特許第6913148号(P6913148)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6913148
(24)【登録日】2021年7月13日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】油圧作動油用潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 161/00 20060101AFI20210727BHJP
   C10M 169/04 20060101ALI20210727BHJP
   C10M 143/00 20060101ALN20210727BHJP
   C10M 137/10 20060101ALN20210727BHJP
   C10M 137/12 20060101ALN20210727BHJP
   C10M 101/02 20060101ALN20210727BHJP
   C10M 107/02 20060101ALN20210727BHJP
   C10M 105/32 20060101ALN20210727BHJP
   C10N 20/00 20060101ALN20210727BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20210727BHJP
   C10N 30/08 20060101ALN20210727BHJP
   C10N 30/10 20060101ALN20210727BHJP
   C10N 40/08 20060101ALN20210727BHJP
【FI】
   C10M161/00
   C10M169/04
   !C10M143/00
   !C10M137/10 Z
   !C10M137/12
   !C10M101/02
   !C10M107/02
   !C10M105/32
   C10N20:00 A
   C10N30:06
   C10N30:08
   C10N30:10
   C10N40:08
【請求項の数】12
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2019-204555(P2019-204555)
(22)【出願日】2019年11月12日
(65)【公開番号】特開2020-139139(P2020-139139A)
(43)【公開日】2020年9月3日
【審査請求日】2019年11月12日
(31)【優先権主張番号】10-2019-0023681
(32)【優先日】2019年2月28日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519403299
【氏名又は名称】デリム インダストリアル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】イ ヒョンジン
(72)【発明者】
【氏名】ジュ ジンフン
【審査官】 松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−047735(JP,A)
【文献】 特開2010−077390(JP,A)
【文献】 特開2014−201737(JP,A)
【文献】 特開2007−262300(JP,A)
【文献】 特開昭47−001877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00−177/00
C10N 10/00− 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースオイル、液状オレフィン共重合体(ポリアルファオレフィン(PAO)を除く)、ホスホロチオアート化合物、及びホスホニウムホスフェートを含む潤滑油組成物であって、ここで、
前記液状オレフィン共重合体は、前記潤滑油組成物に0.5〜30重量%含まれ;
前記ホスホロチオアート化合物は、前記潤滑油組成物内に0.1〜3.0重量%含まれ;
前記ホスホニウムホスフェートは、前記潤滑油組成物内に0.05〜3.0重量%含まれ、かつ、以下の化学式7:
【化1】
の構造を有する、潤滑油組成物
【請求項2】
前記液状オレフィン共重合体は、エチレン及びα−オレフィンをシングルサイト触媒システムの下で共重合させて製造されることを特徴とする、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
前記ホスホロチオアート化合物が、
モノホスホロチオアート(monophosphorothioate)、ジホスホロチオアート(diphosphorothioate)、トリホスホロチオアート(triphosphorothioate)、メチルホスホロチオアート(methylphosphorothioate)、エチルホスホロチオアート(ethylphosphorothioate)及びスルホニルホスホロチオアート(sulfonylphosphorothioate)よりなる群から選択された1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
前記シングルサイト触媒システムがメタロセン触媒、有機金属化合物及びイオン性化合物を含むことを特徴とする、請求項2に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
前記液状オレフィン共重合体は、熱膨張係数が3.0〜4.0であることを特徴とする、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
前記液状オレフィン共重合体は、臭素価(Bromine Number)が0.1以下であることを特徴とする、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
前記ベースオイルは、鉱油、ポリアルファオレフィン(PAO)またはエステルを含む基油よりなる群から選択された1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
前記潤滑油組成物は、酸化防止剤、金属洗浄剤、防食剤、泡沫抑制剤、流動点降下剤、粘度調整剤、耐磨耗剤及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される添加剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
前記潤滑油組成物は、SRV摩擦係数が0.1〜0.35であることを特徴とする、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
前記潤滑油組成物は、静止摩擦係数が0.15〜0.3であることを特徴とする、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
前記潤滑油組成物は、酸化安定性評価(RBOT、ASTM D2271)で1000分(min)以上を示すことを特徴とする、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項12】
前記潤滑油組成物が油圧作動油として用いられることを特徴とする、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油組成物に係り、より詳細には、高温、高圧の過酷な環境下でも優れた酸化安定性および摩擦特性を持つため油圧作動油に適した潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑油とは、機械の摩擦面に生じる摩擦力を減らすか、または摩擦面から発生する摩擦熱を分散させる目的で使用される油状物質であって、潤滑を必要とする機械類は非常に多様であり、その機械が作動する条件も多いので、潤滑油の種類が非常に多く品質も様々である。このため、用途によって基油を区分して使用する必要があり、特に航空機や高度の油圧システムで潤滑油を使用するときには、高い難燃効果を有する作動油が求められている。
【0003】
産業現場で使われている各種油圧作動油は、動力伝達の媒体であって、油圧装備の各部の潤滑、防錆、密封、冷却などの役割を果たす。このような油圧作動油は、基油と呼ばれるベースオイルに添加剤を加えて製造され、基油の種類によって大きく鉱油系作動油(石油系作動油)と合成作動油に区分され、前記合成作動油は、ポリアルファオレフィン系作動油とエステル系作動油に区分される。
【0004】
一方、油圧作動油の運転温度範囲は多様であり、特に夏は75〜85℃以上での運転にもなる。しかし、この温度で鉱油系作動油及びポリアルファオレフィン系作動油は、多くの油蒸気を発生させる。このような油蒸気の発生は、作動油の蒸発減量を増加させる問題を発生させるのみならず、作動油の酸化を促進させてこれを最小限に抑えることが必要である。特に作動油の大部分を占める鉱油系作動油は、基礎原料油の特性により酸化安定性を改善するための追加の方法が必要である。また、最近の油圧作動システムは次第に高性能化されているので、油圧作動油の場合は優れた摩擦特性が求められている。
【0005】
そこで、本発明者らは、熱および酸化安定性に優れ且つ油圧装備の機械的な摩耗を減少させることができる油圧作動油用潤滑油組成物を開発することになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国特許第10−0201759号公報
【特許文献2】韓国公開特許第10−2008−0109015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、摩擦低減用機能性添加剤および粘度指数の高いエチレン及びα−オレフィン液状ランダム共重合体を混合使用することにより、摩擦特性、熱および酸化安定性に優れた潤滑油組成物を提供することにある。
【0008】
また、本発明の他の目的は、油圧装備への適用の際に油圧装備の機械的な摩耗及びエネルギー消耗を減らし、油圧油の物理的な特性変化が少なくて蒸発減量が減少し、長時間の使用が可能な油圧作動油用潤滑油組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、ベースオイル、液状オレフィン共重合体、ホスホロチオアート(phosphorothioate)化合物、及びホスホニウムホスフェートを含む潤滑油組成物を提供する。
【0010】
前記ベースオイルは、鉱油、ポリアルファオレフィン(PAO)またはエステルを含む基油よりなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0011】
前記液状オレフィン共重合体は、エチレン及びα−オレフィンをシングルサイト触媒システムの下で共重合させて製造されるものであってもよく、前記シングルサイト触媒システムは、メタロセン触媒、有機金属化合物及びイオン性化合物を含むことが好ましい。
【0012】
また、前記液状オレフィン共重合体は、熱膨張係数が3.0〜4.0であってもよい。
【0013】
本発明の潤滑油組成物内の液状オレフィン共重合体の含有量は、0.5〜30重量%、好ましくは0.5〜25重量%であってもよい。
【0014】
前記潤滑油組成物内のホスホロチオアート化合物の含有量は、0.1〜5.0重量%、好ましくは0.1〜3.0重量%であってもよい。
【0015】
前記潤滑油組成物内のホスホニウムホスフェートの含有量は、0.05〜3.0重量%、好ましくは0.1〜1.5重量%であってもよい。
【0016】
前記潤滑油組成物は、SRV摩擦係数が0.1〜0.35であり、静止摩擦係数が0.15〜0.3であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
ホスホロチオアート(phosphorothioate)、ホスホニウムホスフェート、及び粘度指数の高いエチレンとα−オレフィン液状ランダム共重合体を混合使用することにより、摩擦特性、熱および酸化安定性を向上させることができ、これにより、油圧装備への適用の際に油圧装備の機械的な摩耗及びエネルギー消耗を減らして省エネルギー効果を最大化することができる。
【0018】
また、本発明により、油圧油の物理的な特性変化が少なくて蒸発減量が減少し、RBOT酸化安定性試験(ASTM D2271)で1000min以上、好ましくは1200min以上を示して長時間の使用が可能な油圧作動油用潤滑油組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0020】
本発明は、酸化安定性及び摩擦特性に優れて油圧作動油としての使用に適した潤滑油組成物に関するものである。上記の目的を達成するために、本発明の潤滑油組成物は、ベースオイル、液状オレフィン共重合体、ホスホロチオアート(phosphorothioate)化合物、及びホスホニウムホスフェートを含むことを特徴とする。
【0021】
このとき、ベースオイルは、製造方法や精製方法などにより粘度特性や耐熱性、酸化安定性などの性能が異なるが、一般に鉱油及び合成油に区分される。API(American Petroleum Institute)では、ベースオイルをグループI、II、III、IV及びVの5種類に分類している。これらのAPIカテゴリーは、API Publication 1509、15th Edition、Appendix E、April 2002に定義されており、これは下記表1に示すとおりである。
【0022】
【表1】
本発明の潤滑油組成物に含まれる前記ベースオイルは、鉱油、ポリアルファオレフィン(PAO)またはエステルを含む基油よりなる群から選択された1種以上であり、APIカテゴリーのグループI〜Vのいずれであってもよい。
【0023】
より詳細には、前記鉱油は、上述したAPIカテゴリーのI〜IIIに属するものであり、前記鉱油は、例えば、原油を常圧蒸留および/または減圧蒸留して得られた潤滑油留分を溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理などの精製処理を一つ以上行って精製したもの;またはワックス異性化鉱油;またはフィッシャー・トロプシュ法によって得られたガス−液化(GLT、gas to liquid)油;であってもよい。
【0024】
前記合成油は、上述したAPIカテゴリーのグループIVまたはVに属するものであって、グループIVに属するポリ−α−オレフィンは、例えば、米国特許第3,780,128号公報、米国特許第4,032,591号公報、特開平1−163136号公報などに開示されているように、酸触媒によって高級α−オレフィンをオリゴマー化することにより得られるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
グループVに属する合成油は、例えば、アルキルベンゼン類、アルキルナフタレン類、イソブテンオリゴマーまたはその水素化物、パラフィン類、ポリオキシアルキレングリコール、ジアルキルジフェニルエーテル、ポリフェニルエーテルまたはエステルなどであってもよい。
【0026】
この時、前記アルキルベンゼン類、アルキルナフタレン類は、通常、アルキル鎖の長さが炭素原子数6〜14のジアルキルベンゼンまたはジアルキルナフタレンであり、このようなアルキルベンゼン類またはアルキルナフタレン類は、ベンゼンまたはナフタレンとオレフィンとのフリーデル・クラフツアルキル化反応によって製造される。アルキルベンゼン類またはアルキルナフタレン類の製造に使用されるアルキル化オレフィンは、直鎖状または分枝状オレフィン、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0027】
また、前記エステルは、例えば、ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート、トリデシルペラルゴネート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアゼラート、トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、トリメチロールプロパントリヘプタノエート、ペンタエリトリトール−2−エチルヘキサノエート、ペンタエリトリトールペラルゴネート、またはペンタエリトリトールテトラヘプタノエートなどであり得るが、これらに限定されるものではない。
【0028】
本発明の潤滑油組成物に含まれる前記液状オレフィン共重合体は、共重合体鎖中にアルファ−オレフィン単位が均一に分布するようにするために、シングルサイト触媒システムの下でエチレンおよびアルファオレフィン単量体を共重合させて製造され、好ましくは、前記液状オレフィン共重合体は、架橋メタロセン化合物、有機金属化合物及び前記架橋メタロセン化合物と反応してイオン対を形成するイオン性化合物を含むシングルサイト触媒システムの下で、エチレンおよびアルファオレフィン単量体を反応させて製造できる。
【0029】
この時、前記シングルサイト触媒システムに含まれる前記メタロセン化合物は、下記化学式1〜6で表される群から選択された1種以上であってもよい。
【0030】
【化1】
【0031】
【化2】
前記化学式1乃至4中、
Mはチタン、ジルコニウムおよびハフニウムよりなる群から選択された遷移金属であり、
Bは炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基、炭素数1〜20のジアルキルシリコン、炭素数1〜20のジアルキルゲルマニウム、炭素数1〜20のアルキルホスフィン基または炭素数1〜20のアルキルアミン基の連結基であるか、連結基がない形態であり、
とXは、互いに同一でも異なってもよく、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜40のアルキルアリール基、炭素数7〜40のアリールアルキル基、炭素数1〜20のアルキルアミド基、炭素数6〜20のアリールアミド基、炭素数1〜20のアルキリデン基または炭素数1〜20のアルコキシ基であり、
乃至R10は、互いに同一でも異なってもよく、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアルキルアリール基、炭素数7〜20のアリールアルキル基、炭素数5〜60のシクロアルキル基、炭素数4〜20の複素環基、炭素数1〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基が含まれているヘテロ基またはシリル基であってもよい。
【0032】
【化3】
前記化学式5および6中、
Mはチタン、ジルコニウムおよびハフニウムよりなる群から選択された遷移金属であり、
Bは炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基、炭素数1〜20のジアルキルシリコン、炭素数1〜20のジアルキルゲルマニウム、炭素数1〜20のアルキルホスフィン基または炭素数1〜20のアルキルアミン基の連結基であるか、連結基がない形態であり、
とXは、互いに同一でも異なってもよく、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜40のアルキルアリール基、炭素数7〜40のアリールアルキル基、炭素数1〜20のアルキルアミド基、炭素数6〜20のアリールアミド基、炭素数1〜20のアルキリデン基または炭素数1〜20のアルコキシ基であり、
乃至R10は、互いに同一でも異なってもよく、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアルキルアリール基、炭素数7〜20のアリールアルキル基、炭素数5〜60のシクロアルキル基、炭素数4〜20の複素環基、炭素数1〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基が含まれているヘテロ基またはシリル基であってもよい。
【0033】
11、R13およびR14は、互いに同じ水素であり、R12は、互いに同一でも異なってもよく、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアルキルアリール基、炭素数7〜20のアリールアルキル基、炭素数5〜60のシクロアルキル基、炭素数4〜20の複素環基、炭素数1〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基が含まれているヘテロ基またはシリル基であってもよい。
【0034】
また、前記化学式2〜6のメタロセン化合物は、水素添加反応で置換された化合物の形態も含まれてもよく、好ましくは、ジメチルシリルビス(テトラヒドロインエテニル)ジルコニウムジクロリドである。
【0035】
前記シングルサイト触媒システムに含まれる前記有機金属化合物は、有機アルミニウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物及び有機リチウム化合物よりなる群から選択された1種以上であり、好ましくは有機アルミニウム化合物である。例えば、前記有機アルミニウム化合物は、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、ジメチルイソブチルアルミニウム、ジメチルエチルアルミニウム、ジエチルクロロアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリイソペンチルアルミニウム、エチルジメチルアルミニウム、メチルジエチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン及びブチルアルミノキサンよりなる群から選択された1種以上であり、さらに好ましくはトリイソブチルアルミニウムである。
【0036】
前記シングルサイト触媒システムに含まれる前記イオン性化合物は、ジメチルアニリウムデトラキス(パーフルオロフェニル)ホウ酸塩、トリフェニルカルボニウムテトラキス(パーフルオロフェニル)ホウ酸塩などの有機ホウ素化合物よりなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0037】
前記シングルサイト触媒システム成分の含有量比は、触媒活性を考慮して決定でき、好ましくはメタロセン触媒:イオン性化合物:有機金属化合物のモル比が1:1:5〜1:10:1000に調節されることが触媒活性の確保に有利である。
【0038】
また、前記シングルサイト触媒システムを構成する成分は、同時にまたは任意の順序で適切な溶媒に添加され、活性を有する触媒システムとして作用することができ、この時、前記溶媒は、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素系溶媒、またはベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族溶媒が使用できるが、これに限定されるものではなく、製造時に使用可能なすべての溶媒が使用できる。
【0039】
また、液状オレフィン共重合体の製造時に使用される前記アルファオレフィン単量体は、炭素数2〜20の脂肪族オレフィンを含み、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンおよび1−テトラデセンよりなる群から選択された1種以上であり、ここには異性体が含まれている形態も該当することができるが、これらに限定されるものではない。共重合において、単量体は1〜95モル%、好ましくは5〜90モル%である。
【0040】
本発明で要求される液状オレフィン共重合体は、熱膨張係数が3.0〜4.0であることを特徴とする。また、臭素価(Bromine Number)が0.1以下であることが好ましい。
【0041】
また、前記液状オレフィン共重合体は、潤滑油組成物全体100重量%に対して0.5〜30重量%、好ましくは0.5〜25重量%が含まれるものであり得る。前記液状オレフィン共重合体の含有量が、潤滑油組成物全体100重量%に対して0.5重量%未満の場合には安定性が低下し、30重量%を超過する場合には油圧作動油への適用に困難があって好ましくない。
【0042】
前記ホスホロチオアート(phosphorothioate)化合物は、摩擦低減剤として、モノホスホロチオアート(monophosphorothioate)、ジホスホロチオアート(diphosphorothioate)、トリホスホロチオアート(triphosphorothioate)、メチルホスホロチオアート(methylphosphorothioate)、エチルホスホロチオアート(ethylphosphorothioate)及びスルホニルホスホロチオアート(sulfonylphosphorothioate)よりなる群から選択された1種以上であり得る。前記ホスホロチオアート化合物を含むことにより、従来の耐磨耗剤との相乗効果を示し、摩擦低減効果を示すだけでなく、摩擦低減による省エネ効果を持つ潤滑油組成物を提供する。
【0043】
また、前記ホスホロチオアート化合物は、潤滑油組成物全体100重量%に対し、0.1〜5.0重量%、好ましくは0.1〜3.0重量%が含まれるものであり得る。前記ホスホロチオアート化合物の含有量が潤滑油組成物全体100重量%に対して0.1重量%未満である場合には、摩擦特性の改善効果が微々たるものであり、5.0重量%を超過する場合には、重量による改善効果が微々たるものなので、好ましくない。
【0044】
前記ホスホニウムホスフェートは、下記化学式7の構造を有する物質であって、摩擦/摩耗低減剤として使用され、特にホスホロチオアート化合物のように使用される場合、その効果を極大化することができるという特徴がある。
【0045】
【化4】
前記ホスホニウムホスフェートは、ホスホニウムアニオンとホスフェートカチオンを同時に有するイオン性液体として存在し、様々なホスホニウム化合物の中で特徴的に摩擦/摩耗低減効果を示す。
【0046】
また、前記ホスホニウムホスフェートは、潤滑油組成物全体100重量%に対して0.05〜3.0重量%、好ましくは0.1〜1.5重量%が含まれるものであり得る。前記ホスホニウムホスフェートの含有量が潤滑油組成物全体100重量%に対して0.05重量%未満である場合には、摩擦/摩耗特性の改善効果が微々たるものであり、3.0重量%を超える場合には、ホスホロチオアート化合物との相乗効果がないだけでなく、摩耗を増加させる結果を示すことができて、好ましくない。
【0047】
本発明の潤滑油組成物は、酸化防止剤、金属洗浄剤、防食剤、泡沫抑制剤、流動点降下剤、粘度調整剤、耐磨耗剤およびこれらの組み合わせよりなる群から選択される添加剤をさらに含んでもよい。
【0048】
前記酸化防止剤は、潤滑油組成物全体100重量%に対して0.01〜5.0重量%が含有でき、好ましくは、フェノール系酸化防止剤とアミン系酸化防止剤とが混合されて使用でき、より好ましくは、前記フェノール系酸化防止剤0.01〜3.0wt%とアミン系酸化防止剤0.01〜3.0wt%とが混合されて使用できる。
【0049】
前記フェノール系酸化防止剤は、2,6−ジブチルフェノール、ヒンダードビス−フェノール(hindered bis−phenol)、高分子量のヒンダードフェノール(high MW hindered phenol)及びチオエーテルを有するヒンダードフェノール(hindered phenol with thioether)よりなる群から選択された1種であり得る。
【0050】
前記アミン系酸化防止剤は、ジフェニルアミン、アルキル化ジフェニルアミン(alkylated diphenyl amine)及びナフチルアミンよりなる群から選択された1種であり、好ましくは、前記アルキル化ジフェニルアミンは、ジオクチルジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミンまたはブチル化ジフェニルアミンであり得る。
【0051】
前記金属洗浄剤は、金属フェネート、金属スルホネート、金属サリチレートよりなる群から選択された1種以上であり、好ましくは、前記金属洗浄剤は、潤滑油組成物全体100重量%に対して0.1〜10.0重量%が含まれ得る。
【0052】
前記防食剤は、ベンゾトリアゾール誘導体であり、好ましくは、ベンゾトリアゾール、2−メチルベンゾトリアゾール、2−フェニルベンゾトリアゾール、2−エチルベンゾトリアゾール及び2−プロピルベンゾトリアゾールよりなる群から選択された1種である。また、前記防食剤は、潤滑油組成物全体100重量%に対して0〜4.0重量%が含まれ得る。
【0053】
前記泡沫抑制剤は、ポリオキシアルキレンポリオールであり、好ましくは、前記泡沫抑制剤は、潤滑油組成物全体100重量%に対して0〜4.0重量%が含まれ得る。
【0054】
前記流動点降下剤は、ポリ(メタクリレート)であり、好ましくは、前記流動点降下剤は、潤滑油組成物全体100重量%に対して0.01〜5.0重量%が含まれ得る。
【0055】
前記粘度調整剤は、ポリイソブチレンまたはポリメタクリレートであり、好ましくは、前記粘度調整剤は、潤滑油組成物全体100重量%に対して0〜15重量%が含まれ得る。
【0056】
前記耐磨耗剤は、有機ホウ酸塩、有機亜リン酸塩、有機硫黄含有化合物、亜鉛−ジアルキルジチオホスフェート、亜鉛−ジアリールジチオホスフェート、及びリン硫化された炭化水素よりなる群から選択された1種以上であり、好ましくは、前記耐磨耗剤は0.01〜3.0重量%が含まれ得る。
【0057】
本発明の潤滑油組成物は、SRV摩擦係数が0.1〜0.35であることを特徴とする。また、前記潤滑油組成物は、静止摩擦係数が0.15〜0.3であることを特徴とする。
【実施例】
【0058】
以下、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。しかし、本発明は、ここで説明される実施例に限定されず、様々な形態で具体化できる。ここで紹介される内容が徹底かつ完全たるものとなるように、当業者に本発明の思想を十分に伝達するために提供するものである。
【0059】
1.添加剤組成物の製造
下記表2を参照して、本発明の潤滑油組成物に使用される添加剤組成物を製造した。
【0060】
【表2】
2.液状オレフィン共重合体の製造
液状オレフィン共重合体は、触媒反応工程を介してオリゴマー化法によって製造された。下記のとおり、反応時間/条件に応じて分子量別に分離して製造し、製造された液状オレフィン共重合体の物性を下記表3に示した。
【0061】
反応時間および条件は、20hr乃至4hr単位で増加し、この時、添加される水素の量とコモノマー(comonomer)(C3)の量を10%ずつ増加させながら、各条件に応じて重合した後、分子量別に分離して製造した。
【0062】
【表3】
3.油圧作動油用潤滑油組成物の製造
ベースオイル、液状オレフィン共重合体、ホスホロチオアート化合物、ホスホニウムホスフェート、及び上記で製造された添加剤を下記表4および表5のように混合して潤滑油組成物を製造した。このとき、ベースオイルとして、100℃での動粘度が4cStであるポリアルファオレフィン(Chevron Philips社製、PAO 4 cSt)を使用し、ホスホロチオアート化合物としてモノオスホロチオアート(monophosphorothioate)を使用した。
【0063】
製造例1〜67及び比較例1〜14:添加剤Aを含む油圧作動油用潤滑油組成物
【0064】
【表4】
製造例68乃至116及び比較例15〜53:添加剤Bを含む油圧作動油用潤滑油組成物
【0065】
【表5】
4.物性評価
製造例及び比較例で製造された潤滑油組成物の物性を下記のとおりに測定し、その結果を下記表6および表7に示した。
【0066】
摩擦係数(Friction Coefficient)
Ball on disc modeで40〜120℃まで50Hzで10℃ずつ順次昇温しながら、各温度の平均摩擦係数を比較して摩擦性能を評価した。このとき、摩擦係数は、有効性が増加するほどその値が減少する。
【0067】
静止摩擦係数(Traction Coefficient)
PCS−instrument社製のMTM装備を用いて摩擦係数を測定した。この時、測定条件を50N、SRR 50%に固定した後、温度を変化させながら、摩擦係数(friction、traction)を観察した。温度を40〜120℃まで変化させながらその平均値を比較した。
【0068】
耐摩耗性
4つのSteel ballを用いて、20kg Load、1200rpm、54℃の条件で60分潤滑油組成物を摩擦させて摩耗痕の大きさを比較し、ASTM D4172に準拠して評価を行った。この時、テストで摩耗痕(平均摩耗痕径、μm)の数値は、有効性が増加するほど減少する。
【0069】
酸化安定性
RBOT(Rotational Bomb Oxidation Test)測定装備を用いてASTM D2271に準拠して酸化安定性を測定した。
【0070】
【表6】
【0071】
【表7】
前記表6および表7を参照して、液状エチレンアルファオレフィン共重合体、ホスホロチオアート化合物及びホスホニウムホスフェートを本発明の範囲内に含む潤滑油組成物は、比較例から製造された潤滑油組成物と対比して摩耗痕及び摩擦係数が著しく減少し、また、酸化安定性に優れていることを確認することができる。このため、本発明の潤滑油組成物は、摩擦特性及び安定性が改善されて油圧作動油の適用に有利であることが分かった。