(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のエッチング液は、ホスホノ基、ホスフェート基、スルホ基及びカルボキシ基からなる群から選ばれる基を分子内に少なくとも1個有する有機酸及び/又はその塩(A)、HLBが13〜25であるアミンアルキレンオキサイド付加物(B)、過酸化水素並びに水を含有するエッチング液である。
【0011】
本発明のエッチング液は銅又は銅合金を有する基板等に使用される。基板としては、半導体用基板及びフラットパネルディスプレーに使用される電子基板等のシリコン基板等の表面に銅又は銅合金を有する基板等が挙げられる。また、基板が有する銅又は銅合金は、化学気相成長法(CVD法)、物理的気相成長法(PVD法)、原子層堆積法(ALD法)、めっき法によりシリコン基板等の表面に形成することができる。本発明における銅又は銅合金は、好ましくは金属膜である。
【0012】
本発明において、エッチングされる対象の金属は銅又は銅合金であり、銅合金に用いられる銅以外の金属としてはアルミ、モリブデン及びネオジウム等が挙げられる。
【0013】
本発明のエッチング液の表面張力は、狭ピッチ間の銅又は銅合金の除去性の観点から、好ましくは51mN〜65mN/mであり、更に好ましくは53mN〜63mN/mであり、特に好ましくは55mN〜61mN/mである。
【0014】
本明細書においてエッチング液の表面張力は、25℃で接触角計[協和界面科学(株)製、全自動接触角計 DM−700]を用いて、懸滴法で測定し、Young‐Laplace法により解析した値である。
【0015】
本発明のエッチング液の25℃での粘度は狭ピッチ間の銅又は銅合金の除去性の観点から、好ましくは4mPa・s以下であり、更に好ましくは3mPa.s以下であり、特に好ましくは2Pa・s以下である。
【0016】
本明細書においてエッチング液の粘度は、25℃でE型粘度計[東機産業(株)製、TVE−22L型粘度計]を用いて測定した値である。
【0017】
本発明のエッチング液の25℃におけるロス・マイルス試験により測定される起泡力は、狭ピッチ間の銅又は銅合金の除去性の観点から、好ましくは50mm以下であり、更に好ましくは40mm以下であり、更に好ましくは30mm以下である。
【0018】
本明細書においてエッチング液のロス・マイルス試験による25℃での起泡力は、JIS K3362:2008に記載の方法で測定される起泡力である。本JISで定める装置及びとして本発明のエッチング液を用いて、試料水溶液200mLを25℃で900mmの高さから30秒間で液面上に落下させたときに生じる泡の高さを測定して起泡力とした。
【0019】
具体的には、例えば、以下のように起泡力を求めることができる。
(1)JIS K3362:2008に規定される起泡力測定装置の内筒を垂直に立て、25℃の水をポンプによって外筒に循環させて一定温度(25℃)に保つ。
(2)試験液(本発明のエッチング液)を同温度(25℃)に保ちながら、その50mlを内筒の管壁に沿って静かに側面全体を潤すように流し込む。
(3)ピペットに試験液200mlを取り、これを起泡力測定装置の上部にセットして、その上端のコックを開き、試験液が約30秒間で流出するようにし、かつ、液滴が内筒液面の中心に落ちるようにして流下させる。
(4)全ての試験液が流出した後、直ちに、目視によって泡の高さ(mm)(起泡力)を測定する。
(5)この操作を数回行い、それぞれの測定値の平均を整数位まで求めて、起泡力とする。
【0020】
本発明のホスホノ基、ホスフェート基、スルホ基及びカルボキシ基からなる群から選ばれる基を分子内に少なくとも1個有する有機酸及び/又はその塩(A)は、エッチング液中で有機酸として含有されていても、その塩として含有されていてもよい。
【0021】
ホスホノ基を分子内に少なくとも1個有する有機酸及びその塩(A−1)としては、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸及びその塩、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)及びその塩、ニトリロトリスメチレンホスホン酸及びその塩、メチルホスホン酸及びその塩、エチルホスホン酸及びその塩、プロピルホスホン酸及びその塩、1,4−ブチレンジホスホン酸及びその塩、1,3−プロピレンジホスホン酸及びその塩、イソプロピレンジホスホン酸及びその塩並びにメチレンジホスホン酸及びその塩等が挙げられる。
