でもある)され得る。延長または持続放出の場合、シルクフィブロインマトリックスは、例えば、その容量保持および/または分解率のためにそのベータシート含有量を調整するよう操作され得る。薬物放出プロファイルをさらに制御するため、薬学的に活性な薬物を含有するシルクフィブロインマトリックスは、粘性誘導成分、界面活性剤および/または生理食塩水のような内部潤滑流体(included lubricant fluid)を含むまたは含まないのいずれかの、担体としての役割を果たす追加のシルクフィブロインゲル相と混合され得る。治療剤が結合されたシルクフィブロインマトリックスはまた、さらに、その安定性を強化し放出期間を延長するために架橋され得る。代替のアプローチにおいて、シルクフィブロインマトリックスは、特定の成長因子またはサイトカインの放出を長期化させるためおよびその機能を安定化させるために、他のポリマー、例えばヒアルロン酸、と混合され得る。さらに、シルクフィブロインマトリックスおよび/または注射可能な組成物はまた、例えば噴霧によって、同軸型の薬物送達システムをコーティングするために使用され得る。
【0144】
本明細書で使用される場合、「持続放出」という用語は、約7日間またはそれ以上の期間にわたる薬学的に活性な薬物の放出を表す。この態様の局面において、シルクフィブロインマトリックスおよび/または注射可能な組成物を含む薬物送達プラットフォームは、例えば、投与後少なくとも約7日間、投与後少なくとも約15日間、投与後少なくとも約30日間、投与後少なくとも約45日間、投与後少なくとも約60日間、投与後少なくとも約75日間または投与後少なくとも約90日間の期間にわたり、薬学的に活性な薬物を放出する。
【0145】
本明細書で使用される場合、「延長放出」という用語は、約7日間未満の期間にわたる薬学的に活性な薬物の放出を表す。そのような態様において、本明細書に記載されるシルクフィブロインマトリックスおよび/または注射可能な組成物を含む薬物送達プラットフォームは、例えば、投与後約1日間、投与後約2日間、投与後約3日間、投与後約4日間、投与後約5日間または投与後約6日間の期間にわたり、薬学的に活性な薬物を放出し得る。
【0146】
シルクフィブロインマトリックスの製剤化および処理方法ならびに関連する適用に依存して、注射可能な組成物またはシルクフィブロインマトリックスは、定期的に、例えば、3ヶ月毎、4ヶ月毎、5ヶ月毎、6ヶ月毎、7ヶ月毎、8ヶ月毎、9ヶ月毎、10ヶ月毎、11ヶ月毎、毎年、2年毎またはそれ以上の間隔で、(例えば、注射により)投与され得る。いくつかの態様において、注射可能な組成物またはシルクフィブロインマトリックスは、修復または増強したい組織に1回投与され得、そして組織は時間と共に再生し、シルクフィブロインマトリックスと置き換わり得る。
【0147】
本明細書に記載される任意の適用のいくつかの態様において、注射可能な組成物またはシルクフィブロインマトリックスは、修復または増強したい組織に投与される際、少なくとも部分的に乾燥した状態であり得る。いくつかの態様において、注射可能な組成物またはシルクフィブロインマトリックスは、修復または増強したい組織に投与される際、(例えば、担体の非存在下で)乾燥した状態であり得る。
【0148】
本明細書に記載される任意の適用のいくつかの態様において、注射可能な組成物またはシルクフィブロインマトリックスは、修復または増強したい組織に投与される際、少なくとも部分的に水和した状態であり得る。いくつかの態様において、注射可能な組成物またはシルクフィブロインマトリックスは、修復または増強したい組織に投与される際、(例えば、担体、例えば緩衝溶液および/または吸引脂肪の存在下で)水和した状態であり得る。
【0149】
本明細書に記載される任意の適用のいくつかの態様において、注射可能な組成物またはシルクフィブロインマトリックスは、皮下、筋肉下または筋肉内注射され得る。
【0150】
いくつかの態様において、本明細書に記載される方法および/または組成物は、真皮領域で使用され得る。いくつかの態様において、本明細書に記載される方法および/または組成物は、表皮層、真皮層、皮下組織層またはそれらの任意の組み合わせで使用され得る。
【0151】
シルクフィブロインマトリックスを含む送達デバイスおよびキット
本明細書に記載される注射可能な組成物またはシルクフィブロインマトリックスを含む送達デバイスもまた、本明細書に提供される。送達デバイスは、注射の目的で使用される任意の従来的な送達デバイス、例えばシリンジ、またはカスタムメードの送達デバイス、例えば注射銃、であり得る。したがって、本明細書に提供されるさらなる局面は、注射可能な組成物またはシルクフィブロインマトリックスを含む注射デバイスである。
【0152】
いくつかの態様において、送達デバイスはさらに、シルクフィブロインマトリックスを修復または増強したい組織に導入するための管状構造を含み得る。いくつかの態様において、管状構造は、先細であり得る。例えば、先細管状構造は、円錐形の内部空間を含み得る。管状構造の例は、非限定的に、針、カニューレ、カテーテル、任意の当技術分野で知られている注射用アプリケーターおよびそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0153】
いくつかの態様において、送達デバイスはさらに、圧縮されたシルクフィブロインマトリックスの管状構造を通じた出射を促進する機械的要素(例えば、細長構造、例えばラムロッド)を含み得る。
【0154】
様々な態様において、送達デバイスは、注射用担体、例えば緩衝溶液、を含み得る。
【0155】
様々な態様において、送達デバイス(例えば、シリンジ)は、麻酔剤を含み得る。
【0156】
本明細書には、送達用アプリケーター、例えばカテーテル、針またはカニューレ内にパッケージ化された注射可能な組成物またはシルクフィブロインマトリックスの1つの態様を含むキットがさらに提供される。いくつかの態様において、局所麻酔剤が、注射可能な組成物またはシルクフィブロインマトリックスとブレンドされ得る。代替の態様において、局所麻酔剤は、別の容器にパッケージ化され得る。例えば、さらなる処置の前に、処置したい標的組織に局所麻酔剤を適用することが望まれる。例示的な麻酔剤は、リドカインを含むがこれに限定されない。適用に依存して、キットは0.5 mL〜60 mLのサイズのシリンジを含み得、より大きな容量を必要とする適用(例えば、骨充填材、円板充填材)はより大きなサイズのシリンジで提供される。加えて、針のゲージは注射部位にしたがい調節され得、10g〜30gの針が許容される範囲である。例えば、10g〜20gの針が、皮内注射のために使用され得る。
【0157】
いくつかの態様において、キットはさらに、本明細書に記載される注射可能な組成物またはシルクフィブロインマトリックスを予めロードされた複数の送達デバイスを含み得る。各々の送達デバイスは、個々にパッケージ化され得る。
【0158】
いくつかの態様において、キットはさらに、緩衝溶液または注射用担体を含む容器を含み得る。
【0159】
いくつかの態様において、キットはさらに、少なくとも1つの追加の空のシリンジを含み得る。いくつかの態様において、キットはさらに、少なくとも1つの追加の針を含み得る。いくつかの態様において、キットはさらに、少なくとも1つのカテーテルまたはカニューレを含み得る。
【0160】
本明細書に記載される様々な局面の態様は、以下の番号が付された項目によって例示され得る。
1. 対象の組織を修復または増強する方法であって、圧縮されたシルクフィブロインマトリックスを含む組成物を修復または増強したい組織に設置する工程を含み、ここで、圧縮されたシルクフィブロインマトリックスは組織に設置すると膨張し、かつ少なくとも約2週間、組織内でその当初の膨張時容量の少なくとも約1%を保持する、方法。
2. 圧縮されたシルクフィブロインマトリックスが、圧縮されたシルクフィブロインマトリックスの容量に対して少なくとも約2倍、容量を膨張させる、項目1記載の方法。
3. シルクフィブロインマトリックスが、少なくとも約2週間、少なくとも約6週間、または少なくとも約3ヶ月間、組織内でその当初の膨張時容量の少なくとも約50%を保持する、項目1または2記載の方法。
4. シルクフィブロインマトリックスが、少なくとも約6ヶ月間、組織内でその当初の膨張時容量の少なくとも約50%を保持する、項目1〜3のいずれかに記載の方法。
5. シルクフィブロインマトリックスが、少なくとも約6週間、組織内でその当初の膨張時容量の少なくとも約60%を保持する、項目1〜4のいずれかに記載の方法。
6. シルクフィブロインマトリックスが、少なくとも約6週間、組織内でその当初の膨張時容量の少なくとも約70%を保持する、項目5記載の方法。
7. シルクフィブロインマトリックスが、少なくとも約6週間、組織内でその当初の膨張時容量の少なくとも約80%を保持する、項目6記載の方法。
8. シルクフィブロインマトリックスが、少なくとも3ヶ月間、組織内でその当初の膨張時容量の少なくとも約70%を保持する、項目1〜7のいずれかに記載の方法。
9. シルクフィブロインマトリックスが、少なくとも約6週間でその当初の膨張時容量の50%以下を分解するよう適合されている、項目1〜8のいずれかに記載の方法。
10. シルクフィブロインマトリックスが、少なくとも約3ヶ月間でその当初の膨張時容量の50%以下を分解するよう適合されている、項目9記載の方法。
11. シルクフィブロインマトリックスが、少なくとも約6週間でその当初の膨張時容量の30%以下を分解するよう適合されている、項目1〜10のいずれかに記載の方法。
12. シルクフィブロインマトリックスが、少なくとも約6週間でその当初の膨張時容量の10%以下を分解するよう適合されている、項目11記載の方法。
13. シルクフィブロインマトリックスが、少なくとも約3ヶ月間でその当初の膨張時容量の30%以下を分解するよう適合されている、項目1〜12のいずれかに記載の方法。
14. シルクフィブロインマトリックスが多孔質である、項目1〜13のいずれかに記載の方法。
15. 多孔質シルクフィブロインマトリックスが、少なくとも約1%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、または少なくとも約30%の多孔度を有する、項目14記載の方法。
16. 多孔質シルクフィブロインマトリックスが、少なくとも約50%の多孔度を有する、項目15記載の方法。
17. 多孔質シルクフィブロインマトリックスが、少なくとも約70%の多孔度を有する、項目16記載の方法。
18. 孔が約1μm〜約1500μmのサイズを有する、項目14〜17のいずれかに記載の方法。
19. 孔が約50μm〜約650μmのサイズを有する、項目18記載の方法。
20. シルクフィブロインマトリックスが、約0.1% w/v〜約30% w/vのシルクフィブロイン溶液から形成される、項目1〜19のいずれかに記載の方法。
21. シルクフィブロイン溶液が、約0.5% w/v〜約10% w/vである、項目20記載の方法。
22. シルクフィブロイン溶液が、約1% w/v〜約6% w/vである、項目21記載の方法。
23. シルクフィブロインマトリックスがフリーザー処理される、項目1〜22のいずれかに記載の方法。
24. シルクフィブロインマトリックスが、シルクフィブロイン発泡体である、項目1〜23のいずれかに記載の方法。
25. 組成物またはシルクフィブロインマトリックスが、少なくとも1つの活性剤をさらに含む、項目1〜24のいずれかに記載の方法。
26. 少なくとも1つの活性剤が、生物学的活性剤、美容活性剤、細胞接着剤、またはそれらの任意の組み合わせである、項目25記載の方法。
27. 生物学的活性剤が、治療剤、麻酔剤、細胞成長因子、ペプチド、ペプチド模倣体、抗体またはその一部分、抗体様分子、核酸、多糖類、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、項目26記載の方法。
28. 細胞接着剤が、ヒアルロン酸、コラーゲン、架橋ヒアルロン酸/コラーゲン、インテグリン結合分子、キトサン、エラスチン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、プロテオグリカン、それらの任意の誘導体、それらの任意のペプチドまたはオリゴ糖変種、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、項目26記載の方法。
29. 美容活性剤が、アンチエイジング剤、抗フリーラジカル剤、抗酸化物質、水和剤、美白剤、着色剤、脱色剤、日焼け止め剤、筋弛緩剤、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、項目26記載の方法。
30. 組成物が細胞をさらに含む、項目1〜29のいずれかに記載の方法。
31. 細胞が幹細胞である、項目30記載の方法。
32. 組成物が生物学的流体または濃縮物をさらに含む、項目1〜31のいずれかに記載の方法。
33. 生物学的流体または濃縮物が、吸引脂肪、吸引骨髄またはそれらの任意の組み合わせである、項目32記載の方法。
34. 組成物またはシルクフィブロインマトリックスがヒドロゲルをさらに含む、項目1〜33のいずれかに記載の方法。
35. 組成物またはシルクフィブロインマトリックスが真皮充填材料をさらに含む、項目1〜34のいずれかに記載の方法。
36. 真皮充填材料が、ポリ(メチルメタクリレート)マイクロスフィア、ヒドロキシルアパタイト、ポリ(L-乳酸)、ヒアルロン酸、コラーゲン、ゼラチン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、項目35記載の方法。
37. 組成物が担体をさらに含む、項目1〜36のいずれかに記載の方法。
38. シルクフィブロインマトリックスが両親媒性ペプチドを含まない、項目1〜37のいずれかに記載の方法。
39. 両親媒性ペプチドがRGDモチーフを含む、項目38記載の方法。
40. 圧縮されたシルクフィブロインマトリックスの設置が、注射によって行われる、項目1〜39のいずれかに記載の方法。
41. 注射が皮下、筋肉下または筋肉内に行われる、項目40記載の方法。
42. 組織が軟部組織である、項目1〜41のいずれかに記載の方法。
43. 軟部組織が、腱、靭帯、皮膚、乳房組織、繊維組織、結合組織、筋肉、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、項目42記載の方法。
44. 軟部組織が皮膚である、項目43記載の方法。
45. 軟部組織が乳房組織である、項目44記載の方法。
46. 対象が哺乳動物対象である、項目1〜45のいずれかに記載の方法。
47. 哺乳動物対象がヒトである、項目46記載の方法。
48. シルクフィブロインマトリックスが、シルクフィブロインマトリックスを送達用アプリケーターの内部空間にロードすることによって圧縮され、ここで、内部空間は、未圧縮状態のシルクフィブロインマトリックスの容量よりも小さい容量を有する、項目1〜47のいずれかに記載の方法。
49. 送達用アプリケーターが、針、カニューレ、カテーテル、またはそれらの任意の組み合わせを含む、項目48記載の方法。
50. 圧縮されたシルクフィブロインマトリックスを含む、対象の組織の修復または増強に使用する注射可能な組成物であって、ここで、圧縮されたシルクフィブロインマトリックスは組織に注射すると膨張し、かつ少なくとも約2週間、組織内でその当初の膨張時容量の少なくとも約1%を保持する、組成物。
51. 圧縮されたシルクフィブロインマトリックスが、圧縮されたシルクフィブロインマトリックスの容量に対して少なくとも約2倍、容量を膨張させる、項目50記載の組成物。
52. 圧縮されたシルクフィブロインマトリックスが両親媒性ペプチドを含まない、項目50または51記載の組成物。
53. 両親媒性ペプチドがRGDモチーフを含む、項目52記載の組成物。
54. シルクフィブロインマトリックスが、少なくとも約2週間、少なくとも約6週間、または少なくとも約3ヶ月間、組織内でその当初の膨張時容量の少なくとも約50%を保持する、項目50〜53のいずれかに記載の組成物。
55. シルクフィブロインマトリックスが、少なくとも約6ヶ月間、組織内でその当初の膨張時容量の少なくとも約50%を保持する、項目50〜54のいずれかに記載の組成物。
56. シルクフィブロインマトリックスが、少なくとも約6週間、組織内でその当初の膨張時容量の少なくとも約60%を保持する、項目50〜55のいずれかに記載の組成物。
57. シルクフィブロインマトリックスが、少なくとも約6週間、組織内でその当初の膨張時容量の少なくとも約70%を保持する、項目56記載の組成物。
58. シルクフィブロインマトリックスが、少なくとも約6週間、組織内でその当初の膨張時容量の少なくとも約80%を保持する、項目57記載の組成物。
59. シルクフィブロインマトリックスが、少なくとも約3ヶ月間、組織内でその当初の膨張時容量の少なくとも約70%を保持する、項目50〜58のいずれかに記載の組成物。
60. シルクフィブロインマトリックスが、少なくとも約6週間でその当初の膨張時容量の50%以下を分解するよう適合されている、項目50〜59のいずれかに記載の組成物。
61. シルクフィブロインマトリックスが、少なくとも約3ヶ月間でその当初の膨張時容量の50%以下を分解するよう適合されている、項目60記載の組成物。
62. シルクフィブロインマトリックスが、少なくとも約6週間でその当初の膨張時容量の30%以下を分解するよう適合されている、項目50〜62のいずれかに記載の組成物。
63. シルクフィブロインマトリックスが、少なくとも約6週間でその当初の膨張時容量の10%以下を分解するよう適合されている、項目62記載の組成物。
64. シルクフィブロインマトリックスが、少なくとも約3ヶ月間でその当初の膨張時容量の30%以下を分解するよう適合されている、項目50〜63のいずれかに記載の組成物。
65. シルクフィブロインマトリックスが多孔質である、項目50〜64のいずれかに記載の組成物。
66. 多孔質シルクフィブロインマトリックスが、少なくとも約1%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、または少なくとも約30%の多孔度を有する、項目65記載の組成物。
67. 多孔質シルクフィブロインマトリックスが、少なくとも約50%の多孔度を有する、項目66記載の組成物。
68. 多孔質シルクフィブロインマトリックスが、少なくとも約70%の多孔度を有する、項目67記載の組成物。
69. 孔が約1μm〜約1500μmのサイズを有する、項目65〜68のいずれかに記載の組成物。
70. 孔が約50μm〜約650μmのサイズを有する、項目69記載の組成物。
71. シルクフィブロインマトリックスが、約0.1% w/v〜約30% w/vのシルクフィブロイン溶液から形成される、項目50〜70のいずれかに記載の組成物。
72. シルクフィブロイン溶液が、約0.5% w/v〜約10% w/vである、項目71記載の組成物。
73. シルクフィブロイン溶液が、約1% w/v〜約6% w/vである、項目72記載の組成物。
74. シルクフィブロインマトリックスがフリーザー処理されている、項目50〜73のいずれかに記載の組成物。
75. シルクフィブロインマトリックスが、シルクフィブロイン発泡体である、項目50〜74のいずれかに記載の組成物。
76. 注射可能な組成物またはシルクフィブロインマトリックスが少なくとも1つの活性剤をさらに含む、項目50〜75のいずれかに記載の組成物。
77. 少なくとも1つの活性剤が、生物学的活性剤、美容活性剤、細胞接着剤、またはそれらの任意の組み合わせである、項目76記載の組成物。
78. 生物学的活性剤が、治療剤、麻酔剤、細胞成長因子、ペプチド、ペプチド模倣体、抗体またはその一部分、抗体様分子、核酸、多糖類、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、項目77記載の組成物。
79. 細胞接着剤が、ヒアルロン酸、コラーゲン、架橋ヒアルロン酸/コラーゲン、インテグリン結合分子、キトサン、エラスチン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、プロテオグリカン、それらの任意の誘導体、それらの任意のペプチドまたはオリゴ糖変種、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、項目77記載の組成物。
80. 美容活性剤が、アンチエイジング剤、抗フリーラジカル剤、抗酸化物質、水和剤、美白剤、着色剤、脱色剤、日焼け止め剤、筋弛緩剤、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、項目77記載の組成物。
81. 細胞をさらに含む、項目50〜80のいずれかに記載の組成物。
82. 細胞が幹細胞である、項目81記載の組成物。
83. 生物学的流体または濃縮物をさらに含む、項目50〜82のいずれかに記載の組成物。
84. 生物学的流体または濃縮物が、吸引脂肪、吸引骨髄、またはそれらの任意の組み合わせである、項目83記載の組成物。
85. 注射可能な組成物またはシルクフィブロインマトリックスがヒドロゲルをさらに含む、項目50〜84のいずれかに記載の組成物。
86. 注射可能な組成物またはシルクフィブロインマトリックスが真皮充填材料をさらに含む、項目50〜85のいずれかに記載の組成物。
87. 真皮充填材料が、ポリ(メチルメタクリレート)マイクロスフィア、ヒドロキシルアパタイト、ポリ(L-乳酸)、ヒアルロン酸、コラーゲン、ゼラチン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、項目86記載の組成物。
88. 担体をさらに含む、項目50〜87のいずれかに記載の組成物。
89. 圧縮されたシルクフィブロインマトリックスが、圧縮前のその当初の容量の約10%〜約90%の容量を有する、項目50〜88のいずれかに記載の組成物。
90. 圧縮されたシルクフィブロインマトリックスが、圧縮前のその当初の容量の70%以下の容量を有する、項目50〜88のいずれかに記載の組成物。
91. 項目50〜90のいずれかに記載の注射可能な組成物を含む、送達デバイス。
92. 注射可能な組成物を修復または増強したい組織に導入するための管状構造をさらに含む、項目91記載の送達デバイス。
93. 管状構造が先細である、項目92記載の送達デバイス。
94. 先細管状構造が円錐形の内部空間を含む、項目93記載の送達デバイス。
95. 管状構造が針、カニューレ、カテーテル、またはそれらの任意の組み合わせである、項目91〜94のいずれかに記載の送達デバイス。
96. 管状構造を通じた圧縮されたシルクフィブロインマトリックスの出射を促進する機械的要素をさらに含む、項目91〜95のいずれかに記載の送達デバイス。
97. 注射用担体をさらに含む、項目91〜96のいずれかに記載の送達デバイス。
【0161】
いくつかの選択された用語の定義
本明細書で使用される場合、「対象」は、ヒトまたは動物を意味する。通常、動物は、脊椎動物、例えば霊長類、げっ歯類、家畜動物または狩猟動物である。霊長類は、チンパンジー、カニクイザル、クモザルおよびマカク、例えばアカゲザルを含む。げっ歯類は、マウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウサギおよびハムスターを含む。家畜および狩猟動物は、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、バッファロー、ネコ種、例えばイエネコ、イヌ種、例えばイヌ、キツネ、オオカミ、鳥種、例えばニワトリ、エミュー、ダチョウ、ならびに魚、例えばマス、ナマズおよびサケを含む。本明細書に記載される局面の特定の態様において、対象は、哺乳動物、例えば霊長類、例えばヒトである。対象は、オスまたはメスであり得る。好ましくは、対象は、哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマまたはウシであり得るが、これらの例に限定されない。ヒト以外の哺乳動物は、組織の修復、再生および/または再建の動物モデルとなる対象として使用できる利点がある。加えて、本明細書に記載される方法および組成物は、家畜化された動物および/またはペットを処置するために使用され得る。
【0162】
「統計的に有意」または「有意」という用語は、統計的有意性を表し、概ね、参照レベルを2標準偏差(2SD)上回るまたは下回ることを意味する。この用語は、そこに差が存在することの統計的証拠を表す。これは、帰無仮説が実際に真であったときにその帰無仮説を却下する決定が為される確率と定義される。この決定はしばしば、p値を用いて行われる。
【0163】
本明細書で使用される場合、「タンパク質」および「ペプチド」という用語は、本明細書において言い換え可能に使用され、隣接する残基のアルファアミノ基とカルボキシ基の間のペプチド結合によって別の残基に接続されたひとつながりのアミノ酸残基を表す。「タンパク質」および「ペプチド」という用語は、本明細書において言い換え可能に使用され、そのサイズまたは機能によらず、修飾アミノ酸(例えば、リン酸化、糖化等)およびアミノ酸アナログを含むタンパク質アミノ酸のポリマーを表す。「タンパク質」は比較的大きなポリペプチドを参照するために使用されることが多く、「ペプチド」は小さなポリペプチドを参照するために使用されることが多いが、当技術分野におけるこれらの用語の用法は重複しかつばらつきがある。本明細書で使用される「ペプチド」という用語は、そうでないことが示されていない限り、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質およびタンパク質のフラグメントを表す。「タンパク質」および「ペプチド」という用語は、本明細書において、遺伝子産物およびそのフラグメントを参照する場合、言い換え可能に使用される。したがって、例示的なペプチドまたはタンパク質は、遺伝子産物、天然に存在するタンパク質、ホモログ、オルソログ、パラログ、フラグメントならびに上記物質のその他の等価物、変種、フラグメントおよびアナログを含む。
【0164】
本明細書で使用される「核酸」という用語は、ポリヌクレオチド、例えばデオキシリボ核酸(DNA)および、適当な場合は、リボ核酸(RNA)、1本鎖または2本鎖のいずれかの形態のそれらのポリマーを表す。個別に限定されていない限り、この用語は、参照核酸と類似の結合特性を有し、天然に存在するヌクレオチドと類似の様式で代謝される、天然ヌクレオチドの既知のアナログを含む核酸を包含する。それ以外のことが示されていない限り、個々の核酸配列は、明示的に示されている配列と共に、暗示的に、保存的に修飾されたその変種(例えば、縮重コドン置換)および相補的配列も包含する。具体的に、縮重コドン置換は、1つまたは複数の選択された(またはすべての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を生成することによって達成され得る(Batzer, et al., Nucleic Acid Res. 19:5081 (1991); Ohtsuka, et al., J. Biol. Chem. 260:2605-2608 (1985), およびRossolini, et al., Mol. Cell. Probes 8:91-98 (1994))。「核酸」という用語はまた、等価物として、ヌクレオチドアナログから生成されるRNAまたはDNAのいずれかの誘導体、変種およびアナログ、ならびに1本鎖(センスまたはアンチセンス)および2本鎖ポリヌクレオチドを含むものと理解されたい。
【0165】
「短鎖干渉RNA」(siRNA)という用語は、本明細書で「低分子干渉RNA」とも称され、標的遺伝子の発現を、例えばRNAiによって阻害するよう機能する作用物質と定義される。siRNAは、化学的に合成することができ、インビトロ転写により製造することができ、または宿主細胞中で生産することができる。siRNA分子はまた、一方の鎖が不活性化させたいメッセージと同一である2本鎖RNAの切断によっても生成することができる。「siRNA」という用語は、RNA干渉(RNAi)経路を誘導する低分子阻害性RNA2重鎖を表す。これらの分子は、様々な長さ(概ね、18〜30塩基対)であり得、そのアンチセンス鎖の中にそれらの標的mRNAに対する様々な程度の相補性を含み得る。すべてではないが一部のsiRNAは、センス60鎖および/またはアンチセンス鎖の5'または3'末端に、対を形成しないオーバーハング塩基を有する。「siRNA」という用語は、2つの別の鎖の2重鎖および2重鎖領域を含むヘアピン構造を形成することができる1本鎖を含む。
【0166】
本明細書で使用される「shRNA」という用語は、短ヘアピンRNAを表し、これはRNAiおよび/またはsiRNA種として機能するが、shRNA種が安定性の高められた2本鎖ヘアピン様構造物である点で相違する。本明細書で使用される「RNAi」という用語は、干渉性RNAを表すか、またはRNA干渉分子は核酸分子もしくはそのアナログ、例えば、遺伝子発現を阻害するRNAベースの分子、である。RNAiは、選択的な転写後遺伝子サイレンシングの手段を表す。RNAiは、特定のmRNAを破壊するかまたはRNA、例えばmRNAのプロセシングもしくは翻訳を抑制することができる。
【0167】
本明細書で使用される「酵素」という用語は、他の物質の化学反応を触媒するタンパク質分子であって、その反応の完了時に破壊されたり実質的に改変されたりしないものを表す。この用語は、天然に存在する酵素および生物工学的な酵素またはそれらの混合物を含み得る。酵素ファミリーの例は、キナーゼ、デヒドロゲナーゼ、オキシドレダクターゼ、GTPase、カルボキシルトランスフェラーゼ、アシルトランスフェラーゼ、デカルボキシラーゼ、トランスアミナーゼ、ラセマーゼ、メチルトランスフェラーゼ、ホルミルトランスフェラーゼおよびα-ケトデカルボキシラーゼを含む。
【0168】
本明細書で使用される場合、「アプタマー」という用語は、選択された非オリゴヌクレオチド分子または分子群を特異的に認識することができる1本鎖、部分的に1本鎖、部分的に2本鎖または2本鎖のヌクレオチド配列を意味する。いくつかの態様において、アプタマーは、ワトソン・クリック塩基対または3重鎖形成以外のメカニズムによって非オリゴヌクレオチド分子または分子群を認識する。アプタマーは、非限定的に、ヌクレオチド、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、修飾ヌクレオチドならびに骨格修飾、分枝点および非ヌクレオチド残基、基または架橋を含むヌクレオチドを含む、定義された配列セグメントおよび配列を含み得る。分子に結合するアプタマーを選択する方法は、当技術分野で広く知られており、当業者はそれに容易にアクセスすることができる。
【0169】
本明細書で使用される場合、「抗体("antibody"または"antibodies")」という用語は、インタクトな免疫グロブリンまたはFc(結晶化フラグメント)領域もしくはFc領域のFcRn結合フラグメントを有するモノクローナルもしくはポリクローナル抗原結合フラグメントを表す。「抗体」という用語はまた、「抗体様分子」、例えば抗体のフラグメント、例えば抗原結合フラグメントを含む。抗原結合フラグメントは、組換えDNA技術によってまたはインタクトな抗体の酵素的もしくは化学的切断によって製造することができる。「抗原結合フラグメント」は、特に、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、dAbおよび相補性決定領域(CDR)フラグメント、単鎖抗体(scFv)、単一ドメイン抗体、キメラ抗体、ダイアボディならびにそのポリペプチドに特異的抗原結合性を付与するのに十分な免疫グロブリンの少なくとも一部分を含むポリペプチドを含む。本明細書に記載される目的上、リニア抗体も含まれる。Fab、Fc、pFc'、F(ab')2およびFvという用語は、標準的な免疫学的意味で用いられる(Klein, Immunology (John Wiley, New York, N.Y., 1982); Clark, W.R. (1986) The Experimental Foundations of Modern Immunology (Wiley & Sons, Inc., New York); およびRoitt, I. (1991) Essential Immunology, 7th Ed., (Blackwell Scientific Publications, Oxford))。様々な抗原に対する特異的な抗体または抗原結合フラグメントが、R&D Systems、BD Biosciences、e-BiosciencesおよびMiltenyi等の販売元から市販されており、またはそれらは当業者に公知の方法によってこれらの細胞表面マーカーに対して産生することができる。
【0170】
本明細書で使用される場合、「相補性決定領域」(CDR;すなわち、CDR1、CDR2およびCDR3)という用語は、抗原への結合のために存在する必要のある抗体の可変ドメインのアミノ酸残基を表す。各可変ドメインは、典型的に、CDR1、CDR2およびCDR3として特定される3つのCDR領域を有する。各々の相補性決定領域は、Kabatにより定義される「相補性決定領域」のアミノ酸残基(すなわち、軽鎖可変ドメインのおよそ24〜34(L1)、50〜56(L2)および89〜97(L3)の残基ならびに重鎖可変ドメインのおよそ31〜35(H1)、50〜65(H2)および95〜102(H3)の残基;Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))ならびに/または「超可変ループ」の残基(すなわち、軽鎖可変ドメインのおよそ26〜32(L1)、50〜52(L2)および91〜96(L3)の残基ならびに重鎖可変ドメインのおよそ26〜32(H1)、53〜55(H2)および96〜101(H3)の残基;Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))を含み得る。いくつかの例において、相補性決定領域は、Kabatにしたがい定義されるCDR領域および超可変ループの両方のアミノ酸を含み得る。
【0171】
「リニア抗体」という表現は、Zapata et al., Protein Eng., 8(10):1057-1062 (1995)に記載される抗体を表す。簡潔に説明すると、これらの抗体は、一対の直列のFdセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含み、これが相補的な軽鎖ポリペプチドと一対の抗原結合領域を形成しているものである。リニア抗体は、2特異性または単特異性であり得る。
【0172】
本明細書で使用される場合、「単鎖Fv」または「scFv」抗体フラグメントという表現は、抗体のVHおよびVLドメインを含み、これらのドメインが単一のポリペプチド鎖に存在している抗体フラグメントを意味することが意図される。好ましくは、Fvポリペプチドはさらに、VHとVLドメインの間に、そのscFvが抗原結合に望ましい構造を形成できるようにするポリペプチドリンカーを含む(Pluckthun, The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., Springer- Verlag, New York, pp. 269-315 (1994))。
【0173】
本明細書で使用される場合、「ダイアボディ(diabody)」という用語は、2つの抗原結合部位を有し、同一ポリペプチド鎖中に軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む(VH-VL)、小さな抗体フラグメントを表す。同一鎖中の2つのドメイン間で対形成するには短すぎるリンカーを使用することによって、これらのドメインは別の鎖の相補的ドメインと対を形成し、2つの抗原結合部位を生成することを強いられる(EP 404,097; WO 93/11161; Hollinger et ah, Proc. Natl. Acad. Sd. USA, P0:6444-6448 (1993))。
【0174】
本明細書で使用される場合、「低分子」という用語は、ペプチド、ペプチド模倣体、アミノ酸、アミノ酸アナログ、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドアナログ、アプタマー、ヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、約10,000グラム/モル未満の分子量を有する有機または無機化合物(すなわち、ヘテロ有機化合物および有機金属化合物を含む)、約5,000グラム/モル未満の分子量を有する有機または無機化合物、約1,000グラム/モル未満の分子量を有する有機または無機化合物、約500グラム/モル未満の分子量を有する有機または無機化合物、ならびにそのような化合物の塩、エステルおよびその他の薬学的に許容できる形態を含むがこれらに限定されない天然または合成分子を表す。
【0175】
「抗生物質」という用語は、本明細書において、微生物の生存率を低下させるまたは微生物の成長もしくは複製を阻害する化合物または組成物を表すのに使用される。本開示において使用される場合、抗生物質はさらに、抗菌剤、静菌剤または殺菌剤を含むことが意図される。例示的な抗生物質は、ペニシリン、セファロスポリン、ペネム、カルバペネム、モノバクタム、アミノグリコシド、スルホンアミド、マクロライド、テトラサイクリン、リンコシド(lincoside)、キノロン、クロラムフェニコール、バンコマイシン、メトロニダゾール、リファンピン、イソニアジド、スペクチノマイシン、トリメトプリムおよびスルファメトキサゾールを含むがこれらに限定されない。
【0176】
「治療剤」という用語は、当技術分野で知られており、対象において局所的にまたは全身的に作用する生物学的、生理学的または薬理学的に活性な物質である任意の化学部分を表す。「薬物」とも呼ばれる治療剤の例は、周知の参考文献、例えば、Merck Index、the Physicians Desk ReferenceおよびThe Pharmacological Basis of Therapeuticsに記載されており、それらは、非限定的に、医薬;ビタミン;ミネラルサプリメント;疾患もしくは疾病を処置する、予防する、診断する、癒やすもしくは和らげるために使用される物質;身体の構造もしくは機能に影響する物質;または生理学的環境下に置かれた後に生物学的に活性となるもしくはより活性が高くなるプロドラッグを含む。対象に投与されたときに本発明の組成物から隣接する組織または流体中に放出され得る様々な形態の治療剤が使用され得る。その例は、ステロイドおよびステロイドのエステル(例えば、エストロゲン、プロゲステロン、テストステロン、アンドロステロン、コレステロール、ノルエチンドロン、ジゴキシゲニン、コール酸、デオキシコール酸およびケノデオキシコール酸)、含ホウ素化合物(例えば、カルボラン)、化学療法用ヌクレオチド、薬物(例えば、抗生物質、抗ウイルス剤、抗真菌剤)、エンジイン(例えば、カリケアマイシン、エスペラマイシン、ジネマイシン、ネオカルチノスタチンクロモフォアおよびケダルシジンクロモフォア)、重金属錯体(例えば、シスプラチン)、ホルモンアンタゴニスト(例えば、タモキシフェン)、非特異的(非抗体)タンパク質(例えば、糖オリゴマー)、オリゴヌクレオチド(例えば、標的核酸配列(例えば、mRNA配列)に結合するアンチセンスオリゴヌクレオチド)、ペプチド、タンパク質、抗体、光動力剤(例えば、ローダミン123)、放射性核種(例えば、I-131、Re-186、Re-188、Y-90、Bi-212、At-211、Sr-89、Ho-166、Sm-153、Cu-67およびCu-64)、毒素(例えば、リシン)ならびに転写ベースの医薬を含む。
【0177】
本明細書で使用される場合、「ホルモン」という用語は、概ね、天然に存在するまたは天然に存在しないホルモン、そのアナログおよび模倣体を表す。特定の態様において、「ホルモン」という用語は、治療的処置、例えば成長ホルモン処置、に使用される任意のホルモンを表す。本明細書で使用される場合、「成長ホルモン」または「GH」は、ネイティブ配列または変種形態の、任意の供給源由来の、天然、合成または組換えの、成長ホルモンを表す。その例は、ヒトネイティブ配列を有する天然または組換えGHであるヒト成長ホルモン(hGH)(ソマトトロピンまたはソマトロピン)、ならびにソマトレム、ソマトトロピンおよびソマトロピンを含む、組換えDNA技術によって生成される任意のGHまたは変種を表す、組換え成長ホルモン(rGH)、を含む。1つの態様において、ホルモンは、インスリンを含む。
【0178】
本明細書で使用される場合、「造影剤」は、例えば医学的走査または画像化時の、走査または画像の最も明るい部分と最も暗い部分の間の差の程度を、造影剤を使用しないで行った走査と比較して増大させるのに使用される任意の化学部分であり得る。例えば、造影剤は、放射性同位体、例えばインジウムまたはテクネチウムを含有する画像化剤;ヨウ素、ガドリニウムまたはシアニンを含有する色素;酵素、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ、GFP、アルカリホスファターゼまたはβ-ガラクトシダーゼ;蛍光物質、例えばユーロピウム誘導体;発光物質、例えばN-メチルアクリジウム誘導体等を含み得る。いくつかの態様において、造影剤は、金ナノ粒子および/または量子ドットを含み得る。
【0179】
本明細書で使用される場合、「実質的」という用語は、少なくとも約60%、もしくは好ましくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%もしくは少なくとも約99%もしくはそれ以上、または70%から100%の間の任意の整数、の比率を意味する。いくつかの態様において、「実質的」という用語は、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%もしくはそれ以上、または90%から100%の間の任意の整数、の比率を意味する。いくつかの態様において、「実質的」という用語は、100%を含み得る。
【0180】
本明細書で使用される場合、「含む」という用語は、提示されている定義された要素に加えて他の要素も存在し得ることを意味する。「含む」の使用は、限定ではなく包含を示している。
【0181】
「からなる」という用語は、その態様の説明の中で言及されていないあらゆる要素に対して排他的である、本明細書に記載されるその構成要素を表す。
【0182】
本明細書で使用される場合、「から本質的になる」という用語は、所定の態様に必要とされるそれらの要素を表す。この用語は、本発明の態様の基本的かつ新規または機能的な特徴に実質的に影響しない要素の存在を許容する。
【0183】
実施例を実施する以外では、またはそうでないことが示されている場合以外では、本明細書で使用される成分の量または反応条件を表すすべての数値は、すべての例において、「約」という用語により修飾されることが理解されるべきである。「約」という用語は、百分率に関連して使用される場合、±1%を意味し得る。
【0184】
単数形の用語(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示していない限り、複数の参照を含む。同様に、「または」という単語は、文脈がそうでないことを明確に示していない限り、「および」を含むことが意図されている。本開示の実施または試験には本明細書に記載されているものと類似または等価な方法および材料を使用することができるが、以下では適当な方法および材料について説明されている。「例えば(e.g.)」という略語は、ラテン語のexempli gratiaを語源とするものであり、本明細書において非限定的な例を示すのに使用される。したがって、「例えば(e.g.)」という略語は、「例えば(for example)」という用語と同義語である。
【0185】
それ以外の説明がなされていない限り、本明細書で使用されるすべての技術・科学用語は、本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者に広く理解されているのと同じ意味を有する。疾患および傷害、分離および検出技術に関する一般用語の定義は、The Merck Manual of Diagnosis and Therapy、第18版、Merck Research Laboratories発行、2006年(ISBN 0-911910-18-2);Robert S. Porter et al.(編)、The Encyclopedia of Molecular Biology、Blackwell Science Ltd.発行、1994年(ISBN 0-632-02182-9);およびRobert A. Meyers(編)、Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference、VCH Publishers, Inc.発行、1995年(ISBN 1-56081-569-8)で見出すことができる。
【0186】
本発明は本明細書に記載される特定の方法論、プロトコルおよび試薬等に限定されず、それらは変更され得るものであることを理解されたい。本明細書で使用されている用語は、特定の態様を説明する目的しか有しておらず、本発明の範囲を限定することは意図されておらず、本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0187】
本明細書を通じて特定されているすべての特許およびその他の刊行物は、明示的に、説明および開示の目的、例えば本発明に関連して使用され得るそのような刊行物に記載の方法論の説明および開示の目的で、参照により本明細書に組み入れられる。これらの刊行物は、本願の出願日より以前の開示物として提供されるにすぎない。これに関連するいかなる事情も、本発明者らがそれが先行発明であるためまたは他の何らかの理由でそのような開示物よりも先の日付を主張する資格を有さないことの承認として扱われるべきではない。日付に関するすべての言及またはこれらの文献の内容に関する表示は、出願人が入手し得た情報に基づいており、それらはそれらの日付またはこれらの文献の内容の正確性に関する何らかの承認となるものではない。
【0188】
本明細書に記載されるいくつかの態様はさらに、以下の実施例によって例示されるが、これらは限定をなすものではない。
【0189】
本願、実施例ならびに図面および表を通じて引用されているすべての参考文献の内容は、それらの全体が、参照により本明細書に組み入れられる。
【実施例】
【0190】
実施例1. 例示的な注射可能なシルクフィブロインベースの発泡体の製作
シルクフィブロイン発泡体のシートは、任意の当技術分野で知られている方法によって製造することができる。この実施例では、シルク発泡体シートを、フリーザー処理技術を用いて、例えばシルクフィブロイン溶液を直接フリーザー処理することによって、作製した。
【0191】
シルクフィブロイン溶液を調製するために、Tajimia Shoji Co.(Yokohama, Japan)または台湾の供給元から購入したボンビックス・モリのカイコ繭を小片に切断し、そして0.02M Na
2CO
3中で約10〜60分間、好ましくは約30分間沸騰させた。得られたシルクフィブロイン繊維を蒸留水でリンスし、そして乾燥させた。乾燥させたシルクフィブロイン繊維を、60℃の9.3M LiBr中で約1〜4時間、溶解するまで再溶解させた。このシルクフィブロイン溶液を、蒸留水に対して、3500ダルトンの分子量カットオフを用い、少なくとも6回の水の交換を行い、透析した。
【0192】
日本産の繭または台湾産の繭から得たシルクフィブロイン溶液(例えば、約1%〜約6% w/vの濃度を有するもの)を、容器(例えば、プラスチック製のペトリ皿)に注いだ。次いでこのシルクフィブロイン溶液を20゜F付近(およそ-7℃)で約3日間保管および維持した(例えば、EdgeStar Model FP430熱電冷却器内で保管した)。得られたシルクフィブロイン材料は、堅い固体ではなく、ゲル状であった。次いで、このゲル様シルクフィブロイン材料を、約3日間、(例えばVirTis Genesis (Model 25L Genesis SQ Super XL-70)凍結乾燥機を用いて)凍結乾燥させた。凍結乾燥機から取り出した後、この凍結乾燥させたシルクフィブロイン材料は、非常に均一な相互接続された細孔構造を有する発泡体様の材料になっていた。いくつかの態様においては、シルクフィブロイン発泡体をさらにアルコール(例えば、70%メタノール)に浸漬させ、ベータシートの形成を誘導した。そのような態様では、シルクフィブロイン発泡体シートの容量がアルコール処理後に約10%縮小し得る。アルコール処理された発泡体シートは、優れた剛性および堅牢性を示した。次いで、4mm径の生検パンチ(
図1A)を使用して、
図1Bに示されるように、シルクフィブロイン発泡体シートから小さなシルクフィブロイン発泡ディスク(およそ2mm厚)を切り出した。
【0193】
実施例2. シルクフィブロインベースの発泡体の組織注射に関する評価
注射可能なシルクフィブロインベースの発泡体コンストラクトの1つまたは複数の態様を組織に注射する可能性を評価するために、生のニワトリの大腿部において実験を行った。
図2Aは、尖った円錐形のアプリケーターのチップ、例えばピペットチップ、にロードしたシルクフィブロインベースの発泡体を示している。ピペットチップの円錐形の内部空間は、まっすぐなアプリケーターのチップ(例えば、まっすぐな針)よりも小さい摩擦および力で発泡体を射出させることができる。発泡体は、堅いワイヤーを用いてピペットチップに押し込んだ(
図2B)。例にすぎないが、いくつかの態様においては、生のニワトリ大腿部組織へのシルクフィブロインベースの発泡体の注射を、以下のようにして行った。まっすぐな14ゲージ針(およそ1.6mmの内径)を最初に使用し、ニワトリ大腿部の肉付きのよい部分に穴を開けた(
図3A)。シルクフィブロインベースの発泡体をロードしたピペットチップをこの穴に挿入し(
図3B)、そして堅いワイヤーを使用して発泡体を射出しつつゆっくりと引き抜いた(
図3C)。
図3Dは、射出され生のニワトリの大腿部に設置された発泡体を示している。このようにして、シルクフィブロインベースの発泡体を、例えば組織の空隙を満たすためまたは組織を増強するために、組織に注射することができる。
【0194】
図4A〜4Fは、注射されたシルクフィブロインベースの発泡体を摘出したことを示している。例えば、カミソリ刃を使用して生のニワトリの肉を薄切りにした(
図4Aから4D)。次に、ピンセットを用いて、シルクフィブロインベースの発泡体を抽出した(
図4Eおよび4F)。
図4Fは、抽出されたシルクフィブロインベースの発泡体がインタクトな状態であったことを示しており、このことはシルクフィブロインベースの発泡体を組織への注射後もインタクトな状態で維持できることを示している。
【0195】
実施例3. 注射可能なシルクフィブロインベースの発泡体のインビボ研究
本明細書に記載されるシルクフィブロインベースの発泡体のいくつかの態様を評価するために、ラットまたはマウスモデルを使用した。注射可能なシルクフィブロインベースの発泡体の適用および処置のためにモデル化される組織によっては、他の哺乳動物モデル(例えば、ウサギ、イヌまたはブタモデル)も使用することができる。注射前に、ラットまたはマウスを秤量し、酸素供給下でイソフルランを用いて麻酔した。直径約5mm、高さ2mmのサイズを有するシルクフィブロインベースの発泡体を、注射のために使用した。簡潔に説明すると、乾燥状態のシルクフィブロイン発泡体を、カテーテルへのロードの直前に生理食塩水に浸漬した。あるいは、乾燥状態のシルクフィブロイン発泡体を、(例えば、
図5に示されるように)カテーテルへのロードの直前に吸引脂肪に浸漬することもできる。皮下注射は、胸筋の上で行った。筋肉内および筋肉下注射は、それぞれ、大胸筋と小胸筋の間または胸筋の下で行った。ファニング式皮下注射法(fanning subcutaneous injection method)を、ラットまたはマウスの背(dorsus)において行った。注射したサンプルを、1、14、40および60日後に外植し、容量保持に関して評価した。容量保持は、2つの方法、例えば、スケール測定および容量置換によって行った。
【0196】
ロッド・アンド・プランジャーシステムを使用してシルクフィブロイン発泡体を組織に注射することができる。例えば、
図7Aは、シルクフィブロイン発泡体をインビボで、例えばマウスまたはラットモデルにおいて皮下注射するためにカスタム改良された例示的なハウプトナーシリンジを示している。このデザインは、少なくとも一部、市販のIdeal Instruments製のピストル型(ハウプトナー)シリンジに基づいている。このハウプトナーシリンジデバイスは、通常、注射器ドローロッド(Injector Drawrod)を(注射ストロークアジャスター(Injection Stroke Adjuster)を用いて)予め設定された距離分シリンジ本体側に押し進めるバネ荷重ハンドルを有する。溶液またはゲルではなく発泡体を注射するようハウプトナーシリンジデバイスを改良するため、
図7Aに示されるように、カテーテルアダプター(Catheter Adaptor)が位置するシリンジの終端を通り抜ける発泡体ラムロッド(Foam Ramrod)を作製した。カテーテルはアダプターに取り付けられる。典型的に、カテーテルは、体内から流体を取り出すために使用される管である。いくつかの態様において、先細カテーテル(すなわち、カテーテルのバレルがカテーテルのチップよりも大きいもの)を、組織へのシルクフィブロイン発泡体の注射に使用することができる。この先細により、カテーテルをハウプトナーシリンジに取り付ける前に発泡体をバレルに事前に配置することができ、かつ注射プロセスの間に発泡体を徐々に圧縮することができる。
【0197】
例にすぎないが、ラットまたはマウス研究プロトコルでは、(例えば、
図7Bの第1工程:左パネルに示されるように)最初にカテーテルに備え付けられた14ゲージ針を用いてラットまたはマウスの皮膚に小さな穴が設けられる。カテーテルの外径はその穴に通すのに十分小さく、その内径は圧縮された発泡体をラットまたはマウスの皮下領域に送達するのに十分大きいものであった。
図7A〜7Bは、動物研究においてシルクフィブロイン発泡体を注射する例示的な段階を示している。発泡体ラムロッドがシリンジに挿入される(
図7A)。カテーテルに備え付けられた針は、所望の位置においてカテーテルの挿入を容易にするために使用される(
図7Bの第1工程)。カテーテルを組織内の所望の位置に設置した後、針は針/カテーテルから除去され得る。シルクフィブロイン発泡体は、ピンセットを用いてカテーテルのバレルに配置される(
図7B、第2工程)。シルクフィブロイン発泡体がロードされたカテーテルは、次いで、注射銃のカテーテルアダプターに接続される(
図7B、第3工程)。次に、発泡体を動物にゆっくりと注射するよう、注射銃の注射ハンドル(Injection Handle)が繰り返し握り締められる(
図7B、第4工程)。
【0198】
図8A〜8Cは、インビボでラットモデルに注射されたシルクフィブロインベースの発泡体の、ラットの皮膚の除去後の画像を示している。異なる濃度のシルクフィブロイン溶液(例えば、1%、3%、6%のシルクフィブロイン)および繭供給源(日本産:JP 対 台湾産:TW)から製造されたシルクフィブロインベースの発泡体を1日間(
図8A)、14日間(
図8B)および30日間(
図8C)の注射後に評価した。
図8Aは、注射されたシルクフィブロインベースの発泡体が、注射1日後に、血管への穿刺による血液によって染色されない限り(例えば、TW3)、透明性を維持していたことを示している。
図8B〜8Cは、注射されたシルクフィブロインベースの発泡体が、それぞれ、注射約14日後および約30日後に赤みがかった色相になったことを示している。しかし、注射された発泡体への血管新生に関しては有意な変化が見られなかった。
図8Dは、ラットの皮膚の外側から見ることができる注射された発泡体の画像を示している。
図8Eは、示されている注射後期間(例えば、注射後1日、14日および30日)の後に外植されたシルクフィブロインベースの注射可能な発泡体(
図8A〜8Cのものに対応)の全体形態を示す画像セットである。示されている時点における全体形態に関して、観察可能な見た目の差はない。シルクフィブロイン発泡体は、シルクの重量パーセントの増加に伴い一貫して堅くなる。すべての外植片は柔らかい手触りであり、変形後にそれらの当初の形状に復帰する。血管形成および組織との統合性を評価するために、外植された、組織に接着したシルクフィブロイン発泡体の組織学が行われる。
【0199】
図8Fは、1日間または14日間のラット組織への注射後のシルクフィブロインベースの発泡体の容量保持の結果を示している。
図8Gは、14日間、30日間または60日間の組織への注射後のシルクフィブロインベースの発泡体の容量保持の結果を示している。
図8Fおよび8Gの結果は、その当初の容量(すなわち、圧縮前のシルクフィブロインベースの発泡体の容量)に対する容量保持率で表されている。
図8Fおよび8Gは、約1%、3%または6%のシルクフィブロイン溶液から製造されたシルクフィブロイン発泡体が、少なくとも約30日間またはそれ以上の間、それらの当初の容量の少なくとも約80%(それらの当初の容量の少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約100%またはそれ以上を含む)を、および少なくとも約60日間またはそれ以上の間、それらの当初の容量の少なくとも約50%またはそれ以上を、維持できることを示している。
図8F〜8Gに示されるように、組織内で保持される容量は、おそらくシルクフィブロインベースの発泡体が水分を吸収し膨潤し得ることが理由で、その当初の容量よりも大きくなり得る。シルクフィブロイン発泡体の剛性は、概ね、シルクフィブロイン溶液の濃度と共に増大する。したがって、より高いシルクフィブロイン濃度のシルクフィブロイン発泡体は、概ね、より低いシルクフィブロイン濃度のものよりも長期間の間それらの容量を維持し得る。さらに、約1%、3%または6%のシルクフィブロイン溶液から製造されたシルクフィブロイン発泡体は、ラットへの注射後少なくとも60日間、柔らかいスポンジ状態を維持する。
【0200】
本明細書には、針、ピペットチップ、カテーテルまたはその他の管状構造(例えば、先細の端部を有する管状構造を含む)から射出することができるシルクフィブロインベースの発泡体のいくつかの態様が提示されている。シルクフィブロインベースの発泡体は、注射前に圧縮することができ、その後、圧縮状態から解放されたときおよび/または組織に注射されたときに、例えば少なくとも約2.5倍膨張することができる。いくつかの態様において、注射されたシルクフィブロインベースの発泡体は、生のニワトリの肉の表面を盛り上げ、そしてラットに皮下注射されたときには感知できるかさ高さを提供するのに十分な物理的・機械的完全性を有し得る(
図8D)。シルクフィブロインベースの発泡体の特性は、シルクフィブロイン溶液調製時の脱ガム時間、使用するシルクフィブロイン溶液の濃度およびメタノールまたは結晶(ベータシート)含有量を制御するための他の適当な処理の使用を含むがこれらに限定されない様々な要因によって制御することができる。
【0201】
いくつかの態様において、より長いシルクフィブロインベースの発泡体のコンストラクトが、切開、カニューレ、針、ピペットチップ、カテーテルまたはその他の管状構造(例えば、先細の端部を有する管状構造を含む)を通じて比較的大きな軟部組織の空隙部を満たすために使用され得、したがって従来的な侵襲性の手順と比較して組織侵入のために比較的小さい穴の使用しか要求されなくなる。