【0022】
ホスフェート基を分子内に少なくとも1個有する有機酸及びその塩(A−2)としては、リン酸メチル及びその塩、リン酸エチル及びその塩、リン酸プロピル及びその塩、リン酸ジメチル及びその塩並びにリン酸ジプロピル及びその塩等が挙げられる。
【0023】
カルボキシ基を分子内に少なくとも1個有する有機酸及びその塩(A−3)としては、マレイン酸及びその塩、マロン酸及びその塩、グリコール酸及びその塩、シュウ酸及びその塩、クエン酸及びその塩、エチレンジアミンテトラ酢酸及びその塩、ジエチレントリアミンペンタ酢酸及びその塩、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸及びその塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸及びその塩、ニトリロ三酢酸及びその塩、1,3−プロパンジアミンテトラ酢酸及びその塩、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパンテトラ酢酸及びその塩、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸及びその塩、グリコールエーテルジアミンテトラ酢酸及びその塩、ジカルボキシメチルグルタミン酸及びその塩並びにエチレンジアミンジコハク酸及びその塩等が挙げられる。
【0024】
スルホ基を分子内に少なくとも1個有する有機酸及びその塩(A−4)としては、1,2−エタンジスルホン酸及びその塩並びに10−カンファ−スルホン酸(CSA)及びその塩等が挙げられる。
【0025】
カルボキシ基とホスホノ基とを含む有機酸及びその塩(A−5)としては、ホスホノブタントリカルボン酸及びその塩並びに1−カルボキシヘプチルホスホン酸及びその塩等が挙げられる。
【0026】
これらのうち、銅又は銅合金のエッチング速度向上の観点から、より好ましいものはホスホノ基を含む有機酸及びその塩(A−1)、ホスフェート基を含む有機酸及びその塩(A−2)、並びに、カルボキシ基を含む有機酸及びその塩(A−3)であり、更に好ましくはホスホノ基を含む有機酸及びその塩(A−1)である。
本発明のエッチング液は、前記有機酸及び/又はその塩(A)を1種又は2種以上を含有していてもよい。
【0027】
本発明のアミンアルキレンオキサイド付加物(B)は、HLBが13〜25であるアミンアルキレンオキサイド付加物である。(B)のHLBが13未満であると起泡性が高くなり銅シード層の除去性が悪化し、(B)のHLBが25を超えると表面張力が高く浸透性が低下し銅シード層の除去性が悪化する。
【0028】
本明細書におけるHLBは、親水性と親油性のバランスを示す指標であって、小田法により、下記数式(1)を用いて算出される値である(藤本武彦著、界面活性剤入門(三洋化成工業株式会社)、p212(2007))。
【0029】
HLB=10×(無機性/有機性) (1)
なお、式中の有機性、無機性とは、分子を構成する原子及び官能基ごとに定められた数値の合計値であり、上記文献中に記載された値を用いることができる。
【0030】
HLBを13〜25の範囲に調整する方法としては、アミンの種類及びアルキレンオキサイドの種類を選択し、アルキレンオキサイドの付加モル数を調整することで調整することができる。具体的なアミンアルキレンオキサイド付加物(B)のHLB例については後記する。
【0031】
HLBが13〜25であるアミンアルキレンオキサイド付加物(B)におけるアミンとしては、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、オクチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等が挙げられる。これらのアミンのうち、狭ピッチ間の銅又は銅合金の除去性の観点から好ましくは炭素数2〜6のアミンであり、更に好ましくはヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン及びジエチレントリアミンである。
HLBが13〜25であるアミンアルキレンオキサイド付加物(B)におけるアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドが挙げられる。
【0032】
HLBが13〜25であるアミンアルキレンオキサイド付加物(B)としては、具体的には、ヘキシルアミンのエチレンオキサイド2モル付加物(HLB:13.5)、ヘキシルアミンのエチレンオキサイド4モル付加物(HLB:15.0)、シクロヘキシルアミンのエチレンオキサイド1モルプロピレンオキサイド1モル付加物(HLB:13.5)、シクロヘキシルアミンのエチレンオキサイド2モル付加物(HLB:14.2)、シクロヘキシルアミンのエチレンオキサイド8モル付加物(HLB:15.0)、オクチルアミンのエチレンオキサイド6モル付加物(HLB:14.3)、オクチルアミンのエチレンオキサイド10モル付加物(HLB:15.5)、エチレンジアミンのプロピレンオキサイド4モル付加物(HLB:22.5)、ジエチレントリアミンのプロピレンキサイド5モル付加物(HLB:21.5)、ジエチレントリアミンのエチレンオキサイド3モルプロピレンキサイド2モル付加物(HLB:23.7)及びトリエチレンテトラアミンのプロピレンオキサイド6モル付加物(HLB:21.0)等が挙げられる。
これらの中では、狭ピッチ間の銅又は銅合金の除去性の観点から、ヘキシルアミンのエチレンオキサイド2モル付加物(HLB:13.5)、シクロヘキシルアミンのエチレンオキサイド2モル付加物(HLB:14.2)、エチレンジアミンのプロピレンオキサイド4モル付加物(HLB:22.5)、ジエチレントリアミンのプロピレンキサイド5モル付加物(HLB:21.5)及びジエチレントリアミンのエチレンオキサイド3モルプロピレンキサイド2モル付加物(HLB:23.7)が更に好ましい。
本発明のエッチング液は、アミンアルキレンオキサイド付加物(B)を1種又は2種以上を含有していてもよい。
【0033】
本発明のエッチング液は、酸化剤として過酸化水素を含有する。過酸化水素としては、例えば過酸化水素の水溶液を使用することができる。また、過酸化水素以外の酸化剤を含有しても良く、AgNO
3、KAuCl
4、HAuCl
4、K
2PtCl
6、H
2PtCl
6、Fe(NO
3)
3、Ni(NO
3)
2、Mg(NO
3)
2、硝酸及びその塩、亜硝酸及びその塩、次亜塩素酸及びその塩、亜塩素酸及びその塩、塩素酸及びその塩、過塩素酸及びその塩、過マンガン酸及びその塩、過硫酸及びその塩、クロム酸及びその塩、ニクロム酸及びその塩、過酢酸及びその塩、過炭酸及びその塩、並びに、過酸化尿素及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種の酸化剤が挙げられる。
【0034】
本発明の水は、特に限定されないが、蒸留水やイオン交換水、あるいは超純水といった浄化処理を施された水が好ましく、半導体製造に使用される超純水を用いることが特に好ましい。
【0035】
本発明のエッチング液は、有機溶剤、腐食防止剤、酸化防止剤及びpH調整剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の添加剤(C)を含有していても良い。
有機溶剤としては、アルコール化合物、エーテル化合物、エステル化合物、ケトン化合物、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホキシド化合物等が挙げられる。
腐食防止剤としては、テトラエチレンペンタミン及びペンタエチレンヘキサミン等のアミン化合物、トリアゾール(1,2,3−ベンゾトリアゾール等)やイミダゾール等のアゾール化合物、チオール化合物、糖アルコール化合物等が挙げられる。
酸化防止剤としては、具体的には、カテキン、トコフェロール、カテコール、メチルカテコール、エチルカテコール、tert−ブチルカテコール、没食子酸メチル、没食子酸プロピル等のフェノール化合物、3−ヒドロキシフラボン及びアスコルビン酸等が挙げられる。
pH調整剤としては、塩基性化合物等が挙げられる。具体的には、アンモニア、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等が挙げられる。
【0036】
本発明のエッチング液を使用してエッチングする場合におけるホスホノ基、ホスフェート基、スルホ基及びカルボキシ基からなる群から選ばれる基を分子内に少なくとも1個有する有機酸及び/又はその塩(A)の含有量は、銅又は銅合金のエッチング速度向上の観点から、使用時のエッチング液の合計重量に基づいて、好ましくは0.5〜30重量%であり、更に好ましくは1〜25重量%である。
本発明のエッチング液を使用してエッチングする場合では、アミンアルキレンオキサイド付加物(B)の含有量は、狭ピッチ間の銅層の除去性の観点から、使用時のエッチング液の合計重量に基づいて、2〜15重量%であることが好ましい。更に好ましくは2〜13重量%であり、特に好ましくは2〜12重量%である。
本発明のエッチング液を使用してエッチングする場合では、過酸化水素の含有量は、銅又は銅合金のエッチング速度向上及び狭ピッチ間の銅層の除去性の観点から、使用時のエッチング液の合計重量に基づいて、好ましくは0.5〜20重量%であり、更に好ましくは1〜18重量%であり、特に好ましくは1.5〜17重量%である。
水の含有量は使用時のエッチング液の合計重量に基づいて、好ましくは50〜97重量%であり、更に好ましくは60〜95重量%である。
【0037】
本発明のエッチング液は、ホスホノ基、ホスフェート基、スルホ基及びカルボキシ基からなる群から選ばれる基を分子内に少なくとも1個有する有機酸及び/又はその塩(A)、HLBが13〜25であるアミンアルキレンオキサイド付加物(B)、過酸化水素並びに水を公知の方法で混合し、作製することができる。
また、本発明のエッチング液から、過酸化水素及び少なくとも一部の水を除いた液を作製し、使用前に水及び過酸化水素を混合して作成してもよい。
【0038】
次に、本発明のエッチング液を用いて電子基板を製造する本発明の電子基板の製造方法を説明する。
本発明の電子基板の製造方法は、銅又は銅合金を有する電子基板の製造方法であって、銅又は銅合金を有する基板に、本発明のエッチング液を用いて前記銅又は銅合金をエッチングするエッチング工程を含む。
【0039】
また、本発明の電子基板の製造方法は、エッチング工程を含めば、本発明の効果を損なわない限り、他にどのような工程を含んでいてもよい。
【0040】
以下、本発明の電子基板の製造方法の一例を説明する。
本発明の電子基板の製造方法は、(1)基板準備工程、(2)レジスト樹脂形成工程、(3)銅めっき層形成工程、(4)レジスト樹脂除去工程、(5)エッチング工程及び(6)バリアメタル層除去工程を含んでいても良い。
【0041】
(1)基板準備工程
まず、シリコン基板を準備する。次に、シリコン基板の平面上部に、シリコン酸化層を形成し、更にその上に、チタン層及び銅シード層を順に積層する。これにより、シリコン酸化層、チタン層及び銅シード層が形成された基板を準備することができる。
【0042】
(2)レジスト樹脂形成工程
次に、後工程である銅めっき層形成工程において、銅めっきにより所望の電極配線パターンを形成する箇所の銅シード層の表面が露出するように、基板上に形成された銅シード層の表面にレジスト樹脂を形成する。
【0043】
(3)銅めっき層形成工程
次に、銅シード層の露出部を覆うように銅めっきを行い、銅めっき層を形成する。
【0044】
(4)レジスト樹脂除去工程
次に、レジスト樹脂を除去する。これにより、所望の電極配線パターンの銅めっき層が銅シード層の上に残る。
【0045】
(5)エッチング工程
次に、本発明のエッチング液を用いて、公知の方法により銅シード層を有する基板から銅シード層をエッチングする。これにより、チタン層が露出することになる。
本発明において、銅シード層のエッチング方法としては、浸漬式エッチングや枚葉式エッチング等が挙げられる。更に具体的には、基板をエッチング液に浸漬させる、基板にエッチング液をスプレーで噴射することで接液させる、といった方法がある。
本工程で使用するエッチング液の温度は、特に限定されないが、好ましくは10〜100℃の範囲であり、さらに好ましくは20℃〜80℃である。
エッチング液の温度が10℃以上であればエッチング速度が向上する点で好ましく、100℃以下の温度であればエッチング速度にバラツキが生じない点で好ましい。
また、エッチングに要する時間は、10分未満であることが好ましい。
【0046】
(6)バリアメタル層除去工程
次に、チタン層を除去する。これにより、チタン層、銅シード層、銅めっき層からなる所望の電極配線パターンを形成することができる。また、電極パターンが形成された基板は、電子基板となる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
<実施例1〜15及び比較例1〜6>
表1に記載の組成となるように、ホスホノ基、ホスフェート基、スルホ基及びカルボキシ基からなる群から選ばれる基を分子内に少なくとも1個有する有機酸及び/又はその塩(A)、アミンアルキレンオキサイド化合物(B)、過酸化水素、添加剤(C)及び水を配合し、25℃、マグネチックスターラーで40rpm、20分間攪拌して、本発明のエッチング液と比較のエッチング液を得た。
【0049】
【表1】
【0050】
なお、表中の記号は以下の化合物を表す。また、表中記載の数値は下記化合物の配合量(重量部)を示す。
(A−1−1):1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸
(A−2−1):ピロリン酸
(A−3−1):マレイン酸
(A−3−2):マロン酸
(A−3−3):シュウ酸
(A−3−4):グリコール酸
(A−3−5):クエン酸
(A−3−6):アラニン
(A−3−7):ジエチレントリアミンペンタ酢酸
(A−4−1):1,2−エタンジスルホン酸
酸化剤:過酸化水素(35重量%過酸化水素水を用いた。配合量は、35重量%過酸化水素水中の過酸化水素の重量部である。35重量%過酸化水素水中の水の重量部は、水に含めた。)
(B−1−1):ヘキシルアミンのエチレンオキサイド2モル付加物(HLB:13.5)
(B−1−2):シクロヘキシルアミンのエチレンオキサイド2モル付加物(HLB:14.2)
(B−1−3):エチレンジアミンのプロピレンオキサイド4モル付加物(HLB:22.5)
(B−1−4):ジエチレントリアミンのエチレンオキサイド3モルプロピレンキサイド2モル付加物(HLB:23.7)
(B’−1):ラウリルアミンのエチレンオキサイド8モル付加物(HLB:12.0)
(B’−2):エチレンジアミンのエチレンオキサイド4モル付加物(HLB:27.0)
(B’−3):トリエタノールアミン(HLB:30.9)
(C−1):テトラエチレンペンタミン
(C−2):ペンタエチレンヘキサミン
(C−3):1,2,3−ベンゾトリアゾール
(C−4):水酸化カリウム(48重量%水酸化カリウム水溶液を用いた。配合量は、48重量%水酸化カリウム水溶液中の水酸化カリウムの重量部である。48重量%水酸化カリウム水溶液中の水の重量部は、水に含めた。)
【0051】
本発明のエッチング液と比較のエッチング液の表面張力、粘度及び起泡力を以下の方法で測定した。
【0052】
<表面張力の測定>
エッチング液の表面張力は、25℃で接触角計[協和界面科学(株)製、全自動接触角計 DM−700]を用いて、懸滴法で測定し、Young‐Laplace法により解析した。
【0053】
<粘度の測定>
エッチング液の粘度は、25℃でE型粘度計[東機産業(株)製、TVE−22L型粘度計]を用いて測定した。
【0054】
<起泡力の測定>
エッチング液の起泡力は以下の方法で測定した。
(1)JIS K3362:2008に規定される起泡力測定装置の内筒を垂直に立て、25℃の水をポンプによって外筒に循環させて25℃に保った。
(2)試験液(エッチング液)を25℃に保ちながら、その50mlを内筒の管壁に沿って静かに側面全体を潤すように流し込んだ。
(3)ピペットに試験液200mlを取り、起泡力測定装置の上部にセットして、その上端のコックを開き、試験液が約30秒間で流出するようにし、かつ、液滴が内筒液面の中心に落ちるようにして流下させた。
(4)全ての試験液が流出した後、直ちに、泡の高さ(mm)(起泡力)を測定した。
(5)この操作を2回行い、それぞれの測定値の平均を整数位まで求めて、起泡力とした。
【0055】
性能評価として、銅シード層のエッチング時間及び狭ピッチ配線間の銅シード層のエッチング除去率を以下の方法で行った。
【0056】
<銅シード層のエッチング時間の評価>
銅シード層のエッチング時間を、以下の操作方法で銅シード層の光沢が消失するまでの時間(分)で評価した。
(i)上記本発明の電子基板の製造方法で説明した、(1)基板準備工程、(2)レジスト樹脂形成工程、(3)銅めっき層形成工程及び(4)レジスト樹脂除去工程を順に行い、テスト基板を作製した。
【0057】
テスト基板は、銅めっき層からなる電極配線が形成された基板からなる。
基板は、シリコン基板、シリコン酸化層、チタン層及び銅シード層から構成されており、シリコン基板平面部には、シリコン酸化層、チタン層及び銅シード層が順に形成されている。また、銅シード層の上には、銅めっき層が、一定の距離の間隔で銅シード層の表面を覆うように基板から突出した形状で形成されている。基板から突出した銅めっき層は電極配線を形成している。
【0058】
テスト基板では、銅シード層の厚さは300nmであった。
また、銅めっき配線の幅は約20μmであり、銅めっき配線の高さは約18μmであった。
【0059】
(ii)次に、各実施例及び各比較例のエッチング液をガラス製の各容器に入れて、この中に上記のテスト基板を約20mmに切断したテストピースを浸漬し、25℃、400rpmで、マグネチックスターラーで撹拌した。
(iii)撹拌しながら液中に浸漬した状態でテストピースの表面を目視で観察し、銅シード層の電極配線パターンが形成されていないエリア全面の銅の光沢が消失し、チタン層が見える状態までの時間(分)を測定し評価した。この目的で使用されるエッチング液においては、銅光沢の消失時間は短い方が好ましく、評価基準は以下の通りとした。結果を表1に示す。
○:3分未満
×:3分以上
【0060】
<銅めっき配線間の銅シード層の除去性の評価>
テスト基板の銅シード層をエッチングする際、銅めっき配線間の銅シード層がエッチング不良により残留することがある。このような銅シード層の残留は無い方が好ましい。すなわち、エッチング液により、銅めっき配線パターンが形成されていないエリアの銅シード層も含め、銅めっき配線間の銅シード層までエッチングされることが好ましい。
各実施例及び各比較例のエッチング液を用いてテスト基板をエッチングした際の、銅めっき配線間の銅シード層の除去率を、以下の操作方法で測定し評価した。
(i)上記<銅シード層のエッチング時間の評価>で説明した方法と同じ方法でテスト基板を作製し、上記のテスト基板を約20mmに切断したテストピースを作製した。
(ii)次に、各実施例及び各比較例のエッチング液をガラス製の容器に入れて、この中にテストピースを浸漬し、25℃、400rpmで、マグネチックスターラーで撹拌した。
(iii)10秒ごとにテストピースをエッチング液から取り出し、銅シード層の電極配線パターンが形成されていないエリアの銅シード残渣の量を、X線光電子分光(XPS)装置(アルバックファイ社製、ESCA−5400型)を用いて測定することによって、電極配線パターンが形成されていないエリアの銅シード層の除去率を測定した。
具体的には、XPSを用いて、結合エネルギー920eV〜960eVの範囲で光電子数の測定を行い、銅に由来する932.0〜934.0eV, 948.0〜954.0eV,の範囲におけるピーク面積値を求めた。軟X線は、MgKα線(1253.6eV)を使用した。
(iv)のXPSで測定したピーク面積値を下記数式(1)に代入し、電極配線パターンが形成されていないエリアの銅シード層除去率を算出した。
銅シード層の除去率(%)=(Xa−Xb)/Xa×100 (1)
(v)
Xa:銅シード層除去前の銅シード層由来の銅のピーク面積値
Xb:銅シード層除去後の銅シード層由来の銅のピーク面積値
(vi)電極配線パターンが形成されていないエリアの銅シード層除去率が90%以上になった浸漬時間での銅配線間の銅シード層残渣量を、(iii)〜(v)と同様に、XPSを用いて測定することによって銅配線間の銅シード層の除去率を測定した。
(vii)算出した銅シード層の除去率から、以下の判定基準で銅配線間の銅シード層の除去性を判定した。
5:90%以上
4:80%以上90%未満
3:50%以上80%未満
2:20%以上50%未満
1:20%未満
【0061】
表1に示すように、実施例1〜15のエッチング液を用いると、銅シード層を素早くエッチングすることができ、かつ、狭ピッチの銅めっき配線間の銅シード層をエッチングすることができ銅シード層の残留を抑制することができる。一方で、比較例のエッチング液を用いると、銅シード層の残留が多いことがわかる